(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145756
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】駐車支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B60W30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058241
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友一
(72)【発明者】
【氏名】石川 康太
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD11
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA12Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC33Z
3D241DD12Z
(57)【要約】
【課題】利便性を確保しつつ、車両を適切に駐車スペースに移動させることができる駐車支援システムを提供する。
【解決手段】駐車支援システムは、車両制御部と、輪留め位置推定部と、誤差量推定部とを備える。車両制御部は、輪留め位置推定部により推定した推定輪留め位置(Pc)に基づいて接触想定エリア(A)を設定し、接触想定エリア(A)内では接触準備速度で車両を走行させる停止前制御を実行する。車両制御部は、誤差量推定部により推定された推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリア(A)を小さくする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に作用する駆動力と制動力とを制御して、前記車輪を備えた車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う車両制御部を備えた駐車支援システムであって、
前記駐車スペースにおける輪留めの位置を推定する輪留め位置推定部と、
前記車両の位置認識システムの誤差量を推定する誤差量推定部と、をさらに備え、
前記車両制御部は、前記輪留め位置推定部により推定した前記輪留めの位置である推定輪留め位置に基づいて、前記推定輪留め位置よりも前記車両の側に、前記車輪が前記輪留めに接触する可能性があるエリアである接触想定エリアを設定し、前記接触想定エリア内では、予め設定された接触準備速度で前記車両を走行させる停止前制御を実行し、
前記車両制御部は、前記誤差量推定部により推定された前記誤差量である推定誤差量が小さくなるに従って前記接触想定エリアを小さくする、駐車支援システム。
【請求項2】
前記車両の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行う画像認識部をさらに備え、
前記車両制御部は、前記画像認識部により認識された認識対象物と、前記認識対象物と前記輪留めとの予め規定された位置関係とに基づいて、前記輪留めに接触する可能性があるエリアの大きさを演算する演算処理を行い、
前記車両制御部は、前記演算処理の結果と前記推定誤差量とを合わせた大きさに基づいて前記接触想定エリアの大きさを設定する、請求項1に記載の駐車支援システム。
【請求項3】
前記車両の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行う画像認識部と、
前記車両の走行距離を算出する走行距離算出部と、
前記画像認識部による前記画像認識の結果に基づいて認識対象物と前記車両との位置関係を判定する対象物判定部と、を備え、
前記誤差量推定部は、前記画像認識部、前記走行距離算出部、及び前記対象物判定部のそれぞれの誤差を積算して前記推定誤差量を算出する、請求項1又は2に記載の駐車支援システム。
【請求項4】
前記車両制御部は、前記接触想定エリア内では、前記車輪に作用させる駆動力を、予め設定された接触準備駆動力以下に制限する、請求項1又は2に記載の駐車支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-72962号公報(特許文献1)には、車輪に作用する駆動力及び制動力を制御して車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う駐車支援システムが開示されている。特許文献1の駐車支援システムは、車両を駐車スペースへ移動させるための移動経路を設定し、目標位置までの残距離に応じて車両の速度を段階的に低下させ、車両が目標位置に到達するか車輪が輪留めに接触した場合に、駐車完了として車両を停止させる。
【0003】
