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特開2024-14577判定装置、判定方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014577
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240125BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117512
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】湯本 英二
(72)【発明者】
【氏名】林谷 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 武史
(72)【発明者】
【氏名】小阪 勇気
(57)【要約】
【課題】対象が特定の状態であるとの判定を精度よく行う。
【解決手段】判定装置(1)は、対象から得られたデータに基づき、対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出部(11)と、当該データに基づき閾値を決定する決定部(12)と、スコアおよび閾値を比較することにより対象が特定の状態であるか否かを判定する判定部(13)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、
前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、を含む判定装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記対象データを入力として前記特定の状態に関する算出値をそれぞれ出力する1または複数の予測モデルを用いて、前記閾値を決定する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記対象データを入力として前記スコアを出力する算出モデルを用いて前記スコアを算出し、
前記算出モデルは、半教師有り学習により生成されたものであり、
前記1または複数の予測モデルのそれぞれは、教師有り学習により生成されたモデルである、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記1または複数の予測モデルがそれぞれ出力する算出値は、前記対象が前記特定の状態である確率を予測した予測確率である、請求項2または3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
前記決定手段は、前記複数の予測モデルがそれぞれ出力する算出値に重み付けして得られた値に基づいて、前記閾値を決定する、
請求項2または3に記載の判定装置。
【請求項6】
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
複数の前記予測モデルのうち少なくとも1つは、他の少なくとも1つと異なるアルゴリズム用いて生成されているか、または、他の少なくとも1つと異なるパラメータを適用した同一のアルゴリズムを用いて生成されている、
請求項2または3に記載の判定装置。
【請求項7】
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
前記複数の予測モデルのうち少なくとも1つは、他の少なくとも1つと異なる学習用データ群を用いて生成されている、
請求項2または3に記載の判定装置。
【請求項8】
少なくとも1つのプロセッサが、
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出することと、
前記対象データに基づき閾値を決定することと、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定することと、を含む判定方法。
【請求項9】
コンピュータを、
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、
前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象が特定の状態であるか否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象患者の生体情報から特徴量時系列データを算出し、特徴量時系列データを処理することにより対象患者の不穏スコアを出力する技術が記載されている。当該技術では、不穏スコアとして、0以上1以下の範囲の数値が出力される。スコアの数値は、1に近いほど不穏であり、0に近いほど非不穏であることを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/044619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術を用いて、対象が特定の状態(不穏)であることを判定するには、不穏スコアに対する閾値を決定する必要があるが、この点について、特許文献1には記載がない。そのため、当該技術は、対象が特定の状態であることの判定を精度よく行うとの観点において改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、対象が特定の状態であることの判定を精度よく行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る判定装置は、対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、を含む。
