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特開2024-145599測量システム、測量装置、測量方法及び測量プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145599
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】測量システム、測量装置、測量方法及び測量プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241004BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01C15/00 103
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058031
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(57)【要約】
【課題】ポールを揺動させて測点の位置を算出する測量において、ポールを適切に揺動させることを促進させることができる測量システム、測量装置、測量方法又は測量プログラムを提供する。
【解決手段】この測量システム1は、測距光により測量対象301までの距離を測定する測距部102と、測距光の出射方向を検出する方向検出部106、107と、測距部102により測定された距離と、方向検出部106、107により検出された出射方向とに基づいて、測量対象301の位置情報を取得する演算部101bと、測量対象301から測点Pまでの距離情報であるオフセット情報Rを記憶する記憶部111と、演算部101bにより取得された複数の位置情報とオフセット情報とに基づいて、測量対象301の揺動状態を推定し、推定した揺動状態に応じて測量対象301の揺動案内情報を生成する揺動案内部201bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光により測量対象までの距離を測定する測距部と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、
前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算部と、
前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報を記憶する記憶部と、
前記演算部により取得された複数の前記位置情報と、前記オフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内部とを備える測量システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記複数の位置情報と前記オフセット情報とから前記測点の位置座標を算出し、
前記揺動案内部は、前記推定した揺動状態から、算出した前記測点の位置座標の確度を算出し、前記確度が所定の閾値以上であると判定した場合には、前記揺動案内情報の生成を終了する、請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記複数の位置情報と前記オフセット情報とから前記測点の位置座標を算出し、
前記揺動案内部は、前記推定した揺動状態から、算出した前記測点の位置座標の確度を算出し、前記確度が所定の閾値未満であると判定した場合には、前記確度を高めるための揺動案内情報を生成する、請求項1に記載の測量システム。
【請求項4】
前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動軌跡に関する情報である、請求項3に記載の測量システム。
【請求項5】
前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動回数に関する情報である、請求項3に記載の測量システム。
【請求項6】
前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動速度に関する情報である、請求項3に記載の測量システム。
【請求項7】
前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記確度の高さに関する情報である請求項3に記載の測量システム。
【請求項8】
測距光により測量対象までの距離を測定する測距部と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、
前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算部と、
前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報を記憶する記憶部と、
前記演算部により取得された複数の前記位置情報と、前記オフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内部とを備える測量装置。
【請求項9】
測距光により測量対象までの距離を測定する測距工程と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、
前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算工程と、
前記演算工程により取得された複数の前記位置情報と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内工程とを備える測量方法。
