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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145615
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】外装フィン
(51)【国際特許分類】
   F21S 11/00 20060101AFI20241004BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20241004BHJP
   F21V 7/09 20060101ALI20241004BHJP
   G02B 5/09 20060101ALI20241004BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20241004BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F21S11/00 300
F21V7/00 320
F21V7/09
G02B5/09
G02B5/08 Z
E04F10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058051
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】一條 真人
(72)【発明者】
【氏名】北川 剛司
(72)【発明者】
【氏名】樋浦 直紀
【テーマコード(参考)】
2E105
2H042
【Fターム(参考)】
2E105AA01
2E105FF10
2E105FF26
2H042DB01
2H042DB08
2H042DD02
2H042DE03
(57)【要約】
【課題】複雑な採光装置を用いることなく、窓から採光できる自然光を利用し、かつ、屋内活動に支障が生じるのを防ぐ。
【解決手段】根元側の縁部14は、柱に近い根元側に位置し、柱が延びる方向に対して略平行な略直線状である。先端側の縁部13は、柱から離れた先端側に位置し、柱が延びる方向に対して略平行な略直線状である。反射面部12は、根元側の縁部14と前記先端側の縁部13との間を接続し、柱から離れる方向に面している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が当たる側面を有する建物に設置される外装フィンであって、
前記側面に設けられた窓の横に隣接して前記側面に設けられた柱の外側に配置され、前記柱に沿って延び、
前記柱に近い根元側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の縁部と、
前記柱から離れた先端側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の縁部と、
前記根元側の縁部と前記先端側の縁部との間を接続し、前記柱から離れる方向に面した反射面部と
を備え、
前記反射面部は、
前記根元側の縁部と前記先端側の縁部との間に位置し、前記根元側の縁部と前記先端側の縁部とを結ぶ平面よりも前記柱に近い側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の少なくとも一つの縁部と、
互いに隣接した二つの前記縁部の間を接続する複数の部分面部と
を有し、
それぞれの前記部分面部は、
前記部分面部が接続する二つの前記縁部を結ぶ平面よりも前記柱に近い側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の少なくとも三つの谷縁部と、
互いに隣接した二つの前記谷縁部の間に位置し、二つの前記谷縁部を結ぶ平面よりも外側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の複数の山縁部と、
前記山縁部と、前記山縁部に対して前記根元側に隣接した前記谷縁部との間を接続する略平面状であり、太陽光を反射して前記窓を介して前記建物のなかに入射させる複数の部分反射側面と
を有し、
複数の前記部分反射側面は、互いに向きが異なる、
外装フィン。
【請求項2】
それぞれの前記部分反射側面は、前記部分反射側面と同一の前記部分面部に含まれ前記部分反射側面よりも前記先端側に近い他の前記部分反射側面よりも、前記窓のほうを向いている、
請求項1の外装フィン。
【請求項3】
それぞれの前記部分反射側面は、前記部分反射側面を含む前記部分面部よりも前記根元側に近い他の前記部分面部に含まれる前記部分反射側面よりも、前記窓のほうを向いている、
請求項1又は2の外装フィン。
【請求項4】
前記柱が延びる方向に対して垂直な平面で切った断面形状が略一定である、
