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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145793
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】酒類含有チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20241004BHJP
   A23G 1/36 20060101ALI20241004BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20241004BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A23G1/32
A23G1/36
A23G1/40
A23G1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058295
(22)【出願日】2023-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年11月15日に株式会社ロッテのウェブサイトにて通信販売 2.令和4年11月15日に青木酒造株式会社に販売 3.令和4年12月8日に株式会社上越観光開発に販売 4.令和5年1月12日に株式会社ロッテのウェブサイトにてプロモーション 5.令和5年1月18日に株式会社近鉄百貨店に販売
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山田 麗
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB04
4B014GE01
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GG16
4B014GP02
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】保形性が良いため製造適性が良好であり、酒類の風味が十分に感じられる酒類含有チョコレートを提供すること。
【解決手段】1つの層内にチョコレート生地と、酒類とを含む酒類含有チョコレートであって、前記1つの層内に、第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、前記第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下であり、前記第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下である、酒類含有チョコレートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの層内にチョコレート生地と、酒類とを含む酒類含有チョコレートであって、
前記1つの層内に、第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下であり、
前記第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下である、酒類含有チョコレート。
【請求項2】
前記1つの層内に前記第1の水あめと場合により前記チョコレート生地由来ではない植物油脂とを含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記第1の水あめの量が、1.0質量%以上3.0質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項3】
前記1つの層内に前記第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂とを含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記第2の水あめの量が、3.0質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項4】
前記1つの層内に前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量が、2.2質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項5】
前記1つの層内に場合により前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記酒類の量が、18.5質量%以上20.1質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項6】
水分の含有量が、17.0質量%以上18.4質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項7】
アルコール分の含有量が、2.3質量%以上2.6質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項8】
前記チョコレート生地由来ではない植物油脂が、ヒマワリ油およびパーム油を含む、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項9】
前記酒類が、日本酒、ビール、ワイン、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、ラムおよびリキュールからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項10】
前記酒類が、日本酒である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項11】
前記チョコレート生地が、セミビターチョコレートを含む請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項12】
水分の含有量が、17.0質量%以上18.4質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【請求項13】
