(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145772
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力不足エリアでの電力供給を行う電動車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/16 20160101AFI20241004BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241004BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20241004BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241004BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W20/16
B60W10/26 900
B60W20/12 ZHV
B60L58/12
B60L55/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058260
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】国政 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA10
3D202BB00
3D202BB19
3D202BB25
3D202BB26
3D202DD45
3D202DD50
3D202EE24
3D202EE25
3D202EE26
3D202EE27
3D202EE28
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC11
5H125BC21
5H125BC24
5H125CA18
5H125CC04
5H125CD02
5H125CD10
5H125EE27
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】電動車両が、エンジンの稼働を禁止する禁止区域における供給電力の不足、および車両の電力欠乏に陥る事態を防止する。
【解決手段】排ガスの排出を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部と、地図情報における予定走行ルートを指定するルート指定部と、通信網に接続して情報を取得するネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースを介して、予定走行ルート上にある禁止区域における電力需要と電力供給の差である電力需要情報を得る電力需要取得部とを有し、禁止区域に侵入する前に、禁止区域内の電力需要と電力供給との差が所定以下となる場合に、禁止区域への侵入の前に二次電池の充電量の低下を抑制又は増加させる充電量管理制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給可能な二次電池と、
前記車両を制御する制御部と、を備える電動車両であって、
前記制御部は、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
排ガスの排出を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部と、
前記地図情報における予定走行ルートを指定するルート指定部と、
通信網に接続して情報を取得するネットワークインターフェースと、
前記ネットワークインターフェースを介して、前記予定走行ルート上にある前記禁止区域における電力需要と電力供給の差である電力需要情報を得る電力需要取得部と、
を有し、
前記制御部は、
前記禁止区域に侵入する前に、前記禁止区域内の電力需要と電力供給との差が所定以下となる場合に、前記禁止区域への侵入の前に前記二次電池の充電量の低下を抑制又は増加させる充電量管理制御を実行する、電動車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記充電量管理制御として、
消費電力を削減した節電モードでの走行と、
前記電動車両の外部電源への接続を提案することにより前記二次電池への外部からの充電を促す通知モードと、を有し、
前記充電量管理制御の実施時の前記二次電池の充電量に基づき、前記節電モード及び前記通知モードのどちらを実行するかを選択する、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記禁止区域への侵入前に、利用者の前記禁止区域内における前記電動車両の外部電源への接続の予定を取得する充電予定取得部を有し、
