(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145751
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】嵌合具および嵌合具付袋体
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20241004BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058235
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
(72)【発明者】
【氏名】河田 光平
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
【Fターム(参考)】
3B098AA03
3B098AB03
3B098AB07
3B098BA09
3B098BB02
3B098CA03
3B098EB02
3B098EC06
3B098FA15
3E064AA05
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA29
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC18
3E064HN18
(57)【要約】
【課題】ポイントシール性が良好であり、外観不良を抑制することができる嵌合具および嵌合具付袋体を提供する。
【解決手段】一対の帯状の第1嵌合部材10および第2嵌合部材20を備えた嵌合具1であって、第1嵌合部材10が、帯状の第1基材11と、第1基材11の長手方向に沿って設けられた雄側嵌合部12と、を備え、第2嵌合部材20が、帯状の第2基材21と、第2基材21の長手方向に沿って設けられた雌側嵌合部22と、を備え、雌側嵌合部22が、雄側嵌合部12と着脱自在に嵌合し、雄側嵌合部12の長手方向と垂直な断面積と雌側嵌合部22の長手方向と垂直な断面積の合計が0.7mm
2以上1.7mm
2以下である、嵌合具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の帯状の第1嵌合部材および第2嵌合部材を備えた嵌合具であって、
前記第1嵌合部材が、帯状の第1基材と、前記第1基材の長手方向に沿って設けられた雄側嵌合部と、を備え、
前記第2嵌合部材が、帯状の第2基材と、前記第2基材の長手方向に沿って設けられた雌側嵌合部と、を備え、
前記雌側嵌合部が、前記雄側嵌合部と着脱自在に嵌合し、
前記雄側嵌合部の長手方向と垂直な断面積と前記雌側嵌合部の長手方向と垂直な断面積の合計が0.7mm2以上1.7mm2以下である、嵌合具。
【請求項2】
前記雄側嵌合部の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と前記雌側嵌合部の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量との合計が0.08J以上0.16J以下である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項3】
引張弾性率が80MPa以上である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項4】
前記雄側嵌合部および前記雌側嵌合部のポイントシール時の温度であるクラッシュ温度が187℃未満である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項5】
前記嵌合具を内面が直鎖状低密度ポリエチレンで構成されるフィルムに取り付けた袋本体の剥離強度試験において、前記フィルムからの前記嵌合具の剥離強度が10N/6.0mmとなる温度であるヒートシール時の温度Thが130℃以下である、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記嵌合具が前記袋本体の内面に取り付けられている、嵌合具付袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具および嵌合具付袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に封じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付袋体が広く用いられている。
【0003】
袋本体に嵌合具を溶着し、製袋する際、袋本体の側面では、袋本体と共に嵌合具がサイドシールされる。その際、嵌合具の突起が原因で、袋本体にピンホールが発生したり、皴や変形が発生したりしやすい。そのため、嵌合具付袋体の製造では、ポイントシールによって嵌合部(爪部)の突起を押し潰してから、袋本体がサイドシールされて製袋される。ポイントシール時の温度である、クラッシュ温度が低ければ、ポイントシール時に、袋本体に外観不良が発生しにくく、仕上がりが良好となる。また、低いクラッシュ温度であっても、ポイントシールに要する時間が長ければ、製袋時間が長くなり生産効率が低下する。そのため、低いクラッシュ温度で、かつ短時間でポイントシールを出来ることが求められる。
【0004】
また、通常、嵌合具は、嵌合強度を調整しやすい観点から、嵌合部の大きさを設計するが、嵌合部の断面積はポイントシール性にも影響を及ぼす。
【0005】
一方、ポイントシール性に優れる嵌合具を提供するために、特定の物性を有する樹脂を用いることが知られている。ポリプロピレン樹脂を用いた嵌合具において、嵌合具と袋本体を構成するフィルムとの溶着時間、および嵌合部を押し潰すために要する時間を短縮するために、所定のメルトフローレート(MFR)や、融点を有するポリプロピレン樹脂を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
サイドシール部分でのポイントシール工程を短縮または省略するために、120℃において所定の融解エンタルピーを有するポリプロピレン樹脂を用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-168382号公報
【特許文献2】特許第7212992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、嵌合具を配合する樹脂の物性にしか着目しておらず、嵌合部の断面積とポイントシール性の関係については考慮されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、嵌合部の断面積とポイントシール性の関係に着目し、ポイントシール性が良好であり、外観不良を抑制することができる嵌合具、およびその嵌合具を備えた嵌合具付袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]一対の帯状の第1嵌合部材および第2嵌合部材を備えた嵌合具であって、
