(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145768
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/032 20160101AFI20241004BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241004BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241004BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20241004BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241004BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
H02P29/032
B60L3/00 J
B60L50/61
B60K6/46 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/50
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058255
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏樹 宏成
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB11
3D202CC53
3D202DD24
3D202DD26
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB00
5H125EE05
5H125EE08
5H125EE13
5H501AA20
5H501CC04
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5H501EE08
5H501FF05
5H501HA09
5H501HA20
5H501HB07
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501LL01
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL38
5H501MM03
(57)【要約】
【課題】フェイルセーフ制御に伴うインバータの容量素子の破壊を抑制可能な電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】電動車両の制御装置であって、インバータに入力される直流電力を平滑化するための容量素子の電圧と、耐久可能な時間との関係を示す耐圧マップを取得する耐圧マップ取得部と、容量素子の電圧を示す電圧情報を取得する電圧情報取得部と、計時する計時部と、フェイルセーフによりインバータの動作を停止した場合、耐圧マップと、電圧情報と、計時部により計時された、電圧情報が示す電圧が継続した時間とに基づいて、容量素子が耐久不可能な場合は、駆動モータの巻線を短絡させる巻線短絡制御を行う短絡制御部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力を変換して得られる電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリから出力される直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータから出力される交流電力を用いて、駆動輪を走行させる駆動力を供給する駆動モータと、備える電動車両の制御装置であって、
前記インバータに入力される直流電力を平滑化するための容量素子の電圧と、耐久可能な時間との関係を示す耐圧マップを取得する耐圧マップ取得部と、
前記容量素子の電圧を示す電圧情報を取得する電圧情報取得部と、
計時する計時部と、
フェイルセーフにより前記インバータの動作を停止した場合、前記耐圧マップと、前記電圧情報と、前記計時部により計時された、前記電圧情報が示す電圧が継続した時間とに基づいて、前記容量素子が耐久不可能な場合は、前記駆動モータの巻線を短絡させる巻線短絡制御を行う短絡制御部と、を備える、
電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記短絡制御部は、前記巻線短絡制御中に、前記容量素子の電圧が第1の閾値以下であり、かつ、前記駆動モータの温度が第2の閾値以上の場合は、前記巻線短絡制御を解除する、
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記駆動モータの回転数を示す回転数情報を取得する回転数情報取得部をさらに備え、
前記短絡制御部は、さらに、前記駆動モータの回転数が第3の閾値以下の場合は、前記巻線短絡制御を解除する、
