(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145571
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057982
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
(72)【発明者】
【氏名】土居 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770FA01
5H770HA02W
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770LA01W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】電力変換装置に過電圧保護回路を設ける場合において、過電圧保護回路に流れる電流を検出することができるようにする。
【解決手段】コンデンサ4は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。インバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を変換して負荷100に交流電力を供給する。過電圧保護回路5は、インバータ回路6を過電圧から保護する。電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間で第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される第1直流母線(11)及び前記第1直流母線よりも低電位の第2直流母線(12)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続されているコンデンサ(4)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線に接続され、前記第1直流母線と前記第2直流母線に供給される直流電力を変換して負荷に交流電力を供給するインバータ回路(6)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続され、前記インバータ回路を過電圧から保護する過電圧保護回路(5)と、
前記コンデンサと前記過電圧保護回路の間で前記第1直流母線または前記第2直流母線に流れる直流母線電流を検出する電流検出手段(7)と
を備える、電力変換装置(1)。
【請求項2】
前記過電圧保護回路は、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に直列に接続されている半導体スイッチ(52)と抵抗(51)を含み、
前記コンデンサ、前記過電圧保護回路、並びに前記コンデンサと前記過電圧保護回路とを接続する前記第1直流母線の一部及び前記第2直流母線の一部により形成される第1閉回路(CL1)は、前記抵抗と前記半導体スイッチが直列に配置されている第1電流経路(CP1)を含み、前記半導体スイッチがオンしているときに前記第1電流経路に電流が流れる、
請求項1に記載の電力変換装置(1)。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記コンデンサと前記インバータ回路の間の前記第1直流母線または前記第2直流母線に流れる前記直流母線電流を検出するように配置されている、
請求項2に記載の電力変換装置(1)。
【請求項4】
前記電流検出手段は、前記コンデンサと前記過電圧保護回路を含む前記第1閉回路に流れる第1電流値、前記コンデンサと前記インバータ回路を含む第2閉回路に流れる第2電流値、または前記第1電流値と前記第2電流値の合計電流値を検出する、
請求項3に記載の電力変換装置(1)。
【請求項5】
前記過電圧保護回路は、前記インバータ回路が駆動されているときは、前記インバータ回路の出力の電圧ベクトルが変化しない期間に前記半導体スイッチをオンまたはオフし、
前記電流検出手段は、前記半導体スイッチがオンする前後、または前記半導体スイッチがオフする前後において前記直流母線電流を検出する、
請求項4に記載の電力変換装置(1)。
【請求項6】
前記過電圧保護回路は、前記インバータ回路が駆動されているときは、前記インバータ回路の零ベクトル期間に前記半導体スイッチをオンし、
前記電流検出手段は、前記零ベクトル期間に前記半導体スイッチがオンしているときに前記直流母線電流を検出する、
請求項4に記載の電力変換装置(1)。
【請求項7】
前記電流検出手段は、前記負荷が非駆動状態において前記半導体スイッチがオンしているときに前記直流母線電流を検出する、
請求項2に記載の電力変換装置(1)。
【請求項8】
前記コンデンサと前記第1直流母線および前記第2直流母線に電力を給電する直流給電回路(2)を備え、
前記電流検出手段は、前記第1閉回路に流れる第1電流値、前記コンデンサと前記直流給電回路を含む第3閉回路(CL3)に流れる第3電流値、または前記第1電流値と前記第3電流値の合計電流値を検出する、
請求項2に記載の電力変換装置(1)。
【請求項9】
前記電流検出手段は、前記半導体スイッチがオンする前後、または前記半導体スイッチがオフする前後において前記直流母線電流を検出する、
請求項8に記載の電力変換装置(1)。
【請求項10】
前記電流検出手段は、前記負荷が非駆動状態において前記半導体スイッチがオンしているときに前記直流母線電流を検出する、
請求項8に記載の電力変換装置(1)。
【請求項11】
前記電流検出手段が検出した前記直流母線電流に基づいて、前記過電圧保護回路の正常と異常の判定を行う制御部(20)を備える、
請求項4から10のいずれか一項に記載の電力変換装置(1)。
【請求項12】
前記半導体スイッチがオンしている期間に、前記電流検出手段で検出される前記直流母線電流の値を用いて前記インバータ回路の過電流保護を行わず、前記半導体スイッチがオフしている期間に前記電流検出手段で検出される前記直流母線電流の値を用いて当該過電流保護を行う過電流保護部(20)を備える、
請求項5または請求項6に記載の電力変換装置(1)。
【請求項13】
前記過電圧保護回路は、前記インバータ回路が前記負荷の駆動開始時毎に駆動開始前に前記半導体スイッチをオンにする、
請求項11に記載の電力変換装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2020-124104号公報)に記載されているように、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が、モータなどの負荷に接続されている場合、コンデンサを含む回路で生じる共振電圧またはサージなどの影響によって電力変換装置内の直流電圧が過剰に高くなる場合がある。そのような過電圧から電力変換装置を保護するために、特許文献1の電力変換装置では過電圧保護回路が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電力変換装置に過電圧保護回路が設けられた場合には、過電圧保護回路に流れる電流が負荷の制御または過電流保護に対して外乱となる場合がある。
【0004】
電力変換装置に過電圧保護回路を設ける場合には、過電圧保護回路に流れる電流を検出するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の電力変換装置は、第1直流母線、第2直流母線、コンデンサ、インバータ回路、過電圧保護回路及び電流検出手段を備える。第1直流母線及び第2直流母線には、直流電圧が印加される。第2直流母線は、第1直流母線よりも低電位である。コンデンサは、第1直流母線と第2直流母線の間に接続されている。インバータ回路は、第1直流母線と第2直流母線に接続され、第1直流母線と第2直流母線に供給される直流電力を変換して負荷に交流電力を供給する。過電圧保護回路は、第1直流母線と第2直流母線の間に接続され、インバータ回路を過電圧から保護する。電流検出手段は、コンデンサと過電圧保護回路の間で第1直流母線または第2直流母線に流れる直流母線電流を検出する。
【0006】