【請求項10】
測距光により測量対象までの距離を測定する測距工程と、
前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、
前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算工程と、
を備える測量方法により取得された複数の前記位置情報と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内工程をコンピュータに実行させるための測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量システム、測量装置、測量方法及び測量プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トータルステーション(TS)を用いた光波方式の測量にあたっては、プリズム等の測量対象(再帰反射部)を有するポールを測点に鉛直に設置していた。このような測量では、ポールを測点に鉛直に設置するために、気泡管等を用いて整準を行う等の手間が多く作業性が悪かった。
【0003】
そこで下記特許文献1には、トータルステーション(TS)を用いた光波方式の測量方法として、測量対象であるプリズムを有するポール(ポールプリズム)の端部を地面等の測点に設置し、ポールを鉛直方向から傾斜させて測点周りに揺動(傾動)させながらプリズムの位置を複数回測量し、ポール端部の位置に相当する測点の位置を計算により算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-22443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、測点の位置を正確に算出するには適切にポールを揺動させる必要があり、作業者の技量が求められる。つまり、必ずしも測量可能なようにポールを適切に揺動させられるとは限らないため、測点の位置を円滑に算出することができずに測量の作業効率が低下するという問題が生ずる。しかも、この問題は、ポール端部を地面の測点に設置する場合だけでなく、天井面又は立壁面の測点に設置する場合においても生ずるし、天井面又は立壁面の測点に設置する場合においては、ポールを揺動できる範囲が限られるため、より顕著となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ポールを揺動させて測点の位置を算出する測量において、ポールを適切に揺動させることを促進させることができる測量システム、測量装置、測量方法又は測量プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の第1項目に係る測量システムは、測距光により測量対象までの距離を測定する測距部と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算部と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報を記憶する記憶部と、前記演算部により取得された複数の前記位置情報と、前記オフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内部とを備える。
【0008】
本発明の第2項目に係る測量システムでは、前記第1項目に係る測量システムにおいて、前記演算部は、前記複数の位置情報と前記オフセット情報とから前記測点の位置座標を算出し、前記揺動案内部は、前記推定した揺動状態から、算出した前記測点の位置座標の確度を算出し、前記確度が所定の閾値以上であると判定した場合には、前記揺動案内情報の生成を終了する。
【0009】
本発明の第3項目に係る測量システムでは、前記第1項目又は前記第2項目に係る測量システムにおいて、前記演算部は、前記複数の位置情報と前記オフセット情報とから前記測点の位置座標を算出し、前記揺動案内部は、前記推定した揺動状態から、算出した前記測点の位置座標の確度を算出し、前記確度が所定の閾値未満であると判定した場合には、前記確度を高めるための揺動案内情報を生成する。
【0010】
本発明の第4項目に係る測量システムでは、前記第3項目に係る測量システムにおいて、前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動軌跡に関する情報である。
【0011】
本発明の第5項目に係る測量システムでは、前記第3項目に係る測量システムにおいて、前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動回数に関する情報である。
【0012】
本発明の第6項目に係る測量システムでは、前記第3項目に係る測量システムにおいて、前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記測量対象の揺動速度に関する情報である。
【0013】
本発明の第7項目に係る測量システムでは、前記第3項目に係る測量システムにおいて、前記確度を高めるための揺動案内情報は、前記確度の高さに関する情報である。
【0014】
