(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145634
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ロータ、回転電機、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20241004BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058074
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】松田 和敏
(72)【発明者】
【氏名】木村 優太
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 一平
【テーマコード(参考)】
5H609
5H622
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ05
5H609QQ12
5H609QQ18
5H622AA06
5H622DD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1マグネットの温度上昇を抑制できるロータ、回転電機、および駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明は、中心軸線を中心として回転可能なロータであって、複数のマグネット穴、および冷媒が流れる流路を有するロータコアと、複数のマグネット穴のそれぞれに収容される複数のマグネットと、を備える。複数のマグネット穴および流路は、それぞれ、軸方向に延びる。複数のマグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、を含む。複数のマグネット穴は、第1マグネットを収容する第1マグネット穴と、第2マグネットを収容する第2マグネット穴と、を含む。第1マグネットは、第2マグネットよりも径方向外側に配置される。流路は、第1マグネットと第2マグネットとの径方向の間に位置し、径方向と交差する方向に延びる孔である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転可能なロータであって、
複数のマグネット穴、および冷媒が流れる流路を有するロータコアと、
複数の前記マグネット穴のそれぞれに収容される複数のマグネットと、
を備え、
複数の前記マグネット穴および前記流路は、それぞれ、軸方向に延び、
複数の前記マグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、を含み、
前記複数のマグネット穴は、前記第1マグネットを収容する第1マグネット穴と、前記第2マグネットを収容する第2マグネット穴と、を含み、
前記第1マグネットは、前記第2マグネットよりも径方向外側に配置され、
前記流路は、前記第1マグネットと前記第2マグネットとの径方向の間に位置し、径方向と交差する方向に延びる孔である、ロータ。
【請求項2】
軸方向に見て、前記流路の周方向の寸法は、前記流路の径方向の寸法の2倍以上である、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、
軸方向に見て、前記第1内側面の周方向両端は、それぞれ、周方向外側に向かうにしたがって、前記第1マグネットから離れる曲面により構成される、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
軸方向に見て、前記第1内側面の周方向両端は、曲率半径が前記流路の径方向の寸法の1/2以上である円弧により構成される、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、
前記第1内側面と前記第1マグネットとの間の距離は、前記第1内側面と前記第2マグネットとの間の距離よりも短い、請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
周方向に沿って配置される複数の磁極部を備え、
複数の前記磁極部のそれぞれは、前記第1マグネットと、一対の前記第2マグネットと、を有し、
軸方向に見て、一対の前記第2マグネットは、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって互いに周方向に離れる方向に延び、
周方向において、前記流路は、一対の前記第2マグネットの間に配置され、
軸方向に見て、前記流路の周方向一方側に配置される前記第2マグネットの前記流路と対向する外側面と平行であり、且つ、前記第1マグネットのうち前記流路の周方向一方側に配置される前記第2マグネットとの間の距離が最も近い部分を通過する仮想直線を第1仮想線として、
軸方向に見て、前記流路の周方向一方側の端部は、前記第1仮想線よりも周方向一方側に位置する、請求項1に記載のロータ。
【請求項7】
軸方向に見て、前記流路の周方向他方側に配置される前記第2マグネットの前記流路と対向する外側面と平行であり、且つ、前記第1マグネットのうち前記流路よりも周方向他方側に配置される前記第2マグネットとの間の距離が最も近い部分を通過する仮想直線を第2仮想線として、
軸方向に見て、前記流路の周方向他方側の端部は、前記第2仮想線よりも周方向他方側に位置する、請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、
軸方向に見て、前記第1内側面の周方向一方側の端部は、前記第1仮想線よりも周方向一方側に位置し、前記第1内側面の周方向他方側の端部は、前記第2仮想線よりも周方向他方側に位置する、請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
前記ロータコアは、複数の保持コア板を含む複数のコア板が軸方向に積層して構成され、
複数の前記保持コア板は、軸方向に連続して積層され、
複数の前記保持コア板のそれぞれは、前記第1マグネットよりも径方向内側、且つ前記流路よりも径方向外側に配置され、前記第1マグネットを保持する一対のマグネット保持部を有し、
一対の前記マグネット保持部は、周方向に沿って間隔をあけて配置され、
前記マグネット保持部は、前記保持コア板を軸方向に貫通する貫通孔を有し、
径方向に見て、前記流路は、前記保持コア板のうち一対の前記マグネット保持部同士の間の部分と重なる、請求項1から8のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項10】
前記流路の周方向の寸法は、前記保持コア板のうち一対の前記マグネット保持部同士の間の部分の周方向の寸法以上である、請求項9に記載のロータ。
【請求項11】
前記マグネット保持部は、
前記貫通孔と前記第1マグネットとの間に配置され、径方向に弾性変形可能な弾性変形部と、
前記弾性変形部から径方向外側に突出し、前記第1マグネットと接触する接触部と、
を有する、請求項9に記載のロータ。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える、回転電機。
【請求項13】
請求項12に記載の回転電機と、
前記ロータに接続されるギヤ機構と、を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、回転電機、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の磁石をロータの外周面に向けてV字状の開き角度を持って配置したV字磁石、およびV字磁石が開いた部分に配置される外側磁石のそれぞれをロータの貫通孔に収容する構成のロータが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロータでは、外側磁石はV字磁石の径方向外側に配置されるため、外側磁石を通過する磁束はV字磁石を通過する磁束よりも多い。よって、ロータが回転する際に、外側磁石を通過する磁束の変化量はV字磁石を通過する磁束の変化量よりも大きくなる。これにより、外側磁石に発生する渦電流は、V字磁石に発生する渦電流が大きくなるため、外側磁石において発生するジュール熱の熱量は、V字磁石において発生するジュール熱の熱量よりも大きくなる。したがって、ロータが回転する際に、外側磁石の温度はV字磁石の温度よりも高くなるため、外側磁石は減磁し易く、回転電機の出力効率が低下する虞があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、第1マグネットの温度上昇を抑制できるロータ、回転電機、および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なロータであって、複数のマグネット穴、および冷媒が流れる流路を有するロータコアと、複数の前記マグネット穴のそれぞれに収容される複数のマグネットと、を備える。複数の前記マグネット穴および前記流路は、それぞれ、軸方向に延びる。複数の前記マグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、を含む。前記複数のマグネット穴は、前記第1マグネットを収容する第1マグネット穴と、前記第2マグネットを収容する第2マグネット穴と、を含む。前記第1マグネットは、前記第2マグネットよりも径方向外側に配置される。前記流路は、前記第1マグネットと前記第2マグネットとの径方向の間に位置し、径方向と交差する方向に延びる孔である。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上記のロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える。