第1観点の電力変換装置は、第1直流母線または第2直流母線において、過電圧保護回路に流れる電流を、電流検出手段により検出することができる。
【0007】
第2観点の電力変換装置は、第1観点の電力変換装置であって、過電圧保護回路が、第1直流母線と第2直流母線の間に直列に接続されている半導体スイッチと抵抗を含む。コンデンサ、過電圧保護回路、並びにコンデンサと過電圧保護回路とを接続する第1直流母線の一部及び第2直流母線の一部により形成される第1閉回路は、抵抗と半導体スイッチが直列に配置されている第1電流経路を含む。第1閉回路は、半導体スイッチがオンしているときに第1電流経路に電流が流れる。
【0008】
第2観点の電力変換装置では、半導体スイッチがオンするときに、過電圧保護回路を流れる電流が電流検出手段に流れるので、電流検出手段で過電圧保護回路に流れる電流値を検出し易くなる。
【0009】
第3観点の電力変換装置は、第1観点または第2観点の電力変換装置であって、電流検出手段が、コンデンサとインバータ回路の間の第1直流母線または第2直流母線に流れる直流母線電流を検出するように配置されている。
【0010】
第3観点の電力変換装置では、電流検出手段が、コンデンサとインバータ回路の間で且つコンデンサと過電圧保護回路の間で、第1直流母線または第2直流母線に流れる直流母線電流を検出するように構成されている。その結果、電力変換装置の部品点数を減らすことができる。
【0011】
第4観点の電力変換装置は、第3観点の電力変換装置であって、電流検出手段が、コンデンサと過電圧保護回路を含む第1閉回路に流れる第1電流値、コンデンサとインバータ回路を含む第2閉回路に流れる第2電流値、または第1電流値と第2電流値の合計電流値を検出する。
【0012】
第4観点の電力変換装置では、第1電流値の検出と第2電流値の検出および第1電流値と第2電流値の合計電流値の検出を、電流検出手段が行うので、過電圧保護回路に流れる電流を精度良く検出できる。
【0013】
第5観点の電力変換装置は、第4観点の電力変換装置であって、過電圧保護回路は、インバータ回路が駆動されているときは、電圧ベクトルが変化しない期間に半導体スイッチをオンまたはオフし、電流検出手段は、半導体スイッチがオンする前後、または半導体スイッチがオフする前後において直流母線電流を検出する。
【0014】
第5観点の電力変換装置は、過電圧保護回路の半導体スイッチのオンまたはオフの前後において検出した直流母線電流の差分から、容易に第1電流値を検出できる。
【0015】
第6観点の電力変換装置は、第4観点の電力変換装置であって、過電圧保護回路は、インバータ回路が駆動されているときは、インバータ回路の零ベクトル期間に半導体スイッチをオンし、電流検出手段は、零ベクトル期間に半導体スイッチがオンしているときに直流母線電流を検出する。
【0016】
第6観点の電力変換装置では、零ベクトル期間においては、電流検出手段で直流母線電流から第1電流値を容易に検出できる。
【0017】
第7観点の電力変換装置は、第2観点の電力変換装置であって、電流検出手段は、負荷が非駆動状態において半導体スイッチがオンしているときに直流母線電流を検出する。
【0018】
第7観点の電力変換装置では、電流検出手段における第2電流値が零になるときに、電流検出手段において第1電流値を精度良く検出できる。
【0019】
第8観点の電力変換装置は、第2観点の電力変換装置であって、コンデンサと第1直流母線および第2直流母線に電力を給電する直流給電回路とを備える。電流検出手段は、第1閉回路に流れる第1電流値、コンデンサと直流給電回路を含む第3閉回路に流れる第3電流値、または第1電流値と第3電流値の合計電流値を検出する。
【0020】
第8観点の電力変換装置では、第1電流値を検出するための手段と第3電流値を検出するための手段を、電流検出手段が兼ねるので、電力変換装置の部品点数を減らすことができる。
【0021】
第9観点の電力変換装置は、第8観点の電力変換装置であって、電流検出手段が、半導体スイッチがオンする前後、または半導体スイッチがオフする前後において直流母線電流を検出する。
【0022】
第9観点の電力変換装置では、半導体スイッチのオンまたはオフの前後において検出した直流母線電流の差分から、容易に第1電流値を検出できる。
【0023】
第10観点の電力変換装置は、第8観点の電力変換装置であって、電流検出手段は、負荷が非駆動状態において半導体スイッチがオンしているときに直流母線電流を検出する。
【0024】
第10観点の電力変換装置では、第3電流値が略零になるときに、電流検出手段において第1電流値を精度良く検出できる。
【0025】
第11観点の電力変換装置は、第4観点から第10観点のいずれかの電力変換装置であって、電流検出手段が検出した直流母線電流に基づいて、過電圧保護回路の正常と異常の判定を行う制御部を備える。
【0026】
第11観点の電力変換装置では、過電圧保護回路の異常を直流母線電流から検出できる。
【0027】
第12観点の電力変換装置は、第5観点または第6観点のいずれかの電力変換装置であって、半導体スイッチがオンしている期間に、電流検出手段で検出される電流値を用いてインバータ回路の過電流保護を行わず、半導体スイッチがオフしている期間に電流検出手段で検出される電流値を用いて当該過電流保護を行う過電流保護部を備える。
【0028】
第12観点の電力変換装置では、電流検出手段を用いたインバータ回路の過電流保護が行える。
【0029】
第13観点の電力変換装置は、第7観点、第10観点または第11観点のいずれかの電力変換装置であって、過電圧保護回路は、インバータ回路が負荷の駆動開始時毎に駆動開始前に半導体スイッチをオンにする。
【0030】
第13観点の電力変換装置では、負荷の駆動停止時に必要となる保護動作について、確実な実行に対する信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成を説明するための模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【
図3】インバータ回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る電力変換装置の構成を説明するための模式図である。
【
図5】第2実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1に示されている第1実施形態に係る電力変換装置1は、直流電力を交流電力に変換して負荷100に対して出力する装置である。電力変換装置1は、第1直流母線11、第2直流母線12、コンデンサ4、インバータ回路6、過電圧保護回路5、及び電流検出手段7を備えている。電力変換装置1の動作時には、第1直流母線11と第2直流母線12に直流電圧が印加されている。第2直流母線12は、第1直流母線11よりも低電位にある。コンデンサ4は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。コンデンサ4の一端が第1直流母線11に接続され、コンデンサ4の他端が第2直流母線12に接続されている。
【0033】
インバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に接続されている。インバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12から直流電力の供給を受ける。インバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を変換して負荷100に交流電力を供給する。
【0034】
過電圧保護回路5は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。また、過電圧保護回路5は、コンデンサ4とインバータ回路6の間に配置されている。過電圧保護回路5は、インバータ回路6を過電圧から保護する回路である。電力変換装置1が定常状態で動作しているときに第1直流母線11と第2直流母線12に印加されている電圧を定常電圧とする。例えば、コンデンサ4を含む回路で生じる共振電圧またはサージによって、第1直流母線11と第2直流母線12には、定常電圧よりも高い過電圧が過渡的に発生する。また、インバータ回路6が負荷100の駆動を停止した時、負荷100がもつエネルギーがコンデンサ4に流れ込むことで、第1直流母線11と第2直流母線12には、定常電圧よりも高い過電圧が発生する。過電圧保護回路5は、このような電圧の上昇を抑制する回路である。
