(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145580
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】旋削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20241004BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20241004BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B23B27/00 D
B23Q17/22 A
B23Q17/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057995
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亘
【テーマコード(参考)】
3C029
3C046
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029CC10
3C046BB01
(57)【要約】
【課題】ケーブルの収容スペースを確保し、組立作業の煩雑化を抑えることができる旋削工具を提供する。
【解決手段】旋削工具は、軸方向の一方側の先端部に台座を有する工具本体と、台座に着脱可能に取り付けられる切削インサートと、工具本体に設けられ、切削インサートにより切削加工された被削材の加工面までの距離を検出する距離センサと、工具本体の一部に形成された取付部に取り付けられ、距離センサを保持するセンサ保持部を有するホルダー部材と、を備え、ホルダー部材は、取付部に対向する側に、少なくとも距離センサのケーブルが収容可能な凹部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具軸に沿って延び、前記工具軸に沿った軸方向の一方側の先端部に台座を有する工具本体と、
前記台座に着脱可能に取り付けられる切削インサートと、
前記工具本体に設けられ、前記切削インサートにより切削加工された被削材の加工面までの距離を検出する距離センサと、
前記工具本体の一部に形成された取付部に取り付けられ、前記距離センサを保持するセンサ保持部を有するホルダー部材と、
を備え、
前記ホルダー部材は、前記取付部に対向する側に、少なくとも前記距離センサのケーブルが収容可能な凹部を有する、
旋削工具。
【請求項2】
前記工具本体は、
前記工具本体の内部に形成されて前記軸方向に延び、前記軸方向の一方側で前記凹部内に連通する収容孔をさらに備え、
前記ケーブルは、前記凹部内から前記収容孔を通して前記工具本体の前記軸方向の他方側に導かれる、
請求項1に記載の旋削工具。
【請求項3】
前記凹部内に設けられ、前記軸方向に交差する前記工具本体の径方向外側を撮影可能となるよう配置されるカメラ、をさらに備える、
請求項2に記載の旋削工具。
【請求項4】
前記凹部内に設けられ、前記カメラにより撮影される前記加工面を照らす照明装置、をさらに備える
請求項3に記載の旋削工具。
【請求項5】
前記取付部の底面に沿って設けられ、前記カメラ、および前記照明装置が固定される基台部材、をさらに備える、
請求項4に記載の旋削工具。
【請求項6】
前記基台部材は、前記カメラ、および前記照明装置の少なくとも一方のケーブルを前記収容孔に導出するケーブル挿通部を有する、
請求項5に記載の旋削工具。
【請求項7】
前記基台部材は、前記ホルダー部材に取り付けられる、
請求項5に記載の旋削工具。
【請求項8】
前記ホルダー部材において径方向内側を向く先端面と、前記取付部において前記工具本体の径方向外側を向く底面と、の間に、前記凹部の周囲を取り囲むように形成された環状の第1シール部をさらに備える、
請求項1または2に記載の旋削工具。
【請求項9】
前記ホルダー部材は、前記軸方向の他方側を向くホルダー端面を有し、
前記工具本体は、前記ホルダー部材に対して前記軸方向の他方側に形成され、前記ホルダー端面に対向する本体端面を有し、
前記ホルダー端面と前記本体端面との間に挟み込まれた第2シール部をさらに備える、
請求項8に記載の旋削工具。
【請求項10】
前記取付部は、前記工具本体の外周面から前記工具本体の径方向内側に窪むように形成され、
前記工具本体の径方向外側を向く底面と、
前記底面において、前記軸方向および前記径方向に交差する幅方向の両側から径方向外側に立ち上がる一対の壁部と、を有し、
一対の前記壁部の各々において、前記幅方向で前記ホルダー部材に対向する側壁面から前記ホルダー部材側に突出し、前記側壁面から前記ホルダー部材側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状の位置決め凸部と、
前記ホルダー部材において前記幅方向の両側で前記側壁面に対向するホルダー側面に形成され、前記側壁面から離間するにしたがって内径が漸次縮小するテーパ状の位置決め凹部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の旋削工具。
【請求項11】
一対の前記壁部の少なくとも一方に設けられ、前記壁部を前記幅方向に貫通するネジ部材をさらに備え、
前記位置決め凸部は、前記ネジ部材の先端に形成される、
請求項10に記載の旋削工具。
【請求項12】
前記位置決め凸部および前記位置決め凹部は、前記軸方向に間隔をあけて複数箇所に形成される