請求項1又は2の外装フィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁に取り付ける外装フィンに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーのため、自然光を室内に取り込む採光装置が多数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-067526号公報
【特許文献2】特開2015-088342号公報
【特許文献3】特開2014-110108号公報
【特許文献4】特開2014-207119号公報
【特許文献5】特開2012-230841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窓から自然光を採光できる場合、上述したような複雑な採光装置を設ける必要はない。しかし、柱などによって自然光が遮られる部分がある場合、自然光が当たる部分と当たらない部分との間に照度差が生じ、屋内活動に支障が生じる場合がある。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
外装フィンは、太陽光が当たる側面を有する建物に設置される外装フィンであって、前記側面に設けられた窓の横に隣接して前記側面に設けられた柱の外側に配置され、前記柱に沿って延びている。
前記外装フィンは、前記柱に近い根元側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の縁部と、前記柱から離れた先端側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の縁部と、前記根元側の縁部と前記先端側の縁部との間を接続し、前記柱から離れる方向に面した反射面部とを有する。
前記反射面部は、前記根元側の縁部と前記先端側の縁部との間に位置し、前記根元側の縁部と前記先端側の縁部とを結ぶ平面よりも前記柱に近い側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の少なくとも一つの縁部と、互いに隣接した二つの前記縁部の間を接続する複数の部分面部とを有する。
それぞれの前記部分面部は、前記部分面部が接続する二つの前記縁部を結ぶ平面よりも前記柱に近い側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の少なくとも三つの谷縁部と、互いに隣接した二つの前記谷縁部の間に位置し、二つの前記谷縁部を結ぶ平面よりも外側に位置し、前記柱が延びる方向に対して略平行な略直線状の複数の山縁部と、前記山縁部と、前記山縁部に対して前記根元側に隣接した前記谷縁部との間を接続する略平面状であり、太陽光を反射して前記窓を介して前記建物のなかに入射させる複数の部分反射側面とを有する。
複数の前記部分反射側面は、互いに向きが異なる。
【発明の効果】
【0006】
この外装フィンによれば、複雑な採光装置を用いることなく、窓から採光できる自然光を利用し、かつ、屋内活動に支障が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】外装フィンの一例を示す斜視図。
図2】外装フィンの一例を示す平面図。
図3】部分面部の一例を示す平面図。
図4】部分面部の一例を示す平面図。
図5】部分面部の一例を示す平面図。
図6】外装フィン設計処理の一例を示すフロー図。
図7】概略設計工程の一例を示すフロー図。
図8】概略候補決定工程の一例を示すフロー図。
図9】縁部の位置の候補の例を示す平面図。
図10】奥行の一例を示す平面図。
図11】概略曲線の候補の例を示す平面図。
図12】概略候補評価工程の一例を示すフロー図。
図13】床部分の例を示す平面図。
図14】シミュレーションの一例を示す平面図。
図15】詳細設計工程の一例を示すフロー図。
図16】詳細候補決定工程の一例を示すフロー図。
図17】距離の候補の例を示す平面図。
図18】向きの候補の例を示す平面図。
図19】詳細候補評価工程の一例を示すフロー図。
図20】窓部分の例を示す正面図。
図21】シミュレーションの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び2を参照して、外装フィン10について説明する。
外装フィン10は、例えば、建物80の側面81に設置される。側面81には、例えば、複数の柱82や、柱82の横に隣接した窓83が設けられている。側面81には、太陽光が当たり、窓83を介して、建物80のなかに入射する。外装フィン10は、柱82の外側に配置され、太陽光を反射する。外装フィン10に反射した太陽光の一部は窓83を介して、建物80のなかに入射する。これにより、柱82の陰になる部分にも、太陽光が到達する。
