(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145676
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】パイロットリレー、ポジショナ、及び、パイロットリレーの製造方法
(51)【国際特許分類】
F15B 9/08 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F15B9/08 E
F15B9/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058128
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大藪 裕貴
【テーマコード(参考)】
3H001
【Fターム(参考)】
3H001AA01
3H001AA02
3H001AA03
3H001AB06
3H001AB07
3H001AC02
3H001AD03
(57)【要約】
【課題】パイロットリレーの空気圧の増幅率と空気流量の増幅率とにバリエーションを持たせる。
【解決手段】パイロットリレー30は、空気圧増幅モジュール40と、空気流量増幅モジュール50と、を備える。空気圧増幅モジュール40は、電空変換機構20からの空気圧信号Pnの空気圧を増幅し、増幅後の空気圧信号Pnを増幅圧力信号Pampとして出力する。増幅圧力信号Pampは、空気圧増幅モジュール40にチューブTを介して又は直接接続された空気流量増幅モジュール50に入力される。空気流量増幅モジュール50は、空気圧増幅モジュール40からの増幅圧力信号Pampの空気流量を増幅し、増幅後の増幅圧力信号Pampを増幅流量信号Poとして出力する。増幅流量信号Poは、空気駆動信号として、チューブなどを介して、流量制御弁95に入力される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧信号の空気圧及び空気流量を増幅するパイロットリレーであって、
前記空気圧信号の空気圧を増幅し、増幅後の前記空気圧信号を増幅圧力信号として出力する空気圧増幅モジュールと、
前記空気圧増幅モジュールに接続され、前記増幅圧力信号の空気流量を増幅し、増幅後の前記増幅圧力信号を増幅流量信号として出力する空気流量増幅モジュールと、
を備えるパイロットリレー。
【請求項2】
前記空気圧増幅モジュールでの、前記空気圧信号の空気圧の増幅率は、前記空気流量増幅モジュールでの、前記増幅圧力信号の空気圧に対する前記増幅流量信号の空気圧の増幅率よりも高く、
前記空気圧増幅モジュールでの、前記空気圧信号の空気流量に対する前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率は、前記空気流量増幅モジュールでの、前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率よりも低い、
請求項1に記載のパイロットリレー。
【請求項3】
前記空気圧増幅モジュールは、
前記空気圧信号が入力される第1室と、前記増幅圧力信号を出力する第2室と、前記空圧増幅モジュールの外部から供給される供給空気圧が入力される第3室と、前記第2室と前記第3室とを連通する連通路と、が形成されたハウジングと、
前記第1室に面する入力ダイアフラムと、
前記入力ダイアフラムに接続され、前記空気圧信号の空気圧の変化によって変形する前記入力ダイアフラムの変形量に応じて移動する移動体と、
前記第2室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に伴って変形する出力ダイアフラムと、
前記空気圧信号の空気圧の変化によって移動する移動体とともに移動することで前記連通路の開度を変化させる弁体と、を備え、
前記入力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記空気圧信号の空気圧の受圧面と、前記出力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅圧力信号の空気圧の受圧面との面積比に応じて、前記空気圧信号の空気圧の増幅率が変化する構造に形成され、
