(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145673
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】HMT構造及びHSTユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 47/04 20060101AFI20241004BHJP
F16H 39/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16H47/04 A
F16H39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058124
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】岩木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】辻 智之
(72)【発明者】
【氏名】本岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 輝延
(72)【発明者】
【氏名】小和田 七洋
(57)【要約】
【課題】入力動力をポンプ軸へ変速伝達する入力ギヤ列及びモータ軸から遊星ギヤ機構へHST出力を変速伝達する出力ギヤ列を含む全体構造の軸線方向長さを短縮させる。
【解決手段】本発明のHMT構造は、ポンプ軸及びモータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が駆動源に作動連結され且つ軸線方向他方側がHSTポンプより軸線方向他方側へ延在された入力軸と、入力軸からポンプ軸へ回転動力を作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、モータ軸から遊星ギヤ機構へHST出力を作動伝達する為のHST出力ギヤ列とを備え、HST入力ギヤ列及びHST出力ギヤ列は、軸線方向に関しHSTポンプ及びHSTモータと遊星ギヤ機構との間に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から作動伝達される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源から作動伝達される回転動力及び前記HSTから作動的伝達されるHST出力を合成して出力する遊星ギヤ機構とを備えたHMT構造であって、
前記HSTのポンプ軸及びモータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記駆動源に作動連結され且つ軸線方向他方側が前記HSTのHSTポンプより軸線方向他方側へ延在された入力軸と、
前記入力軸から前記ポンプ軸へ回転動力を作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、
前記モータ軸から前記遊星ギヤ機構へHST出力を作動伝達する為のHST出力ギヤ列とを備え、
前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し前記HSTポンプ及びHSTモータと前記遊星ギヤ機構との間に配置されていることを特徴とするHMT構造。
【請求項2】
前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し少なくとも部分的にオーバーラップするように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のHMT構造。
【請求項3】
前記モータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記モータ軸からHST出力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が前記遊星ギヤ機構にHST出力を出力する出力部を形成する出力軸を備え、
前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸から前記出力軸にHST出力を作動伝達することを特徴とする請求項2に記載のHMT構造。
【請求項4】
前記HST入力ギヤ列は、前記入力軸に軸線回り相対回転不能に支持されたHST入力用駆動側ギヤと、前記ポンプ軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST入力用駆動側ギヤと噛合するHST入力用従動側ギヤとを含み、
前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸に相対回転不能に支持されたHST出力用駆動側ギヤと、前記出力軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST出力用駆動側ギヤと噛合するHST出力用従動側ギヤとを含むことを特徴とする請求項3に記載のHMT構造。
【請求項5】
前記HSTは、前記HSTポンプ及び前記HSTモータを収容し且つ前記ポンプ軸及び前記モータ軸を軸線回り回転自在に支持するHSTケースを有し、
前記遊星ギヤ機構は、軸線方向一方側の端面に開口が設けられたTMケース本体及び前記開口を覆うように前記TMケース本体に連結されるTMカバーを含むミッションケースに収容され、
前記HSTケースは、前記TMカバーとの間にギヤ収容空間が画されるように前記ミッションケースの軸線方向一方側に直接又は間接的に連結され、
前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は前記ギヤ収容空間に収容されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のHMT構造。
【請求項6】
前記HSTケースに着脱可能に連結され、且つ、前記TMカバーとの間に前記ギヤ収容空間が画されるように前記TMカバーに着脱可能に連結される連結カバーを備え、
前記HST入力ギヤ列のギヤ及び前記HST出力ギヤ列のギヤは、軸線方向一方側が前記連結カバーに軸線回り回転可能に支持され且つ軸線方向他方側が前記TMカバーに軸線回り回転可能に支持されていることを特徴とする請求項5に記載のHMT構造。
【請求項7】
ポンプ軸に入力される回転動力を無段変速して前記ポンプ軸と平行に配置されたモータ軸から出力するHSTを有するHSTユニットであって、
前記ポンプ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が駆動源から回転動力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が前記HSTのHSTポンプより軸線方向他方側へ延在された入力軸と、
前記モータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記モータ軸からHST出力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が出力部を形成する出力軸と、
前記入力軸のうち前記HSTポンプより軸線方向他方側に位置する部分から前記ポンプ軸の軸線方向対応部分に回転動力を伝達するHST入力ギヤ列と、
前記モータ軸のうち前記HSTのHSTモータより軸線方向他方側に位置する部分から前記出力軸の入力部に回転動力を伝達するHST出力ギヤ列と、
前記HSTポンプ及び前記HSTモータを収容するHST収容空間、並びに、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列を収容するギヤ収容空間を有するハウジングとを備え、