特許文献1の駐車支援システムでは、車両が駐車スペースへ入り始めた時点から速度を低下させ、その後、操舵角がゼロとなった時点からさらに速度を低下させる。これにより、車両が勢い良く輪留めに到達するのを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、駐車シーンによってはかなり早い段階から操舵角がゼロとなる場面も想定される。このような場合に、操舵角ゼロの時点から車両の速度を大きく低下させてしまうと、極低車速で走行する距離及び時間が長くなり、利便性が低下する恐れがある。
【0006】
そこで、利便性を確保しつつ、車両を適切に駐車スペースに移動させることができる駐車支援システムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る駐車支援システムは、
車輪に作用する駆動力と制動力とを制御して、前記車輪を備えた車両を駐車スペースへ移動させるための車両制御を行う車両制御部を備えた駐車支援システムであって、
前記駐車スペースにおける輪留めの位置を推定する輪留め位置推定部と、
前記車両の位置認識システムの誤差量を推定する誤差量推定部と、をさらに備え、
前記車両制御部は、前記輪留め位置推定部により推定した前記輪留めの位置である推定輪留め位置に基づいて、前記推定輪留め位置よりも前記車両の側に、前記車輪が前記輪留めに接触する可能性があるエリアである接触想定エリアを設定し、前記接触想定エリア内では、予め設定された接触準備速度で前記車両を走行させる停止前制御を実行し、
前記車両制御部は、前記誤差量推定部により推定された前記誤差量である推定誤差量が小さくなるに従って前記接触想定エリアを小さくする。
【0008】
この構成によれば、推定輪留め位置に基づいて設定される接触想定エリア内で停止前制御を実行することにより、接触準備速度で車両を走行させて、車両が勢い良く輪留めに到達するのを回避しやすくできる。その際、車両の位置認識システムの推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアを小さくすることで、車両が低車速で走行する距離が徒に長くなるのを回避することができる。よって、利便性を確保しつつ、車両を適切に駐車スペースに移動させることができる駐車支援システムを提供することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】駐車支援システムを含む車両のシステム構成の一例を示す模式的ブロック図
【
図5】駐車支援中の車両の位置に応じた車速変化を示すグラフ
【
図6】駐車支援中の車両の位置に応じた駆動力変化を示すグラフ
【
図7】接触想定エリアの大きさ設定の一例を示す模式図
【
図8】接触想定エリアの大きさ設定の一例を示す模式図
【
図9】接触想定エリアの大きさ設定の一例を示す模式図
【
図10】接触想定エリアの大きさ設定の一例を示す模式図
【
図11】接触想定エリアの大きさ設定の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
駐車支援システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1の説明図は、それぞれ車両50を駐車させる際の駐車支援の一形態を例示している。また、
図2のブロック図は、駐車支援システム100を含む車両50のシステム構成の一例を模式的に示している。本実施形態の駐車支援システム100は、車輪Wに作用する駆動力と制動力とを制御するとともに操舵角を制御して、車両50を駐車スペースEへ移動させるための車両制御を行う。
【0012】
本実施形態では、駐車支援システム100は、自動運転により車両50を駐車スペースEに駐車させる。なお、駐車支援システム100による案内に基づいて操舵は運転者が手動で行い、駆動、制動のみが自動運転で行われる形態、即ち半自動運転であっても良い。
【0013】
図2に示すように、駐車支援システム100は、ECU(electronic control unit)1を中核として他のシステムや各種のセンサとの協働により実現される。ECU1は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、DSP(digital signal processor)などのプロセッサ1P、プログラムやパラメータなどのソフトウェアが記憶されたプログラムメモリ1M、その他の各種電子部品を備えて構成される。
【0014】
プロセッサ1Pは、ECU1の中核となるハードウェアであり、プロセッサ1Pを中核とする各種のハードウェアと、プログラムメモリ1Mに記憶されたプログラムなどのソフトウェアとの協働により、車両制御部が実現される。そして、ECU1を中核として、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40、位置認識システム60などの他のシステム、及び、符号「51」から「58」、「61」で示す各種センサや周辺デバイスと、ECU1との協働により、駐車支援システム100が実現される。