【0035】
電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間で第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するものである。
図1に示されている例では、電流検出手段7により第2直流母線12に流れる直流母線電流が検出される。そのため、電流検出手段7は、第2直流母線12に配置されている。しかし、電流検出手段7が検出する電流は、第1直流母線11に流れる直流母線電流であってもよい。その場合には、電流検出手段7は、第1直流母線11に配置される。
【0036】
図1の電力変換装置1では、コンデンサ4とインバータ回路6の間に流れる電流I2が、電流検出手段7に流れる。電流I2は、
図1において破線の矢印で示されている。また、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間に流れる電流I1が、電流検出手段7に流れる。電流I1は、
図1において一点鎖線の矢印で示されている。
図1に記載の電力変換装置1では、過電圧保護回路5に電流I1が流れていないとき、電流検出手段7は、コンデンサ4とインバータ回路6の間に流れる電流I2のみを検出することができる。言い換えると、過電圧保護回路5に電流I1が流れていないときには、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間に流れる電流I1の影響を受けずに、電流検出手段7は、コンデンサ4とインバータ回路6の間に流れる電流I2を検出することができる。また、
図1に記載の電力変換装置1では、インバータ回路6に電流I2が流れていないとき、電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間に流れる電流I1のみを検出することができる。言い換えると、インバータ回路6に電流I2が流れていないときには、コンデンサ4とインバータ回路6の間に流れる電流I2の影響を受けずに、電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間に流れる電流I1を検出することができる。このように一つの電流検出手段7を使って、コンデンサ4とインバータ回路6の間に流れる電流も、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間に流れる電流も両方、電流検出手段7が検出することができる。
【0037】
(2)詳細構成
図2には、第1実施形態に係る電力変換装置1の具体的な構成例が示されている。
【0038】
(2-1)第1直流母線11及び第2直流母線12への直流電力の供給
図2に示されている第1直流母線11及び第2直流母線12には、直流電源2から直流電圧が印加されている。
図2に示されている直流電源2は、商用電源200から三相交流で電力が供給されている。
図2の直流電源2は、三相交流を整流する整流回路である。直流電源2を構成している整流回路は、6つのダイオードD1からなる三相ブリッジ整流回路である。ここでは、直流電源2として、三相ブリッジ整流回路を例に挙げているが、直流電源2は、三相ブリッジ整流回路に限られるものではない。直流電源2には、例えば、単相ブリッジ整流回路を用いることもできる。
【0039】
第1直流母線11には、リアクトル3が直列に挿入されている。リアクトル3は、第1直流母線11と第2直流母線12からなる直流リンクに生じる高調波を低減するために設けられている。なお、
図2では、第1直流母線11にリアクトル3が設けられている例を示しているが、このような構成例に限られるものではない。例えば、リアクトル3が第2直流母線12に設けられてもよく、商用電源200と直流電源2との間に設けられてもよい。
【0040】
図2の電力変換装置1の第1直流母線11においては、直流電源2、リアクトル3、コンデンサ4の一端、電圧検出回路8の一端、過電圧保護回路5の一端、インバータ回路6の上アームUAの順に並んでいる。
図2の電力変換装置1の第2直流母線12においては、直流電源2、コンデンサ4の他端、電流検出手段7、電圧検出回路8の他端、過電圧保護回路5の他端、インバータ回路6の下アームDAの順に並んでいる。従って、第1直流母線11と第2直流母線12によって、コンデンサ4の一端と他端の間に直流電圧が印加されている。また、第1直流母線11と第2直流母線12によって、電圧検出回路8の一端と他端の間に直流電圧が印加され、過電圧保護回路5の一端と他端の間に直流電圧が印加され、インバータ回路6の上アームUAと下アームDAの間に直流電圧が印加される。
【0041】
(2-2)インバータ回路6
図2に示されているインバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を変換して負荷100に三相交流電力を供給する。
図2に示されている負荷100は、誘導負荷である。
図2では、誘導負荷の例として、三相交流モータが示されている。
図2に示されているインバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を三相交流電力に変換する回路である。
【0042】
上アームUAは、3つの半導体スイッチを備えている。上アームUAは、半導体スイッチとして、例えば3つのトランジスタを備えている。トランジスタは、例えば、
図2のように、Nチャネル型の絶縁ゲート型トランジスタQup,Qvp,Qwpである。絶縁ゲート型トランジスタQup,Qvp,Qwpは、それぞれ、コレクタが第1直流母線11に接続され、エミッタが負荷100に接続され、ゲートがゲートドライバ21に接続されている。絶縁ゲート型トランジスタQup,Qvp,Qwpには、それぞれ、還流ダイオードDup,Dvp,Dwpが逆並列に接続されている。換言すると、還流ダイオードDup,Dvp,Dwpのそれぞれのカソードが絶縁ゲート型トランジスタQup,Qvp,Qwpのそれぞれのコレクタに接続され、還流ダイオードDup,Dvp,Dwpのそれぞれのアノードが絶縁ゲート型トランジスタQup,Qvp,Qwpのそれぞれのエミッタに接続されている。
【0043】
下アームDAは、3つの半導体スイッチを備えている。下アームDAは、半導体スイッチとして、例えば3つのトランジスタを備えている。トランジスタは、例えば、
図2のように、Nチャネル型の絶縁ゲート型トランジスタQun,Qvn,Qwnである。絶縁ゲート型トランジスタQun,Qvn,Qwnは、それぞれ、エミッタが第2直流母線12に接続され、コレクタが負荷100に接続され、ゲートがゲートドライバ21に接続されている。絶縁ゲート型トランジスタQun,Qvn,Qwnには、それぞれ、還流ダイオードDun,Dvn,Dwnが逆並列に接続されている。換言すると、還流ダイオードDun,Dvn,Dwnのそれぞれのカソードが絶縁ゲート型トランジスタQun,Qvn,Qwnのそれぞれのコレクタに接続され、還流ダイオードDun,Dvn,Dwnのそれぞれのアノードが絶縁ゲート型トランジスタQun,Qvn,Qwnのそれぞれのエミッタに接続されている。負荷100のU相に、絶縁ゲート型トランジスタQupのエミッタと絶縁ゲート型トランジスタQunのコレクタからの出力が与えられる。負荷のV相に、絶縁ゲート型トランジスタQvpのエミッタと絶縁ゲート型トランジスタQvnのコレクタからの出力が与えられる。負荷100のW相に、絶縁ゲート型トランジスタQwpのエミッタと絶縁ゲート型トランジスタQwnのコレクタからの出力が与えられる。
【0044】
(2-3)電圧検出回路8