請求項10に記載の旋削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤やマシニングセンター等の工作機械を用いた切削加工では、加工中に、被削材の加工面の状態等を確認することが望まれる場合がある。特許文献1では、金属切削で形成された穴の直径を監視するための非接触式センサーを備える構成の切削工具(ドリリングシステム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成においては、非接触式センサーが、切削工具の先端部に設けられている。切削工具の先端部は、切削インサートが設けられており、先端部の小型化、小径化が求められている。このため、特許文献1に開示された構成においても、切削工具の先端部において、非接触式センサーに接続されるケーブルの収容スペースが限られ、ケーブルの取り回しが複雑となり、組立作業も煩雑となってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、ケーブルの収容スペースを確保し、組立作業の煩雑化を抑えることができる旋削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の旋削工具の一つの態様は、工具軸に沿って延び、前記工具軸に沿った軸方向の一方側の先端部に台座を有する工具本体と、前記台座に着脱可能に取り付けられる切削インサートと、前記工具本体に設けられ、前記切削インサートにより切削加工された被削材の加工面までの距離を検出する距離センサと、前記工具本体の一部に形成された取付部に取り付けられ、前記距離センサを保持するセンサ保持部を有するホルダー部材と、を備え、前記ホルダー部材は、前記取付部に対向する側に、少なくとも前記距離センサのケーブルが収容可能な凹部を有する。
【0007】
本発明の旋削工具の一つの態様によれば、距離センサは、ホルダー部材のセンサ保持部に保持される。ホルダー部材は、工具本体の一部に形成された取付部に取り付けられる。ホルダー部材の凹部は、取付部に対向する側に形成され、距離センサのケーブルが収容可能とされる。このため、旋削工具の組立に際しては、センサ保持部に距離センサを保持させ、凹部にセンサのケーブルを収容した状態で、ホルダー部材を工具本体の取付部に取り付ければよい。したがって、ケーブルの収容スペースを確保し、組立作業の煩雑化を抑えることができる。
【0008】
上記旋削工具において、前記工具本体は、前記工具本体の内部に形成されて前記軸方向に延び、前記軸方向の一方側で前記凹部内に連通する収容孔をさらに備え、前記ケーブルは、前記凹部内から前記収容孔を通して前記工具本体の前記軸方向の他方側に導かれていてもよい。
【0009】
この場合、距離センサのケーブルは、凹部内から収容孔を通して工具本体の軸方向の他方側に導かれる。これにより、ホルダー部材の凹部に収容したケーブルを、工具本体内に容易に配索することができる。
【0010】
上記旋削工具において、前記凹部内に設けられ、前記軸方向に交差する前記工具本体の径方向外側を撮影可能となるよう配置されるカメラ、をさらに備えてもよい。
【0011】
この場合、凹部内にカメラが備えられる。この構成により、加工面が被削材の内径面であっても、切削インサートによる切削加工直後に加工面を撮影することができる。
【0012】
上記旋削工具において、前記凹部内に設けられ、前記カメラにより撮影される前記加工面を照らす照明装置、をさらに備えてもよい。
【0013】
この場合、工具本体に照明装置が設けられる。これにより、カメラにより撮影される加工面を照明装置で照らすことによって、加工面の状態を、より鮮明に撮影することができる。
【0014】
上記旋削工具において、前記取付部の底面に沿って設けられ、前記カメラ、および前記照明装置が固定される基台部材、をさらに備えてもよい。
【0015】
この場合、カメラ、および前記照明装置が、取付部の底面に沿って設けられる基台部材に固定される。これにより、カメラ、および照明装置を確実に固定できる。また、旋削工具の組立の際には、カメラおよび照明装置を基台部材に取り付けた後、基台部材を工具本体に取り付ければよく、組立性に優れる。また、距離センサがホルダー部材に保持され、カメラ、および照明装置が基台部材に固定されるので、距離センサのホルダー部材への取付作業と、カメラ、および照明装置の基台部材への取付作業とを別々に行うことができ、作業性に優れる。
【0016】
上記旋削工具において、前記基台部材は、前記カメラ、および前記照明装置の各々のケーブルを前記収容孔に導出するケーブル挿通部を有していてもよい。
【0017】
この場合、基台部材がケーブル挿通部を有する。これにより、カメラ、および照明装置の少なくとも一方のケーブルは、基台部材に形成されたケーブル挿通部を通して工具本体の収容孔に導出させることができ、ケーブルを容易に配索することができる。
【0018】
上記旋削工具において、前記基台部材は、前記ホルダー部材に取り付けられていてもよい。
【0019】
この場合、基台部材がホルダー部材に取り付けられる。これにより、旋削工具の組立の際には、カメラ、および照明装置が固定された基台部材を、ホルダー部材に取り付けることで、距離センサ、カメラ、照明装置、基台部材、およびホルダー部材がユニット化される。これにより、旋削工具の組立を効率良く行うことができる。
【0020】
上記旋削工具において、前記ホルダー部材において径方向内側を向く先端面と、前記取付部において前記工具本体の径方向外側を向く底面との間に、前記凹部の周囲を取り囲むように形成された環状の第1シール部をさらに備えてもよい。
【0021】
この場合、第1シール部が、ホルダー部材の先端面と、取付部の底面との間に設けられることで、凹部内に外部からクーラントが浸入することが抑えられる。
【0022】
上記旋削工具において、前記ホルダー部材は、前記軸方向の他方側を向くホルダー端面を有し、前記工具本体は、前記ホルダー部材に対して前記軸方向の他方側に形成され、前記ホルダー端面に対向する本体端面を有し、前記ホルダー端面と前記本体端面との間に挟み込まれた第2シール部をさらに備えてもよい。
【0023】
この場合、第2シール部が、ホルダー部材のホルダー端面と工具本体の本体端面との間に設けられる。これにより、ホルダー部材のホルダー端面と工具本体の本体端面との隙間から工具本体内にクーラントが浸入することが抑えられる。
【0024】