アルコール分の含有量が、2.3質量%以上2.6質量%以下である、請求項1に記載の酒類含有チョコレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒類含有チョコレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒類を含有するチョコレートとして、シェル型のチョコレートが知られていた。シェル型のチョコレートとは、例えば、チョコレート層を外層とし、内層に酒類を含有する層が形成されているチョコレートのことである。このようなシェル型のチョコレートは、外層のチョコレート層が硬いのに対し、内層の酒類を含有する層は柔らかく、外層と内層で食感に差異を感じるものである。最近は、食感の高いチョコレートが要求されるようになっていて、口どけが滑らかなチョコレートが開発されている。
【0003】
特許文献1は、含水チョコレート菓子の文献であり、1つの層からなるチョコレートについて、実施例などで、含水原料としてイチゴ果汁やソルビトールを含み、水分含有量が10.1%以下であることが記載されている。一見、これを応用して、1つの層からなる酒類含有チョコレートを作製すれば、酒類含有チョコレートは、シェル型では得られないような、全体として滑らかな食感が得られ、かつ、酒類の風味を十分に感じることができるかのように思われる。しかし、酒類含有チョコレートには、いくつかの課題があった。
【0004】
1つの層からなり、酒類の風味が豊かな酒類含有チョコレートとして、洋酒を含有しているガナッシュやトルッフェルなどが知られている。通常、ガナッシュクリーム、トルッフェルクリームといわれるものは、生クリーム、バター、シロップなどを加温、沸騰させた後に加熱を止め、細かく切り刻んだチョコレートを加えて攪拌乳化することによりエマルジョンとし、冷えてから洋酒などを加えて製造される。このガナッシュやトルッフェルは、常温では保形性が悪く、製造が難しいものであり、工場での生産には向かないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/111270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガナッシュやトルッフェルに限らず、一般的に、酒類の風味を十分に感じられるほど、酒類含有チョコレートが酒類を含んでいると、酒類含有チョコレートは、含まれる水分が多く柔らかいため、保形性が悪く、製造適性をえられないという問題があった。そこで、本発明では、保形性が良いため製造適性が良好であり、酒類の風味が十分に感じられる酒類含有チョコレートを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
1つの層内にチョコレート生地と、酒類とを含む酒類含有チョコレートであって、
前記1つの層内に、第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下であり、
前記第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下である、酒類含有チョコレートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<一実施の形態>
本発明の一実施の形態は、酒類含有チョコレートに関する。
本発明の酒類含有チョコレートは、1つの層内にチョコレート生地と、酒類とを含む酒類含有チョコレートであって、前記1つの層内に、第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、前記第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下であり、前記第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下である。
1つの層内にチョコレート生地と酒類とを含み、さらに1つの層内に第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含むことで、酒類含有チョコレートは口どけが滑らかとなることができる。
以下、各項目について説明する。
【0009】
(チョコレート生地)
本発明の酒類含有チョコレートは、1つの層内にチョコレート生地を含む。チョコレート生地とはチョコレートの素材となる生地をいう。酒類含有チョコレートの製造に用いるチョコレート生地はココアバターを含み、好ましくはココアバターを10質量%以上含む。チョコレート生地が、セミビターチョコレートを含むことが好ましい。
【0010】
チョコレート生地の量と酒類の量と第1の水あめの量と第2の水あめの量とチョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対するチョコレート生地の量が、72.9質量%以上79.5質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートにチョコレートの風味を感じることができる。
【0011】
チョコレート生地は、カカオ豆由来の原料、ココアバター代用脂、甘味料、乳製品、油脂、香料、乳化剤などを原料として含むことができる。カカオ豆由来の原料として、ココアバター、カカオニブ、カカオマス、ココア粉末などを含むことができる。
【0012】
甘味料は糖類、糖アルコール、高甘味度甘味料を含む。糖類、糖アルコールの例は後述の糖類または/および糖アルコールで示す例と同じである。高甘味度甘味料の例として、ステビオシド、グリチルリチン酸、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ネオテーム、アリテームおよびこれらの混合物を挙げられる。
【0013】
乳製品として、牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、全粉乳、脱脂濃縮乳、乳清粉末、加糖練乳および、これらの混合物を例示できる。
【0014】
油脂は植物油脂および動物油脂を含み、植物油脂としては、パーム油、ヤシ油、大豆油、ヒマワリ油、玄糠油、糠油、オリーブ油、ブドウ種子油、クルミ油、杏仁油、バージンココナッツオイル、アボカド油、大麻油、亜麻油、アーモンドオイル、月見草油、キャノーラ油、綿実油、胡麻油あるいはこれらの混合物が例示でき、動物油脂としては、牛脂、豚脂、羊脂、魚油、または乳脂、あるいはこれらの混合物を例示できる。
【0015】
香料としては、天然香料、合成香料、組合せ香料、アルコール、これらの混合物を例示でき、好ましくは天然香料または合成香料であり、中でもバニラ香料、ミルク香料を挙げられる。
【0016】
乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を例示できる。
【0017】
チョコレート生地は一般的な方法に従って製造することができる。例として、以下の方法を挙げられる。砂糖10~60質量%、ココアバター類およびその他のカカオ由来の原料5~80質量%、粉乳15~40質量%、となるよう原料混合物を調製する。原料混合物を、レファイナーにより微粒化する。微粒化された原料混合物は、精練(コンチング)され、精練の後半の段階で、必要に応じ、香料、残りのココアバターおよび乳化剤などが添加されチョコレート生地として調製される。
【0018】
(酒類)
本発明の酒類含有チョコレートは、十分な酒類の風味を持たせる目的で、1つの層内に酒類を含む。酒税法第2条1項に、酒類とは、アルコール分1度以上の飲料であるとの規定があるが、本発明の酒類は、これに限らない。酒類は、日本酒、ビール、ワイン、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、ラムおよびリキュールからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、日本酒であることがより好ましい。
【0019】
チョコレート生地の量と酒類の量と第1の水あめの量と第2の水あめの量とチョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する酒類の量が、18.5質量%以上20.1質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートに酒類の風味を十分に感じることができる。
【0020】
(第1の水あめと第2の水あめ)
本発明の酒類含有チョコレートでは、酒類の風味を十分に感じられるほど酒類を多く含むため酒類含有チョコレートの水分の含有量が多いことが挙げられる。そこで、本発明の酒類含有チョコレートは、保形性があり、製造適性が良好なものであるために、第1の水あめ、または、第2の水あめとチョコレート生地由来ではない植物油脂を含む。
【0021】
第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下である。このようにすることで、酒類含有チョコレートの保形性は良好となる。還元澱粉加水分解物とは、澱粉を加水分解してできたものを、水素を用いた還元反応により糖アルコールとしたもので、例えば、高糖化還元水飴、低糖化還元水飴などが含まれる。還元澱粉加水分解物は、一般的に粘度が比較的低いのが特徴であるので、第1の水あめを含む酒類含有チョコレートは、水あめを含むにも拘らず、ベタつきがないという利点がある。
【0022】
1つの層内に第1の水あめと場合によりチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む場合、チョコレート生地の量と酒類の量と第1の水あめの量とチョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する第1の水あめの量が、1.0質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、1.6質量%以上2.4質量%以下であることがより好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートは、保形性があり、製造適性が良好なものとすることができる。
【0023】
第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下であり、12.0質量%以上18.0質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートの保形性は良好となる。酵素糖化水飴とは、澱粉を、酵素を用いて糖化したものであり、例えば、澱粉を酸液化または耐熱性α-アミラーゼを添加して105℃で液化したのち、60~70℃でβ-アミラーゼで糖化し、脱色、脱塩後濃縮して製造される。酵素糖化水飴は、一般的に粘度が比較的高いのが特徴であるので、第2の水あめを含む酒類含有チョコレートは、多少のベタつきがあり、良好な製造適性を得るためには、植物油脂の添加を必要とする。
【0024】
1つの層内に第2の水あめとチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む場合、チョコレート生地の量と酒類の量と第2の水あめの量とチョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する第2の水あめの量が、3.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、3.2質量%以上4.8質量%以下であることがより好ましく、3.2質量%以上4.4質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートは、保形性があり、製造適性が良好なものとすることができる。
【0025】
(チョコレート生地由来ではない植物油脂)
本発明の酒類含有チョコレートが、第2の水あめを含む場合、チョコレート生地由来ではない植物油脂も含む。本発明の酒類含有チョコレートが、第1の水あめを含む場合、チョコレート生地由来ではない植物油脂を含んでいることが好ましい。チョコレート生地由来ではない植物油脂を含むことで、酒類含有チョコレートの保形性を一層高め、製造適性をさらに良好なものとすることができる。
【0026】
チョコレート生地由来ではない植物油脂は、例えば、パーム油、ヒマワリ油、菜種油、コーン油、ヤシ油、大豆油、ヒマワリ油、玄糠油、糠油、オリーブ油、ブドウ種子油、クルミ油、杏仁油、バージンココナッツオイル、アボカド油、大麻油、亜麻油、アーモンドオイル、月見草油、キャノーラ油、綿実油、胡麻油あるいはこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、チョコレート生地由来ではない植物油脂は、パーム油とヒマワリ油を含むことが好ましい。
【0027】
1つの層内にチョコレート生地由来ではない植物油脂を含む場合は、チョコレート生地の量と酒類の量と第1の水あめの量と第2の水あめの量とチョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対するチョコレート生地由来ではない植物油脂の量が、2.2質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートの保形性を一層高め、製造適性をさらに良好なものとすることができる。
