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特開2024-145565樹脂フィルム、位相差フィルムおよび樹脂フィルムの製造方法
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  • 特開-樹脂フィルム、位相差フィルムおよび樹脂フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145565
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、位相差フィルムおよび樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241004BHJP
   B65H 18/08 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20241004BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20241004BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/30
B65H18/08
B29C48/305
B29C48/69
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057972
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
【テーマコード(参考)】
2H149
3F055
4F071
4F207
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB02
2H149AB17
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB24
2H149FA13Y
2H149FB05
2H149FD04
2H149FD25
2H149FD31
2H149FD35
2H149FD48
3F055AA05
3F055FA17
4F071AA50
4F071AB26
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE11
4F071AE22
4F071AF31
4F071AF53
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F207AA28
4F207AB07
4F207AG01
4F207AH73
4F207AR12
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK64
4F207KL40
4F207KL84
4F207KM13
4F207KM20
(57)【要約】
【課題】優れたアンチブロッキング性を有し、かつ、延伸により面内複屈折を十分に発現し得る樹脂フィルム、位相差フィルム、および、樹脂フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による樹脂フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、該樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含んでいる。該アンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。該樹脂材料と該アンチブロッキング剤との屈折率差の絶対値は、0.10以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスとしての樹脂材料と、
前記樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含み、
前記アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmであり、
前記アンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである、樹脂フィルム。
【請求項2】
25℃における押込弾性率が2.0N~6.5Nである、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
動摩擦係数が1.0以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
マトリックスとしての樹脂材料と、
前記樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含み、
前記アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmであり、
前記アンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmであり、
面内複屈折Δn(550)は、0.0045以上である、位相差フィルム。
【請求項6】
溶融状態の樹脂材料とアンチブロッキング剤とを混合して樹脂組成物を調製する工程と、
前記樹脂組成物をフィルターに通過させる工程と、
フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形する工程と、を含み、
前記アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmであり、
前記樹脂組成物におけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルターは、スクリーンメッシュであり、
前記スクリーンメッシュの目開きは、0.035mm~0.070mmである、請求項6に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
巻取部材が、前記樹脂フィルムを巻き取る工程を、さらに含む請求項6または7に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、位相差フィルムおよび樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、各種産業製品に幅広く利用されている。例えば、樹脂フィルムを所定方向に延伸して、位相差フィルムを製造することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような樹脂フィルムは、一般的に、樹脂フィルムの表面にはく離ライナーを貼り付けた状態で、ロール状に巻き取って回収される。しかし、はく離ライナーを貼り付けた樹脂フィルムをロール状に巻き取ると、はく離ライナーの凹凸が樹脂フィルムに転写されて、樹脂フィルムに打痕が形成される場合がある。
【0004】
