(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145722
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20241004BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20241004BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20241004BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241004BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20241004BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20241004BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B32B15/09 Z
B32B15/095
B32B7/023
B32B27/36
B32B27/40
B60R13/04
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058201
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】絹村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】福島 萌未
(72)【発明者】
【氏名】三枝 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AD06
3D023AD12
4F100AB01D
4F100AB10
4F100AK01B
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4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】鏡面調の外観を有し、耐候性、及び種々の材料への追従性に優れる積層体の提供。
【解決手段】積層体は、表面層と、樹脂層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、前記表面層及び前記樹脂層が、紫外線吸収剤を含有し、弾性率が、155N/25mm未満であり、前記表面層の紫外線透過率が、0.60%未満であり、前記表面層の400nmにおける吸光度が、0.45以下であるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と、樹脂層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、
前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、
前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、
前記表面層及び前記樹脂層が、紫外線吸収剤を含有し、
弾性率が、155N/25mm未満であり、
前記表面層の紫外線透過率が、0.60%未満であり、
前記表面層の400nmにおける吸光度が、0.45以下である積層体。
【請求項2】
前記表面層における前記紫外線吸収剤の含有量が、前記表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して2質量部以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記樹脂層における前記紫外線吸収剤の含有量が、前記樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して0.3質量部以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂層が、着色剤を含有する請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層の全光線透過率が、15.0%~100%である請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材層の平均厚みが、40μm以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記金属層が、金属、金属酸化物又は合金を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記表面層の平均厚みが、50μm以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記金属層の平均厚みが、1μm以下である請求項1に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料に意匠性や高級感を持たせるために表面を鏡面調とする場合、金属材料であれば表面を磨くことや、金属粉や光輝性顔料を含む塗料を種々の材料の表面に塗装することが考えられる。しかしながら、これらの方法を用いた場合、金属調の外観は得られるものの、材料の表面はくすんだ色味となりやすく、高級感のある鏡面調は得ることは困難である。
【0003】
種々の材料の表面を鏡面調とするための簡便な方法として、金属調の加飾フィルムを材料の表面に貼り付けることが考えられる。
例えば、特許文献1には、金属鏡面調光沢を有する複合材料として、基材フィルムの片面に、金属層、絵柄層及びフッ素系樹脂フィルムがこの順に積層された金属調化粧シートが開示されている。
また、特許文献2には、高分子樹脂よりなる基材の表面に金属蒸着層が積層され、反対面に樹脂よりなる樹脂層が積層されてなる、金属蒸着積層体が開示されている。特許文献2では、樹脂としてアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエステル系樹脂の何れか若しくは複数が用いられる。
これら金属調化粧シート又は金属蒸着積層体は金属層又は金属蒸着層を有するため、材料の表面に貼り付けることで高級感のある鏡面調の外観が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-58660号公報
【特許文献2】特開2007-216608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、種々の材料が例えば建築や車両などに用いられた場合、建築や車両は様々な環境に置かれるため、耐候性が高いことが求められる。特許文献1に記載の金属調化粧シートは、表面層にフッ素系樹脂フィルムを用いていることから耐候性が高いものの、フッ素系樹脂フィルムが硬いため、種々の材料の表面形状に追従させて貼り付けることが困難であった。
一方、特許文献2に記載の金属蒸着積層体はウレタン系樹脂等を含む樹脂層を有するため、フッ素系樹脂フィルムを表面層に用いる特許文献1に記載の金属調化粧シートに比較して追従性に優れる。
しかし、特許文献2に記載の金属蒸着積層体は耐候性が不十分であった。
