IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本カーバイド工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-化粧シート及び建築部材 図1
  • 特開-化粧シート及び建築部材 図2
  • 特開-化粧シート及び建築部材 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145721
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】化粧シート及び建築部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/09 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B15/09 Z
B32B15/095
B32B27/36
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058200
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】絹村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 萌未
(72)【発明者】
【氏名】三枝 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AB10C
4F100AB31B
4F100AK25
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02
4F100CA07A
4F100CB00
4F100EH66
4F100GB07
4F100JK07
4F100JL11
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】追従性に優れる化粧シートの提供。
【解決手段】化粧シートは、表面層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、弾性率が、155N/25mm未満とされたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、
前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、
前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、
弾性率が、155N/25mm未満である化粧シート。
【請求項2】
前記基材層の平均厚みが、40μm以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記金属層が、金属、金属酸化物又は合金を含む請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面層の平均厚みが、50μm以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記金属層の平均厚みが、1μm以下である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
建築材料として用いられる請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
被着体と、前記被着体の表面の少なくとも一部を覆う請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の化粧シートと、を有する建築部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート及び建築部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料としてアルミニウムなどを用いた金属型材がよく用いられている。金属型材に意匠性や高級感を持たせるために金属型材の表面を鏡面調とする場合、金属型材の表面を磨くことや、金属粉や光輝性顔料を含む塗料を金属型材の表面に塗装することが考えられる。しかしながら、これらの方法を用いた場合、金属調の外観は得られるものの、金属型材の表面はくすんだ色味となりやすく、高級感のある鏡面調を得ることは困難である。
【0003】
金属型材の表面を鏡面調とするための簡便な方法として、金属調の化粧シートを金属型材に貼り付けることが考えられる。
例えば、特許文献1には、金属鏡面調光沢を有する複合材料として、基材フィルムの片面に、金属層、絵柄層及びフッ素系樹脂フィルムがこの順に積層された金属調化粧シートが開示されている。
また、特許文献2には、高分子樹脂よりなる基材の表面に金属蒸着層が積層され、反対面に樹脂よりなる樹脂層が積層されてなる、化粧シートとして使用可能な金属蒸着積層体が開示されている。特許文献2では、樹脂としてアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエステル系樹脂の何れか若しくは複数が用いられる。
これら化粧シートを金属型材に貼り付けることで、高級感のある鏡面調の外観が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-58660号公報
【特許文献2】特開2007-216608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の化粧シートを金属型材のうちの直角部又は鋭角部を有する角材に貼り付けたところ、高級感のある鏡面調は得られたものの、直角部又は鋭角部において化粧シートが角材の表面に十分に追従せず、化粧シートに浮きが生じることが判明した。特許文献1の化粧シートでは、表面層として耐候性のあるフッ素系樹脂フィルムが用いられ、基材フィルムとして平滑性の高いPETフィルムが用いられている。フッ素系樹脂フィルムは剛性が高く、PETフィルムも剛性が高いため、化粧シートが角材の表面に追従しなかったものと考えられる。