前記第2室の増幅圧力信号の流れ方向に直交する断面の面積に応じて、前記空気圧信号の空気流量の増幅率が変化する構造に形成された、
請求項1に記載のパイロットリレー。
【請求項4】
前記空気流量増幅モジュールは、
前記増幅圧力信号が入力される第1室と、前記増幅流量信号を出力する第2室と、前記空気流量増幅モジュールの外部から供給される供給空気圧が入力される第3室と、前記第2室と前記第3室とを連通する連通路と、が形成されたハウジングと、
前記第1室に面する入力ダイアフラムと、
前記入力ダイアフラムに接続され、前記増幅圧力信号の空気圧の変化によって変形する前記入力ダイアフラムの変形量に応じて移動する移動体と、
前記第2室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に伴って変形する出力ダイアフラムと、
前記増幅圧力信号の空気圧の変化によって移動する移動体とともに移動することで前記連通路の開度を変化させる弁体と、を備え、
前記入力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅圧力信号の空気圧の受圧面と、前記出力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅流量信号の空気圧の受圧面との面積比に応じて、前記増幅圧力信号の空気圧の増幅率が変化する構造に形成され、
前記第2室の増幅流量信号の流れ方向に直交する断面の面積に応じて、前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率が変化する構造に形成された、
請求項1に記載のパイロットリレー。
【請求項5】
前記空気流量増幅モジュールは、
前記増幅圧力信号が入力され、前記増幅圧力信号の空気圧の増加により前記増幅流量信号の空気圧を増加させる正作動の空気流量増幅モジュールと、
前記増幅圧力信号が入力され、前記増幅圧力信号の空気圧の増加により前記増幅流量信号の空気圧を減少させる逆作動の空気流量増幅モジュールと、の少なくとも一方を備える、
請求項1に記載のパイロットリレー。
【請求項6】
請求項1に記載のパイロットリレーと、
電気信号である制御信号を前記空気圧信号に変換する電空変換機構と、
を備えるポジショナ。
【請求項7】
前記空気圧増幅モジュールと、前記空気流量増幅モジュールと、前記電空変換機構とを収容する筐体をさらに備える、
請求項2に記載のポジショナ。
【請求項8】
空気圧信号の空気圧及び空気流量を増幅するパイロットリレーの製造方法であって、
それぞれが、前記空気圧信号の空気圧を増幅し、増幅後の前記空気圧信号を増幅圧力信号として出力する、前記空気圧の増幅率の異なる複数の空気圧増幅モジュールのうちから1つの空気圧増幅モジュールを選択する第1ステップと、
それぞれが、前記増幅圧力信号の空気流量を増幅し、増幅後の前記増幅圧力信号を増幅流量信号として出力する、前記空気流量の増幅率の異なる複数の空気流量増幅モジュールのうちから1つの空気量増幅モジュールを選択する第2ステップと、
前記第1ステップで選択した前記空気圧増幅モジュールと前記第2ステップで選択した前記空気量増幅モジュールとを接続してパイロットリレーを構成する第3ステップと、
を有するパイロットリレーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットリレー、ポジショナ、及び、パイロットリレーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイロットリレーは、入力される空気圧信号の空気圧及び空気流量を増幅して出力するように構成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパイロットリレーは、1つの装置として構成されている。従って、従来のパイロットリレーでは、空気圧の増幅率と空気流量の増幅率との少なくとも一方にバリエーションを持たせることができない。
【0005】
本発明は、パイロットリレーの空気圧の増幅率と空気流量の増幅率との少なくとも一方にバリエーションを持たせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るパイロットリレーは、空気圧信号の空気圧及び空気流量を増幅するパイロットリレーであって、前記空気圧信号の空気圧を増幅し、増幅後の前記空気圧信号を増幅圧力信号として出力する空気圧増幅モジュールと、前記空気圧増幅モジュールに接続され、前記増幅圧力信号の空気流量を増幅し、増幅後の前記増幅圧力信号を増幅流量信号として出力する空気流量増幅モジュールと、を備える。