【0015】
下記において、駐車支援システム100を構成する種々の機能部について説明するが、それぞれの機能部は、複数のハードウェアにより実現され、或いは、少なくとも1つのハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現される場合があり、必ずしも独立した部品として構成される必要はない。
【0016】
図1に示すように、駐車支援システム100は、駐車スペースEに設定した駐車目標位置Ptと車両50の現在位置Prとに基づいて、車両50を駐車目標位置Ptまで移動させて停止させる。駐車目標位置Pt及び現在位置Prは、駐車支援システム100が駐車支援(車両制御)を行う際の座標系(駐車支援座標系)における座標に対応している。
【0017】
図1に示す符号「Q」は、車両50の位置を特定する際の車両50における基準点を示している。また、現在位置Prは、駐車支援座標系において基準点Qが位置する座標に相当する。駐車目標位置Ptは、車両50が駐車スペースEに適切に位置している際に車両50の基準点Qが位置する座標を示している。駐車支援システム100は、現在位置Prと、駐車目標位置Ptとに基づいて、現在位置Prから駐車目標位置Ptまで車両50が移動する際の基準点Qの移動軌跡を演算し、これを移動経路Kとする。
【0018】
駐車支援システム100は、現在位置Prから移動経路Kに沿って基準点Qが移動するように車両制御を行う。駐車支援システム100は、基準点Qが駐車目標位置Ptに到達すると、つまり現在位置Prと駐車目標位置Ptとが一致すると、車両50が駐車スペースE内に適切に位置することになるので車両50を停止させる。なお、駐車目標位置Ptは、後述する推定輪留め位置Pcであって良く、基準点Qは、後輪の軸心の位置であって良い。
【0019】
図1は、いわゆる車庫入れ駐車を例示している。例えば、運転者は、駐車スペースEを通り過ぎ、駐車スペースEとは逆方向に舵を切って車両50を少し旋回させた状態で車両50を停止させる。この位置は、駐車スペースEに向かって車両50が後退を開始する後退開始位置ということができる。なお、駐車目標位置Ptへの移動の際に必要な操舵量は大きくなるが、このように舵を切ることなく、直進した状態で車両50を停車させても良い。また、停止位置から駐車目標位置Ptへの移動を開始する前に、ステアリングシステム40との協働によって、いわゆる据え切りによって操舵輪の向きを変更しておいても良い。
【0020】
なお、車庫入れ駐車に限らず、本実施形態の駐車支援システム100をいわゆる縦列駐車に適用しても良いことは言うまでもない。
【0021】
運転者が車両50を前進させる場合、進行方向や停止位置(後退開始位置)について駐車支援システム100が案内すると好適である。例えば、車室内のディスプレイへの表示や音声案内によって、運転者を案内し、運転者が何れも不図示のアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール等を操作して、後退開始位置まで車両50を移動させると好適である。
【0022】
駐車支援システム100は、車両50が後退開始位置に到達すると、自動操舵を含む自動運転が可能であることを運転者に報知しても良い。運転者が、例えば車室内のディスプレイのタッチパネル等に設けられた開始ボタンに触れることで車両制御の開始を指示すると、操舵を含む車両50の運転操作が駐車支援システム100に委ねられる。その後、駐車支援システム100は、自動運転によって車両50を駐車目標位置Ptまで移動させる。
【0023】
図2に示すように、車両50は、駐車支援システム100の中核となるECU1の他、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40、位置認識システム60を備えている。駆動システム20は、車輪Wを駆動する駆動装置25を制御するシステムである。駆動装置25には、例えば何れも不図示の内燃機関、回転電機、ギヤ機構、回転部材間での動力伝達を断接する係合装置等を含む。ブレーキシステム30は、車輪Wに制動力を発生させるシステムである。ステアリングシステム40は、車輪Wのうちの操舵輪を動かして車両50の進行方向を変化させるシステムである。位置認識システム60は、車両50の位置(現在位置Pr)を認識するシステムである。
【0024】
また、車両50は、アクセルセンサ51、シフトポジションセンサ52、ブレーキセンサ53、速度センサ54、加速度センサ55、舵角センサ56、ソナー57、カメラ58、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61等の各種センサ及び周辺機器を備えている。GNSS受信機61として、例えばGPS(Global Positioning System)受信機が用いられる。