【0007】
本発明の一態様に係る判定方法は、少なくとも1つのプロセッサが、対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出することと、前記対象データに基づき閾値を決定することと、前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定することと、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象が特定の状態であることの判定を精度よく行う技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る判定装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る判定方法の流れを示すフロー図である。
図3】本発明の実施形態2に係る判定装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態2に係る判定方法の流れを示すフロー図である。
図5】本発明の各実施形態に係る判定装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0012】
<判定装置1の構成>
本例示的実施形態に係る判定装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、判定装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、判定装置1は、算出部11と、決定部12と、判定部13と、を含む。算出部11は、特許請求の範囲に記載した算出手段を実現する構成の一例である。決定部12は、特許請求の範囲に記載した決定手段を実現する構成の一例である。判定部13は、特許請求の範囲に記載した判定手段を実現する構成の一例である。
【0013】
算出部11は、対象から得られた対象データに基づき、対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する。決定部12は、対象データに基づき閾値を決定する。判定部13は、スコアおよび閾値を比較することにより対象が特定の状態であるか否かを判定する。
【0014】
<判定方法S1の流れ>
以上のように構成された判定装置1は、本例示的実施形態に係る判定方法S1を実行する。判定方法S1の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、判定方法S1の流れを示すフロー図である。図2に示すように、判定方法S1は、算出ステップS11と、決定ステップS12と、判定ステップS13と、を含む。算出ステップS11において、算出部11は、対象から得られた対象データに基づき、対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する。決定ステップS12において、決定部12は、対象データに基づき閾値を決定する。判定ステップS13において、判定部13は、スコアおよび閾値を比較することにより対象が特定の状態であるか否かを判定する。
【0015】
<プログラムによる実現例>
判定装置1をコンピュータにより構成する場合、コンピュータが参照するメモリには、以下のプログラムが記憶される。当該プログラムは、コンピュータを、対象から得られた対象データに基づき、対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出部11と、対象データに基づき閾値を決定する決定部12と、スコアおよび閾値を比較することにより対象が特定の状態であるか否かを判定する判定部13と、として機能させる。コンピュータが当該プログラムをメモリから読み込んで実行することにより、上述した判定方法S1が実現される。
【0016】
<本例示的実施形態の効果>
以上のように、本例示的実施形態においては、対象から得られた対象データに基づき、対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出し、対象データに基づき閾値を決定し、スコアおよび閾値を比較することにより対象が特定の状態であるか否かを判定する、との構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る判定装置1によれば、対象が特定の状態であるとの判定を精度よく行うことができる、という効果が得られる。
【0017】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態に係る判定装置1Aについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0018】
<判定装置1Aの概要>
判定装置1Aは、対象から得られた対象データに基づき対象の異常を検知する装置である。ここで、「異常」とは、特許請求の範囲に記載した「特定の状態」の一例である。より具体的には、判定装置1Aは、教師有り学習により生成された予測モデルと、半教師有り学習により生成された算出モデルと、を用いて、対象の異常を検知する。判定装置1Aを用いれば、例えば、ある領域において得られたラベル付きの学習用データ群に基づいて予測モデルを生成しておくことにより、ラベル付きの学習用データ群が充分に得られない他の領域においても、対象の異常を検知することができる。
【0019】
