IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図1
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図2
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図3
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図4
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図5
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図6
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図7
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図8
  • 特開-液体吐出装置、及びプリントヘッド 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145779
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及びプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058274
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】賀集 光一
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF61
2C057AG44
2C057AG84
2C057AG91
2C057AR14
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】駆動信号を出力する駆動回路を、吐出された液体から保護できる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路は、基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、集積回路、及び第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、を有し、第1スイッチング素子は、第1トランジスターチップと、第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、を含み、第1端子に入力される第1制御信号に応じて、第2端子と第3端子との導通状態が制御され、配線基板の法線方向に沿って、第1端子、第2端子、及び第3端子は、第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を出力する基駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1モールド部材は、前記第1スイッチング素子の方向を示す方向指示マークを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1モールド部材は、グリシジル基含有ポリブタジエンを含むエポキシ樹脂からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記駆動信号出力回路は、5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記集積回路は、第2制御信号を出力し、
前記駆動信号出力回路は、
前記配線基板に設けられ、前記第2制御信号により動作する第2スイッチング素子を有し、
前記第2スイッチング素子は、
第2トランジスターチップと、
前記第2トランジスターチップと電気的に接続している第4端子、第5端子、及び第6端子と、
前記第2トランジスターチップを覆う第2モールド部材と、
を含み、
前記第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて、前記第5端子と前記第6端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第4端子、前記第5端子、及び前記第6端子は、前記第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動信号出力回路は、復調回路を有し、
前記集積回路は、前記基駆動信号を変調した変調信号に応じた前記第1制御信号、及び前記第2制御信号を出力し、
前記第2端子と前記第5端子とは電気的に接続し、
前記復調回路は、前記第2端子と前記第5端子とが電気的に接続する接続点の信号を復調し、前記駆動信号として出力する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている、
ことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1モールド部材は、前記第1スイッチング素子の方向を示す方向指示マークを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記第1モールド部材は、グリシジル基含有ポリブタジエンを含むエポキシ樹脂からなる、
ことを特徴とする請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記駆動信号出力回路は、5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給する、
ことを特徴とする請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記集積回路は、第2制御信号を出力し、
前記駆動信号出力回路は、
前記配線基板に設けられ、前記第2制御信号により動作する第2スイッチング素子を有し、
前記第2スイッチング素子は、
第2トランジスターチップと、
前記第2トランジスターチップと電気的に接続している第4端子、第5端子、及び第6端子と、
前記第2トランジスターチップを覆う第2モールド部材と、
を含み、
前記第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて、前記第5端子と前記第6端子と
の導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第4端子、前記第5端子、及び前記第6端子は、前記第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられている、
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記駆動信号出力回路は、復調回路を有し、
前記集積回路は、前記基駆動信号を変調した変調信号に応じた前記第1制御信号、及び前記第2制御信号を出力し、
前記第2端子と前記第5端子とは電気的に接続し、
前記復調回路は、前記第2端子と前記第5端子とが電気的に接続する接続点の信号を復調し、前記駆動信号として出力する、
ことを特徴とする請求項11に記載のプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出することで、媒体に画像や文書を形成する液体吐出装置には、例えば、ピエゾ素子などの圧電素子を用いたものが知られている。圧電素子は、液体を複数のノズルのそれぞれに対応して設けられ、それぞれの圧電素子が駆動信号に従って動作することで、対応するノズルからインクを吐出させる。このような圧電素子は、電気的にみればコンデンサーのような容量性負荷であり、圧電素子を動作させるためには十分な電流を供給する必要がある。そのため、液体吐出装置は、圧電素子の駆動に対して、十分な電流の供給が可能な駆動信号出力回路を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路を備えた液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-117050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の液体吐出装置では、駆動信号を出力する駆動回路を、吐出された液体から保護するとの観点において十分ではなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を出力する基駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている。
【0007】
本発明に係るプリントヘッドの一態様は、
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記圧電素子の基となる基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の概略構成を示す図である。
図2】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図3】吐出部の内の1つの概略構造を示す図である。
図4】駆動信号出力回路の構成を示す図である。
図5】スイッチング素子の構造の一例を示す図である。
図6】スイッチング素子の構造の一例を示す図である。
図7】スイッチング素子の構造の一例を示す図である。
図8】スイッチング素子の構造の一例を示す図である。
図9】駆動信号出力回路の構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.液体吐出装置の構造
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態の液体吐出装置1は、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対して、所定のタイミングでプリントヘッド20がインクを吐出することで、媒体Pに所望画像を形成する所謂ライン印刷方式のインクジェットプリンターである。このような液体吐出装置1における媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。なお、液体吐出装置1は、ライン印刷方式のインクジェットプリンターに限るものではなく、シリアル印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。また、液体吐出装置1は、インクジェットプリンターに限るものではなく、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置、有機ELディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出装置、立体造形装置、及び捺染装置等であってもよい。
【0011】
図1に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、プリントヘッド20、搬送ユ
ニット40、及びインク容器80を備える。
【0012】