そこで、本発明者等は、特許文献2に記載の金属蒸着積層体における樹脂層の耐候性を向上すべく、樹脂層に紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤を添加した。この場合、これらの添加剤の存在により樹脂層の透明性が低下し、高級感のある鏡面調の外観が得られないことがあった。
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、鏡面調の外観を有し、耐候性及び追従性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 表面層と、樹脂層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、
前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、
前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、
前記表面層及び前記樹脂層が、紫外線吸収剤を含有し、
弾性率が、155N/25mm未満であり、
前記表面層の紫外線透過率が、0.60%未満であり、
前記表面層の400nmにおける吸光度が、0.45以下である積層体。
<2> 前記表面層における前記紫外線吸収剤の含有量が、前記表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して2質量部以上である<1>に記載の積層体。
<3> 前記樹脂層における前記紫外線吸収剤の含有量が、前記樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して0.3質量部以上である<1>又は<2>に記載の積層体。
<4> 前記樹脂層が、着色剤を含有する<1>~<3>のいずれか1項に記載の積層体。
<5> 前記樹脂層の全光線透過率が、15.0%~100%である<1>~<4>のいずれか1項に記載の積層体。
<6> 前記基材層の平均厚みが、40μm以下である<1>~<5>のいずれか1項に記載の積層体。
<7> 前記金属層が、金属、金属酸化物又は合金を含む<1>~<6>のいずれか1項に記載の積層体。
<8> 前記表面層の平均厚みが、50μm以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の積層体。
<9> 前記金属層の平均厚みが、1μm以下である<1>~<8>のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、鏡面調の外観を有し、耐候性及び追従性に優れる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る積層体1の断面図である。
【
図2】第二実施形態に係る積層体2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
本開示において、層又は膜の厚みは、マイクロメーターを用いて測定された値をいう。
本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の任意の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
本開示において、固形分濃度(質量%)とは、溶液中に含まれる溶剤以外の成分の質量基準の割合をいう。
【0011】
<積層体>
本開示の積層体は、表面層と、樹脂層と、基材層と、金属層とをこの順に含み、前記表面層が、ウレタン系樹脂を含有し、前記基材層が、ポリエステル系樹脂を含有し、前記表面層及び前記樹脂層が、紫外線吸収剤を含有し、弾性率が、155N/25mm未満であり、前記表面層の紫外線透過率が、0.60%未満であり、前記表面層の400nmにおける吸光度が、0.45以下であるものである。
本開示の積層体は、鏡面調の外観を有し、耐候性及び追従性に優れる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
積層体の追従性は、表面層及び基材層を構成する樹脂成分の種類のみならず積層体全体の弾性率が追従性に寄与していると考えられる。本開示の積層体では、表面層がウレタン系樹脂を含有し、基材層がポリエステル系樹脂を含有し、且つ、積層体全体としての弾性率を155N/25mm未満とした。これにより、積層体の追従性が向上したと考えられる。一方、紫外線吸収剤を表面層に含有することで、表面層の耐候性を向上できる。さらに、紫外線吸収剤を樹脂層に含有することで、表面層側から入射し金属層で反射した光が樹脂層に含有される紫外線吸収剤によって再度表面層に到達するのが抑制されるため、表面層の耐候性がより向上すると推察される。また、表面層の耐候性がより向上することで、経時での鏡面調の外観の劣化が抑制されると推察される。
さらに、表面層の紫外線透過率を0.60%未満とすることで、表面層の耐候性がより向上するため、経時での鏡面調の外観の劣化が抑制されると推察される。
さらに、表面層の400nmにおける吸光度を0.45以下とすることで、表面層の無色透明性が確保され、鏡面調の外観が得られると推察される。
【0012】
本開示の積層体の弾性率は、155N/25mm未満であり、154N/25mm以下が好ましく、153N/25mm以下がより好ましく、152N/25mm以下がさらに好ましい。本開示の積層体の弾性率は、積層体の取り扱い性の観点から130N/25mm以上が好ましく、133N/25mm以上がより好ましく、135N/25mm以上がさらに好ましい。本開示の積層体の弾性率は、130N/25mm以上155N/25mm未満が好ましい。
積層体の弾性率は、幅25mm、長さ100mmの試験片に対して25℃の環境下で引っ張り試験を実施して得られた値をいう。試験条件は、引張速度を200mm/minとする。
積層体の弾性率は、表面層、基材層、樹脂層及び必要に応じて設けられるその他の層の厚み、並びに、各層の成分等を調整することで、上記所望の範囲内とすることができる。
【0013】
本開示の積層体の厚みは、積層体の弾性率を上記所望の範囲内とする観点から、100μm~200μmが好ましく、120μm~190μmがより好ましく、140μm~180μmがさらに好ましい。
【0014】
本開示の積層体は、表面層と樹脂層と基材層と金属層とをこの順に含み、必要に応じてその他の層を含んでいてもよい。以下、本開示の積層体を、図面を参照して説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、同様の機能を有する部材又は部位には、全図面を通して同じ符合を付与し、その説明を省略することがある。
【0015】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る積層体1の断面図である。積層体1は、表面層10と接着層40と樹脂層50と基材層20と金属層30とをこの順に含む。
以下、各層について説明する。
【0016】
(表面層10)
表面層10は、ウレタン系樹脂を含有する。また、表面層10は、耐候性の観点から紫外線吸収剤を含有する。表面層10は、積層体1の表面を構成し、積層体1の表面を保護する。
表面層10は、金属層30による意匠性を十分に発現する観点から、光透過性を有することがより好ましい。また、表面層10は、特に被着体の装飾の用途において、耐候性を有することが好ましい。さらに、表面層10は、積層体1の引張強度および表面硬度を高める観点から、十分に高い機械的強度を有することが好ましい。