【0008】
本発明の駆動装置の一つの態様は、上記の回転電機と、前記ロータに接続されるギヤ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、ロータ、回転電機、および駆動装置において、第1マグネットの温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の駆動装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のロータを示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のロータの一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のロータの一部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のロータの一部を示す断面図であって、
図4の部分拡大図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のロータの一部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態のロータの一部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態のマグネット保持部を示す第1の断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態のマグネット保持部を示す第2の断面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態のロータの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に対する位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に満たしていればよい。
【0012】
各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。以下の説明では、車両における左側を単に「左側」と呼び、車両における右側を単に「右側」と呼ぶ。
【0013】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。
【0014】
各図に示す中心軸線Jは、Y軸方向、つまり車両の左右方向に延びる仮想軸線である。以下の説明では、中心軸線Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0015】
周方向は、各図において矢印θで示される。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と反対側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、右側(-Y側)から見て中心軸線J回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、右側から見て中心軸線J回りに反時計回りに進む側である。
【0016】
以下の説明において、「径方向外側」は、一つの方向を、径方向を向く成分と周方向を向く成分に分解した際に、径方向を向く成分が径方向外側を向く場合も含む。同様に、「径方向内側」は、一つの方向を、径方向を向く成分と周方向を向く成分に分解した際に、径方向を向く成分が径方向内側を向く場合も含む。また、「周方向一方側」とは、一つの方向を、径方向を向く成分と周方向を向く成分に分解した際に、周方向を向く成分が周方向一方側を向く場合も含む。同様に、「周方向他方側」とは、一つの方向を、径方向を向く成分と周方向を向く成分に分解した際に、周方向を向く成分が周方向他方側を向く場合も含む。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、車両に搭載され、車軸73を回転させる駆動装置である。駆動装置1が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。駆動装置1は、回転電機60と、回転電機60に接続されるギヤ機構70と、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容するハウジング63と、冷媒流路90と、を備える。本実施形態において回転電機60は、モータである。
【0018】
ハウジング63は、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容する。ハウジング63は、回転電機60を内部に収容するモータハウジング63aと、ギヤ機構70を内部に収容するギヤハウジング63bと、を有する。モータハウジング63aは、ギヤハウジング63bの右側(-Y側)に繋がる。モータハウジング63aは、周壁部63cと、隔壁部63dと、蓋部63eと、を有する。周壁部63cおよび隔壁部63dは、例えば、同一の単一部材の一部である。蓋部63eは、例えば、周壁部63cおよび隔壁部63dと別体である。
【0019】
周壁部63cは、中心軸線Jを囲み、右側(-Y側)に開口する筒状である。周壁部63cは、回転電機60を径方向外側から囲む。隔壁部63dは、周壁部63cの左側(+Y側)の端部と繋がる。隔壁部63dは、モータハウジング63aの内部とギヤハウジング63bの内部とを軸方向に隔てる。隔壁部63dは、モータハウジング63aの内部とギヤハウジング63bの内部とを繋ぐ隔壁開口63fを有する。隔壁部63dには、ベアリング64aが保持される。蓋部63eは、周壁部63cの右側の端部に固定される。蓋部63eは、周壁部63cの開口を塞ぐ。蓋部63eには、ベアリング64bが保持される。
【0020】
ギヤハウジング63bは、冷媒Oを内部に収容する。冷媒Oは、ギヤハウジング63b内の下部領域に貯留される。冷媒Oは、冷媒流路90を循環する。本実施形態において、冷媒Oは、回転電機60を冷却するとともに、ギヤ機構70を潤滑する潤滑油である。冷媒Oとしては、例えば、冷却機能および潤滑機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0021】
ギヤ機構70は、回転電機60の後述するロータ10に接続され、ロータ10の回転を車両の車軸73に伝達する。本実施形態において、ギヤ機構70は、回転電機60に接続される減速装置71と、減速装置71に接続される差動装置72と、を有する。差動装置72は、リングギヤ72aを有する。リングギヤ72aには、回転電機60から出力されるトルクが減速装置71を介して伝達される。リングギヤ72aの下端は、ギヤハウジング63b内に貯留される冷媒Oに浸漬する。リングギヤ72aが回転すると、冷媒Oがかき上げられ、かき上げられた冷媒Oは、減速装置71および差動装置72を潤滑する。
【0022】
回転電機60は、中心軸線Jを中心として回転可能なロータ10と、ロータ10と径方向に隙間を介して対向するステータ61と、を備える。本実施形態において、ステータ61は、ロータ10の径方向外側に配置される。ステータ61は、ハウジング63の周壁部63cの内周面に固定される。ステータ61は、ステータコア61aと、ステータコア61aに取り付けられるコイルアセンブリ61bと、を有する。
【0023】
ステータコア61aは、中心軸線Jを中心とする略円環状である。ステータコア61aは、ロータ10の後述するロータコア30を径方向外側から囲む。コイルアセンブリ61bは、ステータコア61aに取り付けられる複数のコイル61cを有する。図示は省略するが、コイルアセンブリ61bは、各コイル61cを結束する結束部材などを有してもよいし、各コイル61c同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
【0024】
図示は省略するが、コイルアセンブリ61bは、図示しない外部電源と電気的に接続される。外部電源からコイルアセンブリ61bに電流が供給されると、複数のコイル61cのそれぞれは電磁石を構成する。このとき、複数のコイル61cのそれぞれには、ジュール熱が発生し、係るジュール熱はステータコア61aに伝達する。これにより、ステータコア61aを含むステータ61の温度が上昇する。
【0025】
図2に示すように、ロータ10は、シャフト20と、ロータコア30と、複数のマグネット40と、を備える。
図1に示すように、シャフト20は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。シャフト20は、左側(+Y側)および右側(-Y側)に開口する。シャフト20の左端は、ギヤハウジング63b内に突出する。シャフト20には、シャフト20の内部とシャフト20の外部とを繋ぐ孔部20aが設けられる。孔部20aは、周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0026】
ロータコア30は、シャフト20の外周面に固定される。ロータコア30は、中心軸線Jを中心とする略円環状である。ロータコア30は、磁性体製である。
図3に示すように、ロータコア30は、複数のコア板30bが軸方向に積層して構成される。各コア板30bは、例えば、電磁鋼板である。
図2に示すように、ロータコア30は、ロータ孔部30aと、複数のマグネット取付部31と、複数のロータ内流路34と、複数のロータ穴部35と、を有する。
【0027】