前記充電予定取得部により、前記利用者が前記禁止区域内において前記電動車両を前記外部電源へ接続する予定があるとされた場合は、前記充電量管理制御が実施される、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
前記制御部は、
前記予定走行ルートに沿って走行し、前記外部電源から前記禁止区域を抜けるまでに必要な電力量を推定する必要電力推定部を有し、
前記禁止区域内における前記電動車両の外部電源への接続後に、前記必要電力推定部で推定した前記禁止区域を抜けるまでに必要な電力量が前記二次電池に残るように、前記外部電源へ前記二次電池から電力を供給する、
請求項3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記電動車両は、エンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクと、を備えるハイブリッド車であって、
前記制御部は、前記外部電源へ前記二次電池から電力を供給する際に前記二次電池に残す充電量である目標充電量を決定する目標充電量決定部を有し、
前記制御部は、前記二次電池の充電量が前記目標充電量となると前記外部電源への給電を終了し、
前記目標充電量決定部は、前記予定走行ルートにおいて前記禁止区域を抜け出た後の目的地又は外部電源、ガソリンスタンドまでの距離と、前記燃料タンク内の残燃料量とに基づいて前記目標充電量を決定する、請求項4に記載の電動車両。
【請求項6】
前記制御部は、
前記外部電源への前記二次電池からの電力供給により得られる対価を取得する、予定対価取得部と、
前記電力需要取得部により取得される前記電力需要に基づき、利用者に前記二次電池から前記外部電源への電力供給を促す給電要請を通知する給電要請通知部と、を備え、
前記電動車両は、前記給電要請の通知を表示する出力部と、前記利用者の操作により前記給電要請に応答する入力部と、を備え、
前記出力部には、前記給電要請の通知とともに前記対価が表示される、
請求項3から5のいずれかに記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの稼働が禁止されている区域内を通る電動車両から、当該区域へ電力供給するエネルギー管理に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染対策として排ガスの排出量を削減するため、特定地域でエンジンの稼働が制限される内燃機関稼働制限区域(以下、「抑制区域」という。)や又はエンジンの稼働が禁止される内燃機関稼働禁止区域(以下、「禁止区域」という。)が設定されることがある。例えば幼稚園や小学校などの周辺区域といった小規模な区域から、地方自治体単位の大規模な区域まである。海外では国家単位で設定されることもありうる。
【0003】
このような抑制区域や禁止区域を通ってハイブリッド車が走行する際には、エンジンによる発電が制限されたり禁止されたりするため、エンジンからの給電ができず場合によっては電力欠乏で走行不能に陥るおそれがある。そうなる前に、禁止区域内に設置された給電スポット(給電スタンド)にて、二次電池への充電を行う必要がある。
【0004】
しかし、車両通行量が多い状況で、給電スポットへの需要が集中すると、給電スポットによる給電リソースが足りなくなり、多数の車両への給電が追い付かなくなるおそれがある。このような場合に備えて、多数の車両に対して消費電力を低下させるような大規模な運用を指示する方法が特許文献1にて提案されている。
【0005】
一方、ハイブリッド車が給電スポットから充電を受ける他に、車両同士で電力量を融通する仕組みが特許文献2にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-176733号公報
【特許文献2】特開2022-143327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電力が不足する状況は多くの車両が一斉に陥る場合もあり、禁止区域内のあるエリアにて、ひとたび電力不足が生じると、電力を融通してもらえる他の車両を確保することも難しいという悪循環に陥ることも想定される。
【0008】
そこでこの発明の課題は、エンジンの稼働を禁止する禁止区域における供給電力の不足、および車両の電力欠乏を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、第一の解決手段として、
車両の駆動輪を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給可能な二次電池と、
前記車両を制御する制御部と、を備える電動車両であって、
前記制御部は、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
排ガスの排出を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部と、