前記入力軸は、前記HST収容空間及び前記ギヤ収容空間内に延び、前記入力部として作用する軸線方向一方側が前記ハウジングの軸線方向一方側からアクセス可能で且つ軸線方向他方側が前記ハウジングの軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、
前記ポンプ軸及び前記モータ軸は、前記HST収容空間内に延び且つ軸線方向他方側が前記ギヤ収容空間に突入された状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、
前記出力軸は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ハウジングの軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、
前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し少なくとも部分的にオーバーラップした状態で前記ギヤ収容空間に収容されていることを特徴とするHSTユニット。
【請求項8】
前記HST入力ギヤ列は、前記入力軸に軸線回り相対回転不能に支持されたHST入力用駆動側ギヤと、前記ポンプ軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST入力用駆動側ギヤと噛合するHST入力用従動側ギヤとを含み、
前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸に相対回転不能に支持されたHST出力用駆動側ギヤと、前記出力軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST出力用駆動側ギヤと噛合するHST出力用従動側ギヤとを含むことを特徴とする請求項7に記載のHSTユニット。
【請求項9】
前記ハウジングは、前記HST収容空間を形成するHSTケースと、前記ギヤ収容空間を形成し、前記HSTケースに着脱可能に連結されるギヤケースとを含み、
前記入力軸は、軸線方向一方側が前記HSTケースから外方へ延在され且つ軸線方向他方側が前記ギヤケースから外方へ延在された状態で前記HSTケース及び前記ギヤケースに軸線回り回転自在に支持され、
前記ポンプ軸及び前記モータ軸は、軸線方向他方側が前記HSTケースから前記ギヤ収容空間に突入された状態で前記HSTケースに軸線回り回転自在に支持され、
前記出力軸は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ギヤケースから外方へ延在された状態で前記ギヤケースに軸線回り回転自在に支持されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のHSTユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HST(静油圧式無段変速機構)と遊星ギヤ機構とを有するHMT構造(静油圧・機械式無段変速構造)、及び、HSTを含むHSTユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
HST及び遊星歯車機構を組み合わせてなるHMT構造は、無段変速可能な変速幅(変速可能範囲)を拡げることができ、コンバインやトラクタ等の作業車輌の走行系伝動経路に好適に利用されている。
【0003】
前記HSTは、ディーゼルエンジン等の駆動源からポンプ軸に作動伝達される回転動力を無段変速し、HST出力としてモータ軸から出力するように構成されている。
【0004】
前記遊星ギヤ機構は、遊星3要素のうちの何れか一の要素に前記駆動源から作動伝達される回転動力を入力し且つ遊星3要素の他の要素に前記HSTのモータ軸から作動伝達されるHST出力を入力して、これらの入力回転動力を合成し、合成回転動力を遊星3要素の残りの一要素から出力するように構成されている。
【0005】
ところで、コンバインやトラクタ等の作業車輌に搭載されるディーゼルエンジン等の駆動源は、その回転動力の回転速度(出力回転数)が、前記HSTが入力可能な回転動力の回転速度(許容回転数)よりも低い場合が多い。
【0006】
このような場合に、前記駆動源の回転動力をそのままの回転速度で前記HSTのポンプ軸に入力すると、前記HSTの性能(ポテンシャル)を十分に発揮できないという不都合が生じる。
【0007】
この点を考慮して、本願出願人は、HST及び遊星ギヤ機構を有するHMT構造であって、駆動源からの回転動力を増速して前記HSTのポンプ軸に伝達するHST入力ギヤ列を備えたHMT構造を提案している(下記特許文献1及び2参照)。
【0008】
前記特許文献1及び2に記載のHMT構造(以下、従来構造という)は、前記HSTのポンプ軸に入力される回転動力の回転速度が当該HSTの性能に合う回転速度となるように前記HST入力ギヤ列の増速比を設定するものであり、たとえ前記駆動源の出力回転数が前記HSTの許容回転数よりも低い場合であっても、前記HSTの性能を十分に発揮させた使用状態を現出できる点において有用である。
【0009】
しかしながら、前記従来構造においては、前記HMT構造全体の軸線方向長さが長大化するという問題があった。
【0010】
即ち、前記従来構造においては、前記HST入力ギヤ列が前記HSTの軸線方向一方側(即ち、軸線方向に関し前記HSTを基準にして前記遊星ギヤ機構とは反対側)に配置されている。
【0011】
ここで、前記従来構造を含むHMT構造においては、前記HSTのモータ軸から前記遊星ギヤ機構の対応する一要素にHST出力を作動伝達する為のHST出力ギヤ列が前記HSTの軸線方向他方側(即ち、軸線方向に関し前記HSTと前記遊星ギヤ機構との間)に配置されている。
【0012】
即ち、前記従来構造においては、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列が、軸線方向を基準にして、前記HSTの一方側及び他方側に振り分け配置されており、前記HST入力ギヤ列、前記HST、前記HST出力ギヤ列及び前記遊星ギヤ機構を含むHMT構造全体の軸線方向長さが長大化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第7193838号公報
【特許文献2】特開2020-152364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、駆動源から作動伝達される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源から作動伝達される回転動力及び前記HSTから作動的伝達されるHST出力を合成して出力する遊星ギヤ機構とを備えたHMT構造であって、前記駆動源からの回転動力を変速させて前記HSTのポンプ軸に作動伝達する為のHST入力ギヤ列、及び、前記HSTのモータ軸からのHST出力を変速させて前記遊星ギヤ機構の対応する一要素に作動伝達する為のHST出力ギヤ列を備えつつ、軸線方向に関する小型化を図り得るHMT構造の提供を第1の目的とする。
【0015】