上記旋削工具において、前記取付部は、前記工具本体の外周面から前記工具本体の径方向内側に窪むように形成され、前記工具本体の径方向外側を向く底面と、前記底面において、前記軸方向および前記径方向に交差する幅方向の両側から径方向外側に立ち上がる一対の壁部と、を有し、一対の前記壁部の各々において、前記幅方向で前記ホルダー部材に対向する側壁面から前記ホルダー部材側に突出し、前記側壁面から前記ホルダー部材側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状の位置決め凸部と、前記ホルダー部材において前記幅方向の両側で前記側壁面に対向するホルダー側面に形成され、前記側壁面から離間するにしたがって内径が漸次縮小するテーパ状の位置決め凹部と、をさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、ホルダー部材は、取付部の一対の壁部の間に挿入される。一対の壁部の各々には、テーパ状の位置決め凸部が設けられ、ホルダー部材のホルダー側面には、テーパ状の位置決め凹部が設けられる。これにより、テーパ状の位置決め凸部を、テーパ状の位置決め凹部に挿入することで、工具本体の取付部に対してホルダー部材が正確に位置決めされる。テーパ状の位置決め凸部とテーパ状の位置決め凹部との位置関係を、第1シール部、第2シール部に合わせて設定することで、第1シール部、および第2シール部を圧縮した状態とし、第1シール部、第2シール部におけるシール性を確実に高めることができる。
【0026】
上記旋削工具において、一対の前記壁部の少なくとも一方に設けられ、前記壁部を前記幅方向に貫通するネジ部材をさらに備え、前記位置決め凸部は、前記ネジ部材の先端に形成されていてもよい。
【0027】
この場合、テーパ状の位置決め凸部が、壁部を貫通するネジ部材の先端に形成される。これにより、組立の際には、ネジ部材をねじ込むことによって、テーパ状の位置決め凸部が、ホルダー側面に形成されたテーパ状の位置決め凹部に挿入され、工具本体の取付部に対してホルダー部材を容易に位置決めすることができる。
【0028】
上記旋削工具において、前記位置決め凸部および前記位置決め凹部は、前記軸方向に間隔をあけて複数箇所に形成されていてもよい。
【0029】
この場合、位置決め凸部および位置決め凹部が、軸方向に間隔をあけて複数箇所に形成される。これにより、工具本体の取付部に対し、ホルダー部材を、軸方向に平行に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一つの態様の旋削工具によれば、ケーブルの収容スペースを確保し、組立作業の煩雑化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態の旋削工具の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の旋削工具のヘッド部の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の旋削工具の側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の旋削工具のヘッド部の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の旋削工具のヘッドユニットのホルダー部材を取り外した状態を示すヘッド部の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態の旋削工具のホルダー部材の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態の旋削工具のホルダー部材を径方向の内側から見た図である。
【
図8】本発明の一実施形態の旋削工具の基台部材を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態の旋削工具の位置決め凹部の位置におけるホルダー部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る旋削工具1について説明する。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0033】
図1は、実施形態の旋削工具1の斜視図である。
図2は、旋削工具1のヘッド部22の斜視図である。
図3は、旋削工具1の側面図である。
【0034】
本実施形態の旋削工具1は、主軸回りに回転させられる金属材料等の被削材100に対して、中ぐり加工等の旋削加工を施す。旋削工具1の基端部は、図示略の治具(刃物台)に着脱可能に保持される。また、旋削工具1を保持する治具は、図示略の旋盤等の工作機械(旋盤)に固定される。
【0035】
図1~
図3に示すように、本実施形態の旋削工具1は、工具本体2と、切削インサート4と、ヘッドユニット7と、を備える。
【0036】
工具本体2は、工具軸Jに沿った軸方向Djに延びる。工具本体2は、工具軸Jを中心とする円柱状のシャンク部21と、シャンク部21に対して工具本体2の軸方向Djの一方側Dj1に設けられたヘッド部22と、を有する。
【0037】
ヘッド部22は、シャンク部21の外周面から軸方向Djに交差する工具本体2の径方向Drの外側に突出する突出部23を有する。突出部23には、台座23dが設けられる。台座23dには、インサートアタッチメント41が取り付けられる。インサートアタッチメント41は、切削インサート4を保持する。台座23d、および台座23dに取り付けられる切削インサート4は、工具本体2において、工具軸Jに対して径方向Drの第一側Dr1に配置される。
【0038】
切削インサート4は、厚さ方向から見てひし形形状である。切削インサート4は、厚さ方向を向く平面視ひし形形状の一対の主面と、一対の主面同士を繋ぐ側面とを有する。切削インサート4の主面と側面との間の稜線には、切刃42が設けられる。切刃42は、工具本体2の軸方向Djの一方側Dj1の先端部に設けられる。切刃42の一部は、工具本体2から軸方向Djの一方側Dj1に突出する。また、切刃42は、工具本体2の径方向Drの外側に突出する。したがって、切刃42の一部は、工具本体2の軸方向Djの一方側Dj1の最先端、および径方向Drの最外端に位置する。
【0039】
本実施形態によれば、切削インサート4は、インサートアタッチメント41を介して工具本体2に固定される。このため、インサートアタッチメント41を付け替えることで、様々な形状の切削インサート4を工具本体2に固定することができ、工具本体2の汎用性が高まる。