前記地図情報における予定走行ルートを指定するルート指定部と、
通信網に接続して情報を取得するネットワークインターフェースと、
前記ネットワークインターフェースを介して、前記予定走行ルート上にある前記禁止区域における電力需要と電力供給の差である電力需要情報を得る電力需要取得部と、
を有し、
前記制御部は、
前記禁止区域に侵入する前に、前記禁止区域内の電力需要と電力供給との差が所定以下となる場合に、前記禁止区域への侵入の前に前記二次電池の充電量の低下を抑制又は増加させる充電量管理制御を実行する、電動車両により、上記の課題を解決したのである。
【0010】
また、この発明にかかる電動車両は、第一の解決手段に加えて、
前記制御部は、前記充電量管理制御として、
消費電力を削減した節電モードでの走行と、
前記電動車両の外部電源への接続を提案することにより前記二次電池への外部からの充電を促す通知モードと、を有し、
前記充電量管理制御の実施時の前記二次電池の充電量に基づき、前記節電モード及び前記通知モードのどちらを実行するかを選択する、第二の解決手段を採用できる。
【0011】
また、この発明にかかる電動車両は、第一又は第二の解決手段に加えて、
前記制御部は、前記禁止区域への侵入前に、利用者の前記禁止区域内における前記電動車両の外部電源への接続の予定を取得する充電予定取得部を有し、
前記充電予定取得部により、前記利用者が前記禁止区域内において前記電動車両を前記外部電源へ接続する予定があるとされた場合は、前記充電量管理制御が実施される、第三の解決手段を採用できる。
【0012】
また、この発明にかかる電動車両は、第三の解決手段に加えて、
前記予定走行ルートに沿って走行し、前記外部電源から前記禁止区域を抜けるまでに必要な電力量を推定する必要電力推定部を有し、
前記禁止区域内における前記電動車両の外部電源への接続後に、前記必要電力推定部で推定した前記禁止区域を抜けるまでに必要な電力量が前記二次電池に残るように、前記外部電源へ前記二次電池から電力を供給する、
第四の解決手段を採用できる。
【0013】
また、この発明にかかる電動車両は、第四の解決手段に加えて、
前記電動車両が、エンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯留する燃料タンクと、を備えるハイブリッド車であって、
前記制御部は、前記外部電源へ前記二次電池から電力を供給する際に前記二次電池に残す充電量である目標充電量を決定する目標充電量決定部を有し、
前記制御部は、前記二次電池の充電量が前記目標充電量となると前記外部電源への給電を終了し、
前記目標充電量決定部は、前記予定走行ルートにおいて前記禁止区域を抜け出た後の目的地又は外部電源、ガソリンスタンドまでの距離と、前記燃料タンク内の残燃料量とに基づいて前記目標充電量を決定する、第五の解決手段を採用できる。
【0014】
また、この発明にかかる電動車両は、第三から第五の解決手段に加えて、
前記制御部は、
前記外部電源への前記二次電池からの電力供給により得られる対価を取得する、予定対価取得部と、前記電力需要取得部により取得される前記電力需要に基づき、利用者に前記二次電池から前記外部電源への電力供給を促す給電要請を通知する給電要請通知部と、を備え、
前記電動車両は、前記給電要請の通知を表示する出力部と、前記利用者の操作により前記給電要請に応答する入力部と、を備え、
前記出力部には、前記給電要請の通知とともに前記対価が表示される第六の解決手段を採用できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかる電動車両により、エンジンの稼働が禁止される禁止区域であるジオフェンスの中の所定のエリアで、電力需要が高くなってエリア内の給電能力を超えてしまうような状況において、禁止区域に侵入する前に二次電池の充電量を増加させることで、所定のエリア内で他の電動車両やその他の電力需要を満たすための給電を行うことができ、環境規制に対応しながら特定のエリアでの電力不足や車両の電力欠乏の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明にかかる電動車両の実施形態例の機能ブロック図
【
図2】(a)この発明にかかる電動車両の機能を発揮する運用の概念図、(b)(a)の対応を行う予定走行ルートとジオフェンスと欠乏エリアの例を示す地図
【
図3】この発明にかかる電動車両の運用例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明にかかる電動車両の機能構成を、
