(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145674
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20241004BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058125
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE12
2F055FF21
2F055GG11
2F055HH08
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA03
4M112CA04
4M112FA07
(57)【要約】
【課題】手間をかけることがなく、小型化を阻害することなく、複数の圧力範囲の圧力を測定する。
【解決手段】この圧力センサは、ダイアフラム101、歪計測部102、保護機構103を備え、歪計測部102の形成箇所に向かい合い歪計測部102を囲う領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に設けられた凹部104が設けられている。保護機構103に形成される複数の凸部105は、凹部104の内側の領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に形成されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受けるダイアフラムと、
前記ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、前記ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、
圧力を受けた前記ダイアフラムが変位する際に前記ダイアフラムの受圧側と反対側の面と当接して前記ダイアフラムの過大な変位を制限する保護機構と、
前記歪計測部の形成箇所に向かい合い前記歪計測部を囲う領域の前記保護機構の前記ダイアフラムに向かい合う面に設けられた凹部と、
前記凹部の内側の領域の前記保護機構の前記ダイアフラムに向かい合う面に離散的に形成された複数の凸部と
を備える圧力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室をさらに備え、
前記保護機構は、前記2つのダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている圧力センサ。
【請求項3】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、
前記保護機構は、各々の前記ダイアフラムに対応して設けられ、
前記ダイアフラムの各々において、圧力を受けた前記ダイアフラムが変位する側に設けられた2つのダイアフラム室と、
前記2つのダイアフラム室を連通する連通路と、
前記2つのダイアフラム室および前記連通路に充填された圧力伝達物質と
をさらに備え、
前記保護機構は、前記ダイアフラム室の前記ダイアフラムに向かい合う面に形成されている圧力センサ。
【請求項4】
請求項3記載の圧力センサにおいて、
前記複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路は、前記連通路と前記保護機構の周端部との間を連通する通路とされている圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力を受けたダイアフラムのたわみ量、すなわち変位より圧力値を出力する圧力センサは、ガス種依存性が少ないことから、半導体設備をはじめ、工業用途で広く使用されている。この種の圧力センサには、ダイアフラムの変位を歪として検出し、検出した歪から圧力値を出力する歪式がある。
【0003】
ところで、ダイアフラムに過大圧が加わるとダイアフラムの破損を招く場合がある。この破損を防ぐため、ダイアフラムの変位を制限する保護機構を用いる技術がある。過大圧を受けてダイアフラムが大きく変位しようとしても、ダイアフラムが保護機構に当接(着底)してダイアフラムのこれ以上の変位を規制し、ダイアフラムの破損を防ぐ。
【0004】
