IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145666
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20241004BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01L19/00 A
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058117
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 祐希
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE12
2F055FF21
2F055GG11
2F055HH08
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112FA07
(57)【要約】
【課題】過大圧によるダイアフラムの破損を防ぐためにダイアフラムの変位を制限する保護機構にダイアフラムが押し当てられた際のセンサ出力の変化を抑制する。
【解決手段】この圧力センサは、ダイアフラム101、歪計測部102、保護機構103を備え、歪計測部102の形成箇所より内側の領域の歪計測部102の近傍における保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に、溝104が設けられている。保護機構103に形成される複数の凸部105は、溝104の内側の領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に形成されている。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受けるダイアフラムと、
前記ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、前記ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、
圧力を受けた前記ダイアフラムが変位する際に前記ダイアフラムの受圧側と反対側の面と当接して前記ダイアフラムの過大な変位を制限する保護機構と、
前記歪計測部の形成箇所より内側の領域の前記歪計測部の近傍における前記保護機構の前記ダイアフラムに向かい合う面に設けられた溝と
を備える圧力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
平面視で前記ダイアフラムの周方向の前記溝の長さは、平面視で前記ダイアフラムの周方向の前記歪計測部の長さより大きい圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧力センサにおいて、
前記溝の内側の領域の前記保護機構の前記ダイアフラムに向かい合う面に離散的に形成された複数の凸部をさらに備える圧力センサ。
【請求項4】
請求項3記載の圧力センサにおいて、
前記複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路と前記溝とを接続する接続路をさらに備える圧力センサ。
【請求項5】
請求項1または2記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室をさらに備え、
前記保護機構は、前記2つのダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている圧力センサ。
【請求項6】
請求項1または2記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、
前記保護機構は、各々の前記ダイアフラムに対応して設けられ、
前記ダイアフラムの各々において、圧力を受けた前記ダイアフラムが変位する側に設けられたダイアフラム室と、
前記2つのダイアフラム室を連通する連通路と、
前記2つのダイアフラム室および前記連通路に充填された圧力伝達物質と
をさらに備え、
前記保護機構は、前記ダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている
圧力センサ。
【請求項7】
請求項3記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室をさらに備え、
前記保護機構は、前記2つのダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている圧力センサ。
【請求項8】
請求項3記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、
前記保護機構は、各々の前記ダイアフラムに対応して設けられ、
前記ダイアフラムの各々において、圧力を受けた前記ダイアフラムが変位する側に設けられたダイアフラム室と、
前記ダイアフラム室を連通する連通路と、
前記ダイアフラム室および前記連通路に充填された圧力伝達物質と
を備え、
前記保護機構は、前記ダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている圧力センサ。
【請求項9】
請求項8記載の圧力センサにおいて、
