(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145560
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20241004BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241004BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20241004BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241004BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20241004BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J7/25
C09J201/00
C09J133/00
B32B7/022
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057967
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK02
4F100AK02A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AT00
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB05
4F100CB05B
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100EJ94
4F100JA03
4F100JA03A
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JA12
4F100JA12A
4F100JK06
4F100JL13
4F100JL13B
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004DB01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF001
4J040DF031
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040HD30
4J040HD36
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA11
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA10
4J040NA17
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けても、シワの発生、および、曲面からの浮きを抑制し得、かつ、曲面から円滑にはく離し得る積層フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による積層フィルムは、樹脂材料から構成されている基材フィルムと、粘着剤層と、を備えている。粘着剤層は、基材フィルムに積層されている。基材フィルムの樹脂材料のガラス転移温度±10℃における基材フィルムの加熱収縮率は、0.20%以下である。積層フィルムのアクリル板に対するはく離力は、引張速度30m/分、はく離角度180°で、1.0N/25mm以上3.0N/25mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料から構成されている基材フィルムと、
前記基材フィルムに積層された粘着剤層と、を備え、
前記樹脂材料のガラス転移温度±10℃における前記基材フィルムの加熱収縮率が0.20%以下であり、
引張速度30m/分、はく離角度180°でのアクリル板に対するはく離力が1.0N/25mm以上3.0N/25mm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記樹脂材料のガラス転移温度は、125℃以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂材料は、非晶質である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂、および/または、シクロオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤から構成されている、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品の表面に、種々の目的で、基材フィルムと粘着剤層とを備える積層フィルムを貼り付けることが知られている。積層フィルムを貼り付ける目的として、印刷層をさらに備える積層フィルムを用いて被着体に所望の意匠を付与すること、被着体の表面を保護することなどが挙げられる。このような積層フィルムとして、例えば、支持フィルムと、支持フィルムの片面または両面に形成された粘着剤層と、を有する偏光板用表面保護フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、積層フィルムの適用対象が多様化しており、積層フィルムが曲面に貼り付けられる場合がある。しかし、積層フィルムを、曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けると、積層フィルムにシワが生じて被着体に悪影響を及ぼす場合や、積層フィルムが曲面から浮く(部分的にはく離する)場合がある。また、積層フィルムは、被着体の用途に応じて、所望のタイミングで曲面からはく離することが求められる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、積層フィルムを曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けても、シワの発生、および、曲面からの浮きを抑制し得、かつ、曲面から円滑にはく離し得る積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の1つの実施形態よる積層フィルムは、基材フィルムと、粘着剤層と、を備えている。該基材フィルムは、樹脂材料から構成されている。該粘着剤層は、該基材フィルムに積層されている。該樹脂材料のガラス転移温度±10℃における該基材フィルムの加熱収縮率は、0.20%以下である。該積層フィルムのアクリル板に対するはく離力は、引張速度30m/分、はく離角度180°において、1.0N/25mm以上3.0N/25mm以下である。
[2]上記[1]に記載の積層フィルムにおいて、上記樹脂材料のガラス転移温度は、125℃以上であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の積層フィルムにおいて、上記樹脂材料は、非晶質であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、上記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂、および/または、シクロオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系粘着剤から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けても、シワの発生および曲面からの浮きが抑制され、かつ、曲面から円滑にはく離可能な積層フィルムを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
【0011】
A.積層フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
図示例の積層フィルム100は、基材フィルム1と、粘着剤層2と、を備えている。基材フィルム1は、樹脂材料から構成されている。粘着剤層2は、基材フィルム1に積層されている。
基材フィルム1を構成する樹脂材料のガラス転移温度±10℃において、基材フィルム1の加熱収縮率は、0.20%以下、好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.15%以下である。基材フィルムの加熱収縮率の下限は、代表的には0.001%である。