【0017】
表面層は、ウレタン系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。
表面層がウレタン系樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、表面層を構成する樹脂成分に占めるウレタン系樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。
【0018】
表面層に含有される紫外線吸収剤の種類は、特に制限されない。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの中でも、紫外線吸収剤としては、表面層の無色透明性及び耐候性の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0019】
表面層に含有される紫外線吸収剤は1種のみであってもよく、2種以上が併用されてもよい。
表面層に含有される紫外線吸収剤の含有量としては、特に制限はない。
表面層についての紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の観点から、表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、2.5質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、無色透明性の観点から、表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、10質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量は、表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましい。
【0020】
表面層は、積層体の耐候性を向上する観点から、光安定剤、熱安定剤、安定助剤などの紫外線吸収剤以外のその他の安定剤を含有してもよい。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
熱安定剤としては、ホスファイト化合物、過塩素酸金属塩等が挙げられる。
安定助剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン等のβ-ジケトン化合物を用いてもよい。
表面層におけるその他の安定剤の含有量は特に限定されるものではなく、表面層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、1質量部~7質量部が好ましく、2質量部~6質量部がより好ましく、3質量部~5質量部がさらに好ましい。
【0021】
表面層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。表面層の平均厚みは、積層体の弾性率を望ましい範囲とする観点から、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。表面層の平均厚みは、積層体の取り扱い性の観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。表面層の平均厚みは、10μm~50μmであることが好ましい。
【0022】
表面層の紫外線透過率は、耐候性の観点から0.60%未満とされ、0.59%以下が好ましく、0.58%以下がより好ましい。表面層の紫外線透過率は、0.01%以上であってもよい。表面層の紫外線透過率は、0.01%以上0.60%未満が好ましい。
本開示において、紫外線透過率とは、分光光度計を使用して波長240nmから600nmの透過率を測定し、JIS A5759(2016)に準拠して300nmから380nmにおける紫外線透過率を算出して得られた値をいう。
【0023】
表面層の400nmにおける吸光度は、無色透明性の観点から0.45以下とされ、0.40以下が好ましく、0.20以下がより好ましい。表面層の400nmにおける吸光度は、0.01以上であってもよい。表面層の400nmにおける吸光度は、0.01~0.45が好ましい。
【0024】
表面層は、積層体の表面をマット状とすべく、樹脂中にマット剤を含有してもよい。あるいは、表面層の表面にマット剤をコーティングしてもよい。
【0025】
表面層に添加されうるその他の添加剤としては、レベリング剤、消泡剤、シリコーン樹脂などの防汚目的の添加剤、スリップ剤、フィラー等が挙げられる。
【0026】
(基材層20)
基材層20は、ポリエステル系樹脂を含有する。基材層20は、金属層30を支持するための支持層として機能しうる。
基材層20は、実質的に透明であることが好ましい。「実質的に透明」とは、積層体1が金属層30による金属調の外観を呈するのに十分な透明性であることを示す。
【0027】
基材層を構成するポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)などの変性ポリエステルが挙げられる。グリコール変性ポリエチレンテレフタラートは、PETのモノマーにおけるエチレングリコール由来の構造単位の一部がシクロヘキサンジメタノール由来の構造単位に置き換えられた分子構造を有する。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)が好ましい。
基材層は、ポリエステル系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。
基材層がポリエステル系樹脂以外のその他の樹脂を含有する場合、基材層を構成する樹脂成分に占めるポリエステル系樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
基材層は、ポリエステル系樹脂からなるものであってもよい。この場合、基材層は、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなるものであることがより好ましい。
【0028】
基材層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。基材層の平均厚みは、積層体の弾性率を望ましい範囲とする観点から、40μm以下が好ましく、39μm以下がより好ましく、38μm以下がさらに好ましい。基材層の平均厚みは、積層体の取り扱い性の観点から、20μm以上であることが好ましく、22μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。基材層の平均厚みは、20μm~40μmであることが好ましい。
【0029】
(金属層30)
金属層30は、積層体1に金属光沢の外観を付与する層である。金属層30は、通常、金属の薄層であってよく、当該金属は、金属光沢を呈し、当該薄膜が積層体1を被着体に付着させる際に十分な展性を発現する範囲において適宜に選ぶことができる。
金属層は、金属、金属酸化物又は合金を含むもので合ってもよい。
金属層に含まれる金属の具体例としては、アルミニウム、インジウム、クロム、亜鉛、ガリウム、ニッケル、錫、銀、金、ケイ素、チタン、白金、パラジウム、ステンレス鋼およびハステロイが含まれる。中でも、当該金属は、加工性の観点から、アルミニウムであることが好ましい。