請求項2に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、エンジンの動力に基づく電力で駆動する駆動モータとを備える電動車両において、インバータを備えたモータ駆動装置に故障が生じた場合に、フェイルセーフ制御として、インバータの動作を停止する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、フェイルセーフ制御によりインバータの動作を停止すると、駆動モータは出力が解放された無制御状態となる。このとき、インバータに入力される直流電力を平滑化するための容量素子は、駆動モータの逆起電力により充電される。これにより、容量素子に過電圧が印加されて破壊に至るおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、フェイルセーフ制御に伴うインバータの容量素子の破壊を抑制可能な電動車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電動車両の制御装置は、エンジンと、前記エンジンの動力を変換して得られる電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリから出力される直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータから出力される交流電力を用いて、駆動輪を走行させる駆動力を供給する駆動モータと、備える電動車両の制御装置であって、前記インバータに入力される直流電力を平滑化するための容量素子の電圧と、耐久可能な時間との関係を示す耐圧マップを取得する耐圧マップ取得部と、前記容量素子の電圧を示す電圧情報を取得する電圧情報取得部と、計時する計時部と、フェイルセーフにより前記インバータの動作を停止した場合、前記耐圧マップと、前記電圧情報と、前記計時部により計時された、前記電圧情報が示す電圧が継続した時間とに基づいて、前記容量素子が耐久不可能な場合は、前記駆動モータの巻線を短絡させる巻線短絡制御を行う短絡制御部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、耐圧マップと、容量素子の電圧と、容量素子の電圧が継続した時間とに基づいて、インバータの容量素子が耐久不可能な状態であるか否かを判断することができる。そして、容量素子が耐久不可能な場合は巻線短絡制御を行うことで、駆動モータの逆起電力の容量素子への印加を停止できる。これにより、フェイルセーフ制御に伴うインバータの容量素子の破壊を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フェイルセーフ制御に伴うインバータの容量素子の破壊を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ハイブリッド車両の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第2インバータの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、駆動モータの三相電圧と平滑コンデンサの電圧との関係の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、車速と、シャットダウン時の駆動モータの逆起電力の電圧との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、MG-ECUが有する機能の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、PCUの内部故障が発生した場合のHEV-ECUおよびMG-ECUの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、MG-ECUの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明のハイブリッド車両の制御装置の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態のハイブリッド車両1の要部構成の一例を示す図である。ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム10を搭載している。ハイブリッドシステム10は、エンジン11と、発電モータ(MG1)12と、駆動モータ(MG2)13と、バッテリ14と、PCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15とを備える。
【0012】
エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンである。
【0013】
発電モータ12は、例えば、永久磁石同期モータである。発電モータ12の回転軸は、エンジン11のクランクシャフトと非図示のギヤを介して機械的に連結されている。例えば、エンジン11のクランクシャフトにエンジン11の出力ギヤが相対回転不能に支持され、発電モータ12の回転軸にエンジン11の出力ギヤが相対回転不能に支持されて、エンジン11の出力ギヤとモータギヤとが噛合している。
【0014】
駆動モータ13は、例えば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータである。駆動モータ13の回転軸は、ハイブリッド車両1の駆動系16に連結されている。駆動系16には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達されて、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これにより、左右の駆動輪17が回転し、ハイブリッド車両1が前進または後進する。
【0015】
バッテリ14は、エンジン11の動力を変換して得られる電力を蓄える。例えばバッテリ14は、複数の二次電池を組み合わせた組電池である。二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ14は、例えば、約200~350Vの直流電力を出力する。
【0016】
PCU15は、発電モータ12および駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットであり、第1インバータ21と、第2インバータ22と、コンバータ23とを備えている。