【0040】
図4は、ヘッド部22の断面図である。
図5は、ヘッドユニット7のホルダー部材70を取り外した状態を示すヘッド部22の斜視図である。
図2、
図4、
図5に示すように、ヘッドユニット7は、ヘッド部22に設けられる。ヘッドユニット7は、ホルダー部材70(
図2、
図4参照)と、基台部材77(
図4、
図5参照)と、センサ装置3と、撮像装置5と、照明装置6と、を備える。ヘッドユニット7は、工具本体2において、工具軸Jに対して径方向Drの第二側Dr2に配置される。つまり、ヘッドユニット7は、工具本体2の径方向Drにおいて、台座23d、および台座23dに取り付けられる切削インサート4とは工具軸Jを挟んで反対側に配置される。ヘッドユニット7は、工具本体2の取付部25に着脱可能に取り付けられる。
【0041】
図2、
図5に示すように、取付部25は、ヘッド部22の軸方向Djの一方側Dj1に設けられる。取付部25は、工具本体2の径方向Drの外側(第二側Dr2)を向く第一面22aに形成される。取付部25は、第一面22aから径方向Drの内側に窪んで形成される。取付部25は、底面25bと、一対の側壁面25sと、本体端面25tと、を有する。
【0042】
底面25bは、工具本体2の径方向Drの外側(第二側Dr2)を向く平坦面である。底面25bは、第一面22aよりも径方向Drの内側に位置する。
一対の側壁面25sは、工具本体2の一部を形成する、一対の壁部2wに形成される。一対の壁部2wは、底面25bにおいて、軸方向Djおよび径方向Drに交差する取付部25の幅方向Dwの両側から径方向Drの外側に立ち上がっている。一対の側壁面25sは、一対の壁部2wの各々において、幅方向Dwの内側を向く平坦面である。
【0043】
本体端面25tは、ヘッド部22の軸方向Djの一方側Dj1の先端22sから、軸方向Djの他方側Dj2に所定寸法離れた位置に形成される。本体端面25tは、底面25bに対し、軸方向Djの他方側Dj2に形成される。本体端面25tは、一対の側壁面25sにおいて、軸方向Djの他方側Dj2の端部同士を接続する。本体端面25tは、軸方向Djの一方側Dj1を向く平坦面である。
【0044】
図4に示すように、工具本体2の内部には、収容孔27が形成される。収容孔27は、工具本体2内で軸方向Djに延びる。収容孔27は、本体端面25tよりも軸方向Djの一方側Dj1に延びる。収容孔27は、一対の側壁面25sの間において、底面25bの軸方向Djの他方側Dj2の一部で、径方向Drの外側に向かって開口している。また、収容孔27は、本体端面25tの径方向Drの第一側Dr1の一部で、軸方向Djの一方側Dj1に向かって開口している。
【0045】
図6は、ホルダー部材70の斜視図である。
図7は、ホルダー部材70を径方向Drの内側から見た図である。
ホルダー部材70は、工具本体2の一部に形成された取付部25を覆うように設けられる。ホルダー部材70は、工具本体2に着脱可能に取り付けられる。
図6、
図7に示すように、ホルダー部材70は、外周壁部71と、筒状壁部72と、を一体に有する。
【0046】
外周壁部71は、工具本体2の径方向Drの外側(第二側Dr2)を向く。外周壁部71は、一対の壁部2wの間を塞ぎ、工具本体2の外周面の一部を形成する。外周壁部71は、径方向Drの第二側Dr2から見た際に、長方形状をなす。
【0047】
筒状壁部72は、外周壁部71の外周縁部から、径方向Drの第一側Dr1に延びる。筒状壁部72の径方向Drの第一側Dr1の先端面72sは、取付部25の底面25bに対向する。
図4に示すように、筒状壁部72は、径方向Drの第一側Dr1から見た際に、長方形状をなす。筒状壁部72は、一対のホルダー側壁部73A、73Bと、一対のホルダー端壁部74A、74Bと、を有する。
【0048】
図2、
図6、
図7に示すように、一対のホルダー側壁部73A、73Bは、幅方向Dwに間隔をあけて形成される。一対のホルダー側壁部73A、73Bの各々は、幅方向Dwを向く板状である。
図2に示すように、一対のホルダー側壁部73A、73Bは、一対の壁部2wに対して幅方向Dwの内側に配置される。一対のホルダー側壁部73A、73Bの各々は、幅方向Dwの外側を向くホルダー側面73sを有する。一対のホルダー側壁部73A、73Bのホルダー側面73sは、一対の壁部2wの各々に対して幅方向Dwで対向する。
【0049】
図4、
図6、
図7に示すように、一対のホルダー端壁部74A、74Bは、軸方向Djに間隔をあけて形成される。一方のホルダー端壁部74Aは、軸方向Djの一方側Dj1で、一対のホルダー側壁部73A、73B同士を接続する。一方のホルダー端壁部74Aは、軸方向Djの一方側Dj1を向く端面74fを有する。端面74fは、工具本体2の軸方向Djの一方側Dj1の最先端に位置する。
【0050】
図6、
図7に示すように、他方のホルダー端壁部74Bは、軸方向Djの他方側Dj2で、一対のホルダー側壁部73A、73B同士を接続する。他方のホルダー端壁部74Bは、軸方向Djの他方側Dj2を向くホルダー端面74gを有する。ホルダー端面74gは、本体端面25tに対して軸方向Djで対向する。
【0051】
図4、
図7に示すように、ホルダー部材70は、筒状壁部72の内側に、凹部70sを有する。凹部70sは、外周壁部71と筒状壁部72とに囲まれて形成される。凹部70sは、径方向Drの第一側Dr1に開口する。凹部70sは、筒状壁部72の先端面72sから径方向Drの第二側Dr2に窪む。
【0052】
図2、
図4、
図7に示すように、ホルダー部材70は、センサ保持部75A、75Bを有する。センサ保持部75Aは、外周壁部71を径方向Drに貫通する貫通孔である。センサ保持部75Bは、一方のホルダー端壁部74Aを軸方向Djに貫通する貫通孔である。
【0053】
図8は、基台部材77を示す斜視図である。
基台部材77は、取付部25の底面25bに沿って、底面25bと平行に設けられる。基台部材77は、径方向Drに交差する板状である。
図5、