【0009】
外装フィン10は、例えば、柱82が延びる方向に沿って延びる長尺形状であり、長手方向(すなわち、柱82が延びる方向)に対して垂直な平面で切った断面形状がほぼ一定である。
外装フィン10は、例えば、左右対称な山型形状であり、反射面部12と、縁部13及び14とを有する。
縁部13及び14は、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。縁部13は、柱82に近い根元側に位置している。縁部14は、柱82から遠い先端側に位置している。
反射面部12は、縁部13と縁部14との間を接続し、柱82から離れる方向に面している。
【0010】
反射面部12は、縁部21及び22と、部分面部23~25とを有する。
縁部21及び22は、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。縁部21及び22は、縁部13と縁部14との間の中間に位置している。縁部21及び22は、縁部13と縁部14とを結ぶ平面72よりも柱82に近い側に位置している。
部分面部23は、縁部13と、縁部13に隣接した縁部21との間を接続している。
部分面部24は、縁部21と、縁部21に隣接した縁部22との間を接続している。
部分面部25は、縁部22と、縁部22に隣接した縁部14との間を接続している。
【0011】
図3を参照して、部分面部23の表面形状について更に詳しく説明する。
部分面部23は、谷縁部30a~31fと、山縁部32a~33eと、部分反射側面34a~35eと、段部36a~37eとを有する。
谷縁部30a~31fは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。谷縁部30a~31fは、縁部13と縁部21とを結ぶ平面63よりも柱82に近い側に位置し、縁部13と縁部21との間を接続する仮想的な概略曲面73上に位置している。
山縁部32a~33eは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。山縁部32a~33eは、それぞれ、互いに隣接する二つの谷縁部30a~31fの間に位置し、その二つの谷縁部30a~31fを結ぶ平面38a~39eよりも外側に位置している。
部分反射側面34a~35eは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部32a~33eと、その根元側に隣接した谷縁部30b~31fとの間を接続している。部分反射側面34a~35eは、太陽光を反射し、窓83を介して、反射した太陽光を建物80のなかに入射させる。
段部36a~37eは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部32a~33eと、その先端側に隣接した谷縁部30a~31eとの間を接続している。
このように、部分面部23の形状は、全体として、凹状に湾曲した階段状である。
【0012】
部分反射側面34a~35eは、互いに向きが異なる。これにより、部分反射側面34a~35eに反射した太陽光は、それぞれ異なる向きに放射される。
部分反射側面34a~35eの向きは、例えば、根元側にいくほど、窓のほうを向いている。これにより、部分反射側面34a~35eは、全体として凸面鏡のように働き、反射した太陽光が一点に集中することなく、広い範囲に拡散される。
互いに隣接する二つの部分反射側面34a~35eの間の向きの差は、例えば一定であり、例えば0.05度である。すなわち、一番先端側にある部分反射側面34aと一番根元側にある部分反射側面35eとの間の向きの差は、例えば1.5度である。
【0013】
図4を参照して、部分面部24の表面形状について更に詳しく説明する。
部分面部24は、谷縁部40a~41jと、山縁部42a~43iと、部分反射側面44a~45iと、段部46a~47iとを有する。
谷縁部40a~41jは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。谷縁部40a~41jは、縁部21と縁部22とを結ぶ平面64よりも柱82に近い側に位置し、縁部21と縁部22との間を接続する仮想的な概略曲面74上に位置している。
山縁部42a~43iは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。山縁部42a~43iは、それぞれ、互いに隣接する二つの谷縁部40a~41jの間に位置し、その二つの谷縁部40a~41jを結ぶ平面48a~49iよりも外側に位置している。