インク容器80には、媒体Pに吐出される複数種類のインクであって、例えば、シアンC、マゼンタM、イエローY、及びブラックBkの色彩のインクが貯留されている。このようなインクが貯留されるインク容器80としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0013】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、プリントヘッド20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0014】
プリントヘッド20は、複数の吐出ヘッド200を含む。複数の吐出ヘッド200は、少なくとも搬送される媒体Pの幅以上となるように、媒体Pの搬送方向と交差する走査軸に沿って並設されている。プリントヘッド20には、制御ユニット10が出力する制御信号Ctrl-Hが入力される。また、プリントヘッド20には、インク容器80に貯留されるインクが、不図示のチューブを介して供給される。そして、プリントヘッド20は、入力される制御信号Ctrl-Hに基づいて、インク容器80から供給されるインクを吐出する。
【0015】
搬送ユニット40は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作することで、搬送方向に沿って媒体Pを搬送する。
【0016】
以上のように構成された液体吐出装置1は、搬送ユニット40による媒体Pの搬送に連動して、プリントヘッド20が媒体Pにインクを吐出する。これにより、媒体Pの任意の位置にインクが着弾し、媒体Pに所望の画像を形成する。
【0017】
2.液体吐出装置の機能構成
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図2に示すように、液体吐出装置1は、制御ユニット10、プリントヘッド20、及び搬送ユニット40を有する。
【0018】
制御ユニット10は、制御回路100、及び電圧出力回路110を有する。
【0019】
制御回路100は、ホストコンピューター等の外部機器から画像信号が供給されることで、当該画像信号に応じた各種制御信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0020】
具体的には、制御回路100は、画像信号が供給され媒体Pへの印刷処理が実行されることで、制御信号Ctrl-Tを生成し出力する。制御回路100が出力する制御信号Ctrl-Tは、搬送ユニット40に含まれる搬送モーター41に入力される。搬送モーター41は、制御信号Ctrl-Tに応じて駆動する。この搬送モーター41の駆動力によって、媒体Pが搬送方向に沿って搬送される。なお、搬送ユニット40は、搬送モーター41に加えて、1又は複数の搬送ローターを含んでもよい。また、搬送ユニット40は、制御信号Ctrl-Tを、搬送モーター41を駆動する所定の信号に変換する為の搬送モータードライバー回路を含んでもよい。
【0021】
また、制御回路100は、外部機器から供給された画像信号に基づいて制御信号Ctrl-Hとして、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び基駆動信号dA,dBを生成し、プリントヘッド20に出力する。
【0022】
電圧出力回路110は、例えば42Vの直流電圧の電圧VHVを生成し、プリントヘッ
ド20に出力する。この電圧VHVは、プリントヘッド20が有する各種構成の電源電圧等として用いられる。また、電圧出力回路110が出力する電圧VHVは、制御ユニット10、及び搬送ユニット40を含む液体吐出装置1の各種構成の電源電圧として用いられてもよい。なお、電圧出力回路110は、42Vの直流電圧である電圧VHVに加えて、5Vの直流電圧や3.3Vの直流電圧等、複数の直流電圧を生成し、対応する構成に供給してもよい。
【0023】
プリントヘッド20は、駆動回路50、及び複数の吐出ヘッド200を有する。
【0024】
駆動回路50は、駆動信号出力回路51a,51bを含む。駆動信号出力回路51aには、制御信号Ctrl-Hとしてのデジタルの基駆動信号dAと電圧VHVとが入力される。駆動信号出力回路51aは、入力される基駆動信号dAをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMAを出力する。そして、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAは、吐出ヘッド200に供給される。同様に、駆動信号出力回路51bには、制御信号Ctrl-Hとしてのデジタルの基駆動信号dBと電圧VHVとが入力される。駆動信号出力回路51bは、入力される基駆動信号dBをデジタル/アナログ変換し、変換されたアナログ信号を電圧VHVに応じた電圧値にD級増幅することで駆動信号COMBを出力する。そして、駆動信号出力回路51bが出力する駆動信号COMBは、吐出ヘッド200に供給される。
【0025】
すなわち、基駆動信号dAは、駆動信号COMAの基となる信号であって、駆動信号COMAの波形を規定し、基駆動信号dBは、駆動信号COMBの基となる信号であって、駆動信号COMBの波形を規定する。ここで、基駆動信号dA,dBは、駆動信号COMA,COMBの波形を規定することが可能な信号であればよく、アナログの信号であってもよい。
【0026】
さらに、駆動回路50は、基準電圧出力回路52を含む。基準電圧出力回路52は、電圧値が5.5V、6V等で一定の直流電圧である基準電圧信号VBSを生成し、吐出ヘッド200に出力する。この基準電圧信号VBSは、吐出ヘッド200が有する後述する圧電素子60の駆動の基準電位として機能する。このような基準電圧信号VBSの電位は、5.5V、6Vに限られるものではなく、グラウンド電位であってもよい。
【0027】
吐出ヘッド200は、選択制御回路210、複数の選択回路230、及び複数の選択回路230のそれぞれに対応する複数の吐出部600を含む。
【0028】
選択制御回路210には、制御信号Ctrl-Hとしてのクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。選択制御回路210は、入力されるクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、複数の選択回路230のそれぞれに対応する選択信号を生成し、対応する選択回路230に出力する。
【0029】
各選択回路230には、駆動信号COMA,COMBと、選択制御回路210が出力する対応する選択信号とが入力される。選択回路230は、入力される選択信号に基づいて、駆動信号COMA,COMBの波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0030】
複数の吐出部600は、それぞれが圧電素子60を含む。圧電素子60の一端には、対応する選択回路230が出力する駆動信号VOUTが供給され、他端には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと、
他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動する。この圧電素子60の駆動に応じた量のインクが吐出部600から吐出される。
【0031】
ここで本実施形態における液体吐出装置1では、プリントヘッド20に含まれる複数の吐出ヘッド200は、合計で5000個以上の吐出部600を含み、プリントヘッド20が有する5000個以上の吐出部600には、1つの駆動回路50が出力する駆動信号COMA,COMBが供給される。すなわち、駆動信号出力回路51a,51bは、複数の吐出ヘッド200に含まれる5000個以上の圧電素子60に駆動信号COMA,COMBを供給する。
【0032】
本実施形態に示すようなライン印刷方式のインクジェットプリンターにおいて、A4サイズ(210mm×297mm:8.27inch×11.69inch)の枚葉紙である媒体Pに対して、600dpiで印刷を実行する場合、プリントヘッド20には、少なくとも「600個/inch×8.27inch=4962個」の吐出部600が、走査軸に沿って並設されている。このとき、液体吐出装置1では、複数の吐出ヘッド200を用いるが故に、図1に示すように、媒体Pの搬送方向に沿って見た場合に、複数の吐出ヘッド200の一部が重なるように設けられている。そのため、媒体Pの搬送方向に沿って見た場合、一部の吐出部600は重複して設けられている。さらに、複数の吐出部600は、搬送ユニット40によって搬送される媒体Pの搬送曲がり等を考慮し、プリントヘッド20に配置される必要がある。
【0033】
係る点を加味すると、本実施形態に示すようなライン印刷方式のインクジェットプリンターにおいて、A4サイズの枚葉紙である媒体Pに対して、600dpiで印刷を実行する場合、媒体Pの短辺方向であって、走査軸に沿った方向において、プリントヘッド20は、少なくとも5000個以上の吐出部600を有する。
【0034】
このようなプリントヘッド20が有する5000個以上の圧電素子60に対して、1つ駆動回路50が、駆動信号COMA,COMBを供給することで、走査軸に沿った方向において並設する吐出部600は、同じ信号波形の駆動信号COMA,COMBに基づく駆動信号VOUTによって駆動する。これにより、走査軸に沿った方向において並設する吐出部600に供給される駆動信号VOUTの相互間における信号波形にばらつきが生じるおそれが低減する。その結果、信号波形のばらつきに起因して、走査軸に沿った方向において並設する吐出部600から吐出されるインクの吐出量にばらつきが生じるおそれが低減し、プリントヘッド20から吐出されるインクの吐出精度であって、媒体Pに形成される画像品質が向上する。
【0035】
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1は、圧電素子60の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッド200と、圧電素子60を駆動させる駆動信号COMA,COMBを出力する駆動信号出力回路51a,51bと、駆動信号COMA,COMBの基となる基駆動信号dA,dBを出力する制御回路100と、を備える。
【0036】
3.吐出部の構造
ここで、吐出ヘッド200が有する吐出部600の構造の一例について説明する。図3は、吐出ヘッド200が有する複数の吐出部600の内の1つの概略構造を示す図である。図3に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。
【0037】
キャビティー631には、リザーバー641から供給されるインクが充填している。また、リザーバー641には、インク容器80から不図示のインクチューブ、及び供給口661を経由してインクが導入される。すなわち、キャビティー631には、対応する液体
容器5に貯留されているインクが充填している。
【0038】
