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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145782
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241004BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241004BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241004BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241004BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20241004BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 618B
H01L29/78 616K
H01L21/306 F
H01L21/28 E
H01L21/28 301B
H10K59/12
G09F9/30 338
H10K71/00
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058279
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
【テーマコード(参考)】
2H192
3K107
4M104
5C094
5F043
5F110
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BC31
2H192CB05
2H192CB37
2H192CB42
2H192CB44
2H192DA12
2H192FA73
2H192FB42
2H192FB46
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3K107BB01
3K107CC33
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3K107FF15
3K107GG12
3K107GG28
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4M104DD65
4M104FF17
4M104GG08
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5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HK21
5F110HK33
(57)【要約】
【課題】ばらつきが少なく、電気特性が安定した半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、ゲート電極と、ゲート電極の上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、5nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極を覆い、前記酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、
前記酸化物半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、前記層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、
前記第1領域の膜厚と前記第2領域の膜厚との差は、5nm以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記ソース電極及びドレイン電極の形成に用いられるエッチング液に対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.1nm/sec以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記エッチング液は、リン酸、酢酸、硝酸、フッ酸、塩酸、硫酸、及びシュウ酸からなる群から選ばれる少なくとも2つを含む溶液である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ソース電極及びドレイン電極の形成に用いられるエッチングガスに対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.5nm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エッチングガスは、フッ素を含むガスであり、
前記エッチングレートは、0.1nm/sec以下である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1領域の前記膜厚は、10nm以上30nm以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記酸化物半導体層は、インジウム元素及び少なくとも1つ以上の金属元素を含み、
前記インジウム元素及び前記少なくとも1つ以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極の上に、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層の上に、多結晶構造を有する酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層の上に、導電膜を成膜し、
エッチングにより前記導電膜をパターニングして、ソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記ソース電極及びドレイン電極を覆い、前記酸化物半導体層と接する層間絶縁層を形成する、ことを含み、
前記酸化物半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、前記層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、
前記第1領域の膜厚と前記第2領域の膜厚との差は、5nm以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記エッチングにおいては、エッチング液が用いられ、
前記エッチング液に対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.1nm/sec以下である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記エッチング液は、リン酸、酢酸、硝酸、フッ酸、塩酸、硫酸、及びシュウ酸からなる群から選ばれる少なくとも2つを含む溶液である、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記エッチングにおいては、エッチングガスが用いられ、
前記エッチングガスに対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.5nm/sec以下である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記エッチングガスは、フッ素を含むガスであり、
前記エッチングレートは、0.1nm/sec以下である、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1領域の前記膜厚は、10nm以上30nm以下である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記酸化物半導体層は、インジウム元素及び少なくとも1つ以上の金属元素を含み、
