(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145699
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】支持板、支持具及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241004BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20241004BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241004BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/68 N
C30B29/36 A
H01L21/02 B
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058163
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】高村 誠
(72)【発明者】
【氏名】森本 満
(72)【発明者】
【氏名】前川 拓滋
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE08
4G077DB05
4G077DB07
4G077HA06
5F045AA03
5F045AB06
5F045AB07
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5F131EB57
5F131EB75
5F131EB78
5F131EB79
5F131EC02
5F131EC08
5F131EC12
5F131EC17
5F131EC18
(57)【要約】
【課題】高品質かつ低コストで半導体基板を製造できるような支持具を提供する。
【解決手段】支持具1は、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7と、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7を支持する支柱2であって、少なくとも3枚の支持板3、4、5を有し、支持板3、4、5は、複数の溝3a、4a、5aについて、第1溝3a1、4a1、5a1で第1ダミー基板6と嵌合し、第2溝3a2、4a2、5a2で第2ダミー基板7と嵌合する支柱2とを有し、支柱2は、支持板3、4、5の複数の溝3a、4a、5aの内で第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2を除いた第3溝3a3、4a3、5a3に差し込まれた仮基板9を支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮基板を支持し、前記仮基板の主面に支持された半導体基板にSiC多結晶成長層を形成することを可能にする支持板であって、
その一つの縁に形成された複数の溝を含み、前記複数の溝は、前記主面が前記一つの縁の延びる方向に直交するような方位で差し込まれた前記仮基板を支持するように構成された溝を含む支持板。
【請求項2】
黒鉛で構成された請求項1に記載の支持板。
【請求項3】
前記一つの縁は、長手方向に延び、前記複数の溝によって櫛歯状に形成された請求項1に記載の支持板。
【請求項4】
矩形板状の形状を有し、前記一つの縁は前記矩形板状の形状の一つの長辺である請求項3に記載の支持板。
【請求項5】
前記櫛歯状の複数の溝が形成された前記一つの縁の少なくとも一部の範囲に膨張黒鉛シートが取り付けられた請求項3又は4に記載の支持板。
【請求項6】
請求項1に記載の支持板を用いる前記仮基板の支持具であって、
第1ダミー基板及び第2ダミー基板と、
前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板を支持する支柱であって、少なくとも3枚の前記支持板を含み、前記支持板は、前記複数の溝について、第1溝で前記第1ダミー基板と嵌合し、第2溝で前記第2ダミー基板と嵌合する支柱と
を含み、
前記支柱は、前記支持板の複数の溝の内で前記第1溝及び前記第2溝を除いた第3溝に差し込まれた前記仮基板を支持するように構成された支持具。
【請求項7】
前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板は、前記支柱によって互いに平行になるように固定された請求項6に記載の支持具。
【請求項8】
前記支柱は、前記支持板の前記一つの縁の延びる方向が互いに平行になるように前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板の周に沿って配置された請求項6に記載の支持具。
【請求項9】
前記第1溝は、前記複数の溝について、前記一つの縁の延びる方向に一端の溝であり、前記第2溝は前記方向に他端の溝である請求項6に記載の支持具。
【請求項10】
前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板の少なくとも一方は、黒鉛から構成された請求項6から9のいずれか一項に記載の支持具。
【請求項11】
前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板の少なくとも一方は、SiCから構成された請求項6から9のいずれか一項に記載の支持具。
【請求項12】
前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板は、円板状又は矩形板状である請求項6から9のいずれか一項に記載の支持具。
【請求項13】
1対の前記支持板は前記第1ダミー基板及び前記第2ダミー基板を挟んで対向し、残りの前記支持板は前記対向する前記1対の前記支持板を含む平面に対して一方の側にある請求項6から9のいずれか一項に記載の支持具。
【請求項14】
請求項6に記載の支持具を用いる半導体基板の製造方法であって、
SiC単結晶基板のSi面にSiCエピタキシャル成長層を形成する工程と、
前記SiCエピタキシャル成長層のSi面を前記仮基板に貼り付ける工程と、
前記SiCエピタキシャル成長層を前記SiC単結晶基板から取り外す工程と、
前記SiCエピタキシャル成長層を貼り付けた仮基板を前記支持具で支持する工程と、
前記仮基板に貼り付けた前記SiCエピタキシャル成長層のC面にSiC多結晶成長層を形成する工程と、
前記SiC多結晶成長層を形成した前記仮基板を前記支持具から取り外す工程と、
前記仮基板を除去する工程と
を含む半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記SiC単結晶基板のSi面にグラフェン層を形成する工程をさらに含み、前記SiCエピタキシャル成長層を形成する工程は、前記SiC単結晶基板のSi面に前記グラフェン層を介して前記SiCエピタキシャル成長層を形成する請求項14に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
前記SiCエピタキシャル成長層を前記SiC単結晶基板から取り外す工程は、前記SiCエピタキシャル成長層を前記グラフェン層から剥離する請求項15に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記SiCエピタキシャル成長層を前記グラフェン層から剥離する応力を発生するストレス層を前記SiCエピタキシャル成長層のSi面に形成する工程をさらに含み、前記SiCエピタキシャル成長層のSi面を前記仮基板に貼り付ける工程は、前記仮基板に前記ストレス層を介して前記SiCエピタキシャル成長層のSi面を貼り付ける請求項15に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
前記SiC単結晶基板のSi面から所定の深さに水素イオン注入層を形成する工程をさらに含み、前記SiC単結晶基板から前記SiCエピタキシャル成長層を取り外す工程は、前記水素イオン注入層を脆化して、前記SiC単結晶基板から前記水素イオン注入層で分断された薄化SiC単結晶層とともに前記SiCエピタキシャル成長層を剥離する請求項14に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項19】
前記SiCエピタキシャル成長層とともに剥離した前記薄化SiC単結晶層のC面を研磨する工程をさらに含む請求項18に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項20】
前記仮基板は、黒鉛で構成された請求項14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項21】
前記仮基板は、前記SiC単結晶基板よりも大きな外形サイズを有する請求項14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項22】
前記仮基板は、表面に形成されたガラス状カーボン被膜を含む請求項14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項23】
前記仮基板を除去する工程は、前記仮基板を燃焼させて除去する請求項14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項24】
前記SiCエピタキシャル成長層のC面に前記仮基板を貼り付ける工程は、前記SiCエピタキシャル成長層と前記仮基板とをカーボン接着剤による接着層を介して貼り付ける請求項23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項25】