【0007】
一例として、前記空気圧増幅モジュールでの、前記空気圧信号の空気圧の増幅率は、前記空気流量増幅モジュールでの、前記増幅圧力信号の空気圧に対する前記増幅流量信号の空気圧の増幅率よりも高く、前記空気圧増幅モジュールでの、前記空気圧信号の空気流量に対する前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率は、前記空気流量増幅モジュールでの、前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率よりも低い。
【0008】
一例として、前記空気圧増幅モジュールは、前記空気圧信号が入力される第1室と、前記増幅圧力信号を出力する第2室と、前記空圧増幅モジュールの外部から供給される供給空気圧が入力される第3室と、前記第2室と前記第3室とを連通する連通路と、が形成されたハウジングと、前記第1室に面する入力ダイアフラムと、前記入力ダイアフラムに接続され、前記空気圧信号の空気圧の変化によって変形する前記入力ダイアフラムの変形量に応じて移動する移動体と、前記第2室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に伴って変形する出力ダイアフラムと、前記空気圧信号の空気圧の変化によって移動する移動体とともに移動することで前記連通路の開度を変化させる弁体と、を備え、前記入力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記空気圧信号の空気圧の受圧面と、前記出力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅圧力信号の空気圧の受圧面との面積比に応じて、前記空気圧信号の空気圧の増幅率が変化する構造に形成され、前記第2室の増幅圧力信号の流れ方向に直交する断面の面積に応じて、前記空気圧信号の空気流量の増幅率が変化する構造に形成されている。
【0009】
一例として、前記空気流量増幅モジュールは、前記増幅圧力信号が入力される第1室と、前記増幅流量信号を出力する第2室と、前記空気流量増幅モジュールの外部から供給される供給空気圧が入力される第3室と、前記第2室と前記第3室とを連通する連通路と、が形成されたハウジングと、前記第1室に面する入力ダイアフラムと、前記入力ダイアフラムに接続され、前記増幅圧力信号の空気圧の変化によって変形する前記入力ダイアフラムの変形量に応じて移動する移動体と、前記第2室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に伴って変形する出力ダイアフラムと、前記増幅圧力信号の空気圧の変化によって移動する移動体とともに移動することで前記連通路の開度を変化させる弁体と、を備え、前記入力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅圧力信号の空気圧の受圧面と、前記出力ダイアフラムと前記移動体との組み合わせにおける前記増幅流量信号の空気圧の受圧面との面積比に応じて、前記増幅圧力信号の空気圧の増幅率が変化する構造に形成され、前記第2室の増幅流量信号の流れ方向に直交する断面の面積に応じて、前記増幅圧力信号の空気流量の増幅率が変化する構造に形成されている。
【0010】
一例として、前記空気流量増幅モジュールは、前記増幅圧力信号が入力され、前記増幅圧力信号の空気圧の増加により前記増幅流量信号の空気圧を増加させる正作動の空気流量増幅モジュールと、前記増幅圧力信号が入力され、前記増幅圧力信号の空気圧の増加により前記増幅流量信号の空気圧を減少させる逆作動の空気流量増幅モジュールと、の少なくとも一方を備える。
【0011】
本発明に係るポジショナは、上記パイロットリレーと、電気信号である制御信号を前記空気圧信号に変換する電空変換機構と、を備える。
【0012】
一例として、ポジショナは、前記空気圧増幅モジュールと、前記空気流量増幅モジュールと、前記電空変換機構とを収容する筐体をさらに備える。
【0013】