図1のブロック図を用いて説明する。本実施形態では、この発明の電動車両はハイブリッド車1であり、エンジン11と、二次電池12と、モータ13と、ジェネレータ14とを有する。エンジン11は、稼働することで車輪を回転させることができるとともに、ジェネレータ14を稼働させて発電を行うことが可能となっている。二次電池12は、ジェネレータ14により発電される電力によって充電される他に、外部充電インターフェース19(外部充電IF19)を介して外部電源からの外部充電が可能である。また、二次電池12には外部給電インターフェース18(外部給電IF18)が接続され、二次電池12の電力を外部へ給電する外部給電が可能である。すなわち、ハイブリッド車1は、外部充電及び外部給電が可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)である。モータ13は、二次電池12やジェネレータ14からの電力により稼働され、車輪を回転させることができるなお、外部充電インターフェース19と外部給電インターフェース18とが共通の端子であってもよい。
【0018】
この発明にかかるハイブリッド車1は、エンジン11を停止して二次電池12からの電力によりモータ13が稼働することで走行するEV走行モードを有する。また、エンジン11によりジェネレータ14を稼働させて発電しつつモータ13によって走行するシリーズ走行モード、エンジン11により走行しつつモータ13によってアシストするパラレル走行モードを有する。
【0019】
この発明にかかるハイブリッド車1は、ハイブリッド車1の機能について電子的な制御を行う制御部20を有する。これらは半導体演算装置とメモリとを有し、アクセル等の操作装置の操作による出力要求を受けて、エンジン11とモータ13とを含む各部位へ稼働指示や出力指示等の命令を送るとともに、各部位からデータを取得する。制御部20は記憶されたプログラムの実行によって実現する機能や、専用の回路による機能として、下記の各部を有する。
【0020】
この発明にかかるハイブリッド車1は、移動体通信網や衛星携帯電話網に接続できるネットワークインターフェース15(NWIF15)を有する。具体的には物理的な通信アンテナ27と、これらにより接続するインターネットとの通信プログラムからなる。このネットワークインターフェース15を介して、インターネット上に設けられたクラウドサーバなどのサーバ(図示せず)から、後述する必要な情報を取得する。
【0021】
この発明にかかるハイブリッド車1は、制御部20に対して利用者が入力する入力部16を有する。入力部16としては、ボタンやスイッチなどの物理的インターフェースであってもよいし、タッチパネルや音声入力プログラムのような電子的なインターフェースであってもよい。これにより、利用者が外部電源から二次電池12への電力供給を行うか否かの意思表示や、どの程度の電力量を供出するかの数値調整の意思表示を、制御部20により実行される各部に伝達する。
【0022】
この発明にかかるハイブリッド車1は、制御部20で実行した各部の結果や、各部が利用者に問い合わせる内容などを出力する出力部17を有する。基本的には画像で示す液晶パネル、有機ELパネルなどの画面インターフェースであると好ましく、タッチパネルとして入力部16と兼用するものでもよい。また、音声で利用者に通知する音声インターフェースであってもよい。この場合は基本的に車内スピーカーとなる。
【0023】
制御部20は、GPSなどの衛星測位システムからアンテナ27を介して位置情報を取得する位置情報取得部21を有する。
【0024】
制御部20は、エンジンの稼働を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部22を有する。これらの禁止区域は、地図上においてどの住所区分や自治体単位で禁止区域であるか否かの属性情報として地図情報に記録されていてもよいし、地図に重なる情報として所定の地点から所定の距離が禁止区域であると規定されていてもよいし、地図情報とともに道路上のどこが禁止区域にあたるのかを確認できるのであれば形式は特に限定されない。これらの地図情報を取得するための取得元は、ハイブリッド車1が有する地図情報データベース28(地図情報DB28)に記録されたものでもよいし、移動体通信網を介して適宜ダウンロードされるものでもよい。以下の説明ではハイブリッド車1が有する地図情報データベース28に、禁止区域の情報が記録されている形態を主な例として説明するが、これに限定されるものではない。
【0025】
制御部20は、地図情報における予定走行ルートを、利用者からの入力によって指定するルート指定部23を有する。制御部20は、入力部16を介してルート検索機能によるルート候補を提示した上での選択や、利用者による手入力などにより、目的地までの予定走行ルートについての指示を受け取り、予定走行ルートを指定して、メモリに登録する。この予定走行ルートは、禁止区域の情報と照らし合わせることで、ルート上のどの区間が禁止区域であるかを確認できる。
【0026】