そのため、はく離ライナーを貼り付けることなく、樹脂フィルムを巻き取ることが検討されている。しかし、はく離ライナーなしで樹脂フィルムをロール状に巻き取ると、樹脂フィルム同士が互いに貼り付くブロッキングが生じるおそれがある。この点、樹脂フィルムにアンチブロッキング剤(以下、AB剤とする。)を含有させることで、樹脂フィルムにアンチブロッキング性を付与し得る反面、当該樹脂フィルムを延伸したときに面内複屈折を十分に発現できなくなる場合がある。そのため、樹脂フィルムにおいて、優れたアンチブロッキング性と、延伸による面内複屈折の発現性との両立が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7096940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れたアンチブロッキング性を有し、かつ、延伸により面内複屈折を十分に発現し得る樹脂フィルム、位相差フィルム、および、樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]1つの実施形態による樹脂フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、該樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmである。該樹脂フィルムにおいて、該アンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。
[2]上記[1]に記載の樹脂フィルムにおいて、25℃における押込弾性率は、2.0N~6.5Nであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の樹脂フィルムにおいて、動摩擦係数は、1.0以下であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂フィルムにおいて、上記樹脂材料は、ポリカーボネート系樹脂を含んでいてもよい。
[5]本発明の別の局面における位相差フィルムは、マトリックスとしての樹脂材料と、該樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤と、を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmである。該アンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。位相差フィルムにおいて、面内複屈折Δn(550)は、0.0045以上である。
[6]本発明のさらに別の局面における樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態の樹脂材料とアンチブロッキング剤とを混合して樹脂組成物を調製する工程と;該樹脂組成物をフィルターに通過させる工程と;フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形する工程と;を含んでいる。該アンチブロッキング剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmである。該樹脂組成物におけるアンチブロッキング剤の含有割合は、350ppm~3000ppmである。
[7]上記[6]に記載の樹脂フィルムの製造方法において、上記フィルターは、スクリーンメッシュであってもよい。該スクリーンメッシュの目開きは、0.035mm~0.070mmであってもよい。
[8]上記[6]または[7]に記載の樹脂フィルムの製造方法は、巻取部材が上記樹脂フィルムを巻き取る工程を、さらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、優れたアンチブロッキング性を有し、かつ、延伸により面内複屈折を十分に発現可能な樹脂フィルムを実現し得る。また、優れたアンチブロッキング性を有し、かつ、十分な面内複屈折を有する位相差フィルムを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による樹脂フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内複屈折(Δn)
「Δn(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内複屈折である。例えば、「Δn(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内複屈折である。面内複屈折(Δn)は、式:Δn=nx-nyから求められる。
(3)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(4)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
【0012】
A.樹脂フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による樹脂フィルムの概略断面図である。
図示例の樹脂フィルム1は、マトリックスとしての樹脂材料と、樹脂材料に分散したアンチブロッキング剤(以下、AB剤とする。)と、を含んでいる。AB剤の平均一次粒子径は、0.1μm~1.3μmである。樹脂フィルム1におけるAB剤の含有割合(質量基準)は、350ppm~3000ppmである。
AB剤の平均一次粒子径および含有割合がこのような範囲であると、樹脂フィルムに優れたアンチブロッキング性を付与し得、かつ、延伸により面内複屈折を十分に発現可能な樹脂フィルムを実現し得る。
【0013】
AB剤の平均一次粒子径は、好ましくは0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは0.5μm~1.0μmである。なお、AB剤の平均一次粒子径は、レーザー回折法によって測定し得る。
AB剤の平均一次粒子径がこのような範囲であると、樹脂フィルムを延伸したときに優れた面内複屈折を安定して発現し得る。
【0014】
樹脂フィルム1におけるAB剤の含有割合(質量基準)は、好ましくは500ppm~3000ppmであり、より好ましくは500ppm~2000ppmであり、さらに好ましくは500ppm~1500ppmである。
AB剤の含有割合がこのような範囲であると、樹脂フィルムにアンチブロッキング性を十分に付与し得、かつ、樹脂フィルムを延伸したときに優れた面内複屈折をより安定して発現し得る。
【0015】
樹脂材料とAB剤との屈折率差の絶対値は、例えば0.10以下、好ましくは0.08以下である。樹脂材料とAB剤との屈折率差の絶対値の下限は、代表的には0である。
樹脂材料とAB剤との屈折率差の絶対値がこのような範囲であると、樹脂フィルムを延伸して製造し得る位相差フィルムにおいて、AB剤に起因する光拡散を抑制し得る。そのため、位相差フィルムにおいて、光の透過率を向上し得、かつ、ヘイズを低減し得る。
【0016】