前記インジウム元素及び前記少なくとも1つ以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記酸化物半導体層は、アモルファス構造を有する酸化物半導体膜が熱処理されることによって形成される、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、半導体装置に関する。特に、本発明の一実施形態は、チャネルとして酸化物半導体が用いられた半導体装置に関する。また、本発明の一実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び単結晶シリコンなどを用いたシリコン半導体膜に替わり、酸化物半導体膜をチャネルとして用いた半導体装置の開発が進められている(例えば、特許文献1~6参照)。このような酸化物半導体膜を含む半導体装置は、アモルファスシリコン膜を含む半導体装置と同様に、単純な構造かつ低温プロセスで形成することができる。酸化物半導体膜を含む半導体装置は、アモルファスシリコン膜を含む半導体装置よりも高い電界効果移動度を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141338号公報
【特許文献2】特開2014-099601号公報
【特許文献3】特開2021-153196号公報
【特許文献4】特開2018-006730号公報
【特許文献5】特開2016-184771号公報
【特許文献6】特開2021-108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酸化物半導体膜を含む半導体装置では、酸化物半導体膜のエッチング耐性が小さく、酸化物半導体膜の形状の制御が困難であった。特に、大面積基板を用いて製造される半導体装置では、酸化物半導体膜の形状のばらつきが、半導体装置の電気特性のばらつきを引き起こし、歩留まりが低下する要因となっていた。
【0005】
本発明の一実施形態は、ばらつきが少なく、電気特性が安定した半導体装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、製造ばらつきが低減され、歩留まりが向上した半導体装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、ゲート電極の上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、5nm以下である。
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極を形成し、ゲート電極の上に、ゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層の上に、多結晶構造を有する酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層の上に、導電膜を成膜し、エッチングにより導電膜をパターニングして、ソース電極及びドレイン電極を形成し、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層を形成する、ことを含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、5nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す模式的な平面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図14】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図15】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図17】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な断面図である。
図18】実施例2におけるサンプルA~サンプルCの電気特性(Id-Vg特性)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、膜厚、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
「半導体装置」とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一形態に含まれる。以下に示す実施形態の半導体装置は、例えば、表示装置、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)などの集積回路(Integrated Circuit:IC)、又はメモリ回路に用いられるトランジスタであってもよい。
【0011】
「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する構造体を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルを指す場合もあり、又は表示セルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)を装着した構造体を指す場合もある。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。したがって、実施形態において、表示装置として、液晶層を含む液晶表示装置、及び有機EL層を含む有機EL表示装置を例示して説明する。但し、実施形態で説明される構造体は、上述した他の電気光学層を含む表示装置へ適用することができる。
【0012】
本明細書等において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を「上」又は「上方」という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を「下」又は「下方」という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、「基板上の酸化物半導体層」という表現は、基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、半導体装置の上方の画素電極と表現する場合、平面視において、半導体装置と画素電極とが重畳しない位置関係であってもよい。一方、半導体装置の鉛直上方の画素電極と表現する場合は、平面視において、半導体装置と画素電極とが重畳する位置関係を意味する。なお、平面視とは、基板の表面に対して、垂直な方向から見ることをいう。
【0013】
本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合により、互いに入れ替えることができる。
【0014】
本明細書等において「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、又は「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」という表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0015】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0016】
<第1実施形態>
図1図11を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10について説明する。
【0017】
[半導体装置10の構成]
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の模式的な構成を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成を示す模式的な平面図である。図1に示す断面図は、図2に示すA1-A2線で切断したときの断面に対応する。
【0018】