また、本発明は、HSTと、駆動源から作動伝達される回転動力を変速させてポンプ軸に作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、前記HSTのモータ軸からのHST出力を変速させる為のHST出力ギヤ列とを備えつつ、軸線方向の小型化を図り得るHSTユニットの提供を第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記第1の目的を達成する為に、本発明の第1態様は、駆動源から作動伝達される回転動力を無段変速して出力するHSTと、前記駆動源から作動伝達される回転動力及び前記HSTから作動的伝達されるHST出力を合成して出力する遊星ギヤ機構とを備えたHMT構造であって、前記HSTのポンプ軸及びモータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記駆動源に作動連結され且つ軸線方向他方側が前記HSTのHSTポンプより軸線方向他方側へ延在された入力軸と、前記入力軸から前記ポンプ軸へ回転動力を作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、前記モータ軸から前記遊星ギヤ機構へHST出力を作動伝達する為のHST出力ギヤ列とを備え、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し前記HSTポンプ及びHSTモータと前記遊星ギヤ機構との間に配置されているHMT構造を提供する。
【0017】
好ましくは、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し少なくとも部分的にオーバーラップするように配置される。
【0018】
一形態においては、前記HMT構造は、前記モータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記モータ軸からHST出力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が前記遊星ギヤ機構にHST出力を出力する出力部を形成する出力軸を備え得る。
この場合、前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸から前記出力軸にHST出力を作動伝達するものとされる。
【0019】
前記一形態において、好ましくは、前記HST入力ギヤ列は、前記入力軸に軸線回り相対回転不能に支持されたHST入力用駆動側ギヤと、前記ポンプ軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST入力用駆動側ギヤと噛合するHST入力用従動側ギヤとを含み、前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸に相対回転不能に支持されたHST出力用駆動側ギヤと、前記出力軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST出力用駆動側ギヤと噛合するHST出力用従動側ギヤとを含むものとされる。
【0020】
前記HMT構造の種々の構成において、前記HSTは、前記HSTポンプ及び前記HSTモータを収容し且つ前記ポンプ軸及び前記モータ軸を軸線回り回転自在に支持するHSTケースを有するものとされ、前記遊星ギヤ機構は、軸線方向一方側の端面に開口が設けられたTMケース本体及び前記開口を覆うように前記TMケース本体に連結されるTMカバーを含むミッションケースに収容されるように構成される。
【0021】
この場合、前記HSTケースは、前記TMカバーとの間にギヤ収容空間が画されるように前記ミッションケースの軸線方向一方側に直接又は間接的に連結されるように構成され、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は前記ギヤ収容空間に収容される。
【0022】
前記HMT構造は、前記HSTケースに着脱可能に連結され、且つ、前記TMカバーとの間に前記ギヤ収容空間が画されるように前記TMカバーに着脱可能に連結される連結カバーを備え得る。
【0023】
この場合、前記HST入力ギヤ列のギヤ及び前記HST出力ギヤ列のギヤは、軸線方向一方側が前記連結カバーに軸線回り回転可能に支持され且つ軸線方向他方側が前記TMカバーに軸線回り回転可能に支持される。
【0024】
また、前記第2の目的を達成する為に、本発明の第2態様は、ポンプ軸に入力される回転動力を無段変速して前記ポンプ軸と平行に配置されたモータ軸から出力するHSTを有するHSTユニットであって、前記ポンプ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が駆動源から回転動力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が前記HSTのHSTポンプより軸線方向他方側へ延在された入力軸と、前記モータ軸と平行に配置され、軸線方向一方側が前記モータ軸からHST出力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が出力部を形成する出力軸と、前記入力軸のうち前記HSTポンプより軸線方向他方側に位置する部分から前記ポンプ軸の軸線方向対応部分に回転動力を伝達するHST入力ギヤ列と、前記モータ軸のうち前記HSTのHSTモータより軸線方向他方側に位置する部分から前記出力軸の入力部に回転動力を伝達するHST出力ギヤ列と、前記HSTポンプ及び前記HSTモータを収容するHST収容空間、並びに、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列を収容するギヤ収容空間を有するハウジングとを備え、前記入力軸は、前記HST収容空間及び前記ギヤ収容空間内に延び、前記入力部として作用する軸線方向一方側が前記ハウジングの軸線方向一方側からアクセス可能で且つ軸線方向他方側が前記ハウジングの軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、前記ポンプ軸及び前記モータ軸は、前記HST収容空間内に延び且つ軸線方向他方側が前記ギヤ収容空間に突入された状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、前記出力軸は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ハウジングの軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持され、前記HST入力ギヤ列及び前記HST出力ギヤ列は、軸線方向に関し少なくとも部分的にオーバーラップした状態で前記ギヤ収容空間に収容されているHSTユニットを提供する。
【0025】
前記第2態様の一形態においては、前記HST入力ギヤ列は、前記入力軸に軸線回り相対回転不能に支持されたHST入力用駆動側ギヤと、前記ポンプ軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST入力用駆動側ギヤと噛合するHST入力用従動側ギヤとを含み、前記HST出力ギヤ列は、前記モータ軸に相対回転不能に支持されたHST出力用駆動側ギヤと、前記出力軸に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST出力用駆動側ギヤと噛合するHST出力用従動側ギヤとを含み得る。
【0026】
例えば、前記ハウジングは、前記HST収容空間を形成するHSTケースと、前記ギヤ収容空間を形成し、前記HSTケースに着脱可能に連結されるギヤケースとを含み得る。
【0027】
この場合、前記入力軸は、軸線方向一方側が前記HSTケースから外方へ延在され且つ軸線方向他方側が前記ギヤケースから外方へ延在された状態で前記HSTケース及び前記ギヤケースに軸線回り回転自在に支持され、前記ポンプ軸及び前記モータ軸は、軸線方向他方側が前記HSTケースから前記ギヤ収容空間に突入された状態で前記HSTケースに軸線回り回転自在に支持され、前記出力軸は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ギヤケースから外方へ延在された状態で前記ギヤケースに軸線回り回転自在に支持される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るHMT構造によれば、HSTと、遊星ギヤ機構と、駆動源からの回転動力を変速させて前記HSTのポンプ軸に作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、前記HSTのモータ軸からのHST出力を変速させて前記遊星ギヤ機構の対応する一要素に作動伝達する為のHST出力ギヤ列とを含むHMT構造全体の軸線方向に関する小型化を図ることができる。
