(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145723
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】排水用配置部材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20241004BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E04D13/04 J
E04D5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058202
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠治
(57)【要約】
【課題】複数の部材同士が継ぎ目において接合がなされた構成をなす排水用配置部材において、多数の部品点数が必要となるのが防止されつつ、継ぎ目における水漏れが優れた精度で抑制または防止されている排水用配置部材を提供すること。
【解決手段】本発明の排水用配置部材10は、金属板1と、この金属板1を被覆して設けられた防水シート50とを有しており、金属板1は、凹部22を有する基部2と、この基部に接続された接続面としての立ち上がり面3を備え、凹部22、および、基部2と立ち上がり面3(接続面)とを接続する第1接続部のうちの少なくとも一方に対応して設けられた複数の継ぎ目を有し、防水シート50は、複数の前記継ぎ目を包含して一体的に金属板1を被覆している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、該金属板を被覆して設けられた防水シートとを有する排水用配置部材であって、
前記金属板は、凹部を有する基部と、該基部に接続された接続面とを備え、前記凹部、および、前記基部と前記接続面とを接続する第1接続部のうちの少なくとも一方に対応して設けられた複数の継ぎ目を有しており、
前記防水シートは、複数の前記継ぎ目を包含して一体的に前記金属板を被覆していることを特徴とする排水用配置部材。
【請求項2】
前記継ぎ目は、前記第1接続部に対応して複数設けられている請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項3】
前記基部は、頂面と、該頂面に形成された溝部を構成する前記凹部とを有し、
前記凹部は、側壁を構成する段差と、底壁を構成する底面とからなり、
前記継ぎ目は、前記頂面と前記段差とを接続する第2接続部に対応して複数設けられている請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項4】
前記基部は、頂面と、該頂面に形成された溝部を構成する前記凹部とを有し、
前記凹部は、側壁を構成する段差と、底壁を構成する底面とからなり、
前記継ぎ目は、前記頂面と前記段差とを接続する第2接続部と、前記第1接続部との双方に対応して複数設けられている請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項5】
前記底面と前記段差とを接続する第3接続部は、湾曲凹面で構成され、
前記防水シートは、さらに、前記第3接続部を包含して被覆している請求項3または4に記載の排水用配置部材。
【請求項6】
前記湾曲凹面は、その曲率半径が5.0mm以上である請求項5に記載の排水用配置部材。
【請求項7】
前記防水シートは、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有し、
前記可塑剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有する請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項8】
前記防水シートは、その平均厚さが0.2mm以上5.0mm以下である請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項9】
前記金属板は、その表面が樹脂層で被覆された被覆金属板である請求項1に記載の排水用配置部材。
【請求項10】
前記接続面は、前記基部から立ち上がって設けられた立ち上がり面である請求項1に記載の排水用配置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートを敷設施工したシート防水構造に用いられる排水用配置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められることに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の躯体(構造体)において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている。
【0003】
このシート防水構造では、例えば、屋上の床部と、床部の外縁に沿って設けられた壁部との境界部に、ポリ塩化ビニルで被覆された鋼板(金属板)を配置部材として配置し、床部と壁部とをかかる配置部材とともに樹脂シートを用いて覆う構成となっており、これにより、屋上に防水が施される。
【0004】
ここで、防水が施工される屋上等の形状は、当然、様々である。そのため、前記配置部材としては、複数の種類の形状のものが予め用意され、実際に施工される屋上等の形状に合致するものを複数選択し、これらが、施工される屋上等に対して並んで配置されて用いられる。
【0005】
このような配置部材のうち、屋上が備える排水口に対応する位置に配置される排水用配置部材は、配置部材を流れる雨水等の水を、この排水口に対して供給し得るように、排水口に対して設けられた開口部を備える構成をなしている。
【0006】
この排水用配置部材では、開口部を介して、雨水等の水を、効率よく排水口から排水させることを目的に、複雑な形状をなすものとなっている。そのため、一般的には、排水用配置部材を複数の部材で構成し、これら部材同士を継ぎ目において接合することで、排水用配置部材を形成することが行われている。
【0007】
この場合、継ぎ目における水漏れを防止することを目的に、継ぎ目の形状に対応した防水シートを用意し、この防水シートを用いて継ぎ目を被覆することが考えられる。しかしながら、継ぎ目における水漏れを、より確実に防止するには、多数の防水シートを用いて継ぎ目を被覆する必要が生じ、多数の部品点数が必要となることに基づいて、時間と手間を要すると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、複数の部材同士が継ぎ目において接合がなされた構成をなす排水用配置部材において、多数の部品点数が必要となるのが防止されつつ、継ぎ目における水漏れが優れた精度で抑制または防止されている排水用配置部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 金属板と、該金属板を被覆して設けられた防水シートとを有する排水用配置部材であって、
前記金属板は、凹部を有する基部と、該基部に接続された接続面とを備え、前記凹部、および、前記基部と前記接続面とを接続する第1接続部のうちの少なくとも一方に対応して設けられた複数の継ぎ目を有しており、
前記防水シートは、複数の前記継ぎ目を包含して一体的に前記金属板を被覆していることを特徴とする排水用配置部材。
【0011】