図1に示すように、半導体装置10は基板11の上に設けられている。半導体装置10は、ゲート電極12GE、ゲート絶縁層14、16、酸化物半導体層26、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び層間絶縁層34、38を含む。ソース電極32S及びドレイン電極32Dを特に区別しない場合、これらを併せてソース電極及びドレイン電極32という場合がある。また、ゲート電極12GE、ゲート絶縁層14、16、及び酸化物半導体層26を指して、トランジスタと呼ぶ場合がある。半導体装置10は、酸化物半導体層26の下方にゲート電極12GEが設けられる、いわゆるボトムゲート型トランジスタである。
【0019】
本実施形態では、半導体装置10としてボトムゲート型トランジスタを例示するが、半導体装置10はボトムゲート型トランジスタに限定されない。例えば、半導体装置10は、ゲート電極が酸化物半導体層26の上方及び下方に設けられたデュアルゲート型トランジスタであってもよい。
【0020】
ゲート電極12GEは基板11の上に設けられている。ゲート絶縁層14、16は基板11及びゲート電極12GEの上に設けられている。ゲート絶縁層14、16は積層構造を有し、ゲート絶縁層16がゲート絶縁層14の上に設けられている。酸化物半導体層26はゲート絶縁層14、16の上に設けられている。酸化物半導体層26の上に、ソース電極32S及びドレイン電極32Dが設けられている。層間絶縁層34、38は、酸化物半導体層26並びにソース電極32S及びドレイン電極32Dの上に設けられている。層間絶縁層34、38は積層構造を有し、層間絶縁層38が層間絶縁層34の上に設けられている。すなわち、層間絶縁層34、38は、ソース電極32S及びドレイン電極32Dを覆い、層間絶縁層34が酸化物半導体層26と接している。
【0021】
図2に示すように、平面視において、酸化物半導体層26は、ゲート電極12GEと重畳している。D1方向は、ソース電極32Sとドレイン電極32Dとを結ぶ方向であり、D2方向は、D1方向と直交する方向である。半導体装置10において、チャネル長Lは、D1方向におけるソース電極32Sとドレイン電極32Dとの間の酸化物半導体層26の領域(チャネル領域)の長さに対応し、チャネル幅Wは、D2方向におけるチャネル領域の幅に対応する。平面視において、ソース電極32Sと重畳する酸化物半導体層26の領域はソース領域であり、ドレイン電極32Dと重畳する酸化物半導体層26の領域はドレイン領域である。すなわち、チャネル領域は、ソース領域とドレイン領域との間に位置する。
【0022】
配線12W及び配線32Wは、ゲート配線として機能する。配線32Wはコンタクトホール15を介して、配線12Wと電気的に接続されている。詳細は後述するが、配線12Wは、ゲート電極12GEと同一の層として形成される。また、配線32Wは、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと同一の層として形成される。なお、配線32Wは、配線12Wの上に設けられない場合がある。
【0023】
酸化物半導体層26は、透光性を有し、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層26を形成することができる。そのため、以下では、酸化物半導体層26に含まれる酸化物半導体をPoly-OSとして説明する場合がある。
【0024】
Poly-OSは、インジウム元素を含む2以上の金属元素を含み、2以上の金属元素に対するインジウム元素の比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、又はランタノイド系元素が用いられる。酸化物半導体層26として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0025】
Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、酸化物半導体層26のSEM観察、TEM観察、又は電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0026】
上述したように、Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は0.1μm以上であるため、10nm以上30nm以下の膜厚を有する酸化物半導体層26では、膜厚方向に沿って1つの結晶粒のみが含まれる領域が存在する。
【0027】
Poly-OSは、エッチング耐性に優れる。詳細は後述するが、Poly-OSは、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液又はエッチングガスに対して優れたエッチング耐性を有する。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、酸化物半導体層26はほとんどエッチングされない。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの1つと重畳する酸化物半導体層26の第1領域(すなわち、ソース領域又はドレイン領域)の膜厚と、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと重畳しない酸化物半導体層26の第2領域(すなわち、チャネル領域)の膜厚とは、実質的に同一である。換言すると、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、5nm以下、好ましくは3nm以下、より好ましくは1nm以下である。
【0028】
チャネル領域の膜厚は、半導体装置の電気特性に影響を及ぼす。チャネル領域の膜厚のばらつきが大きいと、安定した電気特性を有する半導体装置を提供することができない。すなわち、半導体装置の歩留まりが低下してしまう。一方、半導体装置10では、酸化物半導体層26のチャネル領域の膜厚を制御することができるため、半導体装置10は、安定した電気特性を有する。例えば、半導体装置10では、ゲート絶縁層14、16が300nm以上の大きい膜厚を有する場合であっても、チャネル領域のチャネル長Lが2μm以上10μm以下、かつ、チャネル領域のチャネル幅が2μm以上25μm以下の範囲において、15cm/Vs以上、さらには20cm/Vs以上の電界効果移動度(線形領域における電界効果移動度)を得ることができる。したがって、半導体装置10は、耐圧性が向上し、高電圧下においても安定した電気特性を有する。
【0029】
[半導体装置10の製造方法]
図3図11を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明するフローチャートである。図4図11は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を示す模式的な断面図である。以下では、図3に示すフローチャートの各ステップを順に説明する。
【0030】
図3のステップS1001(「GE形成」)では、基板11の上にゲート電極12GEが形成される(図4参照)。
【0031】
基板11として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板11が可撓性を備える必要がある場合、基板11として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、又は樹脂を含む基板が用いられる。基板11として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板11の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物元素が導入されてもよい。また、集積回路に半導体装置10が用いられる場合は、基板11としてシリコン基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板、又はステンレス基板などの導電性基板など、透光性を有しない基板が用いられてもよい。
【0032】