図8に示すように、基台部材77は、径方向Drから見た際に、全体として長方形状であり、その一つの角部に切欠き77kを有する。基台部材77は、後述するカメラ51、および照明装置6が固定される。
【0054】
基台部材77は、ビス78等により、ホルダー部材70に着脱可能に取り付けられる。このため、基台部材77は、例えば、径方向Drから見た際に対角状となる2箇所に、ビス78が挿通される挿通孔77gを有する。
図5に示すように、基台部材77は、ホルダー部材70の筒状壁部72の内側に形成され、径方向Drの第一側Dr1を向く基台位置決め面70fに接触する。基台部材77は、各挿通孔77gに挿通させたビス78を、基台位置決め面70fに締結することで、ホルダー部材70に取り付けられる。
【0055】
図4、
図5、
図7に示すように、基台部材77は、径方向Drの第二側Dr2を向く固定面77fに、カメラ固定部77cと、照明固定部77rと、を有する。カメラ固定部77cは、固定面77fから径方向Drの第一側Dr1に窪む。基台部材77は、カメラ固定部77cに対して、軸方向Djの他方側Dj2に隣接して、ケーブル挿通部77hを有する。ケーブル挿通部77hは、基台部材77を径方向Drに貫通する。
【0056】
照明固定部77rは、カメラ固定部77c、およびケーブル挿通部77hに対して、軸方向Djの他方側Dj2に形成される。照明固定部77rは、固定面77fから径方向Drの第二側Dr2に突出する。
【0057】
図2~
図5に示すように、センサ装置3は、第1の距離センサ(距離センサ)31と、第2の距離センサ(距離センサ)32と、を備える。第1の距離センサ31、第2の距離センサ32は、切削インサート4を用いて加工した加工面100f(
図3参照)までの距離を測定する。本実施形態において、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、渦電流センサである。
図4、
図5に示すように、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、円柱状のセンサヘッド31b、32bと、センサヘッド31b、32bの基端から延び出るケーブル31c、32cと、を有する。
【0058】
第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、それぞれセンサヘッド31b、32bの先端31a、32aを測定対象に対向させる。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、センサヘッド31b、32bの内部に高周波電流を流すことで高周波磁界を発生させる。これにより、導電体である測定対象物の表面(加工面100f)に渦電流が流れ、センサヘッド31b、32bの内部のコイルにインピーダンスが変化する。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、このインピーダンスの変化から測定対象との距離を判定する。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、インピーダンスの変化を電圧(単位はV)として出力する。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の出力値は、予め算出した較正式を用いて測定対象との距離に変換される。なお、渦電流センサは、周囲環境などの外乱に対して測定精度が安定し易い。このため、渦電流センサは、ウェット加工とドライ加工との何れを選択するかに関わらず、光学式の距離センサなどと比較して、切削加工後の外乱の多い環境での距離測定に適している。
【0059】
第1の距離センサ31の先端31aは、工具本体2の外周面から径方向Drの外側を向いて配置される。第1の距離センサ31は、工具本体2の径方向Drの外側に配置される測定対象物までの距離を測定する。すなわち、第1の距離センサ31は、径方向Drの外側を測定方向とする。第1の距離センサ31は、切削インサート4により加工した、径方向Drの内側を向く加工面100fまでの距離を測定する。
【0060】
第2の距離センサ32の先端32aは、工具本体2のヘッド部22の先端22sから軸方向Djの一方側Dj1を向いて配置される。第2の距離センサ32は、工具本体2の軸方向Djの一方側Dj1に配置される測定対象物までの距離を測定する。すなわち、第2の距離センサ32は、軸方向Djの一方側Dj1を測定方向とする。第2の距離センサ32は、切削インサート4により加工した、軸方向Djの他方側Dj2を向く加工面100fまでの距離を測定する。
【0061】
第1の距離センサ31、第2の距離センサ32は、旋削工具1が加工面100fを形成した後、加工面100fを測定する際に用いられる。第1の距離センサ31、第2の距離センサ32は、工具本体2に設けられるので、旋削工具1を被削材100から一旦離間させることなく、切削加工後の加工面100fを測定することができる。旋削加工において加工面100fの測定に要する時間を短くすることができる。また、第1の距離センサ31を用いて、切削インサート4により加工した径方向Drの内側を向く加工面100fまでの距離を測定でき、第2の距離センサ32を用いて、切削インサート4により加工した軸方向Djの他方側Dj2を向く加工面100fまでの距離を測定することができる。すなわち、寸法測定時に、被削材100の向きを変えることなく、異なる方向を向く面の寸法測定を行うことができ、測定工程に要する時間をさらに短くすることができる。なお、第1の距離センサ31によって、切削インサート4で加工された外径、内径、および真円度などを測定できる。また、第2の距離センサ32によって、切削インサート4で段部、および孔底部の軸方向位置などを測定できる。
【0062】
図2、
図4に示すように、第1の距離センサ31および第2の距離センサ32は、ホルダー部材70によって保持される。
第1の距離センサ31のセンサヘッド31bは、径方向Drの第一側Dr1からセンサ保持部75Aに挿入される。第1の距離センサ31の先端31aは、外周壁部71において径方向Drの第二側Dr2を向くホルダー表面71fと同一面に位置する。
