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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145747
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】不良検出装置及び不良検出方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/08 20060101AFI20241004BHJP
   B21D 11/22 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B21D5/08 R
B21D5/08 N
B21D11/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058231
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 真一
(72)【発明者】
【氏名】黒木 伸巌
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BB08
4E063LA08
4E063MA11
4E063MA12
(57)【要約】
【課題】適切に成形されていない嵌合部を発見する技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る不良検出装置1は、帯状鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、帯状鋼板の幅方向における一端部に成形され、帯状鋼板の谷底部に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた嵌合部の不良を検出する不良検出装置1であって、嵌合部に対して上方で対向するように設けられて嵌合部との距離を測定する測定部10と、測定10部によって測定された距離D1が上限閾値K1を超えているかを判定する判定部30と、を備え、判定部30は、距離D1が少なくとも上限閾値K1を超えていると判定した場合、製造ラインを停止させる信号を外部装置(外部)300に送信する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出装置であって、
前記折曲げ部に対して上方で対向するように設けられて前記折曲げ部との距離を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていると判定した場合、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する
ことを特徴とする不良検出装置。
【請求項2】
鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出装置であって、
前記折曲げ部に対して上方で対向するように設けられて前記折曲げ部との距離を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていないと判定した場合、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する
ことを特徴とする不良検出装置。
【請求項3】
前記製造ラインにおいて、前記測定部は、前記折曲げ部を成形するロール成形機と、前記鋼板を所定の長さにおいて切断する切断機と、の間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の不良検出装置。
【請求項4】
前記測定部は、少なくとも前記製造ラインの稼働中に常に前記距離を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の不良検出装置。
【請求項5】
鋼板との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備える不良検出装置により、前記鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて前記平坦な部分に対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出方法であって、
前記測定部によって、前記折曲げ部に対して上方で対向する位置で前記折曲げ部との前記距離を測定する測定工程と、
前記判定部によって、前記測定工程において測定された前記距離が前記一の閾値を超えているかを判定する判定工程と、
前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていると判定された場合、前記判定部によって、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する信号送信工程と、
を含むことを特徴とする不良検出方法。
【請求項6】
鋼板との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備える不良検出装置により、前記鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて前記平坦な部分に対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出方法であって、
前記測定部によって、前記折曲げ部に対して上方で対向する位置で前記折曲げ部との前記距離を測定する測定工程と、