ゲート電極12GEは、スパッタリング法によって成膜された導電膜を加工して形成される。ゲート電極12GEとして金属材料が用いられる。例えば、ゲート電極12GEの金属材料として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又はこれらの化合物が用いられる。ゲート電極12GEとして、上記の金属材料が単層で用いられてもよく積層で用いられてもよい。
【0033】
図3のステップS1002(「GI形成」)では、ゲート電極12GEの上にゲート絶縁層14、16が形成される(図4参照)。ゲート絶縁層14、16はCVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はスパッタリング法によって成膜される。ゲート絶縁層14、16として、絶縁性材料が用いられる。例えば、ゲート絶縁層14、16の絶縁性材料として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)などの無機絶縁材料が用いられる。上記のSiOは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物である。SiNは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物である。
【0034】
基板11の上には、窒素を含む絶縁材料が用いられたゲート絶縁層14、酸素を含む絶縁材料が用いられたゲート絶縁層16が順に形成されることが好ましい。ゲート絶縁層14として、窒素を含む絶縁材料を用いることにより、基板11から酸化物半導体層26に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。また、ゲート絶縁層16として、酸素を含む絶縁材料を用いることにより、加熱処理によって酸素を放出させることができる。酸素を含む絶縁材料が酸素を放出する加熱処理の温度は、例えば、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。なお、酸素を含む絶縁材料は、半導体装置10の製造工程のいずれかのステップにおいて加熱されるときに、酸素を放出してもよい。
【0035】
ゲート絶縁層14の膜厚は、ゲート絶縁層16の膜厚よりも大きいことが好ましい。本実施形態では、ゲート絶縁層14として、例えば、300nmの窒化シリコンが形成される。ゲート絶縁層16として、例えば、100nmの酸化シリコンが形成される。
【0036】
図3のステップS1004(「OS成膜」)では、ゲート絶縁層14、16の上に酸化物半導体膜22を成膜する(図5参照)。酸化物半導体膜22は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。酸化物半導体膜22の膜厚は、10nm以上50nm以下であり、好ましくは10nm以上40nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。
【0037】
酸化物半導体膜22として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。例えば、酸化物半導体膜22として、インジウム(In)元素を含む2以上の金属元素を含む酸化物半導体が用いられる。また、2以上の金属元素に対するインジウム元素の比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、又はランタノイド系元素が用いられる。酸化物半導体膜22として、13族元素を含むことが好ましい。なお、酸化物半導体膜22として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0038】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体膜22を結晶化させる場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体膜22はアモルファス構造(例えば、XRD法においてアモルファスと判定されるような酸化物半導体の結晶成分が少ない構造)を有することが好ましい。つまり、酸化物半導体膜22の成膜は、成膜直後の酸化物半導体膜22ができるだけ結晶化しない条件の下で行われることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体膜22が成膜される場合、被成膜対象物(基板11及びその上に形成された構造物)の温度を制御しながら酸化物半導体膜22が成膜される。
【0039】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体膜22に微結晶が含まれる。酸化物半導体膜22に微結晶が含まれると、その後のOSアニールによって結晶粒径を大きくすることができない。被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。特に、酸化物半導体膜22の成膜温度は、50℃以下であることが好ましい。基板11を冷却しながら酸化物半導体膜22の形成を行うことで、成膜直後において結晶成分が少ない酸化物半導体膜22を得ることができる。
【0040】
スパッタリングプロセスでは、酸素分圧10%以下の条件下でアモルファス構造を有する酸化物半導体膜22が成膜される。酸素分圧が高いと、酸化物半導体膜22に含まれる過剰な酸素によって成膜直後の酸化物半導体膜22に微結晶が含まれてしまう。そのため、酸素分圧が低い条件の下で酸化物半導体膜22の成膜が行われることが好ましい。酸素分圧は、例えば、1%以上5%以下であり、好ましくは2%以上4%以下である。酸素分圧が1%未満の条件では、成膜装置内の酸素の分布が不均一となりやすい。その結果、酸化物半導体膜中の酸素の組成も不均一となり、微結晶が多く含まれる酸化物半導体膜が成膜されるか、又は後にOSアニール処理を行っても結晶化しない酸化物半導体膜が成膜される。
【0041】
図3のステップS1005(「OSパターン形成」)では、酸化物半導体層24のパターンを形成する(図6参照)。酸化物半導体層24のパターンの形成は、フォトリソグラフィを用いて行われる。例えば、酸化物半導体膜22の上にレジストマスク(図示しない)を形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体膜22をエッチングする。酸化物半導体膜22のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングとして、酸性のエッチング液を用いてエッチングを行うことができる。エッチング液として、例えば、シュウ酸、PAN、硫酸、過酸化水素水、又はフッ酸を用いることができる。これにより、所定のパターンを有する酸化物半導体層24を形成することができる。その後、レジストマスクを除去する。
【0042】
所定のパターンを有する酸化物半導体層24の形成(すなわち、酸化物半導体膜22のパターニング加工)は、OSアニール前に行われることが好ましい。OSアニール後のPoly-OSは、エッチング耐性が高く、エッチングによるパターニング加工が困難となる。また、酸化物半導体層24の形成後にOSアニールを行うことによって、酸化物半導体層24の形成において生じたダメージ(例えば、酸化物半導体層24中の酸素欠陥等)を、OSアニールによって修復することができる。
【0043】
図3のステップS1006(「OSアニール」)では、酸化物半導体層24の形成後に、酸化物半導体層24に対して加熱処理(OSアニール)を行うことにより、酸化物半導体層26を形成する(図7参照)。OSアニールでは、酸化物半導体層24が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下であり、好ましくは350℃以上450℃以下である。また、到達温度での保持時間は、15分以上120分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、アモルファス構造を有する酸化物半導体層24が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層26が形成される。すなわち、OSアニールにより、Poly-OSを含む酸化物半導体層26が形成される。