一方、特許文献2に記載されている金属蒸着積層体で用いられるウレタン系樹脂等を含む樹脂層は、フッ素系樹脂フィルムより柔らかい。しかしながら、特許文献2に記載されている金属蒸着積層体をもってしても、角材の表面への追従性は必ずしも十分とはいえない。基材や樹脂層を構成する樹脂の組成を調整するだけでは、化粧シート又は金属蒸着積層体の直角部又は鋭角部における追従性を制御することは困難であった。
すなわち、従来技術では、建築材料の特に直角部又は鋭角部への追従性において未だ検討の余地があることが分かった。
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、追従性に優れる化粧シート及びそれを用いた建築部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 表面層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、
前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、
前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、
弾性率が、155N/25mm未満である化粧シート。
<2> 前記基材層の平均厚みが、40μm以下である<1>に記載の化粧シート。
<3> 前記金属層が、金属、金属酸化物又は合金を含む<1>又は<2>に記載の化粧シート。
<4> 前記表面層の平均厚みが、50μm以下である<1>~<3>のいずれか1項に記載の化粧シート。
<5> 前記金属層の平均厚みが、1μm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の化粧シート。
<6> 建築材料として用いられる<1>~<5>のいずれか1項に記載の化粧シート。
<7> 被着体と、前記被着体の表面の少なくとも一部を覆う<1>~<6>のいずれか1項に記載の化粧シートと、を有する建築部材。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、追従性に優れる化粧シート及びそれを用いた建築部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る化粧シート1の断面図である。
図2】第二実施形態に係る化粧シート2の断面図である。
図3】第三実施形態に係る化粧シート3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
本開示において、層又は膜の厚みは、マイクロメーターを用いて測定された値をいう。
本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の任意の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
本開示において、固形分濃度(質量%)とは、溶液中に含まれる溶剤以外の成分の質量基準の割合をいう。
【0011】
<化粧シート>
本開示の化粧シートは、表面層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、弾性率が、155N/25mm未満とされたものである。
本発明者等は鋭意検討の結果、表面層及び基材層を構成する樹脂成分の種類のみならず、化粧シート全体としての弾性率が金属型材の直角部又は鋭角部への追従性に寄与していることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本開示の化粧シートは、後述の被着体表面の意匠性を向上するための建築材料として好適に用いられる。また、本開示の化粧シートは、建築材料以外にも自動車等の車両の外装品や屋外に設置される物体の表面に貼り付けるためのエンブレム、徽章、ワッペン、ステッカー、シール、ラベル、銘板、リボン等に適用可能である。
【0013】
本開示の化粧シートの弾性率は、155N/25mm未満であり、154N/25mm以下が好ましく、153N/25mm以下がより好ましく、152N/25mm以下がさらに好ましい。本開示の化粧シートの弾性率は、化粧シートの取り扱い性の観点から130N/25mm以上が好ましく、135N/25mm以上がより好ましく、140N/25mm以上がさらに好ましい。本開示の化粧シートの弾性率は、130N/25mm以上155N/25mm未満が好ましい。
化粧シートの弾性率は、幅25mm、長さ100mmの試験片に対して引っ張り試験を実施して得られた値をいう。試験条件は、引張速度を200mm/minとする。
化粧シートの弾性率は、表面層、基材層及び必要に応じて設けられるその他の層の厚み、並びに、各層の成分等を調整することで、上記所望の範囲内とすることができる。
【0014】
本開示の化粧シートの平均厚みは、化粧シートの弾性率を上記所望の範囲内とする観点から、100μm~200μmが好ましく、120μm~190μmがより好ましく、140μm~180μmがさらに好ましい
【0015】
本開示の化粧シートは、表面層と基材層と金属層とをこの順に含み、必要に応じてその他の層を含んでいてもよい。以下、本開示の化粧シートを、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、同様の機能を有する部材又は部位には、全図面を通して同じ符合を付与し、その説明を省略することがある。
【0016】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る化粧シート1の断面図である。化粧シート1は、表面層10と基材層20と金属層30とをこの順に含む。
