(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145781
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】モータドライバ
(51)【国際特許分類】
H02P 8/24 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02P8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058276
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 政雄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆太
【テーマコード(参考)】
5H580
【Fターム(参考)】
5H580AA10
5H580CA01
5H580CA02
5H580CA03
5H580FD01
5H580FD02
5H580GG04
5H580HH21
(57)【要約】
【課題】上位コントローラに拠らずに停止が行えるモータドライバを提供する。
【解決手段】パルス信号に基づいてステッピングモータに励磁電流を出力する、モータドライバ1であって、上位コントローラ2が出力する駆動パルス信号に基づいてモータ101を駆動する励磁電流を出力する駆動モードと、停止信号が入力された際に駆動パルス信号に拠らずにモータ101を停止させる停止モードで動作するモータドライバ1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号に基づいてステッピングモータに励磁電流を出力する、モータドライバであって、
上位コントローラが出力する駆動パルス信号に基づいてモータを駆動する励磁電流を出力する駆動モードと、停止信号が入力された際に前記駆動パルス信号に拠らずに前記モータを停止させる停止モードで動作するモータドライバ。
【請求項2】
前記停止モードにおいて、前記停止信号を受信したときの前記駆動パルス信号の周波数に基づいて、停止モードパルス信号を生成する、請求項1に記載のモータドライバ。
【請求項3】
前記停止モードにおいて、前記停止信号を受信したときの前記駆動パルス信号の周波数に基づいて前記停止モードパルス信号の初動周波数を決定し、前記初動周波数を所定の割合で減衰させるように前記停止モードパルス信号を生成する、請求項2に記載のモータドライバ。
【請求項4】
前記停止モードにおいて、記録部に記録された停止モードパルス信号を出力する、請求項1に記載のモータドライバ。
【請求項5】
モータと、モータ指令値を出力するコントローラと、前記モータ指令値に基づき出力電流を制御する請求項1に記載のモータドライバと、を有するモータ装置。
【請求項6】
パルス信号に基づいてステッピングモータに励磁電流を出力する、モータドライバであって、
前記モータドライバは、
上位コントローラから出力される駆動パルス信号を受信する駆動パルス受信部と、
停止時に停止モードパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
駆動パルスまたは停止モードパルスのいずれかに基づいて前記ステッピングモータに出力する励磁電流を決定するモータ励磁相決定カウンタと、
非常停止時に前記モータ励磁相決定カウンタへのパルス入力源を前記駆動パルス受信部から前記パルス信号生成部へ切り替える切替部と、
を有するモータドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステップモータの最速の早送り動作を実現し、且つ、低電力駆動を可能とする装置、ステップモータの駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上位コントローラに拠らずに停止が行えるモータドライバを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係るモータドライバは、
パルス信号に基づいてステッピングモータに励磁電流を出力する、モータドライバであって、
上位コントローラが出力する駆動パルス信号に基づいてモータを駆動する励磁電流を出力する駆動モードと、
停止信号が入力された際に前記駆動パルス信号に拠らずに前記モータを停止させる停止モードで動作する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上位コントローラに拠らずに停止が行えるモータドライバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示に係るモータドライバを搭載した装置の一例である。
【
図2】本開示の実施形態に係るモータドライバのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0009】
本開示に係るモータドライバ1を搭載した装置Mの一例を
図1に示す。