【0029】
また、本発明に係るHSTユニットによれば、HSTと、駆動源から作動伝達される回転動力を変速させて前記HSTのポンプ軸に作動伝達する為のHST入力ギヤ列と、前記HSTのモータ軸からのHST出力を変速させる為のHST出力ギヤ列とを含むHSTユニット全体の軸線方向に関する小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るHMT構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
【
図2】
図2は、前記HMT構造を含むトランスミッションの正面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、前記HMT構造におけるHST及び前記トランスミッションの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施の形態に係るHSTユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の形態1
以下、本発明に係るHMT構造(静油圧・機械式無段変速構造)の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るHMT構造1が適用された作業車輌200の伝動模式図を示す。
また、
図2に、前記HMT構造1を含むトランスミッション600の正面図を示す。
さらに、
図3に、
図2におけるIII-III線に沿った断面図を示す。
【0032】
図1に示すように、前記作業車輌200は、駆動源210と、駆動輪220と、前記駆動源210から前記駆動輪220へ至る走行系伝動経路に介挿された前記HMT構造1を含む前記トランスミッション600とを備えている。
なお、
図1及び
図2中の符号210aは前記駆動源210に含まれるフライホイールである。
【0033】
図1~
図3に示すように、前記HMT構造1は、静油圧式無段変速機構(HST)10と、前記HST10と共働する遊星歯車機構30とを有している。
【0034】
前記HST10は、前記駆動源210から作動伝達される回転動力を無段変速して出力するように構成されている。
【0035】
具体的には、
図1及び
図3に示すように、前記HST10は、前記駆動源210から作動伝達される回転動力によって軸線回りに回転駆動されるポンプ軸12と、前記ポンプ軸12に相対回転不能に支持されたHSTポンプ14と、前記HSTポンプ14に一対の第1及び第2HSTライン15a、15bを介して流体接続されて前記HSTポンプ14によって油圧的に回転駆動されるHSTモータ18と、前記HSTモータ18を相対回転不能に支持するモータ軸16と、前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18の少なくとも一方の容積を変更させる出力調整部材20と、前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18を収容し且つ前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16を軸線回り回転自在に支持するHSTケース500とを有している。
【0036】
図3に示すように、前記HSTケース500は、ケース本体510と、前記一対の第1及び第2HSTライン15a、15bが形成され、前記ケース本体510に着脱可能に連結されるポートブロック530とを有している。
図4に、前記HST10及び前記トランスミッション600の分解斜視図を示す。
【0037】
図3及び
図4に示すように、前記ケース本体510は、軸線方向一方側の第1端壁511と、前記第1端壁511の周縁から軸線方向他方側へ延びる周壁513とを有しており、軸線方向他方側には前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18が挿通可能な開口515が設けられている。
【0038】
前記ポートブロック530は、前記開口515を閉塞するように前記ケース本体510に着脱可能に連結されており、前記HSTケース500の軸線方向他方側の第2端壁を形成している。
【0039】
図3に示すように、本実施の形態においては、前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16は互いに対して平行に配置されている。
【0040】
詳しくは、前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16は、軸線方向他方側が前記第2端壁(前記ポートブロック530)から外方へ延在された状態で、前記第1端壁511及び前記第2端壁(前記ポートブロック530)に軸線回り回転可能に支持されている。
【0041】
前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18は、前記HSTケース500の内部空間(HST収容空間501)内において、それぞれ、前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16の軸線回り相対回転不能に支持されている。
【0042】
前記HST10は、前記出力調整部材20の作動位置に応じて、前記ポンプ軸12に入力される回転動力の回転速度に対する、前記モータ軸16から出力されるHST出力の回転速度の割合(即ち、HST10の変速比)を無段変化させ得るようになっている。
【0043】
即ち、前記駆動源210から前記ポンプ軸12に作動的に入力される回転動力の回転速度を基準入力速とした場合、前記HST10は、前記出力調整部材20の作動位置に応じて、前記基準入力速の回転動力を少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速して、前記モータ軸16から出力する。
【0044】
本実施の形態においては、前記HST10は、HST出力の回転方向を正逆切替可能とされている。
即ち、前記HST10は、基準入力速の回転方向を正転方向とした場合に、前記出力調整部材20が第1作動位置に位置されると前記モータ軸16から回転方向が正逆方向一方側(例えば逆転方向)とされた第1HST速の回転動力を出力し、且つ、前記出力調整部材20が第2作動位置に位置されると前記モータ軸16から回転方向が正逆方向他方側(例えば正転方向)とされた第2HST速の回転動力を出力するように、構成されている。
【0045】
この場合、前記出力調整部材20が第1及び第2作動位置の間の中立位置に位置されると、HST出力の回転速度は中立速(ゼロ速)となる。
【0046】
本実施の形態においては、前記HST10は、前記出力調整部材20として、アキシャルピストンポンプとして通例な、揺動軸回りに揺動されることで前記HSTポンプ14の容積を変更する可動斜板であって、前記HSTポンプ14から吐出される吐出量をゼロとする中立位置を挟んで揺動軸回り一方側及び他方側へ揺動可能とされた可動斜板を有している。
【0047】
前記可動斜板が中立位置に位置されると、前記HSTポンプ14からの圧油の吐出が無くなり、前記HST10は、前記HSTモータ18の出力がゼロの中立状態となる。
