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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145610
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】血管柔軟性改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/12 20160101AFI20241004BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 36/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A23L33/12
A61P9/00
A61K31/202
A61K36/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058046
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】520245507
【氏名又は名称】SoPros株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田福 宣治
(72)【発明者】
【氏名】大宅 友美
(72)【発明者】
【氏名】池水 昭一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE02
4B018MD10
4B018MD89
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF14
4C088AA12
4C088BA32
4C088MA16
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA23
4C088MA27
4C088MA34
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZC52
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA47
4C206MA54
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZC52
(57)【要約】
【課題】低用量の服用において血管柔軟性改善効果を有する、安全で効果の高い血管柔軟性改善剤として用いることのできる食品組成物、及び医薬品組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係る血管柔軟性改善剤は、n-6DPA(n-6ドコサペンタエン酸)を含有する微細藻、n-6DPAを含有する脂肪酸組成物、又はn-6DPAのいずれか一つからなり、前記n-6DPAが1.2mg/kg・dayから0.03mg/kg・dayの範囲で経口投与されることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n-6DPA(n-6ドコサペンタエン酸)を含有する微細藻、n-6DPAを含有する脂肪酸組成物、又はn-6DPAのいずれか一つからなり、経口投与されることを特徴とする血管柔軟性改善剤。
【請求項2】
前記n-6DPAが1.2mg/kg・dayから0.03mg/kg・dayの範囲で経口投与されることを特徴とする請求項1記載の血管柔軟性改善剤。
【請求項3】
前記微細藻がスラウストキトリッドであることを特徴とする請求項1又は2記載の血管柔軟性改善剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の血管柔軟性改善剤を含有する、血管柔軟性改善用の食品組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の血管柔軟性改善剤を含有する、血管柔軟性改善用の医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管柔軟性改善の為に用いられる剤、食品や医薬品に関する。より詳細には、n-6DPA(n-6ドコサペンタエン酸)を含有し、経口投与されかつ血管柔軟性改善効果に優れる剤、食品、又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の老化には狭義と広義があり、狭義の老化は、加齢に伴う血管障害であり、広義の老化は、加齢に加えて生活習慣病、運動不足などに伴う総合的な血管障害である。近年、心拍によって生じる動脈圧の変動(脈波)を測定して解析することにより、血管の老化度を非侵襲的、かつ定量的に評価することが可能となってきており、各年代における基準値をもとにした「血管年齢」という概念が普及している。また、近年のライフスタイルの欧米化に伴い高血圧症、狭心症、心筋梗塞、脳循環障害など、血管系の生活習慣病が増加傾向にある。これらの疾患の要因の一つとして、血管柔軟性の低下や、血管内皮機能の低下、血小板凝集能の亢進による血栓の形成、血流低下が関与していることが明らかとなっており、この血管内皮障害は動脈硬化の始まりに深く関わっている(非特許文献1、2)。生活習慣病は慢性的な疾患であるため、その予防や治療には長期間を要する。従って、長期間にわたって安全かつ効果的に、血管の機能を改善する飲食品が求められている。例えば、血管柔軟性を向上し、血管内皮機能を改善する食品素材としては、ホップやクロロゲン酸が知られている(特許文献1、2)