(2) 前記継ぎ目は、前記第1接続部に対応して複数設けられている上記(1)に記載の排水用配置部材。
【0012】
(3) 前記基部は、頂面と、該頂面に形成された溝部を構成する前記凹部とを有し、
前記凹部は、側壁を構成する段差と、底壁を構成する底面とからなり、
前記継ぎ目は、前記頂面と前記段差とを接続する第2接続部に対応して複数設けられている上記(1)に記載の排水用配置部材。
【0013】
(4) 前記基部は、頂面と、該頂面に形成された溝部を構成する前記凹部とを有し、
前記凹部は、側壁を構成する段差と、底壁を構成する底面とからなり、
前記継ぎ目は、前記頂面と前記段差とを接続する第2接続部と、前記第1接続部との双方に対応して複数設けられている上記(1)に記載の排水用配置部材。
【0014】
(5) 前記底面と前記段差とを接続する第3接続部は、湾曲凹面で構成され、
前記防水シートは、さらに、前記第3接続部を包含して被覆している上記(3)または(4)に記載の排水用配置部材。
【0015】
(6) 前記湾曲凹面は、その曲率半径が5.0mm以上である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の排水用配置部材。
【0016】
(7) 前記防水シートは、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有し、
前記可塑剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の排水用配置部材。
【0017】
(8) 前記防水シートは、その平均厚さが0.2mm以上5.0mm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の排水用配置部材。
【0018】
(9) 前記金属板は、その表面が樹脂層で被覆された被覆金属板である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の排水用配置部材。
【0019】
(10) 前記接続面は、前記基部から立ち上がって設けられた立ち上がり面である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の排水用配置部材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の部材同士が継ぎ目において接合がなされた構成をなす排水用配置部材において、複数の継ぎ目に対応して設けられる防水シートを、一体的に形成されたものとして、これら継ぎ目を被覆している。そのため、複数の継ぎ目を被覆するために、多数の部品点数が必要となるのを的確に防止しつつ、継ぎ目における水漏れを、優れた精度で抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の排水用配置部材の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す排水用配置部材の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す排水用配置部材を躯体に配置した状態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の排水用配置部材の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す排水用配置部材の分解斜視図である。
【
図6】本発明の排水用配置部材の第3実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す排水用配置部材の分解斜視図である。
【
図8】
図6に示す排水用配置部材におけるA―A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の排水用配置部材を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<排水用配置部材>
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の排水用配置部材の第1実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す排水用配置部材の分解斜視図、
図3は、
図1に示す排水用配置部材を躯体に配置した状態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、
図1~
図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0024】
排水用配置部材10は、屋上(屋根)やベランダのような躯体が有する床部と壁部との境界部のうち、排水口が設けられている位置に対応して配置され、床部と壁部とを排水用配置部材10とともに防水シートを用いて被覆することで、躯体に防水を施すシート防水構造に用いられるものである。
【0025】
この排水用配置部材10は、
図3に示すように、床部101と、この床部101の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた壁部102とを有し、床部101と壁部102との境界部103(角部)付近で壁部102の厚さ方向に貫通する排水口105を備える躯体100において、床部101と壁部102との境界部103付近上に配置され、固定ビス等を用いて、床部101に固定されている。これにより、排水用配置部材10を流れる雨水等の水が、排水口105を介して、躯体100から、その外部に対して、雨水等の水が排出されることとなる。
【0026】
以下、床部101と壁部102との境界部103において、壁部102に設けられた排水口105に対応して配置される、排水用配置部材10(本発明の排水用配置部材)を構成する各部材について、順次、説明する。
【0027】
排水用配置部材10は、
図1~
図3に示すように、1つの基部2と1つの立ち上がり面3とを有する金属板1と、この金属板1を被覆して設けられた防水シート50とを備えている。
【0028】
金属板1において、基部2は、床部101に対応して配置され、
図1~
図3の上側から見た平面視で、矩形状をなしている。この基部2は、床部101に対応する平部20と、この平部20に傾斜して設けられ、境界部103側に対応する傾斜部21とを有し、この傾斜部21の境界部103側(平部20と反対側)の縁部から立ち上がり面3が立設されている。そして、基部2は、この傾斜部21の中央部において、平部20側の端部から立ち上がり面3側の端部まで延設して、傾斜部21に形成された溝部を構成する凹部22を有している。また、凹部22は、立ち上がり面3が形成されている縁部とは異なる3つの縁部において、それぞれ、側壁を構成する3つの段差23と、底壁を構成する1つの底部24とから構成されている。
【0029】
さらに、かかる構成をなす基部2において、平部20は、その厚さ方向に貫通する貫通孔(図示せず)を有しており、ビス等を、この貫通孔に挿通した状態で、床部101に固定することにより、排水用配置部材10(基部2)が躯体100に取り付けられる。
【0030】
また、立ち上がり面3(接続面)は、基部2(凹部22)の平部20を構成する1辺と対向する1辺の縁部から立設している。この立ち上がり面3は、排水用配置部材10(金属板1)を境界部103に対応して配置した際に、壁部102に沿うように、基部2に対して屈曲した構造をなしている。
【0031】
