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特開2024-145765水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145765
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20241004BHJP
   A21D 13/19 20170101ALI20241004BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20241004BHJP
   A21D 8/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A23G1/32
A21D13/19
A21D13/31
A21D8/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058252
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 安寿子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG11
4B014GG17
4B014GK03
4B014GK07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP15
4B032DB13
4B032DB16
4B032DB21
4B032DB24
4B032DB36
4B032DE06
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK26
4B032DK34
4B032DK41
4B032DK66
4B032DP66
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、焼菓子生地やパン生地という水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類を提供することにある。
【解決手段】ショ糖及び/又はブドウ糖を規定量含有し、イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を特定の比率で含有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を全て満たす、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下
(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む
(C)前記、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1以下
【請求項2】
粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する、請求項1に記載の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【請求項3】
澱粉を1質量%以上10質量%以下含有する、請求項1又は請求項2に記載の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【請求項4】
前記(B)がイソマルツロースである、請求項1又は請求項2に記載の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【請求項5】
前記(B)がイソマルツロースである、請求項3に記載の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【請求項6】
下記(A)~(C)を全て満たすチョコレート類を、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用途で使用する、同時焼成後のチョコレート類の食感改良方法。
(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下
(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む
(C)前記、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1以下
【請求項7】
粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する、請求項6に記載の、同時焼成後のチョコレート類の食感改良方法。
【請求項8】
水分を含有するパン生地又は焼菓子生地と同時焼成後のチョコレート類の食感の変化を抑制させる、請求項3に記載の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは多くの菓子に使用される等、万人に好まれる食品である。各種チョコレート類と、クッキーなどのベーカリー生地と組み合わせた複合菓子類には、チョコレート類をパン類や菓子類と組み合わせて焼成された製品も多く存在する。
【0003】
パン類や菓子類に使用する焼成チョコレートに関して、特許文献1には、油脂が分離しにくい及び耐熱性を有するソフトチョコレートに適した加熱用チョコレートが開示されている。特許文献2には、総油分含量が20.0~32.2質量%、総油分含量に対するカカオ固形原料由来の固形分含量の比率が0.56以上であって、油脂の染み出し抑制に優れた、焼成食品用チョコレートが開示されている。しかしながら特許文献1、2には、焼成後のチョコレート類の食感については記載されていない。
【0004】
特許文献3には、イソマルツロース、マンニトール、還元パラチノースから選択される糖質を含有する、チョコレート生地自体を焼成する油脂性焼成菓子が記載されている。しかしながら、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地と同時焼成されるチョコレート類については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-045101号公報
