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特開2024-145579バイナリーマスクブランク、バイナリーマスク、及びバイナリーマスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145579
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】バイナリーマスクブランク、バイナリーマスク、及びバイナリーマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/74 20120101AFI20241004BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20241004BHJP
   G03F 1/46 20120101ALI20241004BHJP
【FI】
G03F1/74
G03F1/54
G03F1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057994
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 至
(72)【発明者】
【氏名】松井 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BB02
2H195BB16
2H195BB36
2H195BC05
2H195BC09
2H195BC14
2H195BD32
2H195BD36
(57)【要約】
【課題】電子線修正装置を用いてバイナリーマスクを修正加工した場合であっても遮光層にサイドエッチングが入りにくいバイナリーマスクブランク、バイナリーマスク、及びバイナリーマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るバイナリーマスクブランク100は、波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用されるバイナリーマスク10の作製に用いられるバイナリーマスクブランクであって、基板11と遮光膜12とを備え、遮光膜12は、露光光に対して遮光性を有する遮光層13と、遮光層13の上に形成され、露光光の反射を低減する低反射層14と、を含み、遮光層13の電子線修正エッチングレートをR1とし、低反射層14の電子線修正エッチングレートをR2とし、遮光層13と低反射層14のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用されるバイナリーマスクの作製に用いられるバイナリーマスクブランクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された遮光膜と、を備え、
前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、
前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とするバイナリーマスクブランク。
【請求項2】
前記低反射層は、タンタルと、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項1に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項3】
前記遮光層は、ケイ素を含有することを特徴とする請求項2に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光層は、ケイ素と、遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、
前記遷移金属は、モリブデンであり、
前記低反射層は、タンタルを含有することを特徴とする請求項3に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、波長200nm以下の露光光に対する光学濃度(Optical Density)が2.0以上であることを特徴とする請求項4に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜の膜厚が30nm以上60nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項7】
前記低反射層の上にハードマスク膜をさらに備え、
前記ハードマスク膜は、クロムと、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする請求項6に記載のバイナリーマスクブランク。
【請求項8】
波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用され、転写パターンが形成されたバイナリーマスクであって、
透明基板と、前記透明基板の上にパターン形成された遮光膜と、を備え、
前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、
前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とするバイナリーマスク。
【請求項9】
請求項8に記載のバイナリーマスクの製造方法であって、
前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、
前記透明基板上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記レジストパターンを除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とするバイナリーマスクの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載のバイナリーマスクの製造方法であって、
前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜の上にハードマスク膜を形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された前記ハードマスク膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記ハードマスク膜にパターンを形成する工程と、
前記ハードマスク膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去し、前記ハードマスク膜を除去する工程と、
前記ハードマスク膜を除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とするバイナリーマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイナリーマスクブランク、バイナリーマスク、及びバイナリーマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長200nm以下の露光光が適用されるバイナリーマスクでは、露光時の光の散乱を抑えるために遮光層の上に低反射層を設けた膜構造が一般的に採用されている。このような従来技術に係るバイナリーマスクに関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
先端技術に係るバイナリーマスクでは、遮光層を構成する材料として主にMoSiNが用いられ、低反射層を構成する材料として主にMoSiONが用いられている。この構成からなるバイナリーマスクは、フォトマスク製造工程の一つである修正工程において、電子線修正装置を用いた修正加工時(所謂、電子線修正時)にバイナリーマスクの下層に位置する遮光層にサイドエッチングが入りやすい。その結果、バイナリーマスクの寸法精度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4883278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情の元になされ、電子線修正装置を用いてバイナリーマスクを修正加工した場合であっても遮光層にサイドエッチングが入りにくいバイナリーマスクブランク、バイナリーマスク及びバイナリーマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであって、本発明の一態様に係るバイナリーマスクブランクは、波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用されるバイナリーマスクの作製に用いられるバイナリーマスクブランクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成された遮光膜と、を備え、前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係るバイナリーマスクは、波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用され、転写パターンが形成されたバイナリーマスクであって、透明基板と、前記透明基板の上にパターン形成された遮光膜と、を備え、前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係るバイナリーマスクの製造方法は、上述したバイナリーマスクの製造方法であって、前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、前記透明基板上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、前記レジストパターンを除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様に係るバイナリーマスクの製造方法は、上述したバイナリーマスクの製造方法であって、前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、前記遮光膜の上にハードマスク膜を形成する工程と、前記遮光膜上に形成された前記ハードマスク膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記ハードマスク膜にパターンを形成する工程と、前記ハードマスク膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去し、前記ハードマスク膜を除去する工程と、前記ハードマスク膜を除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るバイナリーマスクブランク、またはバイナリーマスクを用いることで、電子線修正装置を用いてバイナリーマスクを修正加工した場合であっても遮光層にサイドエッチングが入りにくいバイナリーマスクブランク、バイナリーマスクを提供することができる。