前記複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路は、前記連通路と前記保護機構の周端部との間を連通する通路とされている圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力を受けたダイアフラムのたわみ量、すなわち変位より圧力値を出力する圧力センサは、ガス種依存性が少ないことから、半導体設備をはじめ、工業用途で広く使用されている。この種の圧力センサには、ダイアフラムの変位を歪として検出し、検出した歪から圧力値を出力する歪式がある。
【0003】
ところで、ダイアフラムに過大圧が加わるとダイアフラムの破損を招く場合がある。この破損を防ぐため、ダイアフラムの変位を制限する保護機構を用いる技術がある。過大圧を受けてダイアフラムが大きく変位しようとしても、ダイアフラムが保護機構に当接(着底)してダイアフラムのこれ以上の変位を規制し、ダイアフラムの破損を防ぐ。また、この種の保護機構を設ける場合、過大圧を受けたダイアフラムは、保護機構に押しつけられて密着するため、過大圧から開放されてもダイアフラムが保護機構から直ちには離間せず、出力が復帰に遅れが発生する場合がある。
【0004】
この遅れを防ぐために、保護機構のダイアフラムが押しつけられる面に、複数の凸部を離散的に形成している(特許文献1)。この技術では、隣り合う凸部の間の通路を、保護機構に設けられているダイアフラム室への連通孔の周部と保護機構の周端部との間の連通路としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-071068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した技術において、保護機構にダイアフラムが押し当てられた際に、センサ出力が変化していることが判明した。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、過大圧によるダイアフラムの破損を防ぐためにダイアフラムの変位を制限する保護機構にダイアフラムが押し当てられた際のセンサ出力の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧力センサは、変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受けるダイアフラムと、ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、圧力を受けたダイアフラムが変位する際にダイアフラムの受圧側と反対側の面と当接してダイアフラムの過大な変位を制限する保護機構と、歪計測部の形成箇所より内側の領域の歪計測部の近傍における保護機構のダイアフラムに向かい合う面に設けられた溝とを備える。
【0009】
上記圧力センサの一構成例において、平面視でダイアフラムの周方向の溝の長さは、平面視でダイアフラムの周方向の歪計測部の長さより大きい。
【0010】
上記圧力センサの一構成例において、溝の内側の領域の保護機構のダイアフラムに向かい合う面に離散的に形成された複数の凸部をさらに備える。
【0011】
上記圧力センサの一構成例において、複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路と溝とを接続する接続路をさらに備える。
【0012】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室をさらに備え、保護機構は、2つのダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0013】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、保護機構は、各々のダイアフラムに対応して設けられ、ダイアフラムの各々において、圧力を受けたダイアフラムが変位する側に設けられたダイアフラム室と、2つのダイアフラム室を連通する連通路と、2つのダイアフラム室および連通路に充填された圧力伝達物質とをさらに備え、保護機構は、ダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0014】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室をさらに備え、保護機構は、2つのダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0015】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、保護機構は、各々のダイアフラムに対応して設けられ、ダイアフラムの各々において、圧力を受けたダイアフラムが変位する側に設けられたダイアフラム室と、ダイアフラム室を連通する連通路と、ダイアフラム室および連通路に充填された圧力伝達物質とを備え、保護機構は、ダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0016】
上記圧力センサの一構成例において、複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路は、連通路と保護機構の周端部との間を連通する通路とされている。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、歪計測部の形成箇所より内側の領域の歪計測部の近傍における保護機構のダイアフラムに向かい合う面に溝を設けたので、過大圧によるダイアフラムの破損を防ぐためにダイアフラムの変位を制限する保護機構にダイアフラムが押し当てられた際のセンサ出力の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図2A図2Aは、従来構造の圧力センサのダイアフラムが保護機構に当接する前のダイアフラムに生じる応力について説明するための説明図である。