部分反射側面44a~45iは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部42a~43iと、その根元側に隣接した谷縁部40b~41jとの間を接続している。部分反射側面44a~45iは、太陽光を反射し、窓83を介して、反射した太陽光を建物80のなかに入射させる。
段部46a~47iは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部42a~43iと、その先端側に隣接した谷縁部40a~41iとの間を接続している。
このように、部分面部24の形状は、全体として、凹状に湾曲した階段状である。
【0014】
部分反射側面44a~45iは、互いに向きが異なる。これにより、部分反射側面44a~45iに反射した太陽光は、それぞれ異なる向きに放射される。
部分反射側面44a~45iの向きは、例えば、根元側にいくほど、窓のほうを向いている。これにより、部分反射側面44a~45iは、全体として凸面鏡のように働き、反射した太陽光が一点に集中することなく、広い範囲に拡散される。
互いに隣接する二つの部分反射側面44a~45iの間の向きの差は、例えば一定であり、例えば0.05度である。すなわち、一番先端側にある部分反射側面44aと一番根元側にある部分反射側面45iとの間の向きの差は、例えば1.75度である。なお、互いに隣接する二つの部分反射側面44a~45iの間の向きの差は、部分面部23におけるものと異なっていてもよい。
【0015】
また、部分面部24に含まれる部分反射側面44a~45iよりも、部分面部23に含まれる部分反射側面34a~35eのほうが、窓のほうを向いている。例えば、部分面部24のなかで一番根元側にあり窓83のほうを向いている部分反射側面45iよりも、部分面部23のなかで一番先端側にあり窓83から離れたほうを向いている部分反射側面34aのほうが、窓のほうを向いている。これにより、部分面部23の部分反射側面34a~35eが反射した太陽光と、部分面部24の部分反射側面44a~45iが反射した太陽光とが重なって、同じ窓83に照射される。
【0016】
図5を参照して、部分面部25の表面形状について更に詳しく説明する。
部分面部25は、谷縁部50a~50rと、山縁部52a~52qと、部分反射側面54a~54qと、段部56a~56qとを有する。
谷縁部50a~50rは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。谷縁部50a~50rは、縁部22と縁部14とを結ぶ平面65よりも柱82に近い側に位置し、縁部22と縁部14との間を接続する仮想的な概略曲面75上に位置している。
山縁部52a~52qは、例えば、長手方向に対して平行な直線状である。山縁部52a~52qは、それぞれ、互いに隣接する二つの谷縁部50a~50rの間に位置し、その二つの谷縁部50a~50rを結ぶ平面58a~58qよりも外側に位置している。
部分反射側面54a~54qは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部52a~52qと、その根元側に隣接した谷縁部50b~50rとの間を接続している。部分反射側面54a~54qは、太陽光を反射し、窓83を介して、反射した太陽光を建物80のなかに入射させる。
段部56a~56qは、例えば、平面状であり、それぞれ、山縁部52a~52qと、その先端側に隣接した谷縁部50a~50qとの間を接続している。
このように、部分面部25の形状は、全体として、凹状に湾曲した階段状である。
なお、部分面部25は、谷縁部50rよりも根元側にも同様の形状を有しているが、これは、主に装飾として機能するものである。
【0017】
部分反射側面54a~54qは、互いに向きが異なる。これにより、部分反射側面54a~54qに反射した太陽光は、それぞれ異なる向きに放射される。
部分反射側面54a~54qの向きは、例えば、根元側にいくほど、窓のほうを向いている。これにより、部分反射側面54a~54qは、全体として凸面鏡のように働き、反射した太陽光が一点に集中することなく、広い範囲に拡散される。
互いに隣接する二つの部分反射側面54a~54qの間の向きの差は、例えば一定であり、例えば0.05度である。すなわち、一番先端側にある部分反射側面54aと一番根元側にある部分反射側面54qとの間の向きの差は、例えば1.75度である。なお、互いに隣接する二つの部分反射側面54a~54qの間の向きの差は、部分面部23や部分面部24におけるものと異なっていてもよい。
【0018】