【0003】
魚油の継続的な摂取が血栓症や動脈硬化症、高血圧症などの予防につながることが知られており、魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)には血管収縮抑制作用(非特許文献3)、EPA(エイコサペンタエン酸)には血小板凝集抑制作用(非特許文献4)が提示されている。魚油以外のPUFAs(多価不飽和脂肪酸)の供給源として、微細藻類であるスラウストキトリッドが挙げられる。スラウストキトリッドはラビリンチュラ類に属する葉緑素を持たない従属栄養性藻類で発酵槽による大規模培養が可能であることから、安定供給性及び安全性、SDGs(持続可能な開発目標)の観点で注目されている。(n-6)系PUFAsであるn-6DPAに関しては試験管内の血管内皮細胞遊走性促進作用(EPAの10倍、非特許文献5)や抗炎症作用(非特許文献6)が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-104951号公報
【特許文献2】特開2003-261444号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】血栓止血誌、日本血栓止血学会、2015、26巻、3号、p.302-309
【非特許文献2】化学と生物、日本農芸化学会、2016、54巻、10号、p.713-719
【非特許文献3】日薬理誌、日本薬理学会、2016、147巻、p.63-65
【非特許文献4】化学と生物、日本農芸化学会、1983、21巻、3号、p.168-173
【非特許文献5】脂質栄養学、脂質栄養学会、1996、5巻、1号、p.17-22
【非特許文献6】Lipid (2010), 11, p.1-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホップやクロロゲン酸、ピペリンによる血管柔軟性改善作用は十分とはいえず、DHAやEPAの動脈硬化予防作用も血管柔軟性とは異なる作用機序であり、n-6DPA含有藻体の血管柔軟性改善作用については何ら示唆されていない。
【0007】
本発明の課題は、低用量の服用において血管柔軟性を改善し血管年齢を低下させるなど、血管内皮機能改善効果を有する、安全で効果の高い血管柔軟性改善剤として用いることのできる食品組成物、及び医薬品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する為に鋭意検討した結果、n-6DPAを含有する微細藻を低用量服用することで血管年齢およびAVI(動脈速度脈波指数:値が低いほど血管柔軟性が高い)が低下し、極めて高い血管柔軟性改善効果が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明の第1は、「n-6DPA(n-6ドコサペンタエン酸)を含有する微細藻、n-6DPAを含有する脂肪酸組成物、又はn-6DPAのいずれか一つからなり、経口投与されることを特徴とする血管柔軟性改善剤」である。
本発明の第2は、前記第1発明において、前記n-6DPAが1.2mg/kg・dayから0.03mg/kg・dayの範囲で経口投与されることを特徴とする血管柔軟性改善剤である。
本発明の第3は、前記第1又は第2発明のいずれか一つの発明における微細藻が、スラウストキトリッドであることを特徴とする血管柔軟性改善剤である。
本発明の第4は、前記第1~第3発明のいずれか一つの発明における血管柔軟性改善剤を含有する、血管柔軟性改善用の食品組成物である。
本発明の第5は、前記第1~第4発明のいずれか一つの発明における血管柔軟性改善剤を含有する、血管柔軟性改善用の医薬品組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、低用量の服用において血管柔軟性改善効果を有する、安全で効果の高い血管柔軟性改善剤として用いることのできる食品組成物、及び医薬品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の構成について詳述する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