以下、各層について説明する。
【0017】
(基材層20)
基材層20は、ポリエステル系樹脂を含有する。基材層20は、金属層30を支持するための支持層として機能しうる。
基材層20は、実質的に透明であることが好ましい。「実質的に透明」とは、化粧シート1が金属層30による金属調の外観を呈するのに十分な透明性であることを示す。
【0018】
基材層を構成するポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)などの変性ポリエステルが挙げられる。グリコール変性ポリエチレンテレフタラートは、PETのモノマーにおけるエチレングリコール由来の構造単位の一部がシクロヘキサンジメタノール由来の構造単位に置き換えられた分子構造を有する。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)が好ましい。
基材層は、ポリエステル系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。
基材層がポリエステル系樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、基材層を構成する樹脂成分に占めるポリエステル系樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
基材層は、ポリエステル系樹脂からなるものであってもよい。この場合、基材層は、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなるものであることがより好ましい。
【0019】
基材層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。基材層の平均厚みは、化粧シートの弾性率を望ましい範囲とする観点から、40μm以下が好ましく、39μm以下がより好ましく、38μm以下がさらに好ましい。基材層の平均厚みは、化粧シートの取り扱い性の観点から、20μm以上であることが好ましい。基材層の平均厚みは、20μm~40μmであることが好ましい。
【0020】
(金属層30)
金属層30は、化粧シートに金属光沢の外観を付与する層である。金属層30は、通常、金属の薄層であってよく、当該金属は、金属光沢を呈し、当該薄膜が化粧シートを被着体に付着させる際に十分な展性を発現する範囲において適宜に選ぶことができる。
金属層は、金属、金属酸化物又は合金を含むもので合ってもよい。
金属層に含まれる金属の具体例としては、アルミニウム、インジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、錫、銀、金、ケイ素、チタン、白金、パラジウム、ステンレス鋼およびハステロイが含まれる。中でも、当該金属は、加工性の観点から、アルミニウムであることが好ましい。
【0021】
金属層30は、金属箔で構成されていてもよいし、基材層20の表面に形成されている蒸着膜であってもよい。金属層30が蒸着膜のように基材層20の表面に直接形成される層であることは、金属層30と基材層20とを接着する接着層の作製に係る工程を省略可能かつ費用を削減可能である観点、および、接着層によって化粧シートの剛性が高まることを抑制する観点から好ましい。
金属層は、真空蒸着、スパッタリングおよび化学気相成長(CVD)などの公知の技術を用いて基材層の表面に形成することが可能である。
【0022】
金属層の平均厚みは、光学的な効果および化粧シートの所期の追従性などの諸条件に基づいて決定される。金属層の平均厚みは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。金属層の平均厚みは、0.01μm以上であってもよい。金属層の平均厚みは、0.01μm~1μmであることが好ましい。
【0023】
(表面層10)
表面層10は、ウレタン系樹脂を含有する。表面層10は、化粧シートの表面を構成し、化粧シートの表面を保護する。
表面層10は、金属層30による意匠性を十分に発現する観点から、光透過性を有することがより好ましい。また、表面層10は、特に被着体の装飾の用途において、耐候性を有することが好ましい。さらに、表面層10は、化粧シートの引張強度および表面硬度を高める観点から、十分に高い機械的強度を有することが好ましい。
【0024】
表面層は、ウレタン系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。
表面層がウレタン系樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、表面層を構成する樹脂成分に占めるウレタン系樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。表面層は、樹脂成分としてウレタン系樹脂のみを含むものであってもよい。
【0025】
表面層は、化粧シートの耐候性を向上する観点から、安定剤を含有してもよい。安定剤は、例えば、熱安定剤、光安定剤、安定助剤などが挙げられる。
熱安定剤としては、ホスファイト化合物、ヒンダードアミン系化合物、過塩素酸金属塩等が挙げられる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物等が挙げられる。
安定助剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン等のβ-ジケトン化合物を用いてもよい。
表面層における安定剤の含有量は特に限定されるものではなく、表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.5質量部~4質量部がより好ましく、1質量部~3質量部がさらに好ましい。
