(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145655
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】麺類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058104
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片山 康二朗
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥悟
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB07
4B046LC01
4B046LC02
4B046LC17
4B046LC20
4B046LG01
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG29
4B046LG34
4B046LP02
4B046LP03
4B046LP12
4B046LP15
4B046LP34
4B046LP40
4B046LP57
4B046LP80
4B046LQ04
4B046LQ10
(57)【要約】
【課題】本発明は、風味、食感に優れ、製麺性に優れた難消化性でん粉を含む麺類及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】難消化性でん粉と小麦粉を混合した麺類の主原料粉の一部を湯種とした後、麺生地に配合することで、湯種と残りの麺生地原料との混捏時の湯種の麺生地への分散性が改善するだけでなく、圧延時の生地の伸展性が改善し、製麺性に優れる。また、予め、難消化性でん粉を小麦粉と共に湯種としておくことで、難消化性でん粉由来の風味の悪さや、ざらつきや粉っぽい調理感のない食感が改善される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性でん粉と小麦粉とを含む湯種を含むことを特徴とする麺類。
【請求項2】
前記湯種の前記難消化性でん粉と前記小麦粉の比率が1:9~9:1であることを特徴とする請求項1記載の麺類。
【請求項3】
前記麺類の主原料粉の内、前記湯種に含まれる主原料粉の割合が10~50重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の麺類。
【請求項4】
主原料粉の内、難消化性でん粉と小麦粉を混合した粉体から湯種を作製する湯種作製工程と、
前記湯種作製工程で作製した前記湯種と残りの主原料粉とを混捏し、麺生地を作製する麺生地作製工程と、
作製した麺生地を常法により製麺する製麺工程と、を含むことを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項5】
前記湯種の前記難消化性でん粉と前記小麦粉の比率が1:9~9:1であることを特徴とする請求項4記載の麺類の製造方法。
【請求項6】
前記麺類の主原料粉の内、前記湯種に含まれる主原料粉の割合が10~50重量%であることを特徴とする請求項4または5記載の麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性でん粉を含む麺類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向が高まり、低カロリーの食品だけでなく、栄養学的な面で食物繊維を多く摂取できる食品が多く提案されている。
【0003】
麺類においても食物繊維を含有する麺が提案されており、食物繊維の種類としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、低分子のセルロース、キトサン、サイリウム種皮及び難消化性でん粉(レジスタントスターチ)などが挙げられる。
【0004】
この内、難消化性でん粉は、アミラーゼ消化に対して耐性のあるでん粉であり、ハイアミロースでん粉、老化でん粉、湿熱処理でん粉及び強い架橋処理を施したものやエーテル置換したものなどの化学的に改変された加工でん粉などがあり、食物繊維を含有する麺類にも使用されている(例えば特許文献1及び2)
【0005】
特許文献1は、難消化性でん粉を食物繊維成分として使用した技術であり、穀粉と、60重量%以上のレジスタントスターチを含むレジスタントスターチ含有でん粉とを含有することを特徴とする麺類について記載されている。また、レジスタントスターチとして、ハイアミロースコーンスターチ及びその誘導体の湿熱処理でん粉が記載されている。