本発明の第8項目に係る測量装置は、測距光により測量対象までの距離を測定する測距部と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出部と、前記測距部により測定された距離と、前記方向検出部により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算部と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報を記憶する記憶部と、前記演算部により取得された複数の前記位置情報と、前記オフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内部とを備える。
【0015】
本発明の第9項目に係る測量方法は、測距光により測量対象までの距離を測定する測距工程と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算工程と、前記演算工程により取得された複数の前記位置情報と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内工程とを備える。
【0016】
本発明の第10項目に係る測量プログラムは、測距光により測量対象までの距離を測定する測距工程と、前記測距光の出射方向を検出する方向検出工程と、前記測距工程により測定された距離と、前記方向検出工程により検出された出射方向とに基づいて、前記測量対象の位置情報を取得する演算工程と、を備える測量方法により取得された複数の前記位置情報と、前記測量対象から測点までの距離情報であるオフセット情報とに基づいて、前記測量対象の揺動状態を推定し、推定した前記揺動状態に応じて前記測量対象の揺動案内情報を生成する揺動案内工程をコンピュータに実行させるための測量プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポールを揺動させて測点の位置を算出する測量において、ポールを適切に揺動させることを促進させることができる測量システム、測量装置、測量方法及び測量プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】測量システムを示す全体構成図である。
図2】測量システムにおける本体測量装置と端末測量装置とのブロック図である。
図3】端末測量装置の表示画面の遷移を示す画面遷移図である。
図4】測点の推定位置座標の確度を算出する方法の説明図である。
図5】測量方法のプロセスを説明するためのフローチャートである。
図6】測量プログラムを実行するためのコンピュータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図6を適宜参照しつつ、本発明に係る測量システム、測量装置、測量方法及び測量プログラムの一実施形態について説明する。
【0020】
(測量システムの構成)
まず、本発明に係る測量システムの一実施形態について説明する。図1に示すように、この測量システム1は、地面Eと立壁Wとの境界線にある測点Pの位置座標を算出するためのものである。
【0021】
図1に示すように、測量システム1は、本体測量装置100と、端末測量装置200と、再帰反射器具300とを備えている。本体測量装置100は、例えばミラーデバイス(MD)を有するトータルステーション(TS)であり、地面Eに載置されている支持部100a(三脚)と、支持部100aに支持されている円筒状の本体部100bとを備えている。端末測量装置200は、例えば、本体測量装置100との間でデータDの送受信を可能とするスマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、ハンドヘルドコンピュータデバイス(一例として、PDA:Personal Digital Assistant)、ウェアラブル端末(一例として、メガネ型デバイス、時計型デバイス)、パーソナルコンピュータ等である。再帰反射器具300は、本体部100bから出射される光L(後述する測距光及び追尾光)を反射可能なプリズム301(測量対象である再帰反射部)を有するポール302である。本発明に係る測量装置の一実施形態は、本体測量装置100と端末測量装置200とに相当する。
【0022】
図2に示すように、本体測量装置100の本体部100bは、本体制御部101と、測距部102と、追尾光送受部103と、水平駆動部104と、鉛直駆動部105と、水平方向検出部106と、鉛直方向検出部107と、本体操作部108と、本体表示部109と、望遠鏡部110と、記憶部111と、本体通信部112とを備えている。本体制御部101は、各種制御部101aと演算部101bとを備えている。
【0023】
本体制御部101の各種制御部101aは、測距部102と、追尾光送受部103と、水平駆動部104と、鉛直駆動部105と、水平方向検出部106と、鉛直方向検出部107と、本体操作部108と、本体表示部109と、望遠鏡部110と、記憶部111と、本体通信部112と、演算部101bとを制御可能に構成されている。
【0024】
測距部102は、測距光をプリズム301に向かって送光するための送光部と、プリズム301からの反射光を受光するための受光部と、これら送光及び受光によって本体測量装置100とプリズム301との距離を算出する算出部とを備えている。測距光は、例えば、直線方向に出射される可視光、近赤外線又は紫外線である。算出方式(測距方式)としては、例えば、周知の技術であるパルス方式又は位相差方式を採用することができる。
【0025】
追尾光送受部103は、追尾光をプリズム301に向かって送光するための送光部と、プリズム301からの反射光を受光するための受光部とを備えている。追尾光は、例えば、放射状に出射される可視光、近赤外線又は紫外線である。追尾光送受部103は、測距部102による測距光の出射方向と同一方向に追尾光を出射するように配置されている。