図2B図2Bは、従来構造の圧力センサのダイアフラムが保護機構に当接した後のダイアフラムに生じる応力について説明するための説明図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る圧力センサのダイアフラムが保護機構に当接した後のダイアフラムに生じる応力について説明するための説明図である。
図4A図4Aは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す平面図である。
図4C図4Cは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す平面図である。
図5A図5Aは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す平面図である。
図5C図5Cは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る圧力センサについて図1A図1Bを参照して説明する。この圧力センサは、ダイアフラム101、歪計測部102、保護機構103を備える。
【0020】
ダイアフラム101は、変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受ける。ダイアフラム101は、ダイアフラム基板121の一部に形成されている。また、ダイアフラム基板121は、基台122の上に配置されている。基台122には、凹面123が形成され、凹面123とダイアフラム基板121との間にダイアフラム室124が形成される。ダイアフラム基板121のダイアフラム室124で規定される領域が、ダイアフラム101となる。基台122に形成されている凹面123は、例えば、平面視円形とされたなだらかにくぼんでいる領域である。凹面123は、基台122の平面に垂直な断面の形状が湾曲している。凹面123は、例えば、球の内周面の一部を切り出した形状である(ダイアフラム変形形状に形成した曲面(非球面))。
【0021】
歪計測部102は、ダイアフラム101の周端部近傍に設けられ、ダイアフラム101の歪みを測定(計測)する。歪計測部102は、例えば、よく知られたピエゾ抵抗による圧力検出素子(ピエゾ抵抗素子)から構成することができる。また、歪計測部102は、歪みゲージから構成することができる。図示していないが、歪計測部102が計測した歪(センサ出力)より、ダイアフラム101が測定対象から受けた圧力を求める圧力算出部を備えることができる。
【0022】
保護機構103は、圧力を受けたダイアフラム101が変位する側に設けられてダイアフラム101の過大な変位を制限する。受圧したダイアフラム101は、変位の過程で保護機構103に押し当てられる状態となり、これ以上は変位することが制限される。保護機構103は、凹面123に設けられている。また、保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面には、複数の凸部105が形成されている。複数の凸部105は、離散的に形成されている。
【0023】
さらに、この圧力センサは、歪計測部102の形成箇所より内側の領域の歪計測部102の近傍における保護機構103(凹面123)のダイアフラム101に向かい合う面に、溝104が設けられている。複数の凸部105は、溝104の内側の領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に形成されている。溝104は、複数の凸部105が形成されている領域と、歪計測部102が形成されている箇所との間に配置する。
【0024】
例えば、複数の凸部105が形成されている領域(保護機構103)の中心と歪計測部102の中心とを通る直線(仮想)の延長線上に、溝104の中心部が配置される状態とする。例えば、平面視円形とされているダイアフラム101の周方向に等間隔で4つの歪計測部102を設けることができる。この場合、4つの歪計測部102の各々に対応するように、複数の凸部105が形成されている平面視で略円形の領域の周方向に等間隔で4つの溝104を設けることができる。また、複数の凸部105が形成されている平面視で略円形の領域を囲う全周に設けることができる。
【0025】
溝104は、平面視長方形あるいは円弧形状とすることができる。長方形とされている溝104の長辺は、周方向に延在している。溝104の周方向(長辺)の長さLcは、歪計測部102の計測領域の周方向の長さLsより大きいものとする(Lc>Ls)。複数の凸部105が形成されている領域の中心と歪計測部102の中心とを通る直線(仮想)の方向から見た場合、溝104の領域内に歪計測部102の計測領域が収まっている状態とする。
【0026】
ところで、ダイアフラム101が保護機構103に押し当てられると、複数の凸部105における隣り合う凸部105の間には通路が形成されたものとなるが、この通路と溝104とを空間的に接続する接続路を設けることができる。
【0027】
上述した実施の形態によれば、溝104を設けることにより、保護機構103にダイアフラム101が押し当てられた際のセンサ出力の変化を抑制することができる。
