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特開2024-145609検査装置、検査用プログラム、検査システム、及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145609
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】検査装置、検査用プログラム、検査システム、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1172 20160101AFI20241004BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B5/1172
A61B5/16 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058045
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】523089195
【氏名又は名称】前田 英三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 英三郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038FF01
4C038FG01
4C038PP03
4C038PR01
4C038PS09
(57)【要約】
【課題】被検者に意識させずにその性格を検査する
【解決手段】検査装置10は、画面を有する表示部14と、画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサ16と、画面上に接触した被検者の指紋を読み取る指紋センサ15と、タッチセンサ16の検知領域内かつ指紋センサ15の読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から問題に対する適切な回答を指で選択することを被検者に促す複数の設問を含むテストを実行するテスト実行部11aと、テストの実行中に指紋センサ15が読み取った指紋を分析する指紋分析部11cと、指紋分析部11cによる分析結果を含む回答情報に基づいて被検者によるテストの結果を分析するテスト結果分析部11dを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面を有する表示部と、
前記画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサと、
前記画面上に接触した前記被検者の指紋を読み取る指紋センサと、
前記タッチセンサの検知領域内かつ前記指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から前記問題に対する適切な回答を指で選択することを前記被検者に促す複数の設問を含むテストを実行するテスト実行部と、
前記テストの実行中に前記指紋センサが読み取った指紋を分析する指紋分析部と、
前記指紋分析部による分析結果を含む回答情報に基づいて、前記被検者による前記テストの結果を分析するテスト結果分析部とを備える
検査装置。
【請求項2】
前記テスト結果分析部は、ある問題に対する回答を選択した指の指紋と別の問題に対する回答を選択した指の指紋が同じものであるか否かに関する情報を、前記回答情報として、前記テストの結果の分析に反映する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記テスト結果分析部は、正解の回答を選択した指の指紋と不正解の回答を選択した指の指紋に関する情報を、前記回答情報として、前記被検者の性格分析に反映する
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記テスト結果分析部は、ある被検者が過去に前記テストを受けたときに用いた指の指紋の情報と、前記ある被検者が現在前記テストを受けたときに用いた指の指紋の情報とを照合して不正の可能性を判定する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1に記載の検査装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
ネットワークを介して接続された検査装置とサーバとを含む検査システムであって、
前記検査装置は、
画面を有する表示部と、
前記画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサと、
前記画面上に接触した前記被検者の指紋を読み取る指紋センサとを備え、