電圧検出回路8は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じる電圧を検出するための回路である。電圧検出回路8は、コンデンサ4とインバータ回路6との間において、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じる電圧を検出する。第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている抵抗81,82を含む回路である。電圧検出回路8は、抵抗81の両端の電圧をコントローラ20に出力する。コントローラ20は、例えばAD変換機能を有しており、抵抗81の両端電圧を抵抗81,82の抵抗比に基づいて第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じる電圧に換算する。
【0045】
(2-4)過電圧保護回路5の基本構成
図2に示されている過電圧保護回路5は、基本的には、第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている半導体スイッチ52と抵抗51を含む回路である。
図2では、抵抗51の一端が第1直流母線11に接続されている。抵抗51の他端は半導体スイッチ52の一端に接続されている。半導体スイッチ52の他端は第2直流母線12に接続されている。
図2では、抵抗51が第1直流母線11に接続され、半導体スイッチ52が第2直流母線12に接続されているが、これら抵抗51と半導体スイッチ52の位置を入れ替えて過電圧保護回路5を構成することもできる。
【0046】
過電圧保護回路5は、
図1に示されている第1閉回路CL1の構成要素になっている。第1閉回路CL1は、コンデンサ4、過電圧保護回路5、並びにコンデンサ4と過電圧保護回路5とを接続する第1直流母線11の一部11a及び第2直流母線12の一部12aにより形成される。第1閉回路CL1は、抵抗51と半導体スイッチ52が直列に配置されている第1電流経路CP1を含む。半導体スイッチ52がオンしているときに第1電流経路CP1に電流が流れる。第1電流経路CP1に電流を流すことで、抵抗51によって電力を消費させ、過電圧からインバータ回路6を保護する。
【0047】
過電圧保護回路5を流れる電流は、半導体スイッチ52がオンしているときに電流検出手段7に流れる。従って、半導体スイッチ52をオンするタイミングで電流検出手段7に電流を検出させることで、電流検出手段7で過電圧保護回路5に流れる電流の値が検出し易くなる。
【0048】
(2-4-1)過電圧保護回路5の詳細構成
図2に示されている過電圧保護回路5は、抵抗51に対して逆並列に接続されているダイオード53をさらに含んでいる。第1直流母線11にダイオード53のカソードが接続され、アノードが半導体スイッチ52の一端に接続されている。半導体スイッチ52がオフしたときに、第1電流経路(抵抗51と半導体スイッチ52)に流れていた電流が遮断される。第1直流母線11から半導体スイッチ52までの抵抗51を含む配線経路にインダクタンス成分が存在していると、第1直流母線11と半導体スイッチ52の間に電圧を発生させるような起電力が発生する。半導体スイッチ52には、直流電圧に該起電力が加わった電圧が印可される。この電圧が半導体スイッチ52の耐圧を超えると、半導体スイッチ52が破壊されることになる。半導体スイッチ52がオフすることによって第1直流母線11から半導体スイッチ52までの抵抗51を含む配線経路に大きな電圧が発生しないように、ダイオード53が該配線経路に生じる電圧をクランプする。
図2では、過電圧保護回路5にダイオード53を設けているが、このようなダイオード53を省いた過電圧保護回路5を、電力変換装置1に用いてもよい。
【0049】
(2-5)電流検出手段7
電流検出手段7は、コンデンサ4とインバータ回路6の間であって且つコンデンサ4と過電圧保護回路5の間の第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するように配置される。
図1及び
図2に示されている電流検出手段7は、第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するように配置されている。言い換えると、電流検出手段7は、
図1に示されている第1直流母線11の一部11aまたは第2直流母線12の一部12aを流れる直流母線電流を検出するように配置されている。
図1及び
図2に示されている電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5を含む第1閉回路CL1に流れる電流I1の第1電流値、コンデンサ4とインバータ回路6を含む第2閉回路CL2に流れる電流I2の第2電流値、または第1電流値と第2電流値の合計電流値を検出する。
【0050】
電流検出手段7は、第2閉回路CL2に電流が流れていない状況で直流母線電流の値を検出すると、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値である第1電流値を検出することができる。また、電流検出手段7は、第1閉回路CL1に電流が流れていない状況で直流母線電流の値を検出すると、第2閉回路CL2に流れる電流I2の値である第2電流値を検出することができる。さらに、電流検出手段7は、第1閉回路CL1と第2閉回路CL2に電流が流れている状況で直流母線電流の値を検出すると、第1電流値と第2電流値を合計した電流の値(合計電流値)を検出することができる。
【0051】
また、第2閉回路CL2に流れる電流I2の値が一定の状態のときに、第1閉回路CL1に流れる電流I1を変化させて、変化前の直流母線電流の値と変化後の直流母線電流の値を電流検出手段7が検出することもできる。変化前の直流母線電流の値と変化後の直流母線電流の値の差から、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値(第1電流値)を、電流検出手段7が検出できる。
【0052】
(2-5-1)電流検出手段7の詳細構成
図2には、電流検出手段7の構成の一例が示されている。
図2の電流検出手段7は、抵抗71と検出器72とコントローラ20を含んでいる。抵抗71は、第2直流母線12の一部12aに直列に挿入されている。従って、第2直流母線12の一部12aに流れる直流母線電流の値に応じた電圧が抵抗71の両端に発生する。検出器72は、抵抗71の両端に発生する電圧から抵抗71に流れる電流の値を検出するための機器である。検出器72は、例えば、抵抗71の両端に発生した電圧を増幅する機能、およびノイズを除去するフィルタ機能を有している。コントローラ20は、電力変換装置1の動作状況に応じて検出器72で検出した電流の値を取得する。第2閉回路CL2に電流が流れていない状況で検出器72から直流母線電流の値を取得すると、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値である第1電流値を、コントローラ20は取得することができる。なお、コントローラ20が抵抗71の両端の電圧から直流母線電流の値を直接取得する機能を有しているのであれば、検出器72を省いてもよい。
【0053】
コントローラ20は、第1閉回路CL1に電流が流れていない状況で検出器72から直流母線電流の値を取得すると、第2閉回路CL2に流れる電流I2の値である第2電流値を取得することができる。第1閉回路CL1と第2閉回路CL2に電流が流れている状況で検出器72から直流母線電流の値を取得すると、第1電流値と第2電流値を合計した電流の値(合計電流値)を、コントローラ20は取得することができる。
【0054】
また、第2閉回路CL2に流れる電流I2の値が一定の状態のときに、第1閉回路CL1に流れる電流I1を変化させて、変化前の直流母線電流の値と変化後の直流母線電流の値をコントローラ20が取得することもできる。変化前の直流母線電流の値と変化後の直流母線電流の値の差から、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値(第1電流値)を、コントローラ20は検出できる。
【0055】
(2-5-2)電流検出手段7による直流母線電流の検出
(2-5-2-1)
過電圧保護回路5は、インバータ回路6が駆動されているときは、インバータ回路6の出力の電圧ベクトルが変化しない期間に半導体スイッチ52をオンまたはオフする。電流検出手段7は、半導体スイッチ52がオンする前後、または半導体スイッチ52がオフする前後において直流母線電流を検出する。