【特許文献2】特開2012-070710号公報
【特許文献3】国際公開第2012/121327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、パン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類における、焼成後のチョコレート類の食感について考察した。パン生地又は焼菓子生地とともに焼成したチョコレート類は、パン生地又は焼菓子生地に含まれる水分の影響で食感が軟らかくなる課題を有することがわかった。
【0007】
焼成後のチョコレート類の食感を改良するために、機能成分を配合することが考えられるが、機能成分に由来する風味の影響と、機能成分の配合により元来チョコレート類に配合されていた原材料が減少し、チョコレート類の風味への影響が懸念される。したがって、焼成後のチョコレート類の食感の改良においても、チョコレート類の良好な風味を維持することが重要である。
【0008】
そこで本発明の目的は、焼菓子生地やパン生地という水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ショ糖及び/又はブドウ糖を規定量含有し、イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を特定の比率で含有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
(1) 下記(A)~(C)を全て満たす、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下
(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む
(C)前記、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1以下
(2) 粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する、(1)の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(3) 澱粉を1質量%以上10質量%以下含有する、(1)又は(2)の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(4) 前記(B)がイソマルツロースである、(1)又は(2)の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(5) 前記(B)がイソマルツロースである、(3)の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
(6) 下記(A)~(C)を全て満たすチョコレート類を、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用途で使用する、同時焼成後のチョコレート類の食感改良方法。
(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下
(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む
(C)前記、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1以下
(7) 粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する、(6)の、同時焼成後のチョコレート類の食感改良方法。
(8) 水分を含有するパン生地又は焼菓子生地と同時焼成後のチョコレート類の食感の変化を抑制させる、(3)の、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、焼菓子生地やパン生地という水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感を有する、チョコレート類を提供することができる。
好ましい態様として、焼菓子生地やパン生地という水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、焼成から時間が経っても、ザクザクとした硬い食感を有する、チョコレート類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地は、穀粉を原料とする生地をオーブン等で加熱して焼成される食品の生地であって、パン生地では、デニッシュ生地、クロワッサン生地、蒸しパン生地、ドーナツ生地、スコーン生地、パイ生地を、焼菓子生地では、クッキー生地、ビスケット生地、クラッカー生地、タルト生地、サブレ生地、マフィン生地、パウンドケーキ生地、フィナンシェ生地を例示することができる。
好ましい態様として、焼成前の生地中の水分は、30質量%~70質量%、より好ましくは35質量%~65質量%である。焼成前の生地中の水分を例示すると、食パン生地で約45質量%、菓子パン生地で約60質量%、ドーナツ生地で約60質量%、クロワッサン生地で約50質量%である。
本発明の同時焼成用チョコレート類は、水分を含有するパン生地との同時焼成用途で使用されることが好ましい。
本発明の同時焼成用チョコレート類を使用することで、前記水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感を有する、チョコレート類を提供することができる。
なお、日本食品標準成分表2015年版(七訂、文部科学省)によれば、焼成後のクロワッサンの水分は20質量%、クッキーの水分は3質量%である。
【0013】