積層フィルム100のアクリル板に対するはく離力は、引張速度30m/分、はく離角度180°で、1.0N/25mm以上、好ましくは1.2N/25mm以上であり、3.0N/25mm以下、好ましくは2.5N/25mm以下、より好ましくは2.0N/25mm以下、さらに好ましくは1.8N/25mm以下である。
基材フィルムの加熱収縮率が上記した上限以下、かつ、積層フィルムのはく離力が上記下限以上であると、積層フィルムを曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けても、積層フィルムにシワが発生することを抑制し得、かつ、積層フィルムが曲面から浮く(部分的にはく離する)ことを抑制し得る。そのため、被着体に対する積層フィルムの影響を抑制しつつ、積層フィルムを曲面に追従させた状態で安定して維持し得る。また、積層フィルムのはく離力が上記上限以下であるので、積層フィルムを曲面から円滑にはく離し得る。
【0012】
基材フィルム1を構成する樹脂材料のガラス転移温度(以下、Tgと称する場合がある。)は、例えば80℃以上、好ましくは125℃以上である。樹脂材料のTgが上記下限以上であれば、積層フィルムを曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けたときに、積層フィルムにシワが発生することを安定して抑制し得る。基材フィルムのTgの上限は、代表的には180℃である。なお、上記ガラス転移温度は、任意の適切な熱重量-示差熱同時測定装置(TG-DTA)によって測定し得る。
【0013】
以下、積層フィルムの構成要素について説明する。
【0014】
B.基材フィルム
基材フィルム1は、樹脂材料を主成分として含んでいる。当該樹脂材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系;ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系;トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)系;(メタ)アクリル系;ポリビニルアルコール系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリエーテルスルホン系;ポリスルホン系;ポリスチレン系;ポリオレフィン系;アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0015】
1つの実施形態において、基材フィルム1の樹脂材料は、非晶質である。基材フィルムが非晶質の樹脂材料から構成されていると、積層フィルムに優れた透明性を付与し得る。
【0016】
これら樹脂材料のなかでは、好ましくは、PC系樹脂および/またはCOP系樹脂が挙げられ、より好ましくは、PC系樹脂が挙げられる。
【0017】
PC系樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、分子内に少なくとも一つの結合構造-CH
2-O-を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。言い換えれば、PC系樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、炭酸ジエステル由来のカーボネート基と、を含んでいる。
【化1】
【0018】
ここで、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基-CH2-O-を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。
【0019】
また、PC系樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、上記構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用しても構わない。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記する場合がある。
【0020】
(ジヒドロキシ化合物(A))
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基-CH2-O-」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子または炭素原子と酸素原子とが同時に結合し得る原子としては、炭素原子が好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基-CH2-O-」の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2~4である。
【0021】
ジヒドロキシ化合物(A)として、具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンで例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-フェニルエタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]プロパン、2,2-ビス[(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-4-メチルペンタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2-ビス[3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類;1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テルで例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルフィドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホキシドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類;1,4-ビスヒドロキシエトキシベンゼンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシベンゼン類;1,3-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;1,4-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル;1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-5,7-ジメチルアダマンタン;下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物で例示されるような、無水糖アルコール;および、下記一般式(3)で表されるスピログリコールで例示されるような、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(A)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0022】
【0023】
【0024】
これらジヒドロキシ化合物(A)のなかでは、好ましくは、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0025】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば10モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上であり、例えば100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。ジヒドロキシ化合物(A)の割合が上記の範囲であると、基材フィルムの加熱収縮性を好適に調整し得る。
【0026】
(ジヒドロキシ化合物(B))
PC系樹脂の構造単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)とともに、ジヒドロキシ化合物(B)を用いることができる。ジヒドロキシ化合物(A)および(B)を併用すると、基材フィルムの加熱収縮性をより好適に調整し得る。
【0027】