また、部分面部25に含まれる部分反射側面54a~54qよりも、部分面部24に含まれる部分反射側面44a~45iのほうが、窓のほうを向いている。例えば、部分面部25のなかで一番根元側にあり窓83のほうを向いている部分反射側面54qよりも、部分面部24のなかで一番先端側にあり窓83から離れたほうを向いている部分反射側面44aのほうが、窓のほうを向いている。これにより、部分面部23の部分反射側面34a~35eが反射した太陽光及び部分面部24の部分反射側面44a~45iが反射した太陽光と、部分面部25の部分反射側面54a~54qが反射した太陽光とが重なって、同じ窓83に照射される。
【0019】
以上のように、外装フィン10を柱82に沿って柱82の外側に配置することにより、柱82に邪魔されて建物80のなかに入射することができない太陽光を有効に活用する。外装フィン10に当たって反射した太陽光を、柱82の陰になる場所に照射することにより、室内における照度差を小さくできるので、屋内活動に支障を生じることなく、太陽光を有効に活用できる。
【0020】
次に、図6を参照して、外装フィン設計処理S10について説明する。
外装フィン設計処理S10では、外装フィン10の反射面部12の形状を設計する。
外装フィン設計処理S10は、例えば、概略設計工程S12と、詳細設計工程S15とを有する。
概略設計工程S12では、部分面部23~25の概略形状を設計する。
詳細設計工程S15では、概略設計工程S12で設計した概略形状に基づいて、部分面部23~25の詳細形状を設計する。
【0021】
図7を参照して、概略設計工程S12について詳しく説明する。
概略設計工程S12では、例えば、反射面部12をいくつの部分面部23~25に分割するか、隣接する部分面部23~25の境界となる縁部21及び22の位置、それぞれの部分面部23~25における概略曲面73~75の形状などを設計することにより、部分面部23~25の概略形状を設計する。
概略設計工程S12は、例えば、概略候補決定工程S23と、概略候補評価工程S24と、概略決定工程S28とを有する。
【0022】
概略候補決定工程S23では、部分面部23~25の概略形状の候補を二つ以上決定する。
概略候補評価工程S24では、概略候補決定工程S23で決定した候補それぞれについて、評価値を算出する。
概略決定工程S28では、概略候補評価工程S24で算出した評価値に基づいて、概略候補決定工程S23で決定した二つ以上の候補のなかから一つを選択することにより、部分面部23~25の概略形状を決定する。なお、単純に評価値が最も高い候補を選択してもよいし、評価値が所定の閾値を超える候補のなかから意匠性などを考慮して候補を選択してもよい。
【0023】
図8を参照して、概略候補決定工程S23について更に詳しく説明する。
概略候補決定工程S23では、例えば、反射面部12をいくつの部分面部23~25に分割するか、隣接する部分面部23~25の境界となる縁部21及び22の位置、それぞれの部分面部23~25における概略曲面73~75の形状などを変数とし、これらの変数を変えたいくつかの候補を作成することにより、概略形状の候補を決定する。
概略候補決定工程S23は、例えば、位置候補決定工程S31と、奥行候補決定工程S32と、概略形状候補決定工程S33とを有する。
【0024】
位置候補決定工程S31では、例えば、図9に示すように、縁部13及び14の位置を決定する。これは、例えば外装フィン10を取り付ける柱82の幅や、側面81から外側に突出させることができる長さなどに基づいて決定される。これにより、平面62が決定される。なお、縁部13及び14の位置を固定せず、変数としてもよい。
次に、反射面部12を部分面部23~25に分割する分割数の候補をいくつか決定する。例えば、図9に示すように、分割数の候補として、2,3,4の三つを決定する。
そして、縁部の位置の候補をいくつか決定する。ここで、分割数が2であれば、縁部の数は1になる。分割数が3であれば、縁部の数は2になる。そして、分割数が4であれば、縁部の数は3になる。それぞれの分割数に応じた数の縁部について、それぞれの位置の候補を決定する。このとき、それぞれの縁部の位置の候補は、縁部13と縁部14との間に位置し、かつ、平面62よりも柱82に近い側に位置する。
【0025】
奥行候補決定工程S32では、位置候補決定工程S31で決定した候補それぞれについて、概略曲面の奥行の候補をいくつか決定する。
例えば、図10に示すように、分割数が3である場合、三つの奥行93~95の候補をそれぞれ決定する。
概略曲面は、隣接する二つの縁部の間を結ぶ平面よりも凹んでいる。概略曲面の奥行とは、その平面に対する概略曲面の深さのことである。
例えば、概略曲面73の奥行93は、それと同じ縁部13及び21の間を結ぶ平面63と、概略曲面73との間の距離の最大値である。奥行93の候補として、いくつかの値を決定する。