本実施形態において装置Mは、物品Gを第一位置Aから第二位置Bへ搬送する搬送装置である。装置Mは、モータ101と、モータ101によって駆動される無端ベルト102と、無端ベルト102が掛け渡される駆動プーリ103および従動プーリ104と、モータ101を制御する制御部100と、停止センサ105を備えている。本実施形態においてモータ101はVR型、PM型、HB型等のステッピングモータである。制御部100は、モータドライバ1と、上位コントローラ2を備えている。
【0010】
制御部100は、例えば、汎用メモリと汎用マイクロプロセッサを備える。汎用マイクロプロセッサは、汎用メモリと協働して動作する。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、各部の動作を制御するための処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して処理を実行する。
【0011】
上位コントローラ2は、モータ101の回転させたい方向やモータ101の目標回転角度に基づき、所定のパルス数の駆動パルス信号を生成する。これにより、モータ101は、所望の回転角度だけ回転する。モータ101の回転により駆動プーリ103が所定の回転角度だけ回転し、無端ベルト102を介して物品Gが所望の位置まで搬送される。本開示では、上位コントローラ2は、物品Gを第一位置Aから第二位置Bまで搬送するように、モータ101を制御する。
【0012】
停止センサ105は、第二位置Bよりも遠方の(第一位置Aから遠い位置)第三位置Cに設けられている。万が一、物品が第二位置Bで停止できず、第三位置Cまで到達してしまった場合に、物品Gを検出するセンサである。停止センサ105は、物品Gを検出すると、停止信号を出力する。
モータドライバ1は、上位コントローラ2から出力される駆動パルス信号に応じて励磁電流を生成し、励磁電流をモータ101に供給する。
【0013】
図2は、本開示の実施形態に係る装置Mのブロック図である。
図2に示すように、モータドライバ1は、上位コントローラ2、電源3、モータ101、停止センサ105に接続されている。上位コントローラ2は、モータドライバ1に駆動パルス信号を送信する。電源3はモータドライバ1に電力を供給する。
【0014】
本開示のモータドライバ1は、上位コントローラ2から駆動パルス信号を受信し、駆動パルス信号に対応する励磁電流をモータ101に供給する。
本開示に係るモータドライバ1はモータ101を駆動させる駆動モードと、モータ101を停止させる停止モードを少なくとも有する。以下、それぞれのモードについて詳述する。
【0015】
(駆動モード)
モータ101を駆動させる駆動モードについて説明する。
図2に示すようにモータドライバ1は、外部駆動パルス受信部10と、モータ励磁相決定カウンタ11と、相電流出力回路12と、切替部50と、を有する。モータ101を駆動させる際には、上位コントローラ2からモータドライバ1に駆動パルス信号が送信される。外部駆動パルス受信部10は駆動パルス信号を受信し、切替部50および周波数検出器21に伝達する。周波数検出器21は、駆動パルス信号の周波数を検出する。駆動パルス信号の周波数は、本駆動モードでは活用せず、停止モードで活用するものであるが、駆動モードにおいても常時、周波数検出器21は周波数を検出し続けている。
【0016】
駆動パルス信号は、切替部50を通じてモータ励磁相決定カウンタ11に伝達される。切替部50は、外部駆動パルス受信部10から信号を受け取るモードと、後述する内部パルス生成部22から信号を受け取るモードとを切り替え可能である。駆動モードにおいては、切替部50は外部駆動パルス受信部10から信号を受け取るモードに設定されており、上位コントローラ2のパルス信号をモータ励磁相決定カウンタ11に伝達する。
【0017】
モータ励磁相決定カウンタ11は、駆動パルス信号に基づいて電流指令を算出し、相電流出力回路12に出力する。
【0018】
相電流出力回路12は、ステッピングモータの相数と同じ数だけ設けられている。例えば、5相のステッピングモータを駆動するモータドライバ1は、5つの相電流出力回路12を有している。モータ励磁相決定カウンタ11は、パルス信号に基づき、各々の相電流出力回路12に対応する電流指令を出力する。例えば、モータ励磁相決定カウンタ11は、基準相(例えばA相)の位相を確定し、A相に出力する相電流出力回路12に電流指令を出力する。モータ励磁相決定カウンタ11は、B相に出力する相電流出力回路12には、基準相から所定の位相差(電気角で72度または144度)の電流指令を出力する。
【0019】
(停止モード)
次にモータドライバ1の停止モードを説明する。
図2に示すようにモータドライバ1はさらに、停止信号受信部20と、周波数検出器21と、内部パルス生成部22と、異常検知部23と、を有する。停止信号受信部20は、モータドライバ1の外部または内部から送信される停止信号を受信する。異常検知部23は、モータドライバ1の内部における異常(オーバーヒートなど)を検知し、停止信号を停止信号受信部20に送信する。
【0020】
上述したように、周波数検出器21は常時、駆動パルス信号の周波数を検出する。周波数検出器21は検出した周波数を内部パルス生成部22へ送信する。内部パルス生成部22は受信した周波数を基にモータ101を停止させる際に用いる停止モードパルス信号を生成する。