【0044】
図3のステップS1008(「コンタクトホール形成」)では、ゲート絶縁層14、16にコンタクトホールを形成する(図8参照)。これにより、配線12Wの上面を露出させる。なお、配線32Wと配線12Wとを接続する必要がない場合には、ステップS1008の工程が行われなくてもよい。
【0045】
図3のステップS1009(「SD形成」)では、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wを形成する(図9参照)。ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wは、スパッタリング法によって成膜された導電膜をエッチングによりパターニングされて形成される。ソース電極32S及びドレイン電極32Dとして、ゲート電極12GEと同様の導電材料が用いられる。ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wとして、導電材料が単層で用いられてもよく積層で用いられてもよい。本実施形態では、MoW合金、Al、及びMoW合金の積層構造(MoW/Al/MoW構造)、MoW合金の単層構造(MoW構造)、Tiの単層構造(Ti構造)、並びにTi、Al、及びTiの積層構造(Ti/Al/Ti構造)を例示する。
【0046】
ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wを形成するには、ウェットエッチング又はドライエッチングを用いたパターニングを行う。ウェットエッチングでは、エッチング液を用いる。例えば、エッチング液として、リン酸、酢酸、硝酸、フッ酸、塩酸、硫酸、及びシュウ酸からなる群から選ばれる少なくとも2つを含む溶液を用いることができる。具体的には、エッチング液として、リン酸、酢酸、及び硝酸を主成分とする混酸エッチング溶液を用いることができる。また、エッチング液として、過酸化水素水及びアンモニア水の混合溶液(以下、「H/NH溶液」という。)を用いることもできる。ドライエッチングでは、エッチングガスを用いる。例えば、エッチングガスとして、六フッ化硫黄ガス(SF)などのフッ素を含むガス(以下、「フッ素系ガス」という。)、又は塩素ガス(Cl)などの塩素を含むガス(以下、「塩素系ガス」という。)が用いられる。
【0047】
Poly-OSは、エッチング耐性に優れる。具体的には、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液又はエッチングガスに対するエッチングレートが非常に小さい。これは、Poly-OSが、当該エッチング液又はエッチングガスによってほとんどエッチングされないことを意味する。したがって、半導体装置10では、酸化物半導体層26上に直接導電膜を成膜し、導電膜をパターニングしてソース電極32S及びドレイン電極32Dを形成しても、酸化物半導体層26のチャネル領域はほとんどエッチングされない。
【0048】
例えば、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液に対する酸化物半導体層26のエッチングレートは、0.1nm/sec以下であり、又は0.01nm/sec以下である。また、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチングガスに対する酸化物半導体層26のエッチングレートは、0.5nm/sec以下であり、又は0.1nm/sec以下である。例えば、塩素系ガスに対する酸化物半導体層26のエッチングレートは、0.1nm/sec以下である。
【0049】
酸化物半導体層として、IGZOのように多結晶構造を有しない酸化物半導体を用いた半導体装置では、酸化物半導体の上にソース電極及びドレイン電極を形成する場合、ソース電極及びドレイン電極のエッチングによって酸化物半導体層もエッチングされる。具体的には、塩素を含むガスに対するIGZOのエッチングレートは、1.0nm/secであり、チャネル領域がこのエッチングレートでエッチングされることを考慮し、予め酸化物半導体膜を厚く成膜しておく必要がある。例えば、酸化物半導体層のチャネル領域の膜厚が40nm以下である半導体装置を製造する場合、65nm程度の膜厚を有する酸化物半導体膜を成膜しておき、ソース電極及びドレイン電極の形成において、チャネル領域の膜厚が40nm以下となるようにエッチング時間を調整する必要がある。しかしながら、エッチングレートが大きい場合には、エッチング時間によるチャネル領域の膜厚の精密な制御は困難である。この場合、チャネル領域の膜厚のばらつきが大きくなる。
【0050】
また、チャネル領域の膜厚を大きく減少させると、酸化物半導体層の上面に凹部が形成される。酸化物半導体層の上に設けられる層間絶縁層は凹部を覆うように成膜されるが、凹部の深さが大きいと、層間絶縁層が凹部を十分に覆うことができない。すなわち、酸化物半導体層と層間絶縁層との間、又はソース電極及びドレイン電極と層間絶縁層との間に間隙が生じる場合がある。これは、半導体装置の電気特性だけでなく、信頼性がばらつく要因になり得る。
【0051】
これに対し、多結晶構造を有する酸化物半導体層26は、ドライエッチング及びウェットエッチングのどちらの場合であっても、エッチングレートを0.00nm/sec~0.1nm/sec、好ましくは0.00nm/sec~0.06nm/secにすることができる。すなわち、多結晶構造を有する酸化物半導体層26は、IGZOを用いた酸化物半導体層よりもエッチングレートが低く、高いエッチング耐性を有する。そのため、エッチングに起因する酸化物半導体層の膜厚の減少を考慮することなく、チャネル領域の膜厚を制御することができる。したがって、酸化物半導体膜の成膜時において、10nm以上30nm以下の膜厚で成膜することができる。また、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wとして用いることができる導電材料の選択性が向上する。例えば、MoW/Al/MoWの積層構造、又はMoW構造を用いた導電膜をウェットエッチングしてソース電極32S及びドレイン電極32Dを形成する場合であっても、酸化物半導体層26の膜厚の減少を抑制することができる。
【0052】
上述したように、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液に対する酸化物半導体層26のエッチングレートは、非常に小さい。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの1つと重畳する酸化物半導体層26の第1領域(すなわち、ソース領域又はドレイン領域)の膜厚と、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと重畳しない酸化物半導体層26の第2領域(すなわち、チャネル領域)の膜厚とが、実質的に同一となる。換言すると、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差が、5nm以下、好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nmとなるように制御することができる。すなわち、チャネル領域の膜厚のばらつきが抑制される。
【0053】