【0030】
金属層30は、金属箔で構成されていてもよいし、基材層20の表面に形成されている蒸着膜であってもよい。金属層30が蒸着膜のように基材層20の表面に直接形成される層であることは、金属層30と基材層20とを接着する接着層の作製に係る工程を省略可能かつ費用を削減可能である観点、および、接着層によって積層体1の剛性が高まることを抑制する観点から好ましい。
金属層は、真空蒸着、スパッタリングおよび化学気相成長(CVD)などの公知の技術を用いて基材層の表面に形成することが可能である。
【0031】
金属層の平均厚みは、光学的な効果および積層体の所期の追従性などの諸条件に基づいて決定される。金属層の平均厚みは、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。金属層の平均厚みは、0.01μm以上であってもよい。金属層の平均厚みは、0.01μm~1μmであることが好ましい。
【0032】
(接着層40)
接着層40は、個別に作製された表面層10と基材層20とを、基材層20の表面に設けられた樹脂層50を介して接着させる。この場合、接着層40は、表面層10の表面に設けられてもよく、基材層20における樹脂層50の表面に設けられてもよい。なお、第一実施形態において表面層10が樹脂層50の表面に直接設けられる場合、接着層40は必ずしも設けられなくともよい。
【0033】
接着層40は、樹脂組成物からなる。接着層に用いられる樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、合成ゴム系接着剤等が挙げられ、樹脂層と接着層との密着性を高める観点から、より好ましくは、(メタ)アクリル系接着剤である。
【0034】
接着層の平均厚みは特に制約はないが、5μm~100μmの範囲であることが好ましい。接着層の平均厚みが上記範囲であれば、個別に作製された表面層と基材層とを貼り合わせる際の作業性(例えば、取扱い性)が良好になる。
【0035】
(樹脂層50)
積層体1では、表面層10と基材層20との間に、意匠性の観点から樹脂層50が設けられる。樹脂層50は、耐候性の観点から紫外線吸収剤を含有する。樹脂層50が紫外線吸収剤を含有することで、積層体1における表面層10側から入射し金属層30で反射された光が樹脂層50を通過する際に紫外線吸収剤の作用により減衰する。その結果、表面層10に到達する反射光の量が減少し、表面層10の耐候性がより向上する。
【0036】
樹脂層についての紫外線吸収剤の含有量は、透明性の観点から、樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、0.4質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の観点から、樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、0.3質量部~4質量部が好ましい。
なお、樹脂層に含有される紫外線吸収剤の具体例は、表面層の場合と同様である。また、樹脂層に必要に応じて用いられるその他の安定剤の具体例及び好ましい含有量は、表面層の場合と同様である。
【0037】
また、樹脂層は、樹脂を含有する。樹脂層に含有される樹脂は特に限定されるものではない。樹脂層に含有される樹脂としては、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、単独の(メタ)アクリルモノマー由来の構造単位からなるホモポリマーであってもよいし、2種類以上の(メタ)アクリルモノマー由来の構造単位からなるコポリマーであってもよい。
ここで、(メタ)アクリルモノマーは、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル等のアクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル等のメタクリル酸の誘導体の少なくともいずれかを意味する。アクリル酸の誘導体及びメタクリル酸の誘導体は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、グリシジル基等の置換基を有していてもよい。
また、(メタ)アクリル樹脂には、(メタ)アクリルモノマー以外のその他の単量体が用いられてもよい。
(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシ基を含むその他の単量体等の、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、0.5質量%以上であってもよい。(メタ)アクリル樹脂の全構造単位に占める、分子中にカルボキシ基を含む単量体由来の構造単位の合計の割合は、0.5質量%~20質量%が好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~1,000,000の範囲内であることが好ましく、10,000~800,000の範囲内であることがより好ましく、100,000~750,000の範囲内であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、5,000以上であれば、樹脂層が脆くなりにくい傾向にある。また、(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が、1,000,000以下であれば、製膜性に優れる傾向にある。
(メタ)アクリル樹脂として2種類以上の(メタ)アクリル樹脂を併用する場合、2種類以上の(メタ)アクリル樹脂混合物についての重量平均分子量(Mw)が、上記範囲内であることが好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系樹脂の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系樹脂を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系樹脂とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量を測定する。
【0040】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃ 溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0041】
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、機械的強度の観点から、-20℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、樹脂膜の作業性がよく、脆くなりにくい観点から100℃以下であってもよい。(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、-20℃~100℃が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定装置(DSC)(例えば、セイコーインスツル株式会社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点として求められた値をいう。示差走査熱量測定装置(DSC)によりDSCカーブの変曲点が2つ以上観察された場合、温度が最も高い変曲点における温度を、(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度Tgとする。