その結果、寸法精度の低下を低減したバイナリーマスクブランク、バイナリーマスクを提供することができる。より詳しくは、本発明の一態様に係るバイナリーマスクブランク、またはバイナリーマスクを用いることで、バイナリーマスクの修正加工形状が改善され、バイナリーマスクの修正成功率が向上することによって生産性を向上させることが可能なバイナリーマスクブランク、バイナリーマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
図2】本発明の実施形態に係るバイナリーマスクの構成を示す断面概略図である。
図3】本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランクを用いたバイナリーマスクの製造工程を示す断面概略図である。
図4】本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランクを用いたバイナリーマスクの製造工程を示す断面概略図である。
図5】本発明の実施形態の変形例に係るバイナリーマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
図6】本発明の実施形態の変形例に係るバイナリーマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
図7】本発明の実施例に係るバイナリーマスクの修正工程前の構造を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
図8】本発明の実施例に係るバイナリーマスクの修正工程を示す概略断面図である。
図9】本発明の実施例に係る遮光層のサイドエッチング量を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明者らは、バイナリーマスクの上層に配置された低反射層と、バイナリーマスクの下層に配置された遮光層との電子線修正におけるエッチングレートの差がサイドエッチングを生じさせる原因であることを発見した。より詳しくは、本願発明者らは、電子線修正装置を用いた修正加工時に遮光層にサイドエッチングが入る原因を調査した結果、低反射層と遮光層とでエッチングレートが大幅に異なっていることを見出した。具体的には、従来技術に係るバイナリーマスクでは、低反射層は相対的にエッチングレートが小さく、遮光層は相対的にエッチングレートが大きいため、バイナリーマスクの上層に配置された低反射層のエッチングが終わると同時に、バイナリーマスクの下層に配置された遮光層のエッチングが急速に進んでしまい、遮光層が過剰にエッチングされていることを見出した。
そこで、本願発明者らは、各層のエッチングレートがなるべく等しくなるように膜構成を調整することで、遮光層に発生するサイドエッチングが改善されることを見出した。
【0013】
以上のように、本願発明者らは、低反射層のエッチングレートと遮光層のエッチングレートとの差を調整することで、遮光層に生ずる過剰なサイドエッチングは低減可能と考え、バイナリーマスクブランクまたはバイナリーマスクを下記構成とした。つまり、本実施形態に係るバイナリーマスクブランク及びバイナリーマスクは、遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、遮光層と低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12を0.5以上に設定することで、遮光層に生ずる過剰なサイドエッチングを低減するという技術的思想に基づくものである。
【0014】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、透明基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
本発明のバイナリーマスクブランク及びバイナリーマスクの好適な実施形態としては、以下に示す形態が挙げられる。
【0015】
(バイナリーマスクブランクの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランクの構成を示す断面概略図である。図1に示すバイナリーマスクブランク100は、波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用されるバイナリーマスクを作製するために用いられるバイナリーマスクブランクであって、露光波長に対して透明な基板(以下、単に「基板」ともいう)11と、基板11の上に成膜された遮光膜12とを備えている。また、遮光膜12は、露光光に対して遮光性を有する遮光層13と、遮光層13の上に形成され、露光光の反射を低減する低反射層14と、を備えている。また、遮光層13の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、低反射層14の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、遮光層13と低反射層14のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12は0.5以上である。
以下、本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランク100の構成する各層について詳しく説明する。
【0016】
(基板)
基板11に対する特別な制限はなく、基板11としては、例えば、石英ガラスやCaFあるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的に用いられる。
【0017】
(遮光膜)
遮光層13と低反射層14とを少なくとも備える遮光膜12は、露光光に対する遮光機能を主に担う膜であって、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成されている。
遮光膜12は、波長200nm以下の露光光に対する光学濃度(Optical Density)が2.0以上であれば好ましい。
また、遮光膜12の膜厚は、30nm以上60nm以下の範囲内であれば好ましく、30nm以上50nm以下の範囲内であればより好ましく、35nm以上40nm以下の範囲内であればさらに好ましい。遮光膜12の膜厚は、洗浄倒れ、パターン解像性などの観点から理想的にはより薄い方が好ましいが、少なくとも60nm以下であれば、これらの特性において十分な性能が得られる。また、遮光性、低反射性の観点からは30nm以上が望ましい。
【0018】
遮光膜12は、例えば、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチング可能な膜である。上記「酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有する」とは、遮光膜12に対する後述するハードマスク膜15の酸素含有塩素系ドライエッチング選択比が2以上であることを意味する。
ここで、フッ素系ドライエッチングとは、フッ素を含むガスを用いたドライエッチングであり、フッ素を含むガスとは、フッ素元素を含むガスであればよく、フッ素ガス、CF4、C26のような炭素とフッ素を含むガス、SF6のような硫黄とフッ素を含むガス、更にはヘリウムなどのフッ素を含まないガスとフッ素を含むガスとの混合ガスでもよい。また、必要に応じて酸素などのガスを添加してもよい。
【0019】
<遮光層>
本実施形態において、遮光層13は、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な材料からなり、例えば、ケイ素含有材料が挙げられる。ケイ素含有材料としては、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物が挙げられる。このケイ素化合物としてより具体的には、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物、ケイ素酸化炭化物、ケイ素窒化炭化物、ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができる。
【0020】
また、遷移金属とケイ素との合金、遷移金属と、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属ケイ素化合物も好適である。この遷移金属ケイ素化合物としてより具体的には、遷移金属ケイ素酸化物、遷移金属ケイ素窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化物、遷移金属ケイ素酸化炭化物、遷移金属ケイ素窒化炭化物、遷移金属ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができる。