振動板621は、図3において上面に設けられた圧電素子60の駆動によって変位する。そして、振動板621の変位に伴って、インクが充填されるキャビティー631の内部容積が拡大、縮小する。すなわち、振動板621は、キャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能する。
【0039】
ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。そして、キャビティー631の内部容積が変化することで、内部容積の変化に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。
【0040】
圧電素子60は、圧電体601を一対の電極611,612で挟んだ構造である。このような構造の圧電体601は、電極611,612により供給される電圧の電位差に応じて、電極611,612の中央部分が、振動板621とともに上下方向に撓む。具体的には、圧電素子60の電極611又は電極612の一方には、駆動信号VOUTが供給される。また、圧電素子60の電極611又は電極612の他方には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUTの電圧レベルが高くなると、上方向に撓み、駆動信号VOUTの電圧レベルが低くなると、下方向に撓む。
【0041】
以上のように構成された吐出部600では、圧電素子60が上方向に撓むことで、振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が拡大する。その結果、インクがリザーバー641から引き込まれる。一方、圧電素子60が下方向に撓むことで、振動板621が変位し、キャビティー631の内部容積が縮小する。その結果、縮小の程度に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。すなわち、吐出ヘッド200は、電極611と電極612とを含み、電極611と電極612との電位差により駆動する圧電素子60を有し、圧電素子60の駆動によりインクを吐出する。
【0042】
なお、圧電素子60は、図3に示す構造に限られず、吐出部600からインクが吐出できる構造であればよい。すなわち、圧電素子60は、上述した屈曲振動の構成に限られず、例えば、縦振動を用いる構成でもよい。
【0043】
4.駆動信号出力回路の構成
次に、駆動回路50に含まれる駆動信号出力回路51a,51bの構成及び動作について説明する。ここで、駆動信号出力回路51a,51bは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみであり同様の構成である。そのため、以下の説明では、基駆動信号dAに基づいて駆動信号COMAを出力する駆動信号出力回路51aの構成及び動作について説明を行い、基駆動信号dBに基づいて駆動信号COMBを出力する駆動信号出力回路51bの構成及び動作についての詳細な説明は省略する。
【0044】
図4は、駆動信号出力回路51aの構成を示す図である。図4に示すように、駆動信号出力回路51aは、変調回路510を含む集積回路500、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570,572、及びその他複数の回路素子を有する。集積回路500は、駆動信号COMAの基となる基駆動信号dAに基づいてゲート信号Hgdとゲート信号Lgdとを出力する。増幅回路550は、ゲート信号Hgdにより駆動されるスイッチング素子M1と、ゲート信号Lgdにより駆動されるスイッチング素子M2とを含み、増幅変調信号AMsを生成し復調回路560に出力する。復調回路560は、増幅変調信号AMsを平滑して駆動信号COMAとして出力する。
【0045】
集積回路500は、端子In、端子Bst、端子Hdr、端子Sw、端子Gvd、端子Ldr、端子Gnd、端子Ifb、及び端子Vfbを含む複数の端子を介して集積回路5
00の外部と電気的に接続される。集積回路500は、端子Inから入力される基駆動信号dAを変調し、増幅回路550が有するスイッチング素子M1を駆動するゲート信号Hgdを端子Hdrから出力し、スイッチング素子M2を駆動するゲート信号Lgdを端子Ldrから出力する。すなわち、集積回路500は、基駆動信号dAが入力され、ゲート信号Hgdとゲート信号Lgdとを出力する。
【0046】
集積回路500は、DAC(Digital to Analog Converter)511、変調回路510、ゲートドライブ回路520、及び電源回路580を含む。
【0047】
電源回路580は、電圧DAC_HVと電圧DAC_LVとを生成し、DAC511に供給する。
【0048】
DAC511は、駆動信号COMAの信号波形を規定するデジタルの基駆動信号dAを、電圧DAC_HVと電圧DAC_LVとの間の電圧値のアナログ信号である基駆動信号aAに変換し、変調回路510に出力する。なお、基駆動信号aAの電圧振幅の最大値は電圧DAC_HVの電圧値で規定され、最小値は電圧DAC_LVの電圧値で規定される。すなわち、電圧DAC_HVは、DAC511における高電圧側の基準電圧であり、電圧DAC_LVは、DAC511における低電圧側の基準電圧となる。そして、DAC511から出力されるアナログの基駆動信号aAを増幅した信号が、駆動信号COMAに相当する。つまり、基駆動信号aAは、駆動信号COMAの増幅前の目標となるアナログ信号に相当し、基駆動信号dAは、駆動信号COMAの増幅前の目標となるデジタル信号に相当する。なお、本実施形態における基駆動信号aAの電圧振幅は、例えば、1V~2Vである。
【0049】
変調回路510は、基駆動信号aAを変調した変調信号Msを生成し、ゲートドライブ回路520を介して増幅回路550に出力する。変調回路510は、加算器512,513、コンパレーター514、インバーター515、積分減衰器516、及び減衰器517を含む。
【0050】
積分減衰器516は、端子Vfbを介して入力された端子Outの電圧値、すなわち、駆動信号COMAの電圧値を減衰するとともに積分し加算器512の-側の入力端に供給する。また、加算器512の+側の入力端には基駆動信号aAが入力される。そして、加算器512は、+側の入力端に入力された電圧から-側の入力端に入力された電圧を差し引き積分した電圧を加算器513の+側の入力端に供給する。
【0051】
ここで、基駆動信号aAの電圧振幅の最大値は、前述の通り2V程度であるのに対して、駆動信号COMAの電圧の最大値で40Vを超える場合がある。このため、積分減衰器516は、偏差を求めるにあたり両電圧の振幅範囲を合わせるために、端子Vfbを介して入力された駆動信号COMAの電圧を減衰させる。
【0052】
減衰器517は、端子Ifbを介して入力した駆動信号COMAの高周波成分を減衰した電圧を、加算器513の-側の入力端に供給する。また、加算器513の+側の入力端には、加算器512から出力された電圧が入力される。そして、加算器513は、+側の入力端に入力された電圧から、-側の入力端に入力された電圧を減算した電圧Asを、コンパレーター514に出力する。
【0053】
この加算器513から出力される電圧Asは、基駆動信号aAの電圧から、端子Vfbに供給された信号の電圧を差し引き、さらに、端子Ifbに供給された信号の電圧を差し引いた電圧である。このため、加算器513から出力される電圧Asの電圧は、目標である基駆動信号aAの電圧から、駆動信号COMAの減衰電圧を差し引いた偏差を、駆動信
号COMAの高周波成分で補正した信号となる。
【0054】
コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧Asに基づいて、パルス変調した変調信号Msを出力する。具体的には、コンパレーター514は、加算器513から出力される電圧Asが電圧上昇時であれば、後述する閾値Vth1以上になった場合にHレベルとなり、電圧Asが電圧下降時であれば、後述する閾値Vth2を下回った場合にLレベルとなる変調信号Msを出力する。ここで閾値Vth1,Vth2は、閾値Vth1>閾値Vth2という関係に設定されている。なお、変調信号Msは、基駆動信号dA,aAに合わせて周波数やデューティー比が変化する。そのため、減衰器517が感度に相当する変調利得を調整することで、変調信号Msの周波数やデューティー比の変化量を調整することができる。
【0055】
コンパレーター514から出力された変調信号Msは、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー521に供給される。また、変調信号Msは、インバーター515により論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー522にも供給される。すなわち、ゲートドライバー521に供給される信号の論理レベルとゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルとは、互いの排他的な関係にある。
【0056】
ここで、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルは、同時にHレベルとはならないようにタイミングが制御されてもよい。すなわち、排他的な関係とは、厳密にいえば、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に供給される信号の論理レベルが同時にHレベルになることがないことを意味し、詳細には、増幅回路550に含まれるスイッチング素子M1とスイッチング素子M2とが同時にオンすることがないことを意味する。
【0057】
ゲートドライブ回路520は、ゲートドライバー521と、ゲートドライバー522とを含む。
【0058】
ゲートドライバー521は、コンパレーター514から出力される変調信号Msをレベルシフトして、端子Hdrからゲート信号Hgdとして出力する。ゲートドライバー521の電源電圧のうち高位側は、端子Bstを介して印加される電圧であり、低位側は、端子Swを介して印加される電圧である。端子Bstは、コンデンサーC5の一端及びダイオードD1のカソードに接続している。端子Swは、コンデンサーC5の他端に接続している。ダイオードD1のアノードは、端子Gvdに接続している。これにより、ダイオードD1のアノードには、不図示の電源回路から供給される例えば7.5Vの直流電圧である電圧Vmが供給される。したがって、端子Bstと端子Swとの電位差は、コンデンサーC5の両端の電位差、すなわち電圧Vmにおよそ等しくなる。そして、ゲートドライバー521は、入力される変調信号Msに従う端子Swに対して電圧Vmだけ大きな電圧のゲート信号Hgdを生成し、端子Hdrから出力する。
【0059】
ゲートドライバー522は、ゲートドライバー521よりも低電位側で動作する。ゲートドライバー522は、コンパレーター514から出力された変調信号Msの論理レベルがインバーター515によって反転された信号をレベルシフトして、端子Ldrからゲート信号Lgdとして出力する。ゲートドライバー522の電源電圧のうち高位側は、電圧Vmが印加され、低位側は、端子Gndを介して例えば0Vのグラウンド電位が供給される。そして、ゲートドライバー522に入力される信号に従う端子Gndに対して電圧Vmだけ大きな電圧のゲート信号Lgdを生成し、端子Ldrから出力する。