【0028】
(その他)
本発明の酒類含有チョコレートは、保形性による製造適性や酒類風味などに影響しない範囲で、以下の添加物を含んでいてもよい。その添加物とは、グリセリン、乳化剤、香料、副材料、安定剤、酸味料、消泡剤、整味料、保存料、酸化防止剤などである。ここで、副材料とは例えば、アーモンドやナッツなどのことである。
【0029】
(酒類含有チョコレートの作製方法)
酒類含有チョコレートの作製方法を説明する。まず、原料である、チョコレート生地、酒類、水あめ、場合によりチョコレート生地由来ではない植物油脂などをホモミキサーに投入し、混合する。混合したものを、機械を用いてシート状に充填し、敷き均す。そして、冷蔵室で1日間冷却する。冷却したものに、ココアパウダーを噴霧し、ピアノ線を用いて一口サイズに裁断する。
【0030】
本発明の酒類含有チョコレートは、水分の含有量が、17.0質量%以上18.4質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、酒類含有チョコレートは、保形性があり、製造適性が良好なものとすることができる。なお、水分の含有量は、材料の組成比から計算して求めてもよいが、例えば加熱乾燥法などの一般的な分析方法により求めることができる。
【0031】
酒類の風味を感じる成分とは、例えば酒類に含まれるアルコール分であり、酒類含有チョコレートにある程度のアルコール分が含まれることが必要となる。本発明の酒類含有チョコレートはアルコール分の含有量が、2.3質量%以上2.6質量%以下であることが好ましい。ただし、酒類の風味は、アルコール分の含有量に限られない。なお、アルコール分は、材料の組成比から計算して求めてもよいが、例えば酸化法などの一般的な分析方法により求めることができる。
【実施例0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0033】
<材料>
(チョコレート生地)
実施例および比較例で使用したチョコレート生地は、セミビターチョコレートを用いた。チョコレート生地中のココアバターの含有量が10.8質量%で、ひまわり油とパーム油とシアバターとの混合物の含有量が4.3質量%であった。
(酒類)
実施例および比較例で使用した酒類は、日本酒であり、具体的には、青木酒造(株)製の「雪男(登録商標)」とした。
【0034】
(第1の水あめ)
実施例で使用した第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水あめ中の水分が30.0質量%のものとした。
(第2の水あめ)
実施例および比較例で使用した第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水あめ中の水分が15.0質量%のものとした。
(チョコレート生地由来ではない植物油脂)
実施例で使用したチョコレート生地由来ではない植物油脂は、パーム油とひまわり油との混合物とした。
【0035】
<評価方法>
(製造適性の試験)
実施例および比較例の酒類含有チョコレートを作製し、製造適性について判断した。保形性がありベタつきがなく、製造がしやすい例をA、保形性がありベタつきがないが、全体的に柔らかく製造しにくい例をB、保形性はあるがベタつきがある例をC、保形性がない例をDと評価した。なお、評価がA~Cの例を製造適性が良好であるとした。
【0036】
(酒類風味の官能評価)
実施例および比較例の酒類含有チョコレートを作製し、酒類風味について評価した。日本酒としての風味を著しく感じられる例をA、日本酒としての風味を十分に感じられる例をBと評価した。
【0037】
(実施例1)
79.5質量部のチョコレート生地と、18.5質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめとを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は17.0質量%であり、アルコール分は2.3質量%であった。製造適性の試験の評価はBであり、酒類風味の試験の評価はBであった。
【0038】
(実施例2)
77.9質量部のチョコレート生地と、20.1質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめとを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は18.4質量%であり、アルコール分は2.5質量%であった。製造適性の試験の評価はBであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0039】
(実施例3)
77.2質量部のチョコレート生地と、18.5質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめと、2.3質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は17.0質量%であり、アルコール分は2.3質量%であった。製造適性の試験の評価はAであり、酒類風味の試験の評価はBであった。
【0040】
(実施例4)
75.6質量部のチョコレート生地と、20.1質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめと、2.3質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は18.3質量%であり、アルコール分は2.5質量%であった。製造適性の試験の評価はAであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0041】
(実施例5)
74.5質量部のチョコレート生地と、18.5質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめと、5.0質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は17.0質量%であり、アルコール分は2.3質量%であった。製造適性の試験の評価はAであり、酒類風味の試験の評価はBであった。
【0042】
(実施例6)