さらに、立ち上がり面3は、立ち上がり面3と基部2(凹部22)との境界部付近において、その厚さ方向に貫通する開口部31を有している。
【0032】
このような金属板1を有する排水用配置部材10を躯体100内に配置すると、境界部103側に対応して配置される傾斜部21が、雨水等の水が流れる流路を構成し、この流路としての傾斜部21から凹部22に雨水等の水が供給され、その後、凹部22において貯留された水が凹部22と立ち上がり面3との境界部付近の高さまで到達すると、この水は、立ち上がり面3が前記境界部付近に備える開口部31を介して、最終的に壁部102が備える排水口105から、躯体100の外側に排出されることとなる。なお、排水用配置部材10が備える開口部31には、図示しない排水管が装着され、この排水管から、雨水等の水が排水口105側に供給される。
【0033】
金属板1は、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等で構成されるが、鋼板であるのが好ましい。これにより、排水用配置部材10を優れた強度を有するものとし得る。
【0034】
また、金属板1の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上、3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上、2.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0035】
また、金属板1(基部2および立ち上がり面3)は、上記の通り、鋼板等により単独で構成されるものであってもよいが、金属板の表面が樹脂層で被覆された構成をなす被覆金属板であるのが好ましい。このように、金属板1を、鋼板等(金属板)の表面が樹脂層で被覆された被覆金属板で構成することにより、金属板1の腐食を確実に防止することができる。さらに、この樹脂層により、金属板1の上面において、後述する防水シート50の下面に対して確実に接合することができる。
【0036】
鋼板等を被覆する樹脂層は、樹脂で構成されるものであり、この樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。すなわち、防水シート50を構成する樹脂と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層と防水シート50との密着性を向上させることができる。さらに、ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させることができるとともに、鋼板等の腐食をより確実に防止することができる。
【0037】
なお、この樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート50の構成材料で挙げる可塑剤、安定化剤等の他の材料が含まれていてもよい。
【0038】
また、樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.03mm以上、2mm以下程度であるのが好ましく、0.1mm以上、0.7mm以下程度であるのがより好ましい。
【0039】
かかる構成をなす金属板1は、上記の通り、基部2から立設された立ち上がり面3を備え、さらに、基部2がその中央部において溝部を構成する凹部22を有することから、複雑な構成をなしている。そのため、金属板1は、本実施形態では、
図2に示すように、第1部材6と、第2部材7と、第3部材8とを有する3つの部材に分割された構成をなし、これらの部材6、7、8が継ぎ目において接合されたものとなっている。
【0040】
以下、この金属板1を構成する部材6、7、8について詳述する。
第1部材6は、3つの部材6、7、8のうち、中央に位置し、第1基部62と、この第1基部62の1辺の縁部から立設する第1立ち上がり面63とを有している。
【0041】
第1基部62は、
図2の上側から見た平面視で、矩形状をなし、それぞれ、第1基部62と同様に矩形状をなしている、床部101に対応する第1平部620と、第1平部620よりも第1立ち上がり面63側に位置する凹部22とを有している。また、凹部22は、第1立ち上がり面63が立設されている1辺とは異なる3辺において、側壁を構成する3つの段差23と、これら側壁に対する底壁を構成する1つの底部24とから構成されている。
【0042】
また、第1立ち上がり面63は、第1基部62(凹部22)の1辺の縁部から立設しており、
図2の左側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、その中央部の下側において、第1基部62(凹部22)に接続され、その両端部の下側に切欠き(欠損部)を備える形状をなしている。そのため、第1立ち上がり面63は、前記平面視で、詳細には、その全体形状がT字状をなしている。
【0043】
そして、第1立ち上がり面63は、第1立ち上がり面63と第1基部62(凹部22)との境界部付近において、その厚さ方向に貫通する開口部31を有している。
第2部材7は、3つの部材6、7、8のうち、前方側から見たとき、左横側に位置し、第2基部72と、この第2基部72の縁部から立設する第2立ち上がり面73とを有している。
【0044】
第2基部72は、
図2の上側から見た平面視で、矩形状をなし、それぞれ、第2基部72と同様に矩形状をなしている、床部101に対応する第2平部720と、第2平部720に傾斜して設けられ、第2平部720よりも第2立ち上がり面73側に位置する第2傾斜部721とを有している。そして、第2基部72は、さらに、第2傾斜部721の凹部22側の縁部から下側に延びる第2立ち下がり面722を有している。
【0045】
また、第2立ち上がり面73は、第2基部72(第2傾斜部721)の1辺の縁部から立設しており、
図2の左側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、第1立ち上がり面63に形成された切欠きを包含する大きさに設定して設けられている。
第3部材8は、第2部材7に対して対称な形状を有し、3つの部材6、7、8のうち、前方側から見たとき、右横側に位置しており、第3基部82と、この第3基部82の縁部から立設する第3立ち上がり面83とを有している。
【0046】
第3基部82は、
図2の上側から見た平面視で、矩形状をなし、それぞれ、第3基部82と同様に矩形状をなしている、床部101に対応する第3平部820と、第3平部820に傾斜して設けられ、第3平部820よりも第3立ち上がり面83側に位置する第3傾斜部821とを有している。そして、第3基部82は、さらに、第3傾斜部821の凹部22側の縁部から下側に延びる第3立ち下がり面822を有している。すなわち、第3部材8は、この第3立ち下がり面822の第3傾斜部821に形成される位置が、第2部材7に対して対称をなしている。
【0047】
また、第3立ち上がり面83は、第3基部82(第3傾斜部821)の1辺の縁部から立設しており、
図2の左側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、第1立ち上がり面63に形成された切欠きを包含する大きさに設定して設けられている。
【0048】
以上のような構成をなす部材6、7、8は、第1部材6を中央に配置して、第2部材7を左側とし、第3部材8を右側として、左右方向に沿って互いの縁部が接触するように一列に並んで配置されている。