【0060】
ここで、ゲート信号Hgdが、変調信号Msの電圧値をレベルシフトした信号であり、
また、ゲート信号Lgdは、及び変調信号Msの論理レベルを反転した後、反転した信号の電圧値をレベルシフトした信号である点に鑑みると、ゲート信号Hgd、及びゲート信号Lgdもまた基駆動信号dA、及び基駆動信号aAを変調した信号に相当する。
【0061】
増幅回路550は、スイッチング素子M1,M2を含む。スイッチング素子M1は、FET(Field Effect Transistor)等の半導体素子であって、FETが形成されたトランジスターチップTr1と、トランジスターチップTr1のゲートと電気的に接続している端子tg1と、トランジスターチップTr1のドレインと電気的に接続している端子td1と、トランジスターチップTr1のソースと電気的に接続している端子ts1と、を含む。スイッチング素子M1の端子td1には、例えば42Vの直流電圧である電圧VHVが供給される。スイッチング素子M1の端子tg1は、抵抗R1の一端と電気的に接続し、抵抗R1の他端は、集積回路500の端子Hdrと電気的に接続している。すなわち、スイッチング素子M1の端子tgには、集積回路500の端子Hdrから出力されるゲート信号Hgdが供給される。そして、スイッチング素子M1の端子ts1は、集積回路500の端子Swと電気的に接続している。すなわち、スイッチング素子M1は、トランジスターチップTr1と、トランジスターチップTr1と電気的に接続している端子tg1、端子ts1、及び端子td1と、を含む。
【0062】
以上のように構成されたスイッチング素子M1において、端子tg1に入力されるゲート信号Hgdは、トランジスターチップTr1のドレインに供給される。これにより、トランジスターチップTr1のドレインとソースとの間であって、スイッチング素子M1の端子td1と端子ts1との間の導通状態が制御される。すなわち、スイッチング素子M1は、ゲート信号Hgdにより動作する。具体的には、スイッチング素子M1は、端子tg1に入力されるゲート信号Hgdに応じて、端子ts1と端子td1との導通状態が制御される。ここで、以下の説明において、スイッチング素子M1の端子td1と端子ts1との間が導通に制御されている場合をオンと称し、スイッチング素子M1の端子td1と端子ts1との間が非導通に制御されている場合をオフと称する場合がある。
【0063】
スイッチング素子M2は、FET等の半導体素子であって、FETが形成されたトランジスターチップTr2と、トランジスターチップTr2のゲートと電気的に接続している端子tg2と、トランジスターチップTr2のドレインと電気的に接続している端子td2と、トランジスターチップTr2のソースと電気的に接続している端子ts2と、を含む。スイッチング素子M2の端子td2は、集積回路500の端子Swと電気的に接続している。すなわち、スイッチング素子M2の端子td2とスイッチング素子M1の端子ts1とは、互いに電気的に接続している。スイッチング素子M2の端子tg2には、抵抗R2の一端と電気的に接続し、抵抗R2の他端は、集積回路500の端子Ldrと電気的に接続している。すなわち、スイッチング素子M2の端子tg2には、集積回路500の端子Ldrから出力されるゲート信号Lgdが供給される。そして、スイッチング素子M2の端子ts2には、グラウンド電位が供給される。すなわち、スイッチング素子M2は、トランジスターチップTr2と、トランジスターチップTr2と電気的に接続している端子tg2、端子ts2、及び端子td2と、を含む。
【0064】
以上のように構成されたスイッチング素子M2において、端子tg2に入力されるゲート信号Lgdは、トランジスターチップTr2のドレインに供給される。これにより、トランジスターチップTr2のドレインとソースとの間であって、スイッチング素子M2の端子td2と端子ts2との間の導通状態が制御される。すなわち、スイッチング素子M2は、ゲート信号Lgdにより動作する。具体的には、スイッチング素子M2は、端子tg2に入力されるゲート信号Lgdに応じて、端子td2と端子ts2との導通状態が制御される。ここで、以下の説明において、スイッチング素子M2の端子td2と端子ts2との間が導通に制御されている場合をオンと称し、スイッチング素子M2の端子td2
と端子ts2との間が非導通に制御されている場合をオフと称する場合がある。
【0065】
以上のように構成された増幅回路550において、スイッチング素子M1がオフ、スイッチング素子M2がオンに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、グラウンド電位となる。このとき、端子Bstには電圧Vmが供給される。一方で、スイッチング素子M1がオン、スイッチング素子M2がオフに制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電圧は、電圧VHVとなる。したがって、端子Bstには電圧VHV+Vmの電位の電圧信号が供給される。
【0066】
すなわち、スイッチング素子M1を駆動させるゲートドライバー521は、コンデンサーC5をフローティング電源とし、コンデンサーC5の他端であって、端子Swの電位が、スイッチング素子M1及びスイッチング素子M2の動作に応じて、0V又は電圧VHVに変化することで、ゲートドライバー521は、Lレベルが電圧VHVの電位であって、且つ、Hレベルが電圧VHV+電圧Vmの電位のゲート信号Hgdをスイッチング素子M1のゲート端子に供給する。
【0067】
一方、スイッチング素子M2を駆動させるゲートドライバー522は、スイッチング素子M1及びスイッチング素子M2の動作に関係なく、Lレベルがグラウンド電位であって、且つ、Hレベルが電圧Vmの電位のゲート信号Lgdをスイッチング素子M2のゲート端子に供給する。
【0068】
以上のように、増幅回路550は、ゲート信号Hgd,Lgdに応じて、スイッチング素子M1,M2が動作することで、基駆動信号dA,aAが変調された変調信号Msを電圧VHVに基づいて増幅する。そして、増幅回路550は、増幅した信号を、スイッチング素子M1の端子ts1と、スイッチング素子M2の端子td2と、が共通に接続される接続点から増幅変調信号AMsとして出力する。
【0069】
また、図4に示すように、増幅回路550に入力される電圧VHVが伝搬する伝搬経路には、コンデンサーCdが位置している。コンデンサーCdの一端には電圧VHVが供給され、他端にはグラウンド電位が供給されている。このコンデンサーCdは、例えば、電解コンデンサーであって、増幅回路550が動作することに起因して電圧VHVの電位が変動するおそれを低減する。
【0070】
復調回路560は、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsを平滑することで、駆動信号COMAを生成し、駆動信号出力回路51aから出力する。
【0071】
復調回路560は、コイルL1とコンデンサーC1とを含む。コイルL1の一端は、スイッチング素子M1の端子ts1、及びスイッチング素子M2の端子td2と電気的に接続している。これにより、コイルL1の一端には、増幅回路550から出力された増幅変調信号AMsが入力さる。また、コイルL1の他端は、駆動信号出力回路51aの出力となる端子Outと接続している。また、コイルL1の他端は、コンデンサーC1の一端とも接続している。そして、コンデンサーC1の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、コイルL1とコンデンサーC1とは、増幅回路550から出力される増幅変調信号AMsを平滑することで復調し、駆動信号COMAとして出力する。
【0072】
帰還回路570は、抵抗R3と抵抗R4とを含む。抵抗R3の一端は、駆動信号COMAが出力される端子Outと接続し、他端は、端子Vfb及び抵抗R4の一端と接続している。抵抗R4の他端には電圧VHVが供給される。これにより、端子Vfbには、端子Outから帰還回路570を通過した駆動信号COMAがプルアップされた状態で帰還する。
【0073】
帰還回路572は、コンデンサーC2,C3,C4と、抵抗R5,R6を含む。コンデンサーC2の一端は、駆動信号COMAが出力される端子Outと接続し、他端は、抵抗R5の一端、及び抵抗R6の一端と接続している。抵抗R5の他端にはグラウンド電位が供給される。これにより、コンデンサーC2と抵抗R5とがハイパスフィルター(High Pass Filter)として機能する。なお、ハイパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約9MHzに設定される。また、抵抗R6の他端は、コンデンサーC4の一端、及びコンデンサーC3の一端と接続している。コンデンサーC3の他端には、グラウンド電位が供給される。これにより、抵抗R6とコンデンサーC3とは、ローパスフィルター(Low Pass Filter)として機能する。なお、ローパスフィルターのカットオフ周波数は、例えば約160MHzに設定される。このように、帰還回路572がハイパスフィルターとローパスフィルターと備えて構成されることで、帰還回路572は、駆動信号COMAの所定の周波数域を通過させるバンドパスフィルター(Band Pass Filter)として機能する。
【0074】
そして、コンデンサーC4の他端が集積回路500の端子Ifbと接続している。これにより、端子Ifbには、所定の周波数成分を通過させるバンドパスフィルターとして機能する帰還回路572を通過した駆動信号COMAの高周波成分のうち、直流成分がカットされた信号が帰還する。
【0075】
ところで、端子Outから出力される駆動信号COMAは、基駆動信号dAに基づく増幅変調信号AMsを復調回路560によって平滑された信号である。そして、駆動信号COMAは、端子Vfbを介して積分・減算された上で、加算器512に帰還される。よって、駆動信号出力回路51aは、帰還の遅延と、帰還の伝達関数で定まる周波数で自励発振する。ただし、端子Vfbを介した帰還経路は、遅延量が大きいため、当該端子Vfbを介した帰還のみでは自励発振の周波数を駆動信号COMAの精度を十分に確保できるほど高くすることができない場合がある。そこで、端子Vfbを介した経路とは別に、端子Ifbを介して、駆動信号COMAの高周波成分を帰還する経路を設けることで、回路全体でみた場合における遅延を小さくしている。これにより、電圧Asの周波数は、端子Ifbを介した経路が存在しない場合と比較して、駆動信号COMAの精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。
【0076】