前記検査システムは、
前記タッチセンサの検知領域内かつ前記指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から前記問題に対する適切な回答を指で選択することを前記被検者に促す複数の設問を含むテストを実行するテスト実行部と、
前記テストの実行中に前記指紋センサが読み取った指紋を分析する指紋分析部と、
前記指紋分析部による分析結果を含む回答情報に基づいて、前記被検者による前記テストの結果を分析するテスト結果分析部とを備える
検査システム。
【請求項7】
画面を有する表示部と、前記画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサと、前記画面上に接触した前記被検者の指紋を読み取る指紋センサと、を備える検査装置によって行われる検査方法であって、
前記検査装置が、前記タッチセンサの検知領域内かつ前記指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から前記問題に対する適切な回答を指で選択することを前記被検者に促す複数の設問を含むテストを実行する工程と、
前記検査装置が、前記テストの実行中に前記指紋センサが読み取った指紋を分析する工程と、
前記検査装置が、前記指紋の分析結果を含む回答情報に基づいて、前記被検者による前記テストの結果を分析する工程とを含む
検査方法。
【請求項8】
画面を有する表示部、前記画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサ、及び前記画面上に接触した前記被検者の指紋を読み取る指紋センサを備える検査装置と、前記検査装置とネットワークを介して接続されたサーバとを含むシステムによって行われる検査方法であって、
前記システムが、前記タッチセンサの検知領域内かつ前記指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から前記問題に対する適切な回答を指で選択することを前記被検者に促す複数の設問を含むテストを実行する工程と、
前記システムが、前記テストの実行中に前記指紋センサが読み取った指紋を分析する工程と、
前記システムが、前記指紋の分析結果を含む回答情報に基づいて、前記被検者による前記テストの結果を分析する工程とを含む
検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の情報処理特性及び内的価値観(性格)等を分析するための検査装置や、検査用プログラム、検査システム、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
会社等の組織運営においては、人材を能力に応じて適正な部署等に配置するとともに、その組織の風土や業務に合った人材を発掘し採用することが重要である。この点に関し、例えば特許文献1には、被検者の処理能力検査装置であって、特に被検者の各種作業に対する処理能力や処理能率や各種刺激に対する反応特性等を時間的変化を含めて検査するための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-120522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の装置は、被検者の処理能力を検査することにとどまるものであり、被検者の性格(内的価値観)までは分析することはできない。被検者の性格は、個人の特性を示し、短期的には変わりにくく、行動プロセスパターンとの相関が高い要素であることから、人材の配置や採用において考慮すべきである。一方、SPIなどの性格分析を行うと、模範解答を意識した回答がなされることがあり、応募者の深層的な性格を分析できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、被検者に意識させずにその性格を検査することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記従来技術の課題を解決するための手段について鋭意検討した結果、表示画面に複数の選択肢の中から適切な回答を指で選択することを被検者に促すテストを表示し、そのテスト中に被検者が使った指に関する情報をそのテストの回答の当否とともに分析することで、被検者に意識させずにその性格を検査することができるという知見を得た。そして、本発明者は、この知見によれば上記の目的を達成できることに想到し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の第1の側面は、検査装置に関する。本発明に係る検査装置は、表示部、タッチセンサ、指紋センサ、指紋分析部、及びテスト結果分析部を備える。表示部は、表示用の画面を有する。タッチセンサは、画面上における被検者のタッチ位置を検知する。指紋センサは、画面上に接触した被検者の指紋を読み取る。テスト実行部は、所定のテストを実行する。このテストは、タッチセンサの検知領域内かつ指紋センサの読取領域内に、所定の問題に関する複数の選択肢を画面に表示し、当該選択肢の中から問題に対する適切な回答を指で選択することを被検者に促す複数の設問を含む。指紋分析部は、テストの実行中に指紋センサが読み取った指紋を分析する。テスト結果分析部は、指紋分析部による分析結果を含む回答情報に基づいて、被検者によるテストの結果を分析する。