本発明の水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類は、前記パン生地又は焼菓子生地と混合、内包、包餡、載置などに例示される手段により適宜組み合わされ、チョコレート類とパン生地又は焼菓子生地が接している状態のまま、オーブン焼成することができるチョコレート類である。
【0014】
本発明におけるチョコレート類とは、規約(「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」)ないし法規上の制約を受けるものではなく、ココアバター以外の動植物油脂を使用した各種チョコレート類および油脂加工食品、チョコレート製品を包含する。カカオマス、ココアバター、ココア、食用油脂類、糖類、粉乳、乳化剤、香料などの原材料を適宜配合し、常法によりチョコレート類を調製する。チョコレート類は、テンパー型チョコレート類、ノーテンパー型チョコレート類のいずれであっても、本発明の効果を得ることが可能である。
また、本発明の同時焼成用チョコレート類は、焼成前のチョコレート類中の水分含量が3質量%未満であることが好ましい。
【0015】
本発明の同時焼成用チョコレート類は、特定ないしは不定形状に成形されたものである。具体的には、プレート、タブレット、キューブやチャンク(立方体~直方体)、円柱、チップ、ペレット、粒状、球状、碁石状、薄片状、削り粉、フレーク、カール状が例示される。
【0016】
本発明において使用する油脂は、本発明の効果を妨げない範囲で、一般的にチョコレート類に使用する油脂をいずれも使用することができる。大豆油、ハイエルシン酸菜種油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、こめ油、ベニバナ油、ハイオレイックベニバナ油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、中鎖脂肪酸結合油脂(MCT)、シア脂、サル脂、カカオ脂等の植物性油脂、乳脂、牛脂、豚脂等の動物性油脂、ならびに、それらの硬化油、分別油、硬化分別油、分別硬化油、エステル交換等を施した加工油脂、さらにこれらの混合油等が例示できる。
なお、ハイエルシン酸菜種油を使用する場合、ハイエルシン酸菜種油に含まれるエルシン酸含量は、構成脂肪酸組成中、30質量%以上であることが好ましい。
【0017】
本発明の同時焼成用チョコレート類は、(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下である。(A)を満たすことで、水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感のチョコレート類を得ることができる。
20質量%を超えると、パン生地又は焼菓子生地に含まれる水分の影響で、チョコレート類の食感が軟らかくなる。水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類において、(A)の上限値である20質量%以下を満たすことは最も重要である。6質量%未満では、本発明で志向するチョコレート類の甘さが不足し、チョコレート類の風味が悪くなり、本発明のチョコレート類が得られない場合がある。
好ましい態様として、(A)のうち、ショ糖の含有量が5質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上17質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以上16質量%以下である。
別の好ましい態様として、(A)のうち、ブドウ糖の含有量が4質量%以上20質量%以下、より好ましくは4質量%以上17質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上15質量%以下、さらにより好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
本発明で使用するブドウ糖は、無水結晶、または含水結晶のどちらも使用することができる。ただし、チョコレート類の製造適性を考慮すると、特に無水結晶の方が好ましい。
【0018】
本発明の同時焼成用チョコレート類は、(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、好ましくは、イソマルツロース及び/又はトレハロース、最も好ましくは、イソマルツロースである。(B)を満たすことで、水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感のチョコレート類を得ることができる。
好ましい態様として、本発明のチョコレート類は、イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上を5質量%以上30質量%以下、より好ましくは7質量%以上27質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上27質量%以下、さらにより好ましくは8質量%以上26質量%以下、最も好ましくは9質量%以上25質量%以下で含有する。
【0019】
本発明の同時焼成用チョコレート類は、(C)、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1以下、好ましくは1未満、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。(C)を満たすことで、水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感のチョコレート類を得ることができる。
【0020】
好ましい態様として、本発明の同時焼成用チョコレート類は、粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する、より好ましくは7質量%以上27質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上25質量%以下、さらにより好ましくは8質量%以上23質量%以下である。
