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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145789
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20241004BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C08J5/18
B32B27/32 Z
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058287
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504300103
【氏名又は名称】三井化学ファイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢士
(72)【発明者】
【氏名】又吉 智也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝行
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA21X
4F071AA75X
4F071AB21
4F071AC02
4F071AE01
4F071AE04
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF26Y
4F071AF54Y
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC11
4F071BC12
4F074AA13B
4F074AA26A
4F074AA98
4F074AD01
4F074AG02
4F074BA03
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA17
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA36
4F074DA38
4F100AK08A
4F100AK12A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK51A
4F100AL09A
4F100BA02
4F100CA30A
4F100DG11B
4F100GB90
4F100JA13A
4F100JB16A
4F100JK02A
4F100JK12A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】回復時の過度な負荷を軽減できるストレッチバンドが得られる樹脂シートを提供する。
【解決手段】本発明の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、以下の手順で求められる割合(M2/M1×100)(%)が10%以上、80%以下である、樹脂シート。[手順]当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように試験片を作成し、初期のチャック間距離30mm、伸長時のチャック間距離45mmとして、環境温度23℃、変形量1000%/分で伸長回復試験をおこなう。横軸を引張歪量(%)、縦軸を引張応力(MPa)とし、引張歪量が30%時の往路の引張応力M1と、復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)を求める。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含むものであり、
以下の手順で求められる割合(M2/M1×100)(%)が10%以上、80%以下である、樹脂シート。
[手順]
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように試験片を作成し、初期のチャック間距離30mm、伸長時のチャック間距離45mmとして、環境温度23℃、変形速度1000%/分で伸長回復試験をおこなう。横軸を引張歪量(%)、縦軸を引張応力(MPa)とし、引張歪量が30%時の往路の引張応力M1と、復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)を求める。
【請求項2】
前記手順において、引張歪量が10%時の往路の引張応力(MPa)が0.1MPa以上1.0MPa以下である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記手順において、前記引張応力(MPa)の最大値が0.4MPa以上1.8MPa以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記手順において、引張歪量が40%時の復路の引張応力(MPa)が0.1MPa以上1.0MPa以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項5】
以下の条件で測定される当該試験片の永久ひずみが1%以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
<条件>
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように25mm幅の試験片を作成し、標線(初期の標線間距離L0=50mm)を設ける。初期チャック間距離100mm、伸長時のチャック間距離200mm、引張速度300mm/分、環境温度23℃、で引張り、伸長した状態で20分間保持した後、直ちに初期チャック間距離まで300mm/分で戻し、試験片を取り外し、平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1を測定する。初期の標線間距離L0と前記平坦な台上に1時間静置した後の前記標線間距離L1の変化率(L1-L0)/L0(%)を永久ひずみとする。
【請求項6】
前記樹脂シートの厚みが0.1mm~10mmである、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記樹脂シートの密度が0.1g/cm~1.0g/cmである、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項8】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、40~80質量%であり、
熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し20~60質量%である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項9】
熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性アミド系エラストマー、熱可塑性ウレタン系エラストマー、および熱可塑性エステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項10】
熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度がA20~A80である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項11】
鉱油の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5質量%以上20質量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項12】
請求項1または2に記載の樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた、生地積層体。
【請求項13】
請求項1または2に記載の樹脂シートを用いた、運動器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。より詳細には、樹脂シート、樹脂シートを用いた生地積層体および運動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた樹脂シートは、優れた柔軟性や伸縮性を有し、良好な肌触りが得られることなどから、衛生材料、衣料用材料、医療用材料など、各種用途に広く使用されることが期待されている。例えば、特許文献1(国際公開第2018/143411号)には、4-メチル-1-ペンテン系重合体を発泡させたシートをそのまま着圧サポーターに用いる例が開示されている。
【0003】
一方、健康増進などの点から行われる軽度な運動やストレッチ運動では、筋肉や関節に適度な負荷をかけることが望ましいとされている。例えば、特許文献2(特開2020-028689号公報)には、ゴム素材を用いたストレッチバンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/143411号
【特許文献2】特開2020-028689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されるような従来のゴム素材を用いたストレッチバンドは、力を加えて伸長した際少しでも力を弱めると急速に収縮してしまうため、関節に負荷がかかったり、ゆっくり戻すために過剰な力が必要になるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた樹脂シートの新たな用途に関し、特許文献1などでは開示されていないストレッチバンドとしての用途に着目した。そして、特許文献2に開示されるような従来のゴム素材を用いたストレッチバンドにおける回復時の過度な負担を軽減する鋭意検討を行い、樹脂シートの引張応力の往路と復路に関する新たな指標を考案した。すなわち、引張応力の往路と復路を同時に制御するように樹脂シートを作製することで、回復時の過度な負荷を軽減できるストレッチバンドが得られることを見出し、本発明を完成させた
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂シートおよびこれに関する技術が提供される。
【0008】
[1] 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含むものであり、
以下の手順で求められる割合(M2/M1×100)(%)が10%以上、80%以下である、樹脂シート。
[手順]
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように試験片を作成し、初期のチャック間距離30mm、伸長時のチャック間距離45mmとして、環境温度23℃、変形速度1000%/分で伸長回復試験をおこなう。横軸を引張歪量(%)、縦軸を引張応力(MPa)とし、引張歪量が30%時の往路の引張応力M1と、復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)を求める。
[2] 前記手順において、引張歪量が10%時の往路の引張応力(MPa)が0.1MPa以上1.0MPa以下である、[1]に記載の樹脂シート。
[3] 前記手順において、前記引張応力(MPa)の最大値が0.4MPa以上1.8MPa以下である、[1]または[2]に記載の樹脂シート。
[4] 前記手順において、引張歪量が40%時の復路の引張応力(MPa)が0.1MPa以上1.0MPa以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[5] 以下の条件で測定される当該試験片の永久ひずみが1%以下である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の樹脂シート。
<条件>
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように25mm幅の試験片を作成し、標線(初期の標線間距離L0=50mm)を設ける。初期チャック間距離100mm、伸長時のチャック間距離200mm、引張速度300mm/分、環境温度23℃、で引張り、伸長した状態で20分間保持した後、直ちに初期チャック間距離まで300mm/分で戻し、試験片を取り外し、平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1を測定する。初期の標線間距離L0と前記平坦な台上に1時間静置した後の前記標線間距離L1の変化率(L1-L0)/L0(%)を永久ひずみとする。
[6] 前記樹脂シートの厚みが0.1mm~10mmである、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[7] 前記樹脂シートの密度が0.1g/cm~1.0g/cmである、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[8] 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、40~80質量%であり、
熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し20~60質量%である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[9] 熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、および熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[10] 熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度がA20~A80である、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[11] 鉱油の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5質量%以上20質量%以下である、[1]乃至[10]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[12] [1]乃至[10]いずれか一つに記載の樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた、生地積層体。
[13] [1]乃至[10]いずれか一つに記載の樹脂シートを用いた、運動器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回復時の過度な負荷を軽減できるストレッチバンドが得られる樹脂シート、およびこれに関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~5の各引張回復試験の結果を示すグラフ図である。
図2】比較例1、2の各引張回復試験の結果を示すグラフ図である。
図3】比較例3、4の各引張回復試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0012】
本明細書中、MD方向とはMachine Directionを表し、樹脂またはシートの流れ方向を意図し、TD方向とは、Transverse Directionを表し、流れ方向に対して直交する方向を意図する。
【0013】
<樹脂シート>
本実施形態の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含むものであり、以下の手順で求められる割合(M2/M1×100)(%)が10%以上、80%以下である。
【0014】
[手順]
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように試験片を作成し、初期のチャック間距離30mm、伸長時のチャック間距離45mmとして、環境温度23℃、変形速度1000%/分で伸長回復試験をおこなう。横軸を引張歪量(%)、縦軸を引張応力(MPa)とし、引張歪量が30%時の往路の引張応力M1と、復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)を求める。
【0015】
これにより、樹脂シートは、回復時の過度な負荷を軽減できるストレッチバンドを実現できるようになる。
すなわち、通常のゴムバンドなどは、力を加えると伸長することができるが、力を取り除くと瞬時に収縮し、元の状態に戻る。これに対し、本実施形態の樹脂シートは、適度に力を加えることで伸長できるとともに、力を弱めたとしても、ゆっくりと元の状態に回復することができる。その結果、樹脂シートを用いたストレッチバンドにおいては、回復時の過度な負荷を軽減できるようになる。
また、樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含むため、柔軟性、肌触りに優れ、ストレッチバンドの使用者が把持した際の使用感を良好にできる。
【0016】
また、本実施形態の樹脂シートを用いたストレッチバンドに期待される効果の一つには、人が手でストレッチバンドを伸ばしたあと、ストレッチバンドがすみやかな応力緩和とともに、緩やかな速度で縮むため、人がストレッチバンドを伸縮させて用いるエクササイズを想定した場合、ストレッチバンドを伸ばす際に使用者が息を吸い、縮む際にストレッチバンドが縮む速度に追従するかたちで使用者が緩やかに息を吐くことで、使用者に調息の効果を与えることに期待できる。
同様に、本実施形態の樹脂シートを身体の胴体部分の一部に巻いて用いた際、使用者が息を吸う際に樹脂シートが伸び、使用者が息を吐くときに樹脂シートが縮むことで、使用者に対し緩やかな呼吸を誘発し、使用者のリラックス効果を付与することにも期待される。
【0017】
本実施形態の樹脂シートの構成と作用効果との関係のメカニズムの詳細は明らかではないが、次のように推測される。まず、本実施形態の樹脂シートの伸長回復試験において引張歪量が30%は、ストレッチバンドを用いた軽度な運動やストレッチ運動の際に使用者が適度に動いている状態に相当すると考えられる。そこで、引張歪量30%時に着目することで使用者が感じる負荷を効果的に制御できると推測される。また、往路の引張応力M1と復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)が大きいほど、往路の引張応力に対して復路の引張応力が小さいことを意図し、引き伸ばされた樹脂シートがゆっくりと元の長さに戻ることを意図する。すなわち、従来のゴムバンドは復路の引張応力が往路と同様に大きいため、急速に収縮し、使用者への負荷が高くなりやすかった。
【0018】
上記の割合(M2/M1×100)(%)は、伸長時と収縮時の負荷をより好適にする点から、好ましくは10%~60%であり、より好ましくは15%~40%である。
【0019】
さらに、上記の手順において、引張りはじめに適度な負荷を感じされる点から、引張歪量が10%時の往路の引張応力(MPa)は、好ましくは0.2MPa~0.8MPaであり、より好ましくは0.3MPa~0.8MPaである。
【0020】
さらに、上記の手順において、引張り切るまでの間に適度な負荷を感じつつ、ゆっくり収縮することで収縮時の負荷を一層軽減する点から、引張歪量が40%時の復路の引張応力(MPa)は、好ましくは0.2MPa~0.8MPaであり、より好ましくは0.3MPa~0.8MPaである。
【0021】
さらに、上記の手順において、引張り切るまでの間に適度な負荷を感じされる点から、前記引張応力(MPa)の最大値は、好ましくは0.4MPa~1.5MPaであり、より好ましくは0.8MPa~1.3MPaである。
【0022】
また、本実施形態の樹脂シートは、以下の条件で測定される当該試験片の永久ひずみが1%以下である。これにより、樹脂シートを繰り返し伸縮させたとしても、いわゆるへたりが抑制され、元の状態に戻りやすくなる。
【0023】
<条件>