【0025】
アクセルセンサ51は、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するセンサである。シフトポジションセンサ52は、不図示のシフトレバーにより指示された変速段(後退やパーキング等も含む)など、駆動装置25の動作モードを指示する指示入力を検出するセンサである。ブレーキセンサ53は、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するセンサである。速度センサ54は、車両50の走行速度、即ち車輪Wの回転速度を検出するセンサである。加速度センサ55は、車両50の加速度を検出するセンサであり、本実施形態の加速度センサ55は例えば車両50が位置する地面の傾斜角度や傾斜方向も検出することが可能である。舵角センサ56は、運転者によるステアリングホイールの操作量を検出するセンサであり、好ましくは操作量を車両50の舵角として検出する。
【0026】
ソナー57は、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺に存在する障害物の存否を検出する。好適には、ソナー57はアクティブソナーである。また、ソナー57に限らず、障害物センサとしてレーザーレーダー等を備えていても良い。カメラ58は、車両50の複数箇所に設置され、車両50の周辺画像を取得する。GNSS受信機61は、GNSS衛星からの信号を受信する。
【0027】
上述したECU1(駐車支援システム100)、駆動システム20、ブレーキシステム30、ステアリングシステム40、位置認識システム60を含めて、符号「51」から「58」、「61」で示すセンサ及び周辺機器は、例えばCAN(controller area network)などの車内ネットワーク90を介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
例えば、駆動システム20は、車内ネットワーク90を介して、アクセルセンサ51、シフトポジションセンサ52、ブレーキセンサ53、速度センサ54、加速度センサ55、舵角センサ56等と協働して駆動装置25を制御する。ブレーキシステム30は、車内ネットワーク90を介して、ブレーキセンサ53と協働してブレーキ機構35を制御する。ステアリングシステム40は、舵角センサ56と協働してステアリングホイールや操舵輪などを含むステアリング機構45を制御する。位置認識システム60は、GNSS受信機61で受信したGNSS信号に基づき、車両50の位置(現在位置Pr)を認識する。本実施形態では、位置認識システム60は、GNSS信号に加え、速度センサ54や舵角センサ56、カメラ58から得られる情報等にも基づいて、車両50の位置(現在位置Pr)を認識する。
【0029】
図3に示すように、駐車支援システム100(ECU1)は、輪留め位置推定部11と、誤差量推定部12と、画像認識部13と、走行距離算出部14と、対象物判定部15と、車両制御部16とを備えている。これらの各機能部は、入力されたデータに対して種々の処理を行うための演算部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により構成されている。
図3に示す形態は、例示的かつ概念的なブロック図であり、実際のECU1の物理的構成を限定するものではない。
【0030】
輪留め位置推定部11は、駐車スペースEにおける輪留めの位置を推定する。誤差量推定部12は、車両50の位置認識システム60の誤差量を推定する。画像認識部13は、車両50の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行う。走行距離算出部14は、車両50の走行距離を算出する。対象物判定部15は、画像認識部13による画像認識の結果に基づいて認識対象物Rと車両50との位置関係を判定する。車両制御部16は、車輪Wに作用する駆動力と制動力とを制御して、車輪Wを備えた車両50を駐車スペースEへ移動させるための車両制御を行う。
【0031】
輪留め位置推定部11は、駐車スペースEにおける輪留めの位置を推定する。輪留め位置推定部11は、駐車支援によってこれから車両50を駐車させようとしている駐車スペースEに設置されていることが想定される輪留めの位置を推定する。本実施形態では、輪留め位置推定部11は、輪留めを直接認識してその位置を特定するのではなく、例えば駐車スペースEの近傍に存在する他物を基準として、輪留めの位置を推定する。ここで、駐車スペースEの近傍に存在する他物としては、例えば