【0026】
水平駆動部104は、追尾光送受部103がプリズム301から反射された追尾光を継続的に受光するように、各種制御部101aによる制御によって、本体部100b全体又は望遠鏡部110単独を水平方向に回転させるためのものである。
【0027】
鉛直駆動部105は、追尾光送受部103がプリズム301から反射された追尾光を継続的に受光するように、各種制御部101aによる制御によって、望遠鏡部110を鉛直方向に回転させるためのものである。
【0028】
水平方向検出部106は、望遠鏡部110の水平方向における回転角である水平角(すなわち、鉛直軸周りにおける基準方向からの回転角)を検出可能な水平エンコーダである。
【0029】
鉛直方向検出部107は、望遠鏡部110の鉛直方向における回転角である鉛直角(すなわち、水平軸周りにおける基準方向からの回転角)を検出可能な鉛直エンコーダである。
【0030】
本体制御部101の演算部101bは、測距部102により測定された距離と、水平方向検出部106により検出された水平角と、鉛直方向検出部107により検出された鉛直角とに基づき、本体部100bに対するプリズム301の位置座標(位置情報)を3次元座標(x、y、z)で算出可能に構成されている。また、演算部101bは、プリズム301の複数の位置座標(位置情報)と、プリズム301からポール302の端部(ポール先端)までの距離情報であるオフセット情報(図1に示すオフセットR)とから、ポール302の端部の設置位置に相当する測点Pの3次元座標を算出することも可能である。
【0031】
本体操作部108は、作業者が本体制御部101の各種制御部101aに制御指示を与える入力を実施可能な操作手段であり、例えば、タッチパネル、スイッチ、ボタン、ダイアル等の任意のデバイスを含んでいる。
【0032】
本体表示部109は、各種データを表示するためのものであり、例えば液晶パネルにより構成されている。本明細書において、各種データとは、測距部102により測定された距離、水平方向検出部106により検出された水平角、鉛直方向検出部107により検出された鉛直角、演算部101bにより算出されたプリズム301及び測点Pの位置座標等、測量システム1において取得済み又は取得可能なあらゆるデータである。本体表示部109は、本体操作部108と一体に構成されていてもよい。
【0033】
望遠鏡部110は、作業者が望遠鏡部110を介してプリズム301の位置を視認可能なように構成されている。望遠鏡部110の視準方向は、測距部102による測距光の出射方向、及び、追尾光送受部103による追尾光の出射方向と同一方向になっている。
【0034】
記憶部111は、例えば、HDD、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶媒体により実現され、本体測量装置100の寸法(高さ、幅、奥行きなど)、各種プログラム、測量データ、GPS時刻、撮影画像等の各種データを記憶可能に構成されている。
【0035】
そして、記憶部111は、測距部102により測定された距離(例えば斜距離)と、水平方向検出部106により検出された水平角と、鉛直方向検出部107により検出された鉛直角と、演算部101bにより算出されたプリズム301及び測点Pの位置座標(位置情報)と、プリズム301からポール302の端部(ポール先端)までの距離情報であるオフセット情報とを記憶している。また、ここでの位置座標(位置情報)は、演算部101bにより算出されたものでなくてもよい。
【0036】
また、記憶部111は、プリズム301の揺動案内情報をさらに記憶している。この揺動案内情報は、揺動案内部201bにより生成されるものであり、例えば、プリズム301の揺動軌跡、揺動回数若しくは揺動速度、又は、演算部101bにより算出された測点Pの位置座標の確度の高さである。
【0037】
本体通信部112は、端末測量装置200の端末通信部202等との間で各種データDを送受信可能に構成されている。
【0038】
図2に示すように、端末測量装置200は、端末制御部201と、端末通信部202と、端末表示部203と、端末操作部204とを備えている。端末制御部201は、各種制御部201aと、揺動案内部201bとを備えている。
【0039】
端末制御部201の各種制御部201aは、端末通信部202と、端末表示部203と、端末操作部204と、揺動案内部201bとを制御可能なものである。
【0040】
端末通信部202は、各種データDを送受信可能なように構成されている。
【0041】
端末表示部203は、各種データを表示するためのものであり、例えば液晶パネルにより構成されている。端末表示部203は、端末操作部204と一体に構成されていてもよい。
【0042】
端末操作部204は、作業者が端末制御部201の各種制御部201aに制御指示を与えるための入力を実施可能な操作手段であり、例えば、タッチパネル、スイッチ、ボタン、ダイアル、マイク等の任意のデバイスを含んでいる。
【0043】
端末制御部201の揺動案内部201bは、本体制御部101の演算部101bにより取得された複数のプリズム301の位置情報(点群データ)と、予め記憶部111に記憶されているオフセット情報とに基づいて、プリズム301の揺動中にプリズム301の揺動状態を推定し、推定した揺動状態に応じてプリズム301の揺動案内情報を生成するものである。揺動案内部201bは、生成した揺動案内情報を端末表示部203に表示することでプリズム301の揺動状態を作業者に案内するものである。揺動案内部201bは、初期設定状態の端末測量装置200において機能するものであっても、所定のアプリケーションソフトウェアをインストールした端末測量装置200においてのみ機能するものであってもよい。