そして、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り一方側の正転側へ揺動されると、前記HSTポンプ14から一対のHSTライン15の一方(例えば第1HSTライン15a)に圧油が供給され、当該一方の第1HSTライン15aが高圧側となり、他方の第2HSTライン15bが低圧側となる。
これにより、前記HSTモータ18が正転側へ回転駆動されて、前記HST10は正転出力状態となる。
【0048】
逆に、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り他方側の逆転側へ揺動されると、前記HSTポンプ14から前記一対のHSTライン15の他方(例えば第2HSTライン15b)に圧油が供給され、当該他方の第2HSTライン15bが高圧側となり、一方の第1HSTライン15aが低圧側となる。
これにより、前記HSTモータ18が逆転側へ回転駆動されて、前記HST10は逆転出力状態となる。
なお、前記HST10においては、前記HSTモータ18は固定斜板によって容積が固定されている。
【0049】
前記作業車輌200は、さらに、変速レバー等の車速設定部材及びFR切替レバー等の前後進切替操作部材を含む変速操作部材(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。
前記出力調整部材20は、前記変速操作部材の操作に応じて前記制御装置によって作動制御される。
【0050】
即ち、本実施の形態においては、前記HST10は、前記出力調整部材20を作動させるHSTアクチュエータ150(
図1及び
図2参照)を有しており、前記制御装置は、前記変速操作部材の操作に応じて前記HSTアクチュエータ150を介して前記出力調整部材20を作動させるようになっている。
【0051】
前記HSTアクチュエータ150は、前記制御装置によって作動制御可能な限り、電動モータや油圧機構等、種々の構成を取ることができる。
【0052】
本実施の形態においては、前記HST10は、前記HSTアクチュエータ150として、電気油圧サーボ機構を有している。
【0053】
前記遊星ギヤ機構30は、遊星3要素のうち基準動力入力部として作用する一の要素に前記駆動源210から作動的に伝達される回転動力を入力し且つ遊星3要素のうち可変動力入力部として作用する他の要素に前記HST10から作動的に伝達されるHST出力を入力し、これらの回転動力を合成した合成回転動力を遊星3要素のうち合成動力出力部として作用する残りの一要素から出力するように構成されている。
【0054】
具体的には、
図1及び
図3に示すように、前記遊星歯車機構30は、サンギヤ32と、前記サンギヤ32と噛合する遊星ギヤ34と、前記遊星ギヤ34と噛合するインターナルギヤ36と、前記遊星ギヤ34を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ34の前記サンギヤ32回りの公転に連動して前記サンギヤ32の軸線回りに回転するキャリヤ38とを有しており、前記サンギヤ32、前記キャリヤ38及び前記インターナルギヤ36が前記遊星3要素を形成している。
【0055】
本実施の形態においては、前記サンギヤ32が下記HST出力ギヤ列580を介して前記モータ軸16に作動連結されており、前記サンギヤ32がHST出力を入力する可変動力入力部として作用している。
【0056】
即ち、本実施の形態に係る前記HMT構造1は、さらに、前記モータ軸16のうち前記HSTケース500から外方へ延在された軸線方向他方側の部分から前記遊星ギヤ機構30(図示の形態においては前記サンギヤ32)へHST出力を作動伝達する為の前記HST出力ギヤ列580を有している。
【0057】
なお、本実施の形態に係る前記HMT構造1は、
図3に示すように、前記モータ軸16と平行に配置され、軸線方向一方側が前記モータ軸16からHST出力を作動的に入力する入力部を形成し且つ軸線方向他方側が前記遊星ギヤ機構30の対応する一要素(図示の形態においては前記サンギヤ32)に軸線回り相対回転不能に連結されて出力部を形成する出力軸570を備えている。
【0058】
そして、前記HST出力ギヤ列580は、前記モータ軸16に相対回転不能に支持されたHST出力用駆動側ギヤ582と、前記出力軸570に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST出力用駆動側ギヤ582と噛合するHST出力用従動側ギヤ584とを有している。
【0059】
前記作業車輌200は、前記インターナルギヤ36を基準動力入力部として作用させ且つ前記キャリヤ38を合成動力出力部として作用させる第1HMT伝動状態と、前記キャリヤ38を基準動力入力部として作用させ且つ前記インターナルギヤ36を合成動力出力部として作用させる第2HMT伝動状態とを選択的に現出させ得るように構成されている。
【0060】
具体的には、
図1及び
図3に示すように、前記作業車輌200は、さらに、前記駆動源210の回転動力を前記インターナルギヤ36及び前記キャリヤ38にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1伝動機構50a及び入力側第2伝動機構50bと、前記入力側第1伝動機構50a及び前記入力側第2伝動機構50bの動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構60a及び入力側第2クラッチ機構60bを含む入力側クラッチ機構対と、前記遊星ギヤ機構30の合成動力出力部から合成回転動力を作動的に伝達される変速出力軸45と、前記キャリヤ38及び前記インターナルギヤ36の回転動力を前記変速出力軸45にそれぞれ作動伝達可能な出力側第1伝動機構70a及び出力側第2伝動機構70bと、前記出力側第1伝動機構70a及び前記出力側第2伝動機構70bの動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1クラッチ機構80a及び出力側第2クラッチ機構80bを含む出力側クラッチ機構対とを有している。
【0061】
図1及び
図3に示すように、前記入力側第1伝動機構50aは、前記駆動源210の回転動力を出力する原動軸211に作動連結された主駆動軸212に相対回転自在に連結された入力側第1駆動ギヤ52aと、前記入力側第1駆動ギヤ52aに噛合され且つ第1要素に作動連結された入力側第1従動ギヤ54aとを有している。
【0062】
図1及び
図3に示すように、本実施の形態においては、前記作業車輌200は、前記遊星ギヤ機構30と同軸上に配置され、前記キャリヤ38に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸43を有しており、前記入力側第1従動ギヤ54aは、前記変速中間軸43に相対回転自在に支持された状態で、前記入力側第1駆動ギヤ52a及び前記インターナルギヤ36に作動連結されている。
【0063】
前記入力側第2伝動機構50bは、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤ52bと、前記入力側第2駆動ギヤ52bに噛合され且つ第2要素に作動連結された入力側第2従動ギヤ54bとを有している。
【0064】
本実施の形態においては、前記入力側第2従動ギヤ54bは、前記キャリヤ38に相対回転不能に連結された前記変速中間軸43に相対回転不能に支持された状態で、前記入力側第2駆動ギヤ52bに噛合されている。
【0065】
本実施の形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60a、60bは、油圧式摩擦板クラッチ機構とされている。
【0066】
前記入力側第1及び第2クラッチ機構60a、60bは、それぞれ、前記入力側第1及び第2駆動ギヤ52a、52bを前記主駆動軸212に係脱させるように前記主駆動軸212に支持される。
【0067】
