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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145759
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20241004BHJP
   G01B 11/02 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
G01B11/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058244
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柘野 善治
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065DD06
2F065FF01
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065PP15
2F065PP25
2G051AA90
2G051AB02
2G051AC11
2G051CA04
(57)【要約】
【課題】パラメータに関するエラー以外のエラーもユーザに通知可能にしてエラー発生時のユーザの負担を軽減する。
【解決手段】画像検査システム1は、検査内容を設定するための検査設定部80aと、検査内容を実行する検査実行部70aと、検査内容の実行時に送受信されるトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号を時系列に示す実行ログを収集するログ収集部70bと、相対的な関係にある複数の信号のうち、第1信号に対する第2信号の正常な状態を示す正常情報を記憶する記憶部72と、実行ログを解析することで相対的な関係にある複数の信号を特定し、特定された複数の信号に関する正常情報に基づいてエラー関係にあるか否かを判定する解析部70cと、実行ログを表示部82に表示させるとともに、エラー関係にあると判定された場合に、判定の根拠となった時系列上のタイミングを表示部82に表示させる表示制御部70dとを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮像して検査対象画像を生成する撮像部と、
前記撮像部により生成された前記検査対象画像に基づいて前記検査対象物を検査するための検査内容を設定するための検査設定部と、
前記検査設定部により設定された検査内容を実行する検査実行部と、
前記検査実行部による前記検査内容の実行に必要なトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号の送受信を外部機器との間で実行するための通信インタフェース部と、
前記検査内容の実行時に、前記通信インタフェース部を介して送受信されるトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号を時系列に示す実行ログを収集するログ収集部と、
相対的な関係にある複数の信号のうち、第1信号に対する第2信号の正常な状態を示す正常情報を記憶する記憶部と、
前記実行ログを解析することで、前記相対的な関係にある複数の信号を特定し、前記記憶部に記憶された当該特定された複数の信号に関する前記正常情報に基づいて、当該複数の信号がエラー関係にあるか否かを判定する解析部と、
前記ログ収集部で収集された前記実行ログを表示部に表示させるとともに、前記解析部により前記エラー関係にあると判定された場合に、当該判定の根拠となった前記時系列上のタイミングを前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える画像検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記記憶部は、
トリガまたはコマンドの受け取り準備ができていない状態を示す第1信号と、前記外部機器からトリガまたはコマンドを入力している状態を示す第2信号との正常な状態を示す正常情報を記憶し、
前記解析部は、
前記検査実行部が、トリガまたはコマンドの受け取り準備ができていない状態を示す第1信号を出力している間に、前記外部機器からトリガまたはコマンドを入力している状態を示す第2信号が入力された場合に、前記第1信号及び前記第2信号はエラー関係であると判定する、画像検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記記憶部は、
前記検査内容の実行結果が読取できない状態を示す第1信号と、検査実行部から出力されたデータを読み取った状態を示す第2信号との正常な状態を示す正常情報を記憶し、
前記解析部は、
前記検査実行部が、前記検査内容の実行結果が読取できない状態を示す第1信号を出力している間に、前記外部機器から、当該検査実行部から出力されたデータを読み取った状態を示す第2信号が入力された場合に、前記第1信号及び前記第2信号はエラー関係であると判定する、画像検査システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記検査内容の実行過程で発生した不具合に関する不具合情報の入力をユーザから受け付けるための入力部をさらに備え、
前記解析部は、前記不具合情報に関するトリガ、コマンド、または結果出力の実行ログを解析し、
前記表示制御部は、前記解析部による前記不具合情報に基づく解析結果に基づいて、当該不具合情報に関するトリガ、コマンド、または結果出力の設定状態に関するコメントを前記表示部に表示させる、画像検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像検査システムにおいて、
前記入力部は、トリガ、コマンド、または結果出力に関する不具合情報の候補を前記表示部に表示させ、ユーザによる前記候補の選択操作に基づいて前記不具合情報の入力を受け付ける、画像検査システム。
【請求項6】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記表示制御部は、前記解析部による解析結果に基づいて、前記エラー関係にある複数の信号が、正常な関係である場合の実行ログをサンプルログとして前記表示部に表示させる、画像検査システム。
【請求項7】
請求項6に記載の画像検査システムにおいて、
前記表示制御部は、前記解析部により特定されたエラーに対応するサンプルログを前記表示部に表示させる、画像検査システム。
【請求項8】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記表示制御部は、前記実行ログ中に前記エラー関係が複数あると前記解析部により判定された場合に、当該判定の根拠となった前記時系列上の複数のタイミングを順次、前記表示部に表示させる、画像検査システム。