本発明に係るパイロットリレーの製造方法は、空気圧信号の空気圧及び空気流量を増幅するパイロットリレーの製造方法であって、それぞれが、前記空気圧信号の空気圧を増幅し、増幅後の前記空気圧信号を増幅圧力信号として出力する、前記空気圧の増幅率の異なる複数の空気圧増幅モジュールのうちから1つの空気圧増幅モジュールを選択する第1ステップと、それぞれが、前記増幅圧力信号の空気流量を増幅し、増幅後の前記増幅圧力信号を増幅流量信号として出力する、前記空気流量の増幅率の異なる複数の空気流量増幅モジュールのうちから1つの空気量増幅モジュールを選択する第2ステップと、前記第1ステップで選択した前記空気圧増幅モジュールと前記第2ステップで選択した前記空気量増幅モジュールとを接続してパイロットリレーを構成する第3ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パイロットリレーの空気圧の増幅率と空気流量の増幅率との少なくとも一方にバリエーションを持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るポジショナの構成図である。
【
図2】
図2は、空気圧増幅モジュールの概略切断部端面図である。
【
図3】
図3は、空気流量増幅モジュールの概略切断部端面図である。
【
図4】
図4は、変形例に係る空気流量増幅モジュールの概略切断部端面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るパイロットリレーの構成図である。
【
図6】
図6は、パイロットリレーの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、下記での上下方向及び左右方向は、便宜上設定されたものであり、パイロットリレー及びポジショナの取り付け方向を限定する意図で設定されたものではない。
【0017】
図1に示す本実施形態に係るポジショナ10は、調節計などの外部装置91からの弁開度を指定する電気信号を空気圧信号Pnに変換する電空変換機構20と、空気圧信号Pnの空気圧および空気流量を増幅し、増幅後の空気圧信号を後述の増幅流量信号Poとして流量制御弁95に入力するパイロットリレー30と、を備える。増幅流量信号Poにより流量制御弁95の弁開度が制御される。ポジショナ10は、電空変換機構20及びパイロットリレー30を収容した筐体Lも備える。
【0018】
電空変換機構20は、モータ等のアクチュエータによって変位するフラッパと、フラッパと対向し、流体を噴出するノズルと、を備えるノズルフラッパ機構からなる。ノズルフラッパ機構は、外部装置91からの電気信号によりアクチュエータを駆動することにより、当該電気信号の電流値に応じた変位量でフラッパを変位させる。ノズルフラッパ機構は、フラッパとノズルの先端との距離に応じて変化するノズル背圧を空気圧信号Pnとして出力する。このように電空変換機構20は、電気信号を空気圧信号Pnに変換し、変換した空気圧信号Pnを出力する。空気圧信号Pnは、チューブを介してパイロットリレー30に入力される。
【0019】
パイロットリレー30は、空気圧信号Pnの空気圧を増幅する空気圧増幅モジュール40と、空気圧増幅後の空気圧信号Pnの空気流量を増幅する空気流量増幅モジュール50と、を備える。両者は、別体として形成されている。つまり、この実施の形態では、パイロットリレー30の空気圧を増幅する部分と、空気流量を増幅する部分とを別モジュール化して分割している。
【0020】
空気圧増幅モジュール40は、電空変換機構20からの空気圧信号Pnの空気圧を増幅し、増幅後の空気圧信号Pnを増幅圧力信号Pampとして出力する。増幅圧力信号Pampは、空気圧増幅モジュール40にチューブTを介して又は直接接続された空気流量増幅モジュール50に入力される。空気圧増幅モジュール40の詳細は後述する。
【0021】
空気流量増幅モジュール50は、空気圧増幅モジュール40からの増幅圧力信号Pampの空気流量を増幅し、増幅後の増幅圧力信号Pampを増幅流量信号Poとして出力する。増幅流量信号Poは、空気駆動信号として、チューブなどを介して、流量制御弁95に入力される。この空気駆動信号により流量制御弁95が駆動され、弁開度が調整される。空気流量増幅モジュール50の詳細は後述する。
【0022】