【0026】
表面層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。表面層の平均厚みは、化粧シートの弾性率を望ましい範囲とする観点から、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。表面層の平均厚みは、化粧シートの取り扱い性の観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。表面層の平均厚みは、10μm~50μmであることが好ましい。
【0027】
表面層は、化粧シートの表面をマット状とすべく、マット剤を含有してもよい。あるいは、表面層の表面にマット剤をコーティングしてもよい。
【0028】
表面層に添加されうるその他の添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、シリコーン樹脂などの防汚目的の添加剤、スリップ剤、フィラー等が挙げられる。
【0029】
[第二実施形態]
図2は、第二実施形態に係る化粧シート2の断面図である。化粧シート2は、表面層10と接着層40と樹脂層50と基材層20と金属層30とをこの順に含む。
化粧シート2において、表面層10、基材層20及び金属層30の詳細は、化粧シート1と同様であるため、その説明を割愛する。
【0030】
(樹脂層50)
化粧シート2では、表面層10と基材層20との間に、意匠性の観点から樹脂層50が設けられる。
樹脂層は、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等を含有してもよい。これらの中でも、透明性の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、単独の(メタ)アクリルモノマー由来の構造単位からなるホモポリマーであってもよいし、2種類以上の(メタ)アクリルモノマー由来の構造単位からなるコポリマーであってもよい。
ここで、(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル等のメタクリル酸の誘導体の少なくともいずれかを意味する。アクリル酸の誘導体及びメタクリル酸の誘導体は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。
また、(メタ)アクリル樹脂には、(メタ)アクリルモノマー以外のその他の単量体が用いられてもよい。
(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシ基を含むその他の単量体等の、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、0.5質量%以上であってもよい。(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、0.5質量%~20質量%が好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~1,000,000の範囲内であることが好ましく、10,000~800,000の範囲内であることがより好ましく、100,000~750,000の範囲内であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、5,000以上であれば、樹脂層が脆くなりにくい傾向にある。また、(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、1,000,000以下であれば、製膜性に優れる傾向にある。
(メタ)アクリル樹脂として2種類以上の(メタ)アクリル樹脂を併用する場合、2種類以上の(メタ)アクリル樹脂混合物についての重量平均分子量(Mw)が、上記範囲内であることが好ましい。
【0032】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系樹脂の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系樹脂を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系樹脂とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量を測定する。
【0033】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃ 溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0034】
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、機械的強度の観点から、-20℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、樹脂膜の作業性がよく、脆くなりにくい観点から100℃以下であってもよい。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、-20℃~100℃が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定装置(DSC)(例えば、セイコーインスツル株式会社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点として求められた値をいう。示差走査熱量測定装置(DSC)によりDSCカーブの変曲点が2つ以上観察された場合、温度が最も高い変曲点における温度を、(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgとする。
【0035】