前記第1嵌合部材が、帯状の第1基材と、前記第1基材の長手方向に沿って設けられた雄側嵌合部と、を備え、
前記第2嵌合部材が、帯状の第2基材と、前記第2基材に長手方向の沿って設けられた雌側嵌合部と、を備え、
前記雌側嵌合部が、前記雄側嵌合部と着脱自在に嵌合し、
前記雄側嵌合部の長手方向と垂直な断面積と前記雌側嵌合部の長手方向と垂直な断面積の合計が0.7mm2以上1.7mm2以下である、嵌合具。
[2]前記雄側嵌合部の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と前記雌側嵌合部の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量との合計が0.08J以上0.16J以下である、[1]に記載の嵌合具。
[3]引張弾性率が80MPa以上である、[1]に記載の嵌合具。
[4]前記雄側嵌合部および前記雌側嵌合部のポイントシール時の温度であるクラッシュ温度が187℃未満である、[1]に記載の嵌合具。
[5]前記嵌合具を内面が直鎖状低密度ポリエチレンで構成されるフィルムに取り付けた袋本体の剥離強度試験において、前記フィルムからの前記嵌合具の剥離強度が10N/6.0mmとなる温度であるヒートシール時の温度Thが130℃以下である、[1]に記載の嵌合具。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記嵌合具が前記袋本体の内面に取り付けられている、嵌合具付袋体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポイントシール性が良好で、低い温度でポイントシールした場合においても製袋時の袋本体の外観不良を抑制することができる嵌合具、およびその嵌合具を備えた嵌合具付袋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る嵌合具を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-IIにおける矢視断面図である。
【
図3】第2嵌合部材の雌側嵌合部に対して第1嵌合部材の雄側嵌合部が嵌合している状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体を開口した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[嵌合具]
以下、本発明の一実施形態に係る嵌合具について、一例を示し、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る嵌合具を示す斜視図である。
図2は、
図1のII-IIにおける矢視断面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の嵌合具1は、一対の帯状の第1嵌合部材10および第2嵌合部材20を備える。
第1嵌合部材10は、帯状の第1基材11と、第1基材11の一方の面11aの長手方向に沿って設けられた雄側嵌合部(爪部)12とを備える。
第2嵌合部材20は、帯状の第2基材21と、第2基材21の一方の面21aの長手方向に沿って設けられた雌側嵌合部(爪部)22とを備える。
【0015】
雄側嵌合部12は、第1基材11における第2基材21との対向面である一方の面11aから立ち上がる幹部12aと、幹部12aの先端部に設けられ、幹部12aよりも大きい断面略半円形状の頭部12bとを備える。
雌側嵌合部22は、第2基材21における第1基材11との対向面である一方の面21aから断面円弧状に立ち上がる一対のアーム部22a,22bを備え、それらアーム部22a,22bの内側に凹部22cが形成されている。
雄側嵌合部12と雌側嵌合部22は、雄側嵌合部12の頭部12bが雌側嵌合部22の凹部22cに嵌まることにより、着脱自在に嵌合する。
なお、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の態様は、着脱自在に嵌合するものであればよく、
図1および
図2に示す態様には限定されない。
【0016】
図2に示すように、第1基材11は、基材層13と、基材層13の雄側嵌合部12および雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層14とを有する。第1基材11は、基材層13とシール層14の間に設けられた中間層を備えていてもよく、シール層14を設けず基材層13のみの単層でもよい。
【0017】
基材層13を形成する材料としては、特に限定されず、公知の嵌合具の基材に使用されるものが使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)等を例示できる。なかでも、剛性と柔軟性のバランスの点から、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にLDPEおよびLLDPEの少なくとも1種類を含むことがより好ましい。基材層を形成する材料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
シール層14を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、オレフィン系エラストマ、スチレン系エラストマ、酸変性オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエステル樹脂を例示できる。なかでも、柔軟性および低温シール性の点から、LLDPEが好ましい。シール層を形成する材料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
中間層を形成する材料としては、特に限定されず、公知の嵌合具の基材に使用されるものが使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)等を例示できる。なかでも、嵌合具が充分な剛性を有するため、ポリプロピレン(PP)や、密度が930kg/m3以上の樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましい。
【0020】
基材層13、シール層14および中間層には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
【0021】
第1基材11の幅A1は、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。第1基材11の幅A1は、柔軟性に優れ、かつ取り扱いやすく、流通および保管時の嵌合具の変形が起こりにくいことから60mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましい。第1基材11の幅A1の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、3mm以上40mm以下が好ましい。
【0022】