前記仮基板を除去する工程は、前記仮基板とともに前記接着層も燃焼させて除去する請求項24に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持板、支持具及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力制御の用途にショットキーバリアダイオード(Schottky barrier diode:SBD)、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor:MOSFET)、IGBT(insulated gate bipolar transistor)のようなSiC製のパワーデバイスが提供されている。このようなSiC製のデバイスが形成されるSiC半導体基板は、製造コストを低減したり所望の物性を提供したりするために、多結晶のSiC半導体基板に単結晶のSiC半導体基板を貼り合わせて作製されることがあった。特許文献1には、多結晶のSiC半導体基板に貼り付けた単結晶のSiC半導体基板の上にエピタキシャル層を成長させるため、単結晶のSiC半導体基板を多結晶のSiC半導体基板に無欠陥で貼り付ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単結晶のSiC半導体基板を多結晶のSiC半導体基板に常温接合や拡散接合で貼り付けるために必要な表面粗さの確保する研磨加工が高コストになり、また、多結晶のSiC半導体自立基板を化学気相堆積(chemical vapor deposition:CVD)法で製造する際に、成膜基板を支持する支持具が高コストとなり、必要な低コスト化が難しいという課題があった。
【0005】
本開示は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、高品質かつ低コストで半導体基板の提供を可能にするような支持板及び支持具並びに半導体基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の支持板は、仮基板を支持し、仮基板の主面に支持された半導体基板にSiC多結晶成長層を形成することを可能にする支持板であって、その一つの縁に形成された複数の溝を含み、複数の溝は、主面が一つの縁の延びる方向に直交するような方位で差し込まれた仮基板を支持するように構成された溝を含む。
【0007】
本開示の一態様の支持具は、支持板を用いるものであって、第1ダミー基板及び第2ダミー基板と、第1ダミー基板及び第2ダミー基板を支持する支柱であって、少なくとも3枚の支持板を含み、支持板は、複数の溝について、第1溝で第1ダミー基板と嵌合し、第2溝で第2ダミー基板と嵌合する支柱とを含み、支柱は、支持板の複数の溝の内で第1溝及び第2溝を除いた第3溝に差し込まれた半導体基板を支持するように構成されている。
【0008】
本開示の一態様の半導体基板の製造方法は、支持具を用いるものであって、SiC単結晶基板のSi面にSiCエピタキシャル成長層を形成する工程と、SiCエピタキシャル成長層のSi面を仮基板に貼り付ける工程と、SiCエピタキシャル成長層をSiC単結晶基板から取り外す工程と、SiCエピタキシャル成長層を貼り付けた仮基板を支持具で支持する工程と、仮基板に貼り付けたSiCエピタキシャル成長層のC面にSiC多結晶成長層を形成する工程と、SiC多結晶成長層を形成した仮基板を支持具から取り外す工程と、仮基板を除去する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によると、高品質かつ低コストで半導体基板の提供を可能にするような支持板及び支持具並びに半導体基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】
図4は仮基板を収容する支持具の俯瞰図を示す。
【
図5】
図5は仮基板を収容する支持具の正面図を示す。
【
図12】
図12は
図11Aに示した4H-SiC結晶のユニットセルを(0001)面の真上から見た構成図を示す。
【
図13】
図13はSiC単結晶基板上に第1グラフェン層を形成した構造の断面図を示す。
【
図14】
図14は第1グラフェン層上にSiCエピタキシャル成長層を形成した構造の断面図を示す。
【
図15】
図15はSiCエピタキシャル成長層上にストレス層を形成した構造の断面図を示す。
【
図16】
図16はストレス層上に接着層を介して黒鉛基板を貼り合わせた構造の断面図を示す。
【
図17A】
図17Aはストレス層上に接着層を介して黒鉛基板を貼り合わせ、SiCエピタキシャル成長層とグラフェン層との界面で剥離した構造のSiCエピタキシャル成長層側の断面図を示す。
【
図17B】
図17Bはストレス層上に接着層を介して黒鉛基板を貼り合わせ、SiCエピタキシャル成長層とグラフェン層との界面で剥離した構造のグラフェン層側の断面図を示す。
【
図18】
図18は黒鉛基板の両面に
図17Aの剥離構造を貼り付けて、アニール処理により接着層を炭化した構造の断面図を示す。
【
図20】
図20はCVD法によりSiC多結晶成長層を形成した構造の断面図を示す。
【
図21】
図21はCVD法によりSiC多結晶成長層を形成した構造の平面図である。
【
図24】
図24はCVD法によりSiC多結晶成長層を形成した後で変形例の支持具から取り外した
図18の構造の断面図を示す。
【
図25】
図25は燃焼により黒鉛基板及び炭化した接着層を除去した構造の断面図を示す。
【
図26】
図26は外周のSiC多結晶成長層、ストレス層を除去し、SiC複合基板とした構造の断面図を示す。
【
図29】
図29はSiC単結晶基板のSi面に水素イオン注入層を形成した構造の断面図を示す。
【
図30】
図30は水素イオン注入層のアニール処理により、水素イオン注入層を脆弱化して単結晶SiC薄化層を形成後、単結晶SiC薄化層のSi面にSiCエピタキシャル成長層を形成した構造の断面図を示す。
【
図31】
図31はSiCエピタキシャル成長層のSi面に接着層を介して黒鉛基板を貼り付けた構造の断面図を示す。
【
図32】
図32は脆弱化アニールを行って形成した単結晶SiC薄化層を介してSiC単結晶基板と剥離・分離した構造の断面図を示す。
【
図33】
図33は単結晶SiC薄化層の剥離面を平滑化した構造の断面図を示す。
【
図35】
図35はCVD法によりSiC多結晶成長層を形成した構造の断面図を示す。
【
図38】
図38は
図37の上部の構造から外周のSiC多結晶成長層、ストレス層を除去して得られたSiC複合基板の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、実施の形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なものである。また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。実施の形態は、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(支持板及び支持具)
図1は実施の形態の支持具1の俯瞰図を示す。
図2は支持具1の正面図を示し、
図3は支持具1の平面図を示す。支持具1は、主面に半導体基板を支持する仮基板を内部に収容して支持し、半導体基板の表面にCVDによりSiC多結晶成長層を形成することを可能にする。また、実施の形態の支持板である第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は、支持具1に収容した仮基板を三方から取り囲んで支持する支柱2を構成する。
【0013】
支持具1は、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5から構成された支柱2と、支柱2と嵌合された第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とを有している。これら支柱2と第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とは、互いに嵌合されて固定され、支持具1を形成する。支持具1は、仮基板を収容して支持できるように、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間を形成している。
【0014】
支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は、矩形板状の形状を有し、一つの長辺に沿ってそれぞれ複数の溝3a、4a、5aが櫛歯状に形成されている。第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は一つの長辺が互いに平行になるように配置され、複数の溝3a、4a、5aの内で一つの長辺に沿って一端の第1溝3a1、4a1、5a1に、円板状の形状を有する第1ダミー基板6が、その主面が一つの長辺と直交する方位で差し込まれて嵌合している。また、一つの長辺に沿って他端の第2溝3a2、4a2、5a2には、第1ダミー基板6と同様に円板状の形状を有する第2ダミー基板7が、その主面が一つの長辺と直交する方位で差し込まれて嵌合している。第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は、周に沿って配置された第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5によって互いに平行になるように保たれている。複数の溝3a、4a、5aの内で第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2を除いた第3溝3a3、4a3、5a3は、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7と同様に円板状の形状を有する仮基板が、その主面となる底面及び/又は底面が一つの長辺の方向と直交するような方位で差し込まれたときに、仮基板を受け入れて一つの長辺方向に支持する。