遷移金属としては、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニア、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル及びタングステンから選ばれる1種以上が好適な材料であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデンであることが好ましい。
【0021】
この遮光層13のケイ素含有材料は、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能であるが、組成を選ぶことにより酸素を含まない塩素ガスによりエッチングすることも可能である。
遮光層13の組成は、ケイ素が10原子%以上95原子%以下、特に30原子%以上95原子%以下、酸素が0原子%以上50原子%以下、特に0原子%以上30原子%以下、窒素が0原子%以上40原子%以下、特に0原子%以上20原子%以下、炭素が0原子%以上20原子%以下、特に0原子%以上5原子%以下、遷移金属が0原子%以上35原子%以下、特に1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
【0022】
本実施形態の遮光層13は単層構造とすることも多層構造とすることもできる。単層構造とすることで、膜構成やこれを反映したプロセスを単純化することができる。
遮光層13と低反射層14、基板11等との間の密着性が低く、パターン欠陥等を起こしやすい場合などは、遮光層13が低反射層14、基板11等と接している部分、即ち、単層構造の場合は、遮光層13の厚さ方向両端面部の一方又は双方、多層構造の場合は、遮光層13の厚さ方向両端に位置する層の一方又は双方を、例えば窒素及び/又は酸素を含有する材料とし、この窒素及び/又は酸素の含有率を調整することにより、密着性を改善することができる。また、遮光層13をその厚さ方向において連続的又は段階的に組成が傾斜するように形成することでエッチングパターンの断面形状の垂直性を向上させることが可能である。これらの構造は、反応性スパッタリングのスパッタリング条件のコントロールにより容易に形成することができる。
【0023】
厚さ方向の組成を傾斜させた遮光層13の組成は、ケイ素が10原子%以上95原子%以下、特に15原子%以上95原子%以下、酸素が0原子%以上60原子%以下、特に0原子%以上30原子%以下、窒素が0原子%以上57原子%以下、特に0原子%以上40原子%以下、炭素が0原子%以上30原子%以下、特に0原子%以上20原子%以下、遷移金属が0原子%以上35原子%以下、特に1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
【0024】
更に、ケイ素含有材料が、遷移金属とケイ素とを含むとき、種々の組成比を選択することができるが、例えば、遷移金属とケイ素との組成比を、遷移金属:ケイ素=1:4~1:15(原子比)とすることで、洗浄等に用いる化学薬品に対して安定性が増すため好適である。また、遷移金属とケイ素との組成比が上記範囲以外であっても、窒素を含ませることによって、特に、窒素含有率を5原子%以上40原子%以下とすることによって必要な化学安定性を得ることができ、特に後述するハードマスク膜15などに用いられるCr膜をエッチングするときの酸素を含む塩素系ガスのドライエッチングのときのダメージを軽減するのに有効である。このとき、遷移金属とケイ素の比は、例えば、遷移金属:ケイ素=1:1~1:10(原子比)とすることができる。
【0025】
また、低反射層14の膜厚をd1とし、遮光層13の膜厚をd2とした場合、遮光性、低反射性の両立の観点から、d1は3nm以上30nm以下の範囲内であり、d2は20nm以上60nm以下の範囲内が望ましい。遮光層13の膜厚d2は、20nm以上50nm以下がより望ましく、40nm以上50nm以下がさらに望ましい。遮光層13の膜厚d2が20nm未満では十分な遮光効果が得られない場合があり、60nmを超えると厚さ250nm以下の薄いレジストで高精度の加工が困難になったり、膜応力により基板11の反りの原因になったりするおそれがある。また、洗浄倒れ、パターン解像性などの観点からも60nm以下の膜厚が好ましい。
また、遮光層13の膜厚d2は、低反射層14の膜厚d1に対して6倍以上20倍以下の範囲内であれば好ましく、10倍以上20倍以下の範囲内であればより好ましく、15倍以上20倍以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0026】
<低反射層>
低反射層14は、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な金属又は金属化合物からなることが好ましく、例えば、遷移金属含有材料が挙げられる。遷移金属含有材料としては、金属として遷移金属のみを含有するものとして、遷移金属単体、遷移金属と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属化合物が挙げられる。この遷移金属化合物としてより具体的には、遷移金属酸化物、遷移金属窒化物、遷移金属酸窒化物、遷移金属酸化炭化物、遷移金属窒化炭化物、遷移金属酸窒化炭化物などを挙げることができる。
【0027】
また、低反射層14の構成材料は、ケイ素含有材料であってもよい。ケイ素含有材料としては、金属としてケイ素のみを含有するものとして、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物が挙げられる。このケイ素化合物としてより具体的には、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物、ケイ素酸化炭化物、ケイ素窒化炭化物、ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができる。
また、金属として、ケイ素とケイ素以外の金属とを含有するものとして、遷移金属とケイ素との合金、遷移金属と、ケイ素と、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属ケイ素化合物も好適である。この遷移金属ケイ素化合物としてより具体的には、遷移金属ケイ素酸化物、遷移金属ケイ素窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化物、遷移金属ケイ素酸化炭化物、遷移金属ケイ素窒化炭化物、遷移金属ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができる。
【0028】
遷移金属としては、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル及びタングステンから選ばれる1種以上が好適な材料であるが、特に、修正加工性の点からタンタルであることが好ましい。
タンタルの含有量は、低反射層14全体に対して10原子%以上70原子%以下の範囲内が好ましい。低反射層14の修正エッチングレートの観点からタンタルの含有量は10原子%以上が好ましく、低反射層14の反射率の観点からタンタルの含有量は70原子%以下が好ましい。また、タンタルの含有量は、低反射層14全体に対して20原子%以上50原子%以下の範囲内がより好ましい。
【0029】
また、低反射層14の遷移金属含有材料は、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能であるが、組成を選ぶことにより酸素を含まない塩素ガスによりエッチングすることも可能である。
なお、上述したケイ素含有材料の組成は、ケイ素が10原子%以上80原子%以下、特に30原子%以上50原子%以下、酸素が0原子%以上60原子%以下、特に0原子%以上40原子%以下、窒素が0原子%以上57原子%以下、特に20原子%以上50原子%以下、炭素が0原子%以上20原子%以下、特に0原子%以上5原子%以下、遷移金属が0原子%以上35原子%以下、特に1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
【0030】
本実施形態の低反射層14は単層構造とすることも多層構造とすることもできる。単層構造とすることで、膜構成やこれを反映したプロセスを単純化することができる。
低反射層14と遮光層13やハードマスク膜15との間の密着性が低く、パターン欠陥等を起こしやすい場合は、低反射層14が遮光層13と接している部分、又はハードマスク膜15と接する部分、即ち、単層構造の場合は、低反射層14の厚さ方向両端面部の一方又は双方、多層構造の場合は、低反射層14の厚さ方向両端に位置する層の一方又は双方を、例えば窒素及び/又は酸素を含有する材料とし、この窒素及び/又は酸素の含有率を調整することにより、密着性を改善することができる。また、低反射層14をその厚さ方向において連続的又は段階的に組成が傾斜するように形成することでエッチングパターンの断面形状の垂直性を向上させることが可能である。これらの構造は、反応性スパッタリングのスパッタリング条件のコントロールにより容易に形成することができる。
【0031】
厚さ方向の組成を傾斜させた低反射層14の組成は、ケイ素が0原子%以上90原子%以下、特に10原子%以上90原子%以下、酸素が0原子%以上67原子%以下、特に5原子%以上67原子%以下、窒素が0原子%以上57原子%以下、特に5原子%以上50原子%以下、炭素が0原子%以上20原子%以下、特に0原子%以上5原子%以下、遷移金属が0原子%以上95原子%以下、特に1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態において、低反射層14の膜厚は、フォトマスクを用いた露光における露光光の波長、フォトマスクの作製又は使用時に必要な検査に用いる光の波長、低反射層14の組成によっても異なるが、3nm以上30nm以下の範囲内の膜厚とすることにより反射防止効果が得られ、特にArFエキシマレーザ露光用としては8nm以上25nm以下の範囲内であることが好ましい。