第1基材11の厚さは、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、0.1mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましい。第1基材11の厚さは、柔軟性に優れ、取り扱いやすいことから、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。第1基材11の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、0.1mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0023】
基材層13の厚さは、充分な剛性を有することから、0.01mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましい。基材層13の厚さは、柔軟性に優れ取り扱いやすいことから、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。基材層13の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、0.01mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0024】
シール層14の厚さは、袋本体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましい。シール層14の厚さは、柔軟性に優れ取り扱いやすいことから、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。シール層14の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、0.02mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0025】
中間層の厚さは、充分な剛性を有することから、0.02mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。中間層の厚さは、良好なポイントシール性を有することから、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。中間層の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。
【0026】
第2基材21は、第1基材11と同様の構成であり、基材層23と、基材層23の雄側嵌合部12および雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層24とを有する。第2基材21は、基材層23とシール層24の間に設けられた中間層を備えていてもよく、シール層14を設けず基材層13のみの単層でもよい。
【0027】
基材層23、シール層24および中間層を形成する材料としては、特に限定されず、基材層13、シール層14および中間層を形成する材料として例示したものと同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。
【0028】
基材層23、シール層24および中間層には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
基材層13、シール層14および中間層を形成する材料と、基材層23、シール層24および中間層を形成する材料とは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
第2基材21の好ましい幅A2は、第1基材11の好ましい幅A1と同様である。第1基材11の幅A1と第2基材21の幅A2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
第2基材21、基材層23、シール層24および中間層の好ましい厚さは、第1基材11、基材層13、シール層14および中間層の好ましい厚さと同様である。第1基材11、基材層13、シール層14および中間層の厚さと、第2基材21、基材層23、シール層24および中間層の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
本実施形態の嵌合具1では、嵌合具1を製袋して嵌合具付袋体とした場合の開口部側から開くときの嵌合強度は、3N以上25N以下が好ましく、5N以上25N以下がより好ましく、7N以上20N以下がさらに好ましい。一方、嵌合具1を製袋して嵌合具付袋体とした場合の内容物側から開くときの嵌合強度は、30N以上90N以下が好ましく、35N以上80N以下がより好ましく、40N以上60N以下がさらに好ましい。嵌合強度が上記範囲内であれば、前記開口側から開けやすく、前記内容物側からは密閉性が高い嵌合具1を提供できる。
なお、嵌合強度は、以下の方法で測定される。第1嵌合部材10および第2嵌合部材20を長さ方向に50mm分切り出した試験片について、引張試験機を用いて第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを引張速度50mm/分で引っ張り、測定される強度の最大値を嵌合強度とした。
【0031】
本実施形態の嵌合具1では、雄側嵌合部12の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S1と雌側嵌合部22の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S2の合計(S1+S2)は、0.7mm
2以上1.7mm
2以下であり、0.9mm
2以上1.6mm
2以下が好ましく、1.0mm
2以上1.5mm
2以下がより好ましい。前記S1+S2が前記下限値未満では、雄側嵌合部12と雌側嵌合部22が小さくなり過ぎて、十分な嵌合強度が得られないことがある。前記S1+S2が前記上限値を超えると、雄側嵌合部12と雌側嵌合部22をポイントシールする際に必要な熱量が大きくなる。すなわち、低温でポイントシールを行おうとした場合、サイドシールがうまくいかず、袋体に外観不良が発生したり、ポイントシールに時間を必要として嵌合具付袋体の生産効率が低下する。なお、S1は
図3において、第1基材11と雄側嵌合部12の境界を示す破線と、雄側嵌合部12とで囲まれた領域であり、S2は
図3において、第2基材21と雌側嵌合部22の境界を示す破線と、雌側嵌合部22とで囲まれた領域である。すなわち、S1及びS2にはそれぞれ第1基材11及び第2基材21の面積は含まない。
【0032】
雄側嵌合部12の爪高さ(
図3に示すH1)は、0.80mm以上1.10mm以下が好ましく、0.85mm以上1.00mm以下がより好ましく、0.90mm以上0.98mm以下がさらに好ましい。雄側嵌合部12の爪幅(