【0008】
被検者が、テストの実行中に、例えば一つの指のみを使って回答を入力するのか、あるいは複数の指を使って回答するのか、また複数の指を使うのであればどの指をどのように使うのかといった情報は、その被検者の性格を分析する際の指標の一つとなる。このようなテストの回答入力時に使用する指に関する情報を被検者に意識させずに取得することにより、被検者の深層的な性格を分析することができる。
【0009】
本発明に係る検査装置において、テスト結果分析部は、ある問題に対する回答を選択した指の指紋と別の問題に対する回答を選択した指の指紋が同じものであるか否かに関する情報を、回答情報としてテストの結果の分析に反映することが好ましい。
【0010】
本発明に係る検査装置において、テスト結果分析部は、正解の回答を選択した指の指紋と不正解の回答を選択した指の指紋に関する情報を、回答情報として被検者の性格分析に反映することとしてもよい。
【0011】
本発明に係る検査装置において、テスト結果分析部は、ある問題に対してある選択肢を選択した指の指紋と別の問題に対して同じ選択肢を選択した指の指紋が同じものであるか否かに関する情報を、回答情報としてテストの結果の分析に反映することとしてもよい。
【0012】
本発明に係る検査装置において、テスト結果分析部は、ある被検者が過去にテストを受けたときに用いた指の指紋の情報と、同じ被検者が現在テストを受けたときに用いた指の指紋の情報とを照合し、例えばその被検者以外の者が回答を選択した不正の可能性を判定することとしてもよい。
【0013】
本発明の第2の側面は、コンピュータプログラムに関する。本発明に係るコンピュータプログラムは、汎用的なコンピュータ(携帯情報端末を含む)を、前述した第1の側面に係る検査装置として機能させるためのプログラムである。本発明に係るコンピュータプログラムは、インターネット等の通信回線を通じてコンピュータにダンロードされるものであってもよいし、CD-ROM等の記録媒体に非一時的に記録されたものであってもよい。
【0014】
本発明の第3の側面は、検査システムに関する。本発明に係る検査システムは、ネットワークを介して接続された検査装置とサーバとを含む。検査装置は、画面を有する表示部と、画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサと、画面上に接触した被検者の指紋を読み取る指紋センサとを備える。検査システムは、テスト実行部、指紋分析部、及びテスト結果分析部を備える。つまり、これらのテスト実行部、指紋分析部、及びテスト結果分析部は、検査装置が備えるものであってもよいし、サーバが備えるものであってもよいし、あるいは検査装置とサーバによる協働的な情報処理により実現されるものであってもよい。テスト実行部は、タッチセンサの検知領域内かつ指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から問題に対する適切な回答を指で選択することを被検者に促す複数の設問を含むテストを実行する。指紋分析部は、テストの実行中に指紋センサが読み取った指紋を分析する。テスト結果分析部は、指紋分析部による分析結果を含む回答情報に基づいて、被検者によるテストの結果を分析する。
【0015】
本発明の第4の側面は、検査装置による検査方法に関する。第4の側面に係る検査方法は、画面を有する表示部と、画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサと、画面上に接触した被検者の指紋を読み取る指紋センサと、を備える検査装置によって行われる。第4の側面に係る検査方法では、まず、検査装置が、タッチセンサの検知領域内かつ指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を画面に表示し、当該選択肢の中から問題に対する適切な回答を指で選択することを被検者に促す複数の設問を含むテストを実行する。次に、検査装置が、テストの実行中に指紋センサが読み取った指紋を分析する。次に、検査装置が、指紋の分析結果を含む回答情報に基づいて、被検者によるテストの結果を分析する。