同様に、概略曲面74の奥行94は、それと同じ縁部21及び22の間を結ぶ平面64と、概略曲面74との間の距離の最大値である。奥行94は、奥行93と同じ値であってもよいし、奥行93とは異なる値であってもよい。奥行94の候補として、やはり、いくつかの値を決定する。
同様に、概略曲面75の奥行95は、それと同じ縁部22及び14の間を結ぶ平面65と、概略曲面75との間の距離の最大値である。奥行95は、奥行93や奥行94と同じ値であってもよいし、奥行93や奥行94とは異なる値であってもよい。奥行95の候補として、やはり、いくつかの値を決定する。
【0026】
概略形状候補決定工程S33では、位置候補決定工程S31で決定した候補と、奥行候補決定工程S32で決定した候補との組み合わせそれぞれについて、概略曲面の断面形状の候補をいくつか決定する。
概略曲面73~75の断面形状は、例えば、図11に示すように、円弧などの曲線であってもよいし、複数の線分を組み合わせたものであってもよいし、曲線と線分とを組み合わせたものであってもよい。
【0027】
概略候補決定工程S23では、例えば以上のようにして、反射面部12の概略形状の候補を複数決定する。
【0028】
図12を参照して、概略候補評価工程S24について更に詳しく説明する。
概略候補評価工程S24では、概略候補決定工程S23で決定した候補それぞれについて、例えば、窓83を介して入射して建物80の床に照射される太陽光をシミュレートすることにより、評価値を算出する。
概略候補評価工程S24は、例えば、床分割工程S41と、概略照射量算出工程S42と、概略評価値算出工程S43とを有する。
【0029】
床分割工程S41では、例えば、図13に示すように、シミュレーションの対象である建物80の窓83の内側に設けられた床84を、窓83に対して垂直な方向に延びる複数の床部分84a~84rに均等に分割する。
【0030】
概略照射量算出工程S42では、例えば、太陽が所定の日時の位置にあると仮定して、図14に示すように、窓83を介して床84に直接照射される太陽光91や、外装フィン10に反射したのち窓83を介して床84に照射される太陽光92をトレースすることにより、窓83を介して建物80のなかに入射した太陽光91,92が、床分割工程S41で分割した床部分84a~84rのうちのどこに照射されるかをシミュレートし、それぞれの床部分84a~84rに照射される太陽光の総量を算出する。
なお、図14は平面図であるが、実際には、太陽光91,92が入射する高さによってどの床部分84a~84rに到達するかが変わってくるので、シミュレーションは、三次元的に行う。
また、反射面部12の詳細形状がまだ決定していないので、外装フィン10による反射のシミュレーションでは、概略候補決定工程S23で決定した候補それぞれにおける概略曲面73~75で太陽光が反射すると仮定する。
シミュレーションにおける太陽の位置は、例えば、冬至の15時における位置を仮定する。冬至の15時は、太陽が低い位置にあるので、屋内活動に対する悪影響が大きくなることが予想される。このため、この日時におけるシミュレーションをすることで、悪影響をどの程度抑制できるかを判定できる。
【0031】
概略評価値算出工程S43では、概略照射量算出工程S42でシミュレートした結果に基づいて、概略候補決定工程S23で決定した候補それぞれについて、評価値を算出する。
なお、ここで算出する評価値は、床部分84a~84rに太陽光が均等に照射されるほど高い値になるような方式で算出する。例えば、床部分84a~84rそれぞれに照射される太陽光の総量の標準偏差の逆数を、評価値とする。
【0032】
以上のようにして算出した評価値に基づいて、概略候補決定工程S23で決定した複数の候補のなかから、概略決定工程S28で候補を一つ選択することにより、反射面部12の概略形状を決定する。
【0033】
次に、図15を参照して、詳細設計工程S15について詳しく説明する。
詳細設計工程S15では、概略設計工程S12で設計した反射面部12の概略形状に基づいて、反射面部12の詳細形状を設計する。
詳細設計工程S15は、例えば、詳細候補決定工程S56と、詳細候補評価工程S57と、詳細決定工程S58とを有する。
【0034】
詳細候補決定工程S56では、部分面部23~25の詳細形状の候補を二つ以上決定する。
詳細候補評価工程S57では、詳細候補決定工程S56で決定した候補それぞれについて、評価値を算出する。
詳細決定工程S58では、詳細候補評価工程S57で算出した評価値に基づいて、詳細候補決定工程S56で決定した二つ以上の候補のなかから一つを選択することにより、部分面部23~25の詳細形状を決定する。なお、単純に評価値が最も高い候補を選択してもよいし、評価値が所定の閾値を超える候補のなかから意匠性などを考慮して候補を選択してもよい。