【0006】
同じく特許文献2は、難消化性でん粉を食物繊維成分として使用した技術であり、でん粉を高度に架橋した難消化性でん粉を麺原料粉に対して10~30重量%添加し、難消化性成分を含有することを特徴とする麺類について記載されている。また、難消化性でん粉として、高度に架橋された膨潤度が0.4~0.8mlの架橋でん粉が記載されている。
【0007】
これらの難消化性でん粉を麺に使用した場合、製麺性や食感、臭い等で他の食物繊維素材より優れているが、糊化しづらい性質のため、ざらつきや粉っぽさを強く感じるといった課題があった。この問題を改善するために、様々な検討がなされている。
【0008】
例えば、特許文献3では、低糖質でありながらも優れた食感を有する麺類を提供する技術として、小麦、タピオカ、トウモロコシ及び甘藷のいずれか1つ以上に由来する難消化性でん粉10~60質量%と、原料でん粉に対して0.1℃以上糊化開始温度が低い加工でん粉5~30質量%とを含有し、かつ蛋白質含量が8~20質量%である、麺用ミックスが開示されている。
【0009】
また、特許文献4では、レジスタントスターチの使用によって低カロリーでありながらも食感が良好で、且つ茹で歩留まりの安定性に優れる麺類を製造し得る、麺生地及び麺類用穀粉組成物を提供する技術として、レジスタントスターチを含有する穀粉組成物と、水とを含有し、該穀粉組成物における該レジスタントスターチの含有量が5質量%以上である麺生地であって、前記穀粉組成物がさらに、α化でん粉及びα化穀粉からなる群から選択される1種以上のα化穀粉類を含有する麺生地が開示されている。
【0010】
一方で、製パンなどで用いられる湯種を使用した技術も開示されている。
【0011】
例えば、特許文献5では、粘弾性に優れていてソフトでモチモチしており且つ滑らかさに富んだ良好な食感を有し、小麦粉本来の食味や風味に優れた麺類の製造方法を提供する技術として、小麦粉と水分とを含有し、温度が40~150℃である前生地を製造し、この前生地に小麦粉をさらに加えて製造した本生地を使用して麺線を製造することを特徴とする麺類の製造方法が開示されている。
【0012】
また、特許文献6では、粘弾性に富んだ食感を有し、風味が向上され、且つ製麺適性に優れた麺類を製造する技術として、穀粉と水とを含み、総量に対して水分量が50~80%である麺類品質改良剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10-313804号公報
【特許文献2】特開2006-129790号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2018/216706号公報
【特許文献4】国際公開番号WO2018/143090号公報
【特許文献5】特開2004-105150号公報
【特許文献6】特開2016-127813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、風味、食感に優れ、製麺性に優れた難消化性でん粉を含む麺類及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、難消化性でん粉を用いる低糖質、低カロリーの麺の課題である製麺性や食感の改善について鋭意研究した結果、偶然にも難消化性でん粉と小麦粉と共に湯種を作製したところ、従来の方法に比べ、製麺性や食感に優れていることを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち、難消化性でん粉と小麦粉とを含む湯種を含むことを特徴とする麺類。
【0017】
また、本発明に係る湯種の難消化性でん粉と小麦粉の比率は、1:9~9:1であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る麺類の主原料粉の内、湯種に含まれる主原料粉の割合は、10~50重量%であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る麺類の製造方法としては、主原料粉の内、難消化性でん粉と小麦粉を混合した粉体から湯種を作製する湯種作製工程と、前記湯種作製工程で作製した前記湯種と残りの主原料粉とを混捏し、麺生地を作製する麺生地作製工程と、作製した麺生地を常法により製麺する製麺工程と、を含むことを特徴とする麺類の製造方法が挙げられる。
【0020】