【0056】
図2のコントローラ20は、インバータ回路6の絶縁ゲート型トランジスタQup,Qun,Qvp,Qvn,Qwp,Qwnを駆動するゲートドライバ21を制御している。そのため、コントローラ20は、インバータ回路6の駆動と非駆動についての情報を有している。また、ゲートドライバ21を制御しているコントローラ20は、電圧ベクトルが変化しない期間についての情報を有している。コントローラ20は、これらの情報に基づき、インバータ回路6が駆動され且つ電圧ベクトルが変化しない期間に半導体スイッチ52をオンまたはオフするように半導体スイッチ52を制御することができる。
【0057】
ここで、インバータ回路6の出力の電圧ベクトルは、各相に与える電位(三相交流であれば、U相、V相、W相。)で表される。各相について、上アームUAの半導体スイッチがオンし、下アームDAの半導体スイッチがオフしているときの電位を「1」、上アームUAの半導体スイッチがオフし、下アームDAの半導体スイッチがオンしているときの電位を「0」と表す。三相交流電力を出力するインバータ回路6の出力の電圧ベクトルは、V(1,0,0)、V(1,1,0)、V(0,1,0)、V(0,1,1)、V(0,0,1)、V(1,0,1)、V(0,0,0)、V(1,1,1)の8つになる。これらのうちV(0,0,0)、V(1,1,1)を零ベクトルという。言い換えると、上アームUAの半導体スイッチが全てオンし且つ下アームDAの半導体スイッチが全てオフするか、または上アームUAの半導体スイッチが全てオフし且つ下アームDAの半導体スイッチが全てオンしている電圧ベクトルが零ベクトルである。また、インバータ回路6の出力の電圧ベクトルが変化しない期間とは、言い換えれば、インバータ回路6の各半導体スイッチのオンオフの状態が変化しない期間である。
【0058】
インバータ回路6が駆動されているときであっても、インバータ回路6の出力の電圧ベクトルが変化しない期間は、電圧ベクトルの変化による第2閉回路CL2に流れる電流I2の変化に比べると、電流I2の値が略一定の状態と見なせる期間である。このような期間において、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンまたはオフして、コントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンまたはオフにする。コントローラ20は、抵抗71と検出器72を介して、半導体スイッチ52がオンする前後、または半導体スイッチ52がオフする前後の直流母線電流の値を取得することができる。半導体スイッチ52のオンオフの切り換え前の直流母線電流の値と、オンオフの切り換え後の直流母線電流の値との差から、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値(第1電流値)を、コントローラ20は検出できる。
【0059】
(2-5-2-2)
過電圧保護回路5は、インバータ回路6が駆動されているときに、インバータ回路6の零ベクトル期間に半導体スイッチ52をオンする。電流検出手段7は、零ベクトル期間に半導体スイッチ52がオンしているときに直流母線電流を検出する。零ベクトル期間とは、インバータ回路6の出力の電圧ベクトルが零ベクトルV(0,0,0)、V(1,1,1)になっている期間である。
図3に、負荷100が三相交流モータである場合について、インバータ回路6が駆動されているときの絶縁ゲート型トランジスタQup,Qun,Qvp,Qvn,Qwp,Qwnの駆動の一例が示されている。
【0060】
零ベクトル期間においては、負荷100が誘導負荷であっても、インバータ回路6の出力電流は還流ダイオードDup,Dvp,Dwp,Dun,Dvn,Dwnを介して負荷100のみに流れる。そのため、このとき、コンデンサ4とインバータ回路6の間の直流母線電流は零になる。換言すると、このとき、第2閉回路CL2に流れる電流I2が零になる。従って、電流検出手段7は、インバータ回路6が駆動されていても、零ベクトル期間に過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンして直流母線電流を検出することで、過電圧保護回路5に流れる電流の値(第1電流値)を検出することができる。
【0061】
既に説明したように、コントローラ20は、インバータ回路6の駆動と非駆動を制御し、絶縁ゲート型トランジスタQup,Qun,Qvp,Qvn,Qwp,Qwnの駆動を制御している。従って、コントローラ20は、零ベクトル期間に過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンすることができる。また、コントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンしたタイミングで、抵抗71と検出器72を介して、直流母線電流の値を取得することができる。
【0062】
(2-5-2-3)
電流検出手段7は、負荷100が非駆動状態において、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンしているときに流れる直流母線電流の値を検出する。負荷100が三相交流モータである場合、
図3のタイミングチャートにおいて、インバータ回路6の絶縁ゲート型トランジスタQup,Qun,Qvp,Qvn,Qwp,Qwnが全てオフになっている状態が、前述の状態に対応する。この場合、第2閉回路CL2に流れる電流I2が零になる。従って、電流検出手段7は、負荷100が非駆動状態において過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンして直流母線電流を検出することで、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値を検出することができる。言い換えると、この状態で電流検出手段7が直流母線電流の値を検出することで、過電圧保護回路5に流れる電流の値(第1電流値)を検出することができる。
【0063】
既に説明したように、コントローラ20は、インバータ回路6の駆動と非駆動を制御し、絶縁ゲート型トランジスタQup,Qun,Qvp,Qvn,Qwp,Qwnの駆動を制御している。従って、コントローラ20は、負荷100が非駆動状態において過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンすることができる。また、コントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンしたタイミングで、抵抗71と検出器72を介して、直流母線電流の値を取得することができる。
【0064】
(2-6)過電圧保護回路5による過電圧保護
電力変換装置1は、電流検出手段7が検出した直流母線電流に基づいて、過電圧保護回路5の正常と異常の判定を行う制御部を備える。
図2に示されている電力変換装置1では、コントローラ20が、過電圧保護回路5の正常と異常の判定を行う制御部としての機能を有している。コントローラ20は、既に説明したように、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンにしたときに過電圧保護回路5に流れる電流の値(第1電流値)を検出することができる。コントローラ20は、例えば、半導体スイッチ52をオンするように信号を出力しても電流が流れない場合は、過電圧保護回路5に断線が発生していたり、半導体スイッチ52をスイッチングする機能が損なわれていたりする異常があると判定する。また、コントローラ20は、例えば、半導体スイッチ52をオンしたときに流れる第1電流値が所定の範囲よりも少なかったり、所定の範囲を超えていたりする場合には異常があると判定する。コントローラ20は、例えば、半導体スイッチ52をオンしたときに流れる第1電流値が所定の範囲内であれば、過電圧保護回路5が正常であると判定する。過電圧保護回路5が正常であると判定された場合、電力変換装置1は、過電圧保護回路5を用いて過電圧保護を行う。