1つの実施形態において、AB剤の屈折率は、樹脂材料の屈折率以下である。AB剤の屈折率が樹脂材料の屈折率以下であって、樹脂材料とAB剤との屈折率差が上記範囲であると、位相差フィルムにおいて、光の透過率をより一層向上し得、かつ、ヘイズをより一層低減し得る。
【0017】
AB剤の屈折率は、例えば1.35以上、好ましくは1.40以上である。一方、AB剤の屈折率は、例えば1.65以下、好ましくは1.60以下、より好ましくは1.55以下、さらに好ましくは1.50以下である。なお、AB剤の屈折率は、25℃において、波長590nmの光を用いて測定し得、例えば、JIS K7142に準拠して測定される。
樹脂材料の屈折率は、例えば1.40以上、好ましくは1.45以上、より好ましくは1.48以上である。一方、樹脂材料の屈折率は、例えば1.70以下、好ましくは1.65以下、より好ましくは1.60以下である。なお、樹脂材料の屈折率は、25℃において、波長590nmの光を用いて測定し得、例えば、JIS K7142に準拠して測定される。
【0018】
樹脂フィルム1における動摩擦係数は、例えば1.2以下、好ましくは1.0以下である。一方、樹脂フィルム1における動摩擦係数の下限は、代表的には0.2である。なお、樹脂フィルムの動摩擦係数は、JIS K7125によって測定し得る。
樹脂フィルムにおける動摩擦係数がこのような範囲であれば、樹脂フィルムに優れたアンチブロッキング性を安定して付与し得る。
【0019】
樹脂フィルム1は、上記のように、優れたアンチブロッキング性を有している。そのため、樹脂フィルム1は、代表的には、はく離ライナーなしでロール状に巻き取り可能である。これによって、樹脂フィルムをロール状に巻き取っても、樹脂フィルムに打痕が形成されることを抑制し得る。
【0020】
樹脂フィルム1の25℃における押込弾性率は、例えば2.0N~6.5Nであり、または例えば2.5N~6.0Nである。樹脂フィルムの押込弾性率は、ナノインデンテーション法によって測定し得る。
押込弾性率がこのような範囲の樹脂フィルムであっても、はく離ライナーなしで巻き取ることにより、樹脂フィルムに打痕が形成されることを十分に抑制し得る。
【0021】
B.樹脂フィルムの詳細
樹脂フィルム1は、延伸前において、代表的には光学的に等方性を有する。本明細書において、「光学的に等方性」とは、面内位相差Re(550)およびの厚み方向の位相差Rth(550)が下記の範囲であることを意味する。
樹脂フィルム1の面内位相差Re(550)は、例えば10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。一方、樹脂フィルム1の面内位相差Re(550)の下限は、代表的には0nmである。
樹脂フィルム1の厚み方向の位相差Rth(550)は、例えば-10nm~+10nmであり、好ましくは-5nm~+5nmである。
【0022】
樹脂フィルム1の厚みは、例えば30μm以上、好ましくは40μm以上である。一方、樹脂フィルム1の厚みは、例えば130μm以下、好ましくは120μm以下である。樹脂フィルムの厚みがこのような範囲であれば、樹脂フィルムの延伸により所望の厚みを有する位相差フィルムを安定して製造し得る。
【0023】
B-1.樹脂材料
樹脂フィルム1は、樹脂材料を主成分として含んでいる。当該樹脂材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系;ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系;トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)系;(メタ)アクリル系;ポリビニルアルコール系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリエーテルスルホン系;ポリスルホン系;ポリスチレン系;ポリオレフィン系;アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーも使用できる。このポリマーの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0024】
1つの実施形態において、樹脂フィルム1の樹脂材料は、非晶質である。樹脂フィルムが非晶質の樹脂材料から構成されていると、樹脂フィルムから製造される位相差フィルムに優れた透明性を付与し得る。
【0025】
これら樹脂材料のなかでは、好ましくは、PC系樹脂およびCOP系樹脂が挙げられ、より好ましくは、PC系樹脂が挙げられる。
【0026】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、下記構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を少なくとも含み、分子内に少なくとも一つの結合構造-CH-O-を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、重合触媒の存在下反応させることにより製造される。言い換えれば、PC系樹脂は、ジヒドロキシ化合物由来の構造単位と、炭酸ジエステル由来のカーボネート基と、を含んでいる。
【化1】
【0027】
ここで、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物としては、2個のアルコール性水酸基をもち、分子内に連結基-CH-O-を有する構造を含み、重合触媒の存在下、炭酸ジエステルと反応してポリカーボネートを生成し得る化合物であれば如何なる構造の化合物であっても使用することが可能であり、複数種併用しても構わない。
【0028】
また、PC系樹脂に用いるジヒドロキシ化合物として、上記構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物を併用しても構わない。以下、構造式(1)で表される結合構造を有するジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)、構造式(1)で表される結合構造を有さないジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(B)と略記する場合がある。
【0029】
(ジヒドロキシ化合物(A))
ジヒドロキシ化合物(A)における「連結基-CH-O-」とは、水素原子以外の原子と互いに結合して分子を構成する構造を意味する。この連結基において、少なくとも酸素原子が結合し得る原子または炭素原子と酸素原子とが同時に結合し得る原子としては、炭素原子が好ましい。ジヒドロキシ化合物(A)中の「連結基-CH-O-」の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2~4である。
【0030】