ロータ孔部30aは、ロータコア30を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、ロータ孔部30aは、中心軸線Jを中心とする略円形状である。ロータ孔部30aには、シャフト20が軸方向に通される。ロータ孔部30aの内周面は、シャフト20の外周面に固定される。
【0028】
複数のマグネット取付部31は、ロータコア30のうち径方向外側の部分に設けられる。複数のマグネット取付部31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。本実施形態において、マグネット取付部31は、8つ設けられる。本実施形態において、各マグネット取付部31には、1つのロータ内流路34および3つのマグネット穴50が設けられる。
【0029】
複数のマグネット穴50は、軸方向に延びる。本実施形態において、各マグネット穴50は、ロータコア30を軸方向に貫通する孔である。各マグネット穴50は、軸方向の端部に底部を有する穴であってもよい。本実施形態において、複数のマグネット穴50は、第1マグネット穴51と、第2マグネット穴53,54と、を含む。第1マグネット穴51は、第2マグネット穴53,54よりも径方向外側に配置される。複数のマグネット取付部31のそれぞれには、1つの第1マグネット穴51と一対の第2マグネット穴53,54が設けられる。
【0030】
複数のマグネット40は、複数のマグネット穴50のそれぞれに1つずつ収容される。本実施形態において、複数のマグネット40のそれぞれは、軸方向に延びる略直方体状である。各マグネット40は、例えば、ロータコア30の左側(+Y側)の端部から右側(-Y側)の端部まで延びている。本実施形態において、マグネット40は、永久磁石である。本実施形態において、マグネット40は、ジスプロシウムおよびテルビウム等の重希土類を含有しないネオジム磁石である。そのため、本実施形態のマグネット40は、重希土類を含有するネオジム磁石と比較して、減磁する温度が低いものの、材料コストを低減できる。したがって、マグネット40の製造コストを低減できる。
【0031】
図4に示すように、複数のマグネット40は、第1マグネット穴51に収容される第1マグネット41と、一対の第2マグネット穴53,54のそれぞれに収容される一対の第2マグネット43,44と、を含む。各マグネット40は、後述する低熱伝導層81,83,84によって、各マグネット穴50内に固定される。
【0032】
図2に示すように、ロータ10は、複数の磁極部10Pを備える。磁極部10Pは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に複数配置される。本実施形態において、磁極部10Pは、8つ設けられる。複数の磁極部10Pのそれぞれは、ロータコア30の1つのマグネット取付部31と、該1つのマグネット取付部31に設けられるマグネット穴50に収容される複数のマグネット40と、によって構成される。複数の磁極部10Pのそれぞれは、1つの第1マグネット穴51と、一対の第2マグネット穴53,54と、1つの第1マグネット41と、一対の第2マグネット43,44と、を有する。複数の磁極部10Pは、ロータコア30の外周面における磁極がN極の磁極部10Nと、ロータコア30の外周面における磁極がS極の磁極部10Sと、を4つずつ含む。4つの磁極部10Nおよび4つの磁極部10Sは、周方向に沿って交互に配置される。
【0033】
図5に示すように、磁極部10Pにおいて、第2マグネット穴53と第2マグネット穴54とは、磁極仮想線Ldを周方向に挟んで配置される。磁極仮想線Ldは、磁極部10Pの周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線である。
図4に示すように、磁極仮想線Ldは、各磁極部10Pそれぞれに設けられる。軸方向に見て、磁極仮想線Ldは、ロータ10のd軸上を通っている。磁極仮想線Ldが延びる方向は、ロータ10のd軸方向である。磁極仮想線Ldは、一対の第2マグネット穴53,54同士の間における周方向の中心を通る。なお、本実施形態において、磁極部10Pの周方向の中心は、マグネット取付部31の周方向の中心である。
【0034】
図5に示すように、第1マグネット穴51は、一対の第2マグネット穴53,54よりも径方向外側に配置される。第1マグネット穴51は、ロータ内流路34よりも径方向外側に配置される。第1マグネット穴51は、一対の第2マグネット穴53,54同士の周方向の間に配置される。より詳細には、第1マグネット穴51は、一対の第2マグネット穴53,54それぞれの径方向外側の端部同士の間に配置される。軸方向に見て、第1マグネット穴51は、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる。磁極仮想線Ldは、第1マグネット穴51の周方向中心を通る。本実施形態において、軸方向に見て、第1マグネット穴51の磁極仮想線Ldよりも周方向一方側(+θ側)の部分と周方向他方側(-θ側)の部分とは、磁極仮想線Ldを対称軸として線対称の形状である。
【0035】
第1マグネット穴51は、マグネット収容穴部51aと、2つの外側穴部51b,51cと、を有する。マグネット収容穴部51a、および外側穴部51b,51cは、第1マグネット穴51の各領域である。軸方向に見て、マグネット収容穴部51aは、第1マグネット穴51が延びる方向を長辺とする長方形状である。マグネット収容穴部51aは、ロータ内流路34の径方向外側に配置される。マグネット収容穴部51aは、第1内壁面51eと、第2内壁面51fと、を有する。第1内壁面51eは、マグネット収容穴部51aの内側面のうち、径方向内側を向く面である。第2内壁面51fは、マグネット収容穴部51aの内側面のうち、径方向外側を向く面である。
【0036】
外側穴部51bは、マグネット収容穴部51aの周方向一方側(+θ側)の端部と繋がる。外側穴部51cは、マグネット収容穴部51aの周方向他方側(-θ側)の端部と繋がる。外側穴部51b,51cは、例えば、空洞部であり、それぞれフラックスバリア部を構成する。外側穴部51b,51cには、樹脂などの非磁性体が充填されていてもよく、係る非磁性体によってフラックスバリア部が構成されてもよい。本明細書において「フラックスバリア部」は、ロータコア30のうち、磁束の通過を抑制できる部分である。
【0037】
第1マグネット41は、第1マグネット穴51に収容される。より詳細には、第1マグネット41は、マグネット収容穴部51aに収容される。第1マグネット41は、一対の第2マグネット43,44よりも径方向外側に配置される。第1マグネット41は、ロータ内流路34よりも径方向外側に配置される。軸方向に見て、第1マグネット41は、磁極仮想線Ldと重なる位置に配置される。軸方向に見て、第1マグネット41は、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる。第1マグネット41は、第1外側面41aと、第2外側面41bと、を有する。第1外側面41aは、第1マグネット41の外側面のうち、径方向外側を向く面である。第1外側面41aは、ロータ内流路34側と反対側を向く面である。第1外側面41aは、第1内壁面51eと径方向に対向する。第2外側面41bは、第1マグネット41の外側面のうち、径方向内側を向く面である。第2外側面41bは、ロータ内流路34側を向く面である。第2外側面41bは、第2内壁面51fと径方向に対向する。
【0038】
一対の第2マグネット穴53,54は、第1マグネット穴51よりも径方向内側に配置される。軸方向に見て、一対の第2マグネット穴53,54は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって互いに周方向に離れる方向に延びる。軸方向に見て、一対の第2マグネット穴53,54は、径方向外側に向かうにしたがって周方向に広がるV字形状に沿って配置される。第2マグネット穴53は、ロータ内流路34よりも周方向一方側(+θ側)に配置される。第2マグネット穴54は、ロータ内流路34よりも周方向他方側(-θ側)に配置される。軸方向に見て、第2マグネット穴53と第2マグネット穴54とは、磁極仮想線Ldを対称軸として線対称な形状である。
【0039】
第2マグネット穴53は、マグネット収容穴部53aと、内側穴部53bと、外側穴部53cと、を有する。マグネット収容穴部53a、内側穴部53b、および外側穴部53cは、第2マグネット穴53の各領域である。軸方向に見て、マグネット収容穴部53aは、第2マグネット穴53が延びる方向を長辺とする長方形状である。マグネット収容穴部53aは、ロータ内流路34よりも周方向一方側(+θ側)に配置される。マグネット収容穴部53aは、第1内壁面53eと、第2内壁面53fと、を有する。第1内壁面53eは、マグネット収容穴部53aの内側面のうち、ロータ内流路34側を向く面である。第2内壁面53fは、マグネット収容穴部53aの内側面のうち、ロータ内流路34側と反対側を向く面である。軸方向に見て、内側穴部53bは、マグネット収容穴部53aの径方向内側の端部に繋がる。軸方向に見て、外側穴部53cは、マグネット収容穴部53aの径方向外側の端部に繋がる。内側穴部53bおよび外側穴部53cは、フラックスバリア部を構成する。
【0040】
第2マグネット穴54は、マグネット収容穴部54aと、内側穴部54bと、外側穴部54cと、を有する。マグネット収容穴部54a、内側穴部54b、および外側穴部54cは、第2マグネット穴54の各領域である。軸方向に見て、マグネット収容穴部54aは、第2マグネット穴54が延びる方向を長辺とする長方形状である。マグネット収容穴部54aは、ロータ内流路34よりも周方向他方側(-θ側)に配置される。マグネット収容穴部54aは、第1内壁面54eと、第2内壁面54fと、を有する。第1内壁面54eは、マグネット収容穴部54aの内側面のうち、ロータ内流路34側を向く面である。第2内壁面54fは、マグネット収容穴部54aの内側面のうち、ロータ内流路34側と反対側を向く面である。軸方向に見て、内側穴部54bは、マグネット収容穴部54aの径方向内側の端部に繋がる。軸方向に見て、外側穴部54cは、マグネット収容穴部54aの径方向外側の端部に繋がる。内側穴部54bおよび外側穴部54cは、フラックスバリア部を構成する。