また、この種の保護機構を設ける場合、過大圧を受けたダイアフラムは、保護機構に押しつけられて密着するため、過大圧から開放されてもダイアフラムが保護機構から直ちには離間せず、出力が復帰に遅れが発生する場合がある。この遅れを防ぐために、保護機構のダイアフラムが押しつけられる面に、複数の凸部を離散的に形成している(特許文献1)。この技術では、複数の凸部と凸部との間の通路を、保護機構に設けられているダイアフラム室への連通孔の周部と保護機構の周端部との間の連通路としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の圧力センサを用いて複数の圧力範囲の圧力を測定しようとする場合、対象の圧力範囲に対応した複数種類の圧力センサを用いることが一般的である。しかしながら、複数の圧力センサを用いることは、複数の圧力センサ毎に調整が必要となり、手間がかかるという問題がある。また、複数の圧力センサを用いる構成は、小型化を阻害する。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、手間をかけることがなく、小型化を阻害することなく、複数の圧力範囲の圧力が測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧力センサは、変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受けるダイアフラムと、ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、圧力を受けたダイアフラムが変位する際に前記ダイアフラムの受圧側と反対側の面と当接してダイアフラムの過大な変位を制限する保護機構と、歪計測部の形成箇所に向かい合い歪計測部を囲う領域の保護機構のダイアフラムに向かい合う面に設けられた凹部と、凹部の内側の領域の保護機構のダイアフラムに向かい合う面に離散的に形成された複数の凸部とを備える。
【0009】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムを挟んで配置された2つのダイアフラム室を備え、保護機構は、2つのダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0010】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムは、2箇所の各々に設けられ、保護機構は、各々のダイアフラムに対応して設けられ、ダイアフラムの各々において、圧力を受けたダイアフラムが変位する側に設けられた2つのダイアフラム室と、2つのダイアフラム室を連通する連通路と、2つのダイアフラム室および連通路に充填された圧力伝達物質とをさらに備え、保護機構は、ダイアフラム室のダイアフラムに向かい合う面に形成されている。
【0011】
上記圧力センサの一構成例において、複数の凸部における隣り合う凸部同士の間の通路は、連通路と保護機構の周端部との間を連通する通路とされている。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、歪計測部の形成箇所に向かい合い歪計測部を囲う領域の保護機構に凹部を設けたので、手間をかけることがなく、小型化を阻害することなく、複数の圧力範囲の圧力が測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの一部構成を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの一部構成を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態に係る圧力センサの一部構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3を用いて説明した圧力センサに印加される圧力とそれに対応する出力信号との関係を示す特性図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る圧力センサの他の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5を用いて説明した圧力センサに印加される圧力とそれに対応する出力信号との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る圧力センサについて
図1A、
図1Bを参照して説明する。この圧力センサは、ダイアフラム101、歪計測部102、保護機構103を備える。
【0015】
ダイアフラム101は、変位可能とされて測定対象の流体の圧力を受ける。ダイアフラム101は、ダイアフラム基板121の一部に形成されている。また、ダイアフラム基板121は、基台122の上に配置されている。基台122には、凹面123が形成され、凹面123とダイアフラム基板121との間にダイアフラム室124が形成される。ダイアフラム基板121のダイアフラム室124で規定される領域が、ダイアフラム101となる。基台122に形成されている凹面123は、例えば、平面視円形とされたなだらかにくぼんでいる領域である。凹面123は、基台122の平面に垂直な断面の形状が湾曲している。凹面123は、例えば、球の内周面の一部を切り出した形状である(即ちダイアフラム変形形状に形成した曲面(非球面))。
【0016】
歪計測部102は、ダイアフラム101の周端部近傍に設けられ、ダイアフラム101の歪みを測定(計測)する。歪計測部102は、例えば、よく知られたピエゾ抵抗による圧力検出素子(ピエゾ抵抗素子)から構成することができる。また、歪計測部102は、歪みゲージから構成することができる。図示していないが、歪計測部102が計測した歪(センサ出力)より、ダイアフラム101が測定対象から受けた圧力を求める圧力算出部を備えることができる。