【0042】
なお、(メタ)アクリル樹脂を構成する構造単位が判明している場合には、(メタ)アクリル樹脂のTgは、下記式の計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値としてもよい。
【0043】
【0044】
式中、Tg1、Tg2、・・・・・及びTgnは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m1、m2、・・・・・及びmnは、それぞれの単量体のモル分率である。
【0045】
なお、「単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いた上述の方法により測定することができる。
【0046】
代表的な単量体の「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、次の通りである。メチルアクリレートは10℃であり、エチルアクリレートは-22℃であり、n-ブチルアクリレートは-54℃であり、2-エチルヘキシルアクリレートは-70℃であり、2-ヒドロキシエチルアクリレートは-15℃であり、4-ヒドロキシブチルアクリレートは-80℃であり、t-ブチルアクリレートは43℃であり、酢酸ビニルは32℃であり、アクリル酸は106℃であり、メチルメタクリレートは105℃であり、2-ヒドロキシエチルメタクリレートは85℃である。例えば、これら代表的な単量体を用いることで、前述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
上記した単量体以外の単量体の「単独重合体としたときのガラス転移温度」については、ポリマーハンドブック(第4版、Wiley-Interscience;以下、同じ。)に記載された値を採用し、ポリマーハンドブックに記載がない場合には、上述の測定方法により得られる単独重合体のガラス転移温度の値を採用する。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
【0047】
(メタ)アクリル樹脂が2種類以上併用される場合、最も高いガラス転移温度Tgを示す(メタ)アクリル樹脂についてのガラス転移温度Tgが、上記範囲であることが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法で単量体を重合して製造できる。なお、(メタ)アクリル樹脂の製造後に樹脂組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、溶液重合が好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を用いてもよい。市販されている(メタ)アクリル樹脂としては、KP-1876E(商品名:ニッセツ(登録商標)、日本カーバイド工業社製)、H-4002(根上工業社製)等が挙げられる。
【0050】
樹脂層には、積層体の色味を調整する観点から着色剤を含有してもよい。
樹脂層に含有される着色剤としては、例えば有機顔料、無機顔料、及び有機染料が挙げられる。これらの中でも、耐候性のある着色剤が好ましく、具体的には、THE SOCIETY OF DYERS AND COLOURISTS社出版による、COLOUR INDEX 3RD EDITION(Second Revision)(1982)及びSUPPLEMENT(1982)に掲載されている着色剤から選ぶことができる。
着色剤には、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色、茶色、黒色及び白色等いずれの色調のものでも用いることができる。また、上記顔料の他、樹脂層の光透過性、耐候性等に影響のない範囲で、マイカ、アルミ粉を含有させることができる。
【0051】
着色剤として、樹脂に顔料が分散された形で市販されているカラーベースを用いることが好ましい。ポリエステル可塑剤系カラーベース、(メタ)アクリル樹脂系カラーベース、酢酸ビニル樹脂系カラーベース、セルロース樹脂系カラーベース等が使用可能である。
【0052】
樹脂層が着色剤を含有する場合、樹脂層についての着色剤の含有量は、樹脂層の全光線透過率を所定の範囲に調整する観点から、樹脂層に含有される樹脂の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7.5質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0053】
樹脂層の全光線透過率は、透明性の観点から、15.0%~100%が好ましく、50.0%~100%がより好ましく、75.0%~100%がさらに好ましい。
本開示において、全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に基づいて測定された値をいう。
【0054】
樹脂層には、レベリング剤、消泡剤、シリコーン樹脂などの防汚目的の添加剤、スリップ剤等が必要に応じて含有されてもよい。
【0055】
樹脂層の平均厚みは、機械的強度、光学的機能及び成形性等の諸条件に基づいて設定される。樹脂層の平均厚みは、積層体の弾性率を望ましい範囲とする観点から、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。樹脂層の平均厚みは、積層体の取り扱い性の観点から、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。樹脂層の平均厚みは、15μm~50μmであることが好ましい。
【0056】
[第二実施形態]
図2は、第二実施形態に係る積層体2の断面図である。積層体2は、表面層10と第1の接着層42と樹脂層50と基材層20と金属層30とプライマー層60と第2の接着層44とをこの順に含む。
積層体2において、表面層10、基材層20、金属層30及び樹脂層50の詳細は、積層体1の場合と同様であるため、その説明を割愛する。
また、積層体2において、第1の接着層42の詳細は、接着層40と同様であるため、その説明を割愛する。
【0057】
(プライマー層60)
プライマー層60は、金属層30と第2の接着層44との間の密着性を向上するために設けられる。
プライマー層は、例えば、ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含む、プライマー層用組成物から形成され得る。特に、プライマー層に含まれるウレタン樹脂は第2の接着層を侵食しないという観点から、水系ウレタン樹脂であることがより好ましい。水系ウレタン樹脂には、例えば、自己乳化型ウレタン樹脂、強制乳化型ウレタン樹脂、及び水溶性型ウレタン樹脂等が挙げられる。自己乳化型ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の分子構造に、アニオン及びノニオン等の親水性基を有しており、これら親水性基によってウレタン樹脂等が水系に乳化分散されたタイプの水系ウレタン樹脂である。強制乳化型ウレタン樹脂は、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤等の界面活性剤によってウレタン樹脂又はウレタンプレポリマーが水系に乳化分散されたタイプの水系ウレタン樹脂である。このような、ウレタン樹脂には、タケラック(登録商標)WSシリーズ(三井化学製)等が挙げられる。