図3のステップS1010(「SiOx形成」)では、酸化物半導体層26、ソース電極32S、及びドレイン電極32Dの上に層間絶縁層34を成膜する。層間絶縁層34として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層34として、酸化シリコン(SiO)又は酸化窒化シリコン(SiO)などが用いられる。また、層間絶縁層34として、欠陥が少ない絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層34における酸素の組成比と、層間絶縁層34と同様の組成の絶縁膜(以下、「他の絶縁膜」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、層間絶縁層34における酸素の組成比の方が当該他の絶縁膜における酸素の組成比よりも当該絶縁膜に対する化学量論比に近い。例えば、層間絶縁層34及びゲート絶縁層16の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、層間絶縁層34は、ゲート絶縁層16よりも酸化シリコン(SiO)の化学量論比に近い組成比を有する。層間絶縁層34として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0054】
層間絶縁層34は、ゲート絶縁層14、16と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。層間絶縁層34における酸素の組成比を増加させるためには、比較的低温(例えば、350℃未満の成膜温度)で成膜すればよい。また、層間絶縁層34として欠陥が少ない絶縁膜を形成するために、350℃以上の成膜温度で層間絶縁層34を成膜してもよい。さらに、層間絶縁層34を成膜した後に、層間絶縁層34の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。
【0055】
層間絶縁層34の膜厚は、50nm以上300nm以下、60nm以上200nm以下、又は70nm以上150nm以下である。
【0056】
図3のステップS1011(「MO成膜」)では、層間絶縁層34の上に金属酸化物膜36を成膜する(図10参照)。金属酸化物膜36は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0057】
金属酸化物膜36として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物膜36として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物膜とは、金属酸化物膜36に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物膜36全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物膜36に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物膜36全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0058】
金属酸化物膜36の膜厚は、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下である。金属酸化物膜36として、酸化アルミニウムが用いられることが好ましい。酸化アルミニウムは酸素又は水素などのガスに対する高いバリア性を備えている。ここで、バリア性とは、酸素又は水素などのガスが、酸化アルミニウムを透過することを抑制する機能をいう。つまり、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層に移動させないことを意味する。又は、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層に移動させないことを意味する。
【0059】
なお、金属酸化物膜36として、アルミニウム以外の金属を主成分とする金属酸化物が用いられてもよい。例えば、金属酸化物膜36として、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、又は酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)などを用いることができる。
【0060】
図3のステップS1012(「酸化アニール」)では、酸化物半導体層26の上に層間絶縁層34及び金属酸化物膜36が成膜された状態で、加熱処理が行われる(図10参照)。これにより、層間絶縁層34から放出された酸素が酸化物半導体層26に供給される。金属酸化物膜36が基板11を覆うように設けられることで、層間絶縁層34から放出された酸素が金属酸化物膜36の外部に放出されてしまうことを抑制することができる。
【0061】
酸化物半導体層26が成膜されてから酸化物半導体層26の上に層間絶縁層34が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層26には多くの酸素欠陥が発生する。しかしながら、ステップS1012の酸化アニールによって、層間絶縁層34から放出された酸素が酸化物半導体層26に供給され、酸素欠陥が修復される。
【0062】
図3のステップS1013(「MO除去」)では、金属酸化物膜36を除去する(図11参照)。例えば、金属酸化物膜36は、希釈フッ酸(DHF)を用いて除去すればよい。
【0063】
図3のステップS1014(「SiNx成膜」)では、層間絶縁層34の上に層間絶縁層38を成膜する。層間絶縁層38として、窒素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層38として、窒化シリコン(SiN)又は窒化酸化シリコン(SiN)などが用いられる。層間絶縁層38は、ゲート絶縁層14、16と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。
【0064】
以上のステップにより、図1に示す半導体装置10を製造することができる。
【0065】
上記の製造方法で作製した半導体装置10では、酸化物半導体層26の形状をばらつきが抑制される。特に、チャネル領域の膜厚のばらつきを低減することができる。その結果、半導体装置10は、安定した電気特性を有する。したがって、半導体装置10の製造ばらつきが低減され、歩留まりが向上する。
【0066】
<第2実施形態>
図12図15を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10を用いた表示装置20について説明する。以下に示す実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10が液晶表示装置の回路に適用された構成について説明する。
【0067】
[表示装置20の概要]
図12は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の概要を示す模式的な平面図である。図12に示すように、表示装置20は、アレイ基板300、シール部310、対向基板320、フレキシブルプリント回路基板330(FPC330)、及びICチップ340を有する。アレイ基板300及び対向基板320はシール部310によって貼り合わせられている。シール部310に囲まれた液晶領域220には、複数の画素回路301がマトリクス状に配置されている。液晶領域220は、後述する液晶素子311と平面視において重なる領域である。
【0068】
シール部310が設けられたシール領域240は、液晶領域220の周囲の領域である。FPC330は端子領域260に設けられている。端子領域260はアレイ基板300が対向基板320から露出された領域であり、シール領域240の外側に設けられている。シール領域240の外側とは、シール部310が設けられた領域及びシール部310によって囲まれた領域の外側を意味する。ICチップ340はFPC330上に設けられている。ICチップ340は各画素回路301を駆動させるための信号を供給する。
【0069】
[表示装置20の回路構成]
図13は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の回路構成を示すブロック図である。図13に示すように、画素回路301が配置された液晶領域220に対して第2方向D2(列方向)に隣接する位置にはソースドライバ回路302が設けられており、液晶領域220に対して第1方向D1(行方向)に隣接する位置にはゲートドライバ回路303が設けられている。ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303は、上記のシール領域240に設けられている。ただし、ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303が設けられる領域はシール領域240に限定されず、画素回路301が設けられた領域の外側であれば、どの領域でもよい。