図2に示すように、空気圧増幅モジュール40は、ハウジング41と、ダイアフラム42A~42Cと、移動体45と、弁体46と、スプリング47とを備える。なお、
図2は、空気圧増幅モジュール40を切断した切断部の端面図であるが、奥に見える線の一部を適宜点線で示している(
図3も同様。
図4では実線を使用した)。なお、
図2の状態を初期状態とする。
【0023】
ハウジング41には、入力気圧室41Aと、導入路41Bと、排気室41Cと、バイアス室41Dと、出力気圧室41Eと、供給気圧室41Fと、連通路41Gと、導入路41Hと、が形成されている。また、ハウジング41は、ダイアフラム42A~42Cを支持している。ダイアフラム42A~42Cは、互いに間隔を空けて平行に支持されている。図示はしていないが、ハウジング41は、例えば複数の部材からなってもよく、複数の部材のいずれか2つずつによりダイアフラム42A~42Cをそれぞれ挟み込んで支持してもよい(
図4の構造も参照)。
【0024】
ダイアフラム42Aは、入力気圧室41Aと排気室41Cとを隔てている。ダイアフラム42Bは、排気室41Cとバイアス室41Dとを隔てている。ダイアフラム42Cは、バイアス室41Dと、出力気圧室41Eと、を隔てている。
【0025】
入力気圧室41Aには、電空変換機構20からの空気圧信号Pnが導入路41Bを介して入力される。入力気圧室41Aに面しているダイアフラム42Aには、移動体45の上端部である第1端部が接続されている。移動体45は、ダイアフラム42Aの変形により上下方向に移動する。
【0026】
移動体45は、上下方向に延びてダイアフラム42B及び42Cを貫通しており、移動体45の上下方向の中央部と第1端部と反対の第2端部(下端部)とに、ダイアフラム42B及び42Cがそれぞれ接続されている。移動体45は、複数の部材の組み合わせから構成されてもよい。この場合、複数の部材のいずれか2つずつによりダイアフラム42B及び42Cを挟み込むことで、これらが移動体45に接続される(
図4の構造も参照)。
【0027】
移動体45の第1端部(上端部)は、排気室41Cに配置されている。移動体45の第2端部(下端部)の下面には、開口45Aが形成され、移動体45内には、開口45Aと排気室41Cとを連通させる連通路45Bが形成されている。排気室41Cは、左右方向の両端が開放されており、後述のように、移動体45を介して供給される出力気圧室41E内の空気を大気に排出する。
【0028】
供給気圧室41Fには、モジュール40外から供給される供給空気の空気圧Psが入力される。空気圧Psは、供給気圧室41Fに接続された導入路41Hを介しバイアス室41Dに入力される。
【0029】
出力気圧室41Eは、空気圧信号Pnの空気圧を増幅させた増幅圧力信号Pampを出力する。供給気圧室41Fと出力気圧室41Eとは、連通路41Gにより連通している。連通路41Gは、初期状態において、ポペット弁として構成されている弁体46により閉じられている。弁体46は初期状態において、移動体45の第2端部(下端部)に当接して開口45Aも閉じている。弁体46は、スプリング47により、上方つまり移動体45側に付勢されている。
【0030】
ここで、空気圧増幅モジュール40の動作を説明する。
【0031】
入力気圧室41Aに導入される空気圧信号Pnの圧力増加は、ダイアフラム42Aを下方に膨らむように変形させる。この変形は、移動体45及び移動体45に当接する弁体46をスプリング47の付勢力に抗して下方に移動させる。移動体45の下方への移動は、ダイアフラム42B及び42Cも変形させる。弁体46の下方への移動により、弁体46により閉じられていた連通路41Gが開かれ、供給空気圧Psの空気がその開度に応じた量だけ出力気圧室41Eに供給される。これにより、出力気圧室41Eの空気圧が増える。増えた空気圧は、増幅圧力信号Pampとして出力気圧室41Eから空気圧増幅モジュール40の外部に出力される。増幅圧力信号Pampの値が目的値に到達すると、スプリング47の付勢力により弁体46および移動体45が上方に移動し、再度連通路41Gが閉じる。
【0032】