【請求項9】
請求項1に記載の画像検査システムにおいて、
前記表示制御部は、前記実行ログ中に前記エラー関係が複数あると前記解析部により判定された場合に、当該判定の根拠となった前記時系列上の複数のタイミングを同時に前記表示部に表示させる、画像検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査対象物を撮像した検査対象画像に基づいて検査を行う画像検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、検査対象画像を生成する撮像部と、撮像部により生成された検査対象画像に基づいて検査を実行する画像処理コントローラとを備えた画像検査システムが開示されている。この画像検査システムでは、画像処理コントローラの端子の状態変化や、PLC(Programmable Logic Controller)など外部機器から画像処理コントローラへ送られてくるコマンドなどを時系列に示す実行ログとして保持し、ユーザに対してタイミングチャート形式で提示可能にしている。この実行ログの提示により、ユーザは検査の各処理がどのように実行されているかを把握することができ、また、エラーとなったコマンドを強調表示することで、容易に確認可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-123070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の実行ログの提示機能では、例えば、検査設定の切替コマンドで、切替指示された検査設定がそもそも存在しない場合の他、想定されるパラメータの数と、実際に入力されたパラメータの数が一致していない、といったパラメータに関するエラーに限られていた。そのため、パラメータに関するエラー以外は、ユーザが目視でエラー箇所や発生理由を特定する必要があり、ユーザに負担がかかっていた。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、パラメータに関するエラー以外のエラーもユーザに通知できるようにしてエラー発生時のユーザの負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、検査対象物を撮像して検査対象画像を生成する撮像部と、前記撮像部により生成された前記検査対象画像に基づいて前記検査対象物を検査するための検査内容を設定するための検査設定部と、前記検査設定部により設定された検査内容を実行する検査実行部とを備えた画像検査システムを前提とすることができる。
【0007】
画像検査システムは、さらに、前記検査実行部による前記検査内容の実行に必要なトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号の送受信を外部機器との間で実行するための通信インタフェース部と、前記検査内容の実行時に、前記通信インタフェース部を介して送受信されるトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号を時系列に示す実行ログを収集するログ収集部と、相対的な関係にある複数の信号のうち、第1信号に対する第2信号の正常な状態を示す正常情報を記憶する記憶部と、前記実行ログを解析することで、前記相対的な関係にある複数の信号を特定し、前記記憶部に記憶された当該特定された複数の信号に関する前記正常情報に基づいて、当該複数の信号がエラー関係にあるか否かを判定する解析部と、前記ログ収集部で収集された前記実行ログを表示部に表示させるとともに、前記解析部により前記エラー関係にあると判定された場合に、当該判定の根拠となった前記時系列上のタイミングを前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、撮像部が検査対象画像を生成すると、検査実行部が予め設定された検査内容を実行する。検査内容の実行に必要なトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号は、ログ収集部により実行ログとして時系列に収集される。収集された実行ログに基づいて解析部が相対的な関係にある複数の信号を特定し、特定された信号が、記憶部に記憶されている正常情報に基づいてエラー関係にあるか否かを判定する。エラー関係にあると判定された場合には、その判定の根拠となった時系列上のタイミングを実行ログと共に表示部に表示することができるので、ユーザは、パラメータに関するエラー以外のエラーであっても、そのエラーの発生箇所や発生理由を特定し易くなる。
【0009】
前記解析部は、前記検査実行部が、トリガまたはコマンドの受け取り準備ができていない状態を示す第1信号を出力している間に、前記外部機器からトリガまたはコマンドを入力している状態を示す第2信号が入力された場合に、前記第1信号及び前記第2信号はエラー関係であると判定することもできる。例えば、トリガ入力禁止状態にあるときに検査実行部がトリガ受付可能信号を出さないように設定されている場合に、外部機器は、検査実行部のトリガ受付可能信号を確認してからトリガを出力するため、検査実行部にはトリガが入ってこない状況になり得る。このような状況は、システム上エラーにはならないが、「外部機器から検査実行部にトリガを入力したい」というユーザの意図に反する設定状態である。このことを解析部によって特定し、ユーザに通知できるので、その原因の特定に要するユーザの負担が軽減される。
【0010】
また、別の態様として、前記解析部は、前記検査実行部が、前記検査内容の実行結果が読取できない状態を示す第1信号を出力している間に、当該検査実行部から出力されたデータを読み取った状態を示す第2信号が前記外部機器から入力された場合に、前記第1信号及び前記第2信号はエラー関係であると判定してもよい。
【0011】
画像検査システムは、前記検査内容の実行過程で発生した不具合に関する不具合情報の入力をユーザから受け付けるための入力部をさらに備えていてもよい。この場合、前記解析部は、前記不具合情報に関するトリガ、コマンド、または結果出力の実行ログを解析し、前記表示制御部は、前記解析部による前記不具合情報に基づく解析結果に基づいて、当該不具合情報に関するトリガ、コマンド、または結果出力の設定状態に関するコメントを前記表示部に表示させることができる。例えば、「結果が出力されない」という不具合情報がユーザから受け付けられた場合、検査内容の実行過程において、そもそも結果の出力が禁止状態になっていると、「結果が出力されない」ままなので、このような場合に、設定状態に関するコメントを表示部に表示させることで、ユーザは「結果が出力されない」ことの原因を把握でき、対策の検討が容易に行えるようになる。
【0012】
前記入力部は、トリガ、コマンド、または結果出力に関する不具合情報の候補を前記表示部に表示させ、ユーザによる前記候補の選択操作に基づいて前記不具合情報の入力を受け付けてもよい。これにより、ユーザによる入力操作が容易になる。