【0015】
支柱2は、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間に支持具1の外部から仮基板を差し込んで収容することができるように、支持具1の正面で開口している。支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の内で、例えば第1支持板3及び第3支持板5の一対は第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7を挟んで対向する位置に配置され、残りの第2支持板4は第1支持板3及び第3支持板5を含む平面について支持具1の正面とは反対の一方の側に配置されている。このような支柱2の配置によって、その主面が一つの長辺に直交する方位を有する仮基板は、支持具1の正面から支柱2の第1支持板3及び第3支持板5の一対の間の開口を通って第2支持板4に向かって差し込まれ、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間に収納されることが確保されている。
【0016】
図4は仮基板9を収容した支持具1の俯瞰図を示す。
図5は仮基板9を収容した支持具1の正面図を示す。支持具1において、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間に複数の仮基板9が収容されている。この空間において、仮基板9は、複数の溝3a、4a、5aの内で第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7にそれぞれ嵌合する第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2を除いた第3溝3a3、4a3、5a3に、その主面が一つの長辺と直交するような方位で差し込まれ、一つの長辺の方向に支持されている。
【0017】
実施の形態の仮基板9は、所定の径及び厚みを有する円板状の形状を有し、
図5に示すように、底面で第1半導体基板9aを支持し、頂面で第2半導体基板9bを支持している。仮基板9は黒鉛から構成されているが、SiCなど他の材料から構成されてもよい。第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bは、後述するようにSiC単結晶基板を含む積層体の半導体基板である。第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bは、それぞれ仮基板9の底面及び頂面において、外周から所定の距離までの縁部を除いた領域に配置されている。換言すると、仮基板9の底面及び頂面において外周から所定範囲は、第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bが配置されていない縁部を形成している。
図5においては仮基板9の底面及び頂面にそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bが支持されているが、仮基板9には底面の第1半導体基板9a及び頂面の第2半導体基板9bの一方のみが支持されていてもよい。
【0018】
図6は第1支持板3を示す三面図を示す。第1支持板3は、矩形板状の形状を有する黒鉛板であり、例えば縦横が25mm×250mm、厚みが2mmであってもよい。第1支持板3には、一つの長辺に沿って所定の間隔で複数の溝3aが櫛状に形成されている。複数の溝3aの内で第1ダミー基板6と嵌合する第1溝3a1及び第2ダミー基板7と嵌合する第2溝3a2を除いた第3溝3a3は、差し込まれた仮基板9を支持するようなサイズに形成されている。例えば、第3溝3a3の幅は例えば仮基板9の厚みが2mmのときには2.1mmとすることができ、その深さは(仮基板9の直径)-(第1半導体基板9a又は第2半導体基板9bの直径))/2-2mmとすることができる。仮基板9を支持する第3溝3a3の数及びピッチは、支持具1に収容する仮基板9の枚数、第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bのサイズなどに応じて調整される。例えば第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bが4インチウェハであり、支持具1に25枚の仮基板9を収容する場合には、仮基板9を支持する第3溝3aの数を少なくとも27、ピッチを少なくとも8mmとすることができる。
【0019】
第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とそれぞれ嵌合する第1溝3a1及び第2溝3a2は、主面が一つの長辺の方向と直交するような方向で差し込まれた第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とそれぞれ嵌合するような幅及び深さで形成され、第1支持板3と、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とが、がたつきを生じることなく互いに嵌合して固定されるようにしている。なお、第1支持板3には必要に応じてCVDによりSiC被膜を形成してもよいが、その場合には溝3aの幅はSiC被膜の厚さを考慮して設定する。ここでは、
図6を参照して第1支持板3について説明したが、第2支持板4及び第3支持板5についても同様である。
【0020】
図7Aは第1ダミー基板6の平面図を示す、
図7Bは第1ダミー基板6の側面図を示す。第1ダミー基板6は、円板状の形状を有する黒鉛板であり、例えば厚みが2mm以上とすることができる。第1ダミー基板6は、仮基板9と同様のサイズであってもよい。なお、第1ダミー基板6には、必要に応じてCVDによりSiC被膜を形成してもよい。また、第1ダミー基板6は、黒鉛に限らず、SiCなど他の材料で構成してもよい。ここでは、
図7を参照して第1ダミー基板6について説明したが、第2ダミー基板7についても同様である。
【0021】
上述のような構成を有する支持具1は、次のような手順によって組み立てることができる。所定のサイズを有する矩形板状の黒鉛板を用意し、一つの長辺に沿って所定のピッチ、幅及び深さなどで複数の溝3a、4a、5aを櫛歯状に形成することによって、支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5を作製する。また、所定のサイズを有する円板状の黒鉛板を用意し、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とする。必要に応じて、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5並びに第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7にCVDによりSiC被膜を形成してもよい。そして、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5に形成された第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2にそれぞれ第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7の周に嵌合させるように組み立てる。組み立てた支持具1において、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は一つの長辺は平行になり、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は平行になるように互いに固定される。
【0022】
なお、実施の形態の第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は矩形板状の形状を有していたが、支持具1の支柱2を構成することができるような柱状の部材であって、複数の溝が一つの縁に形成されているものあれば矩形板状の形状に限らない。また、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5において、第1ダミー基板6を嵌合する第1溝3a1、4a1、5a1は、矩形板状の第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の一つの長辺に形成された複数の溝3a、4a、5aの内で一つの長辺に沿って一端に形成され、第2ダミー基板7を嵌合する第2溝3a2、4a2、5a2は複数の溝3a、4a、5aの内で一つの長辺に沿って他端に形成されていたが、これらの位置に限られない。第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2は複数の溝3a、4a、5aに含まれていればよく、仮基板9を支持する第3溝3a3、4a3、5a3は、複数の溝3a、4a、5aの内で、第1ダミー基板6を嵌合する第1溝3a1、4a1、5a1と、第2ダミー基板7を嵌合する第2溝3a2、4a2、5a2とを除いた残りの溝3a、4a、5aであればよい。
【0023】
第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は円板状の形状を有するとしたが、支持具1に収容する仮基板9と同様の形状になるように矩形板状など他の形状であってもよい。また、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は、それぞれ1枚に限らず、複数枚の基板を重ねてそれぞれ第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7としてもよい。
