(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145563
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20241004BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241004BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057970
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK02
4F100AK02A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA19
4F100CA19A
4F100CB05
4F100CB05B
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JK06
4F100JK16
4F100JK16A
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4F100JN10A
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4F100JN18A
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
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4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF031
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA06
4J040MA10
4J040NA17
4J040PA20
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】優れたアンチブロッキング性を有する積層フィルムであって、被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、被着体を精度よく検査し得る積層フィルムおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による積層フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムに積層された粘着剤層と、を備えている。該基材フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、該樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下である。該基材フィルムにおけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルムに積層された粘着剤層と、を備え、
前記基材フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、前記樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含み、
前記アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下であり、
前記基材フィルムにおけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである、積層フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムの単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm以上の欠点数は、5つ以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの面内位相差Re(550)は、10nm以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルムにおける動摩擦係数が、1.0以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
引張速度30m/分、はく離角度180°でのアクリル板に対するはく離力は、3.0N/25mm以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂、および/または、シクロオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
溶融状態の樹脂材料とアンチブロッキング剤とを混合して樹脂組成物を調製する工程と、
前記樹脂組成物をフィルターに通過させる工程と、
フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形して、基材フィルムを調製する工程と、
前記基材フィルム上に粘着剤層を形成する工程と、を含み、
前記アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下であり、
前記樹脂組成物におけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである、積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記フィルターは、スクリーンメッシュであり、
前記スクリーンメッシュの目開きは、0.035mm~0.070mmである、請求項7に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品の表面に、種々の目的で、基材フィルムと粘着剤層とを備える積層フィルムを貼り付けることが知られている。積層フィルムを貼り付ける目的として、被着体の表面を保護することなどが挙げられる。このような積層フィルムとして、例えば、支持フィルムと、支持フィルムの片面に形成された粘着剤層と、を有する偏光板用表面保護フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような積層フィルムを、粘着剤層における基材フィルムと反対側の表面にはく離ライナーを貼り付けた後に、ロール状に巻き取って回収する場合がある。しかし、はく離ライナーを含む積層フィルムをロール状に巻き取ると、基材フィルムとはく離ライナーとが貼り付くブロッキングが生じるおそれがある。
【0004】