【0013】
前記表示制御部は、前記解析部による解析結果に基づいて、前記エラー関係にある複数の信号が正常な関係である場合の実行ログをサンプルログとして前記表示部に表示させることもできる。前記表示制御部は、前記解析部により特定されたエラーに対応するサンプルログを前記表示部に表示させてもよい。
【0014】
すなわち、エラー関係にある複数の信号が特定できたとしても、複数の信号の相対的な関係がどうなっていれば良いかまでユーザがすぐに理解できないこともある。本構成では、複数の信号が正常な関係にある場合のサンプルログを提示できるのでユーザによるエラーの解決がより容易になる。
【0015】
前記表示制御部は、前記実行ログ中に前記エラー関係が複数あると前記解析部により判定された場合に、当該判定の根拠となった前記時系列上の複数のタイミングを順次、前記表示部に表示させてもよいし、時系列上の複数のタイミングを同時に前記表示部に表示させてもよい。複数のタイミングを順次表示させる場合には、タイミングごとに確認し、解決策の検討が可能になる。また、複数のタイミングを同時に表示させる場合には、複数のタイミングの位置関係等を確認しながら、検証を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、検査内容の実行時に送受信されるトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号を時系列に示す実行ログを表示部に表示するとともに、実行ログを解析して特定した相対的な関係にある複数の信号がエラー関係にある場合に、その判定の根拠となった時系列上のタイミングを表示部に表示することができるので、パラメータに関するエラー以外のエラーもユーザに通知することができ、エラー発生時のユーザの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る画像検査システムの構成を示す概略図である。
図2】画像検査システムのブロック図である。
図3】信号及びデータの割り付け例を示す図である。
図4】実行ログの一例を示すタイミングチャートである。
図5】実行ログの別の例を示すタイミングチャートである。
図6】正常時のトリガのハンドシェイクを示すタイムチャートである。
図7】正常時のコマンドのハンドシェイクを示すタイムチャートである。
図8】実行ログの波形の情報に基づいて特定できるエラー時の図7相当図である。
図9】実行ログの波形の情報に基づいて特定できないエラー時の図7相当図である。
図10】正常時の結果出力のハンドシェイクを示すタイムチャートである。
図11】エラー時の図10相当図である。
図12】設定用画面の一例を示す図である。
図13】実行ログ中にエラー関係が複数ある場合において1つめのエラー関係が生じたタイミングを表示する例示す図である。
図14】実行ログ中にエラー関係が複数ある場合において2つめのエラー関係が生じたタイミングを表示する例示す図である。
図15】実行ログ中にエラー関係が複数ある場合において3つめのエラー関係が生じたタイミングを表示する例示す図である。
図16】実行ログ中にエラー関係が複数ある場合においてエラー関係が生じた複数のタイミングを同時に表示する例示す図である。
図17】画像検査システムが実行する処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る画像検査システム1の構成を示す概略図である。画像検査システム1は、検査対象物であるワークWを撮像して得られたワーク画像(検査対象物画像)に基づいて検査を行うシステムである。検査には、例えば傷の有無、測定した寸法が公差範囲内であるか否かの判定、ワークWが良品であるか不良品であるかの判定等が含まれている。
【0020】
図1では、画像検査システム1の運用時を示しており、画像検査システム1は、ワークWを撮像するカメラ2と、カメラ2で生成されたワーク画像に基づいて検査等を行う画像処理コントローラ7と、クライアント装置8とを備えている。画像検査システム1は、その他にもPLC(Programmable Logic Controller)のような外部機器9を備えていてもよく、外部機器9は、画像検査システム1の構成要素としてもよいし、画像検査システム1の構成要素としなくてもよい。画像検査システム1の場合、検査処理を画像処理コントローラ7が有する制御部70で行うので、カメラ2は、画像生成機能を搭載したノーマルカメラであってもよい。カメラ2の台数は1台に限られるものではなく、2台以上の任意の台数とすることができる。カメラ2を複数台設ける場合には、各カメラ2がワークWの異なる部位を撮像するように設置することができる。尚、画像検査システム1のカメラ2は、画像生成機能に加えて画像検査機能を搭載したスマートカメラであってもよい。
【0021】
画像検査システム1は、複数のワークWが順次搬送される現場で使用される。このような現場では、ベルトコンベアCのような搬送装置によってワークWが所定の速度で搬送されている。カメラ2は、ベルトコンベアCで搬送されているワークWが当該カメラ2の視野範囲に入った時に当該ワークWを撮像するように、例えば外部機器9や画像処理コントローラ7等によって制御される。これを繰り返すことで、ベルトコンベアCで搬送されている複数のワークWをカメラ2が順次撮像する。
【0022】
画像検査システム1は、ワークWをカメラ2で撮像する時に当該ワークWに光を照射する照明10(図2に示す)も備えている。本実施形態では、照明10がカメラ2に設けられている場合について説明するが、照明10は、カメラ2とは別体とされた外部照明であってもよい。
【0023】
尚、図示しないが、カメラ2は、停止しているワークWを撮像することも可能である。また、カメラ2は、例えばロボットアーム等に取り付けた状態で運用することもでき、画像検査システム1の運用形態は特に限定されない。
【0024】
ワークWは、どのような形状、大きさであってもよい。ワークWには、例えば表面に光沢を持った金属製のワーク等が含まれている。
【0025】
クライアント装置8は、制御部80と、記憶部81と、表示部82と、操作部83とを備えている。制御部80は、例えばCPUやASIC等のプロセッサ、RAM、ROM等のハードウェアによって構成されており、当該ハードウェアが所定のプログラムを実行することで、検査設定部80aが検査設定処理等を実行可能になる。プログラムは、ROMや記憶部81等に記憶されている。記憶部81は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。
【0026】