ここで、本実施形態における駆動信号出力回路51aにおける自励発振の発振周波数は、駆動信号COMAの精度を十分に確保しつつ、駆動信号出力回路51aで生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。換言すれば、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数は、スイッチング素子M1,M2で生じる発熱を低減させるとの観点において1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、さらに、スイッチング素子M1,M2で生じる損失を低減させることで、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合においては、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数は、1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0077】
本実施形態における液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51aが、増幅変調信号AMsを平滑して駆動信号COMAを生成し、プリントヘッド20が有する圧電素子60に供給する。そして、圧電素子60は、駆動信号COMAに含まれる信号波形が供給されることによって駆動する。そして、吐出部600から圧電素子60の駆動に応じた量のインクが吐出される。
【0078】
このような圧電素子60を駆動する駆動信号COMAの信号波形に対して周波数スペクトル解析を実行すると、駆動信号COMAには、50kHz以上の周波数成分が含まれて
いることが知られている。このような50kHz以上の周波数成分を含む駆動信号COMAの信号波形を精度よく生成するに際して、変調信号の周波数を1MHzよりも低くすると、駆動信号出力回路51aから出力される駆動信号COMAの信号波形のエッジ部に鈍りが生じ、当該鈍りが生じる。換言すれば、駆動信号COMAの信号波形を精度よく生成するには、変調信号Msの周波数を1MHz以上とする必要がある。そして、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数が1MHz以下である場合、駆動信号COMAの波形精度が低下するが故に、圧電素子60の駆動精度が低下し、その結果、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化するおそれがある。
【0079】
このような問題に対して、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数を1MHz以上とすることで、駆動信号COMAの信号波形のエッジ部に鈍りが生じるおそれが低減する。すなわち、駆動信号COMAの信号波形の波形精度が向上し、駆動信号COMAに基づいて駆動される圧電素子60の駆動精度が向上する。よって、液体吐出装置1から吐出されるインクの吐出特性が悪化するおそれが低減される。
【0080】
しかしながら、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数を高くすると、スイッチング素子M1,M2におけるスイッチング損失が大きくなる。このようなスイッチング素子M1,M2の生じるスイッチング損失は、駆動信号出力回路51aでの消費電力を増加させるとともに、駆動信号出力回路51aにおける発熱量も増加させる。すなわち、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数を高くしすぎた場合、スイッチング素子M1,M2におけるスイッチング損失が大きくなり、その結果、AB級アンプなどのリニア増幅に対するD級アンプの優位性の1つである省電力性、及び省発熱性が損なわれるおそれがある。このようなスイッチング素子M1,M2のスイッチング損失を低減するとの観点においては、変調信号Msの周波数、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であって、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数が8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の省電力性を高めることが求められる場合、スイッチング素子M1,M2の駆動周波数は、4MHz以下であることが好ましい。
【0081】
以上より、D級アンプを用いた駆動信号出力回路51aにおいて、出力する駆動信号COMAの信号波形の精度の向上と、省電力化とを両立させるとの観点において、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってスイッチング素子M1,M2の駆動周波数が1MHz以上8MHz以下であることが好ましく、特に、液体吐出装置1の消費電力を低減させる場合には、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってスイッチング素子M1,M2の駆動周波数が1MHz以上4MHz以下であることが好ましい。
【0082】
ここで、駆動信号出力回路51aの自励発振の発振周波数であってスイッチング素子M1,M2の駆動周波数には、上述した変調信号Msの周波数や、ゲート信号Hgd,Lgdの周波数、及び増幅変調信号AMsの周波数等が含まれる。
【0083】
以上のように、駆動信号出力回路51aは、基駆動信号dAが入力され、ゲート信号Hgd,Lgdを出力する集積回路500と、ゲート信号Hgdにより動作するスイッチング素子M1と、ゲート信号Lgdにより動作するスイッチング素子M2と、復調回路560と、を有し、集積回路500は、基駆動信号dAを変調した変調信号Msに応じたゲート信号Hgd、及びゲート信号Lgdを出力し、スイッチング素子M1の端子ts1とスイッチング素子M2の端子td2とは電気的に接続し、復調回路560は、端子ts1と端子td2とが電気的に接続する接続点の信号を復調し、駆動信号COMAとして出力す
る。
【0084】
5.駆動信号出力回路が実装された駆動回路基板の構造
ここで、液体吐出装置1では、ノズル651から吐出されたインクの多くは、媒体Pに着弾することで画像を形成する。しかしながら、ノズル651から吐出されたインクの一部は、媒体Pに着弾する前にミスト化し液体吐出装置1の内部に浮遊する。また、ノズル651から吐出されたインクが媒体Pに着弾した後であっても、媒体Pの搬送に伴い生じる気流等によって、再度ミスト化し浮遊する場合がある。このような、液体吐出装置1の内部で浮遊するインクミストは、非常に微小であるが故にレナード効果によって帯電し、液体吐出装置1の内部に設けられた各種回路に引き寄せられる。そして、当該インクミストが液体吐出装置1の内部に設けられた回路に付着した場合、液体吐出装置1の動作の安定性が低下する。
【0085】
特に、本実施形態の液体吐出装置1において駆動信号出力回路51a,51bは、5000個以上の圧電素子60に対して駆動信号COMA,COMBを供給する。それ故に、駆動信号出力回路51a,51bに含まれる電圧VHVから駆動信号COMA,COMBを生成する各種の回路や、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBが伝搬する伝搬経路には、大きな電流が流れ、その結果、当該回路、及び配線経路には、多くのインクミストが引き寄せられる。仮に、駆動信号出力回路51a,51bに含まれる電圧VHVから駆動信号COMA,COMBを生成する各種の回路や、駆動信号出力回路51a,51bが出力する駆動信号COMA,COMBが伝搬する伝搬経路にインクミストが付着した場合、駆動信号COMA,COMBの信号波形の波形精度が低下し、プリントヘッド20からのインクの吐出精度を悪化させるおそれがある。
【0086】
そのため、液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51a,51bに含まれる電圧VHVから駆動信号COMA,COMBを生成する各種の回路や、駆動信号COMA,COMBが伝搬する伝搬経路であって、特に、充電部が露出している充電部露出部に対して、インクミストが付着するおそれを低減することが求められている。
【0087】
係る要求に対して、本実施形態の液体吐出装置1は、充電部にインクミストが付着するおそれを低減できる駆動信号出力回路51a,51bを備える。以下では、充電部にインクミストが付着するおそれを低減できる駆動信号出力回路51a,51bの構造の一例について説明する。なお、上述のとおり、駆動信号出力回路51a,51bはいずれも同様の構成であり、以下では、駆動信号出力回路51aを用いて説明を行い、駆動信号出力回路51bの構造の説明は省略する。
【0088】
駆動信号出力回路51a,51bの構造の一例を説明するにあたり、まず、本実施形態の駆動信号出力回路51a,51bに用いられるスイッチング素子M1,M2の構造について説明する。なお、スイッチング素子M1,M2はいずれも同じ構造であり、以下の説明において、スイッチング素子M1,M2を区別する必要がない場合、単にスイッチング素子Mと称する場合がある。その際、スイッチング素子Mは、スイッチング素子M1のトランジスターチップTr1、及びスイッチング素子M2のトランジスターチップTr2に相当するトランジスターチップTrと、スイッチング素子M1の端子tg1、及びスイッチング素子M2の端子tg2に相当する端子tgと、スイッチング素子M1の端子td1、及びスイッチング素子M2の端子td2に相当する端子tdと、スイッチング素子M1の端子ts1、及びスイッチング素子M2の端子ts2に相当する端子tsと、を含むとして説明を行う。
【0089】
図5図8は、スイッチング素子Mの構造の一例を示す図である。ここで、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を用いて説明を行う。また、以下の説明にお
いて、X軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-X側、選択側を+X側と称し、Y軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-Y側、選択側を+Y側と称し、Z軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-Z側、選択側を+Z側と称する場合がある。
【0090】
図5図8に示すようにスイッチング素子Mは、モールド部Moと、モールド部Moの周囲に設けられた端子tg,td,tsとを有する。
【0091】
モールド部Moは、面Su,Sd,Sf,Sb,Sl,Srをと含む略六面体である。具体的には、面Suと面Sdとは、面Sdが-Z側、面Suが+Z側となるようにZ軸に沿って向かい合って位置し、面Sfと面Sbとは、面Sfが-X側、面Sbが+X側となるようにX軸に沿って向かい合って位置し、面Slと面Srとは、面Slが-Y側、面Srが+Y側となるようにY軸に沿って向かい合って位置している。
【0092】
また、モールド部Moの面Suには、基準方向マークMrkが設けられている。基準方向マークMrkは、スイッチング素子Mが有する端子tg,td,tsの内、基準となる基準端子の位置を示すマークであって、本実施形態のスイッチング素子Mの場合、端子tsに対応する位置に設けられている。すなわち、モールド部Moは、スイッチング素子Mの方向を示す基準方向マークMrkを含む。このような基準方向マークMrkは、例えば、モールド部Moにエンボス加工がなされることで形成されてもよく、モールド部Moに特定の文字や記号が印字されていてもよい。