【0044】
また、揺動案内部201bは、推定した揺動状態から測点Pの位置座標の確度を算出する。そして、揺動案内部201bは、この確度が所定の閾値(例えば確度100%)以上であると判定した場合には、端末表示部203における揺動案内情報の表示と、揺動案内情報の生成とを終了する。また、揺動案内部201bは、この確度が所定の閾値未満であると判定した場合には、確度を高めるための揺動案内情報(揺動改善情報)を生成する。
【0045】
ここで、確度を高めるための揺動案内情報としては、例えば確度が低い原因としての揺動状況(一例としては、プリズム301の揺動軌跡が円形ではなく楕円形になっているなど)、又は、確度が低い原因に基づいた適切な揺動方法(一例としては、図3(b)に示すように、測点Pを中心に8の字を描くようにプリズム301を揺動すること)等である。また、確度を高めるための揺動案内情報は、プリズム301の揺動軌跡に関する情報(例えば図4に示す揺動軌跡)、プリズム301の揺動回数に関する情報(例えば図3(b)に示すインジゲータI)、プリズム301の揺動速度に関する情報(例えば揺動速度が理想速度よりも速いか遅いか)、確度の高さに関する情報(例えば最新で算出された確度の値)等である。
【0046】
プリズム301の揺動中における、端末制御部201の揺動案内部201bによる揺動状態(揺動状況及び揺動方法)の案内について説明する。例えば、端末表示部203において表示される図3(a)に示す画面のOKボタンをタッチすると、端末表示部203には図3(b)に示す画面が表示される。この画面において、揺動案内部201bは、プリズム301の揺動中における揺動状況を示しており、具体的には、測点Pの推定位置座標の確度を所定の閾値以上であると判定可能な点群データを演算部101bが取得するまでの状況を、インジゲータIにより示している。つまり、インジゲータIは測点Pの位置座標の確度の高さに対応しており、確度が所定の閾値以上となるとインジゲータIが満タン表示になり、端末表示部203に表示される画面が図3(b)から図3(c)に遷移する。図3(c)の画面では、演算部101bにより算出された測点Pの位置座標(501mm,209mm,327mm)及びオフセットR(300mm)が表示される。
【0047】
また、図3(b)に示す画面においては、プリズム301の揺動中における一時点での揺動案内情報が示されており、揺動案内部201bは、測点Pの位置座標の確度が所定の閾値未満であると判定し、「目標となる座標を中心に8の字を描くようにプリズムを動かしてください。」といった理想的な揺動軌跡(この場合8の字状)に関する案内を端末表示部203に示している。
【0048】
ここで、測点Pの位置座標の算出及び判断方法について図4を参照しながら説明する。この算出及び判断方法としては次の(1)~(4)が挙げられる。図4(a)に示すように、(1)は、オフセットRを半径とする仮想球体C1の表面又は表面付近に点群を配置し、仮想球体C1の中心座標O1を測点Pの位置座標であると推定し、仮想球体C1をその半径が1となるように規格化し、これら点群を含む最小の曲面の面積A1を算出し、基準面積B1に対する面積A1の比率「A1/B1」である確度を算出する方法(凸包を用いた方法)である。基準面積B1は、高精度の測量がなされたと判断可能である場合の点群面積である。確度が1(100%)を超えたら、測量完了(つまり適切な揺動がなされたということ)であり、推定した位置座標を測点Pの位置座標であると判断する。
【0049】
図4(a)(b)に示すように、(2)は、オフセットRを半径とする仮想球体C1の表面又は表面付近に点群を配置し、仮想球体C1の中心座標O1を測点Pの位置座標であると推定し、仮想球体C1をその半径が1となるように規格化し、これら点群の平均座標を算出し、この平均座標を極座標(λ、φ)に変換し、これら点群を極座標平面Fに投影し、極座標平面Fを経度方向λにN分割(図4(b)では8分割)し、N分割された各平面において中心極O2から最も遠い点を抽出し、抽出した点を結んで得られる面の面積A2を算出し、基準面積B2に対する面積A2の比率「A2/B2」である確度を算出する方法である。基準面積B2は、高精度の測量がなされたと判断可能である場合の点群面積である。確度が1(100%)を超えたら測量完了(つまり適切な揺動がなされたということ)であり、推定した位置座標を測点Pの位置座標であると判断する。
【0050】
図4(c)に示すように、(3)は、半径Qiの仮想球体C2の表面又は表面付近に点群を配置し、仮想球体C2の中心座標O3を測点Pの位置座標であると推定し、確度=「1-|1-(Qi/R)|」として確度を算出する方法である。確度が1を超えたら測量完了(つまり適切な揺動がなされたということ)であり、推定した位置座標を測点Pの位置座標であると判断する。
【0051】
図4(c)に示すように、(4)は、半径Qiの仮想球体C2の表面又は表面付近に点群を配置し、仮想球体C2の中心座標O3を測点Pの位置座標であると推定し、(i-n)番目に推定した位置座標とi番目に推定した位置座標との距離「√(P(i)-P(i-n))^2」を確度として算出する方法である。確度が基準値未満となったら測量完了(つまり適切な揺動がなされたということ)であり、i番目に推定した位置座標を測点Pの位置座標であると判断する。ここでの基準値は、2つの推定した位置座標同士のずれのうち許容可能な範囲の最大値である。