空気圧信号Pnの空気圧が減少した場合、ダイアフラム42Aの形状が初期状態の方向に戻り、移動体45が上方に移動する。この移動により、移動体45が弁体46と離れ、移動体45の開口45Aが開放される。これにより、出力気圧室41E内の空気が、移動体45の開口45A、連通路45B、及び排気室41Cを介して大気に放出される。従って、増幅圧力信号Pampが下がる。増幅圧力信号Pampの値が目的値に到達すると、スプリング47の付勢力により弁体46も移動して移動体45と接触し、再度開口45Aを閉じる。
【0033】
以上のような動作により、空気圧増幅モジュール40は、入力である空気圧信号Pnの圧力変化を、出力である増幅圧力信号Pampに伝達する。また、空気圧増幅モジュール40は、増幅圧力信号Pampの空気圧が、空気圧信号Pnの空気圧を増幅した空気圧となるように設計されている。具体的に、空気圧の増幅率は、入力気圧室41Aに面するダイアフラム(入力ダイアフラム)42Aと移動体45との組み合わせにおける、空気圧信号Pnの空気圧の受圧面と、出力気圧室41Eに面するダイアフラム(出力ダイアフラム)42Cと移動体45との組み合わせにおける増幅流量信号Pampの空気圧の受圧面との面積比に応じて変化する。前者に対して後者が小さくなるほど、増幅率は大きくなるため、空気圧増幅モジュール40では、所望の増幅率が得られるように特にダイアフラム42Cが小さく設計され、ダイアフラム42Aが大きく設計されている。以上のようなことから、増幅圧力信号Pampは、空気圧信号Pnの空気圧を増幅した信号として出力される。
【0034】
次に、空気流量増幅モジュール50の構成を
図3に示す。
図3に示すように、空気流量増幅モジュール50の基本構成は、空気圧増幅モジュール40と同様である。つまり、空気流量増幅モジュール50は、ハウジング51と、ダイアフラム52A~52Cと、移動体55と、弁体56と、スプリング57とを備える。ハウジング51には、入力気圧室51Aと、導入路51Bと、排気室51Cと、バイアス室51Dと、出力気圧室51Eと、供給気圧室51Fと、連通路51Gと、導入路51Hと、が形成されている。これら各要素の説明は、空気圧増幅モジュール40の説明に準じる(空気圧増幅モジュール40の要素の符号に10を足して読み替えることができる)。
【0035】
空気流量増幅モジュール50には、空気圧信号Pnの代わりに増幅圧力信号Pampが空気圧増幅モジュール40から入力される。また、出力気圧室51Eからは、増幅圧力信号Pampの空気流量を増幅した増幅流量信号Poが出力される。ここで、出力気圧室51Eと、供給気圧室51Fと、連通路51Gと、開口55Aと、連通路55Bと、排気室51Cとの各断面積(特に、出力気圧室51Eの断面積)は、大きく設定されている。断面積は、空気(増幅流量信号Poを含む)の流れ方向に直交する断面の面積である。断面積が大きいことで、増幅流量信号Poの空気流量が多く、従って、増幅流量信号Poは、増幅圧力信号Pampの空気流量を増幅した信号となる。なお、空気圧増幅モジュール40は、空気流量の増幅が不要なので、前記の断面の面積は小さくてよい。従って、空気圧増幅モジュール40は、空気流量増幅モジュール50よりも大幅に小さくできる。また、空気流量増幅モジュール50では、移動体55の横方向に切った断面が上下でほぼ変わらず、ダイアフラム52Aとダイアフラム52Cとの各面積もほぼ同じとなっている。このため、空気圧の増幅率はほぼ1となっている。換言すると、空気流量増幅モジュール50は、空気圧信号Pampの空気圧及び空気流量のうち主に空気流量を増幅する。
【0036】
以上のように、本実施形態では、パイロットリレー30が、空気圧信号Pnの空気圧を増幅し、増幅後の空気圧信号を増幅圧力信号Pampとして出力する空気圧増幅モジュール40と、空気圧増幅モジュール40に接続され、増幅圧力信号Pampの空気流量を増幅し、増幅後の増幅圧力信号を増幅流量信号Poとして出力する空気流量増幅モジュール50と、を備える。従って、空気圧増幅モジュール40と空気流量増幅モジュール50とが別体となっているため、例えば、モジュール40を空気圧の増幅率の異なる他のモジュール40に交換することができ、モジュール50を空気流量の増幅率の異なる他のモジュール50に交換できる。従って、空気圧の増幅率と空気流量の増幅率とにバリエーションを持たせることができる。このため、流量制御弁95等の空気信号の出力先の機械的特性が要求する空気圧及び空気流量を提供するパイロットリレーが容易に得られる。なお、モジュール40及び50のうちのどちらかを固定としてもよい。空気圧の増幅率と空気流量の増幅率との少なくとも一方にバリエーションを持たせることができればよい。
