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特開2024-145729通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145729
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/10 20060101AFI20241004BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241004BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241004BHJP
   G06F 16/909 20190101ALI20241004BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20241004BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G08B25/10 D
G09B29/10 A
G09B29/00 F
G06F16/909
G06Q50/26
H04M11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058209
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 望邦
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朱里
(72)【発明者】
【氏名】鎌家 実咲
【テーマコード(参考)】
2C032
5B175
5C087
5K201
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HC27
5B175DA03
5B175DA10
5C087AA03
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD03
5C087EE05
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG67
5C087GG83
5K201AA05
5K201BA02
5K201BC27
5K201CC04
5K201EC06
5K201ED04
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】通報者が地理に不案内な場合であっても、迅速かつ正確に通報者の位置を特定することが可能な通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法を提供する。
【解決手段】少なくとも地図データと前記地図データに含まれる目標物からの視認可能範囲に関する情報である視認範囲データとを格納する記憶部13と、通報者から通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するとともに、取得された携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、探索範囲の内外における目標物について、通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供する情報提供部15と、通報者からの目標物の視認の可否に関する回答を入力する入力部16と、通報者の回答を基に、探索範囲を狭め、通報者の位置を絞り込む位置特定部17と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも地図データと前記地図データに含まれる目標物からの視認可能範囲に関する情報である視認範囲データとを格納する記憶部と、
通報者から前記通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するとともに、取得された前記携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、前記探索範囲の内外における前記目標物について、前記通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供する情報提供部と、
前記通報者からの前記目標物の視認の可否に関する回答を入力する入力部と、
前記通報者の前記回答を基に、前記探索範囲を狭め、前記通報者の位置を絞り込む位置特定部と、
を備えることを特徴とする通報者位置特定支援システム。
【請求項2】
前記情報提供部は、
前記探索範囲の内外における前記目標物のうち、前記視認範囲データより前記通報者が視認可能な複数の前記目標物を抽出し、
抽出された複数の前記目標物の中から前記探索範囲を分割した場合に、分割後の前記探索範囲を構成する複数の領域の面積の差が予め設定されている範囲内に収まるように複数の前記目標物を選択し、
選択された複数の前記目標物について、前記通報者に対する前記目標物の視認の可否に関する質問を生成することを特徴とする請求項1に記載の通報者位置特定支援システム。
【請求項3】
前記情報提供部は、複数の前記目標物を選択するに当たって分散式を用いることを特徴とする請求項2に記載の通報者位置特定支援システム。
【請求項4】
前記位置特定部は、前記通報者の位置を絞り込んだか否かの判定に当たって、狭められた前記探索範囲と予め設定された前記通報者の位置が特定されたとみなす範囲に関する閾値とを比較し、狭められた前記探索範囲が前記閾値以下である場合に、前記通報者の位置を特定したと判定することを特徴とする請求項1に記載の通報者位置特定支援システム。
【請求項5】
前記地図データ上に前記探索範囲を表示させ、前記情報提供部による前記通報者への前記目標物に対する視認の可否を問い合わせるために必要な情報を表示させる表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の通報者位置特定支援システム。
【請求項6】
前記通報者の位置が特定された場合に、特定された前記通報者の位置に基づいて緊急車両に対して指令を行う指令伝送部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の通報者位置特定支援システム。