特に、低反射層14の構成材料が遷移金属含有材料やケイ素含有材料の場合、その膜厚は3nm以上30nm以下の範囲内が好適であり、さらに低反射性と修正加工性の両立を考慮した場合には4nm以上10nm以下の範囲内がより好ましい。低反射層14の膜厚が3nm未満では十分な反射効果が得られない場合があり、30nmを超えると厚さ250nm以下の薄いレジストで高精度の加工が困難になったり、膜応力により基板11の反りの原因になったりするおそれがある。
【0033】
(バイナリーマスクの全体構成)
以下、本発明の実施形態に係るバイナリーマスク10の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るバイナリーマスクの構成を示す断面概略図である。図2に示すバイナリーマスク10は、波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用され、回路パターン(転写パターン)が形成されたバイナリーマスクであって、露光波長に対して透明な基板11と、基板11の上に成膜され、回路パターンを備えた遮光膜12(12a)と、を備えている。また、遮光膜12(12a)は、露光光に対して遮光性を有する遮光層13と、遮光層13の上に形成され、露光光の反射を低減する低反射層14と、を備えている。
なお、本発明の実施形態に係るバイナリーマスク10を構成する基板11及び回路パターンを備えた遮光膜12(12a)の組成や構成等は、上述した本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランク100の構成する基板11及び遮光膜12の組成や構成等と同じである。そのため、基板11及び回路パターンを備えた遮光膜12(12a)の組成や構成等に関する詳細な説明については省略する。
【0034】
(遮光層13と低反射層14の各エッチングレート)
従来技術に係るバイナリーマスクブランク100またはバイナリーマスク10は、MoSiONからなる低反射層14と、MoSiNからなる遮光層13との組み合わせで構成されている。しかしながら、この材料構成は、遮光層13に対し、低反射層14の修正エッチングレートが非常に遅く、低反射層14を加工できるエッチング条件で修正加工を行った際に、遮光層13において過剰なサイドエッチングを引き起こしている。
従って、修正加工する際には、低反射層14と遮光層13のエッチングレートはなるべく等しくすることが好ましく、低反射層14のエッチングレートを速くするか、遮光層13のエッチングレートを遅くする必要がある。ここで、遮光層13のエッチングレートを遅くする方向としては、従来のMoSiNのMo比率を落とし、Si比率を上げることが有効であるが、十分な遮光性を得ようとした場合、比較的膜厚が厚くなってしまう。そこで、本願発明者らは、低反射層14のエッチングレートを速くする方向で材料構成を検討した結果、Taを用いた低反射層14であればMoSiNを用いた低反射層14よりも速い修正エッチングレートを得ることが可能であることが明らかとなった。
【0035】
このように、バイナリーマスクブランク100またはバイナリーマスク10の修正エッチング加工性の改善という課題において、本願発明者らは、低反射層14と遮光層13の修正エッチングレートをなるべく等しくすることが重要であることを見出した。そこで、本願では、「低反射層14と遮光層13の修正エッチングレート比」という新たなパラメータを導入することで、修正加工性が良好となる膜構成を限定する(選択する)という新たな技術的手法を開示する。
【0036】
本実施形態では、遮光層13の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、低反射層14の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、遮光層13と低反射層14のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上となるように、より好ましくはR12が1に近くなるように、膜構成を調整する。R12の調整は、遮光層13及び低反射層14の各構成材料の種類や含有量を変更することで行う。
R12が0.5以上であれば、遮光層13のサイドエッチング量を5nm以内にすることができる。遮光層13のサイドエッチング量が5nm以内であれば、バイナリーマスクの寸法精度の低下を低減することができる。
また、R12の上限値は、特に制限されるものではないが、より好ましくは6.0以下である。R12を6.0以下にすることで低反射層サイドエッチングを抑えられるのでより好ましい。
【0037】
低反射層14と遮光層13の各エッチングレートの測定は、例えば、遮光膜12(遮光膜パターン12a)に対して電子線修正装置(MeRiT MG45:CarlZeiss社製)を用いて、フッ素系ガス、例えばフッ素とキセノンとからなるガス雰囲気(XeF)にて電子線を照射して行う。この時のフッ素系ガス流量は、例えば、温度にて制御されるコールドトラップ技術を用いて設定する。また、フッ素系ガスの温度は、0℃とする。また、EB電流は50pA、EB加速電圧は1kVに設定する。
【0038】
本実施形態では、上述した測定条件下で、下記測定方法を用いて低反射層14と遮光層13の各エッチングレートを決定した。
まず、四角形(500nm×500nm)のHoleパターンを電子線修正にて形成し、加工箇所の掘り込み量をAFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定する。
次に、その掘り込み量を加工に要した時間で割った「単位時間当たりの掘り込み量」を低反射層14と遮光層13の各修正エッチングレートと定義した。
また、各修正エッチングレートは、マスク面内5点平均の値とした。
【0039】
こうして測定した、遮光層13のみを電子線修正する際の修正エッチングレートR1は、例えば、2.5nm/min以上であれば好ましく、3.0nm/min以上であればより好ましく、3.5nm/min以上であればさらに好ましい。
遮光層13の修正エッチングレートR1が上記数値範囲内であれば、基板11との選択比が適切となるため、不要な基板11の掘り込みを抑えることができる。
また、こうして測定した、低反射層14のみを電子線修正する際の修正エッチングレートR2は、遮光層13のみを電子線修正する際の修正エッチングレートR1に対して、0.5倍以上であればよく、0.5倍以上6.0倍以下の範囲内であれば好ましく、0.5倍以上2.0倍以下の範囲内であればより好ましい。
【0040】
(バイナリーマスクの製造方法)
本実施形態に係るバイナリーマスクブランク100を用いるバイナリーマスク10の製造方法は、基板11上に遮光層13と低反射層14を少なくとも備えた遮光膜12を形成する工程と、基板11上に形成された遮光膜12上にレジストパターン16を形成する工程と、レジストパターン16を形成した後に、フッ素系ドライエッチング(F系)にて遮光膜12(遮光層13と低反射層14)にパターンを形成する工程と、遮光膜12にパターンを形成した後に、レジストパターン16を除去する工程と、レジストパターン16を除去した後、欠陥検査をする工程と、を有している。さらに、本実施形態に係るバイナリーマスクブランク100を用いるバイナリーマスク10の製造方法は、上述した欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の遮光膜12(遮光層13と低反射層14)を、フッ素系ガスを用いた電子線修正エッチングする。
【0041】
また、本実施形態に係るバイナリーマスクブランク100を用いるバイナリーマスク10の製造方法は、基板11上に遮光層13と低反射層14を少なくとも備えた遮光膜12を形成する工程と、基板11上に形成された遮光膜12上にハードマスク膜15を形成する工程と、遮光膜12上に形成されたハードマスク膜15上にレジストパターン16を形成する工程と、レジストパターン16を形成した後に、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)にてハードマスク膜15にパターンを形成する工程と、ハードマスク膜15にパターンを形成した後に、フッ素系ドライエッチング(F系)にて遮光膜12(遮光層13と低反射層14)にパターンを形成する工程と、遮光膜12にパターンを形成した後に、レジストパターン16を除去し、ハードマスク膜15を除去する工程と、ハードマスク膜15を除去した後に、欠陥検査をする工程と、を有していてもよい。さらに、本実施形態に係るバイナリーマスクブランク100を用いるバイナリーマスク10の製造方法は、上述した欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の遮光膜12(遮光層13と低反射層14)を、フッ素系ガスを用いた電子線修正エッチングする。
ここで、上述した、本発明の実施形態に係るハードマスク膜15について説明する。
【0042】
(ハードマスク膜)
ハードマスク膜15は、上述した本発明の実施形態に係るバイナリーマスクブランク100(低反射層14)の上に形成される層である。
本実施形態におけるハードマスク膜15は、フッ素系ドライエッチングに耐性を有するものである必要がある。ここで、上記「フッ素系ドライエッチングに耐性を有する」とは、ハードマスク膜15に対する遮光膜12のフッ素系ドライエッチング選択比が2以上であることを意味する。
【0043】
ハードマスク膜15はフッ素系ドライエッチングにおいて、遮光膜12とのエッチング選択比(ハードマスク膜15に対する遮光膜12のフッ素系ドライエッチング選択比)が2以上であると、パターンのサイドエッチング量が抑えられ、より微細なパターン形成が可能なフォトマスクブランクとすることができるので好ましい。