【0016】
本発明の第5の側面は、システムによる検査方法に関する。第5の側面に係る検査方法は、画面を有する表示部、画面上における被検者のタッチ位置を検知するタッチセンサ、及び画面上に接触した前記被検者の指紋を読み取る指紋センサを備える検査装置と、この検査装置とネットワークを介して接続されたサーバとを含むシステムによって行われる。第5の側面に係る検査方法では、まず、システムが、タッチセンサの検知領域内かつ指紋センサの読取領域内に所定の問題に関する複数の選択肢を前記画面に表示し、当該選択肢の中から問題に対する適切な回答を指で選択することを被検者に促す複数の設問を含むテストを実行する。次に、システムが、テストの実行中に指紋センサが読み取った指紋を分析する。次に、システムが、指紋の分析結果を含む回答情報に基づいて、被検者によるテストの結果を分析する。これらの各工程は、検査装置によって実行されるものであってもよいし、サーバによって実行されるものであってもよいし、あるいは検査装置とサーバによる協働的な情報処理により実行されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検者に意識させずにその性格を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、検査システムの概要を模試的に示している。
図2図2は、検査システムを構成する検査装置及びサーバの構成例を示したブロック図である。
図3図3は、検査装置の表示画面の構成例を模式的に示している。
図4図4は、検査方法の一例を示したフロー図である。
図5図5は、本発明で実行されるテストの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態として、インターネットを介して接続された検査装置10とサーバ20を含む検査システム100を示している。検査装置10は、被検者により操作される端末である。検査装置10としては、図1に示したタブレット型コンピュータの他、例えばスマートフォン等の携帯情報端末や、ラップトップ型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータを採用できる。ただし、後述するように、検査装置10はタッチパネルディスプレイを備えていることが必要である。サーバ20は、検査装置10の制御や、検査装置10での処理で得られたデータを蓄積する機能を有するウェブサーバである。サーバ20は、一台のサーバ装置によって構成されたものであってもよいし、複数のサーバ装置に機能を分散することにより構築されたものであってもよい。図1に示した例において、本発明は、サーバクライアント型のシステムとして実現されている。ただし、本発明は、スタンドアローン型、すなわち検査装置10のみによって実現することも可能である。
【0021】
図2は、検査装置10及びサーバ20の機能構成例を示したブロック図である。図2に示されるように、まず、検査装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、表示部14,指紋センサ15、及びタッチセンサ16を含んで構成されている。制御部11は、検査装置10全体の処理を統括するための要素であり、CPUやGPUなどのプロセッサとRAMなどのメインメモリ(主に揮発性メモリ)とで構成されている。制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムをメインメモリに展開し、このメインメモリに格納されたプログラムをプロセッサにより実行することにより所定の処理を行う。このプログラムを実行することにより、制御部11は、テスト実行部11a、タッチ位置検出部11b、指紋分析部11c、及びテスト結果分析部11dといった各種のブロックの機能を実現する。これらの機能ブロック11a~11dについての詳細は後述する。記憶部12は、制御部11の処理に利用されるデータや、制御部11での演算後のデータを記憶するための要素であり、HDD及びSDDといったストレージ(不揮発性メモリ)によって構成されている。通信部13は、インターネットを介してサーバ20とデータの送受信を行うための要素であり、有線又は無線によってデータを送受信できるものであればよい。無線通信を行う場合、通信部13としては、4G、5G、あるいはWi-Fi(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信モジュールを採用できる。
【0022】