【0052】
さらに、上記の(1)~(4)において、測点Pの位置座標の判断精度を高めるために、算出した確度を次の補正式により補正してから測点Pの位置座標を判断してもよい。補正式は、「補正後の確度=補正前の確度-(σR/R)」である。ここで、「σR」は、各点群と測点Pの推定位置座標との距離Riと、オフセットRとの距離差を正負の数で表現し、これら距離差に基づいて算出される標準偏差(Rで規格化されたもの)である。
【0053】
(測量方法の手順)
次に、本発明に係る測量方法の一実施形態について説明する。本実施形態に係る測量方法は、図5に示すステップS1~ステップS8を備えている。まず、本実施形態に係る測量方法の前提として、作業者は、測点Pにポール302の端部を接触させた状態でプリズム301を測点Pの周りで揺動させている。
【0054】
ステップS1において、図2に示す本体制御部101の各種制御部101aは、追尾光送受部103から出射される追尾光によりプリズム301の位置を認知し、水平駆動部104及び鉛直駆動部105を駆動させることにより、測距部102から出射される測距光をプリズム301に継続して当て続ける。これによって、測距部102が測距光により測距部102からプリズム301までの距離を測定し(測距工程)、水平方向検出部106が水平方向における測距光の出射方向を検出し(水平方向検出工程)、鉛直方向検出部107が鉛直方向における測距光の出射方向を検出し(鉛直方向検出工程)、本体制御部101の演算部101bがプリズム301の揺動軌跡における複数の位置情報を取得する(演算工程)。
【0055】
ステップS2において、図2に示す端末制御部201の揺動案内部201bは、演算部101bにより取得された複数の位置情報と、記憶部111において記憶されているオフセット情報とを端末通信部202経由で取得する。そして、揺動案内部201bは、これら複数の位置情報とオフセット情報とに基づいて、プリズム301の揺動状態を推定し、推定した揺動状態に応じてプリズム301の揺動案内情報(揺動状態情報)を生成し、必要に応じて端末表示部203に表示する。ここでの揺動案内情報としては、例えば、図4に示すような揺動軌跡に関する情報、又は、図3(b)に示すようなインジゲータI(揺動回数に関する情報)等が挙げられる。
【0056】
ステップS3において、揺動案内部201bは、揺動案内部201bにおけるプリズム301の位置情報の取得数が所定数以上(例えば3つ以上)であるか否かを判定する。そして、ステップS3がNoである場合、すなわち、揺動案内部201bにおけるプリズム301の位置情報の取得数が所定数未満であると揺動案内部201bが判定した場合には、揺動案内部201bは、所定時間経過後において再度ステップS1を実施する。ステップS3がYesである場合、演算部101bはステップS4に処理を進める。
【0057】
ステップS4において、演算部101bは、揺動案内部201bから本体通信部112経由で揺動案内情報(例えば図4に示す揺動軌跡に関する情報)を取得する。そして、演算部101bは、この揺動案内情報と、演算部101bの演算により取得した複数の位置情報と、記憶部111において記憶されているオフセット情報とから測点P(図1)の位置座標を算出する。さらに、ステップS5において、演算部101bは、この位置座標の確度を算出する。
【0058】
ステップS6において、揺動案内部201bは、演算部101bにより算出された確度を端末通信部202経由で取得し、取得した確度が閾値以上であるか否かを判定する。そして、揺動案内部201bは、この確度が閾値以上であると判定した場合(ステップS6がYesである場合)にはステップS7に処理を進め、この確度が閾値未満であると判定した場合(ステップS6がNoである場合)にはステップS8に処理を進める。
【0059】
ステップS7において、揺動案内部201bは、取得した確度が閾値以上であることを本体通信部112経由で各種制御部101aに伝達する。すると、各種制御部101aは、演算部101bにより算出された測点Pの位置座標を記憶部111に登録し、例えば図3(c)に示すような測量完了報告を本体表示部109に表示させる。また、揺動案内部201bは、揺動案内情報の生成を終了し、端末表示部203における揺動案内情報の表示を停止する。
【0060】
ステップS8において、揺動案内部201bは、取得した確度が閾値未満であることを本体通信部112経由で各種制御部101aに伝達する。すると、各種制御部101aは、演算部101bにより算出された測点Pの位置座標を破棄する。また、揺動案内部201bは、確度を高めるための揺動案内情報(揺動改善情報)を生成し、具体的には、取得した確度が低い原因を揺動状況として案内するか、あるいは、例えば図3(b)に記載のように、この確度が低い原因に基づいて揺動方法(8の字を描くようにプリズム301を動かすなど)を案内する。ステップS8の実施後には再度ステップS3を実施する。
【0061】
なお、本実施形態に係る測量方法においては、上述した測量システム1において可能な動作を必要に応じて実施することができる。
【0062】
(測量システム及び測量方法の効果)