まず、本発明の剤に含まれる微細藻について述べる。本発明の剤に含まれる微細藻は食品として利用可能な微細藻類の藻体である。食品として利用可能とは食経験があること、或いは動物やヒトにおける安全性試験で問題のないことが示されたものをいう。微細藻類とは個体の識別に顕微鏡が必要な藻類の総称で、分類学的には広義の細菌に属する原核生物の藍藻類、高等植物に近縁の緑藻類、原生動物門にも分類される鞭毛藻類まで多岐にわたる。本発明において用いることができる食品としての利用可能な微細藻類の例としては、クロレラ(緑藻類)、スピルリナ(藍藻類)、ユーグレナ(和名:ミドリムシ、原生動物/緑藻類)、ドナリエラ(緑藻類)、ナンノクロロプシス(真正眼点藻類)、ラビリンチュラ類スラウストキトリッド(ラビリンチュラ類は本明細書では微細藻類の一種とする。)等が挙げられるが、好ましくは本来的にPUFAsを含有するスピルリナ、ユーグレナ、ナンノクロロプシス、ラビリンチュラ類スラウストキトリッド、或いは脂肪酸の添加培養で藻体内にPUFAsを含有させることのできるクロレラ、より好ましくはPUFAsの含有量の多いナンノクロロプシス、スラウストキトリッド、更に好ましくは閉鎖系でのタンク培養が可能で安全性が高いラビリンチュラ類スラウストキトリッドが挙げられる。
なお、本発明の剤に含まれるPUFAsは、食品として利用可能か否かにかかわらず、n-6DPAを含有する任意の微細藻から得てよいが、食品として利用可能な微細藻から得ることが好ましい。
本発明の剤に含まれるn-6DPAは、魚油等任意の生物から得て、あるいは合成してもよいが、製造効率の観点では微細藻から得ることが好ましい。
【0013】
ラビリンチュラ類は分類学的にはクロミスタ界、不等毛門、ラビリンチュラ鋼、ラビリンチュラ目に分類される。更に、ラビリンチュラ科に属するラビリンチュリッド(Labyrinthulids)とヤブレツボカビ科に属するスラウストキトリッド(Thraustochytrids)に大別される。スラウストキトリッドには細胞増殖性やPUFAs生産性の観点から応用面での検討例の多いシゾキトリウム属やオーランチオキトリウム属、オブロンギキトリウム属、スラウストキトリウム属、パリエティキトリウム属、ウルケニア属、及びボトリオキトリウム属等があるが、本発明においては特に限定されない。
【0014】
微細藻の藻体は、市販品、OEM製造又は自製品を用いることができる。市販品としてはクロレラ、スピルリナ及びユーグレナの乾燥藻体、シゾキトリウムやオーランチオキトリウムの乾燥藻体が例示される。OEM製造や自製の場合は特に限定されないが、食品グレードの培養基剤を用いて最適化された条件下での培養により得られた藻体を用いることができる。
【0015】
次に、本発明の剤に含まれる微細藻、脂肪酸組成物、n-6DPAの製造方法について、微細藻の培養、藻体の回収、乾燥及び粉末化を中心に述べる。微細藻の培養において用いる固体培地及び液体培地は、天然又は人工海水、炭素源、窒素源及び無機塩等を含む公知の培地基材等、いずれも使用することができる。例えば、炭素源としてはグルコース、フルクトース、ガラクトース等の炭水化物の他、オレイン酸、大豆油等の油脂類や、グリセロール、酢酸、酢酸ナトリウム等が例示できるが、これらに限定されない。炭素源は、例えば、培地1Lあたり20~300gの濃度で使用することができる。特に好ましい態様によれば、初発の炭素源を消費しつくしたのちに、炭素源をフィードすることにより引き続き培養を行うことができる。このような条件で培養を行うことにより、消費させる炭素源の量を増大させることが可能になり、微細藻から得られる脂肪酸組成物の生産量を増大させることができる。また、窒素源としては、酵母エキス、コーンスティープリカー、ペプトン、ポリペプトン、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素、又は酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、アンモニア等の無機窒素を使用することができるが、これらに限定されない。無機塩としては、リン酸カリウム等を適宜組み合わせて使用できる。
【0016】
前記の各培地基材を含有する培地は、適当な酸又は塩基によりpH4.0~9.5に調製後、オートクレーブにより殺菌して使用することが好ましい。培養時のpHは、一般的に3.5~10.0であり、好ましくはpH4.0~9.5である。液体培養は2~10日間、通気攪拌下で行うことができる。培養温度は一般的には10~45℃、好ましくは15~35℃である。なお、培養温度は脂肪酸組成物を生産しうる培養温度に制御することが好ましい。液体培養のスケールは特に限定されないが、市販の閉鎖系培養設備を用いることができる。得られた培養液からの藻体の回収は、例えば、遠心分離法や濾過法等の公知の常法により行うことができる。
【0017】
培養によって得られた藻体(湿藻体)は、凍結乾燥、空気乾燥、噴霧乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥(凍結乾燥)又は類似の過程を含む限定されない方法によって乾燥できる。湿藻体又は湿藻体の回収後に水等で洗浄された菌体は、乾燥工程を経ずに直接用いてもよい。スラウストキトリウム・オーランチオキトリウム属の場合、凍結乾燥処理によって藻体が死滅するため、長期保存における雑菌繁殖のリスクを下げることができる。乾燥藻体の粉体化の方法は特に限定されず、装置としてバッチ式或いは連続式のブレンダー、ミキサー、ミル機、混錬機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられる。