【0017】
保護機構103は、圧力を受けたダイアフラム101が変位する際に前記ダイアフラムの受圧側と反対側の面と当接してダイアフラム101の過大な変位を制限する。受圧したダイアフラム101は、変位の過程で保護機構103に押し当てられる(当接する)状態(着底)となり、これ以上は変位することが制限される。保護機構103は、凹面123に設けられている。また、保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面には、複数の凸部105が形成されている。複数の凸部105は、離散的に形成されている。
【0018】
さらに、この圧力センサは、歪計測部102の形成箇所に向かい合い歪計測部102を囲う領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に設けられた凹部104が設けられている。凹部104は、平面視で歪計測部102の形成領域より広い面積とされている。凹部104は、平面視長方形とすることができる。また、凹部104は、平面視長方形の辺を円弧状にした樽形状とすることができる。また、凹部104は、複数の凸部105が形成されている領域の外周を囲うよう全外周に設けることができる。平面視で、凹部104の領域内に歪計測部102の計測領域が収まっている状態とする。複数の凸部105は、凹部104の内側の領域の保護機構103のダイアフラム101に向かい合う面に形成されている。凹部104は、複数の凸部105が形成されている領域の外周側に配置される。
【0019】
例えば、歪計測部102の中心の上に凹部104の中心部が配置される状態とする。例えば、平面視円形とされているダイアフラム101の周方向に等間隔で4つの歪計測部102を設けることができる。また、歪計測部102は、複数の凸部105が形成されている平面視で略円形の領域を囲う全周に離散的に設けることができる。4つの歪計測部102を設ける場合、4つの歪計測部102の各々に対応するように、複数の凸部105が形成されている平面視で略円形の領域の周方向に等間隔で4つの凹部104を設けることができる。
【0020】
ところで、ダイアフラム101が保護機構103に押し当てられると、複数の凸部105における隣り合う凸部105の間には通路が形成されたものとなるが、この通路と凹部104とを接続する接続路を設けることができる。
【0021】
上述した実施の形態によれば、凹部104を設けることにより、保護機構103にダイアフラム101が押し当てられた後(
図2A)、凹部104の領域におけるダイアフラム101(小ダイアフラム)は、さらに変形することが可能な状態となっている(
図2B)。
【0022】
まず、
図2Aに示すように、保護機構103にダイアフラム101が押し当てられるまでは、歪計測部102にはダイアフラム101の変形に応じた圧縮応力が発生する。この後、さらに高い圧力をダイアフラム101が受圧すると、
図2Bに示すように、凸部105の縁を支点にしてダイアフラム101が局所的に変形し、この領域に配置されている歪計測部102の応力が引張に反転する。
【0023】
例えば、Siから構成したダイアフラム101では、破壊応力が圧縮および引張ともに600MPaである。この場合、保護機構103により、ダイアフラム101に500MPaまでの応力が発生するものと設計とした場合、測定する圧力範囲0~50MPaのセンサ設計とすることができる。
【0024】
実施の形態に係る圧力センサでは、次に示すように、圧力センサが計測する圧力範囲によって、歪計測部102に加わる応力(歪計測部102で計測する応力)の範囲を変える設計をすることができる。なお、以下では、歪計測部102が、ピエゾ抵抗による圧力検出素子から構成されている場合の例を示す。
【0025】
まず、低圧領域として、圧力0~500kPaに対し、歪計測部102における圧縮応力0~500MPaを対応させる。500kPaは、ダイアフラム101が保護機構103に押し当てられる圧力であり、低圧領域は、ダイアフラム101が保護機構103に押し当てられるまでの範囲となる(
図2A)。この低圧領域では、圧力1MPa毎の応力が、1000MPaとなる。
【0026】
また、高圧領域として、圧力500kPa~50MPaに対し、歪計測部102における圧縮応力500MPa~引張り応力500MPaを対応させる。高圧領域は、ダイアフラム101が保護機構103に押し当てられてから、凹部104の領域におけるダイアフラム101が、さらに変形する領域である。この高圧領域では、圧力1MPa毎の応力が、20.2MPaとなる。
【0027】
一方、一般的な従来の圧力センサでは、圧力0~50MPaに対し、歪計測部102における圧縮応力0~500MPaを対応させるものとなる。この場合、圧力1MPa毎の応力が10.0MPaとなる。前述した実施の形態によれば、従来に比較して広い圧力範囲で高感度が実現できることがわかる。低圧範囲では、従来比で感度が100倍程度となり、高圧範囲では、従来比で感度が約2倍となる。