そこで、基材フィルムにアンチブロッキング剤(以下、AB剤とする。)を含有させて、基材フィルムとはく離ライナーとのブロッキングを抑制することが検討される。しかし、近年、積層フィルムを被着体に貼り付けた状態で被着体を検査する場合があり、AB剤を含む積層フィルムを被着体に貼り付けて光学検査を実施すると、AB剤に起因する誤検出が生じて、被着体を正確に検査できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れたアンチブロッキング性を有する積層フィルムであって、被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、被着体を精度よく検査し得る積層フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]1つの実施形態による積層フィルムは、基材フィルムと、粘着剤層と、を備えている。該粘着剤層は、該基材フィルムに積層されている。該基材フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、該樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下である。該基材フィルムにおけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。
[2]上記[1]に記載の積層フィルムにおいて、上記基材フィルムの単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm以上の欠点数は、5つ以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の積層フィルムにおいて、上記基材フィルムの面内位相差Re(550)は、10nm以下であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、上記基材フィルムにおける動摩擦係数は、1.0以下であってもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の積層フィルムのはく離力は、引張速度30m/分、はく離角度180°で、3.0N/25mm以下であってもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の積層フィルムにおいて、上記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂、および/または、シクロオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
[7]本発明の別の局面による積層フィルムの製造方法は、溶融状態の樹脂材料とアンチブロッキング剤とを混合して樹脂組成物を調製する工程と;該樹脂組成物をフィルターに通過させる工程と;フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形して、基材フィルムを調製する工程と;該基材フィルム上に粘着剤層を形成する工程と;を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下である。該樹脂組成物におけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。
[8]上記[7]に記載の積層フィルムの製造方法において、上記フィルターは、スクリーンメッシュであってもよい。該スクリーンメッシュの目開きは、0.035mm~0.070mmであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、優れたアンチブロッキング性を有する積層フィルムであって、被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、被着体を精度よく検査可能な積層フィルムを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の積層フィルムを含む積層フィルム付光学部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
【0012】
A.積層フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの概略断面図である。
図示例の積層フィルム100は、基材フィルム1と、粘着剤層2と、を備えている。粘着剤層2は、基材フィルム1に積層されている。基材フィルム1は、マトリックスとしての樹脂材料と、樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤(以下、AB剤とする。)と、を含んでいる。AB剤は、代表的には、粒子状を有しており、複数のAB剤の粒子が互いに凝集した凝集体として、樹脂材料に分散している。AB剤の平均一次粒子径は、1.3μm以下である。基材フィルム1におけるAB剤の含有割合(質量基準)は、350ppm~3000ppmである。
AB剤の含有割合がこのような範囲であると、積層フィルムに優れたアンチブロッキング性を付与し得る。また、AB剤の平均一次粒子径がこのような範囲であると、積層フィルムを被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、AB剤(特にAB剤の凝集体)に起因する誤検出を抑制し得、結果として被着体を精度よく検査し得る。言い換えれば、積層フィルムを貼り付けた状態の被着体を検査した結果と、被着体のみを検査した結果と、を整合させ得る。
【0013】
AB剤の平均一次粒子径は、好ましくは1.0μm以下である。一方、AB剤の平均一次粒子径の下限は、代表的には0.1μm以下である。なお、AB剤の平均一次粒子径は、レーザー回折法によって測定し得る。
AB剤の平均一次粒子径がこのような範囲であると、被着体の光学検査において、AB剤(特にAB剤の凝集体)が誤検出されることを安定して抑制し得る。
【0014】
基材フィルム1におけるAB剤の含有割合(質量基準)は、好ましくは500ppm~3000ppmであり、より好ましくは500ppm~2000ppmである。
AB剤の含有割合がこのような範囲であると、積層フィルムにアンチブロッキング性を十分に付与し得、かつ、被着体の光学検査において、AB剤(特にAB剤の凝集体)が誤検出されることをより安定して抑制し得る。
【0015】
基材フィルム1の単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm以上の欠点数(以下、基材フィルムのD30/10cm2とする。)は、例えば5つ以下、好ましくは3つ以下である。基材フィルムのD30/10cm2の下限は、代表的には0である。なお、欠点数の測定方法については、後述する実施例で説明する。
基材フィルムのD30/10cm2がこのような範囲であれば、被着体の光学検査において、基材フィルムに起因する誤検出を抑制し得、結果として被着体の検査精度を向上し得る。
【0016】
また、基材フィルム1の単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm未満の欠点数は、特に制限されない。単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm未満10μm以上の欠点数は、例えば15以下、好ましくは10以下である。単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm未満10μm以上の欠点数の下限は、代表的には0である。
【0017】
基材フィルム1における欠点として、例えば、上記したAB剤の凝集体;樹脂材料に混入した繊維などの異物;樹脂材料の熱架橋により生じたゲル状物;樹脂の水分が原因で生じる気泡が挙げられる。
【0018】