一例として、検知の対象が病院における患者であるとき、病院A由来の教師有り学習による予測モデルがあるとする。具体的には、この予測モデルは、病院Aの患者から得られたラベル付きの学習用データ群に基づき教師有り学習により生成されたものである。ここで、病院Bでは、患者の異常を検知したいというニーズがあるものの、病院Bの患者から得られる学習用データ群の全てにラベルを付与することが難しい場合がある。このような場合に、判定装置1Aは、病院A由来の教師有り学習による予測モデルと、病院B由来の半教師有り学習による算出モデルとを用いて、病院Bにおける患者の異常を精度よく検知することができる。
【0020】
なお、検知の対象が患者である場合、検知すべき異常とは、患者が不穏となる予兆(以降、不穏予兆とも記載)を示す状態であってもよい。また、患者から得られる学習用データまたは対象データとは、患者が身に付けた1または複数のセンサから得られる各種のセンサ情報、または、当該各種のセンサ情報から生成された特徴情報であってもよい。センサ情報の具体例としては、脈波センサまたは心電図ホルター等により得られる心拍データ、加速度センサにより得られる加速度データ等が挙げられる。ただし、検知の対象、検知すべき異常、学習用データ、および対象データは、上述した具体例に限られない。
【0021】
<判定装置1Aの構成>
判定装置1Aの構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、判定装置1Aは、制御部110と、記憶部120と、入力部130と、出力部140、を含む。制御部110は、例えばプロセッサによって構成され、判定装置1Aの各部を統括して制御する。また、制御部110は、算出部11Aと、決定部12Aと、判定部13Aと、を含む。これらの各機能ブロックおよび各モデルの詳細については、後述する「判定方法S1Aの流れ」において説明する。
【0022】
入力部130は、判定装置1Aに対して入力される情報を取得する。入力部130は、例えば、マウス、キーボード、タッチパッド等から入力される情報を取得してもよい。また、入力部130は、例えば、任意の記憶媒体、またはネットワークを介して接続された外部装置から入力される情報を取得してもよい。
【0023】
出力部140は、制御部110の制御にしたがって情報を出力する。出力部140は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等に情報を出力してもよい。また、出力部140は、例えば、任意の記憶媒体、またはネットワークを介して接続された外部装置に情報を出力してもよい。
【0024】
記憶部120は、例えばメモリによって構成され、制御部110が使用する各種のデータを記憶する。また、記憶部120は、予測モデルEi(i=1、2、…、n、nは2以上の自然数)と、算出モデルNNと、を記憶する。算出モデルNNは、予測モデルE1~Enのいずれとも異なるモデルである。
【0025】
(予測モデルEi)
予測モデルEiは、決定部12Aによって閾値を決定するために用いられる。予測モデルEiは、対象データを入力として異常に関する算出値を出力する。ここでは、算出値は、対象が異常である確率を予測した予測確率であるものとして説明を続ける。予測モデルEiは、教師有り学習により生成されたモデルである。
【0026】
例えば、予測モデルEiは、学習用データ群Aiを用いて、教師有り学習のアルゴリズムRiにより生成される。教師有り学習のアルゴリズムの具体例としては、勾配木、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰等があるが、これらに限られない。
【0027】
学習用データ群Aiは、複数の学習用データからなる。例えば、学習用データは、学習対象である病院Aの患者から得られたデータである。具体例として、学習用データは、患者が身に付けた1または複数のセンサから得られた各種のセンサ情報、または当該各種のセンサ情報に基づき生成された特徴情報である。学習用データ群Aiは、複数の学習対象からそれぞれ得られた学習用データを含んでいてもよいし、1つの学習対象から得られた複数の学習用データを含んでいてもよい。
【0028】
学習用データ群Aiに含まれる学習用データのそれぞれには、異常の有無を示すラベルが付与されている。例えば、ラベルの付与者が、患者を被写体として含む動画像を見ながら不穏予兆の有無を入力することにより、不穏予兆の有無を示すラベルが生成される。生成されたラベルは、入力時点に対応する動画像が示す期間に当該患者から得られた学習用データに関連付けられる。
【0029】
ここで、少なくとも1つの予測モデルEiは、少なくとも1つの他の予測モデルEj(j=1、2、…n、ただしi≠j)とは異なる学習用データ群Aiを用いて生成されていてもよい。換言すると、学習用データ群Aiは、学習用データ群Ajと異なっていてもよい。なお、学習用データ群Aiと学習用データ群Ajとが異なるとは、学習用データ群AiおよびAjの一方に含まれる少なくとも1つの学習用データが、他方に含まれていないことを言う。
【0030】
例えば、学習用データ群A1は、第1エリアの患者から収集され、学習用データ群A2は、第1エリアとは異なる第2エリアの患者から収集されてもよい。また、学習用データ群A3は、第1属性の患者から収集され、学習用データ群A4は、第1属性とは異なる第2属性の患者から収集されたものであってもよい。また、学習用データ群A5は、第1期間に収集され、学習用データ群A6は、第1期間とは異なる第2期間に収集されたものであってもよい。ただし、学習用データ群Aiの具体例は、上述した例に限られない。