図3に示すW1)は、0.65mm以上1.00mm以下が好ましく、0.68mm以上0.80mm以下がより好ましく、0.70mm以上0.77mm以下がさらに好ましい。
【0033】
雌側嵌合部22の爪高さ(
図3に示すH2)は、1.20mm以上1.45mm以下が好ましく、1.25mm以上1.43mm以下がより好ましく、1.30mm以上1.40mm以下がさらに好ましい。雌側嵌合部22の爪幅(
図3に示すW2)は、1.20mm以上1.65mm以下が好ましく、1.25mm以上1.63mm以下がより好ましく、1.30mm以上1.60mm以下がさらに好ましい。
【0034】
雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の爪高さと爪幅が上記範囲内であれば、雄側嵌合部12の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S1と雌側嵌合部22の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S2の合計(S1+S2)が所定範囲となり、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22のポイントシール性に優れる。また、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の爪高さと爪幅を所定範囲にすることで、雄側嵌合部12が第1基材11にしっかりと支持され、さらに雄側嵌合部12と雌側嵌合部22を確実に嵌合することができる。よって、嵌合強度と耐久性にも優れる。
【0035】
本実施形態の嵌合具1では、雄側嵌合部12の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と雌側嵌合部22の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量との合計は、0.08J以上0.16J以下が好ましく、0.09J以上0.15J以下がより好ましく、0.09J以上0.13J以下がさらに好ましい。前記融解熱量の合計が前記下限値未満であると、嵌合部が柔軟になり過ぎてしまい、充分な嵌合強度が得られないおそれがある。前記融解熱量の合計が前記上限値を超えると、低温で雄側嵌合部12および雌側嵌合部22のポイントシールを行おうとした場合、サイドシールがうまくいかず、袋体に外観不良が発生する。また、ポイントシールを行うのに時間や電力がかかる。
【0036】
雄側嵌合部12の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と雌側嵌合部22の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量は、下記のようにして測定することができる。
嵌合具1の断面のマイクロスコープ画像から、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の断面積の合計(S1+S2)を計測する。次に、断面積の合計(S1+S2)、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の樹脂密度、および厚さ1mmの積を算出し、厚さ1mmにおける雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の樹脂量(g)を求める。
また、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解ピークから、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の融解熱量(J/g)を求める。
厚さ1mmにおける雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の樹脂量(g)と、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の融解熱量(J/g)の積から、雄側嵌合部12の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と雌側嵌合部22の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量(J)の合計を算出する。なお、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の樹脂密度は基材層の密度である。基材層が2種以上の樹脂から構成される場合は、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)から算出する。具体的には、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)の積を合計した値である。
【0037】
本実施形態の嵌合具1は、引張弾性率が80MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、105MPa以上であることがさらに好ましい。前記引張弾性率が前記下限値以上であると、剛直性があり、耐久性に優れる。
【0038】
嵌合具1の引張弾性率は、下記のようにして測定することができる。
嵌合具の第1嵌合部材10を長手方向に長さ120mmの試験片を切り出し、試験片とした。引張試験機のチャック間を100mmに設定し、引張速度500mm/分の条件で伸長量が1.0mmになるまで引張り、その間の引張荷重を測定した。測定された引張荷重を試験片の幅と厚さから求めた断面積で除して応力σ(MPa)を求める。さらに、伸長量△L(mm)をチャック間距離L(mm)で除してひずみεを求め、応力σ(MPa)をひずみεで除して引張弾性率E(MPa)を求める。
【0039】
本実施形態の嵌合具1と袋本体を構成するフィルムは下記のように製袋される。
自動製袋機を用いて、フィルムの内面に嵌合具1を取り付ける。製袋機内を積層フィルムが進行する時、各シール工程を行う装置バーがプレスするごとに、ヒートシール、ポイントシール、サイドシールが一連の順番で行われる。また、シール工程(ヒートシール、ポイントシール、サイドシール)のシール時間がそれぞれ0.5秒、プレスしていない時にフィルムが進む時間である待機時間が0.5秒、待機時間の速度である加速度が1.0G 、フィルムの送り長が120mmとなるように設定する。
各工程では、まず、積層フィルムと嵌合具の第1基材及び第2基材とを、各嵌合具に応じた温度でヒートシールを行い、その後冷却プレスする。続いて、雄側嵌合部と雌側嵌合部の積層フィルムの両端に溶着される部分を、各嵌合具に応じた温度でポイントシールを2回連続して行い、突起を押しつぶす。次にサイドシールを140℃で2回連続して行い、サイドの冷却プレスを2回連続して行うことで、嵌合具1と袋本体を構成するフィルムに製袋される。
【0040】