【請求項7】
通報者からの通報を受信した場合に、前記通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するステップと、
取得された前記携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、前記探索範囲の内外における前記目標物について、前記通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供するステップと、
前記通報者からの目標物の視認の可否に関する回答を入力するステップと、
前記通報者の前記回答を基に、前記探索範囲を狭め、前記通報者の位置を絞り込むステップと、
を備えることを特徴とする通報者位置特定方法。
【請求項8】
前記情報を提供するステップは、
前記探索範囲の内外における前記目標物のうち、地図データに含まれる目標物からの視認可能範囲に関する情報である視認範囲データより前記通報者が視認可能な複数の前記目標物を抽出するステップと、
抽出された複数の前記目標物の中から前記探索範囲を分割した場合に、分割後の前記探索範囲を構成する複数の領域の面積の差が予め設定されている範囲内に収まるように複数の前記目標物を選択するステップと、
選択された複数の前記目標物について、前記通報者に対する前記目標物の視認の可否に関する質問を生成するステップと、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の通報者位置特定方法。
【請求項9】
前記通報者の位置を絞り込むステップは、
狭められた前記探索範囲と予め設定された前記通報者の位置が特定されたとみなす範囲に関する閾値とを比較し、狭められた前記探索範囲が前記閾値以下である場合に、前記通報者の位置を特定したと判定するステップであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の通報者位置特定方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、消防や警察等には、緊急通報を受けて現場への一刻も早い緊急車両や人員の到着が要求される。そのためには、通報者が自らの位置を把握し、なるべく正確に、消防や警察等の通報先にその位置を知らせることが求められる。一方、通報を受けた消防や警察等では、可能な限り短時間で通報者の位置を特定し緊急車両等を出動させる必要がある。
【0003】
ここで、携帯電話やタブレット等の携帯情報端末の普及により、通報時にこれら携帯情報端末を用いた通報が増えている。例えば、固定電話からの通報の場合には電話番号からすぐに通報者の位置が特定することが可能である。一方で、携帯情報端末の場合、電話番号からその位置を特定することは困難であり、通報者が位置を特定して通報先に伝えることが望まれる。
【0004】
一方で、通報者が通報する場面では、気が動転していたり、また、不案内な場所からの通報をしたりといったことも考えられることから、必ずしも自身がいる場所を正確に把握し、的確に伝えることができるわけではない。
【0005】
このような通報者の通報から、通報者の位置を特定することが困難な場合に通報者の位置を特定する方法については、従来から種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている技術では、通報者の通話音声からキーワードを抽出して目標物や通報者の位置関係を決定し地図データから通報者の位置を検索する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-221852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている技術の場合、通報者の音声を基にキーワードが抽出されることから、通報者の位置を検索するための情報は通報者から伝えられる、例えば、通報者が視認した目標物の名称や位置属性の情報に依存することになる。
【0008】
しかしながら、上述したように通報者が消防や警察等に通報する場面は、通報者にとっても特別な場面であり、例えば、特徴的な建物や公共の建物や公園といった、認知しやすい目標物ではなく、通報者にとって視認しやすい目標物が通報されることが考えられる。また、視認可能な目標物については伝えられるものの、視認できない目標物についての通報は考えにくく、特に地理に不案内な場所においてはなおさらである。
【0009】
本発明は、通報者が地理に不案内な場合であっても、迅速かつ正確に通報者の位置を特定することが可能な通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る通報者位置特定支援システムは、少なくとも地図データと前記地図データに含まれる目標物からの視認可能範囲に関する情報である視認範囲データとを格納する記憶部と、通報者から通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するとともに、取得された携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、探索範囲の内外における目標物について、通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供する情報提供部と、通報者からの目標物の視認の可否に関する回答を入力する入力部と、通報者の回答を基に、探索範囲を狭め、通報者の位置を絞り込む位置特定部と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る通報者位置特定方法は、通報者からの通報を受信した場合に、通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するステップと、取得された携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、探索範囲の内外における目標物について、通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供するステップと、通報者からの目標物の視認の可否に関する回答を入力するステップと、通報者の回答を基に、探索範囲を狭め、通報者の位置を絞り込むステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通報者が地理に不案内な場合であっても、迅速かつ正確に通報者の位置を特定することが可能な通報者位置特定支援システム及び通報者位置特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムを含む通信システムの全体構成を示す全体図である。