【0065】
電力変換装置1は、インバータ回路6が負荷100の駆動を開始する毎に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52を駆動開始前にオンにする。それにより、電力変換装置1では、負荷100の駆動停止時に必要となる保護動作について、過電圧保護回路5の異常を予め検査することができ、確実な実行に対する信頼性が向上する。
【0066】
図2に示されているコントローラ20は、ゲートドライバ21を制御しているので、負荷100である三相交流モータの駆動を開始するタイミングに関する情報を有している。従って、コントローラ20は、インバータ回路6によるモータの駆動開始毎に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52を、駆動開始前にオンにすることができる。その結果、負荷100の駆動停止時に必要となる保護動作について、確実な実行に対する信頼性が向上する。
【0067】
また、コントローラ20は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じている電圧を電圧検出回路8から得ている。コントローラ20は、過電圧が生じているか否かを判断するための閾値電圧を記憶しており、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じている電圧を閾値電圧と比較することで過電圧が発生していると判断することができる。コントローラ20は、過電圧が発生していると判断すると、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンにして過電圧からインバータ回路6を保護する。
【0068】
また、過電圧保護の応答を速める必要がある場合は、比較器を用いて電圧検出回路8の出力電圧をしきい値電圧と比較し、比較器の出力を用いて半導体スイッチ52をオンオフする回路を併用してもよい。この場合、コントローラ20は、過電圧保護回路5の正常と異常を判断するために半導体スイッチ52のオンオフを行う。
【0069】
(2-7)過電流保護
電力変換装置1は、過電流保護を行う過電流保護部を備えるように構成することができる。電力変換装置1の過電流保護部は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオフしている期間に電流検出手段7で検出される直流母線電流の値を用いてインバータ回路6の過電流保護を行う。しかし、電力変換装置1の過電流保護部は、半導体スイッチ52がオンしている期間に、電流検出手段7で検出される直流母線電流の値を用いてインバータ回路6の過電流保護を行わない。そのため、過電流保護部は、第2閉回路CL2に流れる電流I2の値(第2電流値)を用いて過電流が生じているか否かを判断することができる。言い換えると、第1閉回路CL1に流れる電流I1が重畳された値を用いないため、インバータ回路6に過電流が生じていないにもかかわらず、過電流が生じていると過電流保護部が誤った判断をすることがなくなる。
【0070】
図2に示されている電力変換装置1では、コントローラ20が過電流保護部として機能する。既に説明したように、コントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオフしている期間に電流検出手段7で検出される直流母線電流の値を得ることができる。また、コントローラ20は、ゲートドライバ21を制御しているので、検出した電流値に基づいてインバータ回路6を制御することができる。コントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオフしている期間に検出した直流母線電流の値(第2電流値)が、所定の閾値を超えていれば、インバータ回路6に過電流は生じていると判断することができる。コントローラ20は、例えば、過電流が生じていると判断すると、インバータ回路6の下アームDAの半導体スイッチを全てオフにして第1直流母線11と第2直流母線12から負荷100に電圧が印加されないようにすることができる。コントローラ20は、負荷100に印加されていた電圧を遮断することで、インバータ回路6に過電流が流れないようにすることができる。このように、コントローラ20に電流保護部としての機能を持たせることができる。
【0071】
また、過電流の判断は、検出器72の出力信号としきい値電圧を比較器により直接比較し、その出力を用いて行っても良い。この場合、半導体スイッチ52をオンしている期間について比較器の出力を無効にするための論理積回路を加え、論理積回路には比較器の出力とコントローラ20からの無効化信号を入力することで、半導体スイッチ52がオンしている期間における過電流判断の無効化が実現でき、正しい過電流の判断が行える。この構成を用いることで、過電流判断をより速く行うことができる。
【0072】
(3)コントローラ20の構成
コントローラ20は、例えばコンピュータにより実現されるものである。コンピュータにより実現されるコントローラ20は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の装置・回路の制御、データの演算を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0073】
<第2実施形態>
(4)全体構成
図4に示されている第2実施形態に係る電力変換装置1は、第1直流母線11、第2直流母線12、コンデンサ4、インバータ回路6、過電圧保護回路5、電流検出手段7、及び直流電源2を備えている。直流電源2は、コンデンサ4と第1直流母線11および第2直流母線12に電力を給電する直流給電回路である。
【0074】
図4に示されている第2実施形態に係る電力変換装置1は、
図1に示されている第1実施形態に係る電力変換装置1とは、コンデンサ4、インバータ回路6、過電圧保護回路5、及び電流検出手段7の配置位置が異なっている。
図4の電力変換装置1では、インバータ回路6に近い位置にコンデンサ4が配置され、インバータ回路6から見てコンデンサ4よりも遠い位置に過電圧保護回路5が配置されている。
図4においては、第1閉回路CL1に流れる電流I1が一点鎖線で示され、第2閉回路CL2に流れる電流I2が破線で示され、第3閉回路CL3に流れる電流I3が二点鎖線で示されている。第2実施形態の第1閉回路CL1は、第1実施形態の第1閉回路CL1と同様に、コンデンサ4、過電圧保護回路5、並びにコンデンサ4と過電圧保護回路5とを接続する第1直流母線11の一部11a及び第2直流母線12の一部12aにより形成される。第2実施形態の第2閉回路CL2も、第1実施形態の第2閉回路CL2と同様に、コンデンサ4とインバータ回路6を含む閉回路である。第3閉回路CL3は、直流電源2とコンデンサ4を含む閉回路である。第2実施形態の全体構成において、
図4のコンデンサ4、過電圧保護回路5及びインバータ回路6は、配置位置の違いを除いて、
図1を用いて第1実施形態の(1)全体構成で説明したコンデンサ4、過電圧保護回路5及びインバータ回路6と同様である。そのため、全体構成における第2実施形態のコンデンサ4、過電圧保護回路5及びインバータ回路6の各々の説明については省略する。
【0075】
電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間で第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するものである。電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間で、第1閉回路CL1に流れる電流I1の値(第1電流値)と第3閉回路CL3に流れる電流I3の値(第3電流値)とを検出する。
図4に示されている例では、電流検出手段7により第2直流母線12に流れる直流母線電流が検出される。そのため、電流検出手段7は、第2直流母線12に配置されている。しかし、電流検出手段7が検出する電流は、第1直流母線11に流れる直流母線電流であってもよい。その場合には、電流検出手段7は、第1直流母線11に配置される。