表示部82は、液晶ディスプレイ装置や有機ELSEディスプレイ装置等で構成されている。操作部83は、例えばキーボード83a及びマウス83bを含んでいる。キーボード83a及びマウス83bの操作状態は検査設定部80aによって検出される。操作部83は、キーボード83a及びマウス83bに限定されるものではなく、いわゆるタッチパネル式の操作部であってもよい。
【0027】
検査設定部80aは、カメラ2が有するイメージセンサ21Aにより生成されたワーク画像に基づいてワークを検査するための検査内容を設定する部分である。検査設定部80aは、例えば図12に示すような設定用画面200を生成して表示部82に表示させる。設定用画面200には、撮像ツール201及び検査ツール202を含む検査設定を作成するための検査設定領域203と、プロパティ設定領域204とが設けられている。検査設定領域203では、撮像に関する各種設定、検査に関する各種設定が例えばパレット形式で行えるようになっている。プロパティ設定領域204では、例えばカメラや照明等の詳細設定が行えるようになっている。設定用画面200では、ユーザが操作部83を操作することで、各種設定が可能になっている。
【0028】
図2に示すように、カメラ2は、照明10の他に、複数のレンズで構成された光学系20と、センサ基板21と、メイン基板22と、記憶部23とを備えている。光学系20には、照明10によってワークWに照射されて当該ワークWの表面で反射した光や、ワークWの表面で反射した自然光及び環境光等が入射する。
【0029】
センサ基板21とメイン基板22とは相互に通信可能に接続されている。センサ基板21には、イメージセンサ21Aが設けられている。イメージセンサ21Aは、例えばCOMSイメージセンサやCCDイメージセンサ等のように、多数の受光素子で構成された受光面を有している。イメージセンサ21Aには、撮像制御部21aと、光電変換部21bとが設けられている。撮像制御部21aは、イメージセンサ21Aの露光時間やゲイン等を制御する部分である。光電変換部21bは、光学系20から出射して受光面で受光した光の強弱を電荷の量に変換するとともに電気信号に変換することで、ワークWを撮像したワーク画像を生成する部分である。よって、イメージセンサ21Aは、本発明の撮像部の一例に相当する部材であり、図1に示すようにワークWが順次搬送される現場では、ワーク画像を順次生成し、出力する。
【0030】
カメラ2は、生成したワーク画像をメイン基板22に出力する。メイン基板22には、演算部22A、イメージセンサ制御部22B及び出力部22Cが設けられている。演算部22A、イメージセンサ制御部22B及び出力部22Cは、例えばCPUやASIC等のプロセッサ、RAM、ROM等のハードウェアによって構成されており、当該ハードウェアが所定のプログラムを実行することで、演算部22A、イメージセンサ制御部22B及び出力部22Cがそれぞれ処理を実行可能になる。プログラムは、ROMや記憶部23等に記憶されている。
【0031】
演算部22Aには、カメラ2が生成したワーク画像が入力される。演算部22Aでは、ワーク画像に対して画像処理が実行されて出力画像が生成される。イメージセンサ制御部22Bは、イメージセンサ21Aの撮像制御部21aに制御信号を出力する部分であり、イメージセンサ制御部22Bから出力された制御信号に基づいて、露光時間が所定の時間となるように、また、ゲインが所定のゲインとなるように撮像制御部21aが露光時間及びゲインを制御する。出力部22Cは、演算部22Aで生成された出力画像を記憶部23や画像処理コントローラ7に出力する部分である。
【0032】
記憶部23は、例えば集積回路を用いた記憶装置等で構成されており、メイン基板22に接続されて当該メイン基板22との間でデータの送受信が行えるようになっている。メイン基板22側で生成したデータ(画像データ等を含む)を記憶部23に記憶させたり、記憶部23に記憶されているデータをメイン基板22側から読み込んだりすることが可能である。
【0033】
カメラ2と画像処理コントローラ7とは、第1通信線L1によって接続されている。また、外部機器9が設置される場合には、外部機器9と画像処理コントローラ7とは第2通信線L2によって接続される。さらに、画像処理コントローラ7とクライアント装置8とは第3通信線L3によって接続される。
【0034】
画像処理コントローラ7は、制御部70と、通信インタフェース部71と、記憶部72と、入力部73とを備えており、通信インタフェース部71、記憶部72及び入力部73は、制御部70に接続されている。制御部70は、検査実行部70a、ログ収集部70b、解析部70c及び表示制御部70dを含んでいる。例えば入力部73は、制御部70によって構成されていてもよく、また、検査実行部70a、ログ収集部70b、解析部70c及び表示制御部70dは制御部70以外のプロセッサ等によって構成されていてもよく、上述した区分けは一例に過ぎない。
【0035】
制御部70は、例えばCPUやASIC等のプロセッサ、RAM、ROM等のハードウェアによって構成されており、当該ハードウェアが所定のプログラムを実行することで、検査実行部70a、ログ収集部70b、解析部70c及び表示制御部70dがそれぞれ処理を実行可能になる。プログラムは、ROMや記憶部72等に記憶されている。
【0036】
検査実行部70aは、後述するクライアント装置8が有する検査設定部80aにより設定された検査内容を実行する部分である。検査内容には、例えば、パターンサーチ、エッジ検出、ブロブ処理、有無検査、傷検査、寸法測定、結果表示、結果出力等が含まれている。
【0037】
通信インタフェース部71は、第1通信線L1、第2通信線L2及び第3通信線L3が接続される部分である。第1通信線L1及び通信インタフェース部71を介して画像処理コントローラ7とカメラ2との間で、各種信号の送受信を実行するとともに、カメラ2で生成されたワーク画像を画像処理コントローラ7に送信する。第2通信線L2及び通信インタフェース部71を介して画像処理コントローラ7と外部機器9との間で、各種信号の送受信を実行する。第3通信線L3及び通信インタフェース部71を介して画像処理コントローラ7とクライアント装置8との間で、各種信号や情報の送受信を実行する。
【0038】
画像処理コントローラ7は、検査実行部70aによる検査内容の実行に必要なトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号の送受信を外部機器9との間で、第2通信線L2及び通信インタフェース部71を介して実行する。外部機器9は、例えばワークWがカメラ2の視野範囲に入るとトリガを発行し、発行したトリガは、第2通信線L2及び通信インタフェース部71を介して画像処理コントローラ7で受信される。トリガは、カメラ2に撮像させるときにのみ出力される。図3には、4つのカメラ2が接続可能な場合の信号及びデータの割り付け例を示しており、図中、アドレス0001:bit0~bit3に示すTRG1~4がトリガの例であり、カメラ2ごとに異なるトリガが存在している。
【0039】