なお、(メタ)アクリル樹脂を構成する構造単位が判明している場合には、(メタ)アクリル樹脂のTgは、下記式の計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値としてもよい。
【0036】
【数1】
【0037】
式中、Tg、Tg、・・・・・及びTgは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m、m、・・・・・及びmは、それぞれの単量体のモル分率である。
【0038】
なお、「単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いた上述の方法により測定することができる。
【0039】
代表的な単量体の「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、次の通りである。メチルアクリレートは10℃であり、エチルアクリレートは-22℃であり、n-ブチルアクリレートは-54℃であり、2-エチルヘキシルアクリレートは-70℃であり、2-ヒドロキシエチルアクリレートは-15℃であり、4-ヒドロキシブチルアクリレートは-80℃であり、t-ブチルアクリレートは43℃であり、酢酸ビニルは32℃であり、アクリル酸は106℃であり、メチルメタクリレートは105℃であり、2-ヒドロキシエチルメタクリレートは85℃である。例えば、これら代表的な単量体を用いることで、前述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
上記した単量体以外の単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、ポリマーハンドブック(第4版、Wiley-Interscience;以下、同じ。)に記載された値を採用し、ポリマーハンドブックに記載がない場合には、上述の測定方法により得られる単独重合体のガラス転移温度の値を採用する。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
【0040】
(メタ)アクリル樹脂が2種類以上併用される場合、最も高いガラス転移温度Tgを示す(メタ)アクリル樹脂についてのガラス転移温度Tgが、上記範囲であることが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法で単量体を重合して製造できる。なお、(メタ)アクリル樹脂の製造後に樹脂組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、溶液重合が好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を用いてもよい。市販されている(メタ)アクリル樹脂としては、KP-1876E(商品名:ニッセツ(登録商標)、日本カーバイド工業社製)、H-4002(根上工業社製)等が挙げられる。
【0043】
樹脂層には、樹脂層を着色するための着色剤、レベリング剤、消泡剤、シリコーン樹脂などの防汚目的の添加剤、スリップ剤、フィラー等が必要に応じて含有されてもよい。
【0044】
樹脂層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。樹脂層の平均厚みは、化粧シートの弾性率を望ましい範囲とする観点から、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、35μm以下がさらに好ましい。樹脂層の平均厚みは、化粧シートの取り扱い性の観点から、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。樹脂層の平均厚みは、15μm~50μmであることが好ましい。
【0045】
(接着層40)
接着層40は、個別に作製された表面層10と基材層20とを、基材層20の表面に設けられた樹脂層50を介して接着させる。この場合、接着層40は、表面層10の表面に設けられてもよく、基材層20における樹脂層50の表面に設けられてもよい。なお、第二実施形態において表面層10が樹脂層50の表面に直接設けられる場合、接着層40は必ずしも設けられなくともよい。
【0046】
接着層は、樹脂組成物からなる。接着層に用いられる樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、合成ゴム系接着剤等が挙げられ、樹脂層と接着層との密着性を高める観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル系接着剤である。
【0047】
接着層の平均厚みは特に制約はないが、5μm~100μmの範囲であることが好ましい。接着層の平均厚みが上記範囲であれば、個別に作製された表面層と基材層とを貼り合わせる際の作業性(例えば、取扱い性)が良好になる。
【0048】
[第三実施形態]
図3は、第三実施形態に係る化粧シート3の断面図である。化粧シート3は、表面層10と第1の接着層42と樹脂層50と基材層20と金属層30とプライマー層60と第2の接着層44とをこの順に含む。
化粧シート3において、表面層10、基材層20、金属層30及び樹脂層50の詳細は、化粧シート1又は化粧シート2の場合と同様であるため、その説明を割愛する。
また、化粧シート3において、第1の接着層42の詳細は、接着層40と同様であるため、その説明を割愛する。
【0049】
(プライマー層60)
プライマー層60は、金属層30と第2の接着層44との間の密着性を向上するために設けられる。