【0028】
ところで、圧力センサは、
図3に示すように、ダイアフラム101を挟んで配置された2つの第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とすることができる。第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bは、ダイアフラム基板121を挾んで配置された第1基台122a、第2基台122bに形成された凹面により構成される。
【0029】
第1ダイアフラム室124aに、第1保護機構103aが形成され、第2ダイアフラム室124bに、第2保護機構103bが形成される。第1ダイアフラム室124aのダイアフラム101に向かい合う面(凹面)に第1保護機構103aが形成されている。また、第2ダイアフラム室124bのダイアフラム101に向かい合う面(凹面)に第2保護機構103bが形成されている。第1保護機構103aに複数の第1凸部105aが、離散的に形成され、第2保護機構103bに複数の第2凸部105bが、離散的に形成されている。
【0030】
また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bの各々において、第1凹部104a,第2凹部104bが設けられている。また、第1基台122aには、外部と第1ダイアフラム室124aとを連通する第1連通路125aが形成され、第2基台122bには、外部と第2ダイアフラム室124bとを連通する第2連通路125bが形成されている。
【0031】
この圧力センサは、上述した第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とし、また、静圧計測部109を設けることで、差圧計として用いることができる。静圧計測部109は、第2凹部104bに対向する位置よりも外縁の第2基台122bと接合するダイアフラム101に設けた歪計測部である。従って、静圧計測部109は、よく知られたピエゾ抵抗による圧力検出素子(ピエゾ抵抗素子)から構成することができる。静圧計測部109を設ける箇所は、ダイアフラム101が変位しても歪みが発生しない箇所である。この差圧計によれば、低圧差と高圧差との両方を精度よく測定することができる。
【0032】
この圧力センサは、第1連通路125aを通して印加される第1の圧力の方が第2連通路125bを通して印加される第2の圧力よりも高圧の条件で用いることができる。第1の圧力と第2の圧力との差(差圧圧力)と差圧出力信号との関係は
図4の(a)に示すように変化する。一方、差圧圧力と静圧計測部109より出力される静圧出力信号との関係は
図4の(b)で示すように変化する。
【0033】
図4の(a)に示すように、差圧圧力が0からダイアフラム101が第2保護機構103bの対向面に着底するまで圧力が高まる範囲では、差圧出力信号は線形的に増加するため、この圧力範囲(低圧差範囲)では一義的に差圧が精度よく測定できる。また、ダイアフラム101が第2保護機構103bの対向面に着底してから更に差圧圧力が上昇する範囲では、差圧圧力は一転して線形的に減少するため、この圧力範囲(高圧差範囲)においても一義的に差圧が精度よく測定できる。したがって、この圧力センサは、従来よりも差圧圧力の測定可能範囲が拡張されるという効果を持つ。
【0034】
なお、
図4の(b)に示すように、静圧計測部109の静圧出力信号は、第1の圧力が第2の圧力よりも高い条件下では、差圧圧力に応じた正の値の出力信号を出力し、逆に、第2の圧力が第1の圧力よりも高い条件下では、差圧圧力に応じた負の値の出力信号を出力するため、静圧出力信号の正負によって第1の圧力と第2の圧力の高低関係が判別できる。
【0035】
また、圧力センサは、ダイアフラムを、2箇所の各々に設け、保護機構を、各々の前記ダイアフラムに対応して設けることができる。例えば、
図5に示すように、ダイアフラム基板121’の2箇所の各々に形成された第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bを備えることができる。圧力を受けた第1ダイアフラム101aが変位する側に、第1ダイアフラム室124aが設けられている。また、圧力を受けた第2ダイアフラム101bが変位する側に、第2ダイアフラム室124bが設けられている。
【0036】
また、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bは、基台122’の2箇所の各々に形成された凹面により構成される。また、第1ダイアフラム室124aの周端部近傍に第1歪計測部102aが設けられ、第1ダイアフラム101aの歪みを測定(計測)する。また、第2ダイアフラム室124bの周端部近傍に第2歪計測部102bが設けられ、第2ダイアフラム101bの歪みを測定(計測)する。
【0037】