【0035】
図16を参照して、詳細候補決定工程S56について更に詳しく説明する。
詳細候補決定工程S56では、例えば、それぞれの部分面部23~25の概略曲面上にどれだけの間隔で部分反射側面を設けるか、それぞれの部分反射側面の向きなどを変数として、これらの変数を変えたいくつかの候補を作成することにより、詳細形状の候補を決定する。
詳細候補決定工程S56は、例えば、間隔候補決定工程S61と、向き候補決定工程S62と、詳細形状候補決定工程S63とを有する。
【0036】
間隔候補決定工程S61では、例えば、図17に示すように、概略曲面73~75を分割する間隔96の候補をいくつか決定する。なお、概略曲面ごとに間隔96が異なってもよい。
【0037】
向き候補決定工程S62では、例えば、図18に示すように、部分反射側面の向き97の候補をいくつか決定する。なお、上述したとおり、部分反射側面の向きは、すべて異なる。したがって、すべての部分反射側面について個別に向きの候補を決定すると、その組み合わせは膨大な数になる。このため、隣接する部分反射側面の間の向きの差を一定とすることが好ましい。そうすれば、一つの概略曲面に含まれる部分反射側面のうち、いずれか一つの向きを決定すれば、他の部分反射側面の向きを自動的に決定することができる。隣接する部分反射側面の間の向きの差について、いくつかの候補を決定してもよい。
【0038】
詳細形状候補決定工程S63では、間隔候補決定工程S61で決定した間隔の候補と、向き候補決定工程S62で決定した向きの候補とに基づいて、部分面部23~25の形状の候補を決定する。
例えば、間隔候補決定工程S61で決定した間隔の候補と、向き候補決定工程S62で決定した向きの候補との組み合わせそれぞれについて、概略設計工程S12で設計した概略曲面を、間隔候補決定工程S61で決定した間隔の候補にしたがって分割し、分割した境界線に、谷縁部を配置する。そして、配置した谷縁部から、向き候補決定工程S62で決定した向きにしたがって部分反射側面を延ばす。また、配置した谷縁部から段部を延ばして、部分反射側面との交線に、山縁部を配置する。
【0039】
詳細形状候補決定工程S63では、例えば以上のようにして、反射面部12の詳細形状の候補を複数決定する。
【0040】
図19を参照して、詳細候補評価工程S57について更に詳しく説明する。
詳細候補評価工程S57では、詳細候補決定工程S56で決定した候補それぞれにういて、例えば、外装フィン10に反射して窓83に照射される太陽光をシミュレートすることにより、評価値を算出する。
詳細候補評価工程S57は、例えば、窓分割工程S71と、詳細照射量算出工程S72と、詳細評価値算出工程S73とを有する。
【0041】
窓分割工程S71では、例えば、図20に示すように、シミュレーションの対象である建物80の窓83を、柱82に対して平行な方向に延びる複数の窓部分83a~83fに均等に分割する。
【0042】
詳細照射量算出工程S72では、例えば、太陽が所定の方向にあると仮定して、図21に示すように、外装フィン10に反射した太陽光92が、窓分割工程S71で分割した窓部分83a~83fのうちのどこに照射されるかをシミュレートし、それぞれの窓部分83a~83fに照射される太陽光の照射量を算出する。
なお、概略照射量算出工程S42と異なり、太陽光92が入射する高さが変わってもどの窓部分83a~83fに到達するかは変わらないので、シミュレーションは、二次元的に行う。これにより、三次元的にシミュレーションする場合よりも演算量を抑えることができる。
その代わり、太陽の方向を一つに固定するのではなく、複数の場合について、それぞれシミュレーションを行う。例えば、所定の角度(例えば10度)刻みで太陽がある方向を変える。これにより、一年を通して様々な時刻における照射量を算出することができる。
【0043】
詳細評価値算出工程S73では、詳細照射量算出工程S72でシミュレートした結果に基づいて、詳細候補決定工程S56で決定した候補それぞれについて、評価値を算出する。
なお、ここで算出する評価値は、概略評価値算出工程S43で算出する評価値と同様、太陽光が均等に照射されるほど高い値になるような方式で算出する。なお、窓部分83a~83fのうち、外装フィン10が取り付けられた柱82にもっとも近い窓部分83aについては、図のように右下から太陽光が入射する場合は常に直接光が照射されると考えられるので、除外してもよい。例えば、それぞれの太陽の方向についてのシミュレーションにおいて窓部分83aを除いた残りの窓部分83b~83fに照射される太陽光の総量の標準偏差の逆数を算出し、その総和を求めて、評価値とする。
【0044】