第2の距離センサ32のセンサヘッド32bは、軸方向Djの他方側Dj2からセンサ保持部75Bに挿入される。第2の距離センサ32の先端32aは、ホルダー端壁部74Aの端面74fと同一面に位置する。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32の各々は、ホルダー部材70にねじ込まれたイモネジ31n、32nによって、ホルダー部材70に固定される。
【0063】
図4に示すように、第1の距離センサ31のケーブル31cは、基台部材77と取付部25の底面25bとの間を通って軸方向Djの他方側Dj2に延びる。
図5に示すように、第2の距離センサ32のケーブル32cは、切欠き77kから、基台部材77と取付部25の底面25bとの間を通って軸方向Djの他方側Dj2に延びる。このようにして、第1の距離センサ31、第2の距離センサ32のケーブル31c、32cは、ホルダー部材70の凹部70s内に収容される。凹部70s内に収容されたケーブル31c、32cは、底面25bに対して軸方向Djの他方側Dj2で径方向Drの外側に向かって開口する収容孔27内に導かれる。ケーブル31c、32cは、収容孔27を通して、シャンク部21内で軸方向Djの他方側Dj2に延びる。
【0064】
撮像装置5は、工具本体2のヘッドユニット7に設けられる。撮像装置5は、センサ装置3に対し、工具軸Jを挟んで軸方向Djの他方側Dj2に配置される。撮像装置5は、カメラ51と、レンズカバー53と、カメラシール部材57と、緩衝部材58と、を備える。
【0065】
カメラ51は、例えば、防水型のCMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーである。カメラ51は、基台部材77のカメラ固定部77cに固定される。カメラ51は、撮影対象を向くレンズ部51pを有する。レンズ部51pは、カメラ51に内蔵されたレンズ(図示省略)を有する。カメラ51は、レンズ部51pを径方向Drの外側に向けて配置される。
【0066】
ホルダー部材70の外周壁部71には、カメラ開口76が形成される。カメラ開口76は、外周壁部71を径方向Drに貫通する。カメラ開口76は、カメラ51のレンズ部51pに対して径方向Drで対向する位置に形成される。これにより、カメラ51は、カメラ開口76を通して、工具本体2の径方向Drの外側を撮影可能となるよう配置される。カメラ51は、切削インサート4により切削加工された被削材100の、径方向Drの内側を向く加工面100f、いわゆる内径面を撮影する。
【0067】
図4に示すように、カメラ51は、台座23dに取り付けられる切削インサート4に対し、軸方向Djの他方側Dj2に配置される。ただし、カメラ51は、軸方向Djにおいて、切削インサート4による加工面100fの加工位置になるべく近い位置に配置するのが好ましい。これにより、加工後の加工面100fの状態を、より近い位置で撮影することができる。また、例えば、センサ装置3が、上記とは異なる位置に配置される場合、カメラ51は、切削インサート4に対して軸方向Djで同位置に配置してもよい。これにより、切削インサート4によって切削加工中、または切削加工後の加工面100fを、より近い位置から撮影する。
【0068】
レンズカバー53は、カメラ51のレンズ部51pを覆う。レンズカバー53は、径方向Drに交差する面に沿った板状である。レンズカバー53は、光を透過する樹脂材料、ガラス材料等から形成される。
【0069】
カメラシール部材57は、レンズカバー53とカメラ開口76の外周部との間に挟み込まれる。カメラシール部材57は、環状で、いわゆるOリングからなる。カメラシール部材57は、ゴム系材料等の弾性材料から形成される。カメラシール部材57は、レンズカバー53とカメラ開口76の外周部との間で、圧縮状態で挟み込まれることで、カメラ開口76から凹部70s内へのクーラントの浸入が抑えられる。
【0070】
緩衝部材58は、カメラ51のレンズ部51pとレンズカバー53との間に挟み込まれる。緩衝部材58は、カメラシール部材57と同様、環状で、いわゆるOリングからなる。緩衝部材58は、ゴム系材料等の弾性材料から形成される。緩衝部材58は、レンズカバー53とレンズ部51pとの間で、圧縮状態で挟み込まれることで、レンズカバー53に過度な径方向Drの力が作用することを緩衝する。
【0071】
カメラ51は、ケーブル52を有する。ケーブル52の一端は、カメラ51に接続される。ケーブル52は、ケーブル挿通部77hを通して、基台部材77に対して径方向Drの第一側Dr1に案内される。ケーブル52は、基台部材77と取付部25の底面25bとの間を通り、収容孔27内に導かれる。このようにして、カメラ51のケーブル52の一部は、凹部70s内に収容されている。ケーブル52は、収容孔27を通して、シャンク部21内で軸方向Djの他方側Dj2に延びる。
【0072】
照明装置6は、工具本体2のヘッドユニット7に設けられる。照明装置6は、撮像装置5のカメラ51に対し、軸方向Djの他方側Dj2に配置される。照明装置6は、カメラ51により撮影される加工面100fを照らす。これにより、撮像装置5のカメラ51は、軸方向Djにおいて、センサ装置3の距離センサ31、32と、照明装置6との間に配置される。照明装置6は、光源61と、光源ケーブル(図示なし)と、を備える。
【0073】
光源61は、例えばLED等の発光素子である。光源61は、基台部材77の照明固定部77rに固定される。
図2、
図4、
図6に示すように、ホルダー部材70の外周壁部71には、傾斜部71kが形成される。傾斜部71kは、カメラ開口76に対して軸方向Djの他方側Dj2に形成される。傾斜部71kは、カメラ開口76の外周部から軸方向Djの他方側Dj2に向かって径方向Drの第一側Dr1に傾斜して延びる。
図4に示すように、傾斜部71kの先端71k1は、基台部材77の照明固定部77rに対して、軸方向Djの一方側Dj1から近接する。これにより、外周壁部71の外周面71aと傾斜部71kの先端71k1との間に、軸方向Djの一方側Dj1を向く段差面71dが形成される。段差面71dには、光源61の一部が露出する光源開口79が形成される。
【0074】