また、図2に示されるように、検査装置10は、表示画面を構成する要素として、表示部14、指紋センサ15、及びタッチセンサ16を有しており、これらの要素によって画面内指紋認証が可能なタッチパネルディスプレイが構成されている。また、図3は、タッチパネルディスプレイのより具体的な構成を示している。図3(a)に示されるように、画面内指紋認証型のタッチパネルディスプレイは、タッチセンサ16の検知領域Sと、指紋センサ15の読取領域Fを含む。タッチセンサ16の検知領域Sは、表示部14が画面を表示可能な領域とほぼ同じであり、タッチパネルディスプレイのほぼ全域に亘っている。また、指紋センサ15の読取領域Fは、タッチセンサ16の検知領域Sと重なっている。図3(a)に示した例では、指紋センサ15の読取領域Fは、タッチセンサ16の検知領域Sよりも小さい領域であり、この検知領域Sにその全体が内包されている。このように、指紋センサ15の読取領域Fは、タッチパネルディスプレイの一部の領域で十分である。ただし、指紋センサ15の読取領域Fがタッチパネルディスプレイの全域に亘っていてもよい。
【0023】
また、図3(b)に示されるように、タッチパネルディスプレイは、最下層に表示部14が配置され、その上に指紋センサ15が重ねられ、さらにその上にタッチセンサ16が重ねられている。また、タッチパネルディスプレイの最上層には、強化ガラス17が配置されている。表示部14は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイといった表示装置である。指紋センサ15は、タッチパネルディスプレイに触れた被検者の指の指紋を読み取るためのセンサである。指紋センサ15としては、例えば光学式のセンサを利用することが好ましい。光学式の指紋センサ15は、指に向けて光を照射する光源と、指で反射した光を受光する光電センサ(CMOSセンサ等)を含み、光電センサで受光した光信号に基づいて指紋の凹凸を読み取ることができる。なお、指紋センサ15の光源としては、表示部14(液晶ディスプレイ等)の光源を共用することもできる。また、指紋センサ15としては、光学式のものの他、静電容量式のセンサを用いてもよい。また、タッチセンサ16は、タッチパネルディスプレイに触れた被検者の指のタッチ位置を検出するためのセンサである。タッチセンサ16としては、公知の静電容量式のセンサを用いることが好ましい。本発明では、被検者が、タッチセンサ16の検知領域S内であって、かつ、指紋センサ15の読取領域F内に触れた場合、指紋センサ15による指紋の読み取りと、タッチセンサ16によるタッチ位置の検出が同時に行われることとなる。
【0024】
図2に示されるように、サーバ20は、制御部21、データベース22、及び通信部23を含んで構成されている。制御部21は、サーバ20全体の処理を統括するための要素であり、CPUやGPUなどのプロセッサとRAMなどのメインメモリ(主に揮発性メモリ)とで構成されている。制御部21は、このメインメモリに格納されたプログラムをプロセッサにより実行することにより所定の処理を行う。データベース22は、被検者の個人情報や、テスト結果に関する情報を関連付けて記憶している。テスト結果に関する情報としては、過去のテストの受験履歴や、テストの得点、テストの結果を分析することにより得られた被検者の情報処理特性や性格(内的価値観)に関する情報、被検者がテスト受験時に用いた指の指紋に関する情報などが含まれる。データベース22には、その他、被検者に関わる必要な情報を蓄積しておくことができる。通信部23は、インターネットを介して検査装置10とデータの送受信を行うための要素であり、有線又は無線によってデータを送受信できるものであればよい。
【0025】
続いて、図4を参照して、本実施形態に係る検査システム100によって実行される検査方法の流れについて説明する。
【0026】
図4に示されるように、被検者は、まず、検査装置10を操作して検査システム100が提供する検査サービスにログインする(ステップS1)。なお、本検査サービスの利用が初回である場合、被検者には新規にユーザ情報を登録することを求めればよい。被検者のログイン情報(アカウント名とパスワード等)は、被検者固有のID情報と関連付けて、サーバ20のデータベース22に登録されている。被検者は、検査装置10に自身のログイン情報を入力すると、このログイン情報がサーバ20に送信され、サーバ20においてデータベース22内の情報と照合される。ログイン情報の照合に成功した場合、その旨がサーバ20から検査装置10に送信され、検査装置10においてテストが開始される(ステップS2)。これにより、被検者の回答情報やテスト結果等の情報を、当該被検者固有のID情報と関連付けて、データベース22に蓄積することができる。
【0027】