【0017】
エンジン11の始動時には、バッテリ14から出力される直流電力がコンバータ23により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ21で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0018】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0019】
駆動モータ13に要求される出力がバッテリ14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1がEV走行する。即ち、エンジン11が停止されて、発電モータ12による発電が行われず、バッテリ14から駆動モータ13に電力が供給されて、その電力で駆動モータ13が駆動される。
【0020】
また、バッテリ14の残容量が所定以下に低下すると、駆動モータ13の駆動/停止に関わらず、エンジン11が稼動している状態で、発電モータ12が発電運転される。このとき、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ21で直流電力に変換され、第1インバータ21から出力される直流電力がコンバータ23で降圧されて、降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0021】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ22に供給される交流電力が第2インバータ22で直流電力に変換され、第2インバータ22から出力される直流電力がコンバータ23で降圧される。そして、降圧後の直流電力がバッテリ14に供給されることにより、バッテリ14が充電される。
【0022】
ECU31は、ハイブリッド車両1を制御する制御装置である。ECU31には、ハイブリッドシステム10の制御を司るHEV-ECU100、発電モータ11、駆動モータ13、PCU15などのモータ系の制御を司るMG-ECU200等の複数のECUが含まれる。各ECUは、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0023】
次に、本実施形態のPCU15の故障によるフェイルセーフ制御に関する部分について説明する。本実施形態のMG-ECU200は、PCU15の内部故障によるフェイルセーフ制御として、第2インバータ22の動作を停止(シャットダウン)する。
図2は、第2インバータ22の概略構成の一例を示す図である。
図2に示すように、第2インバータ22は、入力される直流電力を平滑化するための平滑コンデンサC(「容量素子」に対応)と、6つのトランジスタS1~S6と、6つのトランジスタと1対1に対応し、それぞれ対応するトランジスタの逆方向に並列に接続される6つのダイオードD1~D6と、を含む。6つのトランジスタおよび6つのダイオードD1~D6の組み合わせによりフルブリッジ回路が構成される。
【0024】
この例では、上側の3つのトランジスタS1~S3を、第1の上アームトランジスタS1、第2の上アームトランジスタS2、第3の上アームトランジスタS3とそれぞれ称する。また、下側の3つのトランジスタS4~S6を、第1の下アームトランジスタS4、第2の下アームトランジスタS5、第6の下アームトランジスタS6とそれぞれ称する。第1の上アームトランジスタS1と第1の下アームトランジスタS4とは対となって直列に接続され、その接続点(ノード)は、駆動モータ13の3相(u、v、w)のうちの何れか1相に接続される。また、第2の上アームトランジスタS2と第2の下アームトランジスタS5とは対となって直列に接続され、その接続点(ノード)は、駆動モータ13の3相(u、v、w)のうちの何れか1相に接続される。さらに、第3の上アームトランジスタS3と第6の下アームトランジスタS6とは対となって直列に接続され、その接続点(ノード)は、駆動モータ13の3相(u、v、w)のうちの何れか1相に接続される。
【0025】
6つのダイオードD1~D6は、それぞれ第1のダイオードD1、第2のダイオードD2、第3のダイオードD3、第4のダイオードD4、第5のダイオードD5、第6のダイオードD6と称する。第1のダイオードD1は、第1の上アームトランジスタS1と逆方向に並列に接続される。第2のダイオードD2は、第2の上アームトランジスタS2と逆方向に並列に接続される。第3のダイオードD3は、第3の上アームトランジスタS3と逆方向に並列に接続される。第4のダイオードD4は、第1の下アームトランジスタS4と逆方向に並列に接続される。第5のダイオードD5は、第2の下アームトランジスタS5と逆方向に並列に接続される。第6のダイオードD6は、第3の下アームトランジスタS6と逆方向に並列に接続される。
【0026】
PCU15の内部故障が発生すると、MG-ECU200は、フェイルセーフ制御としてトランジスタS1~S6の動作を停止(第2インバータ22の動作を停止)する。これにより、駆動モータ13は無制御(出力解放)状態となり、平滑コンデンサCはフルブリッジ回路経由で、駆動モータ13の逆起電力により充電される。
図3は、三相電圧と平滑コンデンサCの電圧(電極間に印加される電圧)VHとの関係の一例を示す図であり、
図2の矢印で示す電流の方向は、
図3に示す時刻tにおける状態に対応している。
【0027】
図4は、車速と、PCU15のフェイルセーフによるシャットダウン時の駆動モータ13の逆起電力の電圧(逆起電圧)との関係の一例を示す図である。
図4に示すように、シャットダウン時の駆動モータ13の逆起電圧は車速に比例していることが分かる。