また、ハードマスク膜15と基板11とのフッ素系ドライエッチングでのエッチング選択比(ハードマスク膜15に対する基板11のフッ素系ドライエッチング選択比)を10以上とすることにより、基板11をエッチングしてフォトマスクを形成するレベンソン型や、CPL型のフォトマスクの製造により適したフォトマスクブランクとすることができる。
【0044】
このようなハードマスク膜15としては、クロム系材料や、タンタルを含み、ケイ素を含まない材料などを用いることができる。
クロム系材料としては、クロム単体、又はクロムと、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有するクロム化合物が挙げられ、ケイ素を含有しないものが好ましい。このクロム化合物としてより具体的には、クロム酸化物、クロム窒化物、クロム酸窒化物、クロム酸化炭化物、クロム窒化炭化物又はクロム酸窒化炭化物を挙げることができる。これらの材料は、フッ素系ドライエッチングに対し高い耐性を有する。
【0045】
特に、クロム含有率が50原子%以上、特に60原子%以上であると、フッ素系ドライエッチング耐性がよく、遮光膜12及び/又は基板11に十分なエッチング選択性を与えることができると同時に、ハードマスク膜15を、塩素と酸素とを含有するドライエッチング条件でドライエッチングして、パターンを形成することができるため好ましい。
クロム系材料としては、例えば、クロムが50原子%以上100原子%以下、特に60原子%以上100原子%以下、酸素が0原子%以上50原子%以下、特に0原子%以上40原子%以下、窒素が0原子%以上50原子%以下、特に0原子%以上40原子%以下、炭素が0原子%以上20原子%以下、特に0原子%以上10原子%以下とすることで、ハードマスク膜15として、遮光膜12及び/又は基板11に十分なエッチング選択性を与える膜とすることができる。
【0046】
本実施形態のハードマスク膜15は単層構造とすることも多層構造とすることもできる。単層構造とすれば、膜構成やこれを反映したプロセスを単純化することができる。
ハードマスク膜15と遮光膜12等との間の密着性が低く、パターン欠陥等を起こしやすい場合や、フォトマスク製造時において、ハードマスク膜15の上に直接レジストパターン16を形成したときに、レジストパターン16のすそ引きやくびれが生じて断面形状が悪くなる場合などは、ハードマスク膜15が遮光膜12等と接している部分、又はレジストパターン16が接する部分、即ち、単層構造の場合は、ハードマスク膜15の厚さ方向両端面部の一方又は双方、多層構造の場合は、ハードマスク膜15の厚さ方向両端に位置する層の一方又は双方を、例えば窒素及び/又は酸素を含有する材料とし、この窒素及び/又は酸素の含有率を調整することにより、密着性を改善することができる。また、ハードマスク膜15をその厚さ方向において連続的又は段階的に組成が傾斜するように形成することでエッチングパターンの断面形状の垂直性を向上させることが可能である。これらの構造は、反応性スパッタリングのスパッタリング条件のコントロールにより容易に形成することができる。
【0047】
厚さ方向の組成を傾斜させたハードマスク膜15の組成は、クロムが50原子%以上100原子%以下、特に60原子%以上100原子%以下、酸素が0原子%以上60原子%以下、特に0原子%以上50原子%以下、窒素が0原子%以上50原子%以下、特に0原子%以上40原子%以下、炭素が0原子%以上20原子%以下、特に0原子%以上10原子%以下であることが好ましい。
なお、フッ素系ドライエッチングに対しエッチング耐性をもつハードマスク膜15は、ドライエッチング時に転写パターンの粗密依存性の問題が生じないように、膜厚を十分に薄いものとし、これによりハードマスク膜15の粗密依存性の問題が回避される。本実施形態は、遮光膜12にフッ素系ドライエッチングでエッチング加工できない膜を用いた従来のフォトマスクブランクと比較して、転写パターンの粗密依存性は明らかに低いものとなる。
【0048】
ハードマスク膜15の膜厚は、膜構成に応じて適宜選ぶことができる。通常、遮光膜12をエッチングするため、また、遮光膜12と共に基板11をエッチングするためには2~55nmとすることで十分なハードマスク機能(エッチングマスク機能)が得られるが、ハードマスク膜15の粗密依存性がより低いものとするためには、特に2~30nmとすることが好ましい。
なお、本実施形態のバイナリーマスク10がハードマスク膜15を除去して使用されるものであるときには、遮光層13と低反射層14とを合わせた光学濃度OD(つまり、遮光膜12の、波長200nm以下の露光光に対する光学濃度OD)が2.0以上、特に2.7以上、とりわけ3.0以上であることが好ましい。光学濃度ODが2.0以上であれば、遮光膜12として機能しているといえる。
【0049】
また、本実施形態のバイナリーマスク10がハードマスク膜15を除去しないで使用されるものであるときには、ハードマスク膜15と遮光層13と低反射層14とを合わせた光学濃度OD(つまり、遮光膜12とハードマスク膜15とが積層した状態における、波長200nm以下の露光光に対する光学濃度OD)が2.0以上、特に2.7以上、とりわけ3.0以上であることが好ましい。光学濃度ODが2.0以上であれば、遮光膜12として機能しているといえる。
【0050】
ハードマスク膜15は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
ターゲットとスパッタガスは膜組成によって選択される。例えば、クロムを含有する膜の成膜方法としては、クロムを含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみ、酸素等の反応性ガスのみ、又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、ターゲットに対する印加電力、ターゲットと基板との距離、成膜チャンバー内の圧力を調整してもよい。
【0051】
以下、本発明の実施形態に係るバイナリーマスク10の製造方法が有する各工程について詳しく説明する。
【0052】
(第1の製造方法)
図3は、図1に示すバイナリーマスクブランク100を用いたバイナリーマスク10の製造工程を示す断面概略図である。図3(a)は、基板11上に遮光層13と低反射層14とを備える遮光膜12を形成する工程を示す。図3(b)は、遮光膜12上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16を形成する工程を示す。図3(c)は、レジストパターン16に沿ってフッ素系ドライエッチング(F系)により遮光膜12をパターニングし、遮光膜パターン12aを形成する工程を示す。図3(d)は、レジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。こうして、本実施形態に係るバイナリーマスク10を製造する。
なお、本製造工程では、レジストパターン16を剥離除去した後に欠陥検査をする工程を有している。この欠陥検査にて欠陥を検出した場合には、欠陥部位の遮光膜12(遮光層13と低反射層14)を、フッ素系ガスを用いた電子線修正エッチングすることで、本実施形態に係るバイナリーマスク10を製造する。
【0053】
こうして製造された本実施形態に係るバイナリーマスク10は、波長200nm以下の露光光が適用されるバイナリーマスクであって、基板11と、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成された遮光膜12と、を備えている。また、回路パターンを備えた遮光膜12(12a)は、露光光に対して遮光性を有する遮光層13と、遮光層13の上に形成され、露光光の反射を低減する低反射層14と、を含んでいる。さらに、遮光層13の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、低反射層14の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、遮光層13と低反射層14のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上となっている。
【0054】
図3(b)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上250nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められるバイナリーマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン16のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、200nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は35μC/cmから100μC/cmの範囲内であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン16を得る。
また、図3(d)の工程において、レジストパターン16の剥離除去は、剥離液によるウェット剥離であってもよく、また、ドライエッチングによるドライ剥離であってもよい。
【0055】
また、図3(c)の工程において、遮光膜12をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、ケイ素系化合物膜、タンタル化合物膜、あるいはモリブデン化合物膜等をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものであってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて酸素などの活性ガスや窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。図3(c)の場合は、上層のレジストパターン16は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しており、本工程では遮光膜12をパターニングするためのマスクとして機能するため、完全には除去されずに残る。図3(c)では、同時に基板11を1nmから3nm程度掘り込み、遮光膜12の抜け不良を防止することが一般的である。