当該樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように25mm幅の試験片を作成し、標線(初期の標線間距離L0=50mm)を設ける。初期のチャック間距離100mm、伸長時のチャック間距離200mm、引張速度300mm/分、環境温度23℃、で引張り、伸長した状態で20分間保持した後、直ちに初期チャック間距離まで300mm/分で戻し、試験片を取り外し、平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1を測定する。初期の標線間距離L0と前記平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1の変化率(L1-L0)/L0(%)を永久ひずみとする。
【0024】
また、上記のような引張応力およびその挙動を有する樹脂シートは、樹脂シートを構成する材料の選択、配合量の調整や公知の方法を組み合わせた樹脂シートの製造方法の工夫などによって実現することができる。
【0025】
次に、樹脂シートの物性について説明する。
【0026】
[損失正接(tanδ)]
樹脂シートの昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、上記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であることが好ましい。
【0027】
動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度は、好ましくは10℃以上40℃以下の範囲に1つ以上あり、より好ましくは15℃以上38℃以下の範囲に1つ以上あり、さらに好ましくは15℃以上38℃以下の範囲に1つ以上である。
また、動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値は、好ましくは0.8以上4.0以下であり、より好ましくは1.2以上3.5以下であり、さらに好ましくは1.5以上3.0以下である。
【0028】
また、本実施形態において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の上記損失正接の極大値は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。そして本実施形態において、上記損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
【0029】
なお、動的粘弾性測定は、例えば、本実施形態の樹脂シートから縦30mm×幅10mmの試験片を作成し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、捻りモードの条件で、レオメータを用いて行うことができる。
【0030】
樹脂シートの上記損失正接は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の種類や配合割合、架橋の有無、組成物の成形方法などを適切に調節することにより、上記範囲内に制御することが可能である。
【0031】
[厚み]
樹脂シートの平均厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上10mm以下の範囲であり、より好ましくは0.2mm以上5mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.3mm以上3mm以下の範囲である。
樹脂シートの平均厚みを、上記下限値以上とすることにより、樹脂シートの使用感を良好にし、機械的強度を向上して設計の自由度を広げることができる。
一方、樹脂シートの平均厚みを、上記上限値以下とすることにより、伸長時と収縮時の負荷を良好にしやすくなる。
【0032】
[密度]
樹脂シートのASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.1~1.0g/cm、より好ましくは0.3~0.9g/cm、さらに好ましくは0.5~0.8g/cmである。
樹脂シートの密度を上記下限値以上とすることにより、樹脂シートの使用感を良好にし、機械的強度を向上し設計の自由度を広くできる。一方、樹脂シートの密度を上記上限値以下とすることにより、軽量化を図りつつ、伸長時と収縮時の負荷を良好にしやすくなる。
樹脂シートの密度は、樹脂組成物の材料の選択の他、樹脂シートの発泡の有無、発泡の程度によって調整することができる。
【0033】
[形態]
本実施形態の樹脂シートの形態は、気泡を含んだ発泡体であってもよく、発泡されていないものであってもよい。発泡体とすることで、樹脂シートの伸びやクッション性を高め、ストレッチバンドの使用感を高めやすくなる。
発泡倍率は特に限定されず、樹脂シートの用途などを考慮して適宜決定することができる。
本実施形態において、樹脂シートが発泡体であることは、気泡(空洞)が樹脂シート内に多数ある場合を意図する。
【0034】
[樹脂組成物]
次に、樹脂シートを構成する樹脂組成物について説明する。
樹脂シートを構成する樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)と、を含む。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および熱可塑性エラストマー(B)はそれぞれ単独で用いられてもよく、また、それぞれ他の成分とともにコンパウンドされたものとして用いられてもよい。
【0035】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含む。
【0036】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、樹脂シートの柔軟性をより向上させる観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、樹脂シートの柔軟性や機械的特性などをより良好にする観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(a1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(a1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(a1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0037】
炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)としては、エチレン、およびプロピレンを挙げることができ、なかでも機械的強度を保持しつつ、柔軟性などが得られる点から、プロピレンが好ましい。
【0038】