基材フィルム1は、代表的には、光学的に等方性を有する。本明細書において、「光学的に等方性」とは、面内位相差Re(550)およびの厚み方向の位相差Rth(550)が下記の範囲であることを意味する。
基材フィルム1の面内位相差Re(550)は、例えば10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。一方、基材フィルム1の面内位相差Re(550)の下限は、代表的には0nmである。
基材フィルムの面内位相差Re(550)がこのような範囲であれば、光学検査における基材フィルムの虹ムラを良好に抑制し得、結果として被着体の検査精度を向上し得る。
基材フィルム1の厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば-10nm~+10nmであり、好ましく-5nm~+5nmである。
【0019】
基材フィルム1における動摩擦係数は、例えば1.2以下、好ましくは1.0以下である。一方、基材フィルム1における動摩擦係数の下限は、代表的には0.2である。なお、基材フィルムの動摩擦係数は、JIS K7125によって測定し得る。
基材フィルムにおける動摩擦係数がこのような範囲であれば、積層フィルムに優れたアンチブロッキング性を安定して付与し得る。
【0020】
積層フィルム100のアクリル板に対するはく離力は、引張速度30m/分、はく離角度180°で、例えば3.5N/25mm以下、好ましくは3.0N/25mm以下、より好ましくは2.5N/25mm以下、さらに好ましくは2.0N/25mm以下である。積層フィルムがこのようなはく離力を有していれば、光学検査後に積層フィルムを被着体から円滑にはく離し得る。
一方、積層フィルム100のアクリル板に対するはく離力は、例えば、0.5N/25mm以上、好ましくは1.0N/25mm以上、好ましくは1.2N/25mm以上である。積層フィルムがこのようなはく離力を有していれば、積層フィルムを被着体に貼り付けた状態で、積層フィルムを被着体の表面に安定して追従させ得る。なお、上記はく離力は、JIS Z0237に準拠して測定し得、より具体的には、下記はく離力試験により測定し得る。
(はく離力試験)
積層フィルムを25mm×100mmの短冊状にカットしてサンプルを準備し;当該サンプルを、粘着剤層によって、アクリル板の表面に圧力0.25MPa、送り速度0.3m/分でロール圧着し;アクリル板に貼り付けられた当該サンプルを、温度23℃、相対湿度50%の環境に30分間静置した後、同環境下で、はく離角度180°、引張速度30m/分ではく離して、はく離力を測定する。
【0021】
以下、積層フィルムの構成要素について説明する。
【0022】
B.基材フィルム
基材フィルム1は、樹脂材料を主成分として含んでいる。当該樹脂材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系;ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系;トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)系;(メタ)アクリル系;ポリビニルアルコール系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリエーテルスルホン系;ポリスルホン系;ポリスチレン系;ポリオレフィン系;アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーも使用できる。このポリマーの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0023】
1つの実施形態において、基材フィルム1の樹脂材料は、非晶質である。基材フィルムが非晶質の樹脂材料から構成されていると、積層フィルムに優れた透明性を付与し得る。
【0024】
これら樹脂材料のなかでは、好ましくは、PC系樹脂およびCOP系樹脂が挙げられ、より好ましくは、PC系樹脂が挙げられる。
【0025】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、分子内に少なくとも一つの結合構造-CH
2-O-を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。言い換えれば、PC系樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、炭酸ジエステル由来のカーボネート基と、を含んでいる。
【化1】
【0026】
ここで、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基-CH2-O-を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。
【0027】
また、PC系樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、上記構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用しても構わない。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記する場合がある。
【0028】
(ジヒドロキシ化合物(A))
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基-CH2-O-」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子または炭素原子と酸素原子とが同時に結合し得る原子としては、炭素原子が好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基-CH2-O-」の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2~4である。
【0029】
ジヒドロキシ化合物(A)として、具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンで例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-フェニルエタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]プロパン、2,2-ビス[(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-4-メチルペンタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2-ビス[3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類;1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テルで例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルフィドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホキシドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