【0028】
発明者らの鋭意の検討の結果、ダイアフラムにピエゾ抵抗などによる歪計測部を配置した構成において、ダイアフラムが保護機構に押しつけられたときに、歪計測部を配置した位置のダイアフラムに微小変形が発生することを突き止め、これがセンサ出力の変化の原因であることを突き止めた。上述した微小変形によりセンサ出力が変化し、圧力が変化しているような測定結果となっていた。本発明は、この検討結果を基になされたものである。
【0029】
この点について、図2A図2B図3を用いてより詳細に説明する。まず、従来構造の圧力センサでは、ダイアフラム201の受圧面に印加される圧力が過大圧とならない範囲では、図2Aに示すように、ダイアフラム201の受圧面と反対側の面は保護機構203の対向面とは当接しない状態である。この状態では、ダイアフラム201に形成された歪計測部202は、図2Aに示すように圧縮応力を受ける。このため、ダイアフラム201に過大圧が印加されない通常の計測環境下において、従来構造の圧力センサは、歪計測部202が圧縮応力を受ける状態のときに歪計測部202が正の感圧出力信号を出力するように設計される[図2Aの(b)]。
【0030】
次に、従来構造の圧力センサのダイアフラム202に過大圧が印加された場合は、図2Bに示すように、ダイアフラムが保護機構に押しつけられるが、この状態のダイアフラム201の全域が保護機構203に当接することはなく、外周端211より内側の近傍領域には間隙212が形成される。間隙212の領域は、外周端211とこれより内側のダイアフラムが当接している当接端213とを支点とする新たな小ダイアフラムとなる[図2Bの(a)]。
【0031】
上述した状態における小ダイアフラムの領域は、引張り応力が働く状態となる。歪計測部202は、上述した間隙212の領域にあたるため、ダイアフラム201が保護機構203に押しつけられると、この後、歪計測部202は引張り応力の状態を計測することになる。この状態が、保護機構203にダイアフラム201が押し当てられた際の、センサ出力の変化として現れているものと考えられる[図2Bの(b)]。
【0032】
そこで、上記の問題を抑制するためには、歪計測部が形成されたダイアフラムの部分に常に圧縮応力が生じるような構造を採用すれば良いことに気づき、実施の形態の圧力センサを想到するに至った。
【0033】
実施の形態によれば、図3に示すように、歪計測部102の形成箇所より内側に溝104を設けることで、ダイアフラム101が保護機構103に押しつけられた後に引張り応力が働く領域を溝104の部分とし、溝104より外側に配置されている歪計測部102の位置では、ダイアフラム101が保護機構103に押しつけられる前と同様に、圧縮応力が発生している状態を維持する。これにより、保護機構103にダイアフラム101が押し当てられた際のセンサ出力の変化を抑制することができる[図3の(b)]。
【0034】
ところで、圧力センサは、図4Aに示すように、ダイアフラム101を挟んで配置された第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とすることができる。第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bは、ダイアフラム基板121を挾んで配置された第1基台122a、第2基台122bに形成された凹面により構成される。
【0035】
第1ダイアフラム室124aに、第1保護機構103aが形成され、第2ダイアフラム室124bに、第2保護機構103bが形成される。第1ダイアフラム室124aのダイアフラム101に向かい合う面(凹面123a)に第1保護機構103aが形成されている。また、第2ダイアフラム室124bのダイアフラム101に向かい合う面(凹面123b)に第2保護機構103bが形成されている。第1保護機構103aに複数の第1凸部105aが、離散的に形成され、第2保護機構103bに複数の第2凸部105bが、離散的に形成されている。
【0036】
また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bの各々において、第1溝104a,第2溝104bが設けられている。また、第1基台122aには、外部と第1ダイアフラム室124aとを連通する第1連通路125aが形成され、第2基台122bには、外部と第2ダイアフラム室124bとを連通する第2連通路125bが形成されている。
【0037】
また、図4B図4Cに示すように、ダイアフラム101の周端部付近に4つの歪計測部102がダイアフラム中心から周方向に90度の間隔で配置されている。また、ダイアフラム101に対向する第1保護機構103aは、複数の第1凸部105aが離散的に形成されている部分を取り囲むようにその外周縁上に沿って複数個の長方形(平面視)又は円弧状(平面視)の第1溝104aが形成されている。同様に、ダイアフラム101に対向する第2保護機構103bは、複数の第2凸部105bが離散的に形成されている部分を取り囲むようにその外周縁上に沿って複数個の長方形(平面視)又は円弧状(平面視)の第2溝104bが形成されている。
【0038】
したがって、何れの歪計測部102の近傍も、断面視で図3に示す構造に合致するため、上述したように、歪計測部102にはダイアフラム101を介して常に圧縮応力を受けることが維持され、過大圧を受けた場合でも引張り応力を受けることが避けられるため、従来構造の圧力センサの問題を避けることができる。
【0039】