前記判定部によって、前記測定工程において測定された前記距離が前記一の閾値を超えているかを判定する判定工程と、
前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていないと判定された場合、前記判定部によって、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する信号送信工程と、
を含むことを特徴とする不良検出方法。
【請求項7】
前記測定工程を、少なくとも前記製造ラインの稼働中に常に実施することを特徴とする請求項5又は6に記載の不良検出方法。
【請求項8】
前記測定工程を、前記製造ラインにおいて前記折曲げ部を成形するロール成形機と、前記鋼板を所定の長さにおいて切断する切断機と、の間で実施することを特徴とする請求項5又は6に記載の不良検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不良検出装置及び不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床、天井、屋根等は、コンクリートとデッキプレートとにより形成されたスラブにより構築されている。スラブにおいて使用されるデッキプレートとして、例えば、傾斜部を介して幅方向に山頂部及び谷底部が交互に連続して波形状をなし、幅方向における端部に互いに異なる側に折り返された嵌合部(折返し部)を有するデッキプレートが知られている。
【0003】
デッキプレートは、例えば、所定の幅にスリットされコイル状に巻かれた帯状鋼板をアンコイラにより連続的にロール成形機に送り込み、順次、成形ロールにより曲げ加工をして所望の断面形状を有する成形ワーク(鋼板)を形成し、次いで、成形ワークを走間切断機の切断金型に挿入(通板)し、所定の長さに切断することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-132667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロール成形機により所定の形状を鋼板に付与する際に、例えば、鋼板の位置がロール成形機内で鋼板の幅方向においてずれて、一方の嵌合部が適切に成形されないことがある。この場合、嵌合部に不良が発生したデッキプレートについては、製造ラインの最後尾において製品として積み重ねられる際に作業者によって確認されることが多い。嵌合部に不良が確認された場合、作業者は、製造ラインを停止させるが、停止させるまでに不適切な嵌合部を有するデッキプレートが製造し続けられてしまうため、製品として出荷できないデッキプレートが量産されてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、適切に成形されていない嵌合部を発見する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る不良検出装置は、鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出装置であって、前記折曲げ部に対して上方で対向するように設けられて前記折曲げ部との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていると判定した場合、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る不良検出装置は、鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出装置であって、前記折曲げ部に対して上方で対向するように設けられて前記折曲げ部との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていないと判定した場合、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る不良検出装置の一態様において、前記製造ラインにおいて、前記測定部は、前記折曲げ部を成形するロール成形機と、前記鋼板を所定の長さにおいて切断する切断機と、の間に設けられている。
【0010】
また、本発明に係る不良検出装置の一態様において、前記測定部は、少なくとも前記製造ラインの稼働中に常に前記距離を測定する。
【0011】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る不良検出方法は、鋼板との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備える不良検出装置により、前記鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて前記平坦な部分に対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出方法であって、前記測定部によって、前記折曲げ部に対して上方で対向する位置で前記折曲げ部との前記距離を測定する測定工程と、前記判定部によって、前記測定工程において測定された前記距離が前記一の閾値を超えているかを判定する判定工程と、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていると判定された場合、前記判定部によって、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する信号送信工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る不良検出方法は、鋼板との距離を測定する