【0018】
本発明では乾燥藻体における総脂肪酸中のn-6DPA含有率は、微細藻種及びその培養条件により1重量%以上に調製することが一般的であるが、好ましくは6重量%以上、更に好ましくは7重量%以上である。これにより、所要の血管柔軟性改善効果を奏するのに必要な藻体、PUFAsの含有量を抑えることができ、製造の面で効率的である。
【0019】
n-6DPAを含有する脂肪酸組成物は前記藻体から公知の方法で調製することができる。すなわち、培養後の湿藻体或いは乾燥藻体をミルや超音波等による物理的破砕或いは溶剤による化学的溶解の後、クロロホルム、ヘキサン、メタノール、エタノール等を用いた溶媒抽出により、PUFAsを含有した脂肪酸組成物を得ることができる。更に、得られた脂肪酸組成物は任意の公知の技法によって組成物の要件に基づき化学的又は物理的に改変又は加工処理されてもよい。
【0020】
n-6DPAは、例えば前記脂肪酸組成物又はn-6DPAを含有する他の脂肪酸組成物から公知の方法で調製することができる。すなわち、混合脂肪酸或いは脂肪酸エステルから、例えば、尿素付加法、冷却分離法、カラムクロマトグラフィー法等により分離精製することができる。また、当技術分野における他の方法により分離精製されてもよい。
【0021】
微細藻から抽出された脂肪酸組成物、及びn-6DPAは、常法に従い、糖質、乳化剤、乳タンパク質、酸化防止剤等を混合することで乳化物を調製した後、噴霧式加熱乾燥法、噴霧式冷却法、粉砕式凍結乾燥法、粉砕式冷却固化法、コーティング式マイクロカプセル法、コーティング式散布混合法又は類似の過程を含むがこれらに限定されない方法によって、粉末油脂に加工されてもよい。
【0022】
本発明の剤の経口投与における1日当りのn-6DPA相当量(/体重kg)の上限は簡易試験で確認した範囲で、1.2mg以下であり、好ましくは0.9mg以下、より好ましくは0.6mg以下、更に好ましくは0.3mg以下である。
【0023】
1日当りのn-6DPA相当量(/体重kg)の下限は、所要の血管柔軟性改善効果とコスト等を勘案して適宜選択されてよく、特に限定されないが、例えば0.03mg以上であってよく、好ましくは0.06mg以上、より好ましくは0.09mg以上、更に好ましくは0.12mg以上である。
【0024】
本発明における食品組成物は、上記本発明の剤を含有し、血管柔軟性改善に用いられる。具体的には、機能性食品(機能性表示食品や特定保健用食品を含む。食品添加剤も含む。)及び栄養補助食品であってよい。その性状は、固形、半液状又は液状であってもよい。
【0025】
食品としては、例えば、農産食品(パン、めん類、ごはん、菓子類、豆腐及びその加工品等)、発酵食品(清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、味噌等)、畜産食品(ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ等)、水産食品(かまぼこ、揚げ天、はんぺん等)、飲料(果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶等)も挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
機能性食品及び栄養補助食品としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、ドリンク剤、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、経腸栄養剤等の形態を有する飲食品として製造することができる。その際、本発明の藻体とともに他の栄養成分或いは機能性成分を配合してもよい。また、医薬製剤の形態、例えば蛋白質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発明の藻体が配合された自然流動食、半消化態栄養食及び成分栄養食や、ドリンク剤、経腸栄養剤等の加工形態を挙げることができるが、前記の飲食品の形態であってもよい。
【0027】
本発明における医薬品組成物は、上記本発明の剤を含有し、経口投与を通じた血管柔軟性改善に用いられる。
【0028】