図2】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムの内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の概念を示す説明図である。
図4】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の概念を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の流れを示すシーケンス図である。
図6】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の流れを示すシーケンス図である。
図7】本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システム1を含む通信システムSの全体構成を示す全体図である。
【0015】
通報者位置特定支援システム1は、例えば、消防や警察等の司令室等に設けられ、受信した緊急通報をした通報者の位置を特定するためのシステムである。そのため、通報者位置特定支援システム1は情報通信ネットワークN1に接続されている。情報通信ネットワークNの例としては、例えば、基地局や中継局を含む無線通信網、システム独自で構築しているIP-VPN網、インターネット等のネットワークを挙げることができる。
【0016】
情報通信ネットワークN1には、通報者が通報に際して使用する携帯情報端末2Aないし2Cが接続される。これら携帯情報端末2Aないし2Cを使用して通報があった場合には、情報通信ネットワークN1を介して通報者と通報者位置特定支援システム1の操作者との間で通話ができる。当該情報通信ネットワークN1を介して通報に使用される、例えばスマートフォンなどの携帯情報端末2Aないし2Cの位置に関する情報が通報者位置特定支援システム1に送信される。
【0017】
通報者位置特定支援システム1は、さらに、情報通信ネットワークN2を介して、緊急車両3との間でやり取りを行うことが可能とされている。すなわち、通報者からの通報に基づいてその通報者の位置が特定された場合に、通報者位置特定支援システム1から緊急車両3に対して特定された位置に基づいて、例えば、出動等の指令が出される。
【0018】
ここでの情報通信ネットワークN2は、上述した情報通信ネットワークN1とは異なり、消防や警察等において、例えば、司令室と緊急車両との間でやり取りを行うために利用される専用のネットワークを想定している。但し、情報通信ネットワークN1のようなネットワークであっても構わない。
【0019】
なお、図1においては携帯情報端末が3つ(携帯情報端末2Aないし2C)示されているが、情報通信ネットワークN1に接続可能とされている携帯情報端末の数はこの数に限定されない。また、以下においては、これらの携帯情報端末2Aないし2Cをまとめて「携帯情報端末2」と表す。
【0020】
さらに、図1においては緊急車両が2台(緊急車両3A及び3B)示されているが、情報通信ネットワークN2に接続可能とされている緊急車両の数についてもこの数に限定されない。これらの緊急車両3A及び3Bについては、以下、まとめて「緊急車両3」と表す。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システム1の内部構成を示すブロック図である。通報者位置特定支援システム1は、通報者応対部11と、制御部12と、記憶部13と、表示部14と、情報提供部15と、入力部16と、位置特定部17と、指令伝送部18と、を備えている。またそれぞれがバスBに接続され、互いに情報のやり取りが可能とされている。
【0022】
通報者応対部11は、通報者からの自己や災害等の通報を受信する。通報者は、例えば、自身のスマートフォン等の携帯情報端末2を用いて消防や警察等に対して通報する。通報は通報者位置特定支援システム1の通報者応対部11につながり、通報者位置特定支援システム1の操作者との間で通話が可能である。また、後述する通報者の位置を特定する処理が実行される際にも通報者と操作者との間で相互に情報のやり取りが行われる。
【0023】
また、通報者応対部11が通報者からの通報を受信した際に、当該通報者が使用する携帯情報端末2の位置に関する情報も取得する。取得された当該携帯情報端末2の位置に関する情報は、後述する情報提供部15に送信される。
【0024】
制御部12は、通報者位置特定支援システム1を構成する各部を制御する。例えば、通報者の位置を特定する処理を位置特定部17に指示し、或いは、通報者の位置が特定された場合に、特定された位置を基に緊急車両3に対して指令を出すように指令伝送部18に指示する。
【0025】
記憶部13は、例えば、通報者の位置を特定する際に必要な情報が格納されている。図2のブロック図では、地図データデータベース131(図面では「地図データDB131」と表している)と視認範囲データデータベース132(図面では「視認範囲データDB132」と表している)が記憶部13の中に設けられている。なお、以下においても「データベース」を表す際には、適宜「DB」と表す。
【0026】
このうち、「地図データ」とは、例えば、消防や警察等が自ら管轄する地域やその近隣の地域を対象とした地図に関するデータである。後述する情報提供部15が、通報者が使用する携帯情報端末2の位置に関する情報から探索範囲を設定する際に、携帯情報端末2の位置に関する情報に対応した地図データを地図データDBから抽出する。なお、この地図データについては、例えば、2次元の地図データであっても3次元の地図データであっても良い。
【0027】