本実施形態の嵌合具1は、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22のポイントシール時の温度であるクラッシュ温度が187℃未満であることが好ましく、185℃以下であることがより好ましく、183℃以下であることがさらに好ましい。クラッシュ温度が前記上限値未満であると、ポイントシール性が良好なため、低温で雄側嵌合部12および雌側嵌合部22をポイントシールした場合においても、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の突起を充分に押しつぶすことができ、サイドシールがしやすく、製袋後の袋本体の外観が良好である(皴やピンホールが発生しない)。さらに、低温、短時間でポイントシールが可能となるため、嵌合具付袋体の生産効率も高くなる。
【0041】
嵌合具1のクラッシュ温度は、下記のようにして定義される。
ポイントシール(雄側嵌合部12および雌側嵌合部22を袋本体の両側へサイドシールする際、予め雄側嵌合部12および雌側嵌合部22の突起を押し潰す)が充分に行われ、嵌合具1の突起が原因となって袋本体のピンホールや皴等の外観不良が発生しない温度である。実際の製品を製袋する際にポイントシールを行う温度である。
【0042】
本実施形態の嵌合具1は、ヒートシール温度が180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。ヒートシール温度が前記上限値以下であると、製袋時に嵌合具1の第1基材11および第2基材21を袋本体にヒートシールする際の温度が低く、袋本体の外観が良好であり、仕上がりが綺麗である。
【0043】
ヒートシール温度は、下記のようにして定義される。
嵌合具1の第1基材11及び第2基材21を、袋本体を構成するフィルムへ熱溶着または熱融着(ヒートシール)する際に、低温、短時間で熱溶着が行われ、袋本体に皴等の外観不良が発生しない温度である。実際の製品を製袋する際にヒートシールを行う温度である。
【0044】
さらに、袋体を構成するフィルム(内面が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で構成されるフィルム)に嵌合具1を取り付けた袋本体の剥離強度試験において、前記フィルムからの前記嵌合具1の剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなるヒートシール時の温度をThとした。なお、前述したヒートシール温度は、袋本体の外観が良好となるように実際に製袋する際の温度のため、剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなるヒートシール時の温度Thよりも高い温度に設定されている。
【0045】
本実施形態の嵌合具1は、Thが90℃以上130℃以下が好ましく、95℃以上125℃以下がより好ましく、100℃以上120℃以下が好ましい。Thが前記上限値の範囲であると、製袋時に嵌合具1の第1基材11および第2基材21を袋本体に低温でヒートシールすることが可能であり、さらに嵌合具1とフィルムが充分に溶着されているため、嵌合具1がフィルムから外れたり、嵌合具1とフィルムの間に隙間が生じない。
【0046】
嵌合具1のThや融着強度は、下記のようにして測定することができる。
自動製袋機を用いて、ナイロン/LLDPEの積層フィルムのLLDPEで構成される面に嵌合具1をヒートシールする。シール時間が0.5秒、プレスしていない時にフィルムが進む時間である待機時間が0.5秒、待機時間の速度である加速度が1.0G 、フィルムの送り長が120mmとなるように設定する。なお、ヒートシールを温度100℃~140℃で5℃刻みで変化させてそれぞれの温度における嵌合具付きフィルムを得る。
次に、嵌合具付きフィルムの嵌合具1の第1嵌合部材10から雄側嵌合部12を切除し、第1基材11から幅6mmの試料片を切り出し、試験片の第1基材11とフィルムを10mm剥離させる。ストログラフ引張試験機を用いて、第1基材11とフィルムとの剥離部分をそれぞれチャックに挟み、引張速度200mm/minでT型剥離試験を行い、剥離強度(ヒートシール強度)を測定する。
また、剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなる温度Thを測定する場合は、温度100℃~140℃でそれぞれヒートシールした試験片において、ヒートシール時の温度と剥離強度(ヒートシール強度)のグラフを作成し、剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなる温度Thを算出する。
【0047】
本実施形態の嵌合具1によれば、雄側嵌合部12の長手方向と垂直な断面積と雌側嵌合部22の長手方向と垂直な断面積の合計が0.7mm2以上1.7mm2以下であるため、雄側嵌合部12および雌側嵌合部22のポイントシール性が良好であり、低い温度で雄側嵌合部12および雌側嵌合部22をポイントシールした場合であっても、袋体における外観不良を抑制することができる。また、クラッシュ温度を低く抑えることができるため、ポイントシールに要する電気エネルギーを削減することができる。
【0048】
(製造方法)
嵌合具1の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を利用できる。
例えば、基材層、シール層、中間層を形成するための樹脂材料を溶融混練等によってそれぞれ調製し、多層構成の第1嵌合部材または第2嵌合部材を形成するための複合異形ダイを備えた押出機を用いて共押出しする方法を例示できる。
【0049】
材料の混合方法としては、スーパーミキサ、ヘンシェルミキサ等で乾式混合する方法が挙げられる。
溶融混練方法としては、原料を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機に供給して溶融混練する方法が挙げられる。
成形方法としては、押出成形法、射出成形法、インフレーション成形法、真空成形法等が挙げられる。
【0050】
[嵌合具付袋体]
本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体は、本発明の一実施形態に係る嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備える嵌合具付袋体である。本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体は、本発明の一実施形態に係る嵌合具を備える以外は、公知の態様を採用できる。
以下、実施形態の一例の嵌合具付袋体について説明する。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体を示す正面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る嵌合具付袋体を開口した状態を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の嵌合具付袋体100(以下、単に「袋体100」ともいう。)は、内容物を収容する袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に取り付けられた嵌合具1とを備える。