コマンドは、外部機器9から画像処理コントローラ7に送信される信号である。コマンドには、当該コマンドの種類を識別するための識別番号と、各識別番号(コマンド)に応じたパラメータ(例えばワークの品種を通知する番号など)をメモリに書き込み、対応するアドレスにデータを出力する。図3の受信側のバイト割付領域に、コマンドナンバーとコマンドパラメータがある。ここでコマンドの実行種類などを指定し、同じ受信側のビット領域のコマンドリクエスト(コマンド実行要求)を「H」(ON)にすることでコマンドが画像処理コントローラ7に送信される。
【0040】
検査結果の出力に関する信号は、画像処理コントローラ7から外部機器9に送信される信号である。画像処理コントローラ7の送信側のバイト領域(Result Data)に結果を出力し、同ビット領域の結果出力完了通知(Result Ready)を「H」(ON)にすることで、外部機器9に結果の読み取りが可能な信号が送信される。このように、トリガ、各種コマンド、検査実行部70aによる検査結果の出力に関する信号は画像処理コントローラ7と外部機器9との間で送受信される。
【0041】
また、画像検査システム1には、ハンドシェイク機能も搭載されている。ハンドシェイクとは、画像処理コントローラ7と外部機器9とが互いに命令(信号)を受け取った場合に受け取ったことを伝え合うようにする仕組みのことである。ハンドシェイク機能を使用しない場合は、命令の受け取ったタイミングが不明確になるため、十分な時間を開けてから次の命令を打つ必要があり、処理が長引くことがある。尚、処理速度が求められない検査では、ハンドシェイク機能をOFFにすることも可能である。
【0042】
画像処理コントローラ7で受信される信号は、上述したように複数あり、それら複数の信号のなかには相対的な関係にある複数の信号が含まれる。例えば、画像処理コントローラ7の検査実行部70aが、トリガの受け取り準備ができていない状態を示すトリガ受取不可信号(第1信号)と、外部機器9から画像処理コントローラ7へトリガを入力している状態を示すトリガ入力信号(第2信号)とが相対的な関係にある2つの信号である。また、画像処理コントローラ7が、コマンドの受け取り準備ができていない状態を示すコマンド受取不可信号(第1信号)と、外部機器9から画像処理コントローラ7へコマンドを入力している状態を示すコマンド信号(第2信号)とが相対的な関係にある2つの信号である。
【0043】
相的な関係にある2つの信号は上記以外にもある。例えば、画像処理コントローラ7が、検査内容の実行結果が読取できない状態を示す読取不可信号(第1信号)と、検査実行部70aから出力されたデータを読み取った状態を示す読取完了信号(第2信号)とが相対的な関係にある2つの信号である。
【0044】
記憶部72は、相対的な関係にある複数の信号のうち、第1信号に対する第2信号の正常な状態を示す正常情報を記憶する部分である。トリガ受取不可信号に対するトリガ信号の正常な状態とは、トリガ受取不可信号がOFFになっている時にトリガ信号を受信することであり、この状態を示す情報が正常情報である。また、コマンド受取不可信号に対するコマンド信号の正常な状態とは、コマンド受取不可信号がOFFになっている時にコマンド信号を受信することであり、この状態を示す情報が正常情報である。また、読取不可信号に対する読取完了信号の正常な状態とは、読取不可信号がOFFになっている時に読取完了信号信号を受信することであり、この状態を示す情報が正常情報である。このように、正常情報は複数あり、複数の正常情報がそれぞれ記憶部72に記憶される。
【0045】
ログ収集部70bは、検査実行部70aが検査内容を実行する時に、通信インタフェース部71を介して送受信されるトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号を時系列に示す実行ログを収集する部分である。ログ収集部70bが収集した実行ログは、例えば記憶部72等に記憶しておくことができるようになっている。
【0046】
ログ収集部70bが収集した実行ログの一例を図4に示している。図4では、第1ワークW1、第2ワークW2、第3ワークW3が順次搬送された場合を示しており、画像処理コントローラ7側から見える状態を示している。ログ収集部70bで収集させた実行ログは、表示制御部70dがクライアント装置8の表示部82を制御し、当該クライアント装置8の表示部82に表示させる。これにより、ユーザは図4に示すようなタイミングチャートに基づいて、実行ログを確認することができる。実行ログは、例えば所定のユーザインタフェース画面に組み込まれた状態で表示され、このユーザインタフェース画面の表示も表示制御部70dがクライアント装置8の表示部82に表示させる。図示しないが、表示制御部がクライアント装置8に設けられていてもよい。また、表示制御部がユーザインタフェース画面の生成を行い、生成したユーザインタフェース画面に実行ログを組み込んだ状態で表示部82に表示させてもよい。
【0047】
図4中、T1は、トリガを受けてカメラ2がワークWを撮像している期間を示す信号であり、撮像中を示している。第1ワークW1、第2ワークW2、第3ワークW3が順次搬送された場合なので、第1ワークW1の撮像期間、第2ワークW2の撮像期間、第3ワークW3の撮像期間が順に存在することになる。
【0048】
T2は、検査のための各種演算を実行している期間を示す信号であり、計測中を示している。計測も撮像と同様に順に行われるので、第1ワークW1の計測期間、第2ワークW2の計測期間、第3ワークW3の計測期間が順に存在することになる。あるワークの計測期間中は、別のワークの計測はできない状態になる。
【0049】
T3は、検査結果を出力している期間を示す信号であり、出力期間を示している。検査結果の出力も撮像と同様に順に行われるので、第1ワークW1の出力期間、第2ワークW2の出力期間、第3ワークW3の出力期間が順に存在することになる。
【0050】
T4は、上述したハンドシェイク機能が有効(ON)になっているか、無効(OFF)になっているかを示す信号である。T5は、トリガ(撮像トリガ)の受付が可能であるか、不可であるかを示すトリガ受付信号である。このT5は、画像処理コントローラ7が、トリガの受け取り準備ができていない状態を示すトリガ受取不可信号の一例である。T6は、外部機器9から画像処理コントローラ7へトリガを入力している状態を示すトリガ入力信号の一例であり、ONはトリガを入力している状態を示し、OFFはトリガを入力していない状態を示す。
【0051】
T7は、画像処理コントローラ7が、トリガを受け取ったことを示すトリガ受付通知信号であり、ONはトリガを受け取ったことを示し、OFFはトリガを受け取っていないことを示す。
【0052】
T8は、検査内容の実行結果の出力が完了したか、未完了であるかを示す出力完了通知信号であり、ONは検査内容の実行結果の出力が完了したことを示し、OFFは検査内容の実行結果の出力が完了していないことを示す。