記憶部13には、地図データの他、通報者の視認可能範囲に関する情報である視認範囲データについても記憶されている。通報者の位置を特定する際には、後述するように、通報者位置特定支援システム1の操作者から通報者に対して目標物の視認の可否を問い合わせる。すなわち、問い合わせの対象となる目標物が通報者から見えるか否かを問い合わせるが、対象となる目標物が見えるか否かは、目標物の高さや通報者の位置、どの方向を見ているかによって異なる。
【0028】
そこで反対に目標物を起点として、その目標物を見ることができる通報者の位置の範囲を予め求めておき、その情報を視認範囲データとして記憶部13に記憶しておく。すなわち、例えば、3次元の地図のデータを用いて、それぞれの建物の高さから建物ごとにその建物が視認可能な通報者の位置の範囲を算出する。これは目標物から見た場合に見える通報者の位置の範囲である。
【0029】
そして操作者が通報者に対して目標物の視認の可否を問い合わせた場合に、今度は通報者から目標物が見えるかどうかを確認する。問い合わせに対して通報者が目標物を視認できれば、事前に目標物ごとに算出した視認可能な範囲に通報者が存在する可能性が高いことが分かる。一方、通報者から目標物が見えない場合には、当該目標物の視認範囲外に通報者が存在すると推定することができる。
【0030】
なおここで「目標物」とは、通報があった場合に、通報者の位置を特定するに当たって有用な、予めその位置が把握できている建物のことである。通報者からのこの目標物の視認の可否を確認することで、通報者の位置を特定していく。従って、目標物としては、上述した建物に限定されず、例えば、ランドマークとなるような大木や構造物等であっても良い。
【0031】
また、通報を受けてから通報者に対して問い合わせる目標物を決定するのでは、通報者の位置を特定するのに時間が掛かってしまう。そこで目標物になり得るもの(目標物の候補)については、事前に選択、登録され、その住所や視認範囲データが記憶されている。また、このような目標物を複数選択、登録しておくことで、通報者の位置をより精度良く特定することが可能となる。
【0032】
このように、通報者の位置を特定するに当たって、通報者が使用する携帯情報端末2の位置を具体的に地図上に落とし込むために用いられる地図データと、実際に通報者の位置を特定する処理において探索範囲を狭めていく際の条件としての視認範囲データとが記憶部13のデータベースに記憶されている。
【0033】
なお記憶部13には、これらのデータの他、例えば、通報者の位置を特定する処理を実行する特定プログラム等も記憶されている。
【0034】
表示部14は、例えば、通報者が使用する携帯情報端末2の位置に関する情報に基づいて地図データDBから取得された地図データを表示させる。また、当該地図データ上に通報者の位置を特定する処理を実行する際の探索範囲も表示させる。或いは、通報者の位置を特定するに当たって、通報者に対して問い合わせる目標物に関する情報についても表示させても良い。
【0035】
情報提供部15は、通報者から通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するとともに、取得された携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、探索範囲の内外における目標物について、通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を操作者に提供する。
【0036】
通報者が消防や警察等に通報すると、通報者が使用している携帯情報端末2のGPSによる測位情報や通報時の通信に使用された基地局の基地局情報といった各種情報を基に、通報者の携帯情報端末2の位置に関する情報が取得される。
【0037】
このように通報者の携帯情報端末2の位置に関する情報が取得されるといっても、当該情報から通報者の正確な位置が特定されるわけではない。それはたとえGPSが利用できる携帯情報端末2であっても、例えば、地理的な事情や通報者の携帯情報端末2の性能が異なる等の理由から、通報者の位置を特定するに十分な精度でその位置に関する情報が得られるとは限らないからである。
【0038】
情報提供部15では、通報者応対部11から送信された携帯情報端末2の位置に関する情報を取得する。そして記憶部13の地図データDBにアクセスして、当該取得された携帯情報端末2の位置に関する情報を基に携帯情報端末2の位置が含まれる地図データを取得する。
【0039】
そして表示部14に現時点で取得されている通報者の位置を含む範囲を地図データDBから取得した地図データ上に反映させて表示させる。なお上述したように、まだ通報者の位置は特定されていないことから、表示部14に表示される地図データでは、例えば、円形状に通報者が存在すると思われる範囲が表示されることになる。
【0040】
この状態から通報者の位置を特定する処理を進めて、徐々に当該通報者が存在すると思われる範囲を狭めていき、最終的に通報者の位置を特定する。このように通報者の位置を特定するために設定される範囲を、以下適宜、「探索範囲」という。
【0041】
探索範囲は、通報者と操作者とのやり取りを経て通報者の回答が得られるたびに更新され徐々に狭まっていく。そして探索範囲が狭まることにより通報者の位置が徐々に特定される。このように通報者の位置が特定されるまでの間に何度か探索範囲が更新される。そこで探索範囲について区別する必要がある場合には、以下のように区別して示す。
【0042】
まず、最初に設定される探索範囲は、通報者から通報があった場合に取得される、通報者が使用している携帯情報端末2の位置に関する情報を基に設定される。そこで、このように最初に設定される探索範囲を適宜「初期探索範囲」と表す。一方、当該初期探索範囲から更新された後の探索範囲については、以下適宜「更新後探索範囲」と表す。
【0043】
上述したように、目標物の候補は事前に複数登録され、登録された目標物ごとの視認範囲データ等の情報が記憶部13に記憶されている。そのため、探索範囲が設定された場合に、その探索範囲の内側、及び、外側に多数の目標物が存在することになる。そこで情報提供部15では、これら多くの目標物の中からいくつかの目標物を抽出し、抽出された複数の目標物から実際に通報者に視認の可否を問い合わせる複数の目標物を選択する。
【0044】
但し、多数登録されている目標物の中から無作為に目標物を抽出して通報者に問い合わせても有益な回答が得られる可能性は低い。そこで、次のような手法を用いて通報者に問い合わせる目標物を選択する。