測定部と、前記測定部によって測定された前記距離が一の閾値を超えているかを判定する判定部と、を備える不良検出装置により、前記鋼板からデッキプレートを製造する製造ラインにおいて、前記鋼板の幅方向における一端部に成形され、前記鋼板の平坦な部分に対して上方に所定の間隔をあけて前記平坦な部分に対向するように折り曲げられた折曲げ部の不良を検出する不良検出方法であって、前記測定部によって、前記折曲げ部に対して上方で対向する位置で前記折曲げ部との前記距離を測定する測定工程と、前記判定部によって、前記測定工程において測定された前記距離が前記一の閾値を超えているかを判定する判定工程と、前記距離が少なくとも前記一の閾値を超えていないと判定された場合、前記判定部によって、前記製造ラインを停止させる信号を外部に送信する信号送信工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る不良検出方法の一態様において、前記測定工程を、少なくとも前記製造ラインの稼働中に常に実施する。
【0014】
また、本発明に係る不良検出方法の一態様において、前記測定工程を、前記製造ラインにおいて前記折曲げ部を成形するロール成形機と、前記鋼板を所定の長さにおいて切断する切断機と、の間で実施する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切に成形されていない嵌合部を発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本実施の形態に係る不良検出装置の検査対象となるデッキプレートの斜視図である。
図1B図1のB-B線に沿ったデッキプレートの断面図である。
図2】デッキプレートを製造する製造ラインを概略的に示す図である。
図3】不良検出装置の構成を説明するためのブロック図である。
図4】不良状態の嵌合部に対する距離の測定工程を示す図である。
図5】変形例に係る不良検出装置の構成を説明するためのブロック図である。
図6】不良状態の嵌合部に対する距離の測定工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
図1Aは、本実施の形態に係る不良検出装置1の検査対象となるデッキプレート100の斜視図である。図1Bは、図1のB-B線に沿ったデッキプレート100の断面図である。デッキプレート100は、ロールフォーミング(ロール成形)することによって形成した波形鋼板である。デッキプレート100は、山頂部110と、谷底部120,130と、傾斜部140と、嵌合部(折返し部)150,160と、を有する。以下では、デッキプレート100が製造ラインにおいて搬送される搬送方向Fは、デッキプレート100の長さ方向Lに相当し、長さ方向Lに対して横に交差する方向を幅方向Wとする。
【0019】
山頂部110及び谷底部120,130は、長さ方向Lに延びる傾斜部140を介して互いに幅方向Wに連続し、デッキプレート100は波形状をなしている。デッキプレート100のプレート単体では、2つの山頂部110と、3つの谷底部120,130と、2組で一対の傾斜部140とからなり、幅方向Wに沿った断面において波形に形成されている。なお、デッキプレート100は、長さ方向Lの両端部においてエンドクローズ加工が施されていてもよい。
【0020】
山頂部110は、例えば、スラブにおいて支持梁と支持梁との間に架け渡された状態において、支持梁に対して離間して上側に位置する平坦に形成された部分であり、長さ方向Lに延在する板状の部分である。山頂部110は、溝111を有する。溝111は、谷底部120の側に向けて凹状に形成されている。溝111は、長さ方向Lに延在し、溝111が1つの場合には幅方向Wにおいて中央近傍に設けられている。
【0021】
谷底部(平坦部)120,130は、山頂部110に対して平行又は略平行であり、支持梁と支持梁との間に架け渡された状態において、支持梁に載置される平坦に形成された部分である。谷底部120,130は、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。谷底部120,130は、幅方向Wにおいて山頂部110とは重ならない。
【0022】
3つの谷底部120,130のうち、谷底部120は、幅方向Wにおいて谷底部130に挟まれており、デッキプレート100の中央部分に設けられている。幅方向Wにおいて谷底部120の両側には後述する傾斜部140が連続している。谷底部120は、谷底部130に対して幅方向Wにおいて広幅に形成されている。谷底部120は、幅方向Wにおいて中央又は略中央に設けられた複数のエンボス部121を有する。エンボス部121は、長さ方向Lに沿って等間隔に設けられ、山頂部110に向かって凸に形成されている。また、エンボス部121は、溝部として形成されていてもよく、溝部は、長さ方向Lに沿って延在し、山頂部110に向かって凸に形成されている。エンボス部121や溝部により、デッキプレート100の剛性が高まると共に形状が安定する。
【0023】
谷底部130は、デッキプレート100の幅方向Wにおける両端に設けられている。幅方向Wにおいて各谷底部130の谷底部120の側には、後述する傾斜部140が連続している。傾斜部140が連続している側とは反対の谷底部130の端部にはそれぞれ、後述する嵌合部150,160が設けられている。
【0024】