【0021】
停止信号受信部20は、停止センサ105や異常検知部23から送信された停止信号を受信する。停止信号受信部20は、停止信号を受信すると、切替部50に切替信号を出力する。切替部50は切替信号を受信すると、外部駆動パルスをモータ励磁相決定カウンタ11に伝達するモードを停止し、内部パルス生成部22から出力される内部駆動パルスをモータ励磁相決定カウンタ11に伝達するモードに遷移する。
内部パルス生成部22は、周波数検出器21で検出された、切替部50の切替直前の外部駆動パルスの周波数に基づき、内部駆動パルスを生成する。
【0022】
内部パルス生成部22は、モータ101を停止させる電流指令が相電流出力回路12に出力されるような停止モードパルス信号を生成する。この際に内部パルス生成部22は、周波数検出器21から受信した周波数データを基に、停止モードパルス信号の周波数を決定する。このため、モータドライバ1が駆動モードから停止モードに移行した際に、例えば急停止やガクガクとした動きなど、モータ101の挙動を急激に変化させないようにすることができる。
【0023】
なお、内部パルス生成部22は、停止モード時のみ動作させるのではなく、駆動モード時にも停止モードパルス信号を生成するように構成してもよい。この場合、切替部50が停止モードパルス信号をモータ励磁相決定カウンタ11に伝達しない。
【0024】
また、停止モードパルス信号は徐々に周波数を減衰させるように生成してもよい。この場合、停止モードパルス信号を受信したモータ励磁相決定カウンタ11は、モータ101を徐々に停止させる励磁電流を出力することができる。
【0025】
従来、ステッピングモータの停止を含むステッピングモータの挙動の制御は上位コントローラによってなされていた。
しかし、上記構成においては、異なるモータを搭載した装置を設計するたびに、搭載するモータに適した停止プログラムを上位コントローラに実装し直さなければならない。
【0026】
そこで本開示に係るモータドライバ1は、駆動モードと停止モードを有し、停止モード時にモータドライバ1の内部においてモータ101を停止させる停止モードパルス信号を生成する、内部パルス生成部22を有する。これにより、停止時に上位コントローラ2に拠らずに停止が行えるモータドライバ1を提供することができる。
【0027】
また、上位コントローラはプログラム次第で、滑らかに停止したいなど停止の挙動を様々に決定することができる。しかし、停止センサや異常検知部が作動する場合など、緊急的にモータを停止させたい場面においては、即座に停止することが求められている。このように緊急的にモータを停止させたい場面では、即座に停止するという機能が実現できればよいところ、従来では、異なるモータを搭載した装置を設計するたびに、緊急停止の場面に用いる停止プログラムを上位コントローラに組み込んでいた。
【0028】
しかし、本開示に係るモータドライバ1は、緊急時にモータドライバ1自身が緊急停止する励磁電流をモータ101に供給することができるため、上位コントローラ2に緊急停止プログラムを搭載する必要がない。
【0029】
また、本開示に係るモータドライバ1においては、停止モードにおいて、停止信号を受信したときの駆動パルス信号の周波数に基づいて、停止モードパルス信号を生成する。これにより、駆動パルス信号と停止モードパルス信号の初動周波数を合わせることができるので、モータドライバ1が駆動モードから停止モードへ移行する際の急な挙動の変化を抑制できる。
【0030】
また、本開示に係るモータドライバ1においては、停止モードにおいて、停止信号を受信したときの駆動パルス信号の周波数に基づいて停止モードパルス信号の初動周波数を決定し、初動周波数を所定の割合で減衰させるように停止モードパルス信号を生成する。これにより、モータドライバ1が駆動モードから停止モードへ移行した場合においても、急減速、急停止を防止することができる。
【0031】
ここまで、モータドライバ1について詳述したが、本開示に係るモータドライバ1は上記形態に限られない。例えば、モータドライバ1は記憶部(図示せず)を有し、記憶部に停止モードパルス信号が記憶されていてもよい。上記形態においてモータドライバ1が駆動モードから停止モードに移行した際、切替部50はパルス信号の受信元を記憶部に切り替える。これにより簡素な構成によって上位コントローラ2に拠らずに停止が行えるモータドライバ1を提供することができる。
【0032】
上述した駆動モードや停止モードとは、モータドライバ1に明示的に設定されるモードをいうものではない。単に、モータドライバ1が互いに異なる挙動を示す2種類の状態を持つことを表現するために、モードという用語を用いているに過ぎない。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 モータドライバ
2 上位コントローラ
3 電源
10 外部駆動パルス受信部
11 モータ励磁相決定カウンタ
12 相電流出力回路
20 停止信号受信部
21 周波数検出器
22 内部パルス生成部
23 異常検知部
50 切替部
100 制御部
101 モータ
102 無端ベルト
103 駆動プーリ
104 従動プーリ
105 停止センサ