【0049】
そして、このとき、
図2の上側から見た平面視で、第2平部720と、第1平部620と、第3平部820とが、この順で、左側から右側に向かって、一直線上に配列されており、この状態で、本実施形態では、第2平部720と第1平部620とが接合板76を介してカシメにより固定され、第1平部620と第3平部820とが接合板86を介してカシメにより固定されている。
【0050】
これら接合板76、86による平部620、720、820同士の固定により、部材6、7、8同士が接合され、これにより、金属板1が形成される。
【0051】
このような金属板1において、一直線上に配列された第2平部720、第1平部620および第3平部820により平部20が構成される。また、凹部22を中央に配置して、左側に配置された第2傾斜部721および右側に配置された第3傾斜部821により傾斜部21が構成される。さらに、中央に配置された第1立ち上がり面63、第1立ち上がり面63の左側の切欠きに対応して配置された第2立ち上がり面73、および、第1立ち上がり面63の右側の切欠きに対応して配置された第3立ち上がり面83により立ち上がり面3が構成される。
【0052】
このとき、第1立ち上がり面63の左側の切欠きに対応する位置において、第1立ち上がり面63の裏側に第2立ち上がり面73を配置させた状態で、第1立ち上がり面63と第2立ち上がり面73との間に、継ぎ目673が形成され、また、第1立ち上がり面63の右側の切欠きに対応する位置において、第1立ち上がり面63の裏側に第3立ち上がり面83を配置させた状態で、第1立ち上がり面63と第3立ち上がり面83との間に、継ぎ目683が形成される。なお、これら継ぎ目673、683が、立ち上がり面3と基部2とを接続する接続部(第1接続部)に対応して設けられた継ぎ目を構成する。
【0053】
さらに、凹部22の左側の段差23に対応する位置において、この左側の段差23と第2立ち下がり面722との間に、第1平部620と第2平部720との間にまで延在する継ぎ目723が形成され、また、凹部22の右側の段差23に対応する位置において、この右側の段差23と第3立ち下がり面822との間に、第1平部620と第3平部820との間にまで延在する継ぎ目823が形成される。なお、これら継ぎ目723、823が、平部620、720(頂面)と段差23とを接続する接続部(第2接続部)すなわち凹部22に対応して設けられた継ぎ目を構成する。
【0054】
以上のような位置において、継ぎ目673、683、723、823を形成することで、凹部22の底部24に対応する位置で継ぎ目が形成されることなく、立ち下がり面722、822の頂部側もしくはそれよりも高い位置で継ぎ目が形成されることになるため、これら継ぎ目673、683、723、823を介して、雨水等の水が躯体100側に漏出するのを的確に抑制することができる。
【0055】
防水シート50は、柔軟性を有するシート状(板状)をなし、本実施形態では、金属板1に対して、基部2の全面、および、立ち上がり面3の上側を除くほぼ全面を覆うようにして、一体的に接合されている(
図1、
図2参照)。
【0056】
これにより、金属板1が備える複数の継ぎ目673、683、723、823を包含して、防水シート50で一体的に被覆することができる。そのため、継ぎ目673、683、723、823を介した、雨水等の水の躯体100側への漏出を、優れた精度で抑制または防止することができる。
【0057】
特に、本実施形態では、複数の継ぎ目673、683、723、823とともに、雨水等の水が貯留される凹部22全体(底部24)をも、防水シート50で一体的に被覆している。そのため、前記水の躯体100側への漏出を、より優れた精度で抑制または防止することができる。
【0058】
また、1つの防水シート50により、複数の継ぎ目673、683、723、823を包含して、基部2および立ち上がり面3を一体的に被覆しているため、金属板1を被覆するために用いる部品点数の削減を図ることができる。
【0059】
このような防水シート50は、樹脂材料を含有する樹脂シートで構成される。
樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート50の溶剤溶着性や熱融着性を優れたものとし得る。
【0060】
なお、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0061】
また、樹脂材料には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート50をより優れた柔軟性を有するものとし得る。
【0062】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP)およびフタル酸ビス(2-ブトキシエチル)、アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、エポキシ化植物油、エチレン系共重合エラストマー、塩素化ポリエチレン(CPE)、(メタ)アクリル系樹脂(PMMA)、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(PVAc)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
なお、本明細書中において、「可塑剤」とは、可塑剤として一般的に用いられる低分子領域のものばかりではなく、分子量が10,000以上のような高分子領域の「可塑化樹脂」を含めて、「可塑剤」と言うこととする。
【0064】
これらのうち、可塑剤としては、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm3)1/2以上9.8(cal/cm3)1/2以下であることを満足するものが好ましい。
【0065】
これにより、防水シート50が、水に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シート50から漏出するのを、的確に抑制または防止することができる。そのため、この可塑剤の漏出(ブリードアウト)に基づく、防水シート50の柔軟性の低下、ひいては、防水シートにおけるひび割れ、亀裂や破断等の発生を、的確に抑制または防止し得る。特に、排水用配置部材10では、凹部22に雨水等の水が貯留された後に、開口部31を介して、排水口105から躯体100の外部に排出され、また、防水シート50は、凹部22における段差23と底部24との接続部(第3接続部)において屈曲した形状をなしているが、前記を満足する可塑剤を用いることにより、屈曲した形状をなす防水シート50においても、可塑剤が漏出するのを的確に抑制または防止することができる。
【0066】
以上の観点から、可塑剤としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体またはエチレン系共重合エラストマーであることがより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体であることがさらに好ましい。これにより、可塑剤の分子量が300以上であることと、可塑剤の溶解パラメーターが8.2(cal/cm3)1/2以上9.8(cal/cm3)1/2以下であることとの双方を比較的容易に満足させることができる。したがって、防水シート50からの可塑剤の漏出を、的確に抑制または防止することができる。よって、防水シート50が、水に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シートから漏出するのを、より的確に抑制または防止することができる。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とする重合体であり、その単量重合体(単独重合体)、または共重合体を主鎖とするものであり、この主鎖により単独で構成されるものであってもよいし、この主鎖に、他の(官能基を有しない)重合体または官能基や、官能基を有する重合体が側鎖すなわち置換基として置換されてグラフト化された構成をなすものであってもよい。