【0045】
すなわち、通報者が使用する携帯情報端末2の位置に関する情報を基に初期探索範囲が設定された場合を例に挙げると、設定された初期探索範囲の近傍において登録されている目標物の中から1つの目標物を選択する。この目標物が探索範囲の内側に位置するか、或いは、外側に位置するかは問わない。但し、初期探索範囲の外側であって探索範囲から離れすぎていて通報者からは見えない、と回答される確率が高いと思われる目標物については選択の対象外である。
【0046】
また、探索範囲の外側に存在している目標物について、どの範囲で目標物を抽出するかについては、例えば探索範囲が円形状に設定される場合に、探索範囲の中心からの距離をもって抽出する等、任意に設定することができる。
【0047】
そして選択された1つの目標物を基に、同時に通報者に問い合わせる目標物をさらに選択する。ここでは、同時に通報者に問い合わせる目標物の数を1つとし、合計で2つの目標物の可否について通報者に問い合わせることを前提に説明する。
【0048】
ここで目標物の視認の可否を通報者に問い合わせるのは、探索範囲において通報者から見える目標物、見えない目標物についての情報を収集することで探索範囲を区切って、探索範囲を狭めることができるからである。そしてこの処理を繰り返すことで、通報者から通報を受けた時に最初に設定された初期探索範囲を徐々に狭めていくことができ、最終的に通報者の位置を特定することができるからである。
【0049】
このことを説明したのが図3及び図4に示す説明図である。図3及び図4は、本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システム1において実行される特定処理の概念を示す説明図である。
【0050】
図3図4において、円形に示されている領域が探索範囲Uである。そして星印で示されているのが通報者の位置である。図3、及び、図4において探索範囲Uは、説明の都合上、いずれも同じ面積となるように描画されている。また、探索範囲Uは、通報者が使用する携帯情報端末2の位置に関する情報を基に設定されることから、通報者は探索範囲Uの略中心に位置するように示されている。
【0051】
また、図3、及び、図4には「A」と「B」とで示される目標物も示されており、いずれも探索範囲Uの外側に位置している。そして通報者から目標物Aを視認できるか否かの境界を示す線が一点鎖線で示されている。一方、通報者から目標物Bを視認できるか否かの境界を示す線は破線で示されている。
【0052】
図3、及び、図4では、探索範囲Uが4分割されて示されている。これは、通報者から見て視認の可否を問い合わせた目標物が2つだからである。すなわち、通報者が目標物Aと目標物Bのいずれもが見える領域が領域Up1である。
【0053】
一方、目標物Aは見えるが、目標物Bは見えない領域が領域Up2であり、反対に目標物Aは見えないが、目標物Bは見える領域が領域Up3である。そして、通報者からは目標物A及び目標物Bの両方が見えない領域が領域Up4である。
【0054】
図3においては、通報者は目標物A、及び、目標物Bのいずれもが見えており、通報者が存在する範囲は領域Up1であると推定できる。一方図4に示す説明図では、通報者は目標物Aは見えているが、目標物Bは見えない。従って、図4に示す通り、通報者は領域Up3にいると推定できる。
【0055】
次に探索範囲Uにおける各領域の面積について見ると、図3に示す探索範囲Uでは、4つの領域に区切られた領域Up1ないし領域Up4の面積はバラバラの大きさである。最も大きな面積が領域Up4であり、次に大きな面積を有しているのが領域Up1である。領域Up2、及び、領域Up3は、いずれも領域Up1よりも小さな面積となっている。
【0056】
探索範囲Uは、上述したように、通報者が目標物を視認できるか否かによって区切られる。但し、区切られた結果、それぞれの領域Upの面積に差があると、探索範囲Uが有効に狭められたことにはならない可能性がある。
【0057】
例えば、図3を例に挙げると、もし通報者に対して目標物Aと目標物Bの視認の可否を問い合わせた場合に、通報者からの回答がいずれも見えない、というものであった場合、対象となる領域Up4は4つに区切られる探索範囲Uの中で最も大きな面積を有している。
【0058】
もちろんこの当該回答であっても元々の探索範囲Uを狭めることに寄与していることには間違いはない。すなわち、このようないずれの目標物も見えない、という通報者からの回答であっても確実に探索範囲Uを狭めることができる。この点は、本発明の実施の形態における通報者の位置を特定するために探索範囲を狭めていく処理の特徴の1つである。
【0059】
その一方で、上述したように探索範囲Uを狭めたとしてもその結果が領域Up4のように区切られた探索範囲Uの中で最も面積が大きな場合、通報者の位置の特定という観点からは効率的であるとは言えない。
【0060】
つまり、例えば、通報者の回答により探索範囲Uが領域Up2に狭められるのであれば、元々の探索範囲Uを大きく狭めたことになり、次の探索範囲UをUp2に設定すれば、より早く通報者の位置を特定することができると考えられる。一方で、元々の探索範囲Uの中で区切られた領域のうち、通報者の回答が大きな領域に該当する場合には、探索範囲Uを狭めていくためにはそれだけ処理に時間が掛かることになり、迅速な通報者の特定という観点からは好ましくない。
【0061】
一方図4に示す説明図に描画されている通り、もし目標物の視認の可否の問い合わせに対する通報者からの回答がどのようなものであっても概ね探索範囲Uを均等となるように狭めることができれば、上述したような区切られた領域の大小があることで発生する不都合を回避することができ、通報者の位置の特定を効率的に進めることができる。
【0062】
すなわち、探索範囲Uを狭めるに当たって通報者の回答如何に拘わらず効率的に探索範囲Uを狭めていくことができれば、より迅速に通報者の位置の特定が可能となる。そのため、このように探索範囲Uを均等に分割することができるように問い合わせる目標物を選択する必要がある。そして可能な限り早く通報者の位置を特定することに寄与する目標物が有用な目標物であると言い得る。
【0063】