制御部20は、ネットワークインターフェース15を介して、予定走行ルート上にある所定のエリアにおける電力需要情報を得る電力需要取得部37を有する。ここで所定のエリアとは、禁止区域と同じ領域でもよいが、禁止区域内のさらに細かい区域単位での電力需要情報を得るのが好ましい。この電力需要情報は、所定のエリアにおいて、電動車両への外部電源(給電スポット)からの電力供給やその他の設備での電力消費などの電力需要に対して、電力会社などからの電力供給がどの程度足りるかという情報である。
【0027】
この電力需要情報は、インターネット上のサーバ(図示せず)からアンテナ27を介して取得する。サーバ上の電力需要情報は、電力会社などが発信する情報を利用すればよい。
【0028】
この電力需要情報の中に、電力需要に対する電力供給が十分ではない(電力需要より電力供給の方が小さい)か、それに近い逼迫状況(電力需要と電力供給が同程度)であるとき、すなわち、電力需要と電力供給との差が所定以下であるときに、所定のエリアが、エリア内の電力が欠乏している欠乏エリアと判定する。電力需要と電力供給との差がどの程度であるときに電力供給が十分ではないと判断するか(「所定」の値)は、適宜設定すればよい。
【0029】
このような欠乏エリアが存在すると、制御部20は、禁止区域外(予定走行ルートにおける禁止区域より手前)にいる利用者に対して所定のエリア内での給電(ハイブリッド車1から外部への電力供給)を促す給電要請通知を発信する。すなわち、欠乏エリアの判定は、ハイブリッド車1が禁止区域外にあるときに行われる。制御部20は、利用者に給電要請通知を発信する給電要請通知部40を備える。また、給電要請通知には、具体的に求められる電力量や、欠乏エリアで給電を行った場合の電力量の対価の情報が含まれていてもよい。
【0030】
給電要請通知は、出力部17を介して利用者に通知する。利用者は、入力部16を介して給電要請通知に応答する。利用者が給電要求を受け入れる場合、制御部20は、禁止区域外で充電量管理制御を行う。充電量管理制御は、ハイブリッド車1の冷暖房の出力を抑制したり、走行時のモータ13の出力を抑制する節電モード(エコモード)での走行を実施する(1)、シリーズ走行モード、具体的にはモータ13によって走行し、モータ13の消費電力と同様若しくは超える電力を発電するようにエンジン11でジェネレータ14を稼働させる充電モード(セーブ・チャージモード)を実施する(2)、禁止区域外での給電スポットからの電力供給を促す通知を送信する通知モードを実施する(3)、といった制御である。
【0031】
図2を用いてこの発明にかかるハイブリッド車1の制御を説明する。制御部20は、予定走行ルートにおける禁止区域より第一所定距離、又は第一所定時間手前で、予定走行ルート内の禁止区域内の電力需要情報を取得する(S1)。電力需要情報を取得した結果、欠乏エリアがある場合、制御部20は出力部17を介して利用者に給電要請通知を通知する。制御部20は、利用者の入力部16からの入力により、利用者が給電要求を受け入れたと判断した場合、充電量管理制御が実施される(S2)。充電量管理制御は、予定走行ルートにおける禁止区域より第二所定距離、又は第二所定時間手前で行われる。第二所定距離、又は第二所定時間は、第一所定距離、又は第一所定時間より禁止区域側に設定される。
【0032】
なお、利用者が給電要求を受け入れたとの判断は、利用者が欠乏エリアで給電スポットQに接続する予定がある場合としてもよい。欠乏エリアで給電スポットQに接続する予定があるか否かは、入力部16からの入力により判断すればよい。この場合、制御部20は、利用者が欠乏エリアで給電スポットQに接続する予定があるか否かの情報を取得する充電予定取得部43を有する。
【0033】
禁止区域に侵入すると、エンジン11が停止しEV走行モードが開始される。欠乏エリア内の給電スポットQに到着すると、利用者はハイブリッド車1を給電スポットQに接続し、二次電池12の電力を外部に給電する(S3)。利用者は、二次電池12の電力を外部に給電することで、対価を受け取ることができる(売電)。ハイブリッド車1は、給電が終了すると、予定走行ルートに沿って禁止区域内をEV走行モードで走行する。
【0034】
ハイブリッド車1は、禁止区域を脱出すると、必要に応じてエンジン11を始動してシリーズ走行モード、又はパラレル走行モードに移行する(S4)。
【0035】
S2において充電量管理制御が実施される際、制御部20は、現在(充電量管理制御が実施されるとき)の二次電池12の充電量と予定走行ルート上の現在地から給電スポットQまでの距離とに基づいて、下記(1)~(3)のうちのどの充電量管理制御を行うかを決定する。具体的には、現在の二次電池12の充電量と給電スポットQまでの走行によって消費される電力との差が第一閾値以上の場合はエコモードでの走行(1)を選択し、上記差が第一閾値未満かつ第一閾値より小さい第二閾値以上の場合はセーブ・チャージモードでの走行(2)を選択し、第二閾値未満の場合は禁止区域外の給電スポットでの充電を促す通知を送信(3)する。給電スポットQまでの走行によって消費される電力は、予定走行ルートの路面勾配等に基づいて算出すればよい。現在の二次電池12の充電量は、二次電池12に設けられたセンサによって取得すればよい。