【0041】
軸方向に見て、一対の第2マグネット43,44は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって互いに周方向に離れる方向に延びる。軸方向に見て、一対の第2マグネット43,44は、径方向外側に向かうにしたがって周方向に広がるV字形状に沿って配置される。第2マグネット43は、マグネット収容穴部53aに収容される。第2マグネット43は、ロータ内流路34よりも周方向一方側(+θ側)に配置される。第2マグネット44は、マグネット収容穴部54aに収容される。第2マグネット44は、ロータ内流路34よりも周方向他方側(-θ側)に配置される。上述のように、第1マグネット41は、ロータ内流路34の径方向外側に配置される。これらにより、軸方向に見て、ロータ内流路34は、複数のマグネット40に囲まれる。
【0042】
第2マグネット43は、第1外側面43aと、第2外側面43bと、を有する。第1外側面43aは、第2マグネット43の外側面のうち、ロータ内流路34側と反対側を向く面である。第1外側面43aは、第1内壁面53eと対向する。第2外側面43bは、第2マグネット43の外側面のうち、ロータ内流路34側を向く面である。第2外側面43bは、第2内壁面53fと対向する。
【0043】
第2マグネット44は、第1外側面44aと、第2外側面44bと、を有する。第1外側面44aは、第2マグネット44の外側面のうち、ロータ内流路34側と反対側を向く面である。第1外側面44aは、第1内壁面54eと対向する。第2外側面44bは、第2マグネット44の外側面のうち、ロータ内流路34側を向く面である。第2外側面44bは、第2内壁面54fと対向する。
【0044】
図1に示すように、本実施形態において、複数のロータ内流路34は、ロータコア30を軸方向に貫通する孔である。複数のロータ内流路34は、冷媒Oが流れる流路である。複数のロータ内流路34は、軸方向に延びる。複数のロータ内流路34の軸方向の略中央部は、シャフト20の複数の孔部20aと径方向に繋がる。
図2に示すように、本実施形態において、ロータ内流路34は、8つ設けられる。各ロータ内流路34は、周方向に沿って一周に亘って等間隔をあけて設けられる。各ロータ内流路34は、各マグネット取付部31に1つずつ設けられる。
【0045】
各マグネット取付部31において、ロータ内流路34は、第1マグネット41よりも径方向内側に配置される。周方向において、ロータ内流路34は、一対の第2マグネット43,44の間に配置される。上述のように、ロータ内流路34は、第1マグネット41および一対の第2マグネット43,44に囲まれる。また、ロータ内流路34は、一対の第2マグネット43,44それぞれの径方向内側の部分よりも、径方向外側に配置される。したがって、ロータ内流路34は、第1マグネット41と第2マグネット43,44との径方向の間に位置する。各ロータ内流路34は、冷媒Oが流れる冷媒流路90の一部を構成する。ロータコア30の熱および複数のマグネット40の熱は、ロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達され、冷媒Oを介して放出される。
【0046】
図5に示すように、軸方向に見て、ロータ内流路34は、径方向と交差する方向に延びる長孔状である。軸方向に見て、ロータ内流路34は、径方向と交差する方向に延びる矩形状等の他の形状であってもよい。本実施形態において、軸方向に見て、ロータ内流路34は、径方向と直交する方向に延びる。つまり、軸方向に見て、ロータ内流路34は、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる。ロータ内流路34の周方向の寸法は、ロータ内流路34の径方向の寸法よりも大きい。本実施形態において、ロータ内流路34の周方向の寸法は、ロータ内流路34の径方向の寸法の2倍程度である。
【0047】
軸方向に見て、ロータ内流路34は、磁極仮想線Ldと重なる位置に設けられる。本実施形態において、ロータ内流路34の磁極仮想線Ldよりも周方向一方側(+θ側)の部分と、ロータ内流路34の磁極仮想線Ldよりも周方向他方側(-θ側)の部分とは、磁極仮想線Ldを対称軸として線対称な形状である。軸方向に見て、ロータ内流路34の周方向両端の形状は、周方向外側に突出する円弧状である。なお、本実施形態において、周方向外側とは、磁極仮想線Ld側を向く方向の反対側を向く方向である。ロータ内流路34は、第1内側面34aと、第2内側面34bと、を有する。
【0048】
図5に示す流路中央線Lcは、径方向と直交する方向に延び、且つ、ロータ内流路34の径方向中央を通過する仮想直線である。流路中央線Lcは、磁極仮想線Ldと直交する。ロータ内流路34の内側面のうち、流路中央線Lcと交差する部分は、第1部分34dと第2部分34eである。第1部分34dは、磁極仮想線Ldよりも周方向一方側(+θ側)に位置する。第2部分34eは、磁極仮想線Ldよりも周方向他方側(-θ側)に位置する。本実施形態において、第1内側面34aは、ロータ内流路34の内側面のうち、第1部分34dと第2部分34eとを繋ぎ、流路中央線Lcの径方向外側に位置する部分である。第1内側面34aは、径方向内側を向く。軸方向に見て、第1内側面34aの周方向両端は、それぞれ、周方向外側に向かうにしたがって第1マグネット41から離れる曲面により構成される。より詳細には、軸方向に見て、第1内側面34aの周方向両端は、曲率半径がロータ内流路34の径方向の寸法の1/2以上である円弧により構成される。本実施形態において、第2内側面34bは、ロータ内流路34の内側面のうち、第1部分34dと第2部分34eとを繋ぎ、流路中央線Lcの径方向内側に位置する部分である。第2内側面34bは、径方向外側を向く。
【0049】
本実施形態において、第1内側面34aと第1マグネット41との間の距離L1は、第1内側面34aと第2マグネット43との間の距離L21よりも短い。本実施形態において、第1内側面34aと第1マグネット41との間の距離L1は、第1内側面34aと第1マグネット41の第2外側面41bとの間の距離である。また、第1内側面34aと第2マグネット43との間の距離L21は、第1部分34dと第2マグネット43の第2外側面43bとの間の距離である。また、第1内側面34aと第1マグネット41との間の距離L1は、第1内側面34aと第2マグネット44との間の距離L22よりも短い。本実施形態において、第1内側面34aと第2マグネット44との間の距離L22は、第2部分34eと第2マグネット44の第2外側面44bとの間の距離である。
【0050】
複数のロータ穴部35は、ロータコア30を軸方向に貫通する孔である。複数のロータ穴部35は、軸方向に底部を有する穴であってもよい。
図2に示すように、複数のロータ穴部35は、周方向に沿って一周に亘って等間隔をあけて設けられる。本実施形態において、ロータ穴部35は、8つ設けられる。
図4に示すように、軸方向に見て、ロータ穴部35は、周方向に互いに隣り合うマグネット取付部31マグネット取付部31同士の間における周方向の中心を通り径方向に延びる第3仮想線Lqと重なる位置に設けられる。軸方向に見て、ロータ穴部35は、径方向外側に突出する角丸の略三角形状である。ロータコア30に複数のロータ穴部35を設けることによって、ロータコア30の軽量化を図ることができる。なお、本実施形態において、第3仮想線Lqは、軸方向に見て、ロータ10のq軸上を通っている。第3仮想線Lqが延びる方向は、ロータ10のq軸方向である。
【0051】
低熱伝導層80は、ロータコア30からマグネット40への熱の伝達を抑制する。また、低熱伝導層80は、マグネット40をマグネット穴50に固定する。低熱伝導層80は、軸方向に延びる。低熱伝導層80は、複数のマグネット穴50のそれぞれに収容される。低熱伝導層80は、低熱伝導層81,83,84を含む。
図5に示すように、低熱伝導層81は、第1マグネット穴51のうち、第1マグネット41の第1外側面41aと第1内壁面51eとの間に設けられる。低熱伝導層83は、第2マグネット穴53のうち、第2マグネット43の第1外側面43aと第1内壁面53eとの間に設けられる。低熱伝導層84は、第2マグネット穴54のうち、第2マグネット44の第1外側面44aと第1内壁面54eとの間に設けられる。
【0052】
本実施形態において、低熱伝導層81,83,84は、シート状の部材である。低熱伝導層81,83,84のそれぞれは、各マグネット40の第1外側面41a,43a,44aに取り付けられた状態で、各マグネット40とともに各マグネット穴50内に挿入される。各マグネット穴50内に配置された低熱伝導層81,83,84は、加熱により発泡して体積が膨張し、膨張した状態で硬化する。これにより、低熱伝導層81は、第1マグネット41を第2内壁面51fに押し付ける。低熱伝導層83は、第2マグネット43を第2内壁面53fに押し付ける。低熱伝導層84は、第2マグネット44を第2内壁面54fに押し付ける。これらにより、各マグネット40は、各マグネット穴50に固定される。また、低熱伝導層80の熱伝導率は、ロータコア30の熱伝導率よりも小さい。
【0053】