なお、ここで「均等」と表現しているが、例えば、通報者の回答から探索範囲Uを4つに分割できた場合に、必ずしも領域Up1ないし領域Up4が各々1/4(25%)となるように等しく分割することを求めるものではない。なぜならば、図4の説明図では説明の都合上、領域Up1ないし領域Up4の面積が概ね25%程度となるように示しているが、実際の地図データに探索範囲Uが設定された場合には、必ずしもこのように分割されないことも考えられるからである。
【0064】
従って、「均等」という表現には、ある幅を含む概念であり、例えば、探索範囲Uを分割した場合に、分割後の探索範囲Uを構成する複数の領域の面積の差が予め設定されている範囲内に収まるように分割する場合も含む。この予め設定されている範囲とは、例えば、上述した25%を中心に上下数%の範囲とすることができ、任意に設定することができる。
【0065】
また図3図4においては、目標物A及び目標物Bに関する視認の可否の境界を示す一点鎖線や破線は滑らかに示されている。但しこの描画はあくまでも説明の便宜上であって、実際には目標物やその他の建物の配置によって、境界線はいびつな線となる。
【0066】
このように情報提供部15としては、通報者に目標物の視認の可否を問い合わせた際に、回答の如何に拘わらず、探索範囲Uを分割した際にいずれの領域も概ね同じ面積となるような目標物を選択し、問い合わせる必要がある。そのために、目標物の選択に当たっては、以下の処理を行う。
【0067】
通報者に問い合わせる目標物を選択するに当たっては、例えば、分散の考え方を用いる。すなわち、最初に設定された探索範囲Uを均等に分割する場合に、分割された領域Upのそれぞれの面積が不均等となると分散値は大きくなる。一方、領域Upのそれぞれの面積が均等となるように分割することができれば、分散値は小さくなる。従って、探索範囲Uを狭めるに当たって、以下のような式を用いて、分散値が小さくなるように目標物を選択する。
【0068】
【数1】
【0069】
式1は、探索範囲Uを均等に分割することができるような目標物を選択する際に用いる分散式である。ここで「n」は分割数、「Up」は分割された面積を示し、「Uバー」は、探索範囲Uの面積を分割数で割った値である。このような分散式を用いることによって、探索範囲Uを概ね同じ面積に分割することが可能な目標物を選択することができる。
【0070】
具体的には、例えば、探索範囲Uの近傍において登録されている目標物の1つを基準として、その他の探索範囲Uの近傍において登録されている目標物との組み合わせにおいて分散値が最も小さくなる目標物の組み合わせを算出する。このように目標物を選択することによって、探索範囲Uを分割した際に、分割された領域の面積を概ね等しくすることができる。
【0071】
情報提供部15はこのような処理を行って目標物を選択し、表示部14に通報者に対して視認の可否の問い合わせを行う際に対象となる目標物の情報を表示させる。なお、情報の提供の方法としては、例えば、算出された目標物の情報として住所や電話番号等を表示させる他、或いは、通報者が目標物を見た時に当該目標物を見分けることができる外観上の特徴や目標物の名称である。また、例えば、通報者への質問内容について提供しても良い。
【0072】
すなわち、目標物Aが書店であり、目標物Bが喫茶店である場合、例えば「A書店、または、B喫茶店が見えますか。」といった、通報者に対する問い合わせ内容(質問)を表示部14に表示させても良い。このような質問を表示部14に表示させることによって、通報者位置特定支援システム1の操作者は通報者の位置の特定を行うに当たって的確な目標物を通報者に対して問い合わせることができる。
【0073】
操作者は、通報者応対部11を介して通報者に対して質問を行い、通報者は操作者からの質問に対して回答する。例えば、通報者は「A書店については見えますが、B喫茶店については見えません」と操作者に対して回答する。
【0074】
入力部16は、操作者が通報者からの回答を得た場合に、当該回答を入力するために用いられる。また、この操作の他、通報者位置特定支援システム1を用いるに当たって入力操作が必要な場合には、当該入力部16を介して行われる。
【0075】
なお、例えば、情報提供部15によって表示部14に表示された回答一覧の中から通報者の回答を選択する等、どのように通報者からの回答を入力するかについては、任意に設定することができる。また、入力部16としては、例えば、キーボードやマウス等が想定されるが、その他の入力手段であっても良い。
【0076】
入力部16を介して操作者が通報者からの回答を入力すると、位置特定部17では、入力された回答を基に通報者の位置を特定する処理を実行する。すなわち位置特定部17は、通報者の回答を基に.探索範囲Uを狭め、通報者の位置を絞り込む。
【0077】
すなわち、通報者が、上述したように、例えば「A書店については見えますが、B喫茶店については見えません」と回答した場合に、通報者位置特定支援システム1の操作者は当該回答を入力する。位置特定部17では、入力された回答を基に、当該回答が探索範囲Uを分割したいずれの領域に該当するか判定する。上記回答の場合、図4に示す説明図における探索範囲Uでは、領域Up3に該当する。
【0078】
そこで位置特定部17は、初期探索範囲Uを新たな探索範囲(更新後探索範囲)Unewとしてその範囲を狭める。初期探索範囲Uを狭めたことによって、更新後探索範囲Unewを含む領域を示す地図データを、改めて記憶部13から取得して表示部14に表示させる。これによって、通報者の位置を特定する対象となる地域を絞り込むことができる。
【0079】
もしこの状態で通報者の位置を特定することができる場合には、通報者の位置を特定し、指令伝送部18に対して通報者の位置に関する情報を送信する。指令伝送部18では受信した通報者の位置に関する情報に基づいて緊急車両3に対して情報通信ネットワークN2を介して指令情報を送信する。
【0080】
ここで、位置特定部17において通報者の位置を特定できたか否かについての判定は、例えば、以下のように行われる。すなわち、例えば、通報者の位置が特定されたと見なす閾値を定めて記憶部13に記憶させておき、位置特定部17が狭められた更新後探索範囲Unewと比較し、更新後探索範囲Unewが閾値以下である場合には、通報者の位置は特定されたと判定する。
【0081】