図5は、平滑コンデンサCの電圧と、耐久可能な時間との関係を示す耐圧マップの一例を示す図である。
図5に示すように、電圧がV1を超えると、それに比例して耐久可能な時間も短くなっていき、例えば平滑コンデンサCの電圧がV2(一例として700V)の場合、耐久可能な時間は60秒程度になる。これは、平滑コンデンサCに印加される電圧が60秒以上継続すると、耐圧の限界を超えて過電圧破壊に至るおそれがあることを意味(耐久不可能を意味)する。
【0028】
本実施形態のMG-ECU200は、上述の耐圧マップと、平滑コンデンサCの電圧VHと、平滑コンデンサCへ電圧VHが継続的に印加された時間とに基づいて、平滑コンデンサCが耐久不可能か否かを判断し、平滑コンデンサCが耐久不可能な場合は、駆動モータ13の巻線を短絡させる巻線短絡制御を行って、平滑コンデンサCの過電圧破壊を防止する。以下、MG-ECU200の具体的な構成を説明する。
【0029】
図6は、MG-ECU200が有する機能の一例を示す図である。
図6に示すように、MG-ECU200は、フェイルセーフ制御部210、耐圧マップ取得部220、電圧情報取得部230、計時部240、温度情報取得部250、回転数情報取得部260、短絡制御部270、放電制御部280を有する。この例では、
図7に例示した機能は、プロセッサが不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行することにより実現されるが、これに限らず、例えばこれらの機能の一部または全部が専用のハードウェア回路(例えば半導体集積回路)で実現される形態であってもよい。
【0030】
なお、
図6の例では、本実施形態の要部の説明に必要な機能のみを例示しているが、MG-ECU200が有する機能はこれらに限られるものではない。
【0031】
フェイルセーフ制御部210は、PCU15の内部故障が発生すると、フェイルセーフ制御として、第2インバータ22をシャットダウンする制御を行う。より具体的には、フェイルセーフ制御部210は、第2インバータ22に含まれるトランジスタS1~S6の動作を停止する。
【0032】
耐圧マップ取得部220は上述の耐圧マップを取得する。なお、耐圧マップの記憶先は任意であり、設計条件等に応じて様々な形態を採り得る。例えば耐圧マップはROM202に記憶されてもよいし、MG-ECU200外のメモリに記憶されてもよいし、サーバ等の外部装置に記憶されてもよい。
【0033】
電圧情報取得部230は、平滑コンデンサCの電圧VHを取得する。計時部240は、計時機能を有する。温度情報取得部250は、駆動モータ13の温度を示す温度情報を取得する。回転数情報取得部260は、駆動モータ13の回転数を示す回転数情報を取得する。
【0034】
短絡制御部170は、フェイルセーフ制御部210により第2インバータ22の動作が停止された場合、耐圧マップ取得部220により取得された耐圧マップと、電圧情報取得部230により取得された電圧情報と、計時部240により計時された、電圧情報が示す電圧VHが継続した時間とに基づいて、平滑コンデンサCが耐久不可能な場合は、駆動モータ13の巻線を短絡させる巻線短絡制御を行う。例えば
図5の耐圧マップにおいて、平滑コンデンサCの電圧VHがV2である状態が60秒にわたって継続した場合は、平滑コンデンサCは耐久不可能であると判定される。この場合、短絡制御部170は、巻線短絡制御を行う。巻線短絡制御としては、駆動モータ13の三相を短絡させる制御であればよく、例えば第1の上アームトランジスタS1、第2の上アームトランジスタS2、第3の上アームトランジスタS3を一斉にオン状態に遷移させる制御であってもよいし、第1の下アームトランジスタS4、第2の下アームトランジスタS5、第3の下アームトランジスタS6を一斉にオン状態に遷移させる制御であってもよい。
【0035】
また、短絡制御部270は、巻線短絡制御中に、平滑コンデンサCの電圧VHが第1の閾値以下であり、かつ、温度情報取得部250により取得された駆動モータ13の温度が第2の閾値以上の場合は、巻線短絡制御を解除する。駆動モータ13を短絡させると、短絡電流により駆動モータ13は昇温するため、加熱による減磁または巻線焼損のおそれがある。そのため、平滑コンデンサCの電圧VHが過電圧破壊に至るおそれのない電圧(例えば
図5の電圧V1以下の電圧)を示す第1の閾値以下であり、かつ、駆動モータ13の温度が巻線焼損等に至るおそれのある温度を示す第2の閾値以上の場合は、巻線短絡制御を解除することにより、駆動モータ13を保護することができる。
【0036】
さらに、短絡制御部270は、回転数情報取得部260により取得された駆動モータ13の回転数が第3の閾値以下の場合は、巻線短絡制御を解除する。
【0037】
図6の説明を続ける。放電制御部280は、平滑コンデンサCの放電を制御する。例えば放電制御部280は、発電モータ11を力行運転することで平滑コンデンサCの放電を促進することもできる(アクティブ放電)。また、平滑コンデンサCは、不図示の放電抵抗を経由しても放電される(パッシブ放電)。
【0038】
図7は、PCU15の内部故障が発生した場合のHEV-ECU100およびMG-ECU200の動作例を示すタイミングチャートである。
図7において、HEV-ECU100の内部信号のうちIGCT起動信号は、イグニッションスイッチの状態がオンまたはオフであることを示す信号である。SMRB、SMRGは、バッテリ14からコンバータ23への電力供給の可否を示す信号である。SMRBおよびSMRGの各々がオン状態の場合は、バッテリ14からコンバータ23への電力供給が行われる状態を示し、オフ状態の場合は、バッテリ14からコンバータ23への電力供給が遮断される状態を示す。
【0039】
また、