本実施形態において、低熱伝導層80は、例えば、熱硬化性樹脂と、加熱により発泡可能な発泡剤と、を含む。低熱伝導層80に含まれる発泡剤は、例えば、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも低い温度で発泡し、最も膨張した状態に至る発泡剤であることが好ましい。これにより、ロータ10の加熱時に温度が上昇する過程において、発泡剤の発泡が完了した後で熱硬化性樹脂の硬化が始まるため、低熱伝導層80が安定して膨張する。したがって、低熱伝導層80によって、複数のマグネット40のそれぞれを複数のマグネット穴50の第2内壁面51f,53f,54fに押し付けることができ、複数のマグネット40のそれぞれを、マグネット穴50に安定して固定できる。
【0054】
冷媒流路90は、ギヤハウジング63b内に貯留された冷媒Oをロータ10およびステータ61に供給する経路である。
図1に示すように、冷媒流路90には、ポンプ97およびクーラ98が設けられる。冷媒流路90は、第1流路部91と、第2流路部92と、第3流路部93と、第4流路部94と、第5流路部95と、シャフト内流路96と、ロータ内流路34と、を有する。
【0055】
第1流路部91、第2流路部92、および第3流路部93は、例えば、ギヤハウジング63bの壁部に設けられる。第1流路部91は、ギヤハウジング63b内の冷媒Oが貯留される下部領域とポンプ97とを繋ぐ。第2流路部92は、ポンプ97とクーラ98とを繋ぐ。第3流路部93は、クーラ98と第4流路部94とを繋ぐ。
【0056】
第4流路部94は、軸方向に延びるパイプである。第4流路部94の軸方向両端は、モータハウジング63aに支持される。第4流路部94は、ステータ61の上側に配置される。第4流路部94は、複数の供給口94aを有する。供給口94aは、第4流路部94を径方向に貫通する孔である。本実施形態において、供給口94aは、第4流路部94内に流入した冷媒Oの一部を、第4流路部94の外部に噴射する噴射口である。第5流路部95は、蓋部63eに設けられる。第5流路部95は、第4流路部94とシャフト内流路96とを繋ぐ。
【0057】
シャフト内流路96は、中空のシャフト20の内側面によって構成される。シャフト内流路96は、軸方向に延びる。シャフト内流路96の左側(+Y側)の端部は、ギヤハウジング63bの内部に位置し、左側に開口する。上述のように、ロータ内流路34は、ロータコア30を軸方向に貫通する孔である。ロータ内流路34の軸方向中央部は、複数の孔部20aと繋がる。ロータ内流路34は、複数の孔部20aを介して、シャフト内流路96と繋がる。
【0058】
ポンプ97が駆動されると、ギヤハウジング63b内の下部領域に貯留された冷媒Oは、第1流路部91を通ってポンプ97に吸い上げられ、第2流路部92を通ってクーラ98内に流入する。クーラ98内に流入した冷媒Oは、クーラ98内で冷却された後、第3流路部93を通って、第4流路部94に流入する。第4流路部94内に流入した冷媒Oの一部は、供給口94aから噴射されて、ステータ61に供給される。第4流路部94に流入した冷媒Oの他の一部は、第5流路部95を通って、シャフト内流路96に流入する。
【0059】
シャフト内流路96に流入した冷媒Oの一部は、複数の孔部20aを介して、ロータ内流路34に流入する。シャフト内流路96を流れる冷媒Oの他の一部は、シャフト20の左側(+Y側)の開口からギヤハウジング63bの内部に流入し、再びギヤハウジング63b内に下部領域に貯留される。
【0060】
ロータ内流路34に流入した冷媒Oは、ロータ内流路34を左側(+Y側)および右側(-Y側)に向けて流れる。ロータ内流路34を流れる冷媒Oは、ロータ内流路34の内側面と接触し、ロータコア30の熱および複数のマグネット40の熱を吸熱する。これにより、ロータコア30の熱および複数のマグネット40の熱は冷媒Oに伝達され、ロータコア30および複数のマグネット40は冷却される。ロータ内流路34を流れる冷媒Oは、ロータコア30の軸方向両端から径方向外側に飛散し、ステータ61に供給される。
【0061】
なお、本実施形態において、中心軸線Jを中心としてロータ10が回転すると、ロータ内流路34を流れる冷媒Oには遠心力が加わるため、冷媒Oはロータ内流路34の径方向内側を向く面である
図5に示す第1内側面34aに沿って軸方向に流れ易い。そのため、第1内側面34aと冷媒Oとの接触面積は、第2内側面34bと冷媒Oとの接触面積よりも大きい。したがって、第1内側面34aを介してロータコア30から冷媒Oに伝達される熱量は、第2内側面34bを介してロータコア30から冷媒Oに伝達される熱量よりも大きい。
【0062】
図1に示すように、第4流路部94の供給口94a、およびロータ内流路34の軸方向両端からステータ61に供給された冷媒Oは、ステータ61の熱を吸熱することによって、ステータ61を冷却する。より詳細には、冷媒Oはコイル61cに供給され、コイル61cの熱およびステータコア61aの熱を吸熱する。ステータ61に供給された冷媒Oは、下側に落下し、モータハウジング63a内の下部領域に溜まる。モータハウジング63a内の下部領域に溜った冷媒Oは、隔壁開口63fを介してギヤハウジング63b内に戻る。
【0063】
図5に示すように、本実施形態のロータ10では、径方向外側に位置する部分ほどステータ61との距離が近くなるため、ロータ10とステータ61との間を流れる磁束が多く通過する。そのため、第2マグネット43,44よりも径方向外側に配置される第1マグネット41を通過する磁束は、第2マグネット43,44を通過する磁束よりも多い。よって、駆動装置1を駆動する際に、中心軸線Jを中心としてロータ10が回転すると、第1マグネット41を通過する磁束の変化量は、第2マグネット43,44を通過する磁束の変化量よりも大きいため、第1マグネット41で発生する渦電流は、第2マグネット43,44で発生する渦電流よりも大きい。したがって、第1マグネット41で発生するジュール熱の熱量は、第2マグネット43,44で発生するジュール熱の熱量よりも大きい。
【0064】
また、駆動装置1を駆動する際において、ロータコア30の外周面には、ステータコア61aとロータコア30との間の隙間を介してステータ61の熱が伝達され、且つ、ステータコア61aからの輻射によって輻射熱が生じる。そのため、駆動装置1を駆動する際において、ロータコア30の外周面の温度は上昇する。第2マグネット43,44よりも径方向外側に配置される第1マグネット41は、ロータコア30の外周面との間の距離が短いため、ステータコア61aの熱が伝達し易い。したがって、駆動装置1を駆動する際に、第1マグネット41は、第2マグネット43,44よりも温度上昇し易く、係る温度上昇によって、第2マグネット43,44よりも減磁し易い。
【0065】
これに対して、本実施形態によれば、第1マグネット41は、第2マグネット43,44よりも径方向外側に配置され、ロータ内流路34、すなわち流路は、第1マグネット41と第2マグネット43,44との径方向の間に位置し、径方向と交差する方向に延びる孔である。上述のように、ロータ10が中心軸線Jを中心として回転する際には、ロータ内流路34を流れる冷媒Oには遠心力が加わるため、冷媒Oはロータ内流路34の第1内側面34aに沿って軸方向に流れる。また、ロータ内流路34は、径方向と交差する方向、本実施形態では径方向と直交する方向に延びるため、ロータ内流路34の第1内側面34aの周方向の寸法を大きくし易い。よって、本実施形態では、第1内側面34aの面積を広くし易いため、第1内側面34aと冷媒Oとの接触面積を増大させ易い。そのため、ロータ内流路34よりも径方向外側に配置される第1マグネット41から第1内側面34aを介してロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達される熱量を増大させることができる。したがって、ロータ内流路34を流れる冷媒Oを介して放出される第1マグネット41の熱量を増大させることができるため、第1マグネット41の温度上昇を抑制できる。よって、第1マグネット41として、重希土類を含有するネオジム磁石よりも減磁が生じる温度が低い重希土類を含有しないネオジム磁石を用いる場合であっても、第1マグネット41が減磁することを抑制できる。したがって、回転電機60および駆動装置1の出力効率が低下することを抑制しつつ、第1マグネット41の製造コストが増大することを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、第2マグネット43,44は、第1マグネット41よりも径方向内側に配置されるため、第1マグネット41と比較して温度上昇が小さい。そのため、第2マグネット43,44として、重希土類を含まないネオジム磁石を用いる場合であっても、第2マグネット43,44が減磁することを抑制できる。したがって、回転電機60および駆動装置1の出力効率が低下することを抑制しつつ、第2マグネット43,44の製造コストが増大することを抑制できる。
【0067】
また、本実施形態では、ロータ内流路34が複数のマグネット40に囲まれて配置されるため、各マグネット40をロータ内流路34に近づけて配置し易い。したがって、各マグネット40から冷媒Oを介して放出される熱量をより増大させることができるため、各マグネット40それぞれの温度上昇をより好適に抑制できる。
【0068】