ジヒドロキシ化合物(B)は、代表的には、ジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である。ジヒドロキシ化合物(B)として、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(B)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
ジヒドロキシ化合物(B)のなかでは、好ましくは、脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0028】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造または6員環構造を含む化合物が挙げられる。また、6員環構造は、共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環または6員環構造であることにより、得られるPC系樹脂の耐熱性の向上を図り得る。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は、例えば70以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0029】
5員環構造または6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物として、具体的には、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH2-R1-CH2OH (I)
HO-R2-OH (II)
(式(I)、(II)中、R1およびR2のそれぞれは、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。)
【0030】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ia)(式中、R3は炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0031】
【0032】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、または、ペンタシクロペンタデカンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ib)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0033】
【0034】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール、または、トリシクロテトラデカンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ic)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノールが挙げられる。
【0035】
【0036】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Id)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールが挙げられる。
【0037】
【0038】
一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ie)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0039】
【0040】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIa)(式中、R3は炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0041】
【0042】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、または、ペンタシクロペンタデカンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIb)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0043】
【0044】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール、または、トリシクロテトラデカンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIc)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオールが挙げられる。
【0045】
【0046】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオールが挙げられる。
【0047】
【0048】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとして、具体的には、1,3-アダマンタンジオールが挙げられる。
【0049】
【0050】
上記した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のなかでは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が挙げられ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが挙げられ、さらに好ましくは、トリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
【0051】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上であり、例えば90モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下である。
【0052】
これらPC系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報(特許第5448264号)に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0053】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位と、それらを連結するカーボネート基と、を含んでいる。これら構造単位を含むPC系樹脂を基材フィルムに適用すると、基材フィルムの加熱収縮性をより一層好適に調整し得る。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位とのモル比(A:B)は、例えば5:5~9:1であり、好ましくは6:4~8:2である。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)との組み合わせは、好ましくは、イソソルビドとトリシクロデカンジメタノールとの組み合わせである。
【0054】
基材フィルム1は、上記した樹脂材料に加えて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤が挙げられる。基材フィルム1の表面(粘着剤層2と反対側の表面)には、任意の適切な表面処理層が設けられていてもよい。表面処理層として、例えば、易接着層、易滑層、ブロッキング防止層、帯電防止層、反射防止層、オリゴマー防止層が挙げられる。
【0055】
基材フィルム1の厚みは、例えば5μm以上、好ましくは20μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは100μm以下である。
【0056】
基材フィルム1の面内位相差Re(550)は、例えば100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、とりわけ好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。基材フィルム1の面内位相差Re(550)の下限は、代表的には0nmである。
【0057】
基材フィルム1の厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下、とりわけ好ましくは10nm以下、特に好ましくは5nm以下である。基材フィルム1のRth(550)の下限は、代表的には0nmである。