ここでの閾値については、例えば、探索範囲Uの半径や直径、或いは、面積等、どのような値をもって設定されても良い。また、閾値については、探索範囲Uが設定される地域との関係で設定されていても良い。
【0082】
すなわち、例えば、住宅等の建物が密集する地域においては、通報者の位置の特定には探索範囲Uを狭めてより細かに絞り込む必要がある一方、例えば、畑地や牧草地のような見通しが利く地域では、あまり探索範囲Uを狭めなくても通報者の位置は特定することができる。そこで、例えば、探索範囲Uとして設定された地域の、例えば建物の密集度合いに応じて、複数の閾値を設定しても良い。
【0083】
また、探索範囲Uが狭められるたびに建物の密集度合いは低くなると考えられることから、探索範囲Uが狭められるに従って、比較に用いる閾値を変更しても良い。また、操作者が探索範囲Uの大きさに応じて指定した閾値を用いることとしても良い。
【0084】
さらにこのように通報者位置特定支援システム1において自動的に通報者の位置が特定されたか否かを判定するのではなく、例えば通報者位置特定支援システム1の操作者が通報者の位置が特定されたか否かを判定しても良い。
【0085】
この場合、操作者は更新後探索範囲Unewの範囲を確認して、もしまだ通報者の位置が特定されていない、と判定した場合には、例えば、入力部16を用いて表示部14に示されている「更新ボタン」をクリックする。通報者位置特定支援システム1では、当該入力があったことを、例えば制御部12で検出し、改めて位置特定部17において更新後探索範囲Unew内での通報者の位置の特定処理を実行する。
【0086】
これまでの説明においては、目標物について2つ挙げて通報者に対して質問することを前提にしていた。ここで問い合わせの対象となる目標物を1つとしていないのは、図3図4の説明図においても明らかなように、目標物が1つだけだと見えるか見えないかの2つの選択肢しかないからである。もちろんこの場合、通報者への問い合わせの回数を増やすことで対応できるが、これでは探索範囲Uの範囲を効率的に狭めることができないからである。
【0087】
これに対して、通報者に対して3つ以上の目標物の視認の可否について質問することは可能である。但し、緊急性を要する場面で一度にあまりに多くの目標物についての視認の可否を問い合わせても、通報者から有効な回答を得られない可能性がある。そこで、実際的には問い合わせの対象とする目標物の数を2つとすることが考えられる。
【0088】
[動作]
次に、上述した通報者位置特定支援システム1を用いた通報者の位置の特定処理の流れについて、図5ないし図7を用いて説明する。図5ないし図7は、本発明の実施の形態に係る通報者位置特定支援システムにおいて実行される特定処理の流れを示すシーケンス図である。
【0089】
図5ないし図7に示すシーケンス図において、左から「携帯情報端末2」、「通報者位置特定支援システム1」、「緊急車両3」の順に並び、上から下に向けて制御の内容が時系列に並んでいる。なお、携帯情報端末2については、別途カッコ書で「通報者」と記載している。一方、通報者位置特定支援システム1については「支援システム」と省略して示している。
【0090】
また、本発明の実施の形態における通報者の位置を特定するための流れを理解するために、これらのシーケンス図では、装置における処理と通報者と操作者とのやりとり等の人の動作をまとめて示している。そして装置における処理については実線で、人の動作については破線で示している。
【0091】
まず通報者が事件や事故等に遭遇することによって、通報者は消防や警察等に対して通報を行う(ST1)。通報者からの通報は、通報者位置特定支援システム1の通報者応対部11で受信され(ST2)、併せて、通報者が使用する携帯情報端末2の位置の情報も取得される(ST3)。なお、図面では描画の都合上、「携帯情報端末2の位置に関する情報」を「携帯情報端末2の位置の情報」と示している。
【0092】
取得された通報者が使用する携帯情報端末2の位置の情報は、情報提供部15に送信され、携帯情報端末2の位置の情報を基に、当該位置を含む地図データを記憶部の地図データDBから取得する(ST4)。また、情報提供部15は、取得した地図データ上に携帯情報端末2の位置の情報を基に探索範囲を設定し、表示部14に表示させる(ST5)。なお、ここで設定される探索範囲は、初期探索範囲である。
【0093】
さらに情報提供部15は、目標物として登録されている複数の目標物の中から、設定した初期探索範囲の近傍において登録されている複数の目標物を抽出する(ST6)。そして抽出された複数の目標物に関する視認範囲データを視認範囲データDB132から取得する(ST7)。
【0094】
情報提供部15では、取得した視認範囲データを用いて、ステップST6で抽出された複数の目標物の中から探索範囲を均等に分割することができる目標物の組み合わせを、上述した、例えば分散式を用いた演算を行うことで選択する(図6のST8)。
【0095】
選択された目標物に関する情報は、情報提供部15が表示部14に表示させる。ここで表示される目標物の情報については、上述したように、住所等の情報の他、通報者に対する質問の内容でも良い。通報者位置特定支援システム1の操作者は、例えば、表示部14に表示された質問の内容を基に、通報者に目標物の視認の可否について問い合わせる(ST10)。
【0096】
通報者は、操作者からの質問に対して携帯情報端末2を介して回答し(ST11)、回答は、通報者応対部11を介して操作者が取得する。操作者は入力部16を用いて通報者の回答を通報者位置特定支援システム1に入力する(ST12)。
【0097】
通報者からの回答が入力されると、位置特定部17では、回答を基に探索範囲において回答に合致する領域を抽出する(ST13)。そして位置特定部17は、当該抽出された領域を新たな探索範囲(更新後探索範囲)として設定する(図7のST14)。
【0098】
さらに位置特定部17は、更新後探索範囲をもって、通報者の位置が特定されたか否かの判定を行う(ST15)。この判定については、上述したように、例えば新たに設定した探索範囲と予め設定されている閾値とを比較することで行われる。
【0099】
比較の結果、新たに設定した探索範囲の方が閾値よりも大きな値である場合には、未だ通報者の位置の特定ができていないと判定し、改めてステップST5に戻り、情報提供部15に対して当該新たに設定された更新後探索範囲を地図データ上に反映させるよう指示する。情報提供部15では、更新後探索範囲を基に上述した探索範囲を狭める処理を改めて実行する。