図4に示すような、駐車スペースEを区画する駐車枠線L等の固定物が例示される。なお、輪留め位置推定部11は、駐車スペースEに実際に輪留めが存在するか否かによらずに、輪留めが存在するものと見做して輪留めの位置を推定する。
【0032】
輪留め位置推定部11は、例えば、画像認識部13によって認識した駐車枠線Lの先端Lfの位置を基準として、当該先端Lfの位置から後方に基準設定距離Dsだけ下がった位置を輪留めの位置として推定する。本実施形態では、輪留め位置推定部11により推定した輪留めの位置を「推定輪留め位置Pc」と言う。ここで、基準設定距離Dsは、例えば一般的な車両50の平均的なホイールベースと平均的なフロントオーバーハングとを足し合わせた長さに設定することができる。
【0033】
なお、隣接する駐車スペースEに存在する他の車両50である隣接車両C等の移動体(
図7を参照)を、駐車スペースEの近傍に存在する他物として、推定輪留め位置Pcを求めても良い。この場合、輪留め位置推定部11は、例えば、画像認識部13によって認識した隣接車両Cの先端の位置を基準として、当該隣接車両Cの先端の位置から後方に基準設定距離Dsだけ下がった位置を推定輪留め位置Pcとする。
【0034】
本実施形態の駐車支援に係る車両制御部16の基本動作について、
図4~
図6を参照して説明する。
図4に示すように、車両制御部16は、輪留め位置推定部11により求めた推定輪留め位置Pcに基づいて、推定輪留め位置Pcよりも車両50の側(前側)に、車輪Wが輪留めに接触する可能性があるエリアである接触想定エリアAを設定する。本実施形態では、車両制御部16は、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcから前方に予め定めされた接触想定距離Dcだけ進んだ位置との間のエリアを、接触想定エリアAとして設定する。
【0035】
このように、車両制御部16は、画像認識部13により認識された認識対象物R(駐車枠線Lや隣接車両C等)と、認識対象物Rと輪留めとの予め規定された位置関係(先端の位置を基準として基準設定距離Dsと接触想定距離Dcとに応じて定まる位置関係)とに基づいて、接触想定エリアAの大きさを演算する演算処理を行う。
【0036】
図5に示すように、車両制御部16は、駐車支援の実行中、予め設定された支援中制限速度V1で車両50を走行させる。なお、
図5において、横軸は車両50の位置を示しており、原点は駐車支援の開始位置に相当する。支援中制限速度V1は、駐車スペースE内に車両50を安全に移動させることができるような速度に設定されている。支援中制限速度V1は、例えば1~4km/h程度に設定することができる。
【0037】
車両制御部16は、駐車支援を実行中の車両50が接触想定エリアA内に進入すると、停止前制御を実行する。なお、車両50が接触想定エリアA内に進入したことは、位置認識システム60から得られる車両50の基準点Q(例えば後輪の軸心の位置)と推定輪留め位置Pcとの距離が接触想定距離Dc以下になったことに基づいて判定できる。ここで、停止前制御は、車両50の車輪Wが輪留めに接触する前段階で停車に備えて予備的に実行される制御である。車両制御部16は、停止前制御において、支援中制限速度V1よりも低い値に予め設定された接触準備速度V2で車両50を走行させる。接触準備速度V2は、車輪Wが輪留めに接触した際のショックを乗員が不快に感じないような速度に設定されている。接触準備速度V2は、例えば0~1km/h程度に設定することができる。
【0038】
また、
図6に示すように、車両制御部16は、駐車支援の実行中、予め設定された支援中制限駆動力T1で車両50を駆動するように駆動システム20を制御する。なお、
図6において、
図5と同様に横軸は車両50の位置を示しており、原点は駐車支援の開始位置に相当する。支援中制限駆動力T1は、駐車スペースE内に車両50を適切に移動させることができ、かつ、車輪Wが輪留めに接触した際に輪留めを乗り越えることがないような駆動力に設定されている。
【0039】
車両制御部16は、車両50が接触想定エリアA内に進入して実行される停止前制御において、支援中制限駆動力T1よりも低い値に予め設定された接触準備駆動力T2で車両50を駆動するように駆動システム20を制御する。接触準備駆動力T2は、車輪Wが輪留めに接触した際にショックなく停車できるような駆動力に設定されている。
【0040】
本実施形態の駐車支援システム100(ECU1)は、状況に応じて接触想定エリアAの大きさを可変に設定できるようになっている点に特徴を有する。以下、この点について、
図7~
図10を参照して説明する。
【0041】