なお、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、構成単位(a1)と構成単位(a2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエンなどが挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、樹脂シートの柔軟性や機械的強度をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0041】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報などに記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは40~80質量%である。これにより、通気性と機械的特性のバランスにより優れた樹脂シートを得ることができる。
【0043】
[熱可塑性エラストマー(B)]
熱可塑性エラストマー(B)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に対する相溶性が良好であるため、機械的強度を保持しつつ、伸長性および収縮性を安定して得られるようになる。
【0044】
熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度はA20~A80であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度を上記数値範囲とすることで、伸長時と収縮時に適度な負荷を制御しやすくなる。
【0045】
熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。
【0046】
熱可塑性エラストマー(B)は、例えば、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、および熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0047】
熱可塑性スチレン系エラストマー、としては、例えば、水添スチレン・イソプレンブロック共重合体の水添物(SEPS)、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。
【0048】
熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~80質量%である。これにより、伸長時と収縮時の負荷を良好に制御できる。
【0049】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)との合計の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、ことさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%としてもよい。これにより、伸長時と収縮時の負荷を良好に制御できる。
【0050】
[その他の成分]
本実施形態に係る樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、熱可塑性エラストマー(B)以外の成分を含んでもよい。
【0051】
本実施形態の樹脂シートは、鉱油を含有してもよい。鉱油とは、アロマ(芳香族)系炭化水素化合物、ナフテン(シクロ環)系炭化水素化合物、パラフィン(脂肪族)系炭化水素化合物、又は、これらの混合物が挙げられる。
また、鉱油の40℃における動粘度は120mm/s以上800mm/s以下としてもよい。具体的には、40℃における動粘度が120mm/s以上800mm/s以下の流動パラフィンが挙げられる。これにより、伸長時と収縮時の負荷を良好に制御する樹脂シートを得ることができる。さらに、鉱油としては、150mm/s~600mm/sである流動パラフィンを用いることが好ましい。
樹脂シートが鉱油を含有する場合、鉱油の含有量は、前記樹脂組成物全量に対し、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることが好ましく、一方、5質量%以上であることが好ましい。これにより、伸長時と収縮時に適度な負荷をかけられる樹脂シートが得られる。
本実施形態において、鉱油は熱可塑性エラストマー(B)を含む混合物に含まれる一成分であってもよい。
【0052】
また、本実施形態の樹脂シートは、無機粒子の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、伸長時と収縮時に適度な負荷をかけられる樹脂シートが得られる。
【0053】
無機粒子としては、具体的には、カーボンブラックまたはグラファイトもしくはシランカップリング剤などにより表面処理が施されたカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ(煙霧質シリカ、沈降性シリカ、珪藻土および石英などを含む)、アルミナ、酸化鉄、フェライト、酸化マグネシウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化バリウムおよび酸化カルシウムなどを含む酸化物系フィラー、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどを含む水酸化物系フィラー、珪酸アルミニウム(クレー)、珪酸マグネシウム(タルク)、マイカ、カオリン、珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなどを含む珪酸塩系フィラー、珪藻土および石灰岩などを含む堆積岩系フィラー、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどを含む粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄およびコバルトなどを含む磁性系フィラー、銀、金、銅およびこれらの合金などを含む導電性フィラー、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコーンカーバイトなどを含む熱伝導性フィラー、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどを含む硫酸塩系フィラー、亜硫酸カルシウムなどを含む亜硫酸塩系フィラー、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、チタン酸バリウム、およびチタン酸カリウムなどが挙げられる。
【0054】
また、本実施形態の樹脂シートは、平均粒子径が0.01~100μmの無機粒子を含むものを除くことが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、発泡剤、発泡性改質剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、およびワックスなどの添加剤を配合してもよい。