【0031】
また、少なくとも1つの予測モデルEiは、少なくとも1つの他の予測モデルEjとは異なるアルゴリズムRiを用いて生成されていてもよい。また、少なくとも1つの予測モデルEiは、少なくとも1つの他の予測モデルEjと異なるパラメータを適用した同一のアルゴリズムRiを用いて生成されていてもよい。換言すると、アルゴリズムRiは、アルゴリズムRjと異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、アルゴリズムRiがアルゴリズムRjと同一である場合、予測モデルEiを生成するためにアルゴリズムRiにおいて用いるパラメータと、予測モデルEjを生成するためにアルゴリズムRjにおいて用いるパラメータとは、異なっていてもよい。
【0032】
例えば、アルゴリズムR1が勾配木であり、アルゴリズムR2がハイパーパラメータを調整した勾配木であってもよい。また、アルゴリズムR3がランダムフォレストであり、アルゴリズムR4が、ハイパーパラメータを調整したランダムフォレストであってもよい。ただし、アルゴリズムRiの具体例は、上述した例に限られない。
【0033】
(算出モデルNN)
算出モデルNNは、算出部11Aによってスコアを算出するために用いられる。算出モデルNNは、対象データを入力として、当該対象が異常である程度を示す異常スコアを出力する。算出モデルNNは、半教師有り学習により生成されたものである。
【0034】
例えば、算出モデルNNは、学習用データ群Bを用いて、半教師有り学習により生成される。半教師有り学習のアルゴリズムの具体例としては、DevNet(Deviation Network)等が挙げられるが、これらに限られない。
【0035】
学習用データ群Bは、複数の学習用データからなる。例えば、学習用データは、学習対象である病院Bの患者から得られたデータである。具体例として、学習用データは、患者が身に付けた1または複数のセンサから得られた各種のセンサ情報、または当該各種のセンサ情報に基づき生成された特徴情報である。学習用データ群Bは、複数の学習対象からそれぞれ得られた学習用データを含んでいてもよいし、1つの学習対象から得られた複数の学習用データを含んでいてもよい。
【0036】
学習用データ群Bに含まれる学習用データの一部には、異常の有無を示すラベルが付与されているが、他の一部にはラベルが付与されていない。付与者の操作によるラベル付与の具体例については、学習用データ群Aiについて説明した具体例と同様である。
【0037】
<判定方法S1Aの流れ>
以上のように構成された判定装置1Aは、本例示的実施形態に係る判定方法S1Aを実行する。判定方法S1Aについて、図4を参照して説明する。図4に示すように、判定方法S1Aは、ステップS21~S29を含む。
【0038】
ステップS21において、入力部130は、対象から得られた対象データを取得する。具体例として、対象データは、病院Bの患者の心拍データおよび加速度データから生成された特徴情報である。
【0039】
ステップS22において、算出部11Aは、対象データの異常スコアを、算出モデルNNを用いて算出する。具体的には、算出部11Aは、算出モデルNNに対象データを入力することにより、算出モデルNNから出力される異常スコアを取得する。具体例として、算出モデルNNは、DevNetを用いて生成されたモデルであり、学習の際に用いられた事前ガウス分布は、N(μ=0,σ=1)であるとする。
【0040】
ステップS23において、決定部12Aは、予測モデルE1~Enを用いて予測確率を算出する。具体的には、決定部12Aは、対象データを予測モデルE1~Enのそれぞれに入力することにより、予測モデルE1~Enのそれぞれから出力される予測確率proba_1、proba_2、…、proba_nを取得する。具体例として、n=2であり、勾配木により生成された予測モデルE1からproba_1=0.5が得られ、ハイパーパラメータを調整した勾配木により生成された予測モデルE2からproba_2=0.5が得られたとする。
【0041】
ステップS24において、決定部12Aは、予測モデルE1~Enがそれぞれ出力する予測確率の重み付け和(重み付けして得られた値の一例)に基づくyを、次式(1)により算出する。
【数1】
ただし、式(1)において、w_1~w_nは、次式(2)を満たす重み係数である。
【数2】
これにより、yとして、0以上1以下の値が算出される。なお、重みw_iは、例えば、予測モデルEiを1または複数の観点に基づき評価した評価結果に基づき決定されてもよい。そのような評価の観点は、例えば、学習用データ群Aiの信頼性、学習用データ群Aiに含まれる学習用データの個数、事後評価による予測モデルEiの精度、等に基づく観点であってもよいが、これらに限られない。
【0042】
ステップS25において、決定部12Aは、ステップS24で算出したyに基づいて、閾値threshold_yを決定する。ここで、式(1)により算出されるyは、算出モデルNNの学習の際に用いられる事前分布において、異常でないと判定されるべき割合として適用される。具体例として、n=2であり、w_1=0.08、w_2=0.02であるとする。この場合、式(1)においてw_1=0.08、proba_1=0.5、w_2=0.02、proba_2=0.5を適用すると、y=0.95が得られる。つまり、事前分布のうち、95%が異常でないと判定され、上位5%が異常と判定されるよう、閾値threshold_yが設定される。この具体例では、事前分布がN(μ=0,σ=1)であるため、threshold_y=μ+z_y*σ=0+1.96*1=1.96が得られる。なお、z_yは、yを信頼度としたときのz値である。