類;1,4-ビスヒドロキシエトキシベンゼンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシベンゼン類;1,3-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;1,4-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル;1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-5,7-ジメチルアダマンタン;下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物で例示されるような、無水糖アルコール;および、下記一般式(3)で表されるスピログリコールで例示されるような、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(A)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0030】
【0031】
【0032】
これらジヒドロキシ化合物(A)のなかでは、好ましくは、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0033】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば10モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。ジヒドロキシ化合物(A)の割合が上記の範囲であると、光学検査における基材フィルムの虹ムラを安定して抑制し得る。
【0034】
(ジヒドロキシ化合物(B))
PC系樹脂の構造単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)とともに、ジヒドロキシ化合物(B)を用いることができる。ジヒドロキシ化合物(A)および(B)を併用すると、光学検査における基材フィルムの虹ムラをより安定して抑制し得る。
【0035】
ジヒドロキシ化合物(B)は、代表的には、ジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である。ジヒドロキシ化合物(B)として、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(B)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
ジヒドロキシ化合物(B)のなかでは、好ましくは、脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0036】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造または6員環構造を含む化合物が挙げられる。また、6員環構造は、共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環または6員環構造であることにより、得られるPC系樹脂の耐熱性の向上を図り得る。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は、例えば70以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0037】
5員環構造または6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物として、具体的には、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH2-R1-CH2OH (I)
HO-R2-OH (II)
(式(I)、(II)中、R1およびR2のそれぞれは、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。)
【0038】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ia)(式中、R3は炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0039】
【0040】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、または、ペンタシクロペンタデカンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ib)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0041】
【0042】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール、または、トリシクロテトラデカンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ic)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノールが挙げられる。
【0043】
【0044】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Id)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールが挙げられる。
【0045】
【0046】
一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールは、一般式(I)において、R1が下記一般式(Ie)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0047】
【0048】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIa)(式中、R3は炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0049】
【0050】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、または、ペンタシクロペンタデカンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIb)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0051】
【0052】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール、または、トリシクロテトラデカンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIc)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオールが挙げられる。
【0053】
【0054】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオールが挙げられる。
【0055】