【0052】
袋本体50は、正面からの視野において矩形を呈する。嵌合具1は、袋本体50の上部側の内面において、袋本体50の短手方向に伸びて設けられている。なお、袋本体50の形状は矩形には限定されない。
【0053】
袋本体50は、図示しない内容物を封入した状態で密封されている。袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54を重ね合わせ、四方の周縁部56を全てヒートシールすることで得られる。周縁部56においては、第1のフィルム材52および第2のフィルム材54と共に、嵌合具1の第1基材11における雄側嵌合部12が設けられた面、および第2基材21における雌側嵌合部22が設けられた面とは反対側の面がヒートシールされている。
【0054】
第1のフィルム材52および第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具1を溶着できるものであればよく、内面側からシーラント層と基材層を少なくとも有する積層フィルムが好ましい。
【0055】
積層フィルムが有する基材層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
積層フィルムが有するシーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
積層フィルムには、バリア層等の機能層を設けてもよい。また、環境配慮の面から合成樹脂とセルロースを混合してもよい。
また、第1のフィルム材52および第2のフィルム材54は、単層フィルムであってもよい。
【0056】
袋本体50は、嵌合具1よりも上部の側に、嵌合具1に沿って切断補助線58が設けられている。
切断補助線58は、袋本体50の切断を補助するための加工が線状に施された部分である。切断補助線58としては、例えば、第1のフィルム材52および第2のフィルム材54における切断補助線58の部分に設けられた弱化線が挙げられる。弱化線は、フィルム材に周囲と比べて薄肉化した部分を設けることで形成することができる。その他、弱化線は、ミシン目や、列状に形成された細孔によっても形成することができる。
また、切断補助線58は、弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
【0057】
周縁部56における切断補助線58の端部には、ノッチ60が形成されている。ノッチ60の形状は、特に限定されず、三角状または半円形状の切り欠きを採用することができる。また、ノッチ60は、周縁部56に設けられた切込みであってもよい。
【0058】
図5は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。袋体100は、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することにより、上部に開口部62を形成して開封することができる。
袋体100に形成した開口部62は、嵌合具1の第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを着脱することで、繰り返し開閉できる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例0060】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[原料]
実施例1~5および比較例1、2で使用した原料を、以下の表1~表5に示す。表1は実施例1、実施例2、表2は実施例3、比較例2、表3は実施例4、表4は実施例5、表5は比較例1に該当する。MFRは、JIS K 7210-1に準拠して、温度:190℃、荷重:2.16kgの条件で測定される値である。密度は、JIS K7112に準拠して測定される値である。各層の密度は、各層が2種以上の樹脂から構成される場合は、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)の合計から算出される。すなわち、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)の積を合計した値である。融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定される値である。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
[評価方法]
(クラッシュ温度)
クラッシュ温度を、下記のようにして設定した。
ポイントシール(雄側嵌合部および雌側嵌合部の両側へサイドシールする際、予め雄側嵌合部および雌側嵌合部の突起を押し潰す)が充分に行われ、嵌合具の突起が原因となる袋本体のピンホールや皴等の外観不良が発生しない温度とした。実際の製品を製袋する際にポイントシールを行う温度である。
【0068】
(ヒートシール温度)
ヒートシール温度を、下記のようにして設定した。
ヒートシール温度は、嵌合具の第1基材及び第2基材を、袋本体を構成するフィルム(内面がLLDPEで構成されるフィルム)へ熱溶着または熱融着(ヒートシール)する際に、低温、短時間で熱溶着が行われ、袋本体に皴等の外観不良が発生しない温度である。実際の製品を製袋する際にポイントシールを行う温度である。
【0069】
(嵌合強度)
嵌合具の内容物側と開口部側にて嵌合強度を、下記のようにして測定した。
第1嵌合部材および第2嵌合部材を長さ方向に50mm分切り出した試験片について、引張試験機を用いて第1嵌合部材と第2嵌合部材とを引張速度50mm/分で引っ張り、測定される強度の最大値を嵌合強度とした。
【0070】
(雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の断面積)
雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の断面積を、下記のようにして測定した。
嵌合具の断面のマイクロスコープ画像から、雄側嵌合部の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S1と雌側嵌合部の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S2の合計(S1+S2)を計測した。
【0071】
(雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の樹脂量)
雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の樹脂量を、下記のようにして測定した。