以上のようにして算出した評価値に基づいて、詳細候補決定工程S56で決定した複数の候補のなかから、詳細決定工程S58で候補を一つ選択することにより、反射面部12の詳細形状を決定する。
【0045】
このように、外装フィン10を設計するにあたり、概略設計工程S12と、詳細設計工程S15との二段階に分け、それぞれのなかで太陽光の照射量をシミュレートするので、全体としてシミュレーションにかかる演算量を抑制することができる。
シミュレーションの結果に基づいて、太陽光が床や窓に均等に照射される場合に評価を高くするので、屋内活動に支障を生じることなく自然光を利用できる外装フィン10を設計することができる。
【0046】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0047】
オフィスビルにおいて、ペリメーターに設けられた柱型によって日射が遮られることで日射環境に偏りが発生する場合がある。
ペリメーターに設けられた柱型によって、従来では日陰となってしまう範囲でも、外装の形状を改善することで、日射の反射光によって、本来は日陰になってしまう期間を低減する。ペリメーターエリアで日射環境に優劣が発生しない環境を構築する。
太陽光が建物に対して、直達入射するすべての日時・時間で日射シミュレーションを行い、大まかな曲面形状を決定する。
曲面形状に対して、表面に細かいリブをつけることで、フィンで反射した直達光が室内側のグレアとならないように拡散しながら適度に柱型の背後の明るさを確保する形状を決定する。
これにより、特定日時以外であっても、直達光が外部へ発散せず、年間を通じた能動的な日射環境の平準化を外装材のみで行うことができる。
まず、フィン全体の断面形状の変数を設定する。例えば、フィン全体を変数「移動点B」を基に先端側(形状A)と建物側(形状B)で二分割し、形状A・B のそれぞれの面を平面的に変数「分割数」で分割する。分割して作成された面を変数「奥行」で押出して湾曲させ、断面形状を作成する。
作成したフィン全体の断面形状に、冬至15時時点の太陽光線を室内に入射させて、太陽光線の「直達光」と凸フィンから反射してきた「反射光」の「線分の数」を室内で計測する。計測面全体に、均等に直達光と反射光が配光された際の断面形状の各変数を最適値として評価し、複数案の中から評価値と意匠性を合わせて、フィン全体の断面形状を決定する。
次に、フィンのディテールの断面形状の変数を設定する。確定したフィン全体の断面形状を決定した後、形状それぞれの面を変数「分割距離」で分割し、仮定の太陽光線を変数「仮定入射角度」に合わせて、分割された面の角度を決定する。それぞれの面に建設時に照射される太陽光を照射する。
凸フィンと室内の柱型の間に、計測面を6面設置する。このうち、最も左にある計測点は直達光により太陽光を得ることができるため、評価としては利用しない。各計測面は全体の太陽光の獲得数を%で示し、各面が20%前後になる際の断面形状の各変数を最適値として評価する。複数案の中から評価値と意匠性を合わせて、フィンのディテールの断面形状を決定する。
これにより、年間を通じて外装材のみでペリメーターエリアの日射量を均一化することができるので、日射環境が緩和される。
細かなリブを設けたことによる建築室内と周辺地域への光害(主に眩しさ)を緩和することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 外装フィン、12 反射面部、13,14,21,22 縁部、23~25 部分面部、30a~31f,40a~41j,50a~50r 谷縁部、32a~33e,42a~43i,52a~52q 山縁部、34a~35e,44a~45i,54a~54q 部分反射側面、36a~37e,46a~47i,56a~56q 段部、38a~39e,48a~49i,58a~58q,62~65 平面、73~75 概略曲面、80 建物、81 側面、82 柱、83 窓、83a~83r 窓部分、84 床、84a~84r 床部分、91,92 太陽光、93~95 奥行、96 間隔、97 向き、S10 外装フィン設計処理、S12 概略設計工程、S15 詳細設計工程、S23 概略候補決定工程、S24 概略候補評価工程、S28 概略決定工程、S31 位置候補決定工程、S32 奥行候補決定工程、S33 概略形状候補決定工程、S41 床分割工程、S42 概略照射量算出工程、S43 概略評価値算出工程、S56 詳細候補決定工程、S57 詳細候補評価工程、S58 詳細決定工程、S61 間隔候補決定工程、S62 向き候補決定工程、S63 詳細形状候補決定工程、S71 窓分割工程、S72 詳細照射量算出工程、S73 詳細評価値算出工程。
図1
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