【0100】
一方、位置特定部17の比較の結果、新たに設定した更新後探索範囲が閾値以下であると判定された場合には(ST15のYES)、通報者の位置が特定されたことになるので、特定された通報者の位置を指令伝送部18に送信する。
【0101】
指令伝送部18では、特定された通報者の位置を指令情報として生成し(ST16)、指令情報を緊急車両3に対して伝送する(ST17)。緊急車両3では、指令伝送部18から送信された指令情報を受信し(ST18)、緊急車両3は、指令情報に基づいて現場に向かう。
【0102】
以上説明したような通報者の位置の特定処理を実行することによって、通報者が地理に不案内な場合であっても、迅速かつ正確に通報者の位置を特定することが可能となる。
【0103】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0104】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0105】
例えば、これまでの説明では、通報者が通報をしてきた際に、通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定することを前提に説明していた。但し、探索範囲の設定に当たってはこのような方法に限られず、例えば、通報者と操作者との通話の内容を音声認識ソフトが自動的に認識し、当該自動認識の結果に基づいて、該当する地図データを取得して探索範囲を設定することとしても良い。
【0106】
またこれまでの説明では、情報提供部15が通報者応対部11から通報者の携帯情報端末2の位置に関する情報を取得した上で、地図データDB131にアクセスして該当する地図データを取得、表示部14に表示させることを前提に説明した。
【0107】
但し、このような処理の流れとはせず、例えば、通報者応対部11が取得した通報者の携帯情報端末2の位置に関する情報を基に地図データDB131に該当する地図データを抽出させ、その抽出された地図データを情報提供部15に対して送信するよう指示することとしても良い。
【0108】
なお、これまで説明してきた通報者の位置の特定処理においては、通報者の高さ方向における位置に関する情報については考慮していない。但し、例えば、地面からの高さ方向の位置を測定して提供される情報を用いて通報者の高さ方向の位置を特定しても良い。
【0109】
また、表示部14に探索範囲や目標物が表示された場合に、これらについて色を付けて表示させることで操作者の視認性を向上させることとしても良い。また、表示部14には探索範囲が表示されるが、複数回にわたって探索範囲が更新される場合には、例えば、その時点で最新の更新後探索範囲とその直前の更新後探索範囲、或いは、初期探索範囲について同時に表示させることも可能である。
【0110】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)少なくとも地図データと前記地図データに含まれる目標物からの視認可能範囲に関する情報である視認範囲データとを格納する記憶部と、
通報者から前記通報者が使用している携帯情報端末の位置に関する情報を取得するとともに、取得された前記携帯情報端末の位置に関する情報を基に探索範囲を設定し、前記探索範囲の内外における前記目標物について、前記通報者による視認の可否を問い合わせるために必要な情報を提供する情報提供部と、
前記通報者からの前記目標物の視認の可否に関する回答を入力する入力部と、
前記通報者の前記回答を基に、前記探索範囲を狭め、前記通報者の位置を絞り込む位置特定部と、
を備えることを特徴とする通報者位置特定支援システム。
(2)前記情報提供部は、
前記探索範囲の内外における前記目標物のうち、前記視認範囲データより前記通報者が視認可能な複数の前記目標物を抽出し、
抽出された複数の前記目標物の中から前記探索範囲を分割した場合に、分割後の前記探索範囲を構成する複数の領域の面積の差が予め設定されている範囲内に収まるように複数の前記目標物を選択し、
選択された複数の前記目標物について、前記通報者に対する前記目標物の視認の可否に関する質問を生成することを特徴とする上記(1)に記載の通報者位置特定支援システム。
(3)前記情報提供部は、複数の前記目標物を選択するに当たって分散式を用いることを特徴とする上記(2)に記載の通報者位置特定支援システム。
(4)前記位置特定部は、前記通報者の位置を絞り込んだか否かの判定に当たって、狭められた前記探索範囲と予め設定された前記通報者の位置が特定されたとみなす範囲に関する閾値とを比較し、狭められた前記探索範囲が前記閾値以下である場合に、前記通報者の位置を特定したと判定することを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の通報者位置特定支援システム。
(5)前記地図データ上に前記探索範囲を表示させ、前記情報提供部による前記通報者への前記目標物に対する視認の可否を問い合わせるために必要な情報を表示させる表示部を備えることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の通報者位置特定支援システム。
(6)前記通報者の位置が特定された場合に、特定された前記通報者の位置に基づいて緊急車両に対して指令を行う指令伝送部を備えることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の通報者位置特定支援システム。
【符号の説明】
【0111】
1・・・通報者位置特定支援システム、2・・・携帯情報端末、3・・・緊急車両、11・・・通報者応対部、12・・・制御部、13・・・記憶部、131・・・地図データデータベース、132・・・視認範囲データデータベース、14・・・表示部、15・・・情報提供部、16・・・入力部、17・・・位置特定部、18・・・指令伝送部、N1・・・情報通信ネットワーク、N2・・・情報通信ネットワーク、U・・・探索範囲、Up1~Up4・・・領域、S・・・通信システム




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7