【0036】
S3において二次電池12の電力を外部に給電する際、二次電池12の充電量が目標充電量となるまで外部への給電を行う。具体的には、制御部20は、現在(電力を外部に給電するとき)の二次電池12の充電量と予定走行ルート上の現在地から禁止区域を脱出するまでの距離とに基づいて、二次電池12の目標充電量を決定する目標充電量決定部44を有し、目標充電量決定部44で決定した充電量となるように外部への給電量を制御する。目標充電量決定部44は、例えば、現在地から禁止区域を脱出するまでEV走行するのに必要な充電量が二次電池12に残るように目標充電量を決定する。なお、禁止区域を脱出した後も走行を継続する必要があるため、二次電池12に禁止区域と目的地との間の給電スポットまで走行できる充電量を残すように目標充電量を設定することが好ましい。また、電動車両がハイブリッド車1である場合は、エンジン11に供給される燃料を貯留する燃料タンク10内の燃料でエンジン11を稼働して走行可能な距離と、禁止区域と目的地との間のガソリンスタンドまでの距離も考慮して目標充電量を設定すればよい。
【0037】
給電スポットQで電力を外部に給電する場合、電力の給電には時間がかかるため、いったん走行を停止して給電スポットに滞在して待たなければならず、その後の予定が大きく変化する。そのため、利用者が給電要請通知を受け入れて給電スポットQで電力を外部に給電するか否かを判断するにあたっては、その滞在に見合うだけの対価を受け取られるか否かの情報を取得できることが好ましい。そのため、制御部20は、欠乏エリアにおいて外部に給電した電力量の対価を取得する、予定対価取得部45を有する。
【0038】
制御部20は、予定対価取得部45で取得した対価を出力部17に出力し、給電要請通知を受け入れるか否かを利用者に問う。このとき、出力された対価に基づき、給電スポットQで外部に給電する電力量を利用者が自由に設定できるようにしてもよい。対価とは、例えば金銭である。
【0039】
この発明にかかるハイブリッド車1の制御部20の処理フロー例を
図3に示す。まず、運転開始時にあたり(S101)、制御部20は、入力部16を介して利用者から目的地を指示される(S102)。続いて、アンテナ27から現在の位置情報を取得する(S103)。目的地と現在の位置情報、及び地図情報を基に出力部17に地図が表示されるとともに、ルート検索を行い、出力部17で予定走行ルートの候補が提案され、入力部16からの利用者の入力によって予定走行ルートが指定される(S104)。そして、制御部20は、予定走行ルート上に禁止区域が存在するか否かを判断する(S105)。
【0040】
予定走行ルート上に禁止区域が存在する場合(S105:Yes)、走行開始後は、位置情報取得部21から位置情報を取得し、制御部20は、現在位置が禁止区域に近づいたか否か(第一距離又は第一時間となったか)を判断する(S106)。禁止区域に近づいていない場合(S106:No)は禁止区域に近づくまで通常の走行を継続し、禁止区域に近づいた場合(S106:Yes)は電力需要情報を取得する(S107)。
【0041】
電力需要情報を取得した結果、禁止区域内の予定走行ルート上に欠乏エリアが存在した場合(S108:Yes)は、予定対価取得部45から対価の情報を取得する(S109)。そして、対価の情報とともに給電要請を利用者に通知する(S110)。利用者は、対価の情報も考慮して給電要請を受けるか否かを判断し、受け入れる場合は入力部16の操作によりその意思を制御部20に送信する(S111:Yes)。
【0042】
利用者が給電要請を受け入れた場合、制御部20は、位置情報取得部21からの位置情報を基に現在位置が禁止区域にさらに近づいたか否か(第二距離又は第二時間となったか)を判断する(S112)。禁止区域に近づいていない場合(S112:No)は禁止区域に近づくまで通常の走行を継続し、禁止区域に近づいた場合(S112:Yes)は、制御部20は充電量管理制御を実施する(S113)。充電量管理制御がエコモードでの走行、又はセーブ・チャージモードでの走行の場合は、禁止区域に侵入するまでこの走行モードを継続する。充電量管理制御が禁止区域外の給電スポットでの充電の場合は、給電スポットでの充電終了後に再度予定走行ルートに沿って走行する。
【0043】
その後、位置情報取得部21からの位置情報を基に禁止区域に侵入したか否かを判断する(S114)。禁止区域に侵入するまでは(S114:No)、それまでの走行状態を維持し、禁止区域に侵入したら(S114:Yes)エンジン11を停止しEV走行を行う(S115)。
【0044】