【0058】
基材フィルム1のヘイズ値は、例えば2%以下、好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下であり、代表的には0.05%以上である。
【0059】
C.粘着剤層
粘着剤層2は、積層フィルム100を、被着体の表面、特に曲率半径が5cm以下の曲面に貼り付けるために、基材フィルム1の表面に設けられる。粘着剤層2は、粘着剤(感圧接着剤)から構成されている。
【0060】
粘着剤層2を構成する粘着剤として、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間などを調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製し得る。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
1つの実施形態において、粘着剤層2は、(メタ)アクリル系粘着剤((メタ)アクリル系粘着剤組成物)から構成されている。粘着剤層が(メタ)アクリル系粘着剤から構成されていると、積層フィルムのはく離力を上記した範囲に安定して調整し得る。
【0062】
(メタ)アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。粘着剤組成物の固形分における(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合は、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、例えば100質量%以下である。
【0063】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位を含む。(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の含有割合は、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、例えば90質量%以下である。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基として、例えば、1~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3~12個であり、より好ましくは3~8個である。アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、好ましくは、ブチルアクリレート、および、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられ、より好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位以外に、アルキル(メタ)アクリレートと重合可能な共重合モノマー由来の構造単位を含有してもよい。共重合モノマーとして、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。共重合モノマーは、単独でまたは組み合わせて使用できる。
共重合モノマーのなかでは、好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、および、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。
1つの実施形態において、(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位と、ヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位と、含んでいる。
【0065】
カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。カルボキシル基含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含むと、粘着剤層の粘着特性の向上を図り得る。
【0066】
(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合は、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.10質量%以上であり、例えば10質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0067】
ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。ヒドロキシル基含有モノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられ、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーがヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位を含むと、粘着剤層の耐久性の向上を図り得る。
【0068】
(メタ)アクリル系ポリマーがヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、ヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合は、例えば0.01質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは8.0質量%以上であり、例えば10質量%以下である。
【0069】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、例えば10万~200万であり、好ましくは20万~100万である。重量平均分子量Mwは、例えば、GPC測定の結果からスチレン換算により算出し得る。
【0070】
また、(メタ)アクリル系粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤として、代表的には、有機系架橋剤および多官能性金属キレートが挙げられ、好ましくは有機系架橋剤が挙げられる。有機系架橋剤として、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤が挙げられ、より好ましくは、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0071】
架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.2質量部以上であり、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲であると、積層フィルムのはく離力を上記の範囲に安定して調整し得る。
【0072】
さらに、(メタ)アクリル系粘着剤は、種々の添加剤(例えば、シランカップリング剤、重合開始剤、溶媒、架橋触媒)を適切な割合で含有していてもよい。
これら粘着剤の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0073】
粘着剤層2の厚みは、代表的には1μm以上、好ましくは5μm以上であり、代表的には30μm以下、好ましくは15μm以下である。
【0074】
D.はく離ライナー
積層フィルム100は、基材フィルム1および粘着剤層2に加えて、はく離ライナー3をさらに備えていてもよい。はく離ライナー3は、代表的には、積層フィルムが被着体に貼り付けられるまで粘着剤層2に仮着されており、積層フィルムの貼り付け時に粘着剤層2からはく離される。はく離ライナー3は、はく離ライナーとして使用できる任意の適切な樹脂フィルムで形成される。はく離ライナー3における粘着剤層2との接触面には、離型処理層が設けられていてもよい。
【0075】
E.積層フィルムの用途
上記A項~D項に記載の積層フィルムは、各種被着体の表面に貼り付けられて用いられる。より詳しくは、積層フィルム100は、粘着剤層2により、被着体の表面(特に曲率半径が5cm以下の曲面)に貼り付けられる。
被着体として、例えば、光学部材、電子部材が挙げられ、好ましくは、光学部材が挙げられる。光学部材として、代表的には、偏光板、位相差フィルム、偏光板および/または位相差フィルムを含む光学積層体、ディスプレイ、撮像装置、レンズ、(ハーフ)ミラーが挙げられる。