ジヒドロキシ化合物(A)として、具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンで例示されるような、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ジフェニルメタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-フェニルエタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,4-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]プロパン、2,2-ビス[(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-tert-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-4-メチルペンタン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]オクタン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]デカン、2,2-ビス[3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)アルカン類;1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロペンタンで例示されるような、ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)シクロアルカン類;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テルで例示されるような、ジヒドロキシアルコキシジアリールエーテル類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルフィド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルフィドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルフィド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホキシド、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホキシドで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホキシド類;4,4’-ビス(2-ヒドロキエトキシフェニル)スルホン、4,4’-ビス[4-(2-ジヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]スルホンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシアリールスルホン類;1,4-ビスヒドロキシエトキシベンゼンで例示されるような、ビスヒドロキシアルコキシベンゼン類;1,3-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;1,4-ビス[2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロピル]ベンゼン;4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル;1,3-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-5,7-ジメチルアダマンタン;下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物で例示されるような、無水糖アルコール;および、下記一般式(3)で表されるスピログリコールで例示されるような、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(A)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
これらジヒドロキシ化合物(A)のなかでは、好ましくは、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ジヒドロキシ化合物(A)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手および製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0034】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば10モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位の割合は、例えば100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。ジヒドロキシ化合物(A)の割合が上記の範囲であると、樹脂フィルムから製造し得る位相差フィルムに所望の屈折率特性を付与し得る。
【0035】
(ジヒドロキシ化合物(B))
PC系樹脂の構造単位となるジヒドロキシ化合物として、ジヒドロキシ化合物(A)とともに、ジヒドロキシ化合物(B)を用いることができる。ジヒドロキシ化合物(A)および(B)を併用すると、樹脂フィルムから製造し得る位相差フィルムに所望の屈折率特性を安定して付与し得る。
【0036】
ジヒドロキシ化合物(B)は、代表的には、ジヒドロキシ化合物(A)以外のジヒドロキシ化合物である。ジヒドロキシ化合物(B)として、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂肪族ジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族ジヒドロキシ化合物、環状エーテル構造を有するジオール類が挙げられる。ジヒドロキシ化合物(B)は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
ジヒドロキシ化合物(B)のなかでは、好ましくは、脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0037】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、好ましくは、通常5員環構造または6員環構造を含む化合物が挙げられる。また、6員環構造は、共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環または6員環構造であることにより、得られるPC系樹脂の耐熱性の向上を図り得る。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は、例えば70以下、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。