続いて、検査装置10の制御部11のテスト実行部11aは所定のテストを実行する(ステップS2)。図5は、テスト実行部11aが実行するテストの例を示している。図5(a)に示したテストは「加算処理反応」に関わるテストであり、このテストには、画面上に表示された2つの数字を足してその一桁目(一の位)の数字を入力させる設問が複数含まれている。また、図5(b)に示したテストは「単純処理反応」に関わるテストであり、このテストには、画面上に表示された数字と同じ数字を入力させる設問が複数含まれている。本発明で実行するテストは、加算処理反応テストと単純処理反応テストのいずれであってもよいが、加算処理反応テストを実行することが特に好ましい。
【0028】
テスト実行部11aは、まず、表示部14の表示画面上に最初の設問を表示する(ステップS3)。一つの設問には、問題と選択肢が含まれる。つまり、図3(a)や図5に示されるように、加算処理反応テストや単純処理反応テストでは、一つの設問ごとに、画面上には問題と選択肢が表示される。加算処理反応テストの場合、問題は、2つの数字の組み合わせ(例えば図3(a)に示した「9」と「5」の組み合わせや、図5(a)「4」と「9」の組み合わせ)であり、選択肢は、0~9の番号である。被検者は、問題として表示された2つの数字を足し、その一桁目(一の位)の数字を選択肢となる0~9の番号の中から指で選択することとなる。なお、2つの数字を足しても二桁とならない場合もあるが、その場合には単純に2つの数字を足した値を選択肢(0~9)の中から選択すればよい。単純処理反応テストの場合、問題は、1つの数字(例えば図3(b)に示した「7」)であり、選択肢は、0~9の番号である。被検者は、問題として表示された1つの数字と同じ数字を選択肢となる0~9の番号の中から指で選択することとなる。
【0029】
また、図3(b)に示されるように、各設問の問題と選択肢のうち、少なくとも選択肢(0~9の番号)については、検査装置10の表示画面のうち、指紋センサ15の読取領域Fとタッチセンサ16の検知領域Sとが重なる範囲に表示される。なお、図3(b)に示した例では、選択肢が読取領域Fと検知領域Sの重なる範囲に表示され、問題は検知領域Sのうち読取領域Fと重ならない範囲に表示されている。ただし、問題と選択肢の両方を読取領域Fと検知領域Sが重なる範囲に表示することとしてもよい。このようにして表示された検知領域S内の選択肢の中から、被検者は問題に対する回答を指で選択する(ステップS4)。これにより、被検者が画面に表示された選択肢に指で触れると、検査装置10は、そのタッチ位置から被検者がどの選択肢(番号)を選択したのかを特定するのと同時に、その選択肢の入力に用いられた指の指紋を読み取ることができる。
【0030】
次に、検査装置10の制御部11のタッチ位置検出部11bは、タッチセンサ16の検出信号に基づいて被検者のタッチ位置を検出する(ステップS5)。具体的には、タッチ位置検出部11bは、被検者のタッチ位置に基づいて、画面上に表示された複数の選択肢の中から、どの選択肢を回答として入力したのかを特定できる。
【0031】
次に、テスト実行部11aは、被検者が選択した選択肢が問題に対する回答として正しいか否かを判定する(ステップS6)。具体的には、テスト実行部11aは、加算処理反応テストを実行している場合は、被検者により選択された番号(回答)が、画面上に表示された2つの数字を足してその一桁目(一の位)と一致するかどうかを判定すればよい。また、テスト実行部11aは、単純処理反応テストを実行している場合には、被検者により選択された番号(回答)が、画面上に表示された数字と一致するかどうかを判定すればよい。テスト実行部11aは、設問に対する回答が正答であるか誤答であるかを判定し、その結果を記憶部12に記憶する(ステップS7)。また、テスト実行部11aは、設問に対する回答の正誤情報だけでなく、問題が画面に表示されてから被検者が回答を入力するまでに要した時間を計測し、その時間を正誤情報とともに記憶部12に記憶することとしてもよい。
【0032】
一方で、検査装置10の制御部11の指紋分析部11cは、指紋センサ15で読み取った指紋を分析する(ステップS8)。具体的には、指紋分析部11cは、ある一回のテストの実行中に、ある設問に対する回答の入力に用いられた指の指紋が、そのテストの実行中に初めて読み取られた新しい指紋であるか否かを判断する(ステップS9)。指紋分析部11cは、読み取った指紋が新しい指紋であると判断した場合には、その指紋に関する情報を記憶部12に記憶する(ステップS10)。このようにして、新しい指紋は記憶部12に随時蓄積していく。その後、指紋分析部11cは、設問に関連付けて、その設問に対する回答の入力に用いられた指紋の情報を、回答情報として記憶部12に記憶する(ステップS7)。これにより、設問ごとに、その設問の回答に用いられた指紋の情報が蓄積されることになる。一方で、指紋分析部11cは、記憶部12に記憶されている指紋の情報を照合し、読み取った指紋が新しい指紋ではない、すなわち既に記憶部12に記憶されている指紋であると判断した場合は、新しい指紋の記憶処理(ステップS10)は行わずに、その設問に対する回答の入力に用いられた指紋の情報を、回答情報として記憶部12に記憶する(ステップS7)。