前記入力側第1クラッチ機構60aは、前記主駆動軸212に相対回転不能に支持された入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第1駆動ギヤ52aに相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む入力側第1摩擦板群64aと、前記入力側第1摩擦板群64aを摩擦係合させる入力側第1ピストン(図示せず)とを有している。
【0068】
前記入力側第2クラッチ機構60bは、前記入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第2駆動ギヤ52bに相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む入力側第2摩擦板群64bと、前記入力側第2摩擦板群64bを摩擦係合させる入力側第2ピストン(図示せず)とを有している。
【0069】
前記出力側第1伝動機構70aは、前記キャリヤ38の回転動力を前記変速出力軸45に伝達可能に構成されている。
【0070】
本実施の形態においては、前記出力側第1伝動機構70aは、前記入力側第2伝動機構50bにおける前記入力側第2従動ギヤ54bを利用して、前記第2要素の回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達し得るように構成されている。
【0071】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、前記出力側第1伝動機構70aは、前記入力側第2従動ギヤ54bと、前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第2従動ギヤ54bに作動連結された出力側第1従動ギヤ74aとを有している。
【0072】
前記出力側第2伝動機構70bは、前記インターナルギヤ36の回転動力を前記変速出力軸45に伝達可能に構成されている。
【0073】
本実施の形態においては、前記出力側第2伝動機構70bは、前記入力側第1伝動機構50aにおける前記入力側第1従動ギヤ54aを利用して、前記インターナルギヤ36の回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達し得るように構成されている。
【0074】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、前記出力側第2伝動機構70bは、前記入力側第1従動ギヤ54aと、前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第1従動ギヤ54aに作動連結された出力側第2従動ギヤ74bとを有している。
【0075】
前記出力側第1及び第2クラッチ機構80a、80bは、油圧式摩擦板クラッチ機構とされている。
【0076】
本実施の形態においては、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80a、80bは、それぞれ、前記出力側第1及び第2従動ギヤ74a、74bを前記変速出力軸45に係脱させるように前記変速出力軸45に支持される。
【0077】
前記出力側第1クラッチ機構80aは、前記変速出力軸45に相対回転不能に支持された出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第1従動ギヤ74aに相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む出力側第1摩擦板群84aと、前記出力側第1摩擦板群を摩擦係合させる出力側第1ピストン(図示せず)とを有している。
【0078】
前記出力側第2クラッチ機構80bは、前記出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第2従動ギヤ74bに相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む出力側第2摩擦板群84bと、前記出力側第2摩擦板群を摩擦係合させる出力側第2ピストン(図示せず)とを有している。
【0079】
前記作業車輌200には、さらに、前記入力側第1クラッチ機構60a、前記入力側第2クラッチ機構60b、前記出力側第1クラッチ機構80a及び前記出力側第2クラッチ機構80bの係脱を切替えるクラッチアクチュエータが備えられる。
【0080】
前記クラッチアクチュエータは、前記制御装置によって作動制御可能な限り、電動モータや油圧機構等、種々の構成を取り得る。
例えば、前記クラッチアクチュエータは、電磁弁によって作動制御される電気油圧機構とされる。
【0081】
図5に、
図3におけるV-V線に沿った断面図を示す。
図1、
図3及び
図5に示すように、前記作業車輌200は、さらに、前記駆動輪220へ向けて駆動回転動力を出力する走行出力軸47と、前記変速出力軸45の回転動力を前進方向及び後進方向への駆動回転動力として前記走行出力軸47へそれぞれ作動伝達させる前進側伝動機構400F及び後進側伝動機構400Rと、前記前進側伝動機構400F及び前記後進側伝動機構400Rの動力伝達をそれぞれ係脱させる油圧摩擦板式の前進側クラッチ機構410F及び後進側クラッチ機構410Rと、前記インターナルギヤ36の回転動力を前記走行出力軸47に前進方向の駆動回転動力として作動伝達可能な出力側第3伝動機構70cと、前記出力側第3伝動機構70cの動力伝達を係脱させる出力側第3クラッチ機構80cとを備えている。
【0082】
前記前進側伝動機構400Fは、前記変速出力軸45に支持された前進側駆動ギヤ402F及び前記走行出力軸47に支持された状態で、前記前進側駆動ギヤ402Fに噛合された前進側従動ギヤ404Fを含む前進側ギヤ列を有している。
【0083】
本実施の形態においては、前記前進側駆動ギヤ402Fは前記変速出力軸45に相対回転不能に支持されており、前記前進側従動ギヤ404Fは前記走行出力軸47に相対回転自在に支持されている。
【0084】
前記後進側伝動機構400Rは、前記変速出力軸45に支持された後進側駆動ギヤ402R及び前記走行伝動軸47に支持された状態で、アイドルギヤ403(
図1参照)を介して前記後進側駆動ギヤ402Rに噛合された後進側従動ギヤ404Rを含む後進側ギヤ列を有している。
【0085】
本実施の形態においては、前記後進側駆動ギヤ402Rは前記変速出力軸45に相対回転不能に支持されており、前記後進側従動ギヤ404Rは前記走行出力軸47に相対回転自在に支持されている。
【0086】
本実施の形態においては、前記前進側クラッチ機構410F及び前記後進側クラッチ機構410Rは、それぞれ、前記前進側従動ギヤ404F及び前記後進側従動ギヤ404Rを前記走行出力軸47に係脱させるように前記走行出力軸47に支持されている。
【0087】
詳しくは、前記前進側クラッチ機構410Fは、前記走行出力軸47に相対回転不能に支持された前後進クラッチハウジング412と、前記前後進クラッチハウジング412に相対回転不能に支持された前進従動側摩擦板及び前記前進従動側摩擦板に対向された状態で前記前進側従動ギヤ404Fに相対回転不能に支持された前進駆動側摩擦板を含む前進側摩擦板群414Fと、前記前進側摩擦板群414Fを摩擦係合させる前進側ピストン(図示せず)とを有している。
【0088】
前記後進側クラッチ機構410Rは、前記前後進クラッチハウジング412と、前記前後進クラッチハウジング412に相対回転不能に支持された後進従動側摩擦板及び前記後進従動側摩擦板に対向された状態で前記後進側従動ギヤ404Rに相対回転不能に支持された後進駆動側摩擦板を含む後進側摩擦板群414Rと、前記後進側摩擦板群414Rを摩擦係合させる後進側ピストン(図示せず)とを有している。