【0093】
このようなモールド部Moの内部には、前述したトランジスターチップTrが位置している。すなわち、モールド部Moは、トランジスターチップTrを覆う。これにより、モールド部Moは、トランジスターチップTrを外部からの衝撃や外気から保護するとともに、トランジスターチップTrを絶縁する。
【0094】
ここで、液体吐出装置1で使用される液体は多岐にわたり、水系顔料インクや水系染料インクのような水を溶媒とする水系インクの他、有機溶剤を溶媒とするソルベントインク等の溶剤系インク、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型インク等が挙げられる。そのため、液体吐出装置1の内部で浮遊するインクミストの物性も多岐にわたり、モールド部Moには、多岐にわたり異なる液体の物性に対して高い耐性を有することが求められている。特に、有機溶剤を溶媒とする溶剤系インクが使用された場合、当該有機溶剤とモールド部Moとが反応することで、モールド部Moを溶解し、駆動信号出力回路51a,51bの信頼性を低下させるおそれがある。
【0095】
本実施形態の液体吐出装置1では、駆動信号出力回路51a,51bのスイッチング素子M1,M2のそれぞれのモールド部Moとして、グリシジル基を有するポリブタジエンを含むエポキシ樹脂を用いる。すなわち、スイッチング素子M1,M2のそれぞれのモールド部Moは、グリシジル基ポリブタジエンを含むエポキシ樹脂である。これにより、モールド部Moは、多岐にわたり異なる液体の物性に対して高い耐性を有するとともに、溶剤系インクが用い垂れた場合であっても、モールド部Moが溶解するおそれが低減する。その結果、液体吐出装置1が長期間使用される場合であっても、スイッチング素子M1,M2、及びスイッチング素子M1,M2を含む駆動信号出力回路51a,51bの信頼性を高めることができる。
【0096】
端子tg、端子ts、及び端子tdは、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面Sdに見た場合に、全てがモールド部Moの面Suと重なる位置に設けられている。換言すれば、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面S
dに見た場合、端子tg、端子ts、及び端子tdは、モールド部Moの面Suと重なる位置にのみ設けられ、モールド部Moの面Suと重ならい位置には設けられていない。すなわち、スイッチング素子Mを+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面Sdに見た場合に、端子tg、端子ts、及び端子tdは、モールド部Moの+X側、-X側、+Y側、及び-Y側のいずれからも突出していない。
【0097】
具体的には、端子tdは、電極tdmと4個の電極tdsとを含む。電極tdmは、モールド部Moの面Sdに形成されている。4個の電極tdsのそれぞれは、電極tdmの+X側に位置し、-X側で電極tdmに接触した状態でY軸に沿って並設されている。このとき、4個の電極tdsのそれぞれは、モールド部Moの面Sdから面Sbに亘り形成されている。また、モールド部Moの面Sbの内、4個の電極tdsが位置する領域には、凹部が形成されている。すなわち、端子tdに含まれる4個の電極tdsのそれぞれは、面Sbに形成された4個の凹部のそれぞれに対応して位置している。これにより、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面Sdに見た場合に、端子tdは、モールド部Moの+X側から突出せず、モールド部Moの面Suと重なる位置にのみ設けられる。
【0098】
端子tsは、電極tsmと3個の電極tssとを含む。電極tsmは、モールド部Moの面Sdにおいて、電極tdmの-X側に形成されている。3個の電極tssのそれぞれは、電極tsmの-X側に位置し、+X側で電極tdmに接触した状態でY軸に沿って並設されている。このとき、3個の電極tssのそれぞれは、モールド部Moの面Sdから面Sfに亘り形成されている。また、モールド部Moの面Sfの内、3個の電極tssが位置する領域には、凹部が形成されている。すなわち、端子tsに含まれる3個の電極tssのそれぞれは、面Sfに形成された3個の凹部のそれぞれに対応して位置している。これにより、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面Sdに見た場合に、端子tsは、モールド部Moの-X側から突出せず、モールド部Moの面Suと重なる位置にのみ設けられる。
【0099】
端子tgは、モールド部Moの面Sdにおいて、電極tdmの-X側であって、且つ電極tsmの+Y側に形成されている。このとき、端子tgは、モールド部Moの面Sdから面Sfに亘り形成されている。また、モールド部Moの面Sfの内、端子tgが位置する領域には、凹部が形成されている。すなわち、端子tgは、面Sfに形成された凹部に対応して位置している。これにより、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に見た場合であって、モールド部Moを面Suから面Sdに見た場合に、端子tgは、モールド部Moの-X側から突出せず、モールド部Moの面Suと重なる位置にのみ設けられる。
【0100】
以上のように、本実施形態の駆動信号出力回路51a,51bに用いられるスイッチング素子Mは、トランジスターチップTrと、トランジスターチップTrと電気的に接続している端子tg、端子td、及び端子tsと、トランジスターチップTrを覆うモールド部Moと、を含み、スイッチング素子MをZ軸に沿って+Z側から-Z側に向かう方向であって、モールド部Moを面Suから面Sdに向かう方向において、端子tg、端子td、及び端子tsは、モールド部Moと重なる位置にのみ設けられている。
【0101】
次に、上述した構造のスイッチング素子Mであって、スイッチング素子M1,M2を含む駆動信号出力回路51aの構造について説明する。ここで、以下の説明において、スイッチング素子M1に含まれるモールド部Moをモールド部Mo1と称し、モールド部Mo1に含まれる面Su,Sd,Sf,Sb,Sl,Srを、面Su1,Sd1,Sf1,Sb1,Sl1,Sr1と称し、スイッチング素子M2に含まれるモールド部Moをモールド部Mo2と称し、モールド部Mo2に含まれる面Su,Sd,Sf,Sb,Sl,Sr
を、面Su2,Sd2,Sf2,Sb2,Sl2,Sr2と称する場合がある。
【0102】
図9は、駆動信号出力回路51aの構造を説明するための図である。ここで、図9では、上述したX軸、Y軸、及びZ軸とは独立した方向であって、互いに直交するx軸、y軸、及びz軸を用いて説明を行う。また、以下の説明において、x軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-x側、選択側を+x側と称し、y軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-y側、選択側を+y側と称し、z軸に沿った方向を規定する場合、図示する矢印の起点側を-z側、選択側を+z側と称する場合がある。なお、図9では、駆動信号出力回路51aを構成する一部の回路素子の図示を省略し、又は簡略している。
【0103】
図9に示すように、駆動信号出力回路51aは、集積回路500、スイッチング素子M1,M2、コイルL1、コンデンサーC1,Cd、及び配線基板55を含む。そして、駆動信号出力回路51aにおいて、集積回路500、スイッチング素子M1,M2、コイルL1、及びコンデンサーC1,Cdは、配線基板55に設けられている。このような配線基板55は、集積回路500、スイッチング素子M1,M2、コイルL1、及びコンデンサーC1,Cdを含む各種回路素子を電気的に接続するための配線パターンを有する。なお、図9では、集積回路500、スイッチング素子M1,M2、コイルL1、及びコンデンサーC1,Cdが配線基板55の+z側の面にのみ実装されている場合を図示しているが、スイッチング素子M1,M2、コイルL1、及びコンデンサーC1,Cdのいずれかが、-z側の面に実装されていてもよい。また、配線基板55は、+z側の面と-z側の面との間に複数の配線層を有する所謂多層基板であってもよい。
【0104】
スイッチング素子M1とスイッチング素子M2とは、配線基板55のx軸に沿って、スイッチング素子M1が-x側、スイッチング素子M2が+x側となるように並んで位置している。
【0105】
具体的には、スイッチング素子M1は、端子tg1の一部、及び端子ts1の一部が設けられた面Sf1が+x側に位置し、端子td1の一部が設けられた面Sb1が-x側に位置し、端子tg1,td1,ts1が設けられた面Sd1が配線基板55の+z側の面と接触するように、配線基板55に設けられている。すなわち、スイッチング素子M1は、z軸に沿って+z側に面Su1が位置し、-z側に面Sd1が位置し、面Sd1と配線基板55とが接触している。したがって、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M1を見た場合、端子tg1、端子td1、及び端子ts1は、モールド部Mo1と重なる位置にのみ設けられている。換言すれば、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M1を見た場合、端子tg1、端子ts1、及び端子td1は、モールド部Mo1の面Su1と重なる位置にのみ設けられ、モールド部Mo1の面Su1と重ならい位置には設けられていない。すなわち、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M1を見た場合、端子tg1、端子ts1、及び端子td1は、モールド部Mo1の+X側、-X側、+Y側、及び-Y側のいずれからも突出していない。
【0106】
そして、スイッチング素子M1は、端子td1が、配線基板55の配線パターンp1と電気的に接続し、端子tg1が、配線基板55の配線パターンp2と電気的に接続し、端子ts1が、配線基板55の配線パターンp3と電気的に接続している。
【0107】
スイッチング素子M2は、スイッチング素子M1の+x側において、端子tg2の一部、及び端子ts2の一部が設けられた面Sf2が+x側に位置し、端子td2の一部が設けられた面Sb2が-x側に位置し、端子tg2,td2,ts2が設けられた面Sd2