【0033】
上記ステップS3~S7の一連の処理によって、記憶部12には、ある設問に対する回答情報として、正誤情報や、回答を入力するまでに要した時間の情報だけでなく、回答の入力にどのように指が用いられたかという情報を蓄積することができる。具体的には、指紋からでは、被検者が使った指(母指、示指、中指、環指、小指)を直ちに特定することは困難であるが、少なくともあるテストの中で被検者は何本の指を使ったかを特定することができる。また、あるテストの中で被検者が複数の指を用いた場合、正解の回答を入力したときの指と不正解の回答を入力したときの指とが同じであるのか異なるのかを特定することもできる。例えば、ある指で回答を入力するときは正答となる傾向が強く、その他の別の指で回答を入力するときには誤答となる傾向が強いといったように、被検者が用いる指と正誤の関係を把握できる。さらに、ある選択肢(0~9の番号)を被検者は常に同じ指で選択しているのか、あるいは同じ選択肢でも被検者は異なる指で選択することがあるのかを特定することもできる。例えば、0番の選択肢を選択するときには必ず同じ指が使われているのか、あるいは0番の選択肢を選択するときに複数の指が使われているのかを把握できる。
【0034】
次に、テスト実行部11aは、あるテストに含まれる複数の設問が全問終了したか否かを判断する(ステップS11)。設問が全問終了していない場合、テスト実行部11aは、ステップS3に戻り、次の設問を表示する(ステップS3)。一方、設問が全問終了した場合、テスト実行部11aは、テストを終了させる(ステップS12)。なお、あるテストに含まれる設問の数は任意に設定できる。例えば、あるテストには10~200又は50~100の設問が含まれていることが好ましい。このようにして、ある一回のテストの実行中に収集された回答情報は、被検者の情報処理特性や内的価値観(性格)の分析に用いられる。
【0035】
テスト終了後、検査装置10の制御部11のテスト結果分析部11dは、記憶部12に記憶されている回答情報に基づいて、被検者の処理能力や性格の分析など、テスト結果の分析を行う(ステップS13)。テスト結果の分析手法や、被検者の処理能力や性格の評価手法は特に制限されないが、例えば以下のように行うことができる。
【0036】
被検者の処理能力(情報処理特性)は、回答の正答率や、回答の入力までに要した時間に基づいて評価すればよい。正答率が高いほど、回答までの時間が短いほど、被検者の処理能力のスコアは高く評価される。また、テスト実行中に、複数の指を用いて回答を入力している場合には、被検者の処理能力のスコアを高く評価することとしてもよい。例えば、図1に示した例のように、検査装置10として比較的大型のディスプレイ(9~13インチ)を搭載したタブレット型コンピュータを利用する場合、複数の指を用いて回答を入力することが効率的であり、4本以上の指が用いられていることが好ましいといえる。そこで、例えば一回のテスト中に使用した指の本数が多いほど被検者の処理能力のスコアを高く評価することとしてもよい。なお、例えばディスプレイの大きさによっては多数の指を用いて回答を入力すると返って効率が落ちる場合もある。その場合、回答に用いられた指の数が多すぎるとき(所定本数を超えるとき)は、処理能力のスコアを低くすることとしてもよい。
【0037】
被検者の性格(内的価値観)は、回答の正答率や、回答の入力までに要した時間に加えて、正答と誤答の傾向や、回答の入力に用いた指の使い方に関する情報に基づいて評価すればよい。被検者の性格は、いくつかの項目に分けて評価できる。例えば、正答率が高い反面、回答の入力時間が遅い場合には、「慎重」の項目のスコアを高くし、正答率が低い反面、回答の入力時間が早い場合には、「慎重」の項目のスコアを低く評価する(あるいは、せっかちの項目のスコアを高く評価する)。また、誤答が連続して続く場合や、正答が続いているときの入力時間よりも誤答が続いているときの入力時間が短くなっている場合には、例えば「焦りやすさ」の項目のスコアを高く評価する。また、設問が続くにつれて正答率が低下する傾向にある場合、例えば「集中力」の項目のスコアを低く評価する。
【0038】