【0058】
プライマー層は、この他に、架橋剤、シリカ粉、及び着色剤等を含んでいてもよい。
【0059】
プライマー層の平均厚みは、金属層と第2の接着層との密着性を高めるという観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。また、プライマー層の平均厚みは、透明性の観点から、好ましくは6μm以下、より好ましくは4μm以下である。プライマー層の平均厚みは、0.1μm~6μmが好ましい。
【0060】
(第2の接着層44)
第2の接着層44は、積層体2を被着体に貼付するために設けられる。
第2の接着層を構成する成分は、接着層と同様とされる。
第2の接着層の平均厚みは特に制約はないが、5μm~100μmの範囲であることが好ましい。第2の接着層の平均厚みが上記範囲であれば、積層体を被着体に貼付する際の作業性(例えば、取扱い性)が良好になる。
【0061】
[積層体の製造方法]
本開示の積層体は、前述した層構成を実現可能な方法で製造することが可能であり、このような方法は、積層体の製造における公知の方法を利用して実現することが可能である。以下に、
図1で表される積層体1及び
図2で表される積層体2を例に、積層体の製造方法について説明する。
例えば、積層体1は、2つの積層体を積層して製造することができる。つまり、基材層20の一表面に金属層30を、例えば真空蒸着により形成し、基材層20の他の表面に樹脂層50を構成する樹脂組成物を付与し、乾燥し、必要に応じて加熱等の処理を施すことで第1の積層体を準備する。次いで、表面層10の一表面に接着層40を形成して第2の積層体を準備する。第1の積層体における樹脂層50側の面と第2の積層体における接着層40側の面とを接触させて圧着して両者を一体化し、積層体1を得てもよい。
接着層40の形成に際しては、接着層形成用の樹脂組成物を仮支持体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加熱等することで仮支持体上に接着層40を形成し、次いで得られた接着層40を表面層10の一表面に接触させて圧着して両者を一体化し、次いで仮支持体を除去することで表面層10の一表面に接着層40を形成してもよい。
また、積層体2については、積層体1における金属層30の表面にプライマー層用組成物を付与し、乾燥し、必要に応じて加熱等することでプライマー層60を金属層30上に形成し、次いで第2の接着層44をプライマー層60上に形成することで製造することができる。第2の接着層44の形成の際には、既述の仮支持体を用いた方法を適用することもできる。
なお、本開示の積層体の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0062】
[積層体の用途]
本開示の積層体は、被着体表面の意匠性を向上するための建築材料として好適に用いられる。被着体としては、襖、ドアー、キッチン扉、洗面収納扉等の表面材、キッチン収納内部、洗面収納内部等の底板、サッシなどが挙げられる。また、本開示の積層体は、建築材料以外にも自動車等の車両の外装品や屋外に設置される物体の表面に貼り付けるためのエンブレム、徽章、ワッペン、ステッカー、シール、ラベル、銘板、リボン等に適用可能である。
被着体表面への積層体の貼付方法は特に限定されるものではない。積層体における表面層を有する側の面とは反対側の面に接着層が設けられている場合、接着層側の面を被着体の表面に接触させればよい。また、積層体における表面層を有する側の面とは反対側の面に接着層が設けられていない場合、被着体表面の積層体が貼付される箇所に接着剤を付与し、次いで積層体における表面層を有する側の面とは反対側の面を被着体の表面に接触させればよい。
【実施例0063】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。
【0064】
(アクリル系共重合体Aの合成)
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置の反応容器内に、酢酸エチル70質量部を仕込んだ。
また、別の容器に、メタクリル酸メチル62.5質量部、アクリル酸エチル29.5質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル7.0質量部及びアクリル酸1.0質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物のうちの20.0質量部を上記反応容器内に仕込んだ後、加熱し、還流温度で10分間還流を行った。
次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残り80.0質量部と、酢酸エチル50.0質量部と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて上記反応容器内に逐次滴下し、滴下終了後に、更に150分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が26.5質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、重量平均分子量が20万~25万でガラス転移温度が49℃のアクリル系共重合体A溶液を得た。
【0065】
(アクリル系共重合体Bの合成)
アクリル酸エチル65.0質量部、メタクリル酸メチル20.0質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル14.0質量部及びアクリル酸1.0質量部からなる単量体混合物を用いた以外はアクリル系共重合体Aの合成と同様にして、固形分濃度が40.0質量%である重量平均分子量が20万~25万でガラス転移温度が1℃のアクリル系共重合体B溶液を得た。
【0066】
(アクリル系共重合体Cの合成)
アクリル酸ブチル90質量部及びアクリル酸10質量部からなる単量体混合物を用いた以外はアクリル系共重合体Aの合成と同様にして、固形分濃度が33.5質量%である重量平均分子量が60万~70万でガラス転移温度が-37℃のアクリル系共重合体C溶液を得た。
【0067】
<実施例1>
ポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡STC株式会社製、商品名「A4360」、平均厚み38μm)からなる基材層の一表面に真空蒸着法によりアルミニウムの金属層(平均厚み0.05μm)を設けた。
次いで、基材層の他の表面に、アクリル系共重合体A溶液の71.5質量部とアクリル系共重合体B溶液の28.5質量部との混合体に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)系架橋剤(旭化成株式会社製、商品名「デュラネートE405-70B」、固形分70質量%)を0.6質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin477」、固形分100質量%)0.5質量部を添加して調製した樹脂層形成用樹脂組成物を溶剤乾燥後の厚みが30μmになるように塗布し、120℃雰囲気にて3分間の加熱乾燥を行い、樹脂層を得た。