【0038】
5員環構造または6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物として、具体的には、下記一般式(I)または(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
HOCH-R-CHOH (I)
HO-R-OH (II)
(式(I)、(II)中、RおよびRのそれぞれは、炭素数4~20のシクロアルキレン基を示す。)
【0039】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ia)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0040】
【化4】
【0041】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジメタノール、または、ペンタシクロペンタデカンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ib)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0042】
【化5】
【0043】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジメタノール、または、トリシクロテトラデカンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ic)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノールが挙げられる。
【0044】
【化6】
【0045】
上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Id)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールが挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジメタノールは、一般式(I)において、Rが下記一般式(Ie)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,3-アダマンタンジメタノールが挙げられる。
【0048】
【化8】
【0049】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIa)(式中、Rは炭素数1~12のアルキル基または水素原子を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0050】
【化9】
【0051】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるトリシクロデカンジオール、または、ペンタシクロペンタデカンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIb)(式中、nは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。
【0052】
【化10】
【0053】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるデカリンジオール、または、トリシクロテトラデカンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIc)(式中、mは0または1を示す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6-デカリンジオール、1,5-デカリンジオール、2,3-デカリンジオールが挙げられる。
【0054】
【化11】
【0055】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるノルボルナンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IId)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,3-ノルボルナンジオール、2,5-ノルボルナンジオールが挙げられる。
【0056】
【化12】
【0057】
上記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるアダマンタンジオールは、一般式(II)において、Rが下記一般式(IIe)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとして、具体的には、1,3-アダマンタンジオールが挙げられる。
【0058】
【化13】
【0059】
上記した脂環式ジヒドロキシ化合物の具体例のなかでは、好ましくは、シクロヘキサンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール類、アダマンタンジオール類、ペンタシクロペンタデカンジメタノール類が挙げられ、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが挙げられ、さらに好ましくは、トリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
【0060】
PC系樹脂が含む全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対して、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。一方、ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位の割合は、例えば90モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下である。
【0061】
これらPC系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報(特許第5448264号)に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0062】
1つの実施形態において、PC系樹脂は、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位と、それらを連結するカーボネート基と、を含んでいる。これら構造単位を含むPC系樹脂を樹脂フィルムに適用すると、樹脂フィルムを延伸したときに、優れた面内複屈折を安定して発現し得る。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)由来の構造単位と、上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)由来の構造単位とのモル比(A:B)は、例えば5:5~9:1であり、好ましくは6:4~8:2である。