【0024】
仮基板9においては主面となる底面及び頂面でそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bを支持していたが、仮基板9が支持する半導体基板は底面の第1半導体基板9aだけであっても、頂面の第2半導体基板9bだけであってもよい。
【0025】
以上説明したように、実施の形態の第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5は、黒鉛板から構成されているため安価である。また、実施の形態の支持具1は、黒鉛板から構成された第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5と、同様に黒鉛板から構成された第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とからなるため安価である。このため、支持具1において仮基板9で支持した第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bにCVDによりSiC多結晶成長層を形成したときに、支持具1に固着した仮基板9の端部とともに支持具1を切り離して使い捨てにすることができる。このように支持具1が安価で使い捨てであるため、半導体基板の製造方法のコストも低減することができる。
【0026】
実施の形態の支持具1は、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間に底面及び頂面にそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bを支持した複数枚の仮基板9を収容することができる。支持具1において、複数の仮基板9は支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の一つの長辺に形成された第3溝3a3、4a3、5a3によって所定間隔で支持されている。また、支持具1に支持された複数枚の仮基板9は支柱2の第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5によって遮られる方位を除いて主面の面内の方向に開放されている。このため、支持具1に収容された複数枚の仮基板9にはCVDの工程において均一な雰囲気を提供することができ、仮基板9の底面及び頂面にそれぞれ支持された第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bには高品質なSiC多結晶成長層16を形成することができる。また、支持具1には複数枚の仮基板9を収容することができ、仮基板9においては底面及び頂面にそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bを支持している。このため、多数の半導体基板のCVD処理をバッチで実施することができ、半導体基板の製造方法のコストを低減することができる。
【0027】
次に、実施の形態の変形例の支持具1について説明する。変形例の支持具1は、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の一つの長辺に複数の溝3a、4a、5aが櫛形に形成された領域において仮基板9を支持する第3溝3a3、4a3、5a3を含む範囲に膨張黒鉛シートが取り付けられた点が実施の形態の支持具1と相違するが、他の構成は実施の形態の支持具1と同様である。
【0028】
図8は変形例の第1支持板3を示す。変形例の第1支持板3は、実施の形態の第1支持板と同様に、矩形板状の形状を有する黒鉛板であり、一つの長辺に沿って所定の間隔で複数の溝3aが櫛状に形成されている。変形例の第1支持板3には、一つの長辺に沿って形成された複数の溝3aの内で第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とそれぞれ嵌合する第1溝3a1及び第2溝3a2を除いた仮基板9を支持する第3溝3a3を含む範囲に膨張黒鉛シート8が取り付けられている。膨張黒鉛シート8は、グラフェンの積層体を膨張させた膨張黒鉛をプレスして形成されたものであり、非常に柔らかく可撓性を有し、圧縮強度、弾力性、耐熱性に優れるなどの特性を有し、耐熱性が求められるシール材などに使用されている。変形例の第1支持板3においては、一つの長辺に沿って第3溝3a3を含む領域に膨張黒鉛シート8が取り付けられているため、第3溝3a3と差し込まれた仮基板9との間の隙間を埋めることができる。
【0029】
変形例の第1支持板3においては、膨張黒鉛シート8が第3溝3a3と仮基板9との間の隙間を埋めているため、仮基板9に支持された第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bの表面にCVDによりSiC多結晶成長層を形成したときに、仮基板9と第3溝3aの間にSiC多結晶成長層が成膜されて仮基板9と第3溝3a3とが固着することを防ぐことができる。また、第3溝3a3に差し込まれた黒鉛基板19を介して仮基板9と第1支持板3との間にSiC多結晶成長層が成膜されて黒鉛基板19と第1支持板3とが固着したときにも、一つの長辺に沿って第3溝3a3を含む範囲に膨張黒鉛シート8が取り付けられ、SiC多結晶成長層は第1支持板3に膨張黒鉛シート8を介在させて成膜されているため、膨張黒鉛シート8をグラフェンの層に沿って剥離することによってSiC多結晶成長層を容易に取り外すことができる。このように、変形例においては、第1支持板3をCVDの工程の後で仮基板9から取り外して繰り返し使用することが可能である。したがって、変形例においては半導体の製造方法を低コスト化することができる。ここでは、
図8を参照して変形例の第1支持板3について説明したが、変形例の第2支持板4及び第3支持板5についても同様である。
【0030】
(半導体基板の製造方法)
次に、実施の形態の支持具1を適用した半導体基板の製造方法について説明する。実施の形態の半導体の製造方法は、種基板となるSiC単結晶基板の表面にグラフェン層を介してSiCエピタキシャル成長層を形成することにより、グラフェン層を介して転写したSiCエピタキシャル成長層の剥離を可能にするリモートエピタキシャル法を用い、CVDによりSiC多結晶成長層を形成する工程で実施の形態の支持具1を使用する。
【0031】
図9は種結晶となるSiC単結晶基板(SiCSB)11の断面図である。実施の形態では、SiC単結晶基板11は4H-SiC基板を例にとって説明するが、六方晶系(4H、6H)、立方晶系(3C)のいずれであってもよい。SiC単結晶基板11の厚さは、例えば約300μm~600μm程度であってもよい。なお、
図9において、[C]はSiCのC面であることを示し、[S]はSiCのSi面であることを示す。以下の図でも同様である。
【0032】
図10は、SiC単結晶基板11として適用可能なSiCウエハ110の結晶面を説明する図である。
図10Aの平面図には1次オリフラ(orientation flat)111及び2次オリフラ112が形成されたSiCウエハ110のSi面113が示されている。
図10Bの[-1100]の方位から見た側面図では、上面に[0001]の方位のSi面113が形成され、下面に[000-1]の方位のC面114が形成されている。
【0033】
4H-SiC結晶のユニットセルの模式的俯瞰構成は、
図11Aに示すように表され、4H-SiC結晶の2層部分の模式的構成は、
図11Bに示すように表され、4H-SiC結晶の4層部分の模式的構成は、
図11Cに示すように表される。また、
図11Aに示す4H-SiCの結晶構造のユニットセルを(0001)面の真上から見た模式的構成は、
図12に示すように表される。
【0034】
図11A~
図11Cに示したように、4H-SiCの結晶構造は、六方晶系で近似することができ、1つのSi原子に対して4つのC原子が結合している。4つのC原子は、Si原子を中央に配置した正四面体の4つの頂点に位置している。これらの4つのC原子は、1つのSi原子がC原子に対して[0001]軸方向に位置し、他の3つのC原子がSi原子に対して[000-1]軸側に位置している。
図11Aにおいて、オフ角θは例えば、約4度以下である。
【0035】
[0001]軸及び[000-1]軸は六角柱の軸方向に沿い、この[0001]軸を法線とする面(六角柱の頂面)が(0001)面(Si面)である。一方、[000-1]軸を法線とする面(六角柱の下面)が(000-1)面(C面)である。また、[0001]軸に垂直であり、かつ(0001)面の真上から見た場合において六角柱の互いに隣り合わない頂点を通る方向がそれぞれ、a1軸[2-1-10]、a2軸[-12-10]及びa3軸[-1-120]である。
【0036】
図12に示したように、a1軸とa2軸との間の頂点を通る方向が[11-20]軸であり、a2軸とa3軸との間の頂点を通る方向が[-2110]軸であり、a3軸とa1軸との間の頂点を通る方向が[1-210]軸である。六角柱の各頂点を通る上記6本の軸の各間において、その両側の各軸に対して30°の角度で傾斜していて、六角柱の各側面の法線となる軸がそれぞれ、a1軸と[11-20]軸との間から時計回りに順に、[10-10]軸、[1-100]軸、[0-110]軸、[-1010]軸、[-1100]軸及び[01-10]軸である。これらの軸を法線とする各面(六角柱の側面)は、(0001)面及び(000-1)面に対して直角な結晶面である。
【0037】
次に、