【0056】
(発泡剤)
上記発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、または二酸化炭素と窒素の混合物などが挙げられ、いずれもガス状、液状または超臨界状態のいずれでも供給することが可能である。
【0057】
[樹脂シートの製造方法]
本実施形態の樹脂シートは、原料となる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)、その他任意の各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、および熱ロールなどの公知の方法により混合または溶融・混練して樹脂組成物を調製し、公知の方法で、シート状に押出成形することで製造できる。押し出されたシートは、冷却ロールで冷却して、引取機を用いて引き取る。
【0058】
また、樹脂シートを発泡させる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
化学発泡剤を用いる場合は、化学発泡剤以外の樹脂組成物を、化学発泡剤とともに押出成形機に投入して、均一に混合したのち、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
また、物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合は、樹脂組成物を押出成形機に投入し、押出成形機内で混練され、可塑化された状態になった後、押出成形機内へ二酸化炭素を直接注入し、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
【0059】
<生地積層体>
本実施形態の生地積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、上記の手順で求められる割合(M2/M1×100)(%)が10%以上、80%以下となる樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされたものである。これにより、回復時の過度な負荷を軽減できる生地積層体を実現できる。また、樹脂シートが自己粘着性を有していたとしても、生地で樹脂シートの面を覆うことで自己粘着性を妨げることができる。
【0060】
生地としては、天然繊維、合成繊維、化学繊維といった繊維類を薄く加工したものであり、生地帛などの織物、および不織布などが挙げられる。具体的には、天竺、フライス、スムース、ダブルニットなどの緯編組織を有する編物、トリコット、ラッセルなどの経編組織を有する編物、平織、綾織、サテンなどの組織を有する織物が挙げられる。
【0061】
生地の厚みは、樹脂シートとの接着性や樹脂シートの特性を保持するなどの点から、0.2~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましく、0.2~0.6mmであることがさらに好ましい。
【0062】
生地の目付は、接着性および耐熱性の観点からは特に限定されないが、例えば、取扱い性などの点から、75~300g/mであることが好ましく、90~250g/mであることがより好ましく、100~200g/mであることがさらに好ましい。
【0063】
生地の素材としては、綿、麻、ウール、シルクなどの天然繊維;レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテート・トリアセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、レーヨンなどの合成繊維、ならびにこれら合成繊維の混合繊維からなる化学繊維製品が挙げられる。
なかでも、合成繊維であることが好ましく、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、およびレーヨンのなかから選ばれる1種または2種以上であることがより好ましい。
【0064】
また、生地積層体は、樹脂シートの両面に生地が貼り合わされたものでもよい。この場合、樹脂シートの一方の面側の生地と、樹脂シートの他方の面側の生地とは、同じ素材の生地であってもよく、異なる素材の生地であってもよい。
また、生地積層体は、樹脂シートの全面または一部の面に生地が積層されたものであってもよく、生地の全面または生地の一部の面に樹脂シートが積層されたものであってもよい。
【0065】
また、本実施形態の生地積層体の厚みは、柔軟性、加工性、縫いやすさなどを考慮して、適宜調整される。
【0066】
[生地積層体の製造方法]
生地積層体の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程)上記の樹脂シートの少なくとも一方の面上に生地を重ね、140~190℃、1.0~1.8MPaの条件でヒートシールして生地積層体を得る。
【0067】
なかでで、生地と貼り合わせる際、140~190℃、1.0~1.8MPaで貼り合せることが好適である。貼り合せ時間は30秒~10分であると生産効率が良い。これにより、本実施形態のシート組成物の特性を保持したまま、生地積層体を得ることができる。
また、積層体の伸縮性を良好にする点からは、樹脂シートのMD方向と生地の縦糸方向が平行になるように重ね合わせることがより好ましいが、これに限られない。樹脂シートのTD方向と生地の縦糸方向が平行になるように重ね合わせてもよい。
【0068】
<用途>
本実施形態に係る樹脂シートおよび生地積層体は、分野を問わず、広く利用されるが、良好な伸縮性を活用する点から、リハビリ、ヘルスケア、介護補助用品などの医療関係用品;トレーニング、サポーター、マッサージ、スポーツなどの運動器具などに用いることが好適である。運動器具としては、具体的には、例えば、ストレッチバンド、ストレッチベルト、エクササイズバンド、トレーニングバンド、トレーニングベルトなどが挙げられる。
【0069】
また、樹脂シートおよび生地積層体の形態は、特に限定されないが、例えば、帯状であってもよく、ループ状・リング状であってもよく、一部が枝分かれしたもの、一部がループ状・リング状のものなどとしてもよい。樹脂シートおよび生地積層体の長さおよび幅は、用途や使用方法などに応じて、適宜設定できる。
【0070】
また、樹脂シートおよび生地積層体は、用途や使用方法などに応じて、把持部、掛合部、嵌合部、結合部などを有していてもよい。また、長さ・サイズ調節機能、補助機能などを有するものとしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【実施例0072】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0073】