また、第1ダイアフラム室124aに、第1保護機構103aが形成され、第2ダイアフラム室124bに、第2保護機構103bが形成される。第1ダイアフラム室124aの第1ダイアフラム101aに向かい合う面(凹面)に第1保護機構103aが形成されている。また、第2ダイアフラム室124bの第2ダイアフラム101bに向かい合う面(凹面)に第2保護機構103bが形成されている。また、第1保護機構103aに複数の第1凸部105aが、離散的に形成され、第2保護機構103bに複数の第2凸部105bが、離散的に形成されている。
【0038】
また、第1ダイアフラム室124aに、第1凹部104aが設けられ、第2ダイアフラム室124bに、第2凹部104bが設けられている。また、第1ダイアフラム室124aと第2ダイアフラム室124bとは、連通路125により連通している。なお、図示していないが、第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bおよび連通路125には、シリコーンオイルなどの圧力伝達物質が充填されている。
【0039】
また、第1ダイアフラム101aが第1保護機構103aに押し当てられることで形成される複数の第1凸部105aにおける隣り合う第1凸部105aの間の通路は、連通路125と第1保護機構103aの周端部との間を連通する通路とされている。同様に、第2ダイアフラム101bが第2保護機構103bに押し当てられることで形成される複数の第2凸部105bにおける隣り合う第2凸部105bの間の通路は、連通路125と第2保護機構103bの周端部との間を連通する通路とされている。
【0040】
この圧力センサは、上述した2つの第1ダイアフラム室124a,第2ダイアフラム室124bを備える構成とすることで、差圧計として用いることができる。この差圧計によれば、低圧差と高圧差との両方を精度よく測定することができる。
【0041】
この圧力センサにおいて、第2ダイアフラム101bに印加される第2の圧力(HP)の方が、第1ダイアフラム101aに印加される第1の圧力(LP)よりも高圧である場合、第1ダイアフラム101a、第2ダイアフラム101bの変位の方向は、
図5の矢印で示す方向となる。
【0042】
この場合、第2の圧力と第1の圧力との差(差圧圧力)の変化に対し、高圧側出力信号(第2ダイアフラム101bの第2歪計測部102bによるHP出力信号)と低圧側出力信号(第1ダイアフラム101aの第1歪計測部102aによるHP出力信号)との差(HP-LP出力)は、
図6の(a)に示すように変化する。一方、差圧圧力の変化に対し、低圧側出力信号(第1ダイアフラム101aの歪計測部102aによる圧力出力信号LP出力)は、
図6の(b)に示すように変化する。
【0043】
図6の(a)に示すように、差圧圧力が0から第2ダイアフラム101bが第2保護機構103bの対向面に着底するまで差圧圧力が高まる範囲では、HP-LP出力は線形的に増加する。このため、この圧力範囲(低圧差範囲)では一義的に差圧が精度よく測定できる。
【0044】
また、第2ダイアフラム101bが第2保護機構103bの対向面に着底してから更に差圧圧力が上昇する範囲では、差圧圧力(HP-LP出力)は一転して線形的に減少するため、この圧力範囲(高圧差範囲)においても一義的に差圧が精度よく測定できる。したがって、従来よりも差圧圧力の測定可能範囲が拡張されるという効果を持つ。
【0045】
なお、
図6の(b)に示すように印加圧力が相対的に低圧である第1ダイアフラム101aの歪計測部102aによる圧力出力信号(低圧側出力信号LP出力)は、差圧圧力が0から第2ダイアフラム101bが第2保護機構103bの対向面に着底するまで差圧圧力が高まる範囲では、低圧側出力信号は線形的に減少する。一方、ダイアフラム101bが第2保護機構103bの対向面に着底してから更に差圧圧力が上昇する範囲では、LP出力は、一定の負の状態が維持される。
【0046】
ここで、逆に、第1ダイアフラム101aに印加される第1の圧力の方が第2ダイアフラム101bに印加される第2の圧力よりも高圧である場合には、
図6の(b)に示す特性は、第2ダイアフラム101bの第2歪計測部102bによる圧力出力信号(低圧側出力信号)に示すものとなる。したがって、
図6の(b)の特性を第1ダイアフラム101aの歪計測部102aと第2ダイアフラム101bの歪計測部102bの何れが示すかを確認することで、第1の圧力と第2の圧力の高低関係が判別できる。
【0047】
以上に説明したように、本発明によれば、歪計測部の形成箇所に向かい合い歪計測部を囲う領域の保護機構に凹部を設けたので、手間をかけることがなく、小型化を阻害することなく、複数の圧力範囲の圧力が測定できるようになる。
【0048】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0049】
101…ダイアフラム、102…歪計測部、103…保護機構、104…凹部、105…凸部、121…ダイアフラム基板、122…基台、123…凹面、124…ダイアフラム室。