当該医薬品組成物は、公知の調剤技術により経口投与用に製剤化され得、固体状、液体状、半固体状等の任意の形態であってよい。医薬品組成物中のn-6DPA又はそれらの混合物は、遊離の形であっても、また薬剤として許容されうる塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、又は他のアルカリ金属塩、亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のような他の金属塩の形態や、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、低級アルコールのエステル、リン脂質、糖脂質、アミド等の種々の形態であってもよい。ここで低級アルコールとは炭素数6以下の一価アルコールを指し、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等を例示することができる。
【実施例0029】
以下、本発明について実施例により詳説する。ただし、実施例はあくまで一例であり、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、以下において、特に断らない限り、%は重量%を示す。
【0030】
(1)乾燥藻体の製造
オーランチオキトリウム属NBRC111922株(Aurantiochytrium sp.、製品評価技術基盤機構から分譲)から紫外線突然変異誘発により作出したSPA-214株を、600L培養装置を用いて液体培地(グリセロール4%、酵母エキス4%、人工海水0.9%)で4日間、培養した。培養液の遠心分離処理によって得られた湿藻体約15kgを真空凍結乾燥処理し、乾燥藻体約3200gを調製した。
【0031】
(2)微細藻含有サプリメントの製造
乾燥藻体をカプセル当り280mg充填した微細藻含有サプリメントを製造した。1カプセル当りのn-6DPA、DHA及びEPAの含有量を以下に示す。
・n-6DPA:14mg
・DHA:45mg、EPA:0.42mg
【0032】
実施例1:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
何らかの疾患による薬物治療を受けていない43歳男性を対象として、微細藻含有サプリメントを1日当り1カプセル、11週間服用した場合の、服用開始前と服用後に血管年齢とAVIを測定した(表1)。数値は数分間隔で2回測定した平均値を示す。乾燥藻体の11週間摂取において血管柔軟性の改善効果が認められた。血管年齢が3低下し、AVIが1低下した。
【0033】
実施例2:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない44歳男性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果が認められた。血管年齢が8低下し、AVIが3低下した(表1)。
【0034】
実施例3:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない49歳女性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果が認められた。血管年齢が12低下し、AVIが8低下した(表1)。
【0035】
実施例4:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない51歳男性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果が認められた。血管年齢が5低下し、AVIが2低下した(表1)。
【0036】
実施例5:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない64歳男性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果が認められた。血管年齢が6低下し、AVIが3低下した(表1)。
【0037】
比較例1:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない50歳男性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果は認められなかった。(表1)。
【0038】
比較例2:微細藻含有サプリメントの服用が健常者の血管柔軟性に与える影響評価
実施例1と同様の試験を何らかの疾患による薬物治療を受けていない54歳男性を対象に行った。乾燥藻体の11週間服用において血管柔軟性の改善効果は認められなかった。(表1)。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例で示したように、微細藻を1日当りわずか280mg服用することで血管年齢が平均で6.8、AVIが平均で3.4低下し、高い血管柔軟性改善効果が得られた。乾燥藻体280mgに含まれる(n-3)系PUFAsはDHAが45mg、EPAが0.42mgと非常に少なく血管内皮機能の改善効果が期待できる量ではないこと、乾燥藻体にDHAに次いで2番目に多く含まれるPUFAsがn-6DPAであることを勘案すると、実施例の血管年齢およびAVIの低下効果はn-6DPAに起因すると推定される。なお、データ取得時の体調チェックで異常は確認されず、試験期間中に被験者からサプリメント摂取に起因する有害事象の訴えもなかった。