が配線基板55の+z側の面と接触するように、配線基板55に設けられている。すなわち、スイッチング素子M2は、z軸に沿って+z側に面Su2が位置し、-z側に面Sd2が位置し、面Sd2と配線基板55とが接触している。したがって、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M2を見た場合、端子tg2、端子td2、及び端子ts2は、モールド部Mo2と重なる位置にのみ設けられている。換言すれば、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M2を見た場合、端子tg2、端子ts2、及び端子td2は、モールド部Mo2の面Su2と重なる位置にのみ設けられ、モールド部Mo2の面Su2と重ならい位置には設けられていない。すなわち、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M2を見た場合、端子tg2、端子ts2、及び端子td2は、モールド部Mo2の+X側、-X側、+Y側、及び-Y側のいずれからも突出していない。
【0108】
そして、端子td2は、配線基板55の配線パターンp3と電気的に接続し、端子tg2は、配線基板55の配線パターンp4と電気的に接続し、端子ts2は、配線基板55のグラウンド配線パターンpgと電気的に接続している。
【0109】
集積回路500は、x軸に沿って並んで設けられたスイッチング素子M1,M2の+y側に位置している。そして、集積回路500は、基駆動信号dAが入力される端子Inが+y側に位置し、スイッチング素子M1にゲート信号Hgdを出力する端子Hdr、スイッチング素子M2にゲート信号Lgdを出力する端子Ldr、及び、スイッチング素子M1,M2と電気的に接続する端子Swが、集積回路500の-y側に位置している。そして、端子Hdrは、配線パターンp2と電気的に接続し、端子Ldrは、配線パターンp4と電気的に接続し、端子Swは、配線パターンp3と電気的に接続している。なお、図9では、端子Hdrとスイッチング素子M1の端子tg1との間に設けられる抵抗R1、及び、端子Ldrとスイッチング素子M2の端子tg2との間に設けられる抵抗R2の図示を省略している。
【0110】
コイルL1は、x軸に沿って並んで設けられたスイッチング素子M1,M2の-y側に位置している。そして、コイルL1の一端は、配線パターンp3と電気的に接続し、コイルL1の他端は、配線パターンp5と電気的に接続している。
【0111】
コンデンサーC1は、x軸に沿って並んで設けられたスイッチング素子M1,M2、及び、コイルL1の+X側に位置している。コンデンサーC1の一端は、配線パターンp5と電気的に接続し、コンデンサーC1の他端は、グラウンド配線パターンpgと電気的に接続している。
【0112】
コンデンサーCdは、コイルL1の-X側に位置している。コンデンサーCdの一端は、配線パターンp1と電気的に接続し、コンデンサーC1の他端は、グラウンド配線パターンpgと電気的に接続している。
【0113】
以上のように構成された駆動信号出力回路51aでは、配線パターンp1に電圧VHVが供給される。配線パターンp1は、電解コンデンサーであるコンデンサーCdの+側端子、及び、スイッチング素子M1の端子td1と電気的に接続している。このとき、コンデンサーCdは、電圧VHVの電圧値が変動するおそれを低減する安定化コンデンサーとして機能する。
【0114】
また、スイッチング素子M1の端子tg1は、配線パターンp2を介して集積回路500の端子Hdrと電気的に接続され、スイッチング素子M1の端子ts1は、配線パターンp3と電気的に接続している。以上のように配線基板55に設けられたスイッチング素
子M1は、配線パターンp2を介して入力されるゲート信号Hgdに応じて、端子td1と端子ts1とが電気的に接続されるか否かが変化する。すなわち、スイッチング素子M1は、ゲート信号Hgdに応じて端子td1と端子ts1との間の導通状態を切り替えることで、配線パターンp3に電圧VHVを供給するか否かを切り替える。
【0115】
配線パターンp3には、スイッチング素子M2の端子td2が電気的に接続されている。また、スイッチング素子M2の端子tg2は、配線パターンp4を介して集積回路500の端子Ldrと電気的に接続され、スイッチング素子M2の端子ts2は、グラウンド電位が供給されているグラウンド配線パターンpgと電気的に接続している。以上のように配線基板55に設けられたスイッチング素子M2は、配線パターンp4を介して入力されるゲート信号Lgdに応じて、端子td2と端子ts2とが電気的に接続されるか否かが変化する。すなわち、スイッチング素子M2は、ゲート信号Lgdに応じて端子td2と端子ts2との間の導通状態を切り替えることで、配線パターンp3の電位をグラウンド電位とするか否かを切り替える。
【0116】
以上のように、配線パターンp3は、スイッチング素子M1の端子ts1とスイッチング素子M2の端子td2とが電気的に接続されている。これにより、配線パターンp3には、ゲート信号Hgd,Lgdに応じて、電圧VHVとグラウンド電位との間で電圧値が変化する増幅変調信号AMsが出力される。
【0117】
また、配線パターンp3には、コイルL1の一端が電気的に接続されている。コイルL1の他端は、配線パターンp5と電気的に接続している。配線パターンp5には、コンデンサーC1の一端が接続され、コンデンサーC1の他端は、グラウンド配線パターンpgと電気的に接続されている。これにより、コイルL1とコンデンサーC1とがローパスフィルターを構成する。その結果、配線パターンp5には、増幅変調信号AMsが復調された駆動信号COMAが生成される。この配線パターンp5に生成された駆動信号COMAが駆動信号出力回路51aから出力される。
【0118】
ここで、駆動回路50が有する駆動信号出力回路51bは、駆動信号出力回路51aとともに配線基板55に設けられていてもよく、また、配線基板55とは異なる基板に設けられていてもよい。
【0119】
ここで、駆動信号COMAが駆動信号の一例であり、駆動信号VOUTが駆動信号COMAの信号波形を選択又は非選択とすることで生成されている点に鑑みると、駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例である。また、基駆動信号dAを出力する制御回路100が基駆動信号出力回路の一例である。また、駆動信号出力回路51aに含まれるゲート信号Hgdが第1制御信号の一例であり、ゲート信号Lgdが第2制御信号の一例であり、スイッチング素子M1が第1スイッチング素子の一例であり、スイッチング素子M2が第2スイッチング素子の一例である。また、スイッチング素子M1に含まれるトランジスターチップTr1が第1トランジスターチップの一例であり、端子tg1が第1端子の一例であり、端子ts1が第2端子の一例であり、端子td1が第3端子の一例であり、モールド部Mo1が第1モールド部材の一例であり、モールド部Mo1に形成された基準方向マークMrkが方向指示マークの一例である。また、スイッチング素子M2に含まれるトランジスターチップTr2が第2トランジスターチップの一例であり、端子tg2が第4端子の一例であり、端子td2が第5端子の一例であり、端子ts2が第6端子の一例であり、モールド部Mo2が第2モールド部材の一例である。そして、z軸に沿った方向であって、+z側から-z側に向かう方向が法線方向の一例である。
【0120】
6.作用効果
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1では、配線基板55の法線方向に沿った方
向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M1を見た場合、端子tg1、端子td1、及び端子ts1は、モールド部Mo1と重なる位置にのみ設けられている。すなわち、大電流が流れる駆動信号出力回路51aに含まれる電圧VHVから駆動信号COMAを生成する各種の回路であって、充電部が露出しているスイッチング素子M1の端子tg1,ts1,td1は、モールド部Mo1によって遮られる。これにより、スイッチング素子M1の端子tg1,ts1,td1にインクミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAの信号精度が向上し、駆動信号出力回路51aを含むプリントヘッド20からのインクの吐出精度が向上する。
【0121】
さらに、本実施形態の液体吐出装置1では、配線基板55の法線方向に沿った方向であって、z軸に沿って+z側から-z側にスイッチング素子M2を見た場合、端子tg2、端子td2、及び端子ts2は、モールド部Mo2と重なる位置にのみ設けられている。すなわち、大電流が流れる駆動信号出力回路51aに含まれる電圧VHVから駆動信号COMAを生成する各種の回路であって、充電部が露出しているスイッチング素子M2の端子tg2,ts2,td2が、モールド部Mo2によって遮られる。これにより、スイッチング素子M2の端子tg2,ts2,td2にインクミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路51aが出力する駆動信号COMAの信号精度がさらに向上し、駆動信号出力回路51aを含むプリントヘッド20からのインクの吐出精度がさらに向上する。
【0122】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0123】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0124】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0125】
液体吐出装置の一態様は、
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を出力する基駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている。
【0126】
この液体吐出装置によれば、配線基板の法線方向に沿って、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子が、第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられていることで、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子に液体ミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が向上し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度が向上する。
【0127】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1モールド部材は、前記第1スイッチング素子の方向を示す方向指示マークを含んでもよい。
【0128】
この液体吐出装置によれば、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子が、第1モールド部材と重なる位置に設けられている場合であっても、第1スイッチング素子の実装方向を確認することができる。
【0129】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記第1モールド部材は、グリシジル基含有ポリブタジエンを含むエポキシ樹脂からなってもよい。
【0130】