このようなPC系樹脂において、上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物(A)と上記一般式(I)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物(B)との組み合わせは、好ましくは、イソソルビドとトリシクロデカンジメタノールと組み合わせである。
【0063】
B-2.アンチブロッキング剤
樹脂フィルム1は、樹脂材料に加えて、AB剤を含んでいる。AB剤は、代表的には、粒子状を有しており、複数のAB剤の粒子が互いに凝集した凝集体として、樹脂材料に分散している。
【0064】
AB剤は、好ましくは透明性を有する。AB剤を構成する材料として、例えば、金属酸化物、樹脂、ガラスが挙げられる。金属酸化物として、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウムが挙げられる。樹脂として、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート、シリコーンが挙げられる。ガラスとして、例えばフッ化マグネシウムが挙げられる。
AB剤の表面には、任意の適切な表面修飾が施されていてもよい。表面修飾として、例えば化学修飾が挙げられ、好ましくはアルキル基修飾が挙げられる。
AB剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用し得る。
このようなAB剤のなかでは、好ましくは金属酸化物が挙げられ、より好ましくはシリカが挙げられ、さらに好ましくはアルキル基修飾シリカが挙げられ、とりわけ好ましくはメチル修飾シリカが挙げられる。
【0065】
樹脂フィルム1は、上記した樹脂材料およびAB剤に加えて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、充填剤、顔料、界面活性剤、帯電防止剤が挙げられる。樹脂フィルム1の表面(粘着剤層2と反対側の表面)には、任意の適切な表面処理層が設けられていてもよい。表面処理層として、例えば、易接着層、易滑層、帯電防止層、反射防止層、オリゴマー防止層が挙げられる。
【0066】
C.樹脂フィルムの製造方法
上記した樹脂フィルム1は、任意の適切な方法により製造し得る。1つの実施形態において、樹脂フィルムの製造方法は、樹脂組成物を調製する工程(調製工程)と;樹脂組成物をフィルターに通過させる工程(フィルター通過工程)と;フィルター通過後の樹脂組成物を押出成形する工程(押出成形工程)と;を含んでいる。
【0067】
調製工程では、代表的に、上記した樹脂材料を溶融した後に、溶融状態の樹脂材料と上記したAB剤とを混合して樹脂組成物を調製する。
【0068】
溶融前の樹脂材料は、任意の適切な形状を有し得る。1つの実施形態において、樹脂材料は、事前にペレット化される。樹脂材料のペレット化方法は、特に制限されず、ストランドカット方式であってもよく、ホットカット方式であってもよい。ペレット準備工程の詳細は、例えば、特開2013-181105号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0069】
次いで、樹脂材料(代表的にはペレット)を加熱して溶融する。加熱温度は、樹脂材料に応じた任意の適切な値を採用し得る。また、溶融状態の樹脂材料とAB剤とを、混合する。これによって、溶融状態の樹脂組成物が調製される。樹脂組成物におけるAB剤の含有割合の範囲は、例えば、上記した樹脂フィルム1におけるAB剤の含有割合の範囲と同様である。
【0070】
フィルター通過工程では、溶融状態の樹脂組成物をフィルターに通過させる。これによって、樹脂組成物に含まれる異物および/またはAB剤の凝集体を、樹脂組成物から除去し得る。
【0071】
フィルターは、任意の適切な構成を採用し得る。フィルターとして、例えば、スクリーンメッシュ、ディスクフィルターが挙げられ、好ましくはスクリーンメッシュが挙げられる。
スクリーンメッシュの目開きは、例えば0.080mm以下、好ましくは0.070mm以下、より好ましくは0.055mm以下である。スクリーンメッシュがこのような目開きを有していると、製膜される樹脂フィルムに、過大な異物および/またはAB剤の凝集体が混入することを抑制し得る。
一方、スクリーンメッシュの目開きは、例えば0.025mm以上、好ましくは0.035mm以上である。スクリーンメッシュがこのような目開きを有していると、樹脂組成物が円滑にスクリーンメッシュを通過し得る。そのため、樹脂組成物の滞留を抑制し得、樹脂組成物が過剰に加熱されることを抑制し得る。これによって、樹脂材料の熱架橋によるゲル状物の発生が抑制され得る。
【0072】
押出成形工程では、フィルター通過後の溶融樹脂を、代表的にはダイを用いてフィルム形状に押出成形する。これによって、樹脂フィルム1が調製される。上記した調製工程、フィルター通過工程および押出成形工程は、任意の適切なフィルム製膜装置によって実施され得る。
【0073】
樹脂フィルム1の製造方法は、上記した調製工程と、上記した製膜工程とに加えて、巻取部材が樹脂フィルムを巻き取る工程(巻取工程)を含んでいてもよい。巻取工程では、巻取部材が、樹脂フィルム1をロール状に巻き取る。巻取部材は、代表的には、円柱形状を有しており、軸線を中心として回転可能である。樹脂フィルム1は、優れたアンチブロッキング性を有しているので、樹脂フィルム1をロール状に巻き取っても、樹脂フィルム1同士が互いに貼り付くことを十分に抑制し得る。
以上によって、樹脂フィルム1が製造される。
【0074】
D.位相差フィルム
上記した樹脂フィルム1は、任意の適切な用途に適用し得る。樹脂フィルム1は、延伸による面内複屈折の発現性に優れているので、位相差フィルムの製造に好適に採用され得る。具体的には、樹脂フィルムを延伸することにより、面内複屈折を十分に発現させることができ、位相差フィルムを製造し得る。
延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)および延伸方法(例えば、縦一軸延伸)は、ポリマーの種類および所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、厚み方向の位相差)に応じて任意かつ適切に調整し得る。
【0075】
このような位相差フィルムは、上記した樹脂材料と、上記したAB剤と、を含んでいる。位相差フィルムにおけるAB剤の含有割合の範囲は、例えば、上記した樹脂フィルム1におけるAB剤の含有割合の範囲と同様である。
そのため、位相差フィルムは、優れたアンチブロッキング性を有している。よって、位相差フィルムは、代表的には、はく離ライナーなしでロール状に巻き取り可能である。
【0076】
また、位相差フィルムは、十分な面内複屈折が発現されている。言い換えれば、位相差フィルムの屈折率は、nx>nyの関係を示す。