図13に示すように、SiC単結晶基板11の(0001)Si面に数分子層までのグラフェン層(GR)12を形成する。グラフェン層12は、SiC単結晶基板11を例えば、大気圧アルゴンガス雰囲気中において約1700℃程度でアニール処理することでSiC単結晶基板11のSi面上に熱分解により形成可能である。また、グラフェン層12は、SiC単結晶基板11上にCVDで積層して形成してもよい。
【0038】
グラフェン層12は、グラファイトシートの積層構造を備える。積層構造の各面のグラファイトシートは、多数の六方晶系の炭素(C)の共有結合を有し、各面のグラファイトシート間がファンデルワールス力によって結合される。グラフェン層12は、バッファ層としての0層、又は単層構造であってもよい。
【0039】
図14に示すように、グラフェン層12上にSiCエピタキシャル成長層(SiC-epi)13を形成する。SiCエピタキシャル成長層13は、SiC単結晶基板11のSi面に形成したグラフェン層12上に遠隔エピタキシャル成長法により形成される。SiCエピタキシャル成長層13は、単結晶SiC薄膜である。SiCエピタキシャル成長層13のグラフェン層12と接する面はC面となり、SiCエピタキシャル成長層13の表面はSi面となる。
【0040】
図15に示すように、SiCエピタキシャル成長層13上にストレス層14を形成する。ストレス層14は、ニッケル(Ni)薄膜で構成される。ニッケル薄膜は、蒸着で形成してもよいし、めっきで形成してもよい。ストレス層14は、内部応力がグラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13との剥離を容易にするような大きさに調整されている。このため、グラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13との間に発生する応力により、グラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13との剥離を容易にさせる。
【0041】
次に、
図16に示すように、ストレス層14上に接着層15を形成し、SiC単結晶基板11よりも一回り外形サイズの大きな仮基板の黒鉛基板19の片面もしくは両面に、接着層15の塗布面を重ねて貼付けて第1の複合体(11(SiCSB)、12(GR)、13(SiC-epi)、14、15、19)を形成する。接着層15には、例えば、カーボン接着剤を用いてもよい。カーボン接着剤は、フェノール樹脂を含み、接着剤自体が炭素化することで高温でも結合力を維持することができるような接着剤である。黒鉛基板19は、円板状又は矩形板状であってもよい、一回り外形サイズの大きな黒鉛基板19としては、SiC単結晶基板11よりも1mm以上大きな外形サイズであればよく、例えば直径約10cmのSiC単結晶基板11であれば、約10mm程度大きな外形サイズの直径約11cmの黒鉛基板19を用いてもよい。例えば直径約15cmのSiC単結晶基板11であれば、外形サイズの直径約16cmの黒鉛基板19を用いてもよい。
【0042】
そして、熱アニール炉などで第1の複合体を不活性ガス雰囲気中で加熱して接着層15を炭化させる。このとき、接着層15のカーボン接着剤の分解時に発生するガスが緩やかに離脱できるような温度勾配で徐々に加熱することにより、接着層15が炭化するときに接着面が剥離しないようにする。黒鉛基板19は、表面にガラス状カーボン被膜を有していてもよい。ガラス状カーボン被膜は接着層15のカーボン接着剤との接着力が強いため、SiCエピタキシャル成長層13をグラフェン層12及びSiC単結晶基板11からの剥離を容易にすることができ、歩留まりの向上を図ることができる。なお、
図10においては、黒鉛基板19の片面に接着層15を貼り付けて第1の複合体を形成する例を示しているが、黒鉛基板19の両面に接着層15を貼り付けて第1の複合体を形成してもよい。
【0043】
図17に示すように、
図16の第1の複合体の接着層15を炭化させた後、第1の複合体の片面または両面において、粘着性のある剥離用テープ、デボンダー装置などを用いて、SiCエピタキシャル成長層13をグラフェン層12界面から物理的に剥離して分離する。
図17Aは
図16に示した第1の複合体からSiCエピタキシャル成長層13側に剥離した構造の断面図であり、
図17Bはグラフェン層12側に剥離した構造の断面図である。
図17Aに示したSiCエピタキシャル成長層13側の剥離した構造は、第2の複合体(13(SiC-epi)、14、15、19)を形成する。グラフェン層12はファンデルワールス力で結合され、しかもストレス層14により発生する応力はグラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13との剥離を容易にするような大きさに調整されているため、せん断方向に力を加えることによりグラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13との界面における剥離を容易に発生させることができる。
【0044】
図17Bに示したグラフェン層12側に剥離した構造において、SiC単結晶基板11上のグラフェン層12をエッチングまたは研磨により除去する。グラフェン層12のエッチング工程では、例えば酸素プラズマによるプラズマアッシャーを適用可能である。酸素プラズマによりグラフェン層12がエッチングされたSiC単結晶基板11のSi面は、表面が酸化されるため、フッ化水素(HF)によるウェットエッチングを実施する。また、グラフェン層12の研磨工程では、例えば化学的機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によりグラフェン層12の除去を実施する。ここで、SiC単結晶基板11のSi面は、上記のウェットエッチング工程による、表面の平均粗さRaは、例えば、約1nm以下である。この結果、SiC単結晶基板11は再利用可能となる。
【0045】
図18は、黒鉛基板19の両面に
図11Aの剥離構造を貼り付け、両面にSiCエピタキシャル成長層131、132を有する例を示す。この場合には、第2の複合体(131(SiC-epi)、141、151、19、152、142、132(SiC-epi))を熱アニール炉内で加熱して、接着層151、152を炭化する。
【0046】
図19に示すように、第2の複合体を実施の形態の支持具1に収容する。
図1から
図3に示したように、支持具1には、支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5と、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とによって、仮基板9の黒鉛基板19を含む第2の複合体を収容することができる空間が形成されている。第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5のそれぞれ一つの長辺に沿って櫛歯状に形成された複数の溝3a、4a、5aの内の第3溝3a3、4a3、5a3は、差し込まれた第2の複合体の黒鉛基板19を一つの長辺の方向に支持することができる。
図4及び
図5に示したように、第2の複合体は、支持具1の正面から、第1支持板3、第3支持板5、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で形成された開口に黒鉛基板19の主面が一つの長辺と直交するような方位で差し込まれて収容される。第2の複合体は、第3溝3a3、4a3、5a3に差し込まれた黒鉛基板19によって一つの長辺の方向に支持され、隣接する第2の複合体、第1ダミー基板6又は第2ダミー基板7と所定の間隔が確保される。
【0047】
図20に示すように、第2の複合体の片面または両面に設けられたSiCエピタキシャル成長層131、132の(000-1)C面上に、SiC多結晶成長層16を形成する。SiC多結晶成長層16は、CVD技術により形成可能である。CVD炉内に第2の複合体を収容した支持具1を設置後に真空引きを行い、1400℃~1500℃程度まで加熱したら、材料ガスとして、例えばSiCl
4(四塩化珪素)ガスと、CH
4(メタン)ガスと、H
2(水素)ガスを同時に流して圧力を調整してSiC多結晶成長層16を堆積させる。SiC多結晶成長層16は、3C(立方晶)構造を有する。SiC多結晶成長層16を堆積する膜厚は、最終形態のSiC複合基板の厚みに応じて設定することができ、例えば、SiC複合基板全体の板厚を350μmにする場合は、例えば、SiCエピタキシャル成長層13の膜厚が10μmであれば、SiC多結晶成長層16の堆積膜厚は340μmに設定すればよい。
【0048】
図20に示すように、第2の複合体にSiC多結晶成長層16が堆積することで、第3の複合体(16(SiC-poly CVD)、131(SiC-epi)、141、151、19、152、142、132(SiC-epi)、16(SiC-poly CVD))が形成される。第3の複合体は、黒鉛基板19から収容する支持具1に延びたSiC多結晶成長層16によって支持具1と固着している。
【0049】
図21の平面図に示すように、
図20に示した第3の複合体と第1支持板3との間の切断線C1及び第3の複合体と第3支持板5との間の切断線C3とともに、第3の複合体と第2支持板4との間の切断線C2にも沿って、黒鉛基板19及びSiC多結晶成長層16を切断することにより、第3の複合体を支持具1から切り離す。切断線C1、C2、C3に沿った黒鉛基板19及びSiC多結晶成長層16の切断には、チェーンソーを用いてもよい。第3の複合体を切り離した後、残りの黒鉛基板19などが固着している支持具1は、使い捨てにされる。
【0050】