また、本発明に係る麺類の製造方法としては、湯種の難消化性でん粉と小麦粉の比率が1:9~9:1であることが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る麺類の製造方法としては、麺類の主原料粉の内、湯種に含まれる主原料粉の割合が10~50重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、風味、食感に優れ、製麺性に優れた難消化性でん粉を含む麺類及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0024】
1.主原料粉
本発明に係る主原料粉としては、小麦粉、難消化性でん粉は必須である。
【0025】
(小麦粉)
本発明に係る主原料粉である小麦粉としては、特に限定はなく、薄力、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉などを使用することができる。また、粉の等級についても1等粉、2等粉、3等粉、全粒粉なども使用することができる。粉の粒度についてもフラワーだけでなくセモリナ粉なども使用することができる。本発明に係る小麦粉は、湯種作製時の原料として使用するだけでなく、麺生地作製時の主原料粉として湯種と混合して使用する。
【0026】
(難消化性でん粉)
本発明に係る主原料粉である難消化性でん粉は、食物繊維含量が60重量%以上のものを用いる。難消化性でん粉としては、高アミロースデンプンの湿熱処理でん粉、リン酸架橋でん粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉が挙げられる。でん粉の原料種としては、馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦でん粉及び米粉でん粉などが挙げられる。特に好ましくは、リン酸架橋でん粉または/及びリン酸モノエステルリン酸架橋でん粉であり、食物繊維含量が80重量%以上のものを用いることで、難消化性でん粉の添加量が抑えられるため、食感、風味の面でも好ましい。難消化性でん粉は湯種作製時の主原料粉として使用するが、難消化性でん粉の添加量が多い場合は、湯種だけでなく一部を麺生地作製時の主原料粉として使用することができる。
【0027】
(その他の主原料粉)
これら以外として、そば粉、大麦粉、ライムギ粉、米粉、ともうもろこし粉等の穀粉及び馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、コーンスターチ等の各種でん粉を単独で使用してもまたは混合して使用してもよい。前記でん粉として、生でん粉、α化でん粉並びにアセチル化でん粉、エーテル化でん粉及び低架橋でん粉等の加工でん粉等を使用することもできる。また、本発明においては、製麺性改善やタンパク質源として添加するグルテンや大豆蛋白、卵白などの蛋白素材も主原料粉とする。その他の主原料粉は、湯種作製時の主原料粉として使用してもよいが、基本的には、麺生地作製時の主原料粉として使用することが好ましい。
【0028】
2.その他の原料
本発明に係るその他の原料は、特に限定はなく、麺の製造に一般に使用されている食塩やリン酸塩類、アルカリ剤、各種増粘剤、グルテンや卵白等の麺質改良剤、食用油脂、色素及び保存料等を添加することができる。また、栄養面を強化するために、ビタミンやミネラル等の他の栄養素も添加することができる。これらの原料は、湯種作製時に主原料粉と一緒に添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよく、麺生地作製時に主原料粉と一緒に添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0029】
3.湯種作製工程
本発明に係る湯種は、主原料粉として小麦粉と難消化性でん粉を混合したものを使用する。湯種に難消化性でん粉が含まれると通常の小麦粉のみで作製した湯種よりもべたつきが抑えられ、湯種の切れがよくなり、後述する麺生地作製工程で湯種が麺生地中に均一に分散されやすくなる。また、通常、湯種は作製後に冷却して老化させることでべたつきを抑えて、麺の製造に使用されている。本発明に係る湯種は、通常の湯種同様に霊薬して使用してもよいが、難消化性でん粉を含むことで湯種のべたつきが抑えられるため、老化させなくても粗熱を取るだけで使用でき、製造時間を短縮することができる。また、通常、難消化性でん粉を含む麺を製麺するにあたり、圧延などの製麺性の改善や難消化性でん粉由来の食感の改善のために、でん粉やグルテン、増粘多糖類などを多く添加する必要があるが、湯種を使用する場合は、これらの原料を添加しなくても製麺性や食感の問題点が改善されるため、これらの原料の添加量を低減が可能となり、風味や食感に優れた麺類を作製できる。