本実施形態によれば、ロータ内流路34、すなわち流路は、径方向内側を向く第1内側面34aを有し、第1内側面34aと第1マグネット41との間の距離L1は、第1内側面34aと第2マグネット43,44との間の距離L21,L22よりも短い。よって、第1マグネット41を第1内側面34aに近づけて配置し易いため、第1マグネット41と第1内側面34aとの間の熱抵抗を小さくしやすい。これにより、第1マグネット41からロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達される熱量をより増大させることができる。したがって、第1マグネット41の温度上昇をより好適に抑制できる。よって、上述のように、第1マグネット41として、減磁が生じる温度が低い重希土類を含有しないネオジム磁石を用いる場合であっても、第1マグネット41が減磁することをより好適に抑制できる。したがって、回転電機60および駆動装置1の出力効率が低下することをより好適に抑制しつつ、第1マグネット41の製造コストが増大することを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、上述のように、軸方向に見て、第1マグネット41およびロータ内流路34は、それぞれ、磁極仮想線Ldと重なる位置に配置され、第1マグネット41およびロータ内流路34は、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる。よって、軸方向に見て、第1マグネット41の外側面のうちロータ内流路34側を向く第2外側面41bが延びる方向と、ロータ内流路34の第1内側面34aが延びる方向とを同じ方向にできる。そのため、第2外側面41bと第1内側面34aとの間の最長距離を短くし易い。したがって、第1マグネット41が延びる方向において、第1マグネット41の放熱量のばらつきをより好適に抑制できるため、第1マグネット41の一部の温度が上昇することを好適に抑制できる。
【0070】
また、本実施形態では、第1マグネット41のロータ内流路34側と反対側を向く第1外側面41aとロータコア30との間には、低熱伝導層80が設けられ、上述のように、低熱伝導層80の熱伝導率は、ロータコア30の熱伝導率よりも小さい。よって、第1外側面41aとロータコア30とが直接的に接触する場合と比較して、第1外側面41aとロータコア30との間の熱抵抗を大きくできる。したがって、ロータコア30を介してステータ61から第1外側面41aに伝達される熱量を低減できるため、第1マグネット41の温度上昇をより好適に抑制できる。
【0071】
本実施形態によれば、軸方向に見て、第1内側面34aの周方向両端は、それぞれ、周方向外側に向かうにしたがって第1マグネット41から離れる曲面により構成される。より詳細には、本実施形態によれば、軸方向に見て、第1内側面34aの周方向両端は、曲率半径がロータ内流路34の径方向寸法の1/2以上である円弧により構成される。上述のように、ロータ10が中心軸線Jを中心として回転する際には、ロータ内流路34を流れる冷媒Oには遠心力が加わるため、冷媒Oはロータ内流路34の第1内側面34aに沿って軸方向に流れる。ロータ内流路34は、径方向と交差する方向、本実施形態では径方向と直交する方向に延びるため、第1内側面34aを直線状で構成する場合、第1内側面34aの周方向両端には、冷媒Oが溜まり易い。そのため、本実施形態では、第1内側面34aの周方向両端を周方向外側に向かうにしたがって第1マグネット41から離れる曲面により構成することで、第1内側面34a全体に冷媒Oが行き渡り易くなるため、第1内側面34aと冷媒Oとの接触面積を増大させ易い。そのため、第1マグネット41および第1マグネット41よりも径方向内側に配置される第2マグネット43,44から第1内側面34aを介してロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達される熱量をより増大させることができる。したがって、ロータ内流路34を流れる冷媒Oを介して放出される第1マグネット41および第2マグネット43,44の熱量をより増大させることができるため、第1マグネット41および第2マグネット43,44の温度上昇をより好適に抑制できる。
【0072】
<第2実施形態>
図6は、本実施形態の駆動装置201のロータ210の一部を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態の複数の磁極部210Pそれぞれのマグネット取付部231に設けられるロータ内流路234の周方向の寸法は、ロータ内流路234の径方向の寸法の2倍以上である。より詳細には、本実施形態の、ロータ内流路234の周方向の寸法は、ロータ内流路234の径方向の寸法の4倍程度である。よって、本実施形態によれば、ロータ内流路234、すなわち流路の周方向の寸法を大きくしつつ、ロータ内流路234の径方向の寸法を小さくし易い。よって、ロータ内流路234の第1内側面234aの周方向の寸法を大きくしつつ、ロータ内流路234の径方向の寸法を小さくし易い。そのため、第1内側面234aと冷媒Oとの接触面積を増大させ易いため、第1マグネット41から第1内側面234aを介して冷媒Oに伝達される熱量を増大させることができる。また、ロータ内流路234と各マグネット40との間のロータコア230の肉厚が薄くなりすぎることを抑制できる。したがって、第1マグネット41の温度上昇をより好適に抑制しつつ、ロータコア230のうち複数のマグネット40に囲まれる部分の剛性が低下することを抑制できる。
【0074】
周方向において、ロータ内流路234は、1対の第2マグネット43,44の間に配置される。
図6に示す第1仮想線V1は、軸方向に見て、第2マグネット43の第2外側面43bと平行な方向に延びる仮想直線である。すなわち、第1仮想線V1は、ロータ内流路234の周方向一方側(+θ側)に配置される第2マグネット43のロータ内流路234と対向する外側面と平行な方向に延びる仮想直線である。第1仮想線V1は、第1マグネット41のうち、第2マグネット43との間の距離が最も近い部分である、第2外側面41bの周方向一方側の端部を通過する。軸方向に見て、ロータ内流路234の周方向一方側の端部は、第1仮想線V1よりも周方向一方側に位置する。よって、本実施形態によれば、ロータ内流路234と第2マグネット43との間の距離を短くし易いため、第2マグネット43からロータ内流路234を流れる冷媒Oに伝達される熱量をより増大させることができる。したがって、第2マグネット43の温度上昇をより好適に抑制できる。そのため、第2マグネット43として、減磁が生じる温度が低い重希土類を含有しないネオジム磁石を用いる場合であっても、第2マグネット43が減磁することをより好適に抑制できる。したがって、回転電機260および駆動装置201の出力効率が低下することをより好適に抑制しつつ、第2マグネット43の製造コストが増大することを抑制できる。
【0075】
図6に示す第2仮想線V2は、軸方向に見て、第2マグネット44の第2外側面44bと平行な方向に延びる仮想直線である。すなわち、第2仮想線V2は、ロータ内流路234の周方向他方側(-θ側)に配置される第2マグネット44のロータ内流路234と対向する外側面と平行な方向に延びる仮想直線である。第2仮想線V2は、第1マグネット41のうち、第2マグネット44との間の距離が最も近い部分である、第2外側面41bの周方向他方側の端部を通過する。軸方向に見て、ロータ内流路234の周方向他方側の端部は、第2仮想線V2よりも周方向他方側に位置する。よって、本実施形態によれば、ロータ内流路234と第2マグネット44との間の距離を短くし易いため、第2マグネット44からロータ内流路234を流れる冷媒Oに伝達される熱量をより増大させることができる。したがって、第2マグネット44の温度上昇をより好適に抑制できる。そのため、上述の第2マグネット43と同様に、回転電機260および駆動装置201の出力効率が低下することをより好適に抑制しつつ、第2マグネット44の製造コストが増大することを抑制できる。
【0076】
また、第1内側面234aの周方向一方側(+θ側)の端部である第1部分234dは、第1仮想線V1よりも周方向一方側に位置する。さらに、第1内側面234aの周方向他方側(-θ側)の端部である第2部分234eは、第2仮想線V2よりも周方向他方側に位置する。よって、本実施形態によれば、各第2マグネット43,44と第1内側面234aとの間の距離を短くし易いため、各第2マグネット43,44からロータ内流路234を流れる冷媒Oに伝達される熱量をより増大させることができる。したがって、各第2マグネット43,44の温度上昇をより好適に抑制できる。
【0077】
<第3実施形態>
図7は、本実施形態の駆動装置301のロータ310の一部を示す断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
図8に示すように、本実施形態のロータコア330は、上述の第1実施形態のロータコア30と同様に、複数のコア板330bが軸方向に積層して構成される。複数のコア板330bは、複数の保持コア板330cと、複数の第1コア板330dと、を含む。第1コア板330dの構成等は、上述の第1実施形態のコア板30bの構成等と同一である。本実施形態において、複数の保持コア板330cは、軸方向に連続して積層される。本実施形態において、ロータコア330は、3枚の保持コア板330cを有する。ロータコア330が有する保持コア板330cの枚数は、2枚以下であってもよいし、4枚以上であってもよい。複数の保持コア板330cの左側(+Y側)および右側(-Y側)のそれぞれには、複数の第1コア板330dが軸方向に連続して積層されている。
図7に示すように、複数の保持コア板330cのそれぞれは、マグネット固定部336を有する。なお、第1コア板330dは、マグネット固定部を有さない。保持コア板330cのその他の構成等は、上述の第1実施形態のコア板30bのその他の構成等と同一である。本実施形態のロータコア330のその他の構成等は、上述の第1実施形態のロータコア30のその他の構成等と同一である。
【0079】