【0076】
図4の電力変換装置1では、第1閉回路CL1を流れる電流I1の第1電流値だけでなく、第3閉回路CL3を流れる電流I3の第3電流値も、電流検出手段7は検出することとなる。例えば、インバータ回路が駆動されている状態で過電圧保護回路5がオンすると、直流電源から負荷に供給される電流I3に加えて、過電圧保護回路の電流I1が流れる。
図4の場合、I1とI3は極性が逆となるため、I3からI1だけ減少した電流が検出されることになる。そのため、インバータ回路駆動中は、過電圧保護回路5に流れる電流I1の値(第1電流値)を正確に検出することが難しくなる。
【0077】
しかしながら、電流検出手段7は、過電圧保護回路5に電流が流れているか否かの検出を行うことは可能である。この場合、過電圧保護回路5に流れる電流の有無を用いた過電圧保護回路の断線有無(異常)の判定は可能である。
【0078】
(5)詳細構成
図5には、第2実施形態に係る電力変換装置1の具体的な構成例が示されている。
【0079】
(5-1)第1直流母線11及び第2直流母線12への直流電力の供給
図5に示されている第1直流母線11及び第2直流母線12には、直流電源2から直流電圧が印加されている。
図5に示されている直流電源2は、商用電源200から単相交流で電力が供給されている。
図5の直流電源2は、単相交流を整流する整流回路である。直流電源2を構成している整流回路は、4つのダイオードD2からなる単相ブリッジ整流回路である。ここでは、直流電源2として、単相ブリッジ整流回路を例に挙げているが、直流電源2は、単相ブリッジ整流回路に限られるものではない。直流電源2には、例えば、三相ブリッジ整流回路を用いることもできる。
【0080】
第1直流母線11には、リアクトル3が直列に挿入されている。リアクトル3は、第1直流母線11と第2直流母線12からなる直流リンクに生じる高調波を低減するために設けられている。なお、
図5では、第1直流母線11にリアクトル3が設けられている例を示しているが、このような構成例に限られるものではない。例えば、リアクトル3が第2直流母線12に設けられてもよく、商用電源200と直流電源2との間に設けられてもよい。
【0081】
図5の電力変換装置1の第1直流母線11においては、直流電源2、リアクトル3、過電圧保護回路5の一端、コンデンサ4の一端、電圧検出回路8の一端、インバータ回路6の上アームUAの順に並んでいる。
図5の電力変換装置1の第2直流母線12においては、直流電源2、過電圧保護回路5の他端、電流検出手段7、コンデンサ4の他端、他の電流検出手段9、電圧検出回路8の他端、インバータ回路6の下アームDAの順に並んでいる。従って、第1直流母線11と第2直流母線12によって、コンデンサ4の一端と他端の間に直流電圧が印加されている。また、第1直流母線11と第2直流母線12によって、電圧検出回路8の一端と他端の間に直流電圧が印加され、過電圧保護回路5の一端と他端の間に直流電圧が印加され、インバータ回路6の上アームUAと下アームDAの間に直流電圧が印加される。なお、他の電流検出手段9は、例えば、抵抗91と検出器92とコントローラ20で構成され、コンデンサ4とインバータ回路6の間の第2直流母線12に流れる電流の検出に用いられる。他の電流検出手段9は、抵抗91の配置位置を除いて、電流検出手段7と同様の構成とすることができ、検出器92は、例えば検出器72と同様の構成とすることができる。他の電流検出手段9は、例えば負荷100がモータである場合に使用される。第2実施形態の電力変換装置1の技術的な特徴の説明にとって他の電流検出手段9は重要ではないので、ここでは他の電流検出手段9についての詳細な説明を省略する。
【0082】
(5-2)インバータ回路6
図5に示されている第2実施形態のインバータ回路6の構成は、
図2の第1実施形態のインバータ回路6と同様である。そのため、ここでは、インバータ回路6の詳細な構成についての説明を省略する。なお、
図5における
図2と同一符号の要素は、
図2の同一符号の要素と同じ要素である。
【0083】
(5-3)電圧検出回路8
第2実施形態の電圧検出回路8も、第1実施形態の電圧検出回路8と同様の構成を有するので、ここでは説明を省略する。なお、
図5における
図2と同一符号の要素は、
図2の同一符号の要素と同じ要素である。
【0084】
(5-4)過電圧保護回路5の基本構成
第2実施形態の過電圧保護回路5の基本構成も、第1実施形態の過電圧保護回路5の基本構成と同様の構成を有するので、ここでは説明を省略する。なお、
図5における
図2と同一符号の要素は、
図2の同一符号の要素と同じ要素である。
【0085】
(5-4-1)過電圧保護回路5の詳細構成
図5に示されている過電圧保護回路5のダイオード53についても、
図2のダイオード53と同様のものであるので、ここでは説明を省略する。
【0086】
(5-5)電流検出手段7
電流検出手段7は、直流電源2とコンデンサ4の間であって且つコンデンサ4と過電圧保護回路5の間の第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するように配置される。
図4及び
図5に示されている電流検出手段7は、第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するように配置されている。言い換えると、電流検出手段7は、
図4に示されている第1直流母線11の一部11aまたは第2直流母線12の一部12aを流れる直流母線電流を検出するように配置されている。
図4及び
図5に示されている電流検出手段7は、直流電源2とコンデンサ4を含む第3閉回路CL3に流れる電流I3の第3電流値、または第1電流値と第3電流値の合計電流値を検出する。第1電流値は、コンデンサ4と過電圧保護回路5を含む第1閉回路CL1に流れる電流I1の値であり、過電圧保護回路5に流れる電流の値である。
【0087】
電流検出手段7は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52のオンオフを切り換えたときに、切換前後で検出した直流母線電流が変化したか否かを検出することができる。半導体スイッチ52のオンオフを切り換える信号を、コントローラ20から過電圧保護回路5に送っても、電流検出手段7が直流母線電流の変化を検出できなければ、過電圧保護回路5に異常が発生しているとコントローラ20は判定することができる。言い換えると、電流検出手段7は、過電圧保護回路5に流れる電流の検出のために、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンする前後、または半導体スイッチ52がオフする前後において直流母線電流を検出するように構成される。
【0088】
或いは、電流検出手段7が、負荷100が非駆動状態において、半導体スイッチ52がオンしているときに流れる直流母線電流から第1電流値を検出するように構成される。
【0089】
また、電流検出手段7は、第1閉回路CL1に電流が流れていない状況で直流母線電流の値を検出すると、第3閉回路CL3に流れる電流I3の値である第3電流値を検出することができる。
【0090】
(5-5-1)電流検出手段7の詳細構成
図5には、電流検出手段7の構成の一例が示されているが、
図5の電流検出手段7の構成と同様である。電流検出手段7は、直流電源2とコンデンサ4の間であって且つコンデンサ4と過電圧保護回路5の間の第2直流母線12の一部12aに直列に挿入された抵抗71を有している。従って、第2直流母線12の一部12aに流れる直流母線電流の値に応じた電圧が抵抗71の両端に発生する。検出器72は、抵抗71の両端に発生する電圧から抵抗71に流れる電流の値を検出するための機器である。
図5の電流検出手段7のコントローラ20は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンまたはオフする信号を半導体スイッチ52に送信する。コントローラ20は、半導体スイッチ52がオンまたはオフする信号の前と後で、検出器72で検出した直流母線電流の値を取得する。或いは、コントローラ20は、ゲートドライバ21を制御して負荷100を非駆動状態の状態にして、直流給電回路である直流電源2の出力電流が零になる状態で、半導体スイッチ52へのオンする信号を送信する。この場合、コントローラ20は、半導体スイッチ52がオンした後のタイミングで、検出器72で検出した直流母線電流の値を取得する。