【0068】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの双方を含む意味で用いることとする。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に、耐熱性に優れ、また、比較的容易かつ安価に入手できる。また、(メタ)アクリル酸エステルとして(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられた(メタ)アクリル酸エステル系重合体とすることで、可塑剤としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体の防水シート50からの漏出をより的確に抑制または防止することができる。
【0070】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー主成分とする共重合体を主鎖として構成される場合、この共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体が挙げられる。
【0071】
以上のような構成とし得る(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分とする単量重合体が、前記置換基により置換されていない、無官能のアクリル酸エステル単量重合体であることが好ましい。これにより、可塑剤としての(メタ)アクリル酸エステル系重合体(無官能のアクリル酸エステル単量重合体)の防水シートからの漏出をさらに的確に抑制または防止することができる。
【0072】
また、無官能のアクリル酸エステル単量重合体は、その重量平均分子量が1,000以上5,000以下であるのが好ましく、1,500以上3,000以下であるのがより好ましい。
【0073】
さらに、無官能のアクリル酸エステル単量重合体は、そのガラス転移点Tgが-100℃以上-30℃以下であるのが好ましく、-95℃以上-75℃以下であるのがより好ましい。
【0074】
無官能のアクリル酸エステル単量重合体の重量平均分子量およびガラス転移点Tgを、それぞれ、前記範囲内に設定することにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(可塑剤)として、無官能のアクリル酸エステル単量重合体を用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0075】
エチレン系共重合エラストマーは、エチレンをユニットとして含む共重合エラストマーであり、例えば、エチレン-酢酸ビニルブロック共重合体(EVA)や、エチレン-アクリル酸エチルブロック共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸メチルブロック共重合体(EMMA)のようなエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられ、中でも、エチレン-アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。これにより、可塑剤としてのエチレン系共重合エラストマー(エチレン-アクリル酸エステル共重合体)の防水シート50からの漏出を、より的確に抑制または防止することができる。
【0076】
また、エチレン-アクリル酸エステル共重合体は、その重量平均分子量が100,000以上250,000以下であるのが好ましく、150,000以上200,000以下であるのがより好ましい。これにより、エチレン系共重合エラストマー(可塑剤)として、エチレン-アクリル酸エステル共重合体を用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0077】
さらに、このような可塑剤は、前述の通り、その分子量が300以上であり、かつ、その溶解パラメーターが8.2(cal/cm3)1/2以上9.8(cal/cm3)1/2以下であることを満足するのが好ましいが、可塑剤の分子量をXとし、可塑剤の溶解パラメーターをYとしたとき、下記式(I)~(III)で取り囲まれる領域内となる、分子量Xおよび溶解パラメーターYを満足することが好ましい。これにより、防水シート50が、水に曝されることに起因して、経年的に可塑剤が防水シート50から漏出するのを、さらに的確に抑制または防止することができる。
【0078】
Y = -5.12×10-7X+9.3 … (I)
Y = 1.01×10-6X+9.0 … (II)
X = 800 … (III)
【0079】
また、安定剤としては、例えば、グリシン亜鉛等が挙げられ、この場合の安定助剤としては、例えば、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0080】
以上のことから、防水シート50は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する塩化ビニル系樹脂シートで構成されることが好ましく、可塑剤として、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含有することがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0081】
なお、防水シート50は、前記樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。
【0082】
この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられるが、防水シート50を、このような繊維層を備えるものとすることで、防水シート50の強度(引き裂き強度や引っ張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)を向上させることができる。
【0083】
また、防水シート50の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2mm以上5.0mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上3.0mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、金属板1すなわち基部2および立ち上がり面3を、防水シート50により一体的に確実に覆うことができる。
【0084】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、防水シート50により、立ち上がり面3を、その上側を除く中央部および下側を覆う場合について示したが、これに限定されず、防水シート50は、立ち上がり面3の全面を被覆するものであってもよい。