本実施形態の複数のマグネット取付部331には、1つのロータ内流路34、3つのマグネット穴50、およびマグネット固定部336が設けられる。本実施形態のロータ内流路34およびマグネット穴50の構成等は、上述の第1実施形態のロータ内流路34およびマグネット穴50の構成等と同一である。なお、本実施形態のロータ310は、低熱伝導層を有さない。また、本実施形態の複数の磁極部310Pは、1つのマグネット取付部331と、該1つのマグネット取付部331に設けられるマグネット穴50に収容される複数のマグネット40と、によって構成される。本実施形態の複数の磁極部310Pのその他の構成等は、上述の第1実施形態の複数の磁極部10Pのその他の構成等と同一である。
【0080】
マグネット固定部336は、マグネット40をマグネット穴50に固定する。マグネット固定部336は、保持コア板330cに設けられる。マグネット固定部336は、マグネット固定部337,338,339を含む。径方向において、マグネット固定部337は、第1マグネット穴51とロータ内流路34との間に配置される。マグネット固定部337は、第1マグネット41を第1マグネット穴51に固定する。マグネット固定部338は、第2マグネット穴53よりも周方向一方側(+θ側)に配置される。マグネット固定部338は、第2マグネット43を第2マグネット穴53に固定する。マグネット固定部339は、第2マグネット穴54よりも周方向他方側(-θ側)に配置される。マグネット固定部339は、第2マグネット44を第2マグネット穴54に固定する。各マグネット固定部337,338,339の構成は、配置される位置を除いて同じである。説明の簡略化のため、以下ではマグネット固定部337の構成のみを説明する。
【0081】
マグネット固定部337は、一対のマグネット保持部337a,337gを有する。つまり、複数の保持コア板330cのそれぞれは、一対のマグネット保持部337a,337gを有する。一対のマグネット保持部337a,337gは、第1マグネット41よりも径方向内側、且つ、ロータ内流路34よりも径方向外側に配置される。各マグネット保持部337a,337gは、周方向に沿って間隔をあけて配置される。各マグネット保持部337a,337gは、磁極仮想線Ldを挟んで配置される。マグネット保持部337aは、磁極仮想線Ldよりも周方向一方側(+θ側)に配置される。マグネット保持部337aは、第1マグネット41の周方向一方側の部分を保持する。マグネット保持部337gは、磁極仮想線Ldよりも周方向他方側(-θ側)に配置される。マグネット保持部337gは、第1マグネット41の周方向他方側の部分を保持する。各マグネット保持部337a,337gは、第1マグネット41を第1マグネット穴51に固定する。
【0082】
マグネット保持部337aは、貫通孔337bと、弾性変形部337cと、接触部337dと、を有する。貫通孔337bは、保持コア板330cを軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、貫通孔337bは、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる孔である。弾性変形部337cは、貫通孔337bと第1マグネット穴51との間に配置される。弾性変形部337cは、貫通孔337bと第1マグネット41との間に配置される。弾性変形部337cは、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる板状である。弾性変形部337cは、周方向の両端を固定端として径方向に弾性変形可能である。本実施形態において、弾性変形部337cの径方向外側を向く面は、第1マグネット穴51の第2内壁面51fの一部である。接触部337dは、弾性変形部337cの周方向中央部から径方向外側に突出する。接触部337dは、第1マグネット41の第2外側面41bと径方向に接触している。より詳細には、接触部337dは、第2外側面41bの周方向一方側(+θ側)の部分と径方向に接触している。
【0083】
マグネット保持部337gは、貫通孔337hと、弾性変形部337iと、接触部337jと、を有する。貫通孔337hは、保持コア板330cを軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、貫通孔337hは、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる孔である。貫通孔337hは、貫通孔337bと周方向に間隔をあけて配置される。弾性変形部337iは、貫通孔337hと第1マグネット41との間に配置される。弾性変形部337iは、磁極仮想線Ldと直交する方向に延びる板状である。弾性変形部337iは、周方向の両端を固定端として径方向に弾性変形可能である。本実施形態において、弾性変形部337iの径方向外側を向く面は、第1マグネット穴51の第2内壁面51fの一部である。接触部337jは、弾性変形部337iの周方向中央部から径方向外側に突出する。接触部337jは、第1マグネット41の第2外側面41bの周方向他方側(-θ側)の部分と径方向に接触している。
【0084】
次に、第1マグネット41を第1マグネット穴51に固定する方法について説明する。
図8に示すように、第1マグネット穴51に第1マグネット41が収容されていない状態において、接触部337d,337jは、第2内壁面51fよりも径方向外側に突出している。
図9に示すように、第1マグネット穴51に第1マグネット41が挿入されると、第1マグネット41の第2外側面41bによって、接触部337d,337jが径方向内側に押される。これにより、弾性変形部337c,337iは、径方向内側に弾性変形する。したがって、第1マグネット41には、接触部337d,337jを介して、弾性変形部337c,337iから径方向外側を向く弾性復元力が加わるため、第1マグネット41は、第1マグネット穴51の第1内壁面51eに押し付けられる。これにより、第1マグネット穴51に対して第1マグネット41が固定される。本実施形態では、上述のように、第1マグネット41を第1マグネット穴51に挿入する簡易な作業によって、第1マグネット41を第1マグネット穴51に固定できる。これと同様に、第2マグネット43を第2マグネット穴53に挿入する簡易な作業により、マグネット固定部338によって、第2マグネット43を第2マグネット穴53に固定できる。また、第2マグネット44を第2マグネット穴54に挿入する簡易な作業により、マグネット固定部339によって、第2マグネット44を第2マグネット穴54に固定できる。
【0085】
図7に示すように、軸方向に見て、ロータ内流路34は、径方向と交差する方向に延びる長孔状である。径方向に見て、ロータ内流路34は、保持コア板330cのうち一対のマグネット保持部337a,337g同士の間の部分と重なる。径方向に見て、ロータ内流路34の第1内側面34aは、保持コア板330cのうち一対のマグネット保持部337a,337g同士の間の部分と重なる。本実施形態のロータ内流路34のその他の構成等は、上述の第1実施形態のロータ内流路34のその他の構成等と同一である。
【0086】
本実施形態によれば、複数の保持コア板330cのそれぞれは、第1マグネット41よりも径方向内側、且つロータ内流路34よりも径方向外側に配置され、第1マグネット41を保持する一対のマグネット保持部337a,337gを有し、一対のマグネット保持部337a,337gは、周方向に沿って間隔をあけて配置される。マグネット保持部337a,337gは、保持コア板330cを軸方向に貫通する貫通孔337b,337hを有し、径方向に見て、ロータ内流路34は、保持コア板330cのうち一対のマグネット保持部337a,337g同士の間の部分と重なる。よって、保持コア板330cのうち貫通孔337b,337h同士の間の部分を介して、第1マグネット41の熱を、ロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達できる。そのため、ロータコア330が一対のマグネット保持部337a,337gを有する構成であっても、第1マグネット41とロータ内流路34との間の熱伝達経路が長くなることを抑制できる。よって、第1マグネット41からロータ内流路34を流れる冷媒Oに伝達される熱量が低下することを抑制できるため、第1マグネット41の温度上昇を抑制できる。そのため、第1マグネット41として、減磁が生じる温度が低い重希土類を含有しないネオジム磁石を用いる場合であっても、第1マグネット41が減磁することを抑制できる。したがって、回転電機360および駆動装置301の出力効率が低下することをより好適に抑制しつつ、第1マグネット41の製造コストが増大することを抑制できる。
【0087】
本実施形態によれば、マグネット保持部337a,337gは、貫通孔337b,337hと第1マグネット41との間に配置され、径方向に弾性変形可能な弾性変形部337c,337iと、弾性変形部337c,337iから径方向外側に突出し、第1マグネット41と接触する接触部337d,337jと、を有する。よって、上述のように、第1マグネット41を第1マグネット穴51の内部に挿入する簡易な作業によって、第1マグネット41を第1マグネット穴51に固定できる。また、本実施形態では、上述のように、第2マグネット43,44を第2マグネット穴53,54のそれぞれに挿入する簡易な作業によって、第2マグネット43,44を第2マグネット穴53,54のそれぞれに固定できる。したがって、ロータ310の製造工数が増大することを抑制できる。
【0088】
<第4実施形態>
図10は、本実施形態の駆動装置401のロータ410の一部を示す断面図である。以下の説明において、上述の第3実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