位相差フィルムの面内複屈折Δn(550)は、例えば0.0042以上、好ましくは0.0045以上、より好ましくは0.0048以上である。一方、位相差フィルムのΔn(550)の上限は、代表的には0.0050である。
【0077】
位相差フィルムは、面内複屈折が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、面内複屈折が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、面内複屈折が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態では、位相差フィルムは、フラットな波長分散特性を示している。
【0078】
位相差フィルムの厚みは、用途に応じた面内位相差となるように、任意かつ適切に調整され得る。位相差フィルムの厚みは、例えば1μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは10μm以上である。一方、位相差フィルムの厚みは、例えば200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
【0079】
位相差フィルムにおける全光線透過率は、例えば80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。位相差フィルムにおける全光線透過率の上限は、代表的には100%である。なお、位相差フィルムの全光線透過率は、JIS R3106-2019に準じて測定し得る。
位相差フィルムにおけるヘイズ値は、例えば2.0%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。位相差フィルムにおけるヘイズ値の下限は、代表的には0%である。なお、樹脂フィルムのヘイズ値は、JIS K7136に準じて測定し得る。
【0080】
位相差フィルムの光弾性係数の絶対値は、例えば20×10-12(m/N)以下、好ましくは1.0×10-12(m/N)~15×10-12(m/N)であり、より好ましくは2.0×10-12(m/N)~12×10-12(m/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、位相差フィルムを画像表示装置に適用した場合に表示ムラを抑制し得る。
【実施例0081】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0082】
(1)滑り性(アンチブロッキング性)
実施例および比較例で得られた樹脂フィルムを、基材フィルム同士を擦り合わせて、滑り性(アンチブロッキング性)を下記の基準で評価した、その結果を表1に示す。
なお、滑り性が十分であると、樹脂フィルムのみをロール状に巻き取っても樹脂フィルム同士のブロッキングを十分に抑制し得る。
◎ :基材フィルム同士がくっつかず良く滑る
〇 :基材フィルム同士のくっつきはないが、◎に比べてやや滑る程度
× :基材フィルム同士がくっついて滑らない
【0083】
(2)面内複屈折Δn
実施例および比較例で得られた樹脂フィルムを、延伸温度135℃、延伸速度1%/秒の条件で、1.6倍に横延伸した。これによって、厚み25μmの位相差フィルムを調製した。
次いで、位相差フィルムの面内複屈折を、Axoscan(Axometrics社製)を用いて自動計測した。測定波長は、550nmであり、測定温度は23℃であった。その結果を表1に示す。
【0084】
<<調製例1:PC系樹脂フィルム>>
イソソルビド(ISB)81.98質量部に対して、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)47.19質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)175.1質量部、および、触媒としての炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、PC系樹脂のペレットを得た。
【0085】
[実施例1および比較例1]
調製例1で得られたPC系樹脂のペレットを、100℃で12時間真空乾燥をした。その後、PC系樹脂のペレットと、AB剤(シリカにメチル修飾を施した微粒子、平均一次粒子径:0.5μm、屈折率:1.43、日本触媒社製、商品名:シーホスターKE)とを、フィルム製膜装置に供給した。ペレットおよびAB剤の総量に対するAB剤の添加割合、および、AB剤の平均一次粒子径を表1に示す。
フィルム製膜装置は、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)と、目開きが0.045mmのスクリーンメッシュと、Tダイ(幅1700mm、設定温度:250℃)と、キャストロール(設定温度:60℃)と、巻取部材とを備えていた。
より詳しくは、ペレットおよびAB剤は、単軸押出機に供給されて加熱された。これによって、ペレットが溶融して、溶融状態のPC系樹脂とAB剤とが混錬され、樹脂組成物が調製された。その後、樹脂組成物は、単軸押出機から押し出されて、スクリーンメッシュおよびTダイを順に通過した。これによって、厚み40μmのPC系樹脂フィルムが製膜された。PC系樹脂フィルムは、キャストロールを通過した後に、巻取部材によって巻き取られた。
以上によって、PC系樹脂フィルム(樹脂フィルム)を得た。
【0086】
[実施例2]
AB剤(ポリマー粒子、平均一次粒子径:0.5μm、屈折率:1.5、積水化成社製、商品名:テクポリマー)を、AB剤(平均一次粒子径:1.0μm、屈折率:1.5、積水化成社製、商品名:テクポリマー)に変更したこと、および、ペレットおよびAB剤の総量に対するAB剤の添加割合を500ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPC系樹脂フィルム(樹脂フィルム)を得た。
【0087】
[比較例2]
AB剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてPC系樹脂フィルム(樹脂フィルム)を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
[評価]
表1から明らかなように、樹脂フィルムにおいて、AB剤の平均一次粒子径が0.1μm~1.3μmであり、かつ、AB剤の含有割合が350ppm~3000ppmであると、優れたアンチブロッキング性を樹脂フィルムに付与し得、かつ、樹脂フィルムを延伸することにより十分な面内複屈折を発現し得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂フィルムは、各種産業製品に適用し得、特に、位相差フィルムの製造に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0091】
1 樹脂フィルム
図1