【0085】
<<第2実施形態>>
図4は、本発明の排水用配置部材の第2実施形態を示す斜視図、
図5は、
図4に示す排水用配置部材の分解斜視図である。なお、以下の説明では、
図4、
図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0086】
以下、これら
図4、
図5を参照して排水用配置部材10の第2実施形態について説明するが、前述した
図1~
図5で示した構成の排水用配置部材10との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0087】
図4、
図5に示す第2実施形態の排水用配置部材10は、金属板1の構成が異なること以外は、
図1~
図5に示す排水用配置部材10と同様である。
【0088】
すなわち、
図4、
図5に示すように、本実施形態では、金属板1は、1つの基部2と2つの立ち上がり面3、30とを有している。
【0089】
金属板1において、基部2は、床部101に対応して配置され、
図4、
図5の上側から見た平面視で、矩形状をなしている。この基部2は、床部101に対応する平部20と、この平部20に傾斜して設けられた傾斜部21とを有し、この傾斜部21の平部20と反対側の縁部から立ち上がり面30が立設され、さらに、傾斜部21と反対側の縁部から、立ち上がり面30に直交する立ち上がり面3が立設されている。そして、基部2は、これら平部20および傾斜部21において、平部20と立ち上がり面30とが対向する方向では、平部20の端部から立ち上がり面30側の端部まで延設し、また、平部20および傾斜部21と立ち上がり面3とが対向する方向では、平部20および傾斜部21の端部から立ち上がり面3側の端部まで延設して形成された、溝部を構成する凹部22を有している。また、凹部22は、立ち上がり面3および立ち上がり面30が形成されている縁部とは異なる2つの縁部において、それぞれ、側壁を構成する2つの段差23と、底壁を構成する1つの底部24とから構成されている。
【0090】
また、立ち上がり面30(接続面)は、基部2(凹部22)の平部20を構成する1辺と対向する1辺の縁部から立設している。さらに、立ち上がり面3(接続面)は、立ち上がり面30に直交し、基部2(凹部22)の平部20および傾斜部21を構成する1辺と対向する1辺の縁部から立設している。
【0091】
さらに、立ち上がり面3は、立ち上がり面3と基部2(凹部22)との境界部付近において、その厚さ方向に貫通する開口部31を有している。
【0092】
かかる構成をなす金属板1は、本実施形態では、
図5に示すように、第1部材6と、第2部材7と、第3部材8とを有する3つの部材に分割された構成をなし、これらの部材6、7、8が継ぎ目において接合されたものとなっている。
【0093】
以下、この金属板1を構成する部材6、7、8について詳述する。
第1部材6は、3つの部材6、7、8のうち、角に位置し、第1基部62と、この第1基部62の1辺の縁部から立設する第1立ち上がり面63と、第1立ち上がり面63が設けられた1辺に直交する1辺の縁部から立設する第1立ち上がり面630とを有している。
【0094】
第1基部62は、
図2の上側から見た平面視で、矩形状をなし、凹部22を構成している。また、凹部22は、第1立ち上がり面63および第1立ち上がり面630が立設されている2辺とは異なる2辺のうちの1辺において、側壁を構成する1つの段差23と、側壁に対する底壁を構成する1つの底部24とから構成されている。
【0095】
また、第1立ち上がり面63は、第1基部62(凹部22)の段差23が形成されている1辺に対向する1辺の縁部から立設しており、
図5の左側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、その左側の下側において、第1基部62(凹部22)に接続され、その右側の下側に切欠き(欠損部)を備える形状をなしている。そのため、第1立ち上がり面63は、前記平面視で、詳細には、その全体形状がL字状をなしている。
【0096】
そして、第1立ち上がり面63は、第1立ち上がり面63と第1基部62(凹部22)との境界部付近において、その厚さ方向に貫通する開口部31を有している。
【0097】
また、第1立ち上がり面630は、第1基部62(凹部22)の第1立ち上がり面63が形成されている1辺に直交する左側の1辺の縁部から立設しており、
図5の右側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、その右側の下側において、第1基部62(凹部22)に接続され、その左側の下側に切欠き(欠損部)を備える形状をなしている。そのため、第1立ち上がり面630は、前記平面視で、詳細には、その全体形状が、第1立ち上がり面63と対称をなすL字状をなしている。
【0098】
第2部材7は、3つの部材6、7、8のうち、前方側から見たとき、右横の手前側に位置し、第2基部72と、この第2基部72の縁部から立設する第2立ち上がり面73とを有している。
【0099】
第2基部72は、
図5の上側から見た平面視で、矩形状をなし、床部101に対応する第2平部720と、第2平部720の凹部22側の縁部から下側に延びる第2立ち下がり面722を有している。
【0100】
また、第2立ち上がり面73は、第2基部72(第2平部720)の1辺の縁部から立設しており、
図5の左側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、第1立ち上がり面63に形成された切欠きを包含する大きさに設定して設けられている。
【0101】
第3部材8は、3つの部材6、7、8のうち、前方側から見たとき、左横の手前側に位置しており、第3基部82と、この第3基部82の縁部から立設する第3立ち上がり面83とを有している。
【0102】
第3基部82は、
図5の上側から見た平面視で、矩形状をなし、それぞれ、第3基部82と同様に矩形状をなしている、床部101に対応する第3平部820と、第3平部820に傾斜して設けられ、第3平部820よりも第3立ち上がり面83側に位置する第3傾斜部821とを有している。そして、第3基部82は、さらに、第3傾斜部821の凹部22側の縁部から下側に延びる第3立ち下がり面822を有している。
【0103】
また、第3立ち上がり面83は、第3基部82(第3傾斜部821)の1辺の縁部から立設しており、
図5の右側の紙面手前側から見た平面視で、ほぼ矩形状をなし、第1立ち上がり面630に形成された切欠きを包含する大きさに設定して設けられている。
【0104】
以上のような構成をなす部材6、7、8は、第1部材6を角に配置して、第2部材7を右手前側とし、第3部材8を左手前側として、互いの縁部が接触するようにL字状をなして並んで配置されている。
【0105】
そして、このとき、
図5の上側から見た平面視で、第2平部720と、第3平部820とが、右側から左側に向かって、L字状をなすように直交して配列されており、この状態で、本実施形態では、第2平部720と第3平部820とが接合板76を介してカシメにより固定されている。また、第1立ち上がり面63に対向する段差23に対応して第3部材8が配置され、凹部22の第1立ち上がり面630に対向する1辺に対応して第2部材7が配置されており、この状態で、第2立ち下がり面722から突出して設けられた接合板733を介して、凹部22(底部24)と第2立ち下がり面722とがカシメにより固定されている。
【0106】