【0053】
T9は、コマンドの実行を要求しているか、否かを示すコマンド実行要求信号であり、ONはコマンドの実行を要求している状態を示し、OFFはコマンドの実行を要求していない状態を示す。
【0054】
T10は、コマンドの受付が可能であるか、不可であるかを示すコマンド受付可能信号である。このT10は、画像処理コントローラ7が、コマンドの受け取り準備ができていない状態を示すコマンド受取不可信号の一例である。
【0055】
T11は、コマンドの実行が完了したか、否かを示すコマンド実行完了通知信号であり、ONはコマンドの実行が完了した状態を示し、OFFはコマンドの実行が完了していない状態を示す。
【0056】
図2に示す解析部70cは、ログ収集部70bが収集した実行ログを解析する部分である。図4に示すように、表示部82に表示されるタイミングチャートには、解析実行ボタン101が設けられており、解析実行ボタン101がユーザによって操作されると、解析部70cがユーザによる操作を検出し、以下の解析処理を実行する。
【0057】
具体的には、解析部70cは、まず、ログ収集部70bが収集した実行ログを解析することで、相対的な関係にある複数の信号を特定し、記憶部72から、特定した相対的な関係にある複数の信号に関する正常情報を読み込む。そして、ログ収集部70bは、記憶部72に記憶された正常情報に基づいて、相対的な関係にある複数の信号がエラー関係にあるか否かを判定する。解析部70cが解析する実行ログの範囲(時間軸方向の範囲)は、ユーザが予め指定してもよいし、記録されている実行ログの全範囲であってもよい。
【0058】
エラー関係の種別は複数ある。トリガ受取不可信号とトリガ入力信号とが相対的な関係にある複数の信号であると解析部70cにより特定された場合、画像処理コントローラ7の検査実行部70aが、トリガの受け取り準備ができていない状態を示す第1信号を出力している間に、外部機器9からトリガを入力している状態を示す第2信号が入力された場合には、解析部70cは、トリガ受取不可信号及びトリガ入力信号はエラー関係であると判定する。つまり、カメラ2の撮像の準備ができていない状態で撮像開始のトリガが入力される状況を解析部70cが取得し、エラー関係であると判定できる。
【0059】
また、コマンド受取不可信号とコマンド入力信号とが相対的な関係にある複数の信号であると特定された場合、画像処理コントローラ7の検査実行部70aが、コマンドの受け取り準備ができていない状態を示す第1信号を出力している間に、外部機器9からコマンドを入力している状態を示す第2信号が入力された場合には、解析部70cは、コマンド受取不可信号及びコマンド入力信号はエラー関係であると判定する。つまり、コマンドの受取準備ができていない状態でコマンドが入力されるということは、コマンドの命令内容(コマンドの種類を示す番号や実行時のパラメータ)に誤りがあるということであり、この状況を解析部70cが取得し、エラー関係であると判定できる。
【0060】
また、検査内容の実行結果が読取できない状態を示す読取不可信号と、データを読み取った状態を示す読取完了信号とが相対的な関係にある複数の信号である解析部70cにより特定された場合、検査実行部70aが読取不可信号を出力している間に、外部機器9から読取完了信号が入力された場合には、解析部70cは、読取不可信号及び読取完了信号はエラー関係であると判定する。つまり、画像処理コントローラ7から結果が出力されていないのに、外部機器9が結果を読み込んだ状況を解析部70cが取得し、エラー関係であると判定できる。尚、ハンドシェイク機能がONになっている時は、外部機器9が結果を読み込んだという信号を画像処理コントローラ7に送るため、エラー関係の判定が可能になる。
【0061】
上述したエラーは、実行ログの波形の情報に基づいて特定可能なエラーであるが、実行ログの波形の情報だけでは特定することができないエラーもある。そのようなエラーも複数あり、これらはユーザの設定ミスに起因するものである。
【0062】
例えばトリガの受付が不可である状態の時、トリガの受付準備が完了したという信号を画像処理コントローラ7は出力しない。この場合、正しくプログラムされた外部機器9は、画像処理コントローラ7の受付準備が完了したことを確認してからトリガを出力するため、トリガが入力されない状況が続いてしまう。また、外部機器9がトリガのアドレスを間違えて異なるアドレスに命令を出そうとしているなどして、トリガが入力されない状況が続いてしまうこともある。
【0063】
画像処理コントローラ7の結果出力が禁止状態である場合や、画像処理コントローラ7が出力した結果を外部機器9が読み取った後、ハンドシェイク機能がONであるのに結果を受け取ったことを通知しない場合もある。
【0064】
また、外部機器9がコマンドの実行要求を通知する信号を送信しない場合もある。すなわち、コマンドの命令内容を入力してから実行要求を通知する信号を送信しないとコマンドは実行されないが、ユーザはフラグをたててあれば命令内容を書き込んだ瞬間に命令が実行されると思い込んでいることがある。
【0065】
外部機器9がコマンドの実行要求をした後、画像処理コントローラ7はコマンドの受付が不可能な状態に遷移するが、コマンドの実行完了が通知される前に実行要求のフラグを下げてしまうと、外部機器9が実行完了したかどうか分からないため、実行完了通知やエラー通知が出力されない場合がある。
【0066】
表示制御部70dは、相対的な関係にある複数の信号が解析部70cによりエラー関係にあると判定された場合に、エラー関係にあるとの判定の根拠となった時系列上のタイミングを表示部82に表示させる。
【0067】
図4に示す実行ログの場合、T10のコマンド受付可能信号がコマンド受取不可となっているタイミングで、T9のコマンド実行要求信号がコマンドの実行を要求している状態となっている。このタイミングは、コマンド受付可能信号と、コマンド実行要求信号とがエラー関係にあるとの判定の根拠となったタイミングであり、指示線100で示している。指示線100は、例えば表示制御部70dが生成し、実行ログ上に重ねた状態で表示部82に表示させる。上記タイミングをユーザに示す形態は、指示線100に限られるものではなく、色分けによる表示形態や、文字や記号による表示形態等であってもよい。
【0068】
図4に示す例は実行ログの波形の情報に基づいて判定可能なエラーであるが、図5に示す例では、実行ログの波形の情報のみではエラーを判定できない。すなわち、図5に示す実行ログには、T12の出力禁止信号が含まれている。T12は、画像処理コントローラ7が結果の出力を禁止されているか、許可されているかを示す信号であり、ONは結果の出力を禁止されている状態を示し、OFFは結果の出力を許可されている状態を示している。出力禁止信号がONになっているので、画像処理コントローラ7は結果の出力を禁止されており、そのため、波形の情報のみではエラーを判定できなくなっている。このような場合は、解析部70cが、記憶した実行ログを事後的に解析して、ユーザが意図しない挙動の原因(設定ミス)を特定し、ユーザに示すことができる。例えばコメント表示領域102にエラーの種別やエラーの理由等が表示される。