(1)測定方法
・4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の組成
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0074】
(2)原料
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
・4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位(a2)の含有量:28モル%)ガラス転移温度30℃、135℃のデカリン中での極限粘度[η]1.5dL/g、MFR10g/10min
【0075】
[熱可塑性エラストマー(B)]
・熱可塑性エラストマー(B)-1:「ハイブラー 7311F」水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体(SEEPS)、クラレ社製、ショアA硬度A41
・熱可塑性エラストマー(B)-2:「セプトン 2004F」水添スチレン・イソプレンブロック共重合体(SEPS)クラレ社製、ショアA硬度A67
・熱可塑性エラストマー(B)-3:「タフテック H1272」鉱油含有スチレン系エラストマーコンパウンド、旭化成社製、ショアA硬度A35、鉱油含有量36質量%
・熱可塑性エラストマー(B)-4:「アーネストン CJ102NS」鉱油含有スチレン系エラストマーコンパウンド、クラレプラスチックス社製、ショアA硬度A35、鉱油含有量45質量%
・熱可塑性エラストマー(B)-5:「アーネストン JH28NS」鉱油含有スチレン系エラストマーコンパウンド、クラレプラスチックス社製、ショアA硬度A37、鉱油含有量55質量%
・熱可塑性エラストマー(B)-6:「クレイトン G4609」鉱油含有スチレン系エラストマーコンパウンド、クレイトンポリマージャパン社製、ショアA硬度A22、鉱油含有量45質量%
【0076】
[その他]
・発泡剤1:「EE275F」ポリスレン、永和化成社製
・天然ゴムバンド1;「ラテックスバンドEX スーパーハード」IGNIO社製、厚み0.7mm、幅25mm
・天然ゴムバンド2;「オーバンド#35」共和社製、厚み1.1mm、幅21mm
【0077】
(3)樹脂シートの作製
<実施例1>
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:50mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:32mm、Tダイ(ダイ幅:320mm、リップ開度:0.5~1.8mm)、冷却ロール(外径50mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、および引取機を備える装置を用いた。
まず、各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)でそれぞれドライブレンドし、得られた混合物をホッパーに投入した。シリンダー各部の温度120~250℃、スクリュー回転数40~70rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、シリンダーヘッド部の樹脂温度120~200℃で、押出量10~13kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出された発泡シートは、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~2.3m/分)、シート幅約300mmの樹脂シートを得た。
【0078】
<実施例2~5、比較例1~2>
表1に記載の原料、原料の配合に変更した以外は実施例1と同じ加工条件で樹脂シートを得た。
【0079】
(4)評価・測定
上記(3)で得られた実施例の各樹脂シートを用いて、以下の評価・測定を行った。また、樹脂シートを比較例のゴムバントに変えて同様の評価・測定を行った。結果を、表1に示した。
【0080】
[伸長回復試験]
各樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように試験片を作成し、初期のチャック間距離30mm、伸長時のチャック間距離45mmとして、環境温度23℃、変形速度1000%/分で伸長回復試験をおこない、横軸を引張歪量(%)、縦軸を引張応力(MPa)とした引張曲線を得た。図1~3に引張曲線を示す。
さらに、引張歪量が30%時の往路の引張応力M1と、復路の引張応力M2の割合(M2/M1×100)(%)、引張歪量が10%時の往路の引張応力(MPa)、引張応力(MPa)の最大値、引張歪量が40%時の復路の引張応力(MPa)についてもそれぞれ求めた。
また、上記の変形速度を100%/分、500%/分に変更して、同様の試験を行い、各変形速度における(M2’/M1’×100)(%)、(M2’’/M1’’×100)(%)をそれぞれ求めた。
【0081】
[永久ひずみ]
各樹脂シートを用いて、長尺方向が当該樹脂シートのMD方向となるように25mm幅の試験片を作成し、標線(初期の標線間距離L0=50mm)を設けた。初期のチャック間距離100mm、伸長時のチャック間距離200mm、引張速度300mm/分、環境温度23℃、で引張り、伸長した状態で20分間保持した後、直ちに初期チャック間距離まで300mm/分で戻し、試験片を取り外し、平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1を測定した。初期の標線間距離と前記平坦な台上に1時間静置した後の標線間距離L1の変化率(L1-L0)/L0(%)を永久ひずみとした。
【0082】
[密度]
ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された樹脂シートの重量から算出した。
【0083】
[伸長時と収縮時に適度な負荷の評価]
樹脂シートを50mm幅×1m長さに裁断し、得られた長尺シートを、5人のパネラー(20代~60代の男性)が両手で持って、最大伸長長さが約1.5mになるように30回伸縮させて腕のストレッチ運動を行い、以下の基準に従い5人それぞれが評価し、もっとも票数が多かったものを評価結果とした。
(基準)
A:腕に軽度の疲労を感じつつも、収縮時(復路)に負荷も程よく、運動ができた
B:伸長時(往路)での負荷が弱めであったり、収縮時(復路)での負荷が強めであった
C1:収縮時(復路)に力がかかりすぎて腕に負担がかかった
C2:伸長時(往路)に負荷がかからず、ストレッチ運動にならなかった
【0084】
【表1】
図1
図2
図3