欠乏エリア内の給電スポットQに到着するまでは(S116:No)EV走行を継続し、給電スポットQに到着すると(S116:Yes)、利用者はハイブリッド車1を給電スポットQに接続し、二次電池12から給電スポットQを介し欠乏エリア内に電力を供給する(S117)。
【0045】
二次電池12の充電量が目標充電量となるまでは外部への給電を継続し(S118:No)、二次電池12の充電量が目標充電量となるまで電力を給電すると(S118:Yes)、外部への給電を終了する(S119)。外部への給電終了後、EV走行を再開して禁止区域を脱出したか否かを判断する(S120)。禁止区域を脱出するまでは(S120:No)EV走行を継続し、禁止区域を脱出すると(S120:Yes)、必要に応じてエンジン11を再始動する(S121)。そして、目的地に到着したら(S122)本制御を終了する(S123)。
【0046】
予定走行ルート上に禁止区域がない場合(S105:No)、予定走行ルート上に欠乏エリアがない場合(S108:No)、利用者が給電要請を受け入れなかった場合(S111:No)は、外部への給電は行わないために本制御を終了する(S123)。
【0047】
本実施形態の電動車両によれば、禁止区域内に欠乏エリアが存在する場合は、禁止区域に入る前に充電量管理制御を実施して二次電池12の充電量を増加させる。これにより、欠乏エリア内の給電スポットQでの二次電池12の充電を抑制することができ、欠乏エリア内の電力消費を抑制することができる。また、利用者が欠乏エリア内での外部への給電を受け入れる場合、禁止区域に入る前に増加させた二次電池12の充電量を欠乏エリアで外部へ給電することができるので、欠乏エリア内の電力不足を補うことができる。
【0048】
また、本実施形態の電動車両によれば、充電量管理制御としてエコモードでの走行と、セーブ・チャージモードでの走行と、禁止区域外の給電スポットでの充電を促す通知の送信と、を有し、充電量管理制御開始時の二次電池12の充電量が小さくなるにつれてエコモードでの走行、セーブ・チャージモードでの走行、禁止区域外の給電スポットでの充電を促す通知の送信、の順で優先されて実施される。これにより、禁止区域に侵入する前の二次電池12の充電量を適切に制御することができる。
【0049】
また、本実施形態の電動車両によれば、電動車両は給電スポットQを介して外部に電力を給電可能であって、欠乏エリア内で電動車両を給電スポットQに接続する予定がある場合は、充電量管理制御を行う。これにより、利用者に禁止区域内で走行を中断してもよいという明確な意思がある場合に充電量管理制御を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態の電動車両によれば、給電スポットQを介して外部に電力を給電する場合は、予定走行ルート上の給電スポットQから禁止区域を脱出するまでの距離に基づいて目標充電量を決定し、二次電池12の充電量が目標充電量に低下するまで外部に電力を給電する。これにより、禁止区域を脱出するまでEV走行を実施できるようにしつつ欠乏エリアに電力を供給することができる。
【0051】
また、本実施形態の電動車両によれば、電動車両はハイブリッド車1であり、禁止区域を脱出した後の目的地、又は充電スポット、ガソリンスタンドまでの距離と、ハイブリッド車1に搭載された燃料タンク10内の燃料量に基づいて目標充電量を設定する。これにより、禁止区域を脱出した後にエンジン11を稼働させることで走行できる距離も考慮して、欠乏エリアで供給できる電力量を設定することができるので、欠乏エリアで供給できる電力量を極力多くすることができる。
【0052】
また、本実施形態の電動車両によれば、欠乏エリアへの電力供給によって得られる対価を利用者に提示して、給電要請を受け入れるか否かを判断する。これにより、得られる対価も考慮して欠乏エリアへの電力供給を行うか否かをできる。
【0053】
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。例えば、上記の実施形態では電動車両はエンジン11を有するハイブリッド車1としたが、エンジン11を有さない電動車両に適用されてもよい。また、ハイブリッド車1は給電スポットと接続可能なプラグインハイブリッド車でなくともよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ハイブリッド車
10 燃料タンク
11 エンジン
12 二次電池
13 モータ
14 ジェネレータ
15 ネットワークインターフェース
16 入力部
17 出力部
18 外部給電インターフェース
19 外部充電インターフェース
20 制御部
21 位置情報取得部
22 地図情報取得部
23 ルート指定部
27 アンテナ
28 地図情報データベース
37 電力需要取得部
40 給電要請通知部
43 充電予定取得部
44 目標充電量決定部
45 予定対価取得部
Q 給電スポット