【0089】
前記前後進切替アクチュエータ350は、前記変速操作部材の操作に応じて前記制御装置によって作動制御されて、前記前進側クラッチ機構410F及び前記後進側クラッチ機構410Rbの係脱を行うように構成されている。
【0090】
前記出力側第3伝動機構70cは、前記出力側第2伝動機構70b及び前記前進側伝動機構400Fを介して前記第1要素の回転動力が前記走行出力軸47に作動伝達される際の当該走行出力軸47の回転速よりも、前記出力側第3伝動機構70cを介して前記第1要素の回転動力が前記走行出力軸47に作動伝達される際の当該走行出力軸47の回転速が高速となるように、変速比が設定されている。
【0091】
本実施の形態においては、前記出力側第3伝動機構70cは、前記出力側第2伝動機構70bにおける前記出力側第2従動ギヤ74bを利用して、前記第1要素の回転動力を前記走行出力軸47に作動伝達し得るように構成されている。
【0092】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、前記出力側第3伝動機構70cは、前記出力側第2従動ギヤ74bと、前記走行出力軸47に相対回転自在に支持された状態で前記出力側第2従動ギヤ74bに作動連結された出力側第3従動ギヤ74cとを有している。
【0093】
前記出力側第3クラッチ機構80cは、前記出力側第3従動ギヤ74cを前記走行出力軸47に係脱させるように前記走行伝動軸47に支持されている。
【0094】
詳しくは、前記出力側第3クラッチ機構80cは、前記走行出力軸47に相対回転不能に支持された出力側クラッチハウジング83と、前記出力側第3従動ギヤ74cに相対回転不能に支持された第3駆動側摩擦板及び前記第3駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング83に相対回転不能に支持された第3従動側摩擦板を含む出力側第3摩擦板群84cと、前記出力側第3摩擦板群84cを摩擦係合させる出力側第3ピストン(図示せず)とを有している。
【0095】
前記前進側クラッチ機構410F、前記後進側クラッチ機構410R及び前記出力側第3クラッチ機構80cの係脱は、前記クラッチアクチュエータによって行われる。
【0096】
図1に示すように、前記作業車輌200は、前記駆動輪220として、左右一対の主駆動輪を有している。
従って、前記作業車輌200は、さらに、前記一対の主駆動輪をそれぞれ駆動する一対の主駆動車軸250と、前記走行出力軸の回転動力を前記一対の主駆動車軸250に差動伝達するディファレンシャル機構260とを有している。
【0097】
図1に示すように、前記作業車輌200は、さらに、前記主駆動車軸250に選択的に制動力を付加する走行ブレーキ機構255と、前記走行出力軸からの回転動力によって前記一対の主駆動車軸250を強制的に同期駆動するデフロック機構265と、副駆動輪へ向けて走行回転動力を出力する副駆動輪出力軸275と、前記走行出力軸47から取り出した回転動力を前記副駆動輪出力軸275へ選択的に伝達する副駆動輪用駆動力取出機構270とを有している。
【0098】
また、前記作業車輌200は、外部へ回転動力を出力するPTO軸280と、前記駆動源210からPTO軸280へ至るPTO伝動経路に介挿されたPTOクラッチ機構285及びPTO多段変速機構290とを有している。
【0099】
前記HMT構造1は、前記駆動源210からの回転動力を変速(通常は増速)して前記ポンプ軸12に入力するように構成されている。
【0100】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、前記HMT構造1は、さらに、前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16と平行に配置され、軸線方向一方側が前記駆動源210に作動連結され且つ軸線方向他方側が前記HSTポンプ14より軸線方向他方側へ延在された入力軸550と、前記入力軸550から前記ポンプ軸12へ回転動力を作動伝達する為のHST入力ギヤ列560とを有している。
【0101】
前記入力軸550は、軸線方向一方側が前記HSTケース500(前記ケース本体510の第1端壁511)から軸線方向一方側外方へ延在され且つ軸線方向他方側が前記HSTケース500(前記ポートブロック530)から軸線方向他方側へ延在された状態で、前記HSTケース500に軸線回り回転自在に支持されている。
【0102】
前記HST入力ギヤ列560は、ディーゼルエンジン等の前記駆動源210の回転動力の回転速度(出力回転数)が前記HST10の許容入力回転速度(許容回転数)よりも低い場合において、前記ポンプ軸12に入力される回転動力の回転速度を前記HST10の許容入力回転速度に対して適切な回転速度に増速するようにギヤ比が設定される。
【0103】
ここで、本実施の形態に係る前記HMT構造1においては、
図3に示すように、前記HMT入力ギヤ列560は、前記HST出力ギヤ列580と共に、軸線方向に関し前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18と前記遊星ギヤ機構30との間に配置されており、これにより、前記HST10、前記遊星ギヤ機構30、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580を含む前記HMT構造1全体の軸線方向長さの短縮を図っている。
【0104】
即ち、従来のHMT構造においては、駆動源からの回転動力を増速してHSTのポンプ軸に伝達する為のHST入力ギヤ列及びHSTのモータ軸からのHST出力を遊星ギヤ機構の対応する要素(例えばサンギヤ)に作動伝達する為のHST出力ギヤ列が、HSTを挟んで軸線方向一方側及び他方側に振り分け配置されていた。
【0105】
これに対し、本実施の形態に係る前記HMT構造1においては、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580が軸線方向に関し前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ16と前記遊星ギヤ機構18との間に集約配置されており、前記HMT構造1全体の軸線方向長さの可及的な短縮が可能となっている。
【0106】
具体的には、
図1及び
図3に示すように、前記HST入力ギヤ列560は、前記入力軸550のうち前記HSTケース500から軸線方向他方側へ延在された部分に軸線回り相対回転不能に支持されたHST入力用駆動側ギヤ562と、前記ポンプ軸12に軸線回り相対回転不能に支持された状態で前記HST入力用駆動側ギヤ562と噛合するHST入力用従動側ギヤ564とを有しており、軸線方向に関し前記HST出力ギヤ列580と少なくとも部分的にオーバーラップするように配置されている。
【0107】
本実施の形態に係るHMT構造1においては、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580は、前記HSTケース500とミッションケース610との間に配置されている。
【0108】
詳しくは、
図1~
図5に示すように、前記作業車輌200は、前記複数の伝動機構50a~50b、70a~70c及び前記複数のクラッチ機構60a~60b、80a~80c、410F、410Rを収容する前記ミッションケース610を有している。
本実施の形態においては、前記遊星ギヤ機構30も前記ミッションケース610に収容されている。
【0109】
本実施の形態においては、前記ミッションケース610は、軸線方向一方側の端面に開口621が設けられたTMケース本体620と、前記開口621を覆うように前記TMケース本体620に着脱可能に連結されるTMカバー630とを有している。