【0030】
難消化性でん粉と小麦粉の添加量の比としては、1:9~9:1が好ましい。小麦粉の割合が多すぎると難消化性でん粉の添加量が少なくなり、食物繊維量としての添加量が少なくなるだけでなく、湯種自体がべたつくため、後述する生地作製工程で湯種が均質に混ざりにくくなる。逆に難消化性でん粉の量が多すぎると後述する生地作製工程で湯種が均質に混ざりやすくなるものの湯種による難消化性でん粉の食感改善効果が得られにくくなる。
【0031】
本発明に係る湯種の作製方法は、常法による湯種の作製方法を使用することができる。具体的には、湯種の主原料粉に対して85~100℃の熱水を添加してミキサーで混捏する方法、ミキサーに温水を入れて混捏しながら加熱する方法などが挙げられる。ミキサーの種類としては、ピンミキサーやパン生地用のスパイラルミキサーやフォークミキサーなど何れのミキサーも使用できる。また、加水量としては湯種の主原料粉の重量に対して50~100重量%添加することが好ましい。多すぎると湯種がべたつき後述する製麺工程で湯種が麺生地中にうまく分散しない。少なすぎると湯種による難消化性でん粉の食感改善効果が得られにくくなる。
【0032】
また、湯種の生地の温度としては55℃以上が好ましい。55℃以下であると湯種による難消化性でん粉の食感改善効果が得られにくくなる。より好ましくは、小麦粉の糊化温度である60℃以上が好ましい。
【0033】
作製した湯種は、乾燥しないようにビニール等に入れて冷蔵庫等で冷却して生地を老化させてから使用してもよい。本発明に係る湯種は、特に湯種を老化させなくても湯種のべたつきが抑えられているので、粗熱を取る程度で使用することもできる。
【0034】
4.麺生地作製工程
湯種と麺生地作製用の残りの主原料粉とその他の原料を混練することによって麺生地(ドウ)を製造する。より具体的には、湯種と、麺生地用の小麦粉、でん粉等の主原料粉にさらに水に食塩、リン酸塩類及びアルカリ剤等の副原料を溶解させた練り水を加え、ミキサーを用いて各原料が均一に混ざるように良く混捏してドウを製造する。このとき、真空ミキサーなどにより減圧下でミキシングを行ってもよい。
【0035】
このとき、主原料粉の内、湯種に含まれる主原料粉の割合は、10~50重量%の範囲が好ましい。湯種に含まれる主原料粉が多すぎると湯種が均質に混ざりにくく、製麺性も悪くなりやすい。逆に湯種に含まれる主原料粉が少なすぎると製麺性は良くなるものの難消化性でん粉の含有量が少なくなる。
【0036】
5.麺線作製工程
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウを複合等により麺帯化した後、ロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロール又は包丁切りにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。ロールを用いて製麺する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。複数の麺帯を合わせて多層構造とする場合には、内層麺帯に湯種を使用した麺生地を用い、外層麺帯には湯種を使用していない麺生地を用いることもできる。
【0037】
3.その他工程
作製した麺線を所定の長さに切断し、打ち粉をつけて生めんとしてもよく、また、作製した麺線を茹でた茹でめん、作製した麺線を蒸した蒸しめん、茹でめんまた蒸しめんを冷凍した冷凍めんとすることもできる。さらには、作製した麺線を乾燥し、所定の長さに切断した乾めんや、麺線状態で蒸煮し、所定の長さに切断後、フライまたは熱風乾燥により乾燥して即席めんとすることもできる。
【0038】
即席めんの場合は、具体的には、フライ乾燥処理の場合は通常130~160℃で1~3分間、熱風乾燥処理の場合は通常60~120℃で15~180分間程度の乾燥処理する方法が例示できる。乾燥処理後の水分量としては、フライ乾燥処理の場合で1~5重量%、熱風乾燥処理の場合で2~10質量%とすればよい。
【0039】
以上のように、本発明により、風味、食感に優れ、製麺性に優れた難消化性でん粉を含む麺類及びその製造方法を提供することができる。