光源61からの照明光は、光源開口79を通して、軸方向Djの一方側Dj1に書写される。光源61からの照明光は、傾斜部71kの表面で反射し、径方向Drの外側の加工面100fに照射される。
【0075】
光源ケーブル(図示なし)の一端は、光源61に接続される。光源ケーブルは、基台部材77と筒状壁部72との隙間を通して、基台部材77に対して径方向Drの第一側Dr1に案内され、収容孔27内に導かれる。光源ケーブルは、収容孔27を通して、シャンク部21内で軸方向Djの他方側Dj2に延びる。
【0076】
旋削工具1の組立に際し、ヘッドユニット7は、予め組み立てられた状態で、取付部25にセットされる。このとき、第1の距離センサ31のセンサヘッド31bは、センサ保持部75Aに固定される。第2の距離センサ32のセンサヘッド32bは、センサ保持部75Bに固定される。撮像装置5のカメラ51は、基台部材77のカメラ固定部77cに固定される。照明装置6の光源61は、基台部材77の照明固定部77rに固定される。基台部材77は、カメラ51とカメラ開口76の外周部との間に、カメラシール部材57、レンズカバー53、および緩衝部材58を挟み込んだ状態で、ビス78によってホルダー部材70に組み付けられる。第1の距離センサ31および第2の距離センサ32のケーブル31c、32c、ケーブル52、および光源ケーブルの一部は、凹部70s内に収容される。ケーブル31c、32c、ケーブル52、および光源ケーブルは、凹部70s内から導出されて、収容孔27内に挿通される。
【0077】
図4に示すように、ヘッドユニット7と、取付部25との間には、第1シール部81、および第2シール部82が挟み込まれる。
第1シール部81は、ホルダー部材70の先端面72sと、取付部25の底面25bとの間に挟み込まれる。第1シール部81は、凹部70sの周囲を取り囲むように形成された環状のシール部材である。第1シール部81は、ゴム系材料等の弾性材料から形成される。第1シール部81は、
図7に示すように、筒状壁部72の先端面72sに形成された収容溝72mに収容される。第1シール部81は、先端面72sと底面25bとの間で、圧縮状態で挟み込まれることで、ホルダー部材70の先端面72sと、取付部25の底面25bとの隙間からのクーラントの浸入を抑える。
【0078】
図4、
図6に示すように、第2シール部82は、ホルダー端面74gの一部に開口する収容孔27を取り囲むように形成される。第2シール部82は、シール第1部82aと、一対のシール第2部82bと、一対のシール第3部82cと、を一体に有する。
【0079】
シール第1部82aは、ホルダー部材70のホルダー端面74gに沿って幅方向Dwに延びる。一対のシール第2部82bは、シール第1部82aの幅方向Dwの両端部から、それぞれ、一対のホルダー側壁部73A、73Bのホルダー側面73sに沿って、軸方向Djの一方側Dj1に延びる。一対のシール第3部82cの各々は、一対のシール第2部82bの各々の軸方向Djの一方側Dj1の端部から、それぞれ、径方向Drの第一側Dr1に延びて第1シール部81に接続される。第2シール部82は、ホルダー部材70のホルダー端面74gおよび一対のホルダー側面73sに、第2シール部82の形状に合わせて形成された収容溝72dに収容される。
【0080】
図4に示すように、第2シール部82のシール第1部82aは、ホルダー部材70のホルダー端面74gと取付部25の本体端面25tとの間に挟み込まれる。第2シール部82のシール第2部82b、およびシール第3部82cは、ホルダー部材70のホルダー側面73sと取付部25の側壁面25sとの間に挟み込まれる。
【0081】
図9は、位置決め凹部101の位置におけるホルダー部材70の断面図である。
図6、
図9に示すように、ホルダー部材70の一対のホルダー側壁部73A、73Bのホルダー側面73sの各々には、位置決め凹部101が形成される。位置決め凹部101は、一対のホルダー側壁部73A、73Bのホルダー側面73sの各々において、軸方向Djに間隔をあけて複数箇所、例えば2箇所に形成される。各位置決め凹部101は、ホルダー側面73sにおいて、ホルダー側面73sに対向する側壁面25sから離間するにしたがって内径が漸次縮小するテーパ状に形成される。
【0082】
図5、
図9に示すように、一対の壁部2wの各々には、ホルダー部材70を固定するためのネジ部材102が設けられる。一対の壁部2wの各々において、ネジ部材102は、軸方向Djに間隔をあけて複数箇所、例えば2箇所に設けられる。ネジ部材102は、いわゆるイモネジである。各ネジ部材102は、壁部2wを幅方向Dwに貫通する。各ネジ部材102の先端部に形成された位置決め凸部103は、一対の壁部2wの各々において、幅方向Dwでホルダー部材70に対向する側壁面25sからホルダー部材70側に突出する。位置決め凸部103は、幅方向Dwにおいて、側壁面25sからホルダー部材70側に向かって外径が漸次縮小するテーパ状に形成される。
【0083】
ホルダー部材70は、取付部25内にセットした状態で、複数のネジ部材102を締め付けることで、取付部25に固定される。
ここで、各ネジ部材102を締め付けていない状態では、ホルダー部材70にセットされた第1シール部81が底面25bに単に接触するとともに、第2シール部82が本体端面25tに単に接触している。この状態では、各位置決め凹部101は、位置決め凸部103に対し、径方向Drの第二側Dr2、および軸方向Djの一方側Dj1にオフセットするように形成される。ここで、第1シール部81が底面25bに単に接触する、とは、第1シール部81が、ヘッドユニット7の自重による荷重以外の外力によって圧縮されていない状態を示す。第2シール部82が本体端面25tに単に接触した状態とは、同様に、外力によって圧縮されてていない状態を示す。
【0084】
各ネジ部材102を締め付けていくと、テーパ状の位置決め凸部103が、ホルダー部材70のホルダー側面73sに形成された位置決め凹部101に挿入されていく。位置決め凸部103が、位置決め凹部101に嵌まり込むことで、ホルダー部材70は、径方向Drの第一側Dr1、および軸方向Djの他方側Dj2に変位し、第1シール部81を、先端面72sと底面25bとの間で圧縮した状態で挟み込むとともに、第2シール部82を、ホルダー端面74gと本体端面25tとの間に圧縮した状態で挟み込む。