この圧力センサは、上述した第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とすることで、差圧計として用いることができる。
【0040】
また、圧力センサは、ダイアフラムを、ダイアフラム基板の2箇所の各々に設け、保護機構を、各々のダイアフラムに対応して設けることができる。例えば、図5Aに示すように、ダイアフラム基板121’の2箇所に第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bを備えることができる。第1ダイアフラム101aにおいて、圧力を受けた第1ダイアフラム101aが変位する側に、第1ダイアフラム室124aが設けられている。また、第2ダイアフラム101bの各々において、圧力を受けた第2ダイアフラム101bが変位する側に、第2ダイアフラム室124bが設けられている。
【0041】
また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bは、基台122’の2箇所の各々に形成された凹面により構成される。第1ダイアフラム室124aに、第1保護機構103aが形成され、第2ダイアフラム室124bに、第2保護機構103bが形成される。第1ダイアフラム室124aの第1ダイアフラム101aに向かい合う面(凹面)に第1保護機構103aが形成されている。また、第2ダイアフラム室124bの第2ダイアフラム101bに向かい合う面(凹面)に第2保護機構103bが形成されている。また、第1保護機構103aに複数の第1凸部105aが、離散的に形成され、第2保護機構103bに複数の第2凸部105bが、離散的に形成されている。
【0042】
また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bの各々において、第1溝104a,第2溝104bが設けられている。また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bは、連通路125により連通している。なお、図示していないが、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bおよび連通路125には、シリコーンオイルなどの圧力伝達物質が充填されている。
【0043】
また、第1ダイアフラム101aが第1保護機構103aに押し当てられることで形成される複数の第1凸部105aにおける隣り合う第1凸部105aの間の通路は、連通路125と第1保護機構103aの周端部との間を連通する通路とされている。同様に、第2ダイアフラム101bが第2保護機構103bに押し当てられることで形成される複数の第2凸部105bにおける隣り合う第2凸部105bの間の通路は、連通路125と第2保護機構103bの周端部との間を連通する通路とされている。
【0044】
また、図5B図5Cに示すように、第1ダイアフラム101a上の周端部付近の2箇所の各々に第1歪計測部102aが配置され,第2ダイアフラム101b上の周端部付近の2箇所の各々に第2歪計測部102bが配置されている。
【0045】
また、第1ダイアフラム101aに対向する第1保護機構103aは、複数の第1凸部105aが離散的に形成されている部分を取り囲むようにその外周縁上に沿って複数個の長方形(平面視)又は円弧状(平面視)の第1溝104aが形成されている。
【0046】
また、第2ダイアフラム101bに対向する第2保護機構103bは、複数の第2凸部105bが離散的に形成されている部分を取り囲むようにその外周縁上に沿って複数個の長方形(平面視)又は円弧状(平面視)の第2溝104bが形成されている。
【0047】
なお、第1ダイアフラム101a上に配置された第1歪計測部102aは第1溝104aよりも外周に形成されている。同様に、第2ダイアフラム101b上に配置された第2歪計測部102bは第2溝104bよりも外周に形成されている。
【0048】
したがって、何れの歪計測部102の近傍も、断面視で図3に示す構造に合致するため、上述したように、第1歪計測部102aには第1ダイアフラム101aを介して常に圧縮応力を受けることが維持され、第2歪計測部102bには第2ダイアフラム101bを介して常に圧縮応力を受けることが維持される。この結果、この圧力センサは、過大圧を受けた場合でも引張り応力を受けることが避けられるため、従来構造の圧力センサの問題を避けることができる。
【0049】
この圧力センサは、上述した第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とすることで、差圧計として用いることができる。
【0050】
以上に説明したように、本発明によれば、歪計測部の形成箇所より内側の領域の歪計測部の近傍における保護機構のダイアフラムに向かい合う面に溝を設けたので、過大圧によるダイアフラムの破損を防ぐためにダイアフラムの変位を制限する保護機構にダイアフラムが押し当てられた際の歪計測部が受ける応力の種類(圧縮応力/引張り応力)の変転に起因するセンサ出力の変化を抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0052】
101…ダイアフラム、102…歪計測部、103…保護機構、104…溝、105…凸部、121…ダイアフラム基板、122…基台、123…凹面、124…ダイアフラム室。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C