【0069】
図6は、正常時のトリガのハンドシェイクのタイムチャートを示している。T5のトリガ受付信号がONになっている状態でT6のトリガを受け付けることができ、T6のトリガを受け付けると、T7のトリガ受付通知信号を出力する。これにより、画像処理コントローラ7がトリガを受け取ったことを外部機器9に伝えることができる。
【0070】
図7は、正常時のコマンドのハンドシェイクのタイムチャートを示している。T9のコマンド実行要求信号がOFFからONになると、T10のコマンド受付可能信号が受付不可になり、その後、T11のコマンド実行完了通知信号を出力する。これにより、画像処理コントローラ7がコマンドを受け取ったことを外部機器9に伝えることができる。コマンドナンバー及びコマンドパラメータは外部機器9が出力する。
【0071】
図8は、実行ログの波形の情報に基づいて特定できるエラー時を示している。図8では、T10のコマンド受付可能信号が受付不可の状態にあるときに、T9のコマンド実行要求信号がONになっている。この場合、解析部70cは、相対的な関係にあるコマンド受付可能信号とコマンド実行要求信号がエラー関係にあることを判定する。表示制御部70dは、相対的な関係にあるコマンド受付可能信号とコマンド実行要求信号がエラー関係であったタイミングを示す指示線100を表示部82に表示させる。
【0072】
図9は、実行ログの波形の情報に基づいて特定できないエラー時を示している。図9では、T9のコマンド実行要求信号をOFFにするタイミングが間違っている。すなわち、画像処理コントローラ7側は、コマンドの実行完了を確認する必要がなければ、T10のコマンド受付可能信号をOFFにすることは問題無いが、コマンドの実行完了がONにならなくなるため、コマンドの実行完了通知信号を確認したい外部機器9のラダー回路を用いているときは、ユーザが意図したとおりの動作が実行されなくなる。この場合、表示制御部70dは、相対的な関係にあるコマンド実行要求信号とコマンド受付可能信号がエラー関係であったタイミングを示す指示線100を表示部82に表示させる。
【0073】
図10は、正常時の結果出力のハンドシェイクのタイムチャートを示している。T13は、結果読取が完了したか、否かを示す結果読取完了信号であり、ONは結果読取が完了した状態を示している。T14は、結果読取が可能であるか、否かを示す結果読取可能信号である。
【0074】
図11は、結果出力のエラー時を示しており、T14の結果読取可能信号が不可である時(データの書き込み中)に結果を読み取る設定となっている。この場合、表示制御部70dは、相対的な関係にある結果読取可能信号と結果読取完了信号がエラー関係であったタイミングを示す指示線110を表示部82に表示させる。
【0075】
図2に示す画像処理コントローラ7の入力部73は、検査内容の実行過程で発生した不具合に関する不具合情報の入力をユーザから受け付けるための部分である。図4に示すように、表示部82に表示させる画面に、検査内容の実行過程で発生した不具合に関する不具合情報を入力するための不具合情報入力領域104が設けられている。不具合情報入力領域104では、ユーザが操作部83を操作することで、不具合情報の入力が可能になっている。不具合情報入力領域104に入力された不具合情報は、画像処理コントローラ7の入力部73で受け付けられる。不具合情報の例を挙げると、例えばトリガ関連、結果出力関連、コマンド関連等がある。
【0076】
不具合情報の入力は文字入力等であってもよいが、本実施形態では、入力部73が、トリガ、コマンド、または結果出力に関する不具合情報の候補を表示部82に表示させ、ユーザによる候補の選択操作に基づいて不具合情報の入力を受け付けるようにしている。不具合情報の候補は、上記トリガ関連の候補、結果出力関連の候補、コマンド関連の候補等であり、これら候補を不具合情報入力領域104に一覧表示させておき、ユーザが任意の候補を選択可能にしてもよいし、これら候補をプルダウン形式のメニュー選択ウィンドウのような選択可能形態で表示してもよい。
【0077】
不具合情報入力領域104にトリガ関連の不具合情報が入力されると、解析部70cは、不具合情報に関するトリガの実行ログを解析する。不具合情報入力領域104にコマンド関連の不具合情報が入力されると、解析部70cは、不具合情報に関するコマンドの実行ログを解析する。不具合情報入力領域104に結果出力関連の不具合情報が入力されると、解析部70cは、不具合情報に関する結果出力の実行ログを解析する。
【0078】
表示制御部70dは、解析部70cによる不具合情報に基づく解析結果に基づいて、当該不具合情報に関するトリガ、コマンド、または結果出力の設定状態に関するコメントを表示部82に表示させる。具体的には、図5に示すように、解析部70cによる解析結果に基づくコメントが表示されるコメント表示領域102を表示制御部70dが生成し、表示部82に表示させる。コメント表示領域102には、エラーの種別、エラーの理由、エラー解消のヒント等が表示される。
【0079】
例えば、「結果が出力されない」という不具合情報がユーザから受け付けられた場合、検査内容の実行過程において、そもそも結果の出力が禁止状態になっていると、「結果が出力されない」ままなので、このような場合に、設定状態に関するコメントを表示部82に表示させることで、ユーザは「結果が出力されない」ことの原因を把握でき、対策の検討が容易に行えるようになる。コメントには、トリガ関連のコメント、結果出力関連のコメント、コマンド関連のコメントがあり、予め記憶部81等に記憶されている。
【0080】
相対的な2つの信号の関係がエラー関係にあると判定された場合、表示制御部70dは、解析部70cによる解析結果に基づいて、エラー関係にある複数の信号が、正常な関係である場合の実行ログをサンプルログとして表示部82に表示させることもできる。また、表示制御部70dは、解析部70cにより特定されたエラーに対応するサンプルログを表示部82に表示させることもできる。サンプルログの例は、例えば図6図7図10に示すような波形(タイミングチャート)で示すことができる。
【0081】
実行ログ中にエラー関係が複数存在する場合がある。この場合、解析部70cは、実行ログを解析することで、エラー関係を複数特定する。表示制御部70dは、実行ログ中にエラー関係が複数あると解析部70cにより判定された場合に、当該判定の根拠となった時系列上の複数のタイミングを順次、表示部82に表示させる。
【0082】