雄側嵌合部の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S1と雌側嵌合部の長手方向と垂直な断面の面積(断面積)S2の合計(S1+S2)、雄側嵌合部および雌側嵌合部の樹脂密度、並びに雄側嵌合部および雌側嵌合部の厚さ1mmの積を算出した。これにより、厚さ1mmにおける雄側嵌合部および雌側嵌合部の樹脂量(g)を求めた。なお、雄側嵌合部および雌側嵌合部の樹脂密度は基材層の密度である。基材層が2種以上の樹脂から構成される場合は、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)の合計から算出した。具体的には、各構成樹脂の密度と各層における比率(%)の積を合計した値である。
【0072】
(雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の単位融解熱量)
雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の単位融解熱量を、下記のようにして測定した。
示差走査熱量計(DSC)で測定される融解ピークから、雄側嵌合部および雌側嵌合部の融解熱量(J/g)を求めた。なお、示差走査熱量計(DSC)測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて0℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、融解ピークを得た。
【0073】
(雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の融解熱量)
雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の融解熱量を、下記のようにして測定した。
厚さ1mmにおける嵌合部の樹脂量(g)と、雄側嵌合部および雌側嵌合部の融解熱量(J/g)の積から、雄側嵌合部の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量(J)と雌側嵌合部長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量(J)の合計を算出した。
【0074】
(嵌合具の引張弾性率)
嵌合具の引張弾性率を、下記のようにして測定した。
嵌合具の第1嵌合部材を長さ120mmの試験片を切り出し、試験片とした。引張試験機のチャック間を100mmに設定し、引張速度500mm/分の条件で伸長量が1.0mmになるまで引張り、その間の引張荷重を測定した。測定された引張荷重を試験片の幅と厚さから求めた断面積で除して応力σ(MPa)を求めた。さらに伸長量△L(mm)をチャック間距離L(mm)で除してひずみεを求め、応力σ(MPa)をひずみεで除して引張弾性率E(MPa)を求めた。
【0075】
(ポイントシールによる外観評価(クラッシュ温度187℃))
自動製袋機を用いてフィルムの内面に嵌合具1を取り付ける。ここで、製袋機内では、ヒートシール、ポイントシール、サイドシールが一連の順番で行われる。各シール工程(ヒートシール、ポイントシール、サイドシール)のシール時間を0.5秒、プレスしていない時にフィルムが進む時間である待機時間を0.5秒、待機時間の速度である加速度を1.0G、フィルムの送り長を120mmとなるように設定する。
まず、フィルムと嵌合具の第1基材とのヒートシールを各嵌合具に応じた温度(表6に記載)で行い、その後冷却プレスする。
続いて、雄側嵌合部と雌側嵌合部のフィルムの両端に溶着される部分を、187℃でポイントシールを2回連続して行い、突起を押しつぶす。次にサイドシールを140℃で2回連続して行い、サイドの冷却プレスを2回連続して行い、製袋する。
サイドシールした部分に皴やピンホール、変形が発生した外観不良サンプルの割合を算出した。100サンプルで実施した。
(評価基準)
〇:外観不良が発生せず、仕上がりが良好である。
△:問題なく使用可能であるが、溶着に時間がかかり、皴が入ることがある。
×:ピンホール、変形の外観不良が発生する。
【0076】
(剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmのヒートシール時の温度Th)
袋体を構成するフィルム(内面が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で構成されるフィルム)に嵌合具1を取り付けた袋本体の剥離強度試験において、前記フィルムからの前記嵌合具1の剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなるヒートシール時の温度をThとして測定した。
嵌合具1のヒートシール強度は、下記のようにして測定することができる。
【0077】
(製袋条件)
トタニ技研工業社製三方プレスシール自動製袋機「BH-60DLSC 」を用いて、ナイロン/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の積層フィルムの、直鎖状低密度ポリエチレンで構成される面に嵌合具をヒートシールする。シール時間が0.5秒、プレスしていない時にフィルムが進む時間である待機時間が0.5秒、待機時間の速度である加速度が1.0G、フィルムの送り長が120mmとなるように設定する。
なお、ヒートシールを温度100℃~140℃の範囲で5℃刻みで変化させてそれぞれの温度における嵌合具付きフィルムを得た。
【0078】
(剥離条件)
次に、嵌合具の第1嵌合部材から雄側嵌合部を切除し、第1基材から幅6mmの試料片を切り出し、試験片の第1基材とフィルムを10mm剥離させる。東洋精機製作所製ストログラフ引張試験機を用いて、第1基材とフィルムとの剥離部分をそれぞれチャックに挟み、引張速度200mm/minでT型剥離試験を行った。温度100℃~140℃でそれぞれヒートシールした試験片において、ヒートシール時の温度と剥離強度(ヒートシール強度)のグラフを作成し、剥離強度(ヒートシール強度)が10N/6.0mmとなる温度Thを算出した。
【0079】
(ヒートシール強度(ヒートシール時の温度120℃))
嵌合具を温度120℃において、内面が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の袋本体を構成するフィルムにヒートシールしたときの、剥離強度をヒートシール強度として評価した。100サンプルで実施した。なお、ヒートシール強度は8N/6.0mm以上の数値があれば嵌合具と袋体を構成するフィルムは充分に溶着されており、嵌合具がフィルムから外れたり、嵌合具とフィルムの間に隙間が生じない。なお、ヒートシール強度については実施例のみ評価を実施した。
嵌合具のヒートシール強度は、下記のようにして測定することができる。
(製袋条件)