【0040】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例0041】
<実験1>湯種の効果の検討
(実施例1-1)
湯種の主原料粉として準強力粉50gと難消化性でん粉(パインスターチRT:松谷化学社製、以降同じ)250gをパン用の縦型ミキサー(関東混合機社製:HPI-20M)で粉体混合し、そこに食塩15gを210gの沸騰水に溶かした練水を入れ、低速で60秒間攪拌し水分を全体に行き渡らせた後、中速で30秒間練り上げた。この時生地の温度は、62℃であった。以降の湯種の作製時の生地の温度は、いずれの試験区もおおよそ62℃±1℃の範囲であった。
【0042】
作製した湯種は、ラップにくるんで水分の蒸散を防ぎ、粗熱を取った後、4℃の冷蔵庫で12時間冷却した。
【0043】
残りの麺生地の主原料粉として準強力粉700gと冷却した湯種(準強力粉50g、難消化性でん粉250g)と、かん水製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)2.5g及び重合リン酸塩0.4gを水で溶解し210mlにメスアップした練水を加え、麺用のピンミキサーで15分間混捏し、麺生地を作製した。
【0044】
混捏した麺生地を複合ロールで複合して12mmの麺帯とし、15分間静置した後、麺帯を圧延ロールにて5回の圧延で0.80mmの厚さとなるように圧延し、20番の角刃の切り刃で麺帯を切り出し、麺線とした。
【0045】
作製した麺線を蒸機にて270kg/hの蒸気流量で2分間蒸煮し、1L当たり100gの食塩と15gのグルタミン酸ナトリウムを溶解した着味液に5秒浸漬し、長さが30cmとなるように麺線をカットした後、フライ用リテーナーにカットした麺線100gを充填し、150℃にパーム油を加温したフライヤーにフライ用リテーナーを2分30秒間浸漬してフライ乾燥し、即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0046】
(比較例1-1)
準強力粉650g、難消化性でん粉250g、アセチル化タピオカでん粉100gからなる主原料粉1kgに、食塩15g、かん水製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)2.5g及び重合リン酸塩0.4gを水で溶解し360mlにメスアップした練水を加え、麺用のピンミキサーで15分間混捏し、麺生地を作製した。以降の工程は実施例1-1の方法に従って即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0047】
(比較例1-2)
準強力粉600g、難消化性でん粉250g、アセチル化タピオカでん粉100g、グルテン50gからなる主原料粉1kgに、食塩15g、かん水製剤(炭酸ナトリウム6:炭酸カリウム4)2.5g及び重合リン酸塩0.4gを水で溶解し360mlにメスアップした練水を加え、麺用のピンミキサーで15分間混捏し、麺生地を作製した。以降の工程は実施例1-1の方法に従って即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0048】
(比較例1-3)
アセチル化タピオカでん粉100gをα化馬鈴薯でん粉100gとする以外は比較例1-2の方法に従って即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0049】
(比較例1-4)
アセチル化タピオカでん粉100gをα化小麦粉100gとする以外は比較例1-2の方法に従って即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0050】
(比較例1-5)
湯種の主原料粉を準強力粉300gとし、麺生地の主原料粉を準強力粉450g、難消化性でん粉250gとする以外は実施例1-1の方法に従って即席めん(フライ麺)サンプルを作製した。
【0051】
各試験区について、製麺性、食感、風味について評価を行った。評価については、ベテランのパネラー6人によってオープンパネル方式で行った。
【0052】
製麺性については、麺生地作製時の混捏具合と作製した麺生地の圧延具合について評価を行った。評価基準は下記の通りである。
(混捏)
◎:容易に均質に混捏できる。
〇:均質に混捏可能
△:やや混ざりムラがある
×:明らかに混ざりムラがあり不可
(圧延)
◎:容易に圧延できる。
〇:問題なく圧延可能
△:圧延可能だが切れやすい
×:圧延中に切れが多数発生し不可
【0053】