アクリル系共重合体C溶液100質量部に、トルエンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL45E」、固形分45質量%)を2.5質量部添加して接着層形成用樹脂組成物を調製した。この接着層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚み38μmになるように、剥離処理が施してある別のポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、100℃雰囲気にて1分間の加熱乾燥を行い、接着層(第2の接着層)を得た。次いで、金属層と接着層とを貼り合わせることで、樹脂層/基材層/金属層/接着層/ポリエチレンテレフタラートフィルムの積層構造を有する積層体Aを得た。
【0068】
次いで、ポリウレタン樹脂A溶液(ウレタンA、大日精化株式会社製、商品名「NE-8836」、固形分25.0質量%)100質量部に、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin477」、固形分100質量%)を1.0質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin292」、固形分100質量%)1.0質量部を添加して表面層形成用樹脂組成物を調製した。この表面層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚みが30μmになるように、剥離処理が施してあるポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、140℃雰囲気にて3分間の加熱乾燥を行い、表面層を得た。
アクリル系共重合体C溶液100質量部に、アルミキレート系架橋剤(川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アルミキレートA」、固形分100質量%)を0.13質量部、希釈溶剤として酢酸エチルを13質量部添加して接着層形成用樹脂組成物を調製した。この接着層形成用樹脂組成物を、溶剤乾燥後の平均厚みが25μmになるように、剥離処理が施してある別のポリエチレンテレフタラートフィルムの一表面に塗布し、100℃雰囲気にて1分間の加熱乾燥を行い、接着層を得た。次いで、表面層と接着層とを貼り合わせることで、ポリエチレンテレフタラートフィルム/接着層/表面層/ポリエチレンテレフタラートフィルムの積層構造を有する積層体Bを得た。
【0069】
積層体Bにおける接着層と接触する側のポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離し、積層体Aにおける樹脂層側の面に接着層を接触させて接着層と表面層とを樹脂層上に積層し、さらに表面層と接触する側のポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離することで、ポリエチレンテレフタラートフィルム/接着層/金属層/基材層/樹脂層/接着層/表面層の積層構造を有する積層体1を得た。
【0070】
<実施例2>
ポリウレタン樹脂Aに替えてポリウレタン樹脂B(ウレタンB、大日精化株式会社製、商品名「NE-8811」、固形分25.0質量%)を使用し、溶剤乾燥後の平均厚みが30μmになるようにして表面層を得た以外は実施例1と同様の条件で積層体2を得た。
【0071】
<実施例3>
基材層をポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「E5100」、平均厚み25μm)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体3を得た。
【0072】
<実施例4>
溶剤乾燥後の表面層の平均厚みを40μmにした以外は実施例1と同様の方法で、積層体4を得た。
【0073】
<実施例5>
溶剤乾燥後の表面層の平均厚みを20μmにした以外は実施例1と同様の方法で、積層体5を得た。
【0074】
<実施例6>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を0.75質量部に変更し、かつ樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.70質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体6を得た。
【0075】
<実施例7>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を1.50質量部に変更し、かつ樹脂層の紫外線吸収剤をベンゾフェノン系紫外線吸収剤(シプロ化成株式会社製、商品名「SEESORB103」、固形分100質量%)0.38質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体7を得た。
【0076】
<実施例8>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を2.00質量部に変更し、かつ樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.30質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体8を得た。
【0077】
<実施例9>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を1.50質量部に変更し、かつベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin326」、固形分100質量%)を0.50質量部さらに表面層に添加した以外は実施例1と同様の方法で、積層体9を得た。
【0078】
<実施例10>
樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.70質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体10を得た。
【0079】
<実施例11>
樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.30質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体11を得た。
【0080】
<実施例12>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を0.75質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体12を得た。
【0081】
<比較例1>
基材層をポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャイン(登録商標)A4160」、平均厚み50μm)に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体13を得た。