【0056】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールは、一般式(II)において、R2が下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとして、具体的には、1,3-アダマンタンジオールが挙げられる。
【0057】
【0058】
上記した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のなかでは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が挙げられ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが挙げられ、さらに好ましくは、トリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
【0059】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば90モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下である。
【0060】
これらPC系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報(特許第5448264号)に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0061】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位と、それらを連結するカーボネート基と、を含んでいる。これら構造単位を含むPC系樹脂を基材フィルムに適用すると、光学検査における基材フィルムの虹ムラをより一層安定して抑制し得る。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位とのモル比(A:B)は、例えば5:5~9:1であり、好ましくは6:4~8:2である。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)との組み合わせは、好ましくは、イソソルビドとトリシクロデカンジメタノールと組み合わせである。
【0062】
基材フィルム1は、樹脂材料に加えて、AB剤を含んでいる。AB剤は、好ましくは透明性を有する。AB剤を構成する材料として、例えば、金属酸化物、樹脂、ガラスが挙げられる。金属酸化物として、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウムが挙げられる。樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート、シリコーンが挙げられる。ガラスとして、例えばフッ化マグネシウムが挙げられる。
AB剤の表面には、任意の適切な表面修飾が施されていてもよい。表面修飾として、例えば化学修飾が挙げられ、好ましくはアルキル基修飾が挙げられる。
AB剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用し得る。
このようなAB剤のなかでは、好ましくは金属酸化物が挙げられ、より好ましくはシリカが挙げられ、さらに好ましくはアルキル基修飾シリカが挙げられ、とりわけ好ましくはメチル修飾シリカが挙げられる。
【0063】
基材フィルム1は、上記した樹脂材料およびAB剤に加えて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤が挙げられる。基材フィルム1の表面(粘着剤層2と反対側の表面)には、任意の適切な表面処理層が設けられていてもよい。表面処理層として、例えば、易接着層、易滑層、帯電防止層、反射防止層、オリゴマー防止層が挙げられる。
【0064】
基材フィルム1の厚みは、例えば30μm以上、好ましくは40μm以上である。一方、基材フィルム1の厚みは、例えば130μm以下、好ましくは120μm以下である。基材フィルムの厚みがこのような範囲であれば、積層フィルムのはく離に好適なコシ(弾性)を基材フィルムに付与し得る。そのため、基材フィルムを被着体から円滑にはく離し得る。また、基材フィルムの面内位相差を上記の範囲に安定して調整し得る。
【0065】
基材フィルム1のトラウザー引裂強度は、例えば0.09N以上、好ましくは0.10N以上である。基材フィルム1のトラウザー引裂強度は、例えば0.4N以下、好ましくは0.3N以下である。基材フィルムのトラウザー引裂強度がこのような範囲であれば、積層フィルムを被着体から円滑にはく離し得、かつ、積層フィルムを被着体からはく離するときに、積層フィルムに破れ(裂け)が発生することを抑制し得る。トラウザー引裂強度は、例えば、JIS K7128-1に準拠して測定し得る。
【0066】
基材フィルム1の全光線透過率は、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
基材フィルム1のヘイズ値は、例えば2.0%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.7%以下、とりわけ好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。基材フィルム1のヘイズ値の下限は、代表的には0.05%である。
基材フィルムの全光線透過率および/またはヘイズ値がこのような範囲であれば、基材フィルムに非常に優れた透明性を付与し得、結果として、被着体の光学検査における積層フィルムの影響を低減し得る。
【0067】
C.粘着剤層
粘着剤層2は、積層フィルム100を、被着体の表面に貼り付けるために、基材フィルム1の表面に設けられる。粘着剤層2は、粘着剤(感圧接着剤)から構成されている。
【0068】
粘着剤層2を構成する粘着剤として、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間などを調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製し得る。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
1つの実施形態において、粘着剤層2は、(メタ)アクリル系粘着剤((メタ)アクリル系粘着剤組成物)から構成されている。粘着剤層が(メタ)アクリル系粘着剤から構成されていると、積層フィルムのはく離力を上記した範囲に安定して調整し得る。
【0070】
(メタ)アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。粘着剤組成物の固形分における(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合は、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。一方、(メタ)アクリル系ポリマーの含有割合の上限は、代表的には100質量%である。