上述したように、接触想定エリアAは、輪留め位置推定部11により求めた推定輪留め位置Pcに基づいて設定され、推定輪留め位置Pcは、画像認識部13により認識された認識対象物R(駐車枠線Lや隣接車両C等)に基づいて求められる。接触想定エリアAを設定する基準になる推定輪留め位置Pcは、それが駐車枠線L等の固定物に基づいて求められる場合と、隣接車両C等の移動体に基づいて求められる場合とでは、確からしさに差があると推測される。推定輪留め位置Pcが駐車枠線L等の固定物に基づいて求められる場合には、隣接車両C等の移動体に基づいて求められる場合に比べて、より確からしい推定輪留め位置Pcが得られると推測される。
【0042】
そこで、本実施形態では、車両制御部16は、認識した認識対象物Rが駐車枠線L等の固定物である場合には、認識した認識対象物Rが隣接車両C等の移動体である場合に比べて、接触想定エリアAを小さくする。
図7には、認識した認識対象物Rが隣接車両Cである場合に設定される接触想定エリアAの一例を示している。この図において、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第1距離D1だけ進んだ位置との間のエリアに設定されている。一方、
図8には、認識した認識対象物Rが駐車枠線Lである場合に設定される接触想定エリアAの一例を示している。この図において、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第1距離D1よりも短い第2距離D2だけ進んだ位置との間のエリアに設定されている。
【0043】
また、位置認識システム60によって取得される車両50の位置(現在位置Pr)の情報は、必ずしも正確ではなく一定の誤差を含んでいる。そして、その誤差量は、全ての車両50において一律という訳ではなく、メーカーや車種、グレード等に応じて異なり得る。当然ながら、誤差量が小さいほど、より正確な車両50の位置(現在位置Pr)の情報となる。
【0044】
そこで、本実施形態では、誤差量推定部12が、車両50の位置認識システム60の誤差量を推定し、車両制御部16は、誤差量推定部12により推定された誤差量である推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアAを小さくする。上述したように、本実施形態では、車両50の位置(現在位置Pr)の情報は、GNSS信号と、速度センサ54、舵角センサ56、及びカメラ58から得られる情報とに基づいて得られる。これらのうち、GNSS信号が有する誤差は、GNSSの種類が同じであれば基本的に全ての車両50において一律であるのに対して、速度センサ54、舵角センサ56、及びカメラ58から得られる情報や、それらに基づく判断結果は、車両50毎に異なり得る。
【0045】
例えば、画像認識部13は、カメラ58により車両50の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行うが、その画像認識自体に誤差が含まれ得る。また、走行距離算出部14は、速度センサ54から得られる情報に基づき、駐車支援中の車両50の走行距離を算出するが、速度センサ54が検出誤差を含むことに起因して、算出される走行距離にも誤差が含まれ得る。また、対象物判定部15は、画像認識部13による画像認識の結果に基づいて認識対象物Rと車両50との位置関係を判定するが、上記のとおり画像認識に誤差が含まれ得ることに起因して、認識対象物Rと車両50との位置関係に係る判定結果にも誤差が含まれ得る。このような事情を考慮して、本実施形態の誤差量推定部12は、画像認識部13、走行距離算出部14、及び対象物判定部15のそれぞれの誤差を積算して推定誤差量を算出する。
【0046】
車両制御部16は、接触想定エリアAの設定に関して
図4を参照して説明した演算処理の結果(推定輪留め位置Pcから接触想定距離Dcだけ前方までのエリア)をベースに、推定誤差量を考慮した大きさとなるように、接触想定エリアAの大きさを調整する。推定誤差量を考慮した接触想定エリアAの大きさの調整は、推定誤差量を複数段階に区分した上で区分毎に段階的に行っても良いし、予め定められた関係式に基づいてリニアに行っても良い。いずれにせよ、車両制御部16は、誤差量推定部12によって算出される推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアAを小さくする。
【0047】
図9には、認識した認識対象物Rが駐車枠線Lである場合において、誤差量推定部12により算出される推定誤差量が相対的に小さい場合の調整後の接触想定エリアAの一例を示している。この図において、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第2距離D2よりも短い第3距離D3だけ進んだ位置との間のエリアに設定されている。一方、
図10には、認識した認識対象物Rが駐車枠線Lである場合において、誤差量推定部12により算出される推定誤差量が相対的に大きい場合の調整後の接触想定エリアAの一例を示している。この図において、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第2距離D2よりも長い第4距離D4だけ進んだ位置との間のエリアに設定されている。