別の好ましい態様として、粉乳を15質量%以上30質量%以下で含有することで、水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感のチョコレート類を得ることができる。また、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地と同時焼成後のチョコレート類の食感の変化を抑制させることができる。
本発明で使用される粉乳は、脱脂粉乳、全粉乳いずれも使用でき、単独または併用のいずれでもよいが、全粉乳が好ましい。
【0021】
好ましい態様として、本発明の同時焼成用チョコレート類は、澱粉を1質量%以上10質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上9質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
前記本発明の態様に加えて、澱粉を含有することで、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地と同時焼成後のチョコレート類の食感の変化を抑制させることができる。
【0022】
本発明で使用することができる澱粉は、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉等の天然澱粉をはじめ、その原料である小麦粉等であってもよく、またα化澱粉、エーテル架橋澱粉、リン酸架橋澱粉等で例示される加工澱粉であってもよい。本発明においてはこれらの何れの澱粉を用いても良いが、小麦粉よりは天然澱粉、さらに好ましくは加工澱粉である。
【0023】
本発明の同時焼成用チョコレート類の製造法としては、一般的なチョコレート類を製造する要領で行うことができる。例えば、カカオマス、カカオバター、ココアパウダー、油脂類、糖類、粉乳、澱粉等の各種粉末食品、乳化剤、香料、色素等の原料を適宜選択して混合し、常法によりロールリファイナーによる微粒化及びコンチング操作やミキシング操作を行うことで製造することができる。その他粉砕、混合工程を有する製法であれば限定はされないが、例えばボールミルを用いた粉砕及び混合工程でも製造することができる。
【0024】
本発明において、チョコレート類の風味のうち、とくに甘さへの影響が大きいことが明らかになったので、本発明ではとくに甘さを重視したチョコレート類の風味評価を行った。甘さが合格範囲内のチョコレート類を、風味良好な本発明の同時焼成用チョコレート類とした。
【0025】
本発明により得られる、同時焼成用チョコレート類のザクザクとした硬い食感とは、硬いクッキーやビスケットを食した際のようなザクザクとした食感であり、かかる食感は従来の焼成用チョコレート類では得られていない特徴的な食感である。例えば、パンと同時に食した場合においても、該同時焼成用チョコレート類が口の中で存在感のある、明らかにザクザクとした食感を示す。
【実施例0026】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%及び部はいずれも質量基準を意味する。
【0027】
(ノーテンパー型同時焼成用チョコレート類の作製)
表1、表2の記載に従い配合し(配合単位は質量部)、各実施例、比較例、甘味参考例の同時焼成用チョコレート類を作製した。
なお、チョコレート類は、公知の方法に従って作製した。
すなわち、カカオマス、ココアパウダー、全ての粉類、融解した適量の油脂とレシチンを加え、ミキサーにて、加温しながら混和しドウを作製する。
このドウをロールリファイナーにより、約20μmの粒度に微粒化し、ここへ残余の油脂とレシチンを全量加え、コンチングマシン(コンチェ)にて約60℃に温度調節しながら均一に練り上げ、チョコレート類を得た。
作製したチョコレート類を55℃湯煎で溶解し、約8mm厚のシート状に流し、0~5℃で固化後、65×25×8mmのサイズにカットし成型した同時焼成用チョコレート類を得た。
・全粉乳には、よつ葉乳業株式会社製「よつ葉全粉乳」を使用した。
・イソマルツロースには、三井製糖株式会社社製「粉末パラチノースPST-NP」を使用した。
・トレハロースは、株式会社 林原製を使用した。
・マルチトールには、三菱商事ライフサイエンス社製「レシス」を使用した。
・澱粉には、コーン由来のヒドロキシプロピル化澱粉(加工澱粉)である、Tate & Lyle Ingredients Americas LLC製「ミラシック468」を使用した。
・乳化剤には、アセチル化蔗糖脂肪酸エステルであるDKエステルFA10E(第一工業製薬株式会社製)を使用した。
・植物油脂には、パームオレイン(ヨウ素価67)、パームオレイン(ヨウ素価67)のランダムエステル交換油を、79質量部、21質量部で混合して使用した。
油脂分(質量%)は、使用したココアパウダー中の油脂(カカオバター)含有量は11質量%、カカオマス中の油脂(カカオバター)含有量は55%として算出した。
表中に、下記(a)~(c)を記載した。
(a)ショ糖、ブドウ糖の合計含有量。
(b)イソマルツロース、トレハロース、マルチトールの含有量。
(c)前記、(b)の含有量に対するショ糖の含有質量比
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
(パン生地とチョコレート類の同時焼成方法)
冷凍クロワッサンシートを解凍し、解凍したクロワッサンシートで、作製した各実施例、比較例、甘味参考例の同時焼成用チョコレート類を包み、発酵(30℃湿度75%1時間)させた。
発酵後に、オーブン(上火200℃/下火200℃)で20分間焼成した。
焼成後、各実施例、比較例、甘味参考例の同時焼成用チョコレート類が内包されたクロワッサンを得た。
約1時間室温で放冷後、チョコレート類が内包されたクロワッサンを袋に入れて密封し20℃で保管した。