【0070】
ソースドライバ回路302からソース配線304が第2方向D2に延びており、第2方向D2に配列された複数の画素回路301に接続されている。ゲートドライバ回路303からゲート電極12GEが第1方向D1に延びており、第1方向D1に配列された複数の画素回路301に接続されている。
【0071】
端子領域260には端子部306が設けられている。端子部306とソースドライバ回路302とは接続配線307で接続されている。同様に、端子部306とゲートドライバ回路303とは接続配線307で接続されている。FPC330が端子部306に接続されることで、FPC330が接続された外部機器と表示装置20とが接続され、外部機器からの信号によって表示装置20に設けられた各画素回路301が駆動する。
【0072】
第1実施形態に示す半導体装置10は、画素回路301、ソースドライバ回路302、及びゲートドライバ回路303に含まれるトランジスタとして用いられる。
【0073】
[表示装置20の画素回路301]
図14は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の画素回路301を示す回路図である。図14に示すように、画素回路301は半導体装置10、保持容量350、及び液晶素子311などの素子を含む。半導体装置10はゲート電極12GE、酸化物半導体層26、ソース電極32S、及びドレイン電極32Dを有する。ゲート電極12GEはゲート配線305に接続されている。ソース電極32Sはソース配線304に接続されている。ドレイン電極32Dは保持容量350及び液晶素子311に接続されている。
【0074】
[表示装置20の構成]
図15は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の模式的な断面図である。図15に示す表示装置20は、半導体装置10が適用されている。
【0075】
図15に示すように、基板11の上にゲート電極12GEが設けられている。ゲート電極12GEの上に、ゲート絶縁層14、16が設けられている。ゲート絶縁層14、16の上に酸化物半導体層26が設けられている。酸化物半導体層26の上に、ソース電極32S及びドレイン電極32Dが設けられている。
【0076】
ソース電極32S及びドレイン電極32Dの上に層間絶縁層34、38が設けられている。層間絶縁層34、38の上に、絶縁層39が設けられている。絶縁層39は、半導体装置10による凹凸を緩和するために設けられている。層間絶縁層34、38、及び絶縁層39には、ソース電極32Sの上面を露出するようにコンタクトホールが形成されている。絶縁層39の上には、複数の画素に共通して設けられる共通電極42Cが設けられている。共通電極42Cの上に絶縁層44が設けられている。コンタクトホールの内部には、絶縁層44が設けられている。絶縁層44を窒化シリコン膜で形成することで、コンタクホールから絶縁層44を介して水分が侵入することを抑制することができる。絶縁層44の上及びコンタクトホールの内部に画素電極46Pが設けられている。画素電極46Pはドレイン電極32Dに接続されている。
【0077】
また、基板11の上に配線12Cが設けられており、ゲート絶縁層14、16に設けられたコンタクトホールを介して、配線32Cと接続されている。配線12C及び配線32Cは、容量配線として機能する。また、絶縁層39の上及び開口の内部に電極46Cが設けられている。共通電極42C、絶縁層44、及び電極46Cにより保持容量350が形成される。
【0078】
本実施形態では、半導体装置10が画素回路301に用いられた構成を例示するが、半導体装置10がソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303を含む周辺回路に用いられてもよい。
【0079】
<第3実施形態>
図16及び図17を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10を用いた表示装置20について説明する。本実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10が有機EL表示装置の回路に適用された構成について説明する。表示装置20の概要及び回路構成は、図12及び図13に示すものと同様なので、説明を省略する。
【0080】
[表示装置20の画素回路301]
図16は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の画素回路を示す回路図である。図16に示すように、画素回路301は駆動トランジスタ110、選択トランジスタ120、保持容量210、及び発光素子DOなどの素子を含む。駆動トランジスタ110及び選択トランジスタ120は半導体装置10と同様の構成を備えている。選択トランジスタ120のソース電極は信号線211に接続され、選択トランジスタ120のゲート電極はゲート線212に接続されている。駆動トランジスタ110のソース電極はアノード電源線213に接続され、駆動トランジスタ110のドレイン電極は発光素子DOの一端に接続されている。発光素子DOの他端はカソード電源線214に接続されている。駆動トランジスタ110のゲート電極は選択トランジスタ120のドレイン電極に接続されている。保持容量210は駆動トランジスタ110のゲート電極及びドレイン電極に接続されている。信号線211には、発光素子DOの発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線212には、上記の階調信号を書き込む画素行を選択する信号が供給される。
【0081】
[表示装置20の断面構造]
図17は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の構成を示す模式的な断面図である。図17に示す表示装置20の構成は、図15に示す表示装置20と類似しているが、図17に示す表示装置20の絶縁層39よりも上方の構造が図15に示す表示装置20の絶縁層39よりも上方の構造と相違する。以下、図17に示す表示装置20の構成のうち、図15に示す表示装置20と同様の構成については説明を省略し、両者の相違点について説明する。
【0082】
図17に示すように、表示装置20は、絶縁層39の上方に画素電極390、発光層392、及び共通電極394(発光素子DO)を有する。画素電極390は絶縁層39の上並びに層間絶縁層34、38及び絶縁層39に形成されたコンタクトホールの内部に設けられている。画素電極390の上に絶縁層362が設けられている。絶縁層362には開口363が設けられている。開口363は発光領域に対応する。つまり、絶縁層362は画素を画定する。開口363によって露出した画素電極390の上に発光層392及び共通電極394が設けられている。画素電極390及び発光層392は、各画素に対して個別に設けられている。一方、共通電極394は、複数の画素に共通して設けられている。発光層392は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。
【0083】
第2実施形態及び第3実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10を液晶表示装置及び有機EL表示装置に適用した構成について例示したが、これらの表示装置以外の表示装置(例えば、有機EL表示装置以外の自発光型表示装置又は電子ペーパ型表示装置)に半導体装置10を適用してもよい。また、中小型の表示装置から大型の表示装置まで、特に限定することなく半導体装置10の適用が可能である。また、大面積基板を用いて製造する場合であっても、半導体装置10における酸化物半導体層26の形状のばらつきが小さい。そのため、半導体装置10を表示装置20に適用した場合、表示ムラを低減することができる。また、表示装置20を製造する際の歩留まりを向上させることができる。