【0085】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の旋削工具1によれば、距離センサ31、32が、ホルダー部材70のセンサ保持部75A、75Bに保持される。ホルダー部材70は、工具本体2に取り付けられる。ホルダー部材70の凹部70sは、取付部25に対向する側に形成され、距離センサ31、32のケーブル31c、32cが収容可能とされる。このため、旋削工具1の組立に際しては、センサ保持部75A、75Bに距離センサ31、32を保持させ、凹部70sにセンサのケーブル31c、32cを収容した状態で、ホルダー部材70を工具本体2の取付部25に取り付ければよい。したがって、ケーブル31c、32cの収容スペースを確保し、組立作業の煩雑化を抑えることができる。
【0086】
また本実施形態では、距離センサ31、32のケーブル31c、32cが、凹部70s内から収容孔27を通して工具本体2の軸方向Djの他方側Dj2に導かれる。これにより、ホルダー部材70の凹部70sに収容したケーブル31c、32cを、工具本体2内に容易に配索することができる。
【0087】
また本実施形態では、凹部70s内にカメラ51が備えられる。この構成により、切削インサート4による切削加工中に、加工面100fが被削材100の内径面であっても、加工面100fを撮影することができる。
【0088】
また本実施形態では、工具本体2に照明装置6が設けられる。これにより、カメラ51により撮影される加工面100fを照明装置6で照らすことによって、加工面100fの状態を、より鮮明に撮影することができる。
【0089】
また本実施形態では、カメラ51、および照明装置6が、基台部材77に固定される。これにより、カメラ51、および照明装置6を確実に固定できる。また、旋削工具1の組立の際には、カメラ51および照明装置6を基台部材77に取り付けた後、基台部材77を工具本体2に取り付ければよく、組立性に優れる。また、距離センサ31、32がホルダー部材70に保持され、カメラ51、および照明装置6が基台部材77に固定されるので、距離センサ31、32のホルダー部材70への取付作業と、カメラ51、および照明装置6の基台部材77への取付作業とを別々に行うことができ、作業性に優れる。
【0090】
また本実施形態では、基台部材77がケーブル挿通部77hを有する。これにより、カメラ51のケーブル52は、基台部材77に形成されたケーブル挿通部77hを通して工具本体2の収容孔27に導出させることができ、ケーブル52を容易に配索することができる。
【0091】
また本実施形態では、基台部材77がホルダー部材70に取り付けられる。これにより、旋削工具1の組立の際には、カメラ51、および照明装置6が固定された基台部材77を、ホルダー部材70に取り付けておくことで、距離センサ31、32、カメラ51、照明装置6、基台部材77、およびホルダー部材70がユニット化される。これにより、旋削工具1の組立を効率良く行うことができる。
【0092】
また本実施形態では、第1シール部81が、ホルダー部材70の先端面72sと、取付部25の底面25bとの間に設けられることで、凹部70s内に外部からクーラントが浸入することが抑えられる。
【0093】
また本実施形態では、第2シール部82が、ホルダー部材70のホルダー端面74gと工具本体2の本体端面25tとの間に設けられる。これにより、ホルダー部材70のホルダー端面74gと工具本体2の本体端面25tとの隙間から工具本体2内にクーラントが浸入することが抑えられる。
【0094】
また本実施形態では、ホルダー部材70は、取付部25の一対の壁部2wの間に挿入される。一対の壁部2wの各々には、テーパ状の位置決め凸部103が設けられ、ホルダー部材70のホルダー側面73sには、テーパ状の位置決め凹部101が設けられる。これにより、テーパ状の位置決め凸部103を、テーパ状の位置決め凹部101に挿入することで、工具本体2の取付部25に対してホルダー部材70が正確に位置決めされる。テーパ状の位置決め凸部103とテーパ状の位置決め凹部101との位置関係を、第1シール部81、第2シール部82に合わせて設定することで、第1シール部81、および第2シール部82を圧縮した状態とし、第1シール部81、第2シール部82におけるシール性を確実に高めることができる。
【0095】
また本実施形態では、テーパ状の位置決め凸部103が、壁部2wを貫通するネジ部材102の先端部に形成される。これにより、組立の際には、ネジ部材102をねじ込むことによって、テーパ状の位置決め凸部103が、ホルダー側面73sに形成されたテーパ状の位置決め凹部101に挿入され、工具本体2の取付部25に対してホルダー部材70を容易に位置決めすることができる。
【0096】
また本実施形態では、位置決め凸部103および位置決め凹部101が、軸方向Djに間隔をあけて複数箇所に形成される。これにより、工具本体2の取付部25に対し、ホルダー部材70を、軸方向Djに平行に位置決めすることができる。
【0097】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0098】
1…旋削工具
2…工具本体
2w…壁部
4…切削インサート
6…照明装置
22s…先端
23d…台座
25…取付部
25b…底面
25s…側壁面
25t…本体端面
27…収容孔
31…第1の距離センサ(距離センサ)
31c…ケーブル
32…第2の距離センサ(距離センサ)
32c…ケーブル
51…カメラ
52…ケーブル
70…ホルダー部材
70s…凹部
72s…先端面
73s…ホルダー側面
74g…ホルダー端面
75A、75B…センサ保持部
77…基台部材
77h…ケーブル挿通部
81…第1シール部
82…第2シール部
100…被削材
100f…加工面
101…位置決め凹部
102…ネジ部材
103…位置決め凸部
Dj…軸方向
Dj1…一方側
Dj2…他方側
Dr…径方向
Dw…幅方向
J…工具軸