【0071】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位を含む。(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の含有割合は、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上である。一方、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位の含有割合の上限は、代表的には90質量%である。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基として、例えば、1~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3~12個であり、より好ましくは3~8個である。アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、好ましくは、ブチルアクリレート、および、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられ、より好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0072】
(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位以外に、アルキル(メタ)アクリレートと重合可能な共重合モノマー由来の構造単位を含有してもよい。共重合モノマーとして、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。共重合モノマーは、単独でまたは組み合わせて使用できる。
共重合モノマーのなかでは、好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、および、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。
1つの実施形態において、(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位と、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位と、ヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位と、含んでいる。
【0073】
カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。カルボキシル基含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸が挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含むと、粘着剤層の粘着特性の向上を図り得る。
【0074】
(メタ)アクリル系ポリマーがカルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合は、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.10質量%以上である。一方、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合は、例えば10質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0075】
ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの重合性不飽和二重結合を含む化合物である。ヒドロキシル基含有モノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられ、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーがヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位を含むと、粘着剤層の耐久性の向上を図り得る。
【0076】
(メタ)アクリル系ポリマーがヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、ヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合は、例えば0.01質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、さらに好ましくは8.0質量%以上である。ヒドロキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有割合の上限は、代表的には10質量%である。
【0077】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、例えば10万~200万であり、好ましくは20万~100万である。重量平均分子量Mwは、例えば、GPC測定の結果からスチレン換算により算出し得る。
【0078】
また、(メタ)アクリル系粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤として、代表的には、有機系架橋剤および多官能性金属キレートが挙げられ、好ましくは有機系架橋剤が挙げられる。有機系架橋剤として、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤が挙げられ、より好ましくは、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0079】
架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.2質量部以上である。一方、架橋剤の含有量は、例えば10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。架橋剤の含有量がこのような範囲であると、積層フィルムのはく離力を好適に調整し得る。
【0080】
さらに、(メタ)アクリル系粘着剤は、種々の添加剤(例えば、シランカップリング剤、重合開始剤、溶媒、架橋触媒)を適切な割合で含有していてもよい。
これら粘着剤の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0081】
粘着剤層2の厚みは、代表的には1μm以上、好ましくは5μm以上である。一方、粘着剤層2の厚みは、例えば30μm以下、好ましくは15μm以下である。
【0082】
25℃における粘着剤層2の貯蔵弾性率は、例えば、5.0×104Pa~5.0×106Paであり、好ましくは7.5×104Pa~2.5×106Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、被着体に対する濡れ性が良く、接着力が十分となり得る。
【0083】
D.はく離ライナー
積層フィルム100は、基材フィルム1および粘着剤層2に加えて、はく離ライナー3をさらに備えていてもよい。はく離ライナー3は、代表的には、積層フィルムが被着体に貼り付けられるまで粘着剤層2に仮着されており、積層フィルムの貼り付け時に粘着剤層2からはく離される。はく離ライナー3は、はく離ライナーとして使用できる任意の適切な樹脂フィルムで形成される。はく離ライナー3における粘着剤層2との接触面には、離型処理層が設けられていてもよい。