プライマー層は、例えば、ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含む、プライマー層用組成物から形成され得る。特に、プライマー層に含まれるウレタン樹脂は第2の接着層44を侵食しないという観点から、水系ウレタン樹脂であることがより好ましい。水系ウレタン樹脂には、例えば、自己乳化型ウレタン樹脂、強制乳化型ウレタン樹脂、及び水溶性型ウレタン樹脂等が挙げられる。自己乳化型ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の分子構造に、アニオン及びノニオン等の親水性基を有しており、これら親水性基によってウレタン樹脂等が水系に乳化分散されたタイプの水系ウレタン樹脂である。強制乳化型ウレタン樹脂は、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤等の界面活性剤によってウレタン樹脂又はウレタンプレポリマーが水系に乳化分散されたタイプの水系ウレタン樹脂である。このような、ウレタン樹脂には、タケラック(登録商標)WSシリーズ(三井化学製)等が挙げられる。
【0050】
プライマー層は、この他に、架橋剤、シリカ粉、及び着色剤等を含んでいてもよい。
【0051】
プライマー層の平均厚みは、金属層30と第2の接着層44との密着性を高めるという観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。また、プライマー層の平均厚みは、透明性の観点から、好ましくは6μm以下、より好ましくは4μm以下である。プライマー層の平均厚みは、0.1μm~6μmが好ましい。
【0052】
(第2の接着層44)
第2の接着層44は、化粧シート3を被着体に貼付するために設けられる。
第2の接着層44を構成する成分は、接着層40と同様とされる。
第2の接着層44の平均厚みは特に制約はないが、5μm~100μmの範囲であることが好ましい。第2の接着層44の平均厚みが上記範囲であれば、化粧シート3を被着体に貼付する際の作業性(例えば、取扱い性)が良好になる。
【0053】
[化粧シートの製造方法]
本開示の化粧シートは、前述した層構成を実現可能な方法で製造することが可能であり、このような方法は、積層体の製造における公知の方法を利用して実現することが可能である。
例えば、化粧シート1は、基材層20の一表面に金属層30を、例えば真空蒸着により形成し、基材層20の他の表面に表面層10を構成する樹脂組成物を付与し、乾燥し、必要に応じて加熱等の処理を施すことで製造することができる。
また、樹脂層50を有する化粧シート2については、2つの積層体を積層して製造することができる。つまり、基材層20の一表面に金属層30を、例えば真空蒸着により形成し、基材層20の他の表面に樹脂層50を構成する樹脂組成物を付与し、乾燥し、必要に応じて加熱等の処理を施すことで第1の積層体を準備する。次いで、表面層10の一表面に接着層40を形成して第2の積層体を準備する。第1の積層体における樹脂層50側の面と第2の積層体における接着層40側の面とを接触させて圧着して両者を一体化し、化粧シート2を得てもよい。
接着層40の形成に際しては、接着層形成用の樹脂組成物を仮支持体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加熱等することで仮支持体上に接着層40を形成し、次いで得られた接着層40を表面層10の一表面に接触させて圧着して両者を一体化し、次いで仮支持体を除去することで表面層10の一表面に接着層40を形成してもよい。
また、化粧シート3については、化粧シート2における金属層30の表面にプライマー層用組成物を付与し、乾燥し、必要に応じて加熱等することでプライマー層60を金属層30上に形成し、次いで第2の接着層44をプライマー層60上に形成することで製造することができる。第2の接着層44の形成の際には、既述の仮支持体を用いた方法を適用することもできる。
なお、本開示の化粧シートの製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0054】
<建築部材>
本開示の建築部材は、被着体と、前記被着体の表面の少なくとも一部を覆う本開示の化粧シートとを有する。
被着体としては、襖、ドアー、キッチン扉、洗面収納扉等の表面材、キッチン収納内部、洗面収納内部等の底板、サッシなどが挙げられる。
被着体表面への化粧シートの貼付方法は特に限定されるものではない。化粧シートにおける表面層を有する側の面とは反対側の面に接着層が設けられている場合、接着層側の面を被着体の表面に接触させればよい。また、化粧シートにおける表面層を有する側の面とは反対側の面に接着層が設けられていない場合、被着体表面の化粧シートが貼付される箇所に接着剤を付与し、次いで化粧シートにおける表面層を有する側の面とは反対側の面を被着体の表面に接触させればよい。
【0055】
本開示の化粧シートは追従性に優れることから、被着体として金属型材等の直角部又は鋭角部を有する部材の表面に対して化粧シートを貼付した場合であっても、直角部又は鋭角部での化粧シートの浮きの発生が抑制される。
【実施例0056】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。
【0057】
(アクリル系共重合体Aの合成)
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置の反応容器内に、酢酸エチル70質量部を仕込んだ。
また、別の容器に、メタクリル酸メチル62.5質量部、アクリル酸エチル29.5質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル7.0質量部及びアクリル酸1.0質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物のうちの20.0質量部を上記反応容器内に仕込んだ後、加熱し、還流温度で10分間還流を行った。