接合板76による平部20、820同士の固定、および、接合板733による底部24と第2立ち下がり面722との固定により、部材6、7、8同士が接合され、これにより、金属板1が形成される。
【0107】
このような金属板1において、L字状に配列された第2平部720および第3平部820により平部20が構成される。また、左側に配置された第1立ち上がり面63、および、第1立ち上がり面63の切欠きに対応して配置された第2立ち上がり面73により立ち上がり面3が構成される。さらに、右側に配置された第1立ち上がり面630、および、第1立ち上がり面630の切欠きに対応して配置された第3立ち上がり面83により立ち上がり面3が構成される。なお、凹部22では、第2部材7が備える第2立ち下がり面722が、第1立ち上がり面630に対向する1辺に対応した段差23を構成する。
【0108】
このとき、第1立ち上がり面63の右側の切欠きに対応する位置において、第1立ち上がり面63の裏側に第2立ち上がり面73を配置させた状態で、第1立ち上がり面63と第2立ち上がり面73との間に、継ぎ目673が形成される。また、第1立ち上がり面630の左側の切欠きに対応する位置において、第1立ち上がり面630の裏側に第3立ち上がり面83を配置させた状態で、第1立ち上がり面630と第3立ち上がり面83との間に、継ぎ目683が形成される。なお、これら継ぎ目673、683が、立ち上がり面3、30と基部2とを接続する接続部(第1接続部)に対応して設けられた継ぎ目を構成する。
【0109】
さらに、凹部22の左手前側の段差23に対応する位置において、この左手前側の段差23と第3立ち下がり面822との間に、第3平部820と第2平部720との間にまで延在する継ぎ目823が形成される。また、凹部22の左手前側の段差23を構成する第2立ち下がり面722に対応する位置において、底部24の右手前側の1辺を構成する端部と第2立ち下がり面722との間に継ぎ目723が形成される。なお、継ぎ目823が、平部820および傾斜部821(頂面)と段差23とを接続する接続部(第2接続部)に対応して設けられた継ぎ目を構成し、継ぎ目723が、底部24(底面)と段差23(第2立ち下がり面722)とを接続する接続部に対応して設けられた継ぎ目を構成する。
【0110】
なお、本実施形態では、第1部材6において、第1立ち上がり面63と、第1立ち上がり面630とが、凹部22の互いに直交する1辺から、それぞれ立設されており、第1立ち上がり面63の第1立ち上がり面630に隣接する1辺から、第1立ち上がり面630側に突出して設けられた接合板763を介して、第1立ち上がり面63と第1立ち上がり面630とがカシメにより固定されている。したがって、第1立ち上がり面63と第1立ち上がり面630とが接触する位置において、第1立ち上がり面630と接合板763との間に継ぎ目863が形成される。
【0111】
かかる構成をなす金属板1に対しても、防水シート50は、金属板1に対して、基部2の全面、および、立ち上がり面3、30の上側を除くほぼ全面を覆うようにして、一体的に接合されている(
図4、
図5参照)。
【0112】
そのため、本実施形態においても、金属板1が備える複数の継ぎ目673、683、723、823、863を包含して、防水シート50で一体的に被覆し得ることから、継ぎ目673、683、723、823、863を介した、雨水等の水の躯体100側への漏出を、優れた精度で抑制または防止することができる。
【0113】
このような第2実施形態の排水用配置部材10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0114】
<<第3実施形態>>
図6は、本発明の排水用配置部材の第3実施形態を示す斜視図、
図7は、
図6に示す排水用配置部材の分解斜視図、
図8は、
図6に示す排水用配置部材におけるA―A線断面図である。なお、以下の説明では、
図6~
図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図6では、図面を見易くするため、排水用配置部材10における防水シート50の記載を省略している。
【0115】
以下、これら
図6~
図8を参照して排水用配置部材10の第3実施形態について説明するが、前述した
図1~
図5で示した構成の排水用配置部材10との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0116】
図6~
図8に示す第3実施形態の排水用配置部材10は、基部2が備える凹部22の構成が異なること以外は、
図1~
図5に示す排水用配置部材10と同様である。
【0117】
すなわち、
図6~
図8に示すように、本実施形態では、凹部22は、側壁を構成する3つの段差23に対応して、それぞれ、段差23と底部24との接続部(角部)に配置された、角部配置部材25を有している。
【0118】
これら角部配置部材25は、それぞれ、段差23の形状に対応した当接面251と、底部24の形状に対応した当接面252と、湾曲凹面を構成する湾曲面253とを有し、3つの段差23と底部24との接続部(第3接続部)に対応して、段差23に当接面251が当接し、底部24に当接面252が当接した状態で、湾曲面253が凹部22の内側を臨むようにして配置されている。
【0119】
このように、段差23と底部24との接続部(第3接続部)に対応して、角部配置部材25を配置することで、基部2(凹部22)を被覆する防水シート50は、この接続部において、屈曲した形状をなすことなく、湾曲凹面で構成される湾曲面253の形状に追従して、凹部22を被覆することとなる。換言すれば、段差23と底部24との接続部に対応する角部配置部材25の配置により、段差23と底部24との接続部が湾曲凹面で構成され、防水シート50は、この湾曲凹面に沿うようにして被覆していると言うことができる。そのため、防水シート50が屈曲した形状をなすことに起因する、防水シート50からの可塑剤の漏出を、的確に抑制または防止することができる。
【0120】
また、湾曲面253の湾曲凹面における曲率半径は、特に限定されないが、5.0mm以上程度であるのが好ましく、5.0mm以上5.0mm以下程度であることがより好ましい。これにより、段差23と底部24との接続部に角部配置部材25を配置することにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0121】
なお、本実施形態では、段差23と底部24との接続部に角部配置部材25を配置させることで、この接続部において、防水シート50が湾曲凹面を被覆する構成としたが、これに限定されず、例えば、基部2が備える凹部22を、絞り加工等により段差23と底部24とを一体的に成形することで、段差23と底部24との接続部自体を湾曲凹面で構成し、この湾曲凹面を防水シート50が被覆する構成とすることもできる。
【0122】
このような第3実施形態の排水用配置部材10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0123】
以上、本発明の排水用配置部材について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0124】
例えば、本発明の排水用配置部材において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0125】