解析部70cによる実行ログの解析の結果、第1のエラー関係、第2のエラー関係、第3のエラー関係が判定された場合について説明する。第1のエラー関係、第2のエラー関係、第3のエラー関係は時系列に並んでいるものとする。図13は、第1のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミング(第1のタイミング)を指示線100で示している。表示部82には、入力部73が戻りボタン105と送りボタン106を表示させている。ユーザが送りボタン106を操作すると、その操作が入力部73で受け付けられて、図14に示す画面に遷移する。図14に示す画面では、第2のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミング(第2のタイミング)を指示線100で示している。その後、ユーザが送りボタン106を操作すると、その操作が入力部73で受け付けられて、図15に示す画面に遷移する。図15に示す画面では、第3のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミング(第3のタイミング)を指示線100で示している。尚、図15に示す画面で戻りボタン105が操作されると、図14に示す画面に遷移し、図14に示す画面で戻りボタン105が操作されると、図13に示す画面に遷移する。これにより、エラー関係が判定されたタイミングごとにエラーの内容を確認し、解決策の検討が可能になる。
【0083】
このように順次表示させる形態に限らず、表示制御部70dは、実行ログ中にエラー関係が複数あると解析部70cにより判定された場合に、当該判定の根拠となった時系列上の複数のタイミングを同時に表示部82に表示させてもよい。例えば図16に示すように、第1のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミングである第1のタイミングを第1の指示線100aで表示し、第2のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミングである第2のタイミングを第2の指示線100bで表示し、第3のエラー関係の判定の根拠となった時系列上のタイミングである第3のタイミングを第3の指示線100cで表示する。これにより、複数のタイミングの位置関係等を確認しながら、検証を行うことができる。また、どのワークについてエラーが発生し、さらに当該ワークの撮像中、計測中、または出力期間のどのタイミングにおいてエラーが発生したかも分かるため、画像検査のエラーの特定や改善においてユーザ負担を軽減できる。
【0084】
解析部70cが実行ログを解析してエラー関係を複数特定した場合、ユーザから指定された実行ログの範囲内に存在するエラー関係のみを表示部82に表示してもよい。また、あるコマンドの状態が所定の条件を満たしていたら、そのコマンドに絞ったエラー関係の解析を実行してもよい。例えば、出力禁止コマンドがONになっている時間が所定時間以上の場合には、コマンド関連に絞ってエラー関係の解析を実行してもよい。
【0085】
画像検査システム1は以上のように構成されており、画像検査システム1を用いた処理の一例について図17に示すフローチャートに基づいて説明する。スタート後のステップSA1では、クライアント装置8の操作部83、図12に示す設定用画面200を表示させた表示部82、検査設定部80a等を用いて検査設定を行う。
【0086】
ステップSA2では、検査を実行する。すなわち、カメラ2で生成されたワーク画像に基づいて、画像処理コントローラ7の検査実行部70aが、検査設定部80aで設定された検査設定にしたがって検査を実行する。ステップSA3では、ステップSA2で実行した検査の過程でエラーが発生する。
【0087】
ステップSA4では、ログ収集開始の指示を受け付ける。ステップSA5では、再度検査を実行して、ログ収集部70bが実行ログを収集する。ステップSA6では、図4に示すような不具合情報入力領域104を介してユーザによるエラー種別の選択等、不具合情報の入力を受け付ける。
【0088】
ステップSA7では、解析部70cが実行ログを解析する。ハンドシェイク用の波形のタイミングが確実に間違っているケースがあれば、そのタイミングをエラー関係の判定の根拠となったタイミングとして表示部82に表示させる(ステップSA8)。例えば、不適切なトリガやコマンドリクエスト、データ読み取りは、エラー関係であると判定される。
【0089】
また、ステップSA6で受け付けたエラー種別の選択により、ハンドシェイク用の波形がユーザの意図通りでないと解析される場合には、エラー関係の判定の根拠となったタイミングを表示部82に表示させる(ステップSA8)。例えばハンドシェイク機能を有効にしていても、トリガ、結果出力、コマンドの全ての種類でハンドシェイク機能を使うつもりはないケースがある。このようなユーザの意図を、エラー種別選択により汲み取ることで、ハンドシェイク機能を使いたい信号なのにハンドシェイク機能が実行されない動きになっていないことを提示できる。
【0090】
また、ハンドシェイク用の波形だけに限らず、ステップSA6で受け付けた情報に基づいてエラー関係であると判定できる場合には、エラー関係の判定の根拠となったタイミングを表示部82に表示させる(ステップSA8)。ステップSA8では、エラーに関する各種コメントも表示させることができる。
【0091】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る画像検査システム1によれば、カメラ2がワークを撮像してワーク画像を生成すると、画像処理コントローラ7の検査実行部70aが予め設定された検査内容を実行する。検査内容の実行に必要なトリガ、コマンド、または結果出力に関する信号は、ログ収集部70bにより実行ログとして時系列に収集される。収集された実行ログに基づいて解析部70cが相対的な関係にある複数の信号を特定し、特定された信号が、記憶部72に記憶されている正常情報に基づいてエラー関係にあるか否かを解析部70cが判定する。解析部70cがエラー関係にあると判定した場合には、その判定の根拠となった時系列上のタイミングを実行ログと共にクライアント装置8の表示部82に表示することができるので、ユーザは、パラメータに関するエラー以外のエラーであっても、そのエラーの発生箇所や発生理由を特定し易くなる。
【0092】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本開示に係る画像検査システムは、例えばワークを撮像したワーク画像に基づいて各種検査を実行する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 画像検査システム
21A イメージセンサ(撮像部)
70a 検査実行部
70b ログ収集部
70c 解析部
70d 表示制御部
71 通信インタフェース部
72 記憶部
73 入力部
80a 検査設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17