図22に支持具1から切り離した第3の複合体を示す。第3の複合体は、支持具1に延びて形成されたSiC多結晶成長層16とともに、第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の第3溝3a3、4a3、5a3に差し込まれた黒鉛基板19を切断することによって切り離された。このため、第3の複合体からは、黒鉛基板19の切断面が露出している。
【0051】
なお、
図23に示すように、変形例の支持具1に第2の複合体を収容することもできる。変形例の支持具1は、
図8に示したように第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の一つの長辺に沿って形成された複数の溝3aの内で黒鉛基板19を支持する第3溝3a3、4a3、5a3を含む範囲にそれぞれ膨張黒鉛シート8が取り付けられている。変形例の支持具1を用いる場合にも、第2の複合体にSiC多結晶成長層16が堆積することで、第3の複合体(16(SiC-poly CVD)、131(SiC-epi)、141、151、19、152、142、132(SiC-epi)、16(SiC-poly CVD))が形成される。
【0052】
変形例の支持具1において、膨張黒鉛シート8は黒鉛基板19と第3溝3a3、4a3、5a3との間の隙間を埋めているため、第2の複合体にSiC多結晶成長層16を形成したときに、黒鉛基板19と第3溝3a3、4a3、5a3との間にSiC多結晶成長層16が成膜されて仮基板9と第3溝3a3、4a3、5a3とが固着することを防止している。また、黒鉛基板19と第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5との間にSiC多結晶成長層16が成膜されて黒鉛基板19と第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5とが固着したときにも、一つの長辺に沿って第3溝3a3、4a3、5a3を含む範囲に膨張黒鉛シート8が取り付けられているため、SiC多結晶成長層16は第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5に膨張黒鉛シート8を介在させて成膜され、膨張黒鉛シート8をグラフェンの層に沿って剥離することによって容易に取り外すことができる。変形例の支持具1は、成膜されたSiC多結晶成長層16を取り外した後、再利用することができる。
【0053】
図24は、変形例の支持具1から取り外した第3の複合体を示す図である。変形例の支持具1からは、第3の複合体とともに黒鉛基板19から支持具1に延びて成膜されたSiC多結晶成長層16も取り外されている。第3の複合体から黒鉛基板19に沿って支持具1に延びるSiC多結晶成長層16は不要であるため、図中の切断線C1、C2などにより切断されて取り除かれ、
図22に示したような第3の複合体が得られる。
【0054】
図25に示すように、
図22に示した黒鉛基板19が露出した第3の複合体を、大気雰囲気で加熱できる大気炉において、大気を流しながら900℃~1000℃程度に加熱して第3の複合体の内部の黒鉛基板19及び炭化した接着層151、152を燃焼させて完全に除去する。そして、第4の複合体(16(SiC-poly CVD)、131(siC-epi)、141、142、132(SiC-epi)、162( SiC-poly CVD))として取り出す。
【0055】
図26に示すように、第4の複合体の外周のSiC多結晶成長層161、162をべべリング装置によって研削及び研磨して除去し、ストレス層141、142をエッチング又は研磨によって除去することにより、SiC多結晶成長層161及びSiCエピタキシャル成長層131が積層して構成されたSiC複合基板10と、SiCエピタキシャル成長層132及びSiC多結晶成長層162が積層して構成されたSiC複合基板10とが得られる。さらに、これらのSiC複合基板10を必要な寸法及び表面状態に加工する。
【0056】
図27に示すように、SiC複合基板10は、SiC多結晶成長層(SiC-poly CVD)16及びSiCエピタキシャル成長層(SiC-epi)13が積層して構成されている。
図28は、SiC複合基板(ウエハ)10の模式的俯瞰構成である。SiC複合基板10において、SiCエピタキシャル成長層13の表面は4H-SiCの[0001]方位のSi面であってもよく、SiC多結晶成長層16と接するのは4H-SiCの[000-1]方位のC面であってもよい。
【0057】
以上説明したように、実施の形態の半導体の製造方法は、SiCエピタキシャル成長層13にCVDによりSiC多結晶成長層16を形成する工程において、SiCエピタキシャル成長層13を支持する仮基板9となる黒鉛基板19を実施の形態の支持具1に収容している。実施の形態の支持具1は、黒鉛板から構成された第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5と、同様に黒鉛板から構成された第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とからなるため安価である。このため、支持具1において仮基板9で支持した第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bにCVDによりSiC多結晶成長層を形成した後、支持具1は固着した黒鉛基板19の端部とともに切り離して使い捨てにすることができる。このように支持具1が安価で使い捨てできるため、半導体基板の製造方法のコストも低減することができる。
【0058】
また、実施の形態の半導体の製造方法において、SiCエピタキシャル成長層13にCVDによりSiC多結晶成長層16を形成する工程において使用する実施の形態の支持具1は、支柱2、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で囲まれた空間に底面及び頂面にそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bを支持した複数枚の仮基板9を収容することができる。支持具1において、複数の仮基板9は支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5の一つの長辺に形成された第3溝3a3、4a3、5a3によって所定間隔で支持されている。また、支持具1に支持された複数枚の仮基板9の黒鉛基板19は、支柱2の第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5によって遮られる方位を除いて主面の面内の方向に開放されている。このため、支持具1に収容された複数枚の仮基板9にはCVDの工程において均一な雰囲気を提供することができ、仮基板9の底面及び頂面にそれぞれ支持された第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bには高品質なSiC多結晶成長層16を形成することができる。また、支持具1には複数枚の仮基板9を収容することができ、仮基板9においては底面及び頂面にそれぞれ第1半導体基板9a及び第2半導体基板9bを支持している。このため、多数の半導体基板のCVD処理をバッチで実施することができ、半導体基板の製造方法のコストを低減することができる。
【0059】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、CVD法によるSiC多結晶成長層16の形成前に、SiC単結晶基板11を分離し、高耐熱の仮基板である黒鉛基板19に替えることにより、SiC単結晶基板11へのSiC多結晶の不要な付着を防止し、SiC単結晶基板11の再利用性を高め、低コスト化が可能になる。
【0060】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、SiC単結晶基板11より一回り大きなサイズの高耐熱の仮基板である黒鉛基板19を用いることにより、実施の形態の支持具1に差し込んで収納し、片面または両面エピタキシャル成長が可能になり、成長速度を上げることなく、高スループットかつ低コスト生産を実現することができる。
【0061】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、黒鉛基板19などの高耐熱基板及び接着層15の炭化により、黒鉛基板19の両面に形成した半導体基板構造を酸化炉等で焼成するだけで安価に分離することができる。
【0062】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、SiC単結晶基板11上に形成したグラフェンを介してSiCの遠隔エピタキシャル成長を行い、その上に直接CVD法により、SiC多結晶成長層16などを形成するため、基板接合が不要となり、基板接合に起因する欠陥を無くすことができる。また、グラフェン層12を介してエピタキシャル成長層を形成するためSiC単結晶基板11とSiCエピタキシャル成長層13との分離が容易となり、プロセス工程が簡易となる。
【0063】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、SiC単結晶基板が除去された後、高耐熱のハンドル基板である黒鉛基板19を差し込んで収容した支持具1を高温LP-CVD装置に入れて、SiCエピタキシャル成長層13上に直接にSiC多結晶成長層16などを成長させるようにしたことにより、膜厚数μmのエピタキシャル成長層をハンドル基板から支持基板に輸送する工程及び、支持基板と接合する工程が無くなり、薄膜輸送と接合に起因するしわ、結晶転移、ボイドなどの不良を回避できる。
【0064】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、SiC単結晶基板11上に形成したグラフェン層12は転写せず、そのままその上にエピタキシャル成長を行うようにしている。これにより、グラフェンの転写に起因するしわ、クラックなどの不良を回避できる。