【0056】
(第2の製造方法)
図4は、図1に示すバイナリーマスクブランク100を用いたバイナリーマスク10の製造工程を示す断面概略図である。図4(a)は、基板11上に遮光層13と低反射層14とを備える遮光膜12を形成し、遮光膜12上にハードマスク膜15を形成する工程を示す。図4(b)は、ハードマスク膜15上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16を形成する工程を示す。図4(c)は、レジストパターン16に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりハードマスク膜15をパターニングする工程を示す。図4(d)は、ハードマスク膜15のパターンに沿ってフッ素系ドライエッチング(F系)により遮光膜12をパターニングし、遮光膜パターン12aを形成する工程を示す。図4(e)は、レジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図4(f)は、パターンが形成された遮光膜12(低反射層14)上から、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)にてハードマスク膜15を除去する工程を示す。こうして、本実施形態に係るバイナリーマスク10を製造する。
なお、本製造工程では、ハードマスク膜15を除去した後に欠陥検査をする工程を有している。この欠陥検査にて欠陥を検出した場合には、欠陥部位の遮光膜12(遮光層13と低反射層14)を、フッ素系ガスを用いた電子線修正エッチングすることで、本実施形態に係るバイナリーマスク10を製造する。
【0057】
こうして製造された本実施形態に係るバイナリーマスク10は、波長200nm以下の露光光が適用されるバイナリーマスクであって、基板11と、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成された遮光膜12と、を備えている。また、回路パターンを備えた遮光膜12(12a)は、露光光に対して遮光性を有する遮光層13と、遮光層13の上に形成され、露光光の反射を低減する低反射層14と、を含んでいる。さらに、遮光層13の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、低反射層14の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、遮光層13と低反射層14のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上となっている。
【0058】
図4(b)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上250nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められるバイナリーマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン16のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、200nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は35μC/cmから100μC/cmの範囲内であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン16を得る。
また、図4(e)の工程において、レジストパターン16の剥離除去は、剥離液によるウェット剥離であってもよく、また、ドライエッチングによるドライ剥離であってもよい。
【0059】
また、図4(c)の工程において、クロム単体、又はクロム化合物からなるハードマスク膜15をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の遮光膜12は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0060】
また、図4(d)の工程において、遮光膜12をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、ケイ素系化合物膜、タンタル化合物膜、あるいはモリブデン化合物膜等をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものであってもよく、フッ素系ガスとしては、CFやCやSFが一般的であり、必要に応じて酸素などの活性ガスや窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。図4(d)の場合は、上層のハードマスク膜15又はレジストパターン16は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しており、本工程では、主に上層のハードマスク膜15が遮光膜12をパターニングするためのマスクとして機能し、完全には除去されずに残る。レジストパターン16については、必ずしもドライエッチング後に残っている必要はなく、上層のハードマスク膜15がフッ素系ドライエッチング(F系)に対して十分な耐性を有している場合、ドライエッチング前に剥離してもよい。図4(d)では、同時に基板11を1nmから3nm程度掘り込み、遮光膜12の抜け不良を防止することが一般的である。
【0061】
また、図4(f)の工程において、ハードマスク膜15を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の遮光膜12及び基板11は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0062】
(その他の実施形態)
本実施形態では、図1に示すように、基板11と、遮光層13及び低反射層14を有する遮光膜12とを備えたバイナリーマスクブランク100の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バイナリーマスクブランク100は、図5に示すように、遮光膜12上に上述したハードマスク膜15を備えた形態であってもよい。上記形態であれば、より微細なフォトマスクパターンを作成することができる。
ハードマスク膜15の膜厚は、遮光膜エッチング時の遮光膜13との選択比とハードマスク膜15そのものの加工性の観点から決められ、十分にF系エッチング耐性を有するのであれば、加工性の観点から薄い方が好ましい。具体的には20nm以下が好ましく、5nm以上10nm以下であればより好ましい。
【0063】
また、本実施形態では、図1に示すように、基板11と、遮光膜12を構成する遮光層13とが接しているバイナリーマスクブランク100の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バイナリーマスクブランク100は、図6に示すように、基板11と、遮光膜12を構成する遮光層13との間に、低反射層14´を備えていてもよい。つまり、バイナリーマスクブランク100は、基板11、低反射層(第2の低反射層)14´、遮光層13、低反射層(第1の低反射層)14をこの順に備えた形態であってもよい。上記形態であれば、より転写性能が高いフォトマスクを作成することができる。
【0064】
低反射層(第2の低反射層)14´の膜厚は、裏面反射率と加工性の観点から決定される。裏面反射率を抑える場合、薄すぎると十分な低反射性能が得られず、また、その一方で、厚くしすぎると加工性が悪化し、良好なパターン形状を得られなくなる。これらの両立を考慮した場合、1nm以上10nm以下の膜厚が好ましい。
また、低反射層(第2の低反射層)14´の構成材料は、低反射層(第1の低反射層)14の構成材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、低反射層14´は、低反射層14よりもタンタルの含有量が多くてもよいし、少なくてもよい。タンタルの含有量を多くした場合には、電子線修正エッチングレートが上がるため、修正加工性の観点では好ましい。しかし、その一方で低反射性能は低下するため、これらのバランスを考慮した含有量を選択することが求められる。
【0065】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0066】
(実施例1)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素とからなる遮光層を60nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Si:N=80:20(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。
【0067】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、実施例1に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0068】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例1に係るバイナリーマスクを得た。
【0069】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行った。以下、その方法について説明する。
(修正方法)