【0048】
なお、
図9及び
図10では、認識した認識対象物Rが駐車枠線Lである場合の例を示したが、認識した認識対象物Rが隣接車両Cである場合も、同様に、車両制御部16は、推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアAを小さくする。この場合、推定誤差量が相対的に小さい場合には、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第1距離D1よりも短い第5距離だけ進んだ位置との間のエリアに設定される。一方、推定誤差量が相対的に大きい場合には、接触想定エリアAは、推定輪留め位置Pcと、当該推定輪留め位置Pcとから前方に第1距離D1よりも長い第6距離だけ進んだ位置との間のエリアに設定される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の駐車支援システム100は、
車輪Wに作用する駆動力と制動力とを制御して、車輪Wを備えた車両50を駐車スペースEへ移動させるための車両制御を行う車両制御部16を備えた駐車支援システム100であって、
駐車スペースEにおける輪留めの位置を推定する輪留め位置推定部11と、
車両50の位置認識システム60の誤差量を推定する誤差量推定部12と、をさらに備え、
車両制御部16は、輪留め位置推定部11により推定した輪留めの位置である推定輪留め位置Pcに基づいて、推定輪留め位置Pcよりも車両50の側に、車輪Wが輪留めに接触する可能性があるエリアである接触想定エリアAを設定し、接触想定エリアA内では、予め設定された接触準備速度V2で車両50を走行させる停止前制御を実行し、
車両制御部16は、誤差量推定部12により推定された誤差量である推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアAを小さくする。
【0050】
この構成によれば、推定輪留め位置Pcに基づいて設定される接触想定エリアA内で停止前制御を実行することにより、接触準備速度V2で車両50を走行させて、車両50が勢い良く輪留めに到達するのを回避しやすくできる。その際、車両50の位置認識システム60の推定誤差量が小さくなるに従って接触想定エリアAを小さくすることで、車両50が低車速で走行する距離が徒に長くなるのを回避することができる。よって、利便性を確保しつつ、車両50を適切に駐車スペースEに移動させることができる駐車支援システム100を提供することができる。
【0051】
一態様として、
車両50の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行う画像認識部13をさらに備え、
車両制御部16は、画像認識部13により認識された認識対象物Rと、認識対象物Rと輪留めとの予め規定された位置関係とに基づいて、輪留めに接触する可能性があるエリアの大きさを演算する演算処理を行い、
車両制御部16は、演算処理の結果と推定誤差量とを合わせた大きさに基づいて接触想定エリアAの大きさを設定することが好ましい。
【0052】
この構成によれば、輪留めに接触する可能性があるエリアの大きさに関する演算処理の結果と、推定誤差量とに基づいて、接触想定エリアAの大きさを適切に設定することができる。
【0053】
一態様として、
車両50の周辺を撮影して取得した画像の画像認識を行う画像認識部13と、
車両50の走行距離を算出する走行距離算出部14と、
画像認識部13による画像認識の結果に基づいて認識対象物Rと車両50との位置関係を判定する対象物判定部15と、を備え、
誤差量推定部12は、画像認識部13、走行距離算出部14、及び対象物判定部15のそれぞれの誤差を積算して推定誤差量を算出することが好ましい。
【0054】
この構成によれば、画像認識及び走行距離算出に関する認識系の誤差と、認識対象物Rと車両50との位置関係の判定に関する判定系の誤差とを考慮して、推定誤差量を精度良く算出することができる。よって、接触想定エリアAの大きさを適切に設定することができる。
【0055】
一態様として、
車両制御部16は、接触想定エリアA内では、車輪Wに作用させる駆動力を、予め設定された接触準備駆動力T2以下に制限することが好ましい。
【0056】
この構成によれば、車輪Wが輪留めに接触したときに、その輪留めに乗り上げることなく停止させやすくなる。
【0057】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、輪留め位置推定部11が駐車スペースEの近傍に存在する他物を基準として輪留めの位置を推定する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば輪留め位置推定部11がレーザーレーダー等によって輪留め自体を検出した上で、誤差を含む推定位置として輪留めの位置を推定しても良い。