被着体が有する曲面の曲率半径は、例えば5cm以下、また例えば3cm以下であり、例えば0.5cm以上である。
【0076】
1つの実施形態において、積層フィルム100は、加飾フィルムである。
積層フィルム100が加飾フィルムである場合、図示しないが、積層フィルム100は、基材フィルム1および粘着剤層2に加えて、印刷層を備えている。印刷層は、粘着剤層2における基材フィルム1と反対側の表面に設けられる。
このような加飾フィルムは、印刷層が被着体と接触するように、被着体の表面(代表的には曲率半径が5cm以下の曲面)に貼り付けられる。次いで、必要に応じて加熱された後、被着体の表面からはく離される。すると、印刷層が、被着体の表面(特に曲率半径が5cm以下の曲面)に転写されて、被着体に所望の意匠を付与し得る。
【0077】
別の実施形態において、積層フィルム100は、粘着剤層付きフィルムであり、表面保護フィルムとして好適に用いられ得る。
このような表面保護フィルムは、被着体の表面(代表的には曲率半径が5cm以下の曲面)に貼り付けられる。これによって、被着体の加工時および/または輸送時などにおいて、被着体の表面を保護し得る。その後、表面保護フィルムは、所望のタイミングで、被着体の表面からはく離され、除去される。
【実施例0078】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0079】
(1)基材フィルムのガラス転移温度(Tg)
実施例および比較例で用いられる基材フィルムを構成する樹脂材料のガラス転移温度を、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC6220を用いて測定した。より詳しくは、約10mgの樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度(Tg)とした。その結果を表1に示す。
【0080】
(2)基材フィルムの加熱収縮率測定
実施例および比較例で用いられる基材フィルムを、厚み1mmのガラス板上に、粘着剤層を介して貼り合わせて測定サンプルとし、フィルムの四隅に印をつけた。ミツトヨ社製の画像測定機(クイックビジョン)により、フィルムの四隅の印間の長さL0を測定した。測定したサンプルを、樹脂材料のガラス転移温度(Tg)±10℃における加熱オーブンに120時間投入したのち、再度、偏光フィルムの四隅の印間の長さL500を測定した。寸法変化率は、次式により算出した。その結果を表1に示す。
寸法変化率(%)={(L500-L0)/L0}×100
【0081】
(3)積層フィルムのはく離力測定
実施例および比較例で得られた積層フィルムを、25mm×100mmの短冊状にカットしてサンプルを準備した。当該サンプルを、粘着剤層によって、アクリル板(三菱ケミカル社製「アクリライト」、厚み:2mm、幅:70mm、長さ:100mm)の表面に、圧力0.25MPa、送り速度0.3m/分でロール圧着した。この試料を、温度23℃、相対湿度50%の環境に30分間静置した後、同環境下で、はく離角度180°、引張速度30m/分でピール試験を行い、はく離力を測定した。その評価結果を表1に示す。
【0082】
(4)曲面加工性の評価
曲率半径3cmの曲面を有する被着体を準備した。次いで、実施例および比較例で得られた積層フィルムを、粘着剤層によって被着体の曲面に貼り付けた。その後、積層フィルムにおけるシワの有無、および、積層フィルムの被着体からの浮きの有無を、目視および顕微鏡観察によって確認した。その結果を表1に示す。
次いで、積層フィルムの被着体からのはく離の可否を、目視によって確認した。その結果を表1に示す。
【0083】
<<調製例1:粘着剤組成物A>>
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10質量部と、アクリル酸(AA)0.02質量部と、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部とを、酢酸エチル157質量部とともに仕込み、23℃で緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換を行った。その後、液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、(メタ)アクリルポリマーAの溶液(濃度40質量%)を調製した。アクリルポリマーAの重量平均分子量は54万であった。
【0084】
アクリルポリマーAの溶液に酢酸エチルを加えて濃度20質量%に希釈した。この溶液500質量部(固形分100質量部)に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製「コロネートHX」)1.5質量部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)とを加えて攪拌し、粘着剤組成物Aを調製した。
【0085】
<<調製例2:粘着剤組成物B>>
架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の添加量を3.0質量部に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、粘着剤組成物Bを調製した。
【0086】
<<調製例3:粘着剤組成物C>>
架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の添加量を0.3質量部に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、粘着剤組成物Cを調製した。
【0087】
<<調製例4:PC系樹脂フィルムの作製>>
イソソルビド(ISB)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)175.1質量部、および、触媒としての炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、PC系樹脂のペレットを得た。得られたPC系樹脂を100℃で12時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅1700mm、設定温度:250℃)、キャストロール(設定温度:60℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み20μmのPC系樹脂フィルムを作製した。
【0088】
[実施例1]
調製例4のPC系樹脂フィルム(基材フィルム)の表面に、調製例1の粘着剤組成物Aを塗布し、その後乾燥させて、厚み15μmの粘着剤層を形成した。以上によって、積層フィルムを得た。
【0089】
[実施例2]
調製例4のPC系樹脂フィルムをCOP系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番ZF16)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0090】
[比較例1]
調製例4のPC系樹脂フィルムを、PETフィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0091】
[比較例2]
調製例4のPC系樹脂フィルムを、アクリル系樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0092】
[比較例3]
調製例1の粘着剤組成物Aを、調製例2の粘着剤組成物Bに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0093】
[比較例4]
調製例1の粘着剤組成物Aを、調製例3の粘着剤組成物Cに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0094】
【0095】
[評価]
表1から明らかなように、基材フィルムの加熱収縮率が上記上限以下であり、かつ、積層フィルムのはく離力が上記下限以上であると、積層フィルムを粘着剤層によって曲率半径5cm以下の曲面に貼り付けても、積層フィルムにおけるシワの発生、および、被着体からの積層フィルムの浮きを抑制し得ることがわかる。さらに、積層フィルムのはく離力が上記上限以下であると、積層フィルムを被着体から円滑にはく離し得ることがわかる。