【0037】
また、パイロットリレー30全体が従来のパイロットリレーよりも小型化される。従来のパイロットリレーでは、空気圧の増幅のため、入力側のダイアフラム(正確には、移動体も含めた受圧面。以下同じ)を大きくするか出力側のダイアフラムを小さくする必要がある。しかしながら、従来のパイロットリレーでは、空気流量の増幅のために出力側のダイアフラムをある程度大きくする必要があり、入力側のダイアフラムをさらに大きくする必要がある。そして、その分パイロットリレーが大きくなる。この実施の形態では、空気圧増幅モジュール40では流量増幅の必要がないので、入力側のダイアフラム42A及び出力側のダイアフラム42Cを小さくしたまま、両者の面積差を大きくすることができ、空気圧の増幅率を向上させることができる。また、空気流量増幅モジュール50では空気圧の増幅の必要がないので、入力側のダイアフラム52A及び出力側のダイアフラム52Cの大きさを同じとすることができる。これにより、パイロットリレー30全体が小型化される。このようなことは、特に、空気圧増幅モジュール40での空気圧の増幅率が、空気流量増幅モジュール50での空気圧の増幅率よりも高く、かつ、空気圧増幅モジュール40での空気流量の増幅率が、空気流量増幅モジュール50での空気流量の増幅率よりも低いときにいえる。
【0038】
さらに、モジュール40及び50は、空気圧信号Pn又は増幅気圧信号Pampの空気圧の上記受圧面と、増幅圧力信号Pamp又は増幅流量信号Poの空気圧の上記受圧面との面積比に応じて、空気圧の増幅率が変化する構造に形成され、かつ、出力気圧室41E又は51Eの出力信号の流れ方向(空気の流れ方向)に直交する断面の面積に応じて、空気流量の増幅率が変化する構造に形成されている。これにより、増幅率を異ならせたモジュールが容易に用意される。
【0039】
また、パイロットリレー30を、空気圧増幅モジュール40と、空気流量増幅モジュール50とに分割したことにより、個々のモジュール40及び50は、従来のパイロットリレーよりも小型化されるため、個々のモジュール40及び50を、ポジショナ10の筐体L(
図1)の、電空変換機構20などが配置されないデッドスペースに分散して配置することができる。従って、ポジショナ10の大型化が抑制される。なお、モジュール40及び50は、増幅圧力信号Pampを供給するためのチューブT(
図1)により接続されるとよい。これにより、分散配置が実現される。
【0040】
本実施形態では、入力される増幅圧力信号Pampの空気圧の増加により増幅流量信号Poの空気圧を増加させる正作動タイプの空気流量増幅モジュール50が採用されているが、増幅圧力信号Pampの空気圧の減少により増幅流量信号Poの空気圧を増加させる逆作動タイプの空気流量増幅モジュール150(
図4参照)が採用されてもよい。
【0041】
空気流量増幅モジュール150は、ハウジング151と、ダイアフラム152A~152Dと、移動体155と、弁体156と、スプリング157とを備える。
【0042】
ハウジング151には、外部からの供給気圧Psが入力される供給気圧室151A及び151Bと、増幅気圧信号Pampが入力される入力気圧室151Cと、大気圧Pairが入力される大気圧室151Dと、増幅流量信号Poを出力する出力気圧室151Eと、が形成されている。さらに、ハウジング151には、出力気圧室151Eの空気をモジュール150の外部の放出するための排気室151Fも形成されている。さらに、ハウジング151には、供給気圧室151Bと出力気圧室151Eとを連通する連通路151Gも形成されている。
【0043】
ハウジング151は、ダイアフラム152A~152Dを支持している。ダイアフラム152A~152Dは、互いに間隔を空けて平行に支持されている。移動体155と、弁体156と、スプリング157とは、上記実施形態のものと同様の構成を有する。
【0044】
ダイアフラム152Aは、供給気圧室151Aと排気室151Fとを隔てている。ダイアフラム152Bは、排気室151Fと入力気圧室151Cとを隔てている。ダイアフラム152Cは、入力気圧室151Cと大気圧室151Dとを隔てている。ダイアフラム152Dは、大気圧室151Dと出力気圧室151Eとを隔てている。
【0045】