本実施形態に係る測量システム1及び測量方法によれば、揺動案内部201bは、プリズム301の揺動状態を推定して揺動案内情報(揺動状態情報)を生成するため、作業者が適切にプリズム301を揺動させることを促進することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る測量システム1及び測量方法によれば、演算部101bが測点Pの位置座標を算出し、揺動案内部201bがその確度を算出するため、その確度に応じた適切な処理(図5に示すステップS7又はステップS8)を各種制御部101a及び揺動案内部201bが実施することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る測量システム1及び測量方法によれば、揺動案内部201bは、確度が所定の閾値未満であると判定した場合には確度を高めるための揺動案内情報である揺動改善情報(例えば揺動軌跡、揺動回数、揺動速度、確度の高さに関する情報)を生成するため、作業者がさらに適切にプリズム301を揺動させることを促進することができる。
【0065】
(測量プログラム)
次に、本発明に係る測量プログラムの一実施形態について説明する。本実施形態に係る測量プログラムは、図5に示すステップS1~ステップS8を、図6に示すコンピュータ800に実行させるためのものである。
【0066】
コンピュータ800は、CPU801と、主記憶装置802と、一時的でない有形の媒体である補助記憶装置803と、インタフェース804とを備えている。CPU801は、本実施形態に係る測量プログラムを補助記憶装置803から読み出して主記憶装置802に展開することにより、図5に示すステップS1~ステップS8を実行する。
【0067】
本実施形態に係る測量プログラムによっても、上述した測量システム1と同様の効果を生じさせることができる。
【0068】
本実施形態においては、補助記憶装置803に代えて、一時的でない有形の媒体として
、例えば、インタフェース804を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、C
D-ROM、DVD-ROM及び半導体メモリを用いることができる。
【0069】
本実施形態に係る測量プログラムは、図5に示すステップS1~ステップS8を、補助記憶装置803に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実行するためのものである差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0070】
(測量システムの変形例)
上述した測量システム1の説明においては、作業者が地面Eと立壁Wとの境界線の測点Pを測量する場合を例にとったが、測量システム1は、作業者が任意の箇所における測点を測量する場合に適用可能なものである。例えば、測量システム1は、作業者が立壁と天井との境界線の側点を測量する場合、または、作業者が測点付近の障害物を避けて測点にポール302の端部を配置して測量する場合等、作業者がポール302を鉛直又は水平に配置することができない様々な状況において適用可能なものである。なお、測量システム1は、作業者がポール302を鉛直又は水平に配置することができる場所の測点を測量する場合においても適用可能なものである。
【0071】
測量システム1においては、本体部100bが円筒状に形成されているが、本体部100bは円筒状以外の形状(例えば直方体)に形成されていてもよい。
【0072】
測量システム1においては、水平駆動部104が本体部100b全体及び望遠鏡部110を水平方向に駆動可能に構成されているが、水平駆動部104は本体部100b全体又は望遠鏡部110のいずれかのみを水平方向に駆動可能に構成されていてもよい。
【0073】
測量システム1においては、鉛直駆動部105が望遠鏡部110を鉛直方向に駆動可能に構成されているが、鉛直駆動部105は、望遠鏡部110に代えて本体部100b全体を鉛直方向に駆動可能に構成されてもよく、あるいは、望遠鏡部110及び本体部100b全体の両方を鉛直方向に駆動可能に構成されていてもよい。
【0074】
また、測量システム1において、本体制御部101が揺動案内部201bとして機能するものであってもよく、端末制御部201が演算部101bとして機能するものであってもよい。さらに、再帰反射器具300に制御部を設け、この制御部が揺動案内部201b及び演算部101bとして機能するものであってもよい。
【0075】
さらに、測量システム1においては、データコレクタとしての機能を有する外部コントローラ等の外部装置がさらに備わっていてもよい。この場合、この外部装置が、演算部101b、揺動案内部201b、記憶部及び通信部を備え、本体測量装置100の本体部100bとの間でデータの送受信をしながら演算及び揺動案内を行ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 測量システム
100 本体測量装置
100a 支持部
100b 本体部
101 本体制御部
101a 各種制御部
101b 演算部
102 測距部
103 追尾光送受部
104 水平駆動部
105 鉛直駆動部
106 水平方向検出部
107 鉛直方向検出部
108 本体操作部
109 本体表示部
110 望遠鏡部
111 記憶部
112 本体通信部
200 端末測量装置
201 端末制御部
201a 各種制御部
201b 揺動案内部
202 端末通信部
203 端末表示部
204 端末操作部
300 再帰反射器具
301 プリズム(測量対象)
302 ポール
A1、A2 面積
C1、C2 仮想球体
D データ
E 地面
F 極座標平面
I インジゲータ
L 光
O1 中心座標
O2 中心極
О3 中心座標
P 測点
Qi 半径
R オフセット
W 立壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6