【実施例0084】
(実施例1)
本実施例では、多結晶構造を有する酸化物半導体層に対するエッチング耐性について検証した結果について説明する。
【0085】
本実施例で用いたサンプルについて説明する。シリコンウエハ上に、30nmの多結晶構造を有する酸化物半導体層(Poly-OS)を形成した。次に、酸化物半導体層の上に導電膜を形成した。導電膜として、MoW構造、MoW/Al/MoW構造、Ti構造、及びTi/Al/Ti構造の4種類を用いた。
【0086】
MoW構造の導電膜及び酸化物半導体層に対しては、混酸エッチング溶液でウェットエッチングを行ったサンプルと、H/NH溶液でウェットエッチングを行ったサンプルと、フッ素系ガスでドライエッチングを行ったサンプルと、を用意した。
【0087】
MoW/Al/MoW構造の導電膜及び酸化物半導体層に対しては、混酸エッチング溶液でウェットエッチングを行ったサンプルを用意した。
【0088】
Ti構造の導電膜及び酸化物半導体層に対しては、H/NH溶液でウェットエッチングを行ったサンプルと、フッ素系ガスでドライエッチングを行ったサンプルと、塩素系ガスでドライエッチングを行ったサンプルと、を用意した。
【0089】
Ti/Al/Ti構造の導電膜及び酸化物半導体層に対しては、TiをH/NH溶液でウェットエッチング、Alを混酸エッチング溶液でウェットエッチング、及びTiをH/NH溶液でウェットエッチングを行ったサンプルと、塩素系ガスでドライエッチングを行ったサンプルと、を用意した。
【0090】
次に、比較例で用いたサンプルについて説明する。シリコンウエハ上に、40nmのIGZOの酸化物半導体層を成膜した。次に、酸化物半導体層の上に導電膜を形成した。導電膜として、Ti構造を用いた。Ti構造の導電膜及び酸化物半導体層に対して、塩素系ガスでドライエッチングを行ったサンプルを用意した。
【0091】
本実施例として、各種の導電膜を加工した後の概算のオーバーエッチング時間に対する多結晶酸化物半導体層のエッチングレート(単位:nm/sec)を、表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
比較例として、Ti構造の導電膜を加工した後の概算のオーバーエッチング時間に対する酸化物半導体層(IGZO)のエッチングレートは、1.00nm/secであった。
【0094】
表1に示すように、多結晶構造を有する酸化物半導体層は、非晶質の酸化物半導体層(IGZO)と比較して、エッチング耐性が高いことが示された。また、混酸エッチング溶液でエッチングする場合、H/NH溶液でエッチングする場合、フッ素系ガスでエッチングする場合、0.00nm/sec~0.06nm/secのエッチングレートであることが示された。塩素系ガスを用いてエッチングする場合であっても、酸化物半導体層(IGZO)と比較して十分に高いエッチング耐性を有することが示された。
【0095】
(実施例2)
次に、第1実施形態の図3に示すフローチャートにしたがって製造した半導体装置10の電気特性について検証した結果について説明する。
【0096】
実施例2において半導体装置10として作製したサンプルA~サンプルCについて説明する。サンプルA~サンプルCの作製においては、図3に示す半導体装置10の製造方法を示すフローチャートのステップS1008の工程を省略した。
【0097】
基板の上にゲート電極12GEを形成し、ゲート電極12GEの上にゲート絶縁層14、16を形成した。ゲート絶縁層14、16の上に30nmの酸化物半導体膜22を形成した。酸化物半導体膜22を加工することにより、酸化物半導体層24を形成し、350℃~450℃の範囲で温度を制御したOSアニールを行うことにより、多結晶構造の酸化物半導体層26(Poly-OS)を形成した。
【0098】
酸化物半導体層26の上に、導電膜としてMoW/Al/MoW構造を形成し、混酸エッチング溶液を用いて導電膜にウェットエッチングを行ってソース電極32S及びドレイン電極32Dを形成した。次に、層間絶縁層34として酸化シリコン層を成膜した後、金属酸化物膜36として10nmの酸化アルミニウム層を形成し、酸化アニールを行った後、金属酸化物膜36を除去した。最後に、層間絶縁層34の上に層間絶縁層38を成膜した。
【0099】
サンプルA~サンプルCは、それぞれ、層間絶縁層34の成膜温度の条件が異なる。サンプルA~サンプルCにおける層間絶縁層34の成膜温度は、それぞれ、300℃、325℃、及び350℃である。
【0100】
サンプルA~サンプルCにおいて、酸化物半導体層26の膜厚を計測したところ、チャネル領域の膜厚とソース領域又はドレイン領域の膜厚との差は2nm未満であった。
【0101】
次に、サンプルA~サンプルCの電気特性を測定した。電気特性の測定条件を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
図18は、実施例2におけるサンプルA~サンプルCの電気特性(Id-Vg特性)を示す図である。横軸は、ゲート電圧Vgであり、縦軸は、ドレイン電流(Id)である。また、図18に示す電気特性から算出された電界効果移動度(線形領域における電界効果移動度)及び閾値を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
図18及び表3から理解されるように、サンプルA~サンプルCにおいては、多結晶構造の酸化物半導体層(Poly-OS)に成膜温度の異なる層間絶縁層34が接しても、安定した電界効果移動度が得られている。すなわち、半導体装置10は、酸化物半導体層26の形状(特に、チャネル領域の膜厚)が制御されていることにより、安定した電気特性が得られる。
【0106】
なお、層間絶縁層34の成膜温度が高くなると、電気特性の閾値が負側にシフトしている。そのため、半導体装置10の電気特性において、閾値をエンハンスメント型とする場合には、層間絶縁層34を300℃以下で成膜することが好ましい。
【0107】
本発明の実施形態として上述した各実施形態及び変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態及び変形例の半導体装置及び表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0108】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0109】
10:半導体装置、 20:表示装置、
11:基板、 12C:配線、 12GE:ゲート電極、 12W:配線、 14:ゲート絶縁層、 15:コンタクトホール、 16:ゲート絶縁層、 22:酸化物半導体膜、 24:酸化物半導体層、 26:酸化物半導体層、 32C:配線、 32D:ドレイン電極、 32S:ソース電極、 32W:配線、 34:層間絶縁層、 36:金属酸化物膜、 38:層間絶縁層、 39:絶縁層、 42C:共通電極、 44:絶縁層、 46C:電極、 46P:画素電極、
110:駆動トランジスタ、 120:選択トランジスタ、 210:保持容量、 211:信号線、 212:ゲート線、 213:アノード電源線、 214:カソード電源線、 220:液晶領域、 240:シール領域、 260:端子領域、 300:アレイ基板、 301:画素回路、 302:ソースドライバ回路、 303:ゲートドライバ回路、 304:ソース配線、 305:ゲート配線、 306:端子部、 307:接続配線、 310:シール部、 311:液晶素子、 320:対向基板、 330:フレキシブルプリント回路基板、 340:チップ、 350:保持容量、 362:絶縁層、 363:開口、 390:画素電極、 392:発光層、 394:共通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18