【0065】
実施の形態の半導体の製造方法によれば、SiC単結晶基板11をベースに用いるため、結晶性の低下の少ない六方晶SiCが得られる。また、研磨又はエッチングによる除去が困難で高価なSiC単結晶基板11であるが、グラフェン層12を介した遠隔エピタキシャル成長を用いることにより、得られた高性能な単結晶層の分離が容易であり、研磨又はエッチングによる除去が不要となる。高価なSiC単結晶基板11を分離後に再利用できるためコスト的にも大きなメリットが得られる。
【0066】
SiCエピタキシャル成長層13は、IV族元素半導体、III―V族化合物半導体、及びII-VI族化合物半導体の群から選ばれる少なくとも1種類もしくは複数種類を備えていてもよい。
【0067】
また、SiC単結晶基板11及びSiCエピタキシャル成長層13は、4H-SiC、6H-SiC、又は2H-SiCのいずれかの材料で構成されていてもよい。
【0068】
また、SiC単結晶基板11及びSiCエピタキシャル成長層13は、SiC以外の他の材料系としては、GaN、BN、AlN、Al2O3、Ga2O3、ダイヤモンド、カーボン、及びグラファイトの群から選ばれる少なくとも1種類を備えていてもよい。
【0069】
SiC複合基板10は、デバイス面となるSi面に高コストなSiC単結晶基板11の代わりに、低コストのSiC多結晶成長層16を利用している。
【0070】
(半導体の製造方法の変形例)
次に、実施の形態の半導体の製造方法の変形例について説明する。変形例の半導体の製造方法は、SiC単結晶基板に水素イオンを注入して脆化層を形成することにより表面の薄化層の剥離を可能にする水素イオン注入剥離法を使用する。変形例の半導体の製造方法は、半導体基板の製造方法において水素イオン注入剥離法を使用する点を除いて実施の形態の半導体の製造方法と同様である。
【0071】
図9に示したSiC単結晶基板(SiCSB)11のSi面にイオン注入剥離法のために水素イオンを注入して、規定の深さ(例えば約1μm)を有する水素イオン注入層11cを形成する。
図29は、水素イオン注入層11cを形成したSiC単結晶基板11である。ここで、イオン注入条件として、加速エネルギーは例えば、約100keV程度、ドーズ量は例えば、約2.0×10
17/cm
2程度としてよい。続いて、水素イオン注入層11cを高温処理して、水素イオン注入層11cを脆化する。水素イオン注入後に水素マイクロバブルを発生させ水素イオン注入層11cを破断しやすくするための脆化熱アニールが必要である。
【0072】
図30に示すように、水素イオン注入層11cのSi面にCVD法によりSiCエピタキシャル成長層13を形成する。そして、
図31に示すように、SiCエピタキシャル成長層13のSi面をカーボン接着剤による接着層15を介して仮基板となる黒鉛基板19を貼り付け、熱アニール炉などで加熱して接着層15を炭化させる。
【0073】
図31のB-B線に示した剥離面により脆化処理された水素イオン注入層11cを分断し、SiC単結晶基板11を取り除く。
図32に示すように、分断された水素イオン注入層11cのSiCエピタキシャル成長層13に接する側は、SiC単結晶基板11が薄化された薄化SiC単結晶層11dを形成する。一方、水素イオン注入層11cで分断されたSiC単結晶基板11の本体のSi面に剥離により形成された凹凸構造は、機械的研磨法、機械化学的研磨法などにより平滑化される。SiC単結晶基板11のSi面は、上記工程により、表面の平均粗さRaは、例えば、約1nm以下にされる。この結果、SiC単結晶基板11は再利用可能となる。
【0074】
図33に示すように、黒鉛基板19に接着した薄化SiC単結晶層11dとSiCエピタキシャル成長層13との積層体の剥離面は、凹凸構造が機械研磨、機械化学研磨法などにより平滑化される。
図33に示した構造は、第5の複合体(19、15、13(SiC-epi)、11d)を形成する。
【0075】
図34に示すように、第5の複合体を実施の形態の支持具1に収容する。
図1から
図3に示したように、支持具1には、支柱2を構成する第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5と、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7とによって、仮基板9の黒鉛基板19を含む第5の複合体を収容することができる空間が形成されている。第1支持板3、第2支持板4及び第3支持板5のそれぞれ一つの長辺に沿って櫛歯状に形成された複数の溝3a、4a、5aの内の第3溝3a3、4a3、5a3は、差し込まれた第5の複合体の仮基板9となる黒鉛基板19を一つの長辺の方向に支持することができる。
図4及び
図5に示したように、第5の複合体は、支持具1の正面から、第1支持板3、第3支持板5、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7で形成された開口に黒鉛基板19の主面が一つの長辺と直交するような方位で差し込まれて収容される。第5の複合体は、第3溝3a3、4a3、5a3に差し込まれた黒鉛基板19によって一つの長辺の方向に支持され、隣接する第5の複合体、第1ダミー基板6又は第2ダミー基板7と所定の間隔が確保される。
【0076】
図35に示すように、第5の複合体の薄化SiC単結晶層11dのC面上に、CVD技術によりSiC多結晶成長層16を形成することで、第6の複合体(16(SiC-poly CVD)、19、15、13(SiC-epi)、11c、16(SiC-poly CVD))が形成される。第6の複合体は、黒鉛基板19から収容する支持具1に延びたSiC多結晶成長層16によって支持具1と固着している。
【0077】
図35に示した第6の複合体と第1支持板3との間の切断線C1及び第6の複合体と第3支持板5との間の切断線C3などに沿って黒鉛基板19及びSiC多結晶成長層16を切断することにより、第6の複合体を支持具1から切り離す。第6の複合体を切り離した後、残りの黒鉛基板19などが固着している支持具1は、使い捨てにされる。
【0078】
図36に支持具1から切り離した第6の複合体を示す。第6の複合体は、支持具1に延びて成膜されたSiC多結晶成長層16とともに黒鉛基板19を切断することによって切り離された。このため、第6の複合体からは、黒鉛基板19の切断面が露出している。
【0079】
図37に示すように、第6の複合体の内部の黒鉛基板19及び炭化した接着層15を酸化燃焼して除去することによって、SiCエピタキシャル成長層13、薄化SiC単結晶層11d及びSiC多結晶成長層16が積層した第7の複合体(13(SiC-epi)、11c、16(SiC-poly CVD))と、第7の複合体と分離したSiC多結晶成長層16とが得られる。
【0080】
図38に示すように、第7の複合体の外周のSiC多結晶成長層16を研削及び研磨して除去することによりSiC複合基板10が得られる。変形例のSiC複合基板10は、SiCエピタキシャル成長層13とSiC多結晶成長層の間に薄化SiC単結晶層11dが介在している点を除いて実施の形態のSiC複合基板10と同様である。
【0081】
なお、
図37に示したように、黒鉛基板19及び接着層15を酸化燃焼することにより単層のSiC多結晶成長層16からなる基板が得られるが、この基板はSiC複合基板10と同程度の径、厚みなど同様のサイズを有しているため、支持具1における第1ダミー基板6又は第2ダミー基板7として使用することができる。
【0082】
変形例の半導体基板の製造方法によっても、実施の形態の半導体の製造方法と同様にSiC複合基板10を作製することができる。このため、変形例においても、実施の形態の半導体の製造方法と同様の効果が得られる。さらに、SiC単結晶基板11のSi面にグラフェン層を介することなく直接にエピタキシャル成長させているため、良好な結晶構造を有するSiCエピタキシャル成長層13を形成することができる。また、変形例によると、SiC複合基板10と同時にSiC複合基板10と同様のサイズを有する単層のSiC多結晶成長層からなる基板を得られるため、この基板を第1ダミー基板6又は第2ダミー基板7に使用することができる。
【0083】
(付記1)仮基板9を支持し、仮基板9の主面に支持された半導体基板にSiC多結晶成長層を形成することを可能にする支持板3、4、5であって、その一つの縁に形成された複数の溝3a、4a、5aを含み、複数の溝3a、4a、5aは、主面が一つの縁の延びる方向に直交するような方位で差し込まれた仮基板9を支持するように構成された溝3a3、4a3、5a3を含む。溝3a3、4a3、5a3によって仮基板9を支持することができる。
【0084】
(付記2)付記1に記載の支持板3、4、5であって、黒鉛で構成されている。黒鉛で構成されているため安価である。
【0085】
(付記3)付記1に記載の支持板3、4、5であって、一つの縁は、長手方向に延び、複数の溝3a、4a、5aによって櫛歯状に形成されている。複数の溝3a、4a、5aは仮基板9を支持するような複数の溝3a3、4a3、5a3を構成することができる。
【0086】
(付記4)付記3に記載の支持板3、4、5であって、矩形板状の形状を有し、一つの縁は矩形板状の形状の一つの長辺である。矩形板状のため作製が容易である。
【0087】
(付記5)付記3又は4に記載の支持板3、4、5であって、櫛歯状の複数の溝3a、4a、5aが形成された一つの縁の少なくとも一部の範囲に膨張黒鉛シートが取り付けられている。CVD工程により支持板3、4、5に仮基板9が固着しても膨張黒鉛シートによって容易に剥離することができる。
【0088】