本実施形態の複数の磁極部410Pそれぞれのマグネット取付部431に設けられるロータ内流路434の周方向の寸法は、ロータ内流路434の径方向の寸法の2倍以上である。より詳細には、本実施形態の、ロータ内流路434の周方向の寸法は、ロータ内流路434の径方向の寸法の4倍程度である。また、ロータ内流路434、すなわち流路の周方向の寸法は、保持コア板430cのうち一対のマグネット保持部337a,337g同士の間の部分の周方向の寸法以上である。よって、本実施形態によれば、ロータ内流路434の周方向の寸法が、保持コア板430cのうち一対のマグネット保持部337a,337g同士の間の部分の周方向の寸法よりも小さい構成と比較して、第1内側面434aと冷媒Oとの接触面積を増大させ易い。そのため、第1マグネット41から第1内側面434aを介して冷媒Oに伝達される熱量を増大させることができる。これにより、第1マグネット41の温度上昇を抑制できる。よって、第1マグネット41として、重希土類を含有するネオジム磁石よりも減磁が生じる温度が低い重希土類を含有しないネオジム磁石を用いる場合であっても、第1マグネット41が減磁することを抑制できる。したがって、回転電機460および駆動装置401の出力効率が低下することを抑制しつつ、第1マグネット41の製造コストが増大することを抑制できる。
【0090】
また、本実施形態では、ロータ内流路434の周方向の寸法は、ロータ内流路434の径方向の寸法の2倍以上であるため、ロータ内流路434と各マグネット40との間のロータコア430の肉厚が薄くなりすぎることを抑制できる。したがって、第1マグネット41の温度上昇をより好適に抑制しつつ、ロータコア430のうち複数のマグネット40に囲まれる部分の剛性が低下することを抑制できる。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。ロータ内流路は、軸方向に見て、第1マグネットと第2マグネットとの径方向の間に位置していればどのような形状であってもよいし、どのように配置されてもよい。例えば、軸方向に見て、ロータ内流路は、円形状および矩形状等の形状であってもよい。ロータ内流路内に供給される冷媒の種類は、特に限定されない。ロータ内流路内への冷媒の供給方法は、どのような方法であってもよい。
【0092】
1つのマグネット保持部に設けられるロータ内流路の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。1つのマグネット保持部にロータ内流路が複数設けられる場合、複数のロータ内流路は、径方向に間隔を空けて並んで配置されてもよいし、周方向に間隔をあけて並んで配置されてもよい。また、ロータ穴部は設けられなくてもよい。
【0093】
マグネットの構成は本実施形態に限定されず、第1マグネットは2個以上のマグネットによって構成されてもよい。例えば、第1マグネットが2個のマグネットによって構成される場合、2個のマグネットは、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって互いに周方向に離れる方向に延び、径方向外側に向かうにしたがって周方向に広がるV字形状に沿って配置されてもよい。
【0094】
冷媒流路の構成は本実施形態に限定されず、駆動装置内を循環する冷媒によって、ステータおよびマグネットを冷却できるならば、どのような構成であってもよい。
【0095】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、車両以外の機器に搭載されてもよい。本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機、および駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。
【0096】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0097】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心として回転可能なロータであって、複数のマグネット穴、および冷媒が流れる流路を有するロータコアと、複数の前記マグネット穴のそれぞれに収容される複数のマグネットと、を備え、複数の前記マグネット穴および前記流路は、それぞれ、軸方向に延び、複数の前記マグネットは、第1マグネットと、第2マグネットと、を含み、前記複数のマグネット穴は、前記第1マグネットを収容する第1マグネット穴と、前記第2マグネットを収容する第2マグネット穴と、を含み、前記第1マグネットは、前記第2マグネットよりも径方向外側に配置され、前記流路は、前記第1マグネットと前記第2マグネットとの径方向の間に位置し、径方向と交差する方向に延びる孔である、ロータ。
(2) 軸方向に見て、前記流路の周方向の寸法は、前記流路の径方向の寸法の2倍以上である、(1)に記載のロータ。
(3) 前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、軸方向に見て、前記第1内側面の周方向両端は、それぞれ、周方向外側に向かうにしたがって、前記第1マグネットから離れる曲面により構成される、(1)または(2)に記載のロータ。
(4) 軸方向に見て、前記第1内側面の周方向両端は、曲率半径が前記流路の径方向の寸法の1/2以上である円弧により構成される、(3)に記載のロータ。
(5) 前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、前記第1内側面と前記第1マグネットとの間の距離は、前記第1内側面と前記第2マグネットとの間の距離よりも短い、(1)から(4)のいずれか一項に記載のロータ。
(6) 周方向に沿って配置される複数の磁極部を備え、複数の前記磁極部のそれぞれは、前記第1マグネットと、一対の前記第2マグネットと、を有し、軸方向に見て、一対の前記第2マグネットは、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって互いに周方向に離れる方向に延び、周方向において、前記流路は、一対の前記第2マグネットの間に配置され、軸方向に見て、前記流路の周方向一方側に配置される前記第2マグネットの前記流路と対向する外側面と平行であり、且つ、前記第1マグネットのうち前記流路の周方向一方側に配置される前記第2マグネットとの間の距離が最も近い部分を通過する仮想直線を第1仮想線として、軸方向に見て、前記流路の周方向一方側の端部は、前記第1仮想線よりも周方向一方側に位置する、(1)から(5)のいずれか一項に記載のロータ。
(7) 軸方向に見て、前記流路の周方向他方側に配置される前記第2マグネットの前記流路と対向する外側面と平行であり、且つ、前記第1マグネットのうち前記流路よりも周方向他方側に配置される前記第2マグネットとの間の距離が最も近い部分を通過する仮想直線を第2仮想線として、軸方向に見て、前記流路の周方向他方側の端部は、前記第2仮想線よりも周方向他方側に位置する、(6)に記載のロータ。
(8) 前記流路は、径方向内側を向く第1内側面を有し、軸方向に見て、前記第1内側面の周方向一方側の端部は、前記第1仮想線よりも周方向一方側に位置し、前記第1内側面の周方向他方側の端部は、前記第2仮想線よりも周方向他方側に位置する、(7)に記載のロータ。
(9) 前記ロータコアは、複数の保持コア板を含む複数のコア板が軸方向に積層して構成され、複数の前記保持コア板は、軸方向に連続して積層され、複数の前記保持コア板のそれぞれは、前記第1マグネットよりも径方向内側、且つ前記流路よりも径方向外側に配置され、前記第1マグネットを保持する一対のマグネット保持部を有し、一対の前記マグネット保持部は、周方向に沿って間隔をあけて配置され、前記マグネット保持部は、前記保持コア板を軸方向に貫通する貫通孔を有し、径方向に見て、前記流路は、前記保持コア板のうち一対の前記マグネット保持部同士の間の部分と重なる、(1)から(8)のいずれか一項に記載のロータ。
(10) 前記流路の周方向の寸法は、前記保持コア板のうち一対の前記マグネット保持部同士の間の部分の周方向の寸法以上である、(9)に記載のロータ。
(11) 前記マグネット保持部は、前記貫通孔と前記第1マグネットとの間に配置され、径方向に弾性変形可能な弾性変形部と、前記弾性変形部から径方向外側に突出し、前記第1マグネットと接触する接触部と、を有する、(9)または(10)に記載のロータ。
(12) (1)から(11)のいずれか一項に記載のロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、を備える、回転電機。
(13) (12)に記載の回転電機と、前記ロータに接続されるギヤ機構と、を備える、駆動装置。
【符号の説明】
【0098】
1,201,301,401…駆動装置、10,210,310,410…ロータ、10P,210P,310P,410P…磁極部、30,230,330,430…ロータコア、30b,330b…コア板、330c…保持コア板、337a,337g…マグネット保持部、337b,337h…貫通孔、337c,337i…弾性変形部、337d,337j…接触部、34,234,434…ロータ内流路(流路)、34a,234a,434a…第1内側面、40…マグネット、41…第1マグネット、43,44…第2マグネット、50…マグネット穴、51…第1マグネット穴、53,54…第2マグネット穴、60,260,360,460…回転電機、61…ステータ、70…ギヤ機構、J…中心軸線、O…冷媒、V1…第1仮想線、V2…第2仮想線