バイナリーマスク10の電子線修正の方法について図7図8を用いて説明する。なお、ここでは、ハードマスク膜15を除去した後に欠陥検査を行い、修正を行う場合について説明するが、レジストパターン16を除去した後であってハードマスク膜15を除去する前に欠陥検査を行い、修正を行ってもよい。
【0070】
図7にバイナリーマスク10における遮光膜12(遮光膜パターン12a)の一部を拡大した図を示す。より詳しくは、図7(a)は、本実施例に係るバイナリーマスク10の修正工程前の構造を示す概略平面図であり、図7(b)は、本実施例に係るバイナリーマスク10の修正工程前の構造を示す概略断面図である。
以下、レジストパターン16を用いたドライエッチング処理により、形成した遮光膜12(遮光膜パターン12a)に対して電子線修正エッチングを行う際の具体的な手法について説明する。なお、図7(a)において、「L」は遮光膜12が形成された領域を示し、「S」は基板11が露出した領域を示す。また、図7において、「12b」は、電子線修正エッチング箇所を示す。
【0071】
まず、図7に示すように、遮光膜12(遮光膜パターン12a)に対して電子線修正装置(MeRiT MG45:CarlZeiss社製)を用いて、フッ素系ガス、例えばフッ素とキセノンとからなるガス雰囲気(XeF)にて電子線を照射し、電子線修正エッチングを行った。この時のフッ素系ガス流量は、温度にて制御されるコールドトラップ技術を用いた。本実施例では、フッ素系ガスの温度を0℃とした。また、EB電流は50pA、EB加速電圧は1kVに設定した。
こうして、図8に示すように、遮光膜12(遮光膜パターン12a)を電子線修正エッチングしたバイナリーマスク10を得た。
【0072】
以下、上述した修正加工性の各評価を表1に示す。
なお、表1に示す「低反射層/遮光層 R12(R2/R1)」とは、低反射層修正エッチングレートR2と、遮光層修正エッチングレートR1との比を示す。
実施例1では、遮光膜12(遮光膜パターン12a)の電子線修正エッチングにおける「R12(R2/R1)」は、17.80であることを確認した。
【0073】
上記「R12(R2/R1)」は、その値が大きい程、低反射層の電子線修正エッチングと比べて遮光層の電子線修正エッチングが困難であり、電子線修正エッチングにおける過剰な遮光層のサイドエッチングが低減されることを意味する。「R12(R2/R1)」が0.5以上であれば、遮光層における過剰なサイドエッチングは発生し難くなり、「R12(R2/R1)」が1.0以上であれば、遮光層における過剰なサイドエッチングはさらに発生し難くなる。なお、「R12(R2/R1)」が0.5未満であれば、電子線修正エッチングにおいて遮光層に過剰なサイドエッチングが発生する可能性があるといえる。
上記測定結果から、実施例1のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が17.80であるため、遮光膜の電子線修正時に遮光層における過剰なサイドエッチングの発生は防止可能であることが確認された。
【0074】
また、表1に示すように、電子線修正エッチングにおける遮光層13のサイドエッチング量は、0nmであることを確認した。つまり、遮光層13の側面は基板11表面に対して垂直であった。なお、本実施例において測定した「遮光層13のサイドエッチング量」とは、「サイドエッチングの幅」を意味し、図9に示すように、遮光膜12の電子線修正エッチング箇所に接する側面において、遮光膜12の面内方向において最も突出した部分を凸部とし、遮光膜12の面内方向において最も後退した部分を凹部とした場合に、遮光膜12の面内方向における凸部から凹部までの距離をいう。図9では、上述の凸部は低反射層14の端部に該当し、上述の凹部は遮光層13の表面部分に該当する。本発明の実施形態に係るサイドエッチング量は、5nm以下であることが好ましい。サイドエッチング量が5nm以下であれば、転写性能の悪化を低減することができる。
【0075】
(実施例2)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素とからなる遮光層を60nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Si:N=80:20(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、モリブデンとケイ素と窒素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Mo:Si:N=10:35:55(原子%比)であった。
【0076】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、実施例2に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0077】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例2に係るバイナリーマスクを得た。
【0078】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行い、電子線修正における各層のエッチングレート等を測定したところ、「R12(R2/R1)」は3.38であり、「遮光層のサイドエッチング量」は0nmであった。
以上の結果から、実施例2のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が3.38であるため、遮光膜の電子線修正時に遮光層における過剰なサイドエッチングの発生は防止可能であることが確認された。
【0079】
(実施例3)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素とからなる遮光層を60nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Si:N=80:20(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、モリブデンとケイ素と窒素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Mo:Si:O:N=5:40:35:20(原子%比)であった。
【0080】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、実施例3に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0081】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例3に係るバイナリーマスクを得た。
【0082】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行い、電子線修正における各層のエッチングレート等を測定したところ、「R12(R2/R1)」は1.56であり、「遮光層のサイドエッチング量」は0nmであった。
以上の結果から、実施例3のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が1.56であるため、遮光膜の電子線修正時に遮光層における過剰なサイドエッチングの発生は防止可能であることが確認された。
【0083】
(実施例4)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光層を45nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンシリサイドを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Mo:Si:N=55:20:25(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。
【0084】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、実施例4に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0085】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、実施例4に係るバイナリーマスクを得た。
【0086】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行い、電子線修正における各層の各エッチングレート等を測定したところ、「R12(R2/R1)」は0.66であり、「遮光層のサイドエッチング量」は2nmであった。
以上の結果から、実施例4のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が0.66であるため、遮光膜の電子線修正時に遮光層における過剰なサイドエッチングの発生は防止可能であることが確認された。
【0087】
(比較例1)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる遮光層を45nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンシリサイドを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Mo:Si:N=55:20:25(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、モリブデンとケイ素と酸素と窒素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Mo:Si:O:N=5:40:35:20(原子%比)であった。