傾斜部140は、山頂部110と谷底部120,130とを連結する部分であり、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。傾斜部140は、幅方向Wにおいて山頂部110の両端部の側から斜めに谷底部120,130に向かって延びている。幅方向Wにおいて互いに隣り合う傾斜部140は、それぞれ異なる方向に山頂部110から互いに離間するように延びている。傾斜部140は、山頂部110及び谷底部120,130に対して所定の角度、例えば、鈍角を形成するように傾斜している。
【0025】
傾斜部140には複数のエンボス部141が形成されている。各エンボス部141は、長さ方向Lに沿って所定の間隔をあけて設けられている。エンボス部141は、傾斜部140が連続する谷底部120,130に向かって凸に形成されている。エンボス部141により、デッキプレート100の剛性が高まると共に形状が安定する。
【0026】
谷底部120,130と傾斜部140との間の移行部には膨出部142が形成されている。膨出部142は、一の山頂部110における一対の傾斜部140において互いに反対の側に突出した部分である。谷底部120を挟んで対向する一対の傾斜部140において、膨出部142は対向するように形成されており、互いに近づく方向に膨出している。また、谷底部130それぞれの側に形成された膨出部142は、谷底部120とは反対の側に膨出している。
【0027】
膨出部142と谷底部120,130との間には長さ方向Lに沿って延在する蟻溝143が形成されている。幅方向Wに沿った蟻溝143の断面は、湾曲するように形成されている。谷底部120を挟んで対向する一対の傾斜部140において、蟻溝143は、対向するように形成されており、互いに離れる方向、つまり、谷底部130の側に向かって湾曲している。また、谷底部130それぞれの側に形成された蟻溝143は、谷底部120の側に向かって湾曲している。
【0028】
嵌合部150,160は、各谷底部130に連続して設けられている。嵌合部150,160は、スラブを構築する際、幅方向Wに隣合うデッキプレート100同士の連結の用に供されている。具体的には、一のデッキプレート100の嵌合部150と、他のデッキプレート100の嵌合部160とが互いに嵌合することにより、2枚のデッキプレート100は、幅方向Wにおいて連結される。嵌合部150,160は、互いに異なる側に折り返されている。
【0029】
嵌合部150は、一方の谷底部130に設けられていて、後述する製造ライン200における搬送状態において上側に折り返されている。嵌合部150は、起立部位151と、フック部位152と、を有する。起立部位151は、傾斜部140から離れるように谷底部130から上方に斜めに延在している。フック部位152は、起立部位151の先端側に位置し、起立部位151から谷底部130と平行又は略平行に傾斜部140とは反対の側に延びている。フック部位152の先端は、下側にかつ起立部位151に向かって折り返されている。
【0030】
嵌合部160は、他方の谷底部130に設けられていて、後述する製造ライン200における搬送状態において上側に折り返されている。嵌合部160は、起立部位161と、フック部位162と、を有する。起立部位161は、傾斜部140から離れるように谷底部130から上方に斜めに延在している。フック部位162は、起立部位161の先端側に位置し、起立部位161から傾斜部140に向かって折り返されていて谷底部130に対向している。フック部位162は、起立部位161から斜め下方に、谷底部130に向かって傾斜している。
【0031】
次に、図2を用いて上記デッキプレート100を製造する製造ライン200について説明する。図2は、デッキプレート100を製造する製造ライン200を概略的に示す図である。製造ライン200は、アンコイラ210と、ロール成形設備(ロール成形機)220と、本実施の形態に係る不良検出装置1と、走間切断機(切断機)230と、送出しローラテーブル240と、を備える。
【0032】
アンコイラ210には、所定の幅にスリット加工された帯状の帯状鋼板1000が巻かれた鋼板コイルがセットされている。アンコイラ210は、製造ラインを稼働させることにより帯状鋼板をロール成形設備220に向かって送り出す。
【0033】
ロール成形設備220は、複数のロールスタンド221を有する。ロールスタンド221には所定のロールが支持されていて、ロール成形設備220に送られた帯状鋼板1000に、各ロールスタンド221において順次曲げ加工を施す。ロール成形設備220において、複数段にわたって曲げ加工を施された帯状鋼板1000から、山頂部110、谷底部120,130、傾斜部140及び嵌合部150,160が成形されて所定の断面形状をもったデッキプレート100の成形ワーク10Aが形成される。ここで「成形ワーク(鋼板)10A」とは、帯状鋼板1000と連続した状態にあり切断されてデッキプレート100となる前の中間製品である。なお、製造ライン200において最下流に配置されたロールスタンド221には、エアーブローノズル222が設けられている。エアーブローノズル222は、成形ワーク10Aの表面上に塗布された成形油を除去する。エアーブローノズル222は、特に嵌合部160に対向する位置に設けられていて、嵌合部160に塗布された成形油を吹き飛ばす。
【0034】
不良検出装置1は、搬送方向Fにおいてロール成形設備220の下流側で、走間切断機230の上流側に配置されている。不良検出装置1は、ロール成形設備220から搬出されてきた成形ワークAに成形されている嵌合部160が所定の形状に成形されているかを監視している。具体的には、不良検出装置1は、フック部位162が嵌合部160に成形されているかを監視しており、不良な嵌合部160が成形されていないか監視している。なお、「不良な嵌合部160」とは、例えば、ロール成形設備220から搬出されてきた成形ワーク10Aにおいて、嵌合部160におけるフック部位162が存在しない、又は、十分に折り返されていない状態を意味する。