入力気圧室151Cに導入される増幅気圧信号Pampの圧力増加は、移動体155を上方に移動させる。これは、入力気圧室151Cに面するダイアフラム152Cよりもダイアフラム152Bの方がその面積が大きいことによる。この上方への移動により、移動体155と弁体156とが離れ、出力気圧室151E内の空気が、移動体155の開口155A及び連通路155Bと排気室151Fとを介して大気に放出される。これにより、増幅流量信号Pampの空気圧は下がる。他方、入力気圧室151Cに導入される増幅気圧信号Pampの圧力減少は、移動体155を下方に移動させる。この移動体155により弁体156がスプリング157の付勢力に抗して下方に押され、連通路151Gが開かれる。これにより、供給空気圧Psが、出力気圧室151Eに供給され、出力気圧室151E内の圧力が増加し、増幅流量信号Poの空気圧が上昇する。空気圧の増幅率は、(ダイアフラム152Bとダイアフラム152Cとの面積差と、ダイアフラム152Dの面積との比により決まる。ここでは、面積比率を1程度にすることで、空気圧の増幅が抑制される(増幅はその前段のモジュール40により行われる)。供給空気室151Aは、バイアス室であり、バイアス室41D及び51Dと同様、入力の信号と出力の信号とがつりあう範囲をオフセットするために設けられている。
【0046】
図5に示すように、パイロットリレー130は、空気圧増幅モジュール40と、当該モジュールが出力する増幅気圧信号Pampが入力される空気流量増幅モジュール50及び150を備えてもよい。これにより、正作動及び逆作動が可能なパイロットリレーについて、空気圧を増幅する部分を空気圧増幅モジュール40に共通化できるので、全体的な小型化が実現される。
【0047】
パイロットリレーは、例えば、下記のようなステップで製造されるとよい。
【0048】
例えば、
図6に示すように、空気圧信号の空気圧の増幅率(例えば、上記面積比)の異なる複数の空気圧増幅モジュールと、増幅気圧信号の空気流量の増幅率(例えば、上記断面積)の異なる複数の空気流量増幅モジュールとを用意する(ステップS11)。その後、用意した複数の空気圧増幅モジュールの中から、所望の空気圧の増幅率の空気圧増幅モジュールを選択する(ステップS12)。さらに、ステップS12と並行して又は前後して、用意した複数の空気流量増幅モジュールの中から、所望の空気流量の増幅率の空気流量増幅モジュールを選択する(ステップS13)。その後、選択した各モジュールを接続して、パイロットリレーを構成する(ステップS14)。
【0049】
このような構成によれば、製造するパイロットリレーの空気圧の増幅率と空気流量の増幅率とにバリエーションを持たせることができる。なお、空気流量増幅モジュールと空気圧増幅モジュールとのうちの一方を1種類とし、他方のみを選択可能としてもよい。
【0050】
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。例えば、空気流量増幅モジュールは、所定の増幅率で空気圧を増幅するように構成されてもよい。なお、上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…ポジショナ、20…電空変換機構、30…パイロットリレー、40…空気圧増幅モジュール、41…ハウジング、41A…入力気圧室、41B…導入路、41C…排気室、41D…バイアス室、41E…出力気圧室、41F…供給気圧室、41G…連通路、41H…導入路、42A~42C…ダイアフラム、45…移動体、45A…開口、45B…連通路、46…弁体、47…スプリング、50…空気流量増幅モジュール、51…ハウジング、51A…入力気圧室、51B…導入路、51C…排気室、51D…バイアス室、51E…出力気圧室、51F…供給気圧室、51G…連通路、51H…導入路、52A~52C…ダイアフラム、55…移動体、56…弁体、57…スプリング、91…外部装置、95…流量制御弁、130…パイロットリレー、150…空気流量増幅モジュール、151…ハウジング、151A…供給気圧室、151B…供給気圧室、151C…入力気圧室、151D…大気圧室、151E…出力気圧室、151F…排気室、151G…連通路、152A~152D…ダイアフラム、155…移動体、155A…開口、155B…連通路、156…弁体、157…スプリング。