【0084】
E.積層フィルムの製造方法
上記した積層フィルム100は、任意の適切な方法により製造し得る。1つの実施形態において、積層フィルムの製造方法は、樹脂組成物を調製する工程(調製工程)と;樹脂組成物をフィルターに通過させる工程(フィルター通過工程)と;フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形して、基材フィルム1を調製する工程(押出成形工程)と;基材フィルム1上に粘着剤層2を形成する工程(粘着剤層形成工程)と;を含んでいる。
【0085】
調製工程では、代表的に、上記した樹脂材料を溶融した後に、溶融状態の樹脂材料と上記したAB剤とを混合して樹脂組成物を調製する。
【0086】
溶融前の樹脂材料は、任意の適切な形状を有し得る。1つの実施形態において、樹脂材料は、事前にペレット化される。樹脂材料のペレット化方法は、特に制限されず、ストランドカット方式であってもよく、ホットカット方式であってもよい。ペレット準備工程の詳細は、例えば、特開2013-181105号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0087】
次いで、樹脂材料(代表的にはペレット)を加熱して溶融する。加熱温度は、樹脂材料に応じた任意の適切な値を採用し得る。また、溶融状態の樹脂材料とAB剤とを、混合する。これによって、溶融状態の樹脂組成物が調製される。樹脂組成物におけるAB剤の含有割合の範囲は、例えば、上記した基材フィルム1におけるAB剤の含有割合の範囲と同様である。
【0088】
フィルター通過工程では、溶融状態の樹脂組成物をフィルターに通過させる。これによって、樹脂組成物に含まれる異物および/またはAB剤の凝集体を、樹脂組成物から除去し得る。
【0089】
フィルターは、任意の適切な構成を採用し得る。フィルターとして、例えば、スクリーンメッシュ、ディスクフィルターが挙げられ、好ましくはスクリーンメッシュが挙げられる。
スクリーンメッシュの目開きは、例えば0.080mm以下、好ましくは0.070mm以下、より好ましくは0.055mm以下である。スクリーンメッシュがこのような目開きを有していると、製膜される基材フィルムに、最大フェレ径が30μm以上の異物および/またはAB剤の凝集体が混入することを抑制し得る。そのため、基材フィルムにおける欠点(具体的には異物および/またはAB剤の凝集体)を低減し得、基材フィルムのD30/10cm2を上記した範囲に安定して調整し得る。
一方、スクリーンメッシュの目開きは、例えば0.025mm以上、好ましくは0.035mm以上である。スクリーンメッシュがこのような目開きを有していると、樹脂組成物が円滑にスクリーンメッシュを通過し得る。そのため、樹脂組成物の滞留を抑制し得、樹脂組成物が過剰に加熱されることを抑制し得る。これによって、樹脂材料の熱架橋によるゲル状物の発生が抑制され得る。その結果、基材フィルムにおける欠点(具体的にはゲル状物)を低減し得、基材フィルムのD30/10cm2を上記した範囲により一層安定して調整し得る。
【0090】
押出成形工程では、フィルター通過後の溶融樹脂を、代表的にはダイを用いてフィルム形状に押出成形する。これによって、基材フィルム1が調製される。上記した調製工程、フィルター通過工程および押出成形工程は、任意の適切なフィルム製膜装置によって実施され得る。
【0091】
次いで、粘着剤層形成工程では、得られた基材フィルム1上に粘着剤層2を形成する。粘着剤層の形成方法としては、任意の適切な手段を採用し得る。基材フィルム1上に粘着剤層2を形成するには、例えば、基材フィルム1に上記した粘着剤を直接塗布してもよく、別の基材上に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、それを基材フィルム1に転写してもよい。
【0092】
積層フィルムの製造方法は、上記した調製工程と、上記した製膜工程と、上記した粘着剤層形成工程とに加えて、はく離ライナー貼付工程と、巻取工程と、を含んでいてもよい。
【0093】
はく離ライナー貼付工程では、任意の適切な手段により、粘着剤層2における基材フィルム1と反対側の表面に、はく離ライナー3を貼り付ける。その後、巻取工程では、巻取部材が、はく離ライナー3が貼り付けられた積層フィルム100をロール状に巻き取る。巻取部材は、代表的には、円柱形状を有しており、軸線を中心として回転可能である。
上記した積層フィルム100は、優れたアンチブロッキング性を有しているので、積層フィルム100をロール状に巻き取って、基材フィルム1とはく離ライナー3とが接触しても、それらが貼り付くことを十分に抑制し得る。
【0094】
以上によって、積層フィルム100が製造される。
【0095】
F.積層フィルムの用途
上記A項~E項に記載の積層フィルムは、各種被着体の表面に貼り付けられて用いられる。1つの実施形態では、積層フィルム100は、はく離ライナー3を粘着剤層2からはく離した後に、粘着剤層2により、被着体の表面に貼り付けられる。
被着体として、例えば、光学部材、電子部材が挙げられ、好ましくは、光学部材が挙げられる。光学部材として、代表的には、偏光板、位相差フィルム、偏光板および/または位相差フィルムを含む光学積層体、ディスプレイ、撮像装置、レンズ、(ハーフ)ミラーが挙げられる。
【0096】
1つの実施形態において、積層フィルム100は、粘着剤層付きフィルムであり、表面保護フィルムとして好適に用いられ得る。この場合、積層フィルム100は、被着体の表面に貼り付けられ、被着体の検査時、加工時および/または輸送時などにおいて、被着体の表面を保護し得る。
【0097】
図2は、
図1の積層フィルムを含む積層フィルム付光学部材の概略断面図である。図示例の積層フィルム付光学部材200は、被着体としての光学部材5と、表面保護フィルムとしての積層フィルム100と、を備えている。積層フィルム100は、粘着剤層2によって、光学部材5の表面に貼り付けられている。
【0098】
1つの実施形態において、積層フィルム付光学部材200が備える光学部材5は、偏光板である。偏光板の厚みは、例えば5μm~200μmである。
積層フィルム100が備える基材フィルム1の厚みは、被着体(光学部材)の厚みに対して、例えば0.1~1.05であり、好ましくは0.15~1.0である。基材フィルムと被着体との厚み比がこのような範囲であれば、積層フィルムを被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、被着体(光学部材)をより一層精度よく検査し得る。
【0099】
このような積層フィルム付光学部材200は、代表的には、光学検査に供される。
光学検査としては、特に制限されず、例えば自動光学検査(AOI)が挙げられる。自動光学検査として、例えば、光学部材に含まれる異物を検査する異物検査、光学部材に含まれる気泡を検査する気泡検査が挙げられる。このような光学検査において、積層フィルム(代表的にはAB剤)に起因する誤検出が十分に抑制されているので、積層フィルムが光学部材に貼り付けられた状態でも、光学部材を精度よく検査し得る。
【0100】
その後、積層フィルム100は、所望のタイミングで、光学部材5の表面からはく離されて除去され得る。