図7に示す「システム電圧」とは、平滑コンデンサCの電圧VHを意味する。
図7の例では、PCU15の内部故障が発生し、システム電圧VHが上昇して第1の閾値を超える電圧に到達し、耐圧マップから過電圧破壊に至る時間が経過すると、MG-ECU200は巻線短絡制御を行う。その後、駆動モータ13の温度は上昇して第2の閾値(≦臨界温度)に到達し、回転数が第3の閾値以下、かつ、システム電圧VHが第1の閾値以下に下がっていた場合は、巻線短絡制御を解除する。
【0040】
巻線短絡制御を解除した後、再びシステム電圧は上昇し、第1の閾値を超える電圧に到達して、耐圧マップから過電圧破壊に至る時間が経過すると、MG-ECU200は再び巻線短絡制御を行う。その後も駆動モータ13の状態を監視し、駆動モータ13の温度が再び第2の閾値に到達し、回転数が第3の閾値以下、かつ、システム電圧VHが第1の閾値以下に下がっていた場合は、巻線短絡制御を解除する。巻線短絡制御解除後のシステム電圧が増加傾向を示さない場合は、駆動モータ13を短絡させるか否かの判定の要否を示すモータ短絡必要判定のフラグをオフにする。
【0041】
図8は、PCU15の内部故障が発生した場合のMG-ECU200の動作例を示すフローチャートである。上述の機能説明と重複する部分については適宜に説明を省略する。
図8に示すように、まず、フェイルセーフ制御部210により第2インバータ22がシャットダウンされた場合(ステップS1:Yes)、電圧情報取得部230は電圧情報を取得する(ステップS2)。
【0042】
短絡制御部270は、ステップS2で取得された電圧情報が示す電圧VH(平滑コンデンサCの電圧VH)が第1の閾値を超えているか否かを判断する(ステップS3)。ステップS3の結果が肯定の場合(ステップS3:Yes)、計時部240は計時を開始し(ステップS4)、電圧情報取得部230は電圧情報を取得する(ステップS5)。
【0043】
短絡制御部270は、ステップS5で取得された電圧情報が示す電圧VHが第1の閾値を超えているか否かを判断する(ステップS6)。ステップS6の結果が肯定の場合(ステップS6:Yes)、短絡制御部270は、耐圧マップと経過時間とから、平滑コンデンサCの部品耐圧を超える可能性があるか否か(耐久不可能か否か)を判断する(ステップS7)。
【0044】
ステップS7の結果が肯定の場合(ステップS7:Yes)、短絡制御部270は巻線短絡制御を行い、放電制御部280は平滑コンデンサCの放電制御(パッシブ放電、アクティブ放電に関する制御)を行う(ステップS8)。ステップS8の後、温度情報取得部250は温度情報を取得する(ステップS9)。そして、短絡制御部270は、ステップS8で取得された温度情報が示す温度が第2の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS10)。ステップS10の結果が肯定の場合(ステップS10:Yes)、電圧情報取得部230は電圧情報を取得する(ステップS11)。そして、短絡制御部270は、ステップS11で取得された電圧情報が示す電圧VHが第1の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0045】
ステップS12の結果が肯定の場合(ステップS12:Yes)、回転数情報取得部260は回転数情報を取得する(ステップS13)。そして、短絡制御部270は、ステップS13で取得された回転数情報が示す回転数が第3の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0046】
ステップS14の結果が肯定の場合(ステップS14:Yes)、放電制御部280は放電制御を停止し、短絡制御部270は巻線短絡制御を解除する(ステップS15)。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態MG-EU200は、PCU15の内部故障によるフェイルセーフにより第2インバータ22の動作を停止した場合、平滑コンデンサCの電圧VHと、耐久可能な時間との関係を示す耐圧マップを用いて、平滑コンデンサCの電圧VHと、電圧VHの印加時間とを監視して、平滑コンデンサCが耐久不可能か否かを判断する。そして、平滑コンデンサCが耐久不可能な場合は、駆動モータ22の巻線を短絡させる巻線短絡制御を行う。これにより、PCU15の内部故障によるフェイルセーフ制御に伴う第2インバータ22の平滑コンデンサCの破壊を抑制できる。
【0048】
また、上記の巻線短絡制御により駆動モータ13を短絡させると、短絡電流により駆動モータ13は昇温するため、加熱による減磁または巻線焼損のおそれがある。そのため、上述したように、本実施形態のMG-EU200は、平滑コンデンサCの電圧VHが過電圧破壊に至るおそれのない電圧を示す第1の閾値以下であり、かつ、駆動モータ13の温度が巻線焼損等に至るおそれのある温度を示す第2の閾値以上の場合は、巻線短絡制御を解除することにより、駆動モータ13を保護することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ハイブリッド車両
10 ハイブリッドシステム
11 エンジン
12 発電モータ(MG1)
13 駆動モータ(MG2)
14 バッテリ
15 PCU
16 駆動系
17 駆動輪
21 第1インバータ
22 第2インバータ
23 コンバータ
31 ECU
100 HEV-ECU
200 MG-ECU
201 プロセッサ
202 ROM
203 RAM
204 I/F部
210 フェイルセーフ制御部
220 耐圧マップ取得部
230 電圧情報取得部
240 計時部
250 温度情報取得部
260 回転数情報取得部
270 短絡制御部
280 放電制御部