20℃で保管したサンプルは、1日後、3日後、7日後に開封し(食感硬さ)を評価した。
なお、海砂法によって得られた水分値に関して、何れの同時焼成用チョコレート類においても、焼成前の水分値は3%以下、同時焼成後は5%~10%以下の範囲内であった。
【0031】
(官能評価方法)
パネラー5名にて評価を行い、合議にて以下の基準で点数づけを行った。なお、本評価におけるパネラーは、従前から洋菓子の研究に従事し、熟練したパネラー5名であった。
焼成後約1時間後を当日サンプルとして評価した。評価はクロワッサンに覆われている箇所(非露出部)のチョコレート類で行った。
【0032】
(チョコレート類の甘さ)
チョコレート類の風味として、とくに差異が大きく表れた甘さを重視した評価を行った。チョコレート類の甘さ評価は、クロワッサン同時焼成後のチョコレート類を(クロワッサンと同時に)喫食して評価した。
5点~1点で、点数が高いほど本発明で志向する甘さとし、以下の基準で評価した。結果を表3に記載した。
甘味参考例1を甘さ評価5点(ショ糖の自然な甘さ)、
甘味参考例2を甘さ評価1点(甘さ多少あるが弱い)とし相対的に評価した。
【0033】
(食感硬さ)
点数が高いほど硬く、本発明で志向する硬さが得られているとし、以下の基準で評価した。結果を表3に記載した。
5:ザクザク感強い。硬い。
4:ザクザク感あり。硬い。
3:やや硬さある。
2:やや柔らかい。
1:軟らかくしんなり。
【0034】
(食感硬さ変化)
(食感硬さ)での評価点数を元に、下記で算出した差を表3に記載した。
(当日評価点数)-(7日後評価点数)
【0035】
【表3】
【0036】
(総合評価)
下記の基準で評価した結果を表4に記載した。
(チョコレート類の甘さ)評価点数2.5点以上を許容範囲で「〇」とした。
(食感硬さ当日)評価点数3点以上を許容範囲で「〇」とした。
チョコレート類の甘さ評価、食感硬さ当日評価、何れも許容範囲で、本発明の同時焼成用チョコレート類として合格とした。
チョコレート類の食感の変化について、下記の基準で評価した。結果を表4に記載した。
(食感硬さ7日後)評価点数をそのまま加算した。
(食感硬さ変化抑制点数)食感変化2点以内で、+2点加算した。
食感変化1点以内で、+3点加算した。
食感硬さ7日後の評価点数と、食感硬さ変化抑制点数を合計し総合評価を行った。
評価結果を、下記(A)~(C)の要件で考察した。
(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が6質量%以上20質量%以下
(B)イソマルツロース、トレハロース及びマルチトールからなる群から選ばれた1種又は2種以上含む
(C)前記、(B)の含有量に対するショ糖の含有質量比が1.0以下
なお表中には、下記(D)(E)要件についても記載した。
(D)粉乳を5質量%以上30質量%以下含有する。
(E)澱粉を1~10質量%含有する。
【0037】
【表4】
【0038】
(表4の考察)
・表4記載のとおり、実施例の同時焼成用チョコレート類は、チョコレート類の風味(甘さ)が良好であり、同時焼成後もザクザクとした硬い食感を有していた。
・実施例6~実施例12では、7日後の硬さも良好でかつ、保管後の硬さ変化も少なくより好ましい同時焼成用チョコレート類が得られた。
・比較例のチョコレート類は、同時焼成用途では、本発明の同時焼成用チョコレート類の評価不合格であった。
・比較例2は、(A)ショ糖及び/又はブドウ糖の含有量が20質量%を超えるため、焼成直後の食感硬さが既に軟らかくしんなりしており、同時焼成用チョコレート類としては使用できないものであった。
・実施例の同時焼成用チョコレート類は、(A)~(C)の項目を全て満たした。
【0039】
(テンパー型同時焼成用チョコレート類の作製)
表5の記載に従い配合し(配合単位は質量部)、テンパリングタイプの同時焼成用チョコレート類を作製した。
なお、チョコレート類は、公知の方法に従って作製した。
すなわち、カカオマス、ココアパウダー、全ての粉類、融解した適量の油脂とレシチンを加え、ミキサーにて、加温しながら混和しドウを作製する。
このドウをロールリファイナーにより、約20μmの粒度に微粒化し、ここへ残余の油脂とレシチンを全量加え、コンチングマシン(コンチェ)にて約60℃に温度調節しながら均一に練り上げ、チョコレート類を得た。
作製したチョコレート類を55℃湯煎で溶解し、テンパリングを行い、約8mm厚のシート状に流し、5℃で固化後、65×25×8mmのサイズにカットし成型した同時焼成用チョコレート類を得た。
・植物油脂には、不二製油株式会社製 商品名「メラノNEWSS7」)を使用した。
その他添加物は、前記ノーテンパー型同時焼成用チョコレート類の作製に記載の添加物を使用した。
前記(パン生地とチョコレート類の同時焼成方法)記載と同様に、同時焼成用チョコレート類が内包されたクロワッサンを作製し、前記同様の手順と評価方法、評価基準で、得られたチョコレート類を評価した。評価結果を表6に記載した。
得られた結果に基づいて前記同様に総合評価を行った。結果を表7に記載した。
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
(表7の考察)
・表7記載のとおり、実施例13のテンパー型同時焼成用チョコレート類においても、チョコレート類の風味(甘さ)が良好であり、同時焼成後もザクザクとした硬い食感を有する結果が得られた。
・実施例13では、7日後の硬さも良好でかつ、保管後の硬さ変化も少なくより好ましい同時焼成用チョコレート類が得られた。
・実施例13の同時焼成用チョコレート類は、(A)~(C)の項目を全て満たした。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、焼菓子生地やパン生地という水分を含有する生地と接している状態で焼成されるにもかかわらず、チョコレート類の風味が良好であり、ザクザクとした硬い食感を有する、水分を含有するパン生地又は焼菓子生地との同時焼成用チョコレート類を提供することができる。