【実施例0101】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0102】
(1)基材フィルムの欠点数測定
実施例および比較例で用いられる基材フィルムを、光学顕微鏡を用いて、単位面積10cm2における、最大フェレ径が30μm以上の欠点数を測定した。その結果を表1に示す。
【0103】
(2)基材フィルムの虹ムラ
実施例および比較例で用いられる基材フィルムを、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置した。その際、基材フィルムの長さ方向と一方の偏光板の透過軸方向とが平行となるように、基材フィルムを配置した。その状態で下側偏光板の下側から蛍光灯の光を照射し、虹ムラの有無を目視により観察した。その結果を表1に示す。
【0104】
(3)自動異物検査
実施例および比較例で得られた積層フィルムを、特開2021-135219号公報に記載の手法に基づいて、積層フィルムにおける10cm×10cmの範囲に含まれる異物の個数をカウントした。
次いで、自動異物検査の結果を下記の基準で評価した、その結果を表1に示す。
〇 :30μm以上の異物個数が5個/10cm2以下
× :30μm以上の異物個数が6個~10個/10cm2以上
××:30μm以上の異物個数が11個/10cm2以上
【0105】
(4)滑り性(アンチブロッキング性)
実施例および比較例で得られた積層フィルムを、基材フィルム同士を擦り合わせて、滑り性(アンチブロッキング性)を下記の基準で評価した、その結果を表1に示す。
◎ :基材フィルム同士がくっつかず良く滑る
〇 :基材フィルム同士のくっつきはないが、◎に比べてやや滑る程度
× :基材フィルム同士がくっついて滑らない
【0106】
<<調製例1:粘着剤組成物>>
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10質量部と、アクリル酸(AA)0.02質量部と、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部とを、酢酸エチル157質量部とともに仕込み、23℃で緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換を行った。その後、液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、(メタ)アクリルポリマーAの溶液(濃度40質量%)を調製した。アクリルポリマーAの重量平均分子量は54万であった。
【0107】
アクリルポリマーAの溶液に酢酸エチルを加えて濃度20質量%に希釈した。この溶液500質量部(固形分100質量部)に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製「コロネートHX」)1.5質量部と、架橋触媒としてのジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)とを加えて攪拌し、粘着剤組成物を調製した。
【0108】
<<調製例2:PC系樹脂フィルム>>
イソソルビド(ISB)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)175.1質量部、および、触媒としての炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、PC系樹脂のペレットを得た。
【0109】
[実施例1、比較例2および3]
調製例2で得られたPC系樹脂のペレットを、100℃で12時間真空乾燥をした。その後、PC系樹脂のペレットと、AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、一次粒子径:0.5μm、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)とを、フィルム製膜装置に供給した。ペレットおよびAB剤の総量に対するAB剤の添加割合、および、AB剤の一次粒子径を表1に示す。
フィルム製膜装置は、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)と、目開きが0.045mmのスクリーンメッシュと、Tダイ(幅1700mm、設定温度:250℃)と、キャストロール(設定温度:60℃)と、巻取機とを備えていた。
より詳しくは、ペレットおよびAB剤は、単軸押出機に供給されて加熱された。これによって、ペレットが溶融して、溶融状態のPC系樹脂とAB剤とが混錬され、樹脂組成物が調製された。その後、樹脂組成物は、単軸押出機から押し出されて、スクリーンメッシュおよびTダイを順に通過した。これによって、厚み40μmのPC系樹脂フィルムが製膜された。PC系樹脂フィルムは、キャストロールを通過した後に、巻取機によって巻き取られた。
次いで、調製例1の粘着剤組成物を、はく離ライナー(片面にシリコーン離型処理された厚み25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面に塗布し、130℃で20秒間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、片面をコロナ処理したPC系樹脂フィルムのコロナ処理面に貼り合わせ、積層フィルムを得た。
【0110】
[実施例2]
AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、平均一次粒子径:0.5μm、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)を、AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、平均一次粒子径:1.0μm、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0111】
[実施例3]
調製例2で得られたPC系樹脂のペレットを、COP系樹脂のペレットに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0112】
[比較例1]
AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、平均一次粒子径:0.5μm、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)を、AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、平均一次粒子径:1.5μm、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0113】
【0114】
[評価]
表1から明らかなように、基材フィルムにおけるAB剤の含有割合が350ppm以上であると、積層フィルムが優れたアンチブロッキング性を有することがわかる。また、基材フィルムにおけるAB剤の含有割合が3000ppm以下であり、かつ、AB剤の平均一次粒子径が1.3μm以下であると、積層フィルムを被着体に貼り付けた状態で光学検査に供しても、AB剤に起因する誤検出を抑制して被着体を精度よく検査し得ることがわかる。