また、回答の入力に用いた指の使い方に関しては、例えば、あるテストの中で被検者が複数の指を用いた場合、正解の回答を入力したときの指と不正解の回答を入力したときの指とが同じであるのか異なるのかを特定する。例えば、ある指で回答を入力したときには正答率が高いのに対して、他の指で回答を入力したときには正答率が低下する場合、「落ち着き」の項目のスコアを低く評価する(あるいは、「落ち着きがない」の項目のスコアを高くする)。また、回答の入力に際し、ある選択肢(0~9の番号)を被検者は常に同じ指で選択しているのか、あるいは同じ選択肢でも被検者は異なる指で選択することがあるのかを特定することもできる。例えば、同じ選択肢には同じ指を使う傾向が強い場合、「几帳面」の項目のスコアを高くし、同じ選択肢であっても異なる指を使う傾向が強い場合には、「几帳面」の項目のスコアを低く評価する(あるいは、「大雑把」の項目のスコアを高く評価する)。
【0039】
上記のように、テストの実行中に得られた回答情報、具体的には回答の正誤、回答の入力時間、回答の入力に用いた指の使い方に関する情報に基づいて、被検者の処理能力や性格を分析できる。ただし、上記した評価手法は一例であり、これらの回答情報は様々な評価手法に利用することができる。
【0040】
また、テスト結果分析部11dは、テストの実行中に得られた回答情報(回答や指紋情報等)や、その分析結果に関する情報を、サーバ20に送信して、被検者ごとにデータベース22に蓄積しておくこととしてもよい。これにより、被検者の過去のテスト結果(処理能力や性格)を参照したり、テスト結果の経時的な変化も分析できるようになる。
【0041】
続いて、テスト結果分析部11dは、サーバ20のデータベース22から、被検者が過去にテストを受けたときの使用した指の指紋情報を取得する(ステップS14)。そして、テスト結果分析部11dは、この過去のテスト時の指紋情報と、今回のテストを受けたときに使用した指の指紋情報を照合して、不正の可能性を判定する(ステップS15)。不正の可能性がなければ、そのまま本フローの処理は終了する。一方で、例えば、過去のテスト時の指紋情報と今回のテスト時の指紋情報が完全に不一致である場合、過去にテストを受けた者と今回のテストを受けた被検者とが別人である可能性が高く、今回のテストは不正であると判定できる。また、例えば、今回のテストで頻繁に使用された指の指紋情報が、過去のテスト時の指紋情報に含まれていない場合、過去にテストを受けた者と今回のテストを受けた被検者とが別人である可能性が高く、今回のテストは不正であると判定できる。また、例えば、過去のテスト時の指紋情報に6本の指の指紋が記憶されており、今回のテスト時の指紋情報に6本の指の指紋情報が記憶されている場合に、1本の指の指紋情報は一致していても、残りの5本の指の指紋情報がすべて不一致であったとすると、全部で11本の指が使われた可能性が疑われる。この場合、過去のテスト時又は今回のテスト時に2人以上の者が回答を入力している可能性があるため、今回のテストは不正であると推定する。本実施形態では、テストはオンラインで行うことが可能であり、被検者は他人からの監視がない状況でもテストを受けることができる。このため、別人による受験や、複数人による受験など、テスト実行時に不正が行われる可能性がある。そこで、上記のように、過去のテスト時の指紋情報をデータベース22に登録しておき、今回のテスト時の指紋情報と照合することで不正の可能性があるか否かを判定することができる。
【0042】
テスト結果分析部11dは、不正の可能性があると判定した場合、その旨をディスプレイに表示してテストを再度受けるように被検者に促すこととしてもよい。また、テスト結果分析部11dは、不正の可能性があると判定した場合、その旨を被検者には伝えずに、データベース22に登録することとしてもよい。また、テスト結果分析部11dは、不正判定がなされたことを、性格分析等(ステップS13)に反映することとしてもよい。不正判定の情報は、それ以外の処理に利用することも可能である。
【0043】
なお、本実施形態では、テスト実行部11a、タッチ位置検出部11b、指紋分析部11c、及びテスト結果分析部11dは、検査装置10の制御部11の機能として実行されているが、これらの機能11a~11dは、サーバ20の制御部21によって実行される機能であってもよい。また、これらの機能11a~11dは、検査装置10とサーバ20によって分散的に実行されてもよい。
【0044】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0045】
10…検査装置 11…制御部
11a…テスト実行部 11b…タッチ位置検出部
11c…指紋分析部 11d…テスト結果分析部
12…記憶部 13…通信部
14…表示部 15…指紋センサ
16…タッチセンサ 17…強化ガラス
20…サーバ 21…制御部
22…データベース 23…通信部
100…検査システム
図1
図2
図3
図4
図5