【0035】
本実施の形態に係る不良検出装置1は、帯状鋼板1000からデッキプレート100を製造する製造ライン200において、帯状鋼板1000の幅方向Wにおける一端部に成形され、帯状鋼板1000の谷底部(平坦な部分)130に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた嵌合部(折曲げ部)160の不良を検出する不良検出装置1であって、嵌合部160に対して上方で対向するように設けられて嵌合部160との距離を測定する測定部10と、測定部10によって測定された距離D1が上限閾値(一の閾値)K1を超えているかを判定する判定部30と、を備え、判定部30は、距離D1が少なくとも上限閾値K1を超えていると判定した場合、製造ライン200を停止させる信号を外部装置(外部)300に送信することを特徴とする。以下、本実施の形態に係る不良検出装置1について具体的に説明する。
【0036】
図3は、不良検出装置1の構成を説明するためのブロック図である。不良検出装置1は、機能部として、測定部10と、記憶部20と、判定部30と、を有する。機能部のうち、記憶部20及び判定部30は、例えば、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)及びメモリを含むプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)によるプログラム処理によって実現される。なお、これらの機能部は、互いに機能に関して連結されていればよく、1つのユニットとして構成されていても、また、個々の機能部が他のユニットに含まれていてもよい。
【0037】
測定部10は、例えば、光電センサとして形成されていて、嵌合部160、例えば、フック部位162に対して上方で対向するように設けられている。測定部10は、例えば、フック部位162に対して発光素子11から照射される光が直交するように設けられている。なお、測定部10としてのセンサは、公知のものを使用することができる。
【0038】
測定部10は、光を常に照射する発光素子11と、光を受光する受光素子12と、を有する。測定部10は、例えば、嵌合部160において、起立部位161とフック部位162との間の丸味を帯びて形成されてR部(移行部)163(図4参照)までの距離を測定している。R部163は、発光素子11が嵌合部160におけるフック部位162の最も高い位置を含んでいる。
【0039】
測定部10の発光素子11は、R部163に光を照射するように設けられている。測定部10は、発光素子11から光を照射し、R部163において反射した光を受光素子12において受光し、受光した光を評価・演算し、距離(数値)に換算している。これにより、例えば、測定部10から成形ワーク10A、具体的にはフック部位162のR部163までの距離(間隔)D1が測定されている。測定された距離D1は、記憶部20に送信される。
【0040】
記憶部20は、不良検出装置1の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部20は、フラッシュメモリ及びROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。記憶部20に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する上限閾値K1及び測定結果(距離D1)等である。
【0041】
記憶部20は、測定部10から送信されてきた測定結果である距離D1を記憶しており、後述する判定部30に、上限閾値K1及び距離D1を送信する。上限閾値K1は、予め測定(設定)された、測定部10と、正常な、つまり、規格に適して成形されたフック部位162のR部163との間の距離を基準距離SDとし、この基準距離に基づいて決定されている。具体的には、基準距離よりも、例えば、嵌合部160において許容できる範囲(許容誤差の範囲)の最大値だけ長い距離が上限閾値K1として設定されている。
【0042】
判定部30は、記憶部20に格納されている上限閾値K1と、距離D1と、を比較して、成形ワーク10Aにおける嵌合部160、具体的には、フック部位162の不良状態を検出する機能部である。ここで「フック部位162の不良状態」とは、例えば、フック部位162の折り曲げが不十分、つまり、フック部位162の先端が傾斜部140に向かって十分に延びていない、規格に比べて短い状態のこと(図4実線参照)、また、フック部位162が谷底部130に向かって規格に比べて過度に接近している状態のことをいう。
【0043】
判定部30は、距離D1と上限閾値K1とを比較して、距離D1が上限閾値K1を超えてるかを判定する。距離D1と上限閾値K1との関係が「D1>K1」であると認識すると、嵌合部160、つまり、フック部位162が不良状態であると判定する。
【0044】
判定部30は、フック部位162が不良状態であると判定すると、製造ライン200、特にロール成形設備220を停止させる信号を、製造ライン200全体を制御する外部装置300に出力する。これにより、製造ライン200は、自動停止する。なお、判定部30は、製造ライン200の稼働中には常に、距離D1と上限閾値K1とを比較しており、受光素子12が所定の期間にわたって光を受光しない場合、つまり、測定結果である距離D1が更新されない場合、判定部30は、製造ライン200を停止させるNG信号を外部装置300に出力する。