【0110】
前記TMケース本体620は、軸線方向一方側から他方側に順に連結されるフロントケース620F、ミッドケース620M及びリヤケース620Rを含んでおり、前記開口621は前記フロントケース620Fに設けられ、前記TMカバー630は前記フロントケース620Fに連結されている。
【0111】
図1及び
図3に示すように、前記遊星ギヤ機構30、前記入力側第1及び第2伝動機構50a、50b、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60a、60b、前記出力側第1及び第2伝動機構70a、70b、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80a、80b、前記出力側第3伝動機構70c、並びに、前記出力側第3クラッチ機構80cは、前記フロントケース420Fに収容されている。
【0112】
図3中の符号623は、前記フロントケース620Fの内部空間を軸線方向一方側及び他方側に分離するように前記フロントケース620Fに装着される隔壁である。
【0113】
なお、前記前進側伝動機構400F、前記前進側クラッチ機構410F、前記後進側伝動機構400R、前記後進側クラッチ機構410R及び前記副駆動輪用駆動力取出機構270は前記ミッドケース620Mに収容されている。
【0114】
前記ディファレンシャル機構260、前記デフロック機構265、前記走行ブレーキ機構255、前記PTOクラッチ機構285及び前記PTO多段変速機構290は前記リヤケース620Rに収容されている。
【0115】
また、
図5中の符号305は、前記複数のクラッチ機構60a~60b、80a~80c、410F、410Rに対する作動油の給排切替を行うバルブが集約配置されたバルブユニットであり、前記ミッションケース610(前記フロントケース620F)の側面に連結されている。
【0116】
さらに、符号311~313は、前記主駆動軸212に形成された前記入力側第1及び第2クラッチ機構60a、60b用の給排油路、前記変速出力軸45に形成された前記出力側第1及び第2クラッチ機構80a、80b用の給排油路、並びに、前記走行出力軸47に形成された前記出力側第3クラッチ機構80c用の給排油路を、前記バルブユニット305に形成されたそれぞれに対応した油路に流体接続するパイプである。
【0117】
本実施の形態に係る前記HMT構造1においては、前記HSTケース500は、前記TMカバー630との間に、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580が収容されるギヤ収容空間502を画した状態で、前記ミッションケース610(前記フロントケース620F)の軸線方向一方側に連結されている。
【0118】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、前記HMT構造1は、前記HSTケース500に着脱可能に連結され、且つ、前記TMカバー630との間に前記ギヤ収容空間502が画されるように前記TMカバー630に着脱可能に連結される連結カバー590を備えている。
【0119】
図3に示すように、前記HST入力ギヤ列560のギヤ562、564及び前記HST出力ギヤ列580のギヤ582、584は、軸線方向一方側が前記連結カバー590に軸線回り回転可能に支持され且つ軸線方向他方側が前記TMカバー630に軸線回り回転可能に支持されている。
【0120】
実施の形態2
以下、本発明に係るHSTユニットの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図6に、本実施の形態に係るHSTユニット2の断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付している。
【0121】
前記HSTユニット2は、前記HST10と、前記入力軸550と、前記HST入力ギヤ列560と、前記出力軸570と、前記HST出力ギヤ列580と、ギヤケース650とを備えている。
【0122】
前記ギヤケース650は、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580を収容するギヤ収容空間502を形成し、且つ、前記HSTケース500に着脱可能に連結されるように構成されている。
【0123】
本実施の形態においては、前記HSTケース500及び前記ギヤケース650が、前記HSTポンプ14及び前記HSTモータ18を収容するHST収容空間501、並びに、前記HST入力ギヤ列560及び前記HST出力ギヤ列580を収容するギヤ収容空間502を有するハウジングを形成している。
【0124】
前記ギヤケース650は、前記HSTケース500(図示の形態においては前記ポートブロック530)に連結される第1カバー651と、前記ギヤ収容空間502を形成するように前記第1カバー651に連結される第2カバー652とを有している。
【0125】
前記入力軸550は、前記HST収容空間501及び前記ギヤ収容空間502内に延び、前記入力部として作用する軸線方向一方側が前記ハウジング(前記HSTケース500)の軸線方向一方側からアクセス可能で且つ軸線方向他方側が前記ハウジング(前記ギヤケース650)の軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持されている。
【0126】
本実施の形態においては、
図6に示すように、前記入力軸550は、軸線方向一方側が前記HSTケース500から外方へ延在され且つ軸線方向他方側が前記ギヤケース650から外方へ延在された状態で前記HSTケース500及び前記ギヤケース650に軸線回り回転自在に支持されている。
【0127】
前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16は、前記HST収容空間501内に延び且つ軸線方向他方側が前記ギヤ収容空間502に突入された状態で前記ハウジング(前記HSTケース500)に軸線回り回転自在に支持されている。
【0128】
本実施の形態においては、
図6に示すように、前記ポンプ軸12及び前記モータ軸16は、軸線方向他方側が前記HSTケース500から前記ギヤ収容空間502に突入された状態で前記HSTケース500に軸線回り回転自在に支持されている。
【0129】
前記出力軸570は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ハウジング(前記ギヤケース650)の軸線方向他方側からアクセス可能な状態で前記ハウジングに軸線回り回転自在に支持されている。
【0130】
本実施の形態においては、
図6に示すように、前記出力軸570は、前記出力部として作用する軸線方向他方側が前記ギヤケース650から外方へ延在された状態で前記ギヤケース650に軸線回り回転自在に支持されている。
【符号の説明】
【0131】
1 HMT構造
2 HSTユニット
10 HST
12 ポンプ軸
14 HSTポンプ
16 モータ軸
18 HSTモータ
20 出力調整部材
30 遊星ギヤ機構
45 変速出力軸
47 走行出力軸
210 駆動源
220 駆動輪
500 HSTケース
501 HST収容空間
502 ギヤ収容空間
550 入力軸
560 HST入力ギヤ列
562 HST入力用駆動側ギヤ
564 HST入力用従動側ギヤ
580 HST出力ギヤ列
582 HST出力用駆動側ギヤ
584 HST出力用従動側ギヤ
590 連結カバー
610 ミッションケース
620 TMケース本体
630 TMカバー
650 ギヤケース
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】