トタニ技研工業社製三方プレスシール自動製袋機「BH-60DLSC」を用いて、ナイロン/直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の積層フィルムの、直鎖状低密度ポリエチレンで構成される面に嵌合具でヒートシールし、取り付けた。シール時間が0.5秒、プレスしていない時にフィルムが進む時間である待機時間が0.5秒、待機時間の速度である加速度が1.0G 、フィルムの送り長が120mmとなるように設定した。
(剥離条件)
次に、嵌合具の第1嵌合部材から雄側嵌合部を切除し、第1基材から幅6mmの試料片を切り出し、試験片の第1基材とフィルムを10mm剥離させる。東洋精機製作所製ストログラフ引張試験機を用いて、第1基材とフィルムとの剥離部分をそれぞれチャックに挟み、引張速度200mm/minでT型剥離試験を行い、第1基材とフィルムが剥離する強度をヒートシール強度として測定した。
(評価基準)
〇:すべてのサンプルにおいてヒートシール強度が10N/6.0mm以上である。
△:すべてのサンプルにおいてヒートシール強度が8N/6.0mm以上である。
×:8N/6.0mm未満となるサンプルがある。
【0080】
[実施例1~2]
図1および
図2に例示した嵌合具1から中間層とシール層を除く1層構成になっている第1嵌合部材および第2嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。なお、実施例1と実施例2は樹脂配合は同じだが、嵌合部の形状が異なるため、それぞれ後述する断面積に応じた複合異形ダイを用意した。
基材層を形成するための樹脂材料X1として、LDPEの50質量%、LLDPE(メタロセン)の50質量%を、口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、170℃で溶融混錬した。
樹脂材料X1を複合異形ダイに導き、押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、テープ幅が13mm、第1基材および第2基材のそれぞれの総厚が0.15mmの嵌合具を得た。
【0081】
[実施例3]
図1および
図2に例示した嵌合具1と同じ2層構成になっている第1嵌合部材および第2嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。
基材層を形成するための樹脂材料X2として、LDPEの40質量%、およびLLDPEの60質量%を、口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、170℃で溶融混錬した。
シール層を形成するための樹脂材料Y1として、LLDPE、口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、170℃で溶融混錬した。
樹脂材料X2、およびY1を複合異形ダイに導き、押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、テープ幅が13mm、第1基材および第2基材のそれぞれの総厚が0.15mmの嵌合具を得た。
基材層およびシール層の質量比を80:20とした。
【0082】
[実施例4]
基材層を形成するための樹脂材料X3とシール層を形成するための樹脂材料Y2を表3に示す通りに変更し、表6に記載の嵌合部の断面積となる複合異形ダイを用いたこと以外は、実施例3と同様にして嵌合具を作製した。
【0083】
[実施例5]
図1および
図2に例示した嵌合具1の基材層とシール層の間に中間層を設けて3層構成となっている第1嵌合部材および第2嵌合部材を形成するための複合異形ダイを用意した。
基材層を形成するための樹脂材料X4として、LDPEの80質量%、およびLLDPEの20質量%を、口径50mm、L/Dが30の押出機を用い、170℃で溶融混錬した。
シール層を形成するための樹脂材料Y3として、LLDPEを、口径30mm、L/Dが30の押出機を用い、170℃で溶融混錬した。
中間層を形成するための樹脂材料Z1としてHDPEを、口径30mm、L/Dが30の押出機を用い、190℃で溶融混錬した。
樹脂材料X4、Y3、およびZ1を複合異形ダイに導き、押出成形した。その後、冷却水槽に導いて冷却固化させることで、テープ幅が13mm、第1基材および第2基材のそれぞれの総厚が0.15mmの嵌合具を得た。
基材層、中間層およびシール層の質量比を50:40:10とした。
【0084】
[比較例1]
基材層を形成するための樹脂材料X5を表5に示す通りに変更し、表6に記載の嵌合部の断面積となる複合異形ダイを用いたこと以外は、実施例1と同様にして嵌合具を作製した。
【0085】
[比較例2]
表6に記載の嵌合部の断面積となる複合異形ダイを用いたこと以外は実施例3と同様にして嵌合具を作製した。
【0086】
各例の基材層、中間層、シール層の組成、および、評価結果を表6に示す。
【0087】
【0088】
表6に示す通り、実施例1~5の嵌合具は、クラッシュ温度187℃におけるポイントシール後の外観が良好であることが分かった。一方、比較例1および2の嵌合具は、クラッシュ温度187℃では溶着に時間がかかり、皴が入ることがあった。これは、実施例1~5の嵌合具は、雄側嵌合部(爪部)の長手方向と垂直な断面積と雌側嵌合部(爪部)の長手方向と垂直な断面積の合計が0.7mm2以上1.7mm2以下であり、嵌合部(爪部)の融解熱量が抑えられ、クラッシュ温度187℃におけるポイントシール性が良好となるからである。また、比較例1および比較例2の嵌合具では、断面積の合計が大きいため、雄側嵌合部および雌側嵌合部(爪部)の融解熱量が増加し、クラッシュ温度187℃では充分なポイントシール性が得られない。
また、実施例3と比較例2においては嵌合具の樹脂配合は同じであるが、雄側嵌合部(爪部)および雌側嵌合部(爪部)の断面積が異なり、比較例2の方が実施例3よりも断面積が大きい。その結果、実施例3のクラッシュ温度は185℃であるが、比較例2のクラッシュ温度は190℃となっている。すなわち、クラッシュ温度187℃でポイントシールした場合の袋本体の外観は実施例3は良好だが、比較例2は少し劣る。
【0089】
また、雄側嵌合部(爪部)の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量と雌側嵌合部(爪部)の長手方向に1mmの厚さにおける融解熱量の合計が0.08J以上0.16J以下であると、クラッシュ温度187℃におけるポイントシール性が良好であることが分かった。
【0090】
また、実施例1~5の嵌合具は、内面が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で構成されるフィルムに温度120℃でヒートシールしたとき、ヒートシール強度が8N/6.0mm以上であり、嵌合具と袋体を構成するフィルムが充分に溶着され、嵌合具がフィルムから外れたり、嵌合具とフィルムの間に隙間が生じることがないことが分かった。特に実施例3と実施例5は温度120℃のヒートシール強度が10N/6.0mm以上であり、優れたヒートシール性を有する。ヒートシール性が高いと、ヒートシール温度を下げることが可能となり、製袋後の袋体の外観がさらに良好となる。