次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残り80.0質量部と、酢酸エチル50.0質量部と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて上記反応容器内に逐次滴下し、滴下終了後に、更に150分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が26.5質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、重量平均分子量が20万~25万でガラス転移温度が49℃のアクリル系共重合体A溶液を得た。
【0058】
(アクリル系共重合体Bの合成)
アクリル酸エチル65.0質量部、メタクリル酸メチル20.0質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル14.0質量部及びアクリル酸1.0質量部からなる単量体混合物を用いた以外はアクリル系共重合体Aの合成と同様にして、固形分濃度が40.0質量%である重量平均分子量が20万~25万でガラス転移温度が1℃のアクリル系共重合体B溶液を得た。
【0059】
(アクリル系共重合体Cの合成)
アクリル酸ブチル90質量部及びアクリル酸10質量部からなる単量体混合物を用いた以外はアクリル系共重合体Aの合成と同様にして、固形分濃度が33.5質量%である重量平均分子量が60万~70万でガラス転移温度が-37℃のアクリル系共重合体C溶液を得た。
【0060】
<実施例1>
ポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡STC株式会社製、商品名「A4360」、平均厚み38μm)からなる基材層の一表面に真空蒸着法によりアルミニウムの金属層(平均厚み0.05μm)を設けた。
次いで、基材層の他の表面に、アクリル系共重合体A溶液の71.5質量部とアクリル系共重合体B溶液の28.5質量部との混合体に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)系架橋剤(旭化成株式会社製、商品名「デュラネートE405-70B」、固形分濃度70質量%)を0.6質量部添加して調製した樹脂層形成用樹脂組成物を溶剤乾燥後の厚みが30μmになるように塗布し、120℃雰囲気にて3分間の加熱乾燥を行い、樹脂層を得た。
アクリル系共重合体C溶液100質量部に、トルエンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL45E」、固形分濃度45質量%)を2.5質量部添加して接着層形成用樹脂組成物を調製した。この接着層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚み38μmになるように、剥離処理が施してある別のポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、100℃雰囲気にて1分間の加熱乾燥を行い、接着層(第2の接着層)を得た。次いで、金属層と接着層とを貼り合わせることで、樹脂層/基材層/金属層/接着層/ポリエチレンテレフタラートフィルムの積層構造を有する積層体Aを得た。
【0061】
次いで、ポリウレタン樹脂A溶液(ウレタンA、大日精化株式会社製、商品名「NE-8836」、固形分濃度25.0質量%)100質量部に、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin477」、固形分100質量%)を0.5質量部、希釈溶剤としてイソプロパノールとトルエンの50:50(質量%)混合溶液10質量部を添加して表面層形成用樹脂組成物を調製した。この表面層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚みが30μmになるように、剥離処理が施してあるポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、140℃雰囲気にて3分間の加熱乾燥を行い、表面層を得た。
アクリル系共重合体C溶液100質量部に、アルミキレート系架橋剤(川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アルミキレートA」、固形分100質量%)を0.13質量部添加して接着層形成用樹脂組成物を調製した。この接着層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚みが25μmになるように、剥離処理が施してある別のポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、100℃雰囲気にて1分間の加熱乾燥を行い、接着層を得た。次いで、表面層と接着層とを貼り合わせることで、ポリエチレンテレフタラートフィルム/接着層/表面層/ポリエチレンテレフタラートフィルムの積層構造を有する積層体Bを得た。
【0062】
積層体Bにおける接着層と接触する側のポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離し、積層体Aにおける樹脂層側の面に接着層を接触させて接着層と表面層とを樹脂層上に積層し、さらに表面層と接触する側のポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離することで、ポリエチレンテレフタラートフィルム/接着層/金属層/基材層/樹脂層/接着層/表面層の積層構造を有する化粧シート1を得た。
【0063】
<実施例2>
ポリウレタン樹脂A溶液に替えてポリウレタン樹脂B溶液(ウレタンB、大日精化株式会社製、商品名「NE-8811」、固形分濃度25.0質量%)を使用し、溶剤乾燥後の平均厚みが30μmになるようにして表面層を得た以外は、実施例1と同様の条件で化粧シート2を得た。
【0064】
<実施例3>