(付記6)付記1に記載の支持板3、4、5を用いる仮基板9の支持具1であって、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7と、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7を支持する支柱2であって、少なくとも3枚の支持板3、4、5を含み、支持板3、4、5は、複数の溝3a、4a、5aについて、第1溝3a1、4a1、5a1で第1ダミー基板6と嵌合し、第2溝3a2、4a2、5a2で第2ダミー基板7と嵌合する支柱2とを含み、支柱2は、支持板3、4、5の複数の溝3a、4a、5aの内で第1溝3a1、4a1、5a1及び第2溝3a2、4a2、5a2を除いた第3溝3a3、4a3、5a3に差し込まれた仮基板9を支持するように構成されている。第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7と、支持板3、4、5を含む支柱2によって支持具1の構造を形成することができる。
【0089】
(付記7)付記6に記載の支持具1であって、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は、支柱2によって互いに平行になるように固定されている。第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7並びに支柱2によって仮基板9を収容する空間を形成することができる。
【0090】
(付記8)付記6に記載の支持具1であって、支柱2は、支持板3、4、5の一つの縁の延びる方向が互いに平行になるように第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7の周に沿って配置されている。第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7と嵌合することにより支持具1の構造を形成することができる。
【0091】
(付記9)付記6に記載の支持具1であって、第1溝3a1、4a1、5a1は、複数の溝3a、4a、5aについて、一つの縁の延びる方向に一端の溝であり、第2溝3a2、4a2、5a2はその方向に他端の溝である。仮基板9が差し込まれる第3溝3a3、4a3、5a3を一つの縁の中央部に確保することができる。
【0092】
(付記10)付記6から9のいずれか一項に記載の支持具1であって、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7の少なくとも一方は、黒鉛から構成されている。黒鉛で構成されているため安価である。
【0093】
(付記11)付記6から9のいずれか一項に記載の支持具1であって、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7の少なくとも一方は、SiCから構成されている。SiCで構成されているため安価である。
【0094】
(付記12)付記6から9のいずれか一項に記載の支持具1であって、第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7は、円板状又は矩形板状である。円板状又は矩形板状の仮基板9に対応するように選択することができる。
【0095】
(付記13)付記6から9のいずれか一項に記載の支持具1であって、1対の支持板3、4、5は第1ダミー基板6及び第2ダミー基板7を挟んで対向し、残りの支持板3、4、5は対向する1対の支持板3、4、5を含む平面に対して一方の側にある。支持具1の正面から仮基板9を差し込むことができる。
【0096】
(付記14)付記6に記載の支持具1を用いる半導体基板の製造方法であって、SiC単結晶基板11のSi面にSiCエピタキシャル成長層13を形成する工程と、SiCエピタキシャル成長層13のSi面を黒鉛基板19に貼り付ける工程と、SiCエピタキシャル成長層13をSiC単結晶基板11から取り外す工程と、SiCエピタキシャル成長層を13貼り付けた黒鉛基板19を支持具1で支持する工程と、黒鉛基板19に貼り付けたSiCエピタキシャル成長層13のC面にSiC多結晶成長層16を形成する工程と、SiC多結晶成長層16を形成した黒鉛基板19を支持具1から取り外す工程と、黒鉛基板19を除去する工程とを含む。支持具1を使用することで、高品質かつ低コストで半導体基板を作製することができる。
【0097】
(付記15)付記14に記載の半導体基板の製造方法であって、SiC単結晶基板11のSi面にグラフェン層12を形成する工程をさらに含み、SiCエピタキシャル成長層13を形成する工程は、SiC単結晶基板11のSi面にグラフェン層12を介してSiCエピタキシャル成長層13を形成する。グラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13とを剥離することが可能になる。
【0098】
(付記16)付記15に記載の半導体基板の製造方法であって、SiCエピタキシャル成長層13をSiC単結晶基板11から取り外す工程は、SiCエピタキシャル成長層13をグラフェン層12から剥離する。SiC単結晶基板11を再利用することが可能になる。
【0099】
(付記17)付記15に記載の半導体基板の製造方法であって、SiCエピタキシャル成長層13をグラフェン層12から剥離する応力を発生するストレス層14をSiCエピタキシャル成長層13のSi面に形成する工程をさらに含み、SiCエピタキシャル成長層13のSi面を黒鉛基板19に貼り付ける工程は、黒鉛基板19にストレス層14を介してSiCエピタキシャル成長層13のSi面を貼り付ける。ストレス層14が発生する応力によってSiCエピタキシャル成長層13とグラフェン層12とを剥離することが容易になる。
【0100】
(付記18)付記14に記載の半導体基板の製造方法であって、SiC単結晶基板11のSi面から所定の深さに水素イオン注入層11cを形成する工程をさらに含み、SiC単結晶基板11からSiCエピタキシャル成長層13を取り外す工程は、水素イオン注入層11cを脆化して、SiC単結晶基板11から水素イオン注入層11cで分断された薄化SiC単結晶層11dとともにSiCエピタキシャル成長層13を剥離する。SiC単結晶基板11の水素イオン注入層11cを脆化することで、分断を可能にする。
【0101】
(付記19)付記18に記載の半導体基板の製造方法であって、SiCエピタキシャル成長層13とともに剥離した薄化SiC単結晶層11dのC面を研磨する工程をさらに含む。水素イオン注入層11cが分断して形成された凹凸構造を平滑化することができる。
【0102】
(付記20)付記14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって、仮基板9は、黒鉛で構成された。仮基板9である黒鉛基板19の燃焼による除去を可能にする。
【0103】
(付記21)付記14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって、黒鉛基板19は、SiC単結晶基板11よりも大きな外形サイズを有する。支持具1に差し込んで支持することができる。
【0104】
(付記22)付記14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって、黒鉛基板19は、表面に形成されたガラス状カーボン被膜を含む。ガラス状カーボン被膜は接着層15のカーボン接着剤との接着力が強いため、グラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13とを確実に剥離することができる。
【0105】
(付記23)付記14から19のいずれか一項に記載の半導体基板の製造方法であって黒鉛基板19を除去する工程は、黒鉛基板19を燃焼させて除去する。黒鉛基板19は黒鉛基板であるため大気雰囲気中などで燃焼させて除去することができる。
【0106】
(付記24)付記23に記載の半導体基板の製造方法であって、SiCエピタキシャル成長層のC面に黒鉛基板19を貼り付ける工程は、SiCエピタキシャル成長層13と黒鉛基板19とをカーボン接着剤による接着層15を介して貼り付ける。カーボン接着剤は接着力が強いため、グラフェン層12とSiCエピタキシャル成長層13とを確実に剥離することができる。
【0107】
(付記25)付記24に記載の半導体基板の製造方法であって、黒鉛基板19を除去する工程は、黒鉛基板19とともに接着層15も燃焼させて除去する。接着層15は、大気雰囲気中などで黒鉛基板19とともに燃焼させて除去することができる。
【0108】
(その他の実施の形態)
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含む。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示は、IGBTモジュール、ダイオードモジュール、MOSモジュール(SiC、GaN、AlN、酸化ガリウム)等の各種の半導体モジュール技術に利用することができ、電気自動車(ハイブリッド車を含む)・電車・産業用ロボット等の動力源として利用される電動モータを駆動するインバータ回路用パワーモジュール、また、太陽電池・風力発電機その他の発電装置(とくに自家発電装置)が発生する電力を商用電源の電力に変換するインバータ回路用パワーモジュール等幅広い応用分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 支持具
2 支柱
3、4、5 支持板
2a、3a、4a 溝
3a1、4a1、5a1 第1溝
3a2、4a2、5a2 第2溝
3a3、4a3、5a3 第3溝
6、7 ダミー基板
9 仮基板
10 SiC複合基板
11 SiC単結晶基板
12 グラフェン層
13 SiCエピタキシャル成長層
14 ストレス層
15 接着層
19 黒鉛基板