【0045】
走間切断機230は、ロール成形設備220において所定の断面形状をもった成形ワーク10Aを幅方向Wに切断して所定の長さをもったデッキプレート100に個別化する。所定の長さに切断されたデッキプレート100は、送出しローラテーブル240を通じて下流側の、例えば、結束、出荷等の作業を行う領域に送られる。
【0046】
<不良検出装置1による判定>
不良検出装置1による不良検出方法について説明する。本発明に係る不良検出方法は、帯状鋼板1000との距離D1を測定する測定部10と、測定部10によって測定された距離D1が上限閾値(一の閾値)K1を超えているかを判定する判定部30と、を備える不良検出装置1により、帯状鋼板1000からデッキプレート100を製造する製造ライン200において、帯状鋼板1000の幅方向Wにおける一端部に成形され、帯状鋼板1000の谷底部(平坦な部分)130に対して上方に所定の間隔をあけて谷底部130に対向するように折り曲げられた嵌合部(折曲げ部)160の不良を検出する不良検出方法であって、測定部10によって、嵌合部160に対して上方で対向する位置で嵌合部160との距離D1を測定する測定工程と、判定部30によって、測定工程において測定された距離D1が上限閾値K1を超えているかを判定する判定工程と、距離D1が少なくとも上限閾値K1を超えていると判定された場合、判定部30によって、製造ライン200を停止させる信号を外部装置(外部)300に送信する信号送信工程と、を含むことを特徴とする。以下、本実施の形態に係る不良検出方法について具体的に説明する。
【0047】
図4は、不良状態の嵌合部160に対する距離D1の測定工程を示す図である。嵌合部160が正常に形成されている場合、成形ワーク10Aの嵌合部160に対して上方に設けられた不良検出装置1の測定部10の下側を成形ワーク10Aが通過すると、発光素子11から照射された光は、フック部位162のR部163に当たって反射する。反射した光は受光素子12によって受光され、不良検出装置1又は測定部10とフック部位162との距離D1を測定する(測定工程)。
【0048】
測定部10において測定された距離D1の測定結果(数値)は、記憶部20に送られて格納される。判定部30は、記憶部20に記憶されている距離D1及び上限閾値K1を読み込み、距離D1と上限閾値K1とを比較し、両者の関係が「D1>K1」である否かを判定する(判定工程)。例えば、嵌合部160が正常に成形されている場合(図4破線参照)、測定部10によって測定される距離は、基準距離SDに一致又は略一致し、上限閾値K1を下回っており、判定部30は「D1≦K1」であると判定する。この場合、製造ライン200の稼働は維持される。
【0049】
これに対して、例えば、フック部位162が短く嵌合部160に不良がある場合(図4実線参照)、測定工程において、発光素子11から照射された光は、フック部位162のR部163ではなく、例えば、谷底部130に当たって反射することになる。反射した光は受光素子12によって受光され、不良検出装置1又測定部10と谷底部130との距離D1を測定している。
【0050】
この場合、測定部10によって測定される距離D1は、上限閾値K1を上回っており、判定部30は「D1>K1」であると判定し、製造ライン200の特にロール成形設備220を停止させるNG信号を外部装置300に対して送信する(信号送信工程)。これにより、製造ライン200の稼働は停止する。
【0051】
以上のような不良検出装置1を用いた不良検出方法によれば、嵌合部160の不良状態が検出されると、製造ライン200を停止させることができるので、フック部位162に不良を有するデッキプレート100の多量生産を抑制することができる。
【0052】
さらに、不良検出装置1は、ロール成形設備220と走間切断機230との間に設けられているので、距離D1の測定工程は、安定した状態において実施することができる。具体的には、成形ワーク10Aは、ロール成形設備220におけるロールと、走間切断機230における金型との間で拘束されており、成形ワーク10Aの上下、左右の変動がなく、嵌合部160の位置が安定した(変動しない)状態において搬送されていく。例えば、走間切断機230の下流側では、成形ワーク10Aからデッキプレート100が切断されて個別化されるため、嵌合部160の位置が変動してしまうため距離D1の測定には適していない。
【0053】
さらに、成形ワーク10Aは、測定部10により常に監視されているので、不良状態にある嵌合部160を早期に発見することができる。
【0054】
さらに、測定部10の測定対象となる嵌合部160は、製造ライン200において測定部10の上流側に設けられているロール成形設備220において成形油が除去された部分である。そのため、測定部10による安定した検出が可能になる。
【0055】
次に、変形例に係る不良検出装置1Aについて説明する。変形例に係る不良検出装置1Aは、帯状鋼板1000からデッキプレート100を製造する製造ライン200において、帯状鋼板1000の幅方向Wにおける一端部に成形され、帯状鋼板1000の谷底部(平坦な部分)130に対して上方に所定の間隔をあけて対向するように折り曲げられた嵌合部(折曲げ部)160の不良を検出する不良検出装置1Aであって、嵌合部160に対して上方で対向するように設けられて嵌合部160との距離を測定する測定部10と、測定部10によって測定された距離D2が上限閾値(一の閾値)K2を超えているかを判定する判定部30と、を備え、判定部30は、距離D2が少なくとも上限閾値K2を超えていないと判定した場合、製造ライン200を停止させる信号を外部装置(外部)300に送信することを特徴とする。