【0043】
なお、ステップS22の処理と、ステップS23~25の一連の処理との実行順序は、上述した順に限定されない。ステップS22の処理と、ステップS23~25の一連の処理とは、並行して実行されてもよいし、ステップS23~25の一連の処理の次に、ステップS22の処理が実行されてもよい。
【0044】
ステップS26において、判定部13Aは、ステップS22で算出した異常スコアが、ステップS25で決定した閾値を超えているか否かを判断する。超えている場合(ステップS26でYes)、ステップS27において、判定部13Aは、対象が異常であると判定する。超えていない場合(ステップS26でNo)、ステップS28において、判定部13Aは、対象が異常でないと判定する。
【0045】
ステップS29において、出力部140は、ステップS27またはS28における判定結果を出力する。
【0046】
<本例示的実施形態の効果>
以上のように、本例示的実施形態によれば、異常スコアを算出するために参照した対象データを、予測モデルE1~Enのそれぞれに入力して得られた予測確率を用いて閾値を決定し、当該異常スコアと閾値とを比較することにより、対象が異常であるか否かを判定する、との構成が採用されている。上記構成によれば、対象データに応じて予測モデルE1~Enが算出する算出値に基づいて動的に閾値を決定することができる。したがって、予測モデルE1~Enの精度に応じて、異常の検知精度を高めることができる。
【0047】
また、本例示的実施形態によれば、対象から得られた対象データを算出モデルNNに入力して異常スコアを算出し、算出モデルNNは半教師有り学習により生成され、予測モデルE1~Enは教師有り学習により生成されている、との構成が採用されている。上記構成によれば、対象の異常を検知したい領域において収集した学習用データ群の全てにラベルが付与できない場合にも、精度よく異常を検知することができる。すなわち、(i)対象の異常を検知したい領域において半教師有り学習により生成された算出モデルNNと、(ii)教師有り学習により高精度であることが期待される予測モデルE1~Enと、を用いることで、対象の異常を検知したい領域において異常の検知精度を高めることができる。
【0048】
また、本例示的実施形態によれば、予測モデルE1~Enがそれぞれ算出する算出値は、対象が異常である確率を予測する予測確率である、との構成が採用されている。上記構成によれば、例えば、予測モデルEiとして、アンサンブル学習により予測確率を算出する勾配木、ランダムフォレスト等を適用することで、ロジスティック回帰等を適用してその算出値を用いる場合と比べて、より精度よく閾値を決定することができる。
【0049】
また、本例示的実施形態によれば、予測モデルE1~Enがそれぞれ出力する算出値の重み付け和に基づいて、異常スコアの閾値threshold_yを決定する、との構成が採用されている。上記構成により、予測モデルE1~Enの重みを、閾値threshold_yの決定に反映させることができるので、閾値threshold_yの精度を向上させることができる。
【0050】
また、本例示的実施形態によれば、予測モデルEiは、予測モデルEjとは異なるアルゴリズムによって生成されているか、または、異なるパラメータを適用した同一のアルゴリズムによって生成されていてもよい、との構成が採用されている。または、予測モデルEiの生成に用いた学習用データ群Aiは、予測モデルEjの生成に用いた学習用データ群Ajとは異なっていてもよい、との構成が採用されている。これらの構成により、予測モデルEiおよびEjが算出する予測確率が異なり得るので、より多面的な観点から閾値threshold_yを決定することができる。
【0051】
〔変形例〕
例示的実施形態2において、予測モデルEiの個数は、1つであってもよい。この場合、重み係数w_1として、1が適用される。このように変形した場合も、算出モデルNNよりも精度よく生成された1つの予測モデルE1を用いて、対象データに応じて閾値を動的に決定することができ、対象の異常を精度よく検知することができる。
【0052】
また、例示的実施形態2において、予測モデルE1~Enを生成するための学習用データ群A1~Anが病院Aで収集され、算出モデルNNを生成するための学習用データ群が病院Bで収集される例について説明したが、これらが収集される領域は、必ずしも異なっていなくてもよく、同一であってもよい。例えば、病院Aにおいてある時期に収集された学習用データ群A1~Anを用いて予測モデルE1~Enが生成され、その後、同じ病院Aにおいて別の時期に学習用データ群Bが収集されて算出モデルNNが生成されてもよい。
【0053】
また、例示的実施形態2において、予測モデルE1~Enを生成するための学習用データ群A1~Anが、同じ病院Aで収集される例について説明したが、これらが収集される領域は、必ずしも同一でなくてもよく、少なくとも1つが他の1つと異なる領域において収集されてもよい。例えば、学習用データ群A1が病院Aで収集され、学習用データ群A2が、病院Aとは異なる病院Bで収集されてもよい。
【0054】
また、例示的実施形態2において、検知すべき特定の状態が、「異常」である例、特に「患者の不穏予兆」である例について説明したが、特定の状態は、これに限られない。例えば、検知すべき特定の状態は、「正常」、「熟睡状態」等の他の状態であってもよい。また、検知の対象は、人間などの生物に限らず、機械、工場などの無生物、または、天候などの事象であってもよい。