【0088】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、比較例1に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0089】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例1に係るバイナリーマスクを得た。
【0090】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行い、電子線修正における各層の各エッチングレート等を測定したところ、「R12(R2/R1)」は0.06であり、「遮光層のサイドエッチング量」は22nmであった。つまり、比較例1に係るバイナリーマスクは、「R12(R2/R1)」が0.5未満のバイナリーマスクである。
以上の結果から、比較例1のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が0.06であるため、遮光膜の電子線修正時に、遮光層に過剰なサイドエッチングが発生することが確認された。
【0091】
(比較例2)
石英基板の上に1つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素とからなる遮光層を45nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。この遮光層の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=70:30(原子%比)であった。
次に、この遮光層の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素とからなる低反射層を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素とを用いた。この低反射層の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。
【0092】
次に、この低反射層の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素とからなるハードマスク膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素とを用いた。このハードマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
こうして、比較例2に係るバイナリーマスクブランクを得た。
次に、このハードマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cmで電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
【0093】
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜(遮光層と低反射層)をパターニングした。エッチングガスはSFとヘリウムとを用い、ガス圧力は4mTorr、ICP電力は200W、バイアスパワーは50Wに設定した。オーバーエッチングは30%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、ハードマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の遮光膜(遮光層と低反射層)及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
こうして、比較例2に係るバイナリーマスクを得た。
【0094】
次に、このバイナリーマスクに対し、電子線修正を行い、電子線修正における各層の各エッチングレート等を測定したところ、「R12(R2/R1)」は0.37であり、「遮光層のサイドエッチング量」は9nmであった。つまり、比較例2に係るバイナリーマスクは、「R12(R2/R1)」が0.5未満のバイナリーマスクである。
以上の結果から、比較例2のバイナリーマスクであれば、「R12(R2/R1)」が0.37であるため、遮光膜の電子線修正時に、遮光層に過剰なサイドエッチングが発生することが確認された。
【0095】
【表1】
【0096】
以上、上記実施例により、本発明のバイナリーマスクブランクおよびこれを用いて作成されるバイナリーマスクについて説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの実施例を変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記の記載から自明である。
【0097】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用されるバイナリーマスクの作製に用いられるバイナリーマスクブランクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成された遮光膜と、を備え、
前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、
前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とするバイナリーマスクブランク。
(2)
前記低反射層は、タンタルと、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする上記(1)に記載のバイナリーマスクブランク。
(3)
前記遮光層は、ケイ素を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のバイナリーマスクブランク。
(4)
前記遮光層は、ケイ素と、遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有し、
前記遷移金属は、モリブデンであり、
前記低反射層は、タンタルを含有することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のバイナリーマスクブランク。
(5)
前記遮光膜は、波長200nm以下の露光光に対する光学濃度(Optical Density)が2.0以上であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載のバイナリーマスクブランク。
(6)
前記遮光膜の膜厚が30nm以上60nm以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載のバイナリーマスクブランク。
(7)
前記低反射層の上にハードマスク膜をさらに備え、
前記ハードマスク膜は、クロムと、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種と、を含有することを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載のバイナリーマスクブランク。
(8)
波長200nm以下の露光光を光源とするフォトリソグラフィに適用され、転写パターンが形成されたバイナリーマスクであって、
透明基板と、前記透明基板の上にパターン形成された遮光膜と、を備え、
前記遮光膜は、前記露光光に対して遮光性を有する遮光層と、前記遮光層の上に形成され、前記露光光の反射を低減する低反射層と、を含み、
前記遮光層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR1とし、前記低反射層の電子線修正装置におけるエッチングレートをR2とし、前記遮光層と前記低反射層のエッチングレートの比率(R2/R1)をR12としたとき、R12が0.5以上であることを特徴とするバイナリーマスク。
(9)
上記(8)に記載のバイナリーマスクの製造方法であって、
前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、
前記透明基板上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記レジストパターンを除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とするバイナリーマスクの製造方法。
(10)
上記(8)に記載のバイナリーマスクの製造方法であって、
前記透明基板の上に遮光膜を形成する工程と、
前記遮光膜の上にハードマスク膜を形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された前記ハードマスク膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記ハードマスク膜にパターンを形成する工程と、
前記ハードマスク膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去し、前記ハードマスク膜を除去する工程と、
前記ハードマスク膜を除去した後に、電子線修正をする工程と、を含むことを特徴とするバイナリーマスクの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明では、バイナリーマスクブランクにおける遮光層の電子線修正エッチングレートR1と、低反射層の電子線修正エッチングレートR2とを適切な範囲で選択したので、28nm以下のロジック系デバイス、又は30nm以下のメモリ系デバイス製造に対応した、微細なパターンを高精度で形成したバイナリーマスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0099】
10・・・バイナリーマスク
11・・・露光波長に対して透明な基板(基板)
12・・・遮光膜
12a・・遮光膜パターン
13・・・遮光層
14・・・低反射層
15・・・ハードマスク膜
16・・・レジストパターン
100・・バイナリーマスクブランク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9