この液体吐出装置によれば、有機溶剤を媒体とするソルベントインク等が用いられた場合であっても、第1スイッチング素子に異常が生じるおそれが低減する。
【0131】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動信号出力回路は、5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給してもよい。
【0132】
この液体吐出装置によれば、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子に液体ミストが付着するおそれが低減するが故に、駆動信号出力回路が5000個以上の圧電素子に駆動信号を供給するが故に、駆動信号の伝搬に伴い大電流が生じる場合であっても、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が低下するおそれが低減し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度が低下するおそれが低減する。
【0133】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記集積回路は、第2制御信号を出力し、
前記駆動信号出力回路は、
前記配線基板に設けられ、前記第2制御信号により動作する第2スイッチング素子を有し、
前記第2スイッチング素子は、
第2トランジスターチップと、
前記第2トランジスターチップと電気的に接続している第4端子、第5端子、及び第6端子と、
前記第2トランジスターチップを覆う第2モールド部材と、
を含み、
前記第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて、前記第5端子と前記第6端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第4端子、前記第5端子、及び前記第6端子は
、前記第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられていてもよい。
【0134】
この液体吐出装置によれば、配線基板の法線方向に沿って、第2スイッチング素子の第4端子、第5端子、及び第6端子が、第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられていることで、第2スイッチング素子の第4端子、第5端子、及び第6端子に液体ミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度がさらに向上し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度がさらに向上する。
【0135】
前記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動信号出力回路は、復調回路を有し、
前記集積回路は、前記基駆動信号を変調した変調信号に応じた前記第1制御信号、及び前記第2制御信号を出力し、
前記第2端子と前記第5端子とは電気的に接続し、
前記復調回路は、前記第2端子と前記第5端子とが電気的に接続する接続点の信号を復調し、前記駆動信号として出力してもよい。
【0136】
この液体吐出装置によれば、駆動信号出力回路は、第1スイッチング素子、及び第2スイッチング素子のスイッチング動作によって、基駆動信号を増幅し駆動信号を出力する。すなわち、駆動信号出力回路は、基駆動信号をD級増幅し駆動信号を出力する。これにより、駆動信号出力回路における増幅効率を高められ、大電流を伴う駆動信号を出力する場合であっても、駆動信号出力回路の消費電力が増加するおそれを低減することができる。
【0137】
プリントヘッドの一態様は、
圧電素子の駆動に応じて液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記圧電素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を備え、
前記駆動信号出力回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号が入力され、第1制御信号を出力する集積回路と、
前記第1制御信号により動作する第1スイッチング素子と、
前記集積回路、及び前記第1スイッチング素子が設けられた配線基板と、
を有し、
前記第1スイッチング素子は、
第1トランジスターチップと、
前記第1トランジスターチップと電気的に接続している第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1トランジスターチップを覆う第1モールド部材と、
を含み、
前記第1端子に入力される前記第1制御信号に応じて、前記第2端子と前記第3端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子は、前記第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられている。
【0138】
このプリントヘッドによれば、配線基板の法線方向に沿って、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子が、第1モールド部材と重なる位置にのみ設けられていることで、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子に液体ミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が向上し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度が向上する。
【0139】
前記プリントヘッドの一態様において、
前記第1モールド部材は、前記第1スイッチング素子の方向を示す方向指示マークを含
んでもよい。
【0140】
このプリントヘッドによれば、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子が、第1モールド部材と重なる位置に設けられている場合であっても、第1スイッチング素子の実装方向を確認することができる。
【0141】
前記プリントヘッドの一態様において、
前記第1モールド部材は、グリシジル基含有ポリブタジエンを含むエポキシ樹脂からなってもよい。
【0142】
このプリントヘッドによれば、有機溶剤を媒体とするソルベントインク等が用いられた場合であっても、第1スイッチング素子に異常が生じるおそれが低減する。
【0143】
前記プリントヘッドの一態様において、
前記駆動信号出力回路は、5000個以上の前記圧電素子に前記駆動信号を供給してもよい。
【0144】
このプリントヘッドによれば、第1スイッチング素子の第1端子、第2端子、及び第3端子に液体ミストが付着するおそれが低減するが故に、駆動信号出力回路が5000個以上の圧電素子に駆動信号を供給するが故に、駆動信号の伝搬に伴い大電流が生じる場合であっても、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度が低下するおそれが低減し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度が低下するおそれが低減する。
【0145】
前記プリントヘッドの一態様において、
前記集積回路は、第2制御信号を出力し、
前記駆動信号出力回路は、
前記配線基板に設けられ、前記第2制御信号により動作する第2スイッチング素子を有し、
前記第2スイッチング素子は、
第2トランジスターチップと、
前記第2トランジスターチップと電気的に接続している第4端子、第5端子、及び第6端子と、
前記第2トランジスターチップを覆う第2モールド部材と、
を含み、
前記第4端子に入力される前記第2制御信号に応じて、前記第5端子と前記第6端子との導通状態が制御され、
前記配線基板の法線方向に沿って、前記第4端子、前記第5端子、及び前記第6端子は、前記第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられていてもよい。
【0146】
このプリントヘッドによれば、配線基板の法線方向に沿って、第2スイッチング素子の第4端子、第5端子、及び第6端子が、第2モールド部材と重なる位置にのみ設けられていることで、第2スイッチング素子の第4端子、第5端子、及び第6端子に液体ミストが付着するおそれが低減する。その結果、駆動信号出力回路が出力する駆動信号の波形精度がさらに向上し、吐出ヘッドからのインクの吐出精度がさらに向上する。
【0147】
前記プリントヘッドの一態様において、
前記駆動信号出力回路は、復調回路を有し、
前記集積回路は、前記基駆動信号を変調した変調信号に応じた前記第1制御信号、及び前記第2制御信号を出力し、
前記第2端子と前記第5端子とは電気的に接続し、
前記復調回路は、前記第2端子と前記第5端子とが電気的に接続する接続点の信号を復調し、前記駆動信号として出力してもよい。
【0148】
このプリントヘッドによれば、駆動信号出力回路は、第1スイッチング素子、及び第2スイッチング素子のスイッチング動作によって、基駆動信号を増幅し駆動信号を出力する。すなわち、駆動信号出力回路は、基駆動信号をD級増幅し駆動信号を出力する。これにより、駆動信号出力回路における増幅効率を高められ、大電流を伴う駆動信号を出力する場合であっても、駆動信号出力回路の消費電力が増加するおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0149】
1…液体吐出装置、5…液体容器、10…制御ユニット、20…プリントヘッド、40…搬送ユニット、41…搬送モーター、50…駆動回路、51a,51b…駆動信号出力回路、52…基準電圧出力回路、55…配線基板、60…圧電素子、80…インク容器、100…制御回路、110…電圧出力回路、200…吐出ヘッド、210…選択制御回路、230…選択回路、500…集積回路、510…変調回路、512,513…加算器、514…コンパレーター、515…インバーター、516…積分減衰器、517…減衰器、520…ゲートドライブ回路、521,522…ゲートドライバー、550…増幅回路、560…復調回路、570,572…帰還回路、580…電源回路、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、AMs…増幅変調信号、C1~C5,Cd…コンデンサー、D1…ダイオード、L1…コイル、M,M1,M2…スイッチング素子、Mo,Mo1,Mo2…モールド部、Mrk…基準方向マーク、P…媒体、R1~R6…抵抗、Sb,Sb1,Sb2,Sd,Sd1,Sd2,Sf,Sf1,Sf2,Sl,Sr,Su,Su1,Su2…面、Tr,Tr1,Tr2…トランジスターチップ、p1~p5…配線パターン、pg…グラウンド配線パターン、td,td1,td2…端子、tdm,tds…電極、tg,tg1,tg2…端子、ts,ts1,ts2…端子、tsm,tss…電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9