【0082】
<比較例2>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を0.50質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体14を得た。
【0083】
<比較例3>
実施例1における樹脂層の形成工程と同様の工程で積層体Bの表面層(平均厚み:36μm)を形成した以外は実施例1と同様の方法で、積層体15を得た。
【0084】
<比較例4>
フッ素系樹脂フィルム(デンカ株式会社製、商品名「デンカDXフィルム」、平均厚み50μm)を表面層として使用した以外は実施例1と同様の方法で、積層体16を得た。
【0085】
<比較例5>
樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.00質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体17を得た。
【0086】
<比較例6>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を0.00質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体18を得た。
【0087】
<比較例7>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を0.00質量部に変更し、かつ樹脂層の紫外線吸収剤の添加量を0.00質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体19を得た。
【0088】
<比較例8>
表面層の紫外線吸収剤の添加量を1.50質量部に変更し、かつベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin326」、固形分100質量%)を1.00質量部さらに表面層に添加した以外は実施例1と同様の方法で、積層体20を得た。
【0089】
上述のようにして得られた各積層体について、以下の評価を実施した。
【0090】
<弾性率測定>
テンシロン(株式会社エーアンドデイ製)を使用して25℃の環境下で引張速度200mm/minの条件で弾性率を測定した。幅25mm、長さ100mmの大きさになるように各積層体を切り出して試験片とし、評価を行った。得られた結果を表1又は表2に示す。
【0091】
<追従性評価>
50mm×30mm×100mmのアルミニウム型材に上述のようにして得た各積層体を貼り付け、アルミニウム型材の直角部において各積層体の浮きの有無を目視にて観察し下記基準に則って追従性を評価した。得られた結果を表1又は表2に示す。
-判断基準-
A:アルミニウム型材の全ての直角部で積層体の浮きが無かった。
B:アルミニウム型材の全ての直角部で積層体の浮きが無かったが、貼付け時に積層体にシワが生じた。
C:アルミニウム型材の一部もしくは全ての直角部で積層体の浮きがあった。
【0092】
<外観(無色透明性)>
表面層単膜の状態で透過光にかざし、目視で表面層の無色透明性を判断した。また、表面層単膜の状態で分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式「UH4150」)を使用して400nmの吸光度を測定した。得られた結果に基づき、下記基準に則って外観(無色透明性)を評価した。得られた結果を表1に示す。外観がA判定であると、鏡面調の外観を有する積層体が得られると判断できる。
-判断基準-
A:目視で無色透明であり、且つ、400nmの吸光度が0.5未満である。
B:目視で着色が確認できるか、又は、400nmの吸光度が0.5以上である。
【0093】
<紫外線透過率>
表面層単膜の状態で分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型式「UH4150」)を使用して波長240nmから600nmの透過率を測定し、JIS A5759(2016)に準拠して300nmから380nmにおける紫外線透過率を算出した。得られた結果を表1又は表2に示す。
【0094】
<耐候性評価>
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式「S80B」)を使用して、ブラックパネル温度63±3℃、30%RH±5%RH環境下で、120分間のうち18分間純水をシャワー噴射する条件で促進耐候性試験を実施した。5000時間暴露前後の各積層体について、目視にて著しい退色や変色およびクラックの発生の有無を確認し、下記基準に則って外観評価を行った。得られた結果を表1又は表2に示す。
-判断基準-
A:著しい退色や変色およびクラックが発生していない。
B:著しい退色や変色またはクラックが発生している。
【0095】
【0096】
【0097】
なお、各層の厚み(平均厚み)は、既述した方法によって測定した。
【0098】
表1又は表2に記載の評価結果から、以下のことがわかる。
ポリエステルフィルムおよびフッ素系樹脂フィルムは剛性が高い材料であるため、ポリエステルフィルムを基材層として使用し、フッ素系樹脂フィルムを表面層として使用した積層体を角材の直角部に追従させて貼り付けるためには、積層体の剛性を調整する必要があった。
剛性を調整するため、表面層に使用していたフッ素系樹脂フィルムを、より柔軟なフィルムに変更すると、追従性に優れる積層体が得られたものの、耐候性に劣るために紫外線吸収剤等によって耐候性を調整する必要があった。
表面層がウレタン系樹脂を含有し、基材層がポリエステル系樹脂を含有し、表面層及び樹脂層が共に紫外線吸収剤を含有し、積層体全体としての弾性率が155N/25mm未満であり、表面層の紫外線透過率が0.60%未満であり、表面層の400nmにおける吸光度が0.45以下である実施例1~実施例12の積層体は、表1又は表2に記載の評価結果から明らかなように、鏡面調の外観を有し、耐候性及び追従性に優れるものであった。
一方、実施例1と比較例1との対比から、平均厚みが50μm以上のポリエステルフィルムを基材層として使用すると、ポリエステルフィルムがもとの状態に戻ろうとする復元力に接着力が負けて、積層体がアルミニウム型材から浮いてしまうことが分かった。しかし、平均厚みが40μm以下のポリエステルフィルムを基材層として使用した場合、積層体がたるむことなく貼り合わせることができ、浮きが発生することなく直角部に追従して積層体を貼合させることができた。
また、実施例5と比較例3又は比較例4との対比から、表面層をアクリル樹脂層又はフッ素系樹脂フィルムのような剛性が高く脆い層から、ウレタンのように柔軟性に優れた層に変更することもアルミニウム型材からの浮きの抑制につながることが分かった。
また、表面層の紫外線透過率が0.60%以上であるか(比較例2-3、6-7)又は樹脂層に紫外線吸収剤を含有しない比較例5は、耐候性に劣ることがわかった。なお、比較例4は、表面層の紫外線透過率が0.60%以上(4.73%)であるにもかかわらず耐候性の悪化が抑制された。これは、表面層にフッ素系樹脂フィルムが用いられるためと考えられる。
また、表面層の400nmにおける吸光度が0.45を超える比較例8は、外観が劣るものであった。