【0058】
(2)上記の実施形態では、接触想定エリアAが経路方向における一定の長さと幅方向における一定の長さとを有する二次元のエリアとして設定されている構成を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、接触想定エリアAは、経路方向における一定の長さだけで規定される一次元のエリアであっても良い。
【0059】
(3)上記の実施形態では、推定輪留め位置Pcを求めるための基準となる認識対象物Rが、駐車枠線L又は隣接車両Cである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駐車スペースEにおける輪留めの近傍に存在することが想定され、かつ、画像認識部13により認識され得るものであれば、例えば壁や柵、コインパーキングのフラップ板等の他の物品を認識対象物Rとしても良い。
【0060】
(4)上記の実施形態では、車両制御部16が、認識対象物Rが固定物であるか移動体であるかに応じて、及び、誤差量推定部12により求められた推定誤差量に応じて、接触想定エリアAの大きさを調整する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両制御部16は、誤差量推定部12により求められた推定誤差量だけに応じて接触想定エリアAの大きさを調整しても良い。また、車両制御部16は、推定誤差量に応じて接触想定エリアAの大きさを調整することを前提に、それ以外の基準にも基づいて接触想定エリアAの大きさを調整しても良い。例えば
図11に示すように、車両50を駐車させようとしている駐車スペースEが、自宅Hのガレージのような駐車支援システム100に登録されている登録駐車スペースErである場合に、接触想定エリアAが小さくなるように調整されても良い。
【0061】
(5)上記の実施形態では、車両制御部16が、誤差量推定部12により求められた推定誤差量が相対的に小さい場合に接触想定エリアAを小さくし、推定誤差量が相対的に大きい場合に接触想定エリアAを大きくする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両制御部16は、誤差量推定部12により求められた推定誤差量が相対的に小さい場合に接触想定エリアAを小さくするだけであっても良い。
【0062】
(6)上記の実施形態では、車両制御部16が、車両50が接触想定エリアA内に進入して実行される停止前制御において、車速を接触準備速度V2に制限するとともに駆動力を接触準備駆動力T2に制限する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、停止前制御では、車両制御部16は少なくとも車速を接触準備速度V2に制限すれば良く、駆動力制限は必須ではない。なお、停止前制御中の車速制御及び駆動力制御は、それぞれ、フィードフォワード制御で行っても良いし、フィードバック制御で行っても良い。
【0063】
(7)上記の実施形態では、車両制御部16が、車両50が接触想定エリアAに到達した時点で既に車速が接触準備速度V2以下となっているように前もって車両50を減速させる構成を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、車両制御部16は、車両50が接触想定エリアA内に到達してから車両50を減速させ始めても良い。駆動力制限に関しても同様に考えることができる。
【0064】
(8)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:ECU、1M:プログラムメモリ、1P:プロセッサ、11:輪留め位置推定部、12:誤差量推定部、13:画像認識部、14:走行距離算出部、15:対象物判定部、16:車両制御部、20:駆動システム、25:駆動装置、30:ブレーキシステム、35:ブレーキ機構、40:ステアリングシステム、45:ステアリング機構、50:車両、51:アクセルセンサ、52:シフトポジションセンサ、53:ブレーキセンサ、54:速度センサ、55:加速度センサ、56:舵角センサ、57:ソナー、58:カメラ、60:位置認識システム、61:GNSS受信機、90:車内ネットワーク、100:駐車支援システム、A:接触想定エリア、C:隣接車両、D1:第1距離、D2:第2距離、D3:第3距離、D4:第4距離、Dc:接触想定距離、Ds:基準設定距離、E:駐車スペース、Er:登録駐車スペース、H:自宅、K:移動経路、L:駐車枠線、Lf:先端、Pc:推定輪留め位置、Pr:現在位置、Pt:駐車目標位置、Q:基準点、R:認識対象物、T1:支援中制限駆動力、T2:接触準備駆動力、V1:支援中制限速度、V2:接触準備速度、W:車輪