【0056】
図5は、変形例に係る不良検出装置1Aの構成を説明するためのブロック図である。図6は、不良状態の嵌合部160に対する距離D2の測定工程を示す図である。なお、以下の変形例に係る不良検出装置1Aの説明において、不良検出装置1と同じ構成についてはその説明を省略する。
【0057】
不良検出装置1Aは、機能部として、測定部10と、記憶部20と、判定部30と、を有する。記憶部20は、不良検出装置1Aの動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部20は、フラッシュメモリ及びROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。記憶部20に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する下限閾値K2及び測定結果(距離D2)等である。
【0058】
記憶部20は、測定部10から送信されてきた測定結果である距離D2を記憶しており、後述する判定部30に、下限閾値K2及び距離D2を送信する。下限閾値K2は、予め測定(設定)された、測定部10と、正常な、つまり、規格に適して成形されたフック部位162のR部163との間の距離を基準距離SDとし、この基準距離SDに基づいて決定されている。具体的には、基準距離SDに対して、例えば、嵌合部160において許容できる範囲(許容誤差の範囲)の最大値だけ短い距離が下限閾値K2として設定されている。
【0059】
判定部30は、記憶部20に格納されている下限閾値K2と距離D2と、を比較して、成形ワーク10Aにおける嵌合部160、具体的には、フック部位162の不良状態を検出する機能部である。ここで「フック部位162の不良状態」とは、フック部位162の折り曲げが不十分、例えば、フック部位162の先端が谷底部130に向かっておらず上方を向いている状態のこと(図6参照)をいう。
【0060】
変形例に係る不良検出方法は、帯状鋼板1000との距離D2を測定する測定部10と、測定部10によって測定された距離D2が下限閾値(一の閾値)K2を超えているかを判定する判定部30と、を備える不良検出装置1Aにより、帯状鋼板1000からデッキプレート100を製造する製造ライン200において、帯状鋼板1000の幅方向Wにおける一端部に成形され、帯状鋼板1000の谷底部(平坦な部分)130に対して上方に所定の間隔をあけて谷底部130に対向するように折り曲げられた嵌合部(折曲げ部)160の不良を検出する不良検出方法であって、測定部10によって、嵌合部160に対して上方で対向する位置で嵌合部160との距離D2を測定する測定工程と、判定部30によって、測定工程において測定された距離D2が下限閾値K2を超えているかを判定する判定工程と、距離D2が少なくとも上限閾値K2を超えていないと判定された場合、判定部30によって、製造ライン200を停止させる信号を外部装置(外部)300に送信する信号送信工程と、を含むことを特徴とする。以下、変形例に係る不良検出方法について具体的に説明する。
【0061】
不良検出装置1Aにおける判定部30は、距離D2と下限閾値K2とを比較して、距離D2が下限閾値K2に達しているかを判定する。距離D2と下限閾値K2との関係が「D2<K2」であると認識すると、判定部30は、嵌合部160、つまり、フック部位162が不良状態であると判定する。例えば、フック部位162が谷底部130とは反対の側に上向いていて嵌合部160に不良がある場合(図6参照)、測定工程において、発光素子11から照射された光は、フック部位162のR部163ではなく、例えば、フック部位162の先端部に当たって反射することになる。反射した光は受光素子12によって受光され、不良検出装置1A又測定部10とフック部位162の先端部との距離D2を測定している。
【0062】
この場合、測定部10によって測定される距離D2は、下限閾値K2を下回っており、判定部30は「D2<K2」であると判定し、製造ライン200の特にロール成形設備220を停止させるNG信号を外部装置300に対して送信する(信号送信工程)。これにより、製造ライン200の稼働は停止する。
【0063】
以上のような不良検出装置1Aによれば、不良検出装置1と少なくとも同等の効果を奏することができる。
【0064】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0065】
例えば、上記実施の形態における測定部10には上限閾値K1、上記変形例に係る不良検出装置1Aにおける測定部10には下限閾値K2がそれぞれ記憶されていたが、測定部10に上限閾値K1及び下限閾値K2の両方の閾値が記憶されていてもよい。この場合、測定された距離が上限閾値K1と下限閾値K2との間にあれば、判定部30によって正常な嵌合部160であると認識される。上限閾値K1及び下限閾値K2を有する不良検出装置によれば、嵌合部160の種々異なる不良状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,1A・・・不良検出装置
10・・・測定部、20・・・記憶部、30・・・判定部
100・・・デッキプレート、130・・・谷底部(平坦な部分)、160・・・嵌合部(折曲げ部)
200・・・製造ライン
1000・・・帯状鋼板(鋼板)
K1・・・上限閾値(一の閾値)、K2・・・下限閾値(一の閾値)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6