72.9質量部のチョコレート生地と、20.1質量部の酒類と、2.0質量部の第1の水あめと、5.0質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は18.2質量%であり、アルコール分は2.6質量%であった。製造適性の試験の評価はAであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0043】
(実施例7)
75.2質量部のチョコレート生地と、18.5質量部の酒類と、4.0質量部の第2の水あめと、2.3質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は17.0質量%であり、アルコール分は2.3質量%であった。製造適性の試験の評価はCであり、酒類風味の試験の評価はBであった。
【0044】
(実施例8)
73.7質量部のチョコレート生地と、20.1質量部の酒類と、4.0質量部の第2の水あめと、2.2質量部のチョコレート生地由来ではない植物油脂とを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は18.3質量%であり、アルコール分は2.5質量%であった。製造適性の試験の評価はCであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0045】
(比較例1)
69.4質量部のチョコレート生地と、20.6質量部の酒類と、10.0質量部の第2の水あめとを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は19.1質量%であり、アルコール分は3.0質量%であった。製造適性の試験の評価はDであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0046】
(比較例2)
77.5質量部のチョコレート生地と、18.5質量部の酒類と、4.0質量部の第2の水あめとを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は17.0質量%であり、アルコール分は2.3質量%であった。製造適性の試験の評価はDであり、酒類風味の試験の評価はBであった。
【0047】
(比較例3)
75.9質量部のチョコレート生地と、20.1質量部の酒類と、4.0質量部の第2の水あめとを含む酒類含有チョコレートを作製した。酒類含有チョコレート中の水分は18.3質量%であり、アルコール分は2.5質量%であった。製造適性の試験の評価はDであり、酒類風味の試験の評価はAであった。
【0048】
実施例および比較例について、まとめたものを以下の表1に示す。実施例5と実施例6は推定値であり、それ以外の例は、実際に試験を行って得た実験値である。
【0049】
【表1】
【0050】
本発明は以下の実施形態を含む。
(1)
1つの層内にチョコレート生地と、酒類とを含む酒類含有チョコレートであって、
前記1つの層内に、第1の水あめ、または、第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記第1の水あめは、還元澱粉加水分解物であり、水分の含有量が25.0質量%以上35.0質量%以下であり、
前記第2の水あめは、酵素糖化水飴であり、水分の含有量が10.0質量%以上20.0質量%以下である、酒類含有チョコレート。
(2)
前記1つの層内に前記第1の水あめと場合により前記チョコレート生地由来ではない植物油脂とを含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記第1の水あめの量が、1.0質量%以上3.0質量%以下である、(1)に記載の酒類含有チョコレート。
(3)
前記1つの層内に前記第2の水あめと前記チョコレート生地由来ではない植物油脂とを含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記第2の水あめの量が、3.0質量%以上5.0質量%以下である、(1)または(2)に記載の酒類含有チョコレート。
(4)
前記1つの層内に前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量が、2.2質量%以上5.0質量%以下である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(5)
前記1つの層内に場合により前記チョコレート生地由来ではない植物油脂を含み、
前記チョコレート生地の量と前記酒類の量と前記第1の水あめの量と前記第2の水あめの量と前記チョコレート生地由来ではない植物油脂の量との合計量に対する前記酒類の量が、18.5質量%以上20.1質量%以下である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(6)
水分の含有量が、17.0質量%以上18.4質量%以下である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(7)
アルコール分の含有量が、2.3質量%以上2.6質量%以下である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(8)
前記チョコレート生地由来ではない植物油脂が、ヒマワリ油およびパーム油を含む、(1)~(7)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(9)
前記酒類が、日本酒、ビール、ワイン、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、ラムおよびリキュールからなる群より選ばれる少なくとも1つである、(1)~(8)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(10)
前記酒類が、日本酒である、(1)~(9)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(11)
前記チョコレート生地が、セミビターチョコレートを含む(1)~(10)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(12)
水分の含有量が、17.0質量%以上18.4質量%以下である、(1)~(11)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。
(13)
アルコール分の含有量が、2.3質量%以上2.6質量%以下である、(1)~(12)のいずれか1つに記載の酒類含有チョコレート。