【0091】
また、コントローラ20は、第1閉回路CL1に電流が流れていない状況で検出器72から直流母線電流の値を取得すると、第3閉回路CL3に流れる電流I3の値である第3電流値を取得することができる。第1閉回路CL1と第3閉回路CL3に電流が流れている状況で検出器72から直流母線電流の値を取得すると、第1電流値と第3電流値を合計した電流の値(合計電流値)を、コントローラ20は取得することができる。
【0092】
(5-5-2)過電圧保護回路5による過電圧保護
第2実施形態の
図5の電力変換装置1は、第1実施形態と同様に、コントローラ20が、過電圧保護回路5の正常と異常の判定を行う制御部としての機能を有している。第2実施形態の
図5の電力変換装置1における過電圧保護も、第1実施形態の
図2の電力変換装置1の過電圧保護と同様に行える。例えば、電圧検出回路8の検出結果から過電圧が生じていると判定されたときに、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンにして過電圧からインバータ回路6を保護する過電圧保護が行われる。また、インバータ回路6が負荷100の駆動を開始する毎に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52を駆動開始前にオンし、過電圧保護回路5の異常を予め検査する。そのため、ここでは過電圧保護についての詳しい説明を省略する。
【0093】
(6)変形例
(6-1)変形例A
上記第1実施形態及び第2実施形態では、電流検出手段7が抵抗71を用いて電流を検出する場合について説明した。しかし、電流検出手段7が電流の検出に用いる素子は、抵抗には限られない。電流検出手段7において、抵抗71に代えて、例えば、変流器(CT)、ホール素子を用いることができる。
【0094】
(7)特徴
(7-1)
第1実施形態及び第2実施形態において、電流検出手段7は、コンデンサ4と過電圧保護回路5の間で第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出する。従って、第1直流母線11または第2直流母線12において、過電圧保護回路5に流れる電流I1の値を、電流検出手段7により検出することができる。
【0095】
(7-2)
第1実施形態及び第2実施形態の電力変換装置1は、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンするときに、過電圧保護回路5を流れる電流が電流検出手段7に流れるように構成されているので、電流検出手段7で過電圧保護回路5に流れる電流I1の値を検出し易くなる。
【0096】
(7-3)
第1実施形態の電力変換装置1では、電流検出手段7が、コンデンサ4とインバータ回路6の間で且つコンデンサ4と過電圧保護回路5の間の第1直流母線11または第2直流母線12に流れる直流母線電流を検出するように構成されている。電流I1,I2の値の検出手段を電流検出手段7に兼ねさせることができ、電力変換装置1の部品点数を減らすことができる。
【0097】
(7-4)
第1実施形態の電力変換装置1は、コンデンサ4とインバータ回路6に流れる電流I1、及びコンデンサ4と過電圧保護回路5に流れる電流I2が電流検出手段7に流れるので、電流検出手段7を使って両方の電流I1,I2の値を検出することができる。そのため、電流検出手段7により、過電圧保護回路5に流れる電流を精度良く検出できる。
【0098】
(7-5)
第1実施形態の電力変換装置1では、インバータ回路6が駆動されているときに、電圧ベクトルが変化しない期間がある。この期間に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンまたはオフすると、電流検出手段7は、半導体スイッチ52がオンする前後、または半導体スイッチ52がオフする前後において直流母線電流を検出することができる。その結果、半導体スイッチ52のオンまたはオフの前後において検出した直流母線電流の差分から、容易に第1電流値を検出できる。
【0099】
(7-6)
第1実施形態の電力変換装置1では、インバータ回路6が駆動されているときに、零ベクトル期間がある場合がある。この期間に過電圧保護回路5が半導体スイッチ52をオンすると、電流検出手段7は、零ベクトル期間に半導体スイッチ52がオンしているときに直流母線電流を検出することができる。その結果、電流検出手段7で直流母線電流から第1電流値を容易に検出できる。
【0100】
(7-7)
第1実施形態の電力変換装置1では、負荷100が非駆動状態にできる場合がある。この場合に、電流検出手段7が、半導体スイッチ52がオンしているときに流れる直流母線電流の値を検出する。このとき、第2電流値が零になるので、電流検出手段7において第1電流値を精度良く検出できる。
【0101】
(7-8)
第2実施形態の電力変換装置1では、第1直流母線11および第2直流母線12に電力を給電する直流給電回路である直流電源2を備えている。電流検出手段7は、第1閉回路CL1に流れる第1電流値と、直流電源2を含む第3閉回路CL3に流れる第3電流値とを検出する。第1電流値を検出するための手段と第3電流値を検出するための手段を、電流検出手段7が兼ねるので、電力変換装置1の部品点数を減らすことができる。
【0102】
(7-9)
第2実施形態の電力変換装置1では、電流検出手段7が、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンする前後、または半導体スイッチ52がオフする前後において直流母線電流を検出することができる。過電圧保護回路5の半導体スイッチ52のオンまたはオフの前後において検出した直流母線電流の差分から、容易に第1電流値を検出できる。
【0103】
(7-10)
第2実施形態の電力変換装置1では、負荷100が非駆動状態において、電流検出手段7が、半導体スイッチ52がオンしているときに流れる直流母線電流から第1電流値を検出する。第3電流値が零になるときに、電流検出手段7において第1電流値を精度良く検出できる。
【0104】
(7-11)
第1実施形態及び第2実施形態の電力変換装置1では、コントローラ20が、電流検出手段が検出した直流母線電流に基づいて過電圧保護回路の正常と異常の判定を行う制御部として機能する。その結果、電力変換装置1では、過電圧保護回路5の異常を直流母線電流から検出できる。
【0105】
(7-12)
第1実施形態及び第2観点の電力変換装置は、過電流保護部として機能するコントローラ20を備えている。コントローラ20は、過電流保護部と機能するとき、半導体スイッチ52がオンしている期間に、電流検出手段7で検出される電流値を用いてインバータ回路6の過電流保護を行わない。半導体スイッチ52がオフしている期間に電流検出手段7で検出される電流値を用いて当該過電流保護を行う。このように、電力変換装置1は、電流検出手段7を用いた過電流保護を行える。
【0106】
(7-13)
第1実施形態及び第2実施形態の電力変換装置1では、過電圧保護回路5が、インバータ回路6が負荷100の駆動開始時毎に、半導体スイッチ52を駆動開始前にオンにする。その結果、負荷の駆動停止時に必要となる保護動作について、確実な実行に対する信頼性が向上する。
【0107】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0108】
1 電力変換装置
2 直流電源(直流給電回路の例)
4 コンデンサ
5 過電流保護回路
6 インバータ回路
7 電流検出手段
11 第1直流母線
12 第2直流母線
20 コントローラ(制御部の例、過電流保護部の例)
51 抵抗
52 半導体スイッチ
100 負荷
CL1 第1閉回路
CL2 第2閉回路
CL3 第3閉回路
CP1 第1電流経路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】