さらに、本発明の排水用配置部材において、前記実施形態では、立ち上がり面3と基部2とを接続する接続部(第1接続部)、および、平部620、720(頂面)と段差23とを接続する接続部(第2接続部)の双方に、複数の継ぎ目を備える金属板1を、防水シート50で被覆する場合についてこの場合に限らず、防水シート50で被覆される金属板1は、前記第1接続部および前記第2接続部のいずれか一方に複数の継ぎ目を有するものであってもよい。
【0126】
また、前記実施形態では、基部2から立ち上がって設けられた立ち上がり面3、30を、基部2に接続された接続面として説明したが、この接続面は、基部2に対して立設されている必要はなく、例えば、基部2に対して沿うように(平行に)、形成されているものであってもよい。
【実施例0127】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0128】
1.原材料の準備
まず、各サンプルNo.の防水シートの製造に用いた原材料を以下に示す。
【0129】
(塩化ビニル系樹脂)
塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニルの単量重合体で構成される粒子(平均粒径1μm、SP値:9.5(cal/cm3)1/2)を用意した。
【0130】
(可塑剤1)
可塑剤1として、無官能のアクリル酸エステル単量重合体(東亞合成社製、「アルフォンUP-1021」、分子量:1600、SP値:9.2(cal/cm3)1/2)を用意した。
【0131】
(可塑剤2)
可塑剤2として、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(三井・ダウポリケミカル社製、「エルバロイHP441」、重量平均分子量:198,000、SP値:9.2(cal/cm3)1/2)を用意した。
【0132】
(可塑剤3)
可塑剤3として、トリメリット酸トリオクチル(TOTM、分子量:550、SP値:9.0(cal/cm3)1/2)を用意した。
【0133】
(可塑剤4)
可塑剤4として、フタル酸ジブチル(DBP、分子量:280、SP値:9.3(cal/cm3)1/2)を用意した。
【0134】
(安定剤)
安定剤として、バリウム-亜鉛系安定剤(堺化学工業社製)を用意した。
【0135】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製)を用意した。
【0136】
(遮蔽材)
遮蔽材として、酸化チタンを用意した。
【0137】
(充填材)
充填材として、炭酸カルシウムを用意した。
【0138】
(色材)
色材として、カーボンブラック(三菱ケミカル社製、「三菱カーボンブラック#45」)を用意した。
【0139】
2.樹脂組成物の調製
[サンプルNo.1]
まず、塩化ビニル系樹脂:100.0重量部、可塑剤1:70.0重量部、安定剤:6.0重量部、紫外線吸収剤:0.5重量部、遮蔽材:15.0重量部、充填材:20.0重量部、および色材:0.4重量部の混合比率でこれらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することでサンプルNo.1の樹脂組成物を得た。
【0140】
[サンプルNo.2]
まず、塩化ビニル系樹脂:100.0重量部、可塑剤2:50.0重量部、可塑剤4:50.0重量部、安定剤:6.0重量部、紫外線吸収剤:0.5重量部、遮蔽材:15.0重量部、充填材:20.0重量部、および色材:0.4重量部の混合比率でこれらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することでサンプルNo.2の樹脂組成物を得た。
【0141】
[サンプルNo.3]
まず、塩化ビニル系樹脂:100.0重量部、可塑剤4:70.0重量部、安定剤:6.0重量部、紫外線吸収剤:0.5重量部、遮蔽材:15.0重量部、充填材:20.0重量部、および色材:0.4重量部の混合比率でこれらを、ミキサーを用いて25℃で均一に混合することでサンプルNo.3の樹脂組成物を得た。
【0142】
3.排水用配置部材の作製
[実施例1]
前記第1実施形態で記載の金属板1に対して、加熱・混練したサンプルNo.1の樹脂組成物を塗布して金属板1の形状に成形した後に冷却することで防水シート50を形成して、実施例1の排水用配置部材10を得た。
【0143】
なお、この排水用配置部材10における防水シート50の厚さは、2.0mmであった。
【0144】
[実施例2]
前記第1実施形態で記載の金属板1に対して、加熱・混練したサンプルNo.2の樹脂組成物を塗布して金属板1の形状に成形した後に冷却することで防水シート50を形成して、実施例2の排水用配置部材10を得た。
【0145】
なお、この排水用配置部材10における防水シート50の厚さは、2.0mmであった。
【0146】
[実施例3]
前記第1実施形態で記載の金属板1に対して、加熱・混練したサンプルNo.3の樹脂組成物を塗布して金属板1の形状に成形した後に冷却することで防水シート50を形成して、実施例3の排水用配置部材10を得た。
【0147】
なお、この排水用配置部材10における防水シート50の厚さは、2.0mmであった。
【0148】
[実施例4]
前記第3実施形態で記載の金属板1に対して、加熱・混練したサンプルNo.1の樹脂組成物を塗布して金属板1の形状に成形した後に冷却することで防水シート50を形成して、実施例4の排水用配置部材10を得た。
【0149】
なお、この排水用配置部材10における防水シート50の厚さは、2.0mmであった。
【0150】
3.評価
各実施例の排水用配置部材10について、以下の方法を用いて評価した。
【0151】
すなわち、各実施例の排水用配置部材10の凹部22に、15gの泥(JIS Z 8901の試験用粉体(日本粉体工業技術協会製、11種タイプ))と、25mLの純水とが添加された状態とした後に、この状態の排水用配置部材10を80℃のオーブン内に84日間保管した。このとき、25mLの純水の添加を朝・夕(1日2回)の12時間毎に実施した。
【0152】
そして、84日間保管後における各実施例の排水用配置部材10について、段差23と底部24との接続部に対応する位置での防水シート50のひび割れ、亀裂や破断の発生の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0153】
(防水シート50におけるひび割れ、亀裂や破断の発生の評価)
前記接続部に対応する位置での防水シート50において、
◎◎:ひび割れ、亀裂や破断等が全く認められない
◎ :若干のひび割れのようなものが認められるが、
防水シート50の防水性には全く影響を及ぼさない程度のものである
〇 :若干の亀裂のようなものが認められるが、
防水シート50の防水性には殆ど影響を及ぼさない程度のものである
× :明らかな亀裂または破断が認められ、
防水シート50の防水性には影響を及ぼすものである
【0154】
その結果、各実施例の排水用配置部材10について、実施例1、2においては「◎」、実施例3においては「○」、実施例4においては「◎◎」の評価結果を示し、防水シートに含まれる可塑剤として、可塑剤の分子量が300以上であることと、可塑剤の溶解パラメーターが8.2(cal/cm3)1/2以上9.8(cal/cm3)1/2以下であることとの双方を満足しているものを用いることで、防水シート50からの可塑剤の漏出を抑制して、防水シート50におけるひび割れ等の発生を効果的に防止し得る結果を示した。