基材層をポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「E5100」、平均厚み25μm)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート3を得た。
【0065】
<実施例4>
溶剤乾燥後の表面層の平均厚みを40μmにした以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート4を得た。
【0066】
<実施例5>
溶剤乾燥後の表面層の平均厚みを20μmにした以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート5を得た。
【0067】
<比較例1>
基材層をポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4160」、平均厚み50μm)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート6を得た。
【0068】
<比較例2>
基材層をポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4160」、平均厚み100μm)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート7を得た。
【0069】
<比較例3>
実施例1における樹脂層の形成工程と同様の工程で積層体Bの表面層(平均厚み:30μm)を形成した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート8を得た。
【0070】
<比較例4>
表面層にポリ塩化ビニルフィルム(塩ビ樹脂、日本カーバイド工業株式会社製、商品名「08C040M」、平均厚み50μm)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート9を得た。
【0071】
<比較例5>
表面層にフッ素フィルム(フッ素樹脂、デンカ株式会社製、商品名「デンカDXフィルム」、平均厚み30μm)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート10を得た。
【0072】
<比較例6>
基材層にフッ素フィルム(フッ素樹脂、デンカ株式会社製、商品名「デンカDXフィルム」、平均厚み40μm)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート11を得た。
【0073】
<比較例7>
基材層にポリ塩化ビニルフィルム(塩ビ樹脂、日本カーバイド工業株式会社製、商品名「08C040M」、平均厚み40μm)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、化粧シート12を得た。
【0074】
<弾性率測定>
テンシロン(エーアンドデイ製)を使用して引張速度200mm/minの条件で弾性率を測定した。幅25mm、長さ100mmの大きさになるように各化粧シートを切り出して試験片とし、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0075】
<追従性評価>
50mm×30mm×100mmのアルミニウム型材に上述のようにして得た各化粧シートを貼り付け、アルミニウム型材の直角部において各化粧シートの浮きの有無を目視にて観察し下記基準に則って評価した。得られた結果を表1に示す。
-判断基準-
A:アルミニウム型材の全ての直角部で化粧シートの浮きが無かった。
B:アルミニウム型材の全ての直角部で化粧シートの浮きが無かったが、貼り付け時に化粧シートにシワが生じた。
C:アルミニウム型材の一部もしくは全ての直角部で化粧シートの浮きがあった。
【0076】
【表1】
【0077】
なお、各層の厚み(平均厚み)は、既述した方法によって測定した。
【0078】
表1に記載の評価結果から、以下のことがわかる。
ポリエステルフィルムは剛性が高い材料であるため、ポリエステルフィルムを基材層として使用した化粧シートを金属型材の直角部又は鋭角部に追従させて貼り付けるためには、化粧シートの剛性を調整する必要があった。
比較例5のように表面層にフッ素フィルムを使用すると、化粧シートの剛性が高く直角部への追従性が不十分であった。一方、表面層に適用されるフィルムとしてフッ素フィルム以外のフィルムを検討したところ、比較例3又は比較例4のように、アクリルフィルムや塩ビフィルムでは追従性の向上を図ることができなかった。一方、実施例1~実施例5のように、表面層にウレタンフィルムを用いた場合に化粧シートの剛性が低下し、直角部への追従性が向上することが分かった。
比較例1又は比較例2のように、平均厚みが50μm以上のポリエステルフィルムを基材層として使用すると、ポリエステルフィルムがもとの状態に戻ろうとする復元力に接着力が負けて、化粧シートがアルミニウム型材から浮いてしまうことが分かった。しかし、実施例1~実施例5のように、平均厚みが40μm以下のポリエステルフィルムフィルムを基材層として使用した場合、浮きが発生することなく直角部に追従して化粧シートを貼合させることができた。また、比較例6のように、基材層を平均厚みが40μm以下のフッ素フィルムに変更した場合でも復元力が高く、化粧シートがアルミニウム型材からの浮きが生じることが分かった。一方で比較例7のように、基材層を平均厚みが40μm以下の塩ビフィルムに変更した場合では化粧シートの剛性が低くなりすぎてしまい、化粧シートをアルミニウム型材に貼り付ける際にシワが入ることが分かった。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3 化粧シート
10 表面層
20 基材層
30 金属層
40、42、44 接着層
50 樹脂層
60 プライマー層
図1
図2
図3