【0055】
〔ソフトウェアによる実現例〕
判定装置1、1Aの一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0056】
後者の場合、判定装置1、1Aは、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を図5に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを判定装置1、1Aとして動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、判定装置1、1Aの各機能が実現される。
【0057】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0058】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0059】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0060】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0061】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0062】
(付記1)
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、
前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、を含む判定装置。
【0063】
(付記2)
前記決定手段は、前記対象データを入力として前記特定の状態に関する算出値をそれぞれ出力する1または複数の予測モデルを用いて、前記閾値を決定する、
付記1に記載の判定装置。
【0064】
(付記3)
前記算出手段は、前記対象データを入力として前記スコアを出力する算出モデルを用いて前記スコアを算出し、
前記算出モデルは、半教師有り学習により生成されたものであり、
前記1または複数の予測モデルのそれぞれは、教師有り学習により生成されたモデルである、付記2に記載の判定装置。
【0065】
(付記4)
前記1または複数の予測モデルがそれぞれ出力する算出値は、前記対象が前記特定の状態である確率を予測した予測確率である、付記2または3に記載の判定装置。
【0066】
(付記5)
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
前記決定手段は、前記複数の予測モデルがそれぞれ出力する算出値に重み付けして得られた値に基づいて、前記閾値を決定する、
付記2から4の何れか1つに記載の判定装置。
【0067】
(付記6)
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
複数の前記予測モデルのうち少なくとも1つは、他の少なくとも1つと異なるアルゴリズム用いて生成されているか、または、他の少なくとも1つと異なるパラメータを適用した同一のアルゴリズムを用いて生成されている、
付記2から5の何れか1つに記載の判定装置。
【0068】
(付記7)
前記決定手段が用いる予測モデルの数は複数であり、
前記複数の予測モデルのうち少なくとも1つは、他の少なくとも1つと異なる学習用データ群を用いて生成されている、
付記2から6の何れか1つに記載の判定装置。
【0069】
(付記8)
少なくとも1つのプロセッサが、
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出することと、
前記対象データに基づき閾値を決定することと、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定することと、を含む判定方法。
【0070】
(付記9)
コンピュータを、
対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出手段と、
前記対象データに基づき閾値を決定する決定手段と、
前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定手段と、
として機能させるプログラム。
【0071】
(付記10)
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、対象から得られた対象データに基づき、前記対象が特定の状態である程度を示すスコアを算出する算出処理と、前記対象データに基づき閾値を決定する決定処理と、前記スコアおよび前記閾値を比較することにより前記対象が前記特定の状態であるか否かを判定する判定処理と、を実行する判定装置。
【0072】
なお、この判定装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記算出処理と、前記決定処理と、前記判定処理と、を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1、1A 判定装置
11、11A 算出部
12、12A 決定部
13、13A 判定部
110 制御部
120 記憶部
130 入力部
140 出力部
C1 プロセッサ
C2 メモリ
図1
図2
図3
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図5