食感、風味に関しては、作製した即席めんサンプルをカップに入れ、400mlの熱湯を入れ、蓋をして3分間静置したものを喫食し、評価を行った。
【0054】
食感については下記の通り、5段階で評価を行った。
(食感)
5:適度な弾力があり、難消化性でん粉由来のざらつき感や粉っぽさがなく非常に良好
4:やや弾力が弱いか、難消化性でん粉由来のざらつき感や粉っぽさを感じるが概ね良好
3:弾力が弱いか、難消化性でん粉由来のざらつき感や粉っぽさを感じるが概ね可
2:弾力がかなり弱いか、難消化性でん粉由来のざらつき感や粉っぽさを強く感じ不可
1:著しく弾力が弱いか、著しく難消化性でん粉由来のざらつき感や粉っぽさを感じ不可
【0055】
風味については下記の通り、評価を行った。
(風味)
◎:小麦粉由来の風味が強く非常に良好
〇:難消化性でん粉やその他の添加物の風味があるが概ね小麦粉由来の風味を感じ良好
△:小麦粉由来の風味は感じるが、難消化性でん粉やその他の添加物の風味が強い
×:著しく小麦粉由来の風味にかけ不可
【0056】
実験1の評価結果を下記に示す。
【0057】
【0058】
実施例1-1で示すように、難消化性でん粉を使用した湯種を使用した試験区は、湯種が比較例1-5と比べ柔らかく、容易に均質に混捏でき、圧延も良好で製麺性に優れ、食感も僅かに粉っぽさはあるものざらつきはほとんどなく、弾力のある良好な食感で、風味も難消化性でん粉由来の風味を感じず、小麦粉の風味を強く感じ非常に良好であった。
【0059】
それに対し、湯種を使用しない比較例1-1の試験区では、難消化性でん粉を添加すると圧延時の伸展性に欠け、製麺が困難であった。また、食感もざらつきが強く、弾力性に欠け、風味も難消化性でん粉由来の風味が強く感じた。
【0060】
比較例1-1の試験区にグルテンを添加した比較例1-2の試験区では、圧延時の伸展性が改善し、製麺性は改善するもの、難消化性でん粉由来のざらつきや粉っぽさが強く、弾力は若干強くなるが不十分な食感であった。風味に関しても難消化性でん粉の風味に加え、グルテンの風味が付与された。
【0061】
比較例1-3、比較例1-4は、比較例1-2のアセチル化タピオカでん粉をα化馬鈴薯でん粉、α化小麦粉に変えた試験区であるが、比較例1-2よりも難消化性でん粉由来のざらつきや粉っぽさが低減されてたが、実施例1-1よりも悪く、風味についても難消化性でん粉由来の風味を強く感じた。
【0062】
比較例1-4は、小麦粉のみの湯種を使用した試験区であるが、小麦粉のみの湯種は硬く、混捏工程で湯種が生地に上手く混ざらず、圧延も可能だが生地が不均質で切れやすかった。食感に関しては、比較例1-3、1-4よりも改善されているが、難消化性でん粉由来の風味は強く感じた。
【0063】
<実験2>湯種の主原料粉の比率
(実施例2-1)~(実施例2-5)
湯種の主原料粉の割合を下記表2の配合とし、実施例1-1と同様に湯種を作製した。作製した湯種を表2の麺生地の配合に従って、実施例1-1の方法と同様に即席めんサンプルを作製した。実験2の評価についても、実験1同様に行った。評価結果についても表2に記載する。
【0064】
【0065】
実験2で示すように、湯種の難消化性でん粉と小麦粉の割合を振った試験結果から、難消化性でん粉の比率が高いほど製麺性が改善した。食感や風味に関しては、難消化性でん粉の添加量が各試験区一定でないため、単純に比較できないが、難消化性でん粉の比率が高いほど食感や風味が悪くなった。しかしながら、難消化性でん粉由来の比率が高い場合は、湯種の添加量を少なくすることが可能であるため、同一の難消化性でん粉の添加量であれば、食感、風味に関しては、さほど悪くならないと考える。実験2の結果から難消化性でん粉と小麦粉との比率は9:1~1:9の範囲が好ましいと考える。
【0066】
<実験3>
(実施例3-1)~(実施例3-2)
湯種の主原料粉の割合を下記表3の配合とし、実施例1-1と同様に湯種を作製した。作製した湯種を表3の麺生地の配合に従って、実施例1-1の方法と同様に即席めんサンプルを作製した。実験3の評価についても、実験1同様に行った。評価結果についても表3に記載する。
【0067】
【0068】
実験3の結果から、湯種の添加量が多くなるほど混捏時に混ざりにくく、製麺性が劣る結果となった。よって、湯種の主原料粉の割合は、麺生地全体の主原料粉の50重量%以下が好ましいと考える。逆に湯種の添加量が少ないと難消化性でん粉の添加量も少なくなるため、湯種の主原料粉の割合は麺生地全体の主原料粉の10重量%以上が好ましいと考える。