(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145797
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】CO2排出量算出システム、CO2排出量算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058300
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102728
【氏名又は名称】株式会社NTTデータグループ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築島 幸男
(72)【発明者】
【氏名】松川 泉
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】細川 徳之
(72)【発明者】
【氏名】生田目(千賀) 薫
(72)【発明者】
【氏名】臼井(八重野) 文香
(72)【発明者】
【氏名】星 さやか
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】CO
2排出量の算出精度を向上すること及び算出結果に対して企業努力を反映することが可能なCO
2排出量算出システム、CO
2排出量算出方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO
2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO
2排出量を算出するCO
2排出量算出部、を備えるCO
2排出量算出システム。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出部、
を備えるCO2排出量算出システム。
【請求項2】
前記定格電力値と、前記購入金額情報と、前記稼働状況情報と、前記排出原単位とに基づき、新排出原単位を算出する新排出原単位算出部、
をさらに備え、
前記CO2排出量算出部は、前記新排出原単位と前記購入金額情報とを乗じて前記CO2排出量を算出する、
請求項1に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項3】
前記新排出原単位算出部は、前記定格電力値が既知である複数の前記システムごとに前記定格電力値を前記購入金額情報で除して第1の傾きを算出し、算出された複数の前記第1の傾きを平均した第2の傾きを算出し、前記第2の傾きと、前記稼働状況情報と、前記排出原単位とを乗じた値を前記新排出原単位として算出する、
請求項2に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項4】
前記新排出原単位算出部によって算出される前記第2の傾きに対応する切片の値を記憶する記憶部、
をさらに備え、
CO2排出量算出部は、前記新排出原単位と前記購入金額情報とを乗じて算出した前記CO2排出量に対して、前記切片に対応する前記CO2排出量も加える、
請求項3に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項5】
前記定格電力値と前記購入金額情報との関係を学習した推定モデルに対して、前記CO2排出量の算出対象である前記システムの前記購入金額情報を入力し、前記推定モデルから出力される定格電力値を、前記算出対象である前記システムの前記定格電力値として推定する定格電力推定部、
をさらに備え、
前記新排出原単位算出部は、推定された前記定格電力値と、前記稼働状況情報と、前記排出原単位とを乗じた値を前記新排出原単位として算出する、
請求項2に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項6】
コンピュータが、
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出過程、
を含むCO2排出量算出方法。
【請求項7】
コンピュータを、
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出部、
を備えるCO2排出量算出システム。
【請求項9】
前記CO2排出量算出部は、前記再生可能エネルギーの購入量に基づき、前記顧客の総電力消費量における化石燃料による電力消費量の比率を算出し、前記第1のCO2排出量と算出した前記比率とを乗じて前記第2のCO2排出量を算出する、
請求項8に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項10】
前記CO2排出量の算出対象である前記顧客の前記総電力消費量及び前記再生可能エネルギーの購入量は、前記顧客から前記総電力消費量及び前記購入量の報告を受けた第三者によって管理されている外部データベースから取得される、
請求項9に記載のCO2排出量算出システム。
【請求項11】
コンピュータが、
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出過程、
を含むCO2排出量算出方法。
【請求項12】
コンピュータを、
事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2排出量算出システム、CO2排出量算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、温室効果ガスを多量に排出する者(特定排出者)は、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられている。特定排出者に該当する事業者のうち、例えばITシステムを販売する事業者の場合、顧客が購入したITシステムを使用することで排出される二酸化炭素(以下、「CO2」とも称される)の排出量を、当該ITシステムを販売した事業者が排出したものとして報告する必要がある。
【0003】
CO2排出量を算出する技術として、例えば、機器ごとの稼働記録と消費電力から使用電力量を算出し、当該使用電力量にCO2排出係数を乗じることで、CO2排出量を算出する技術が開示されている(下記特許文献1参照)。当該技術は、顧客が自身のCO2排出量を算出するための技術であり、事業者が顧客のCO2排出量を把握できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
事業者が顧客のCO2排出量を把握するための手法として、活動量と排出原単位とに基づき算出する手法がある。しかしながら、当該手法では、簡易的で利便性に優れている反面、実際のCO2排出量と比べて算出結果が過大となることや、省エネ活動や再生可能エネルギーの活用などによる企業努力が反映されないことが課題としてあった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、CO2排出量の算出精度を向上すること及び算出結果に対して企業努力を反映することが可能なCO2排出量算出システム、CO2排出量算出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係るCO2排出量算出システムは、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出部、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る、CO2排出量算出方法は、コンピュータが、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出過程、を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、前記顧客が購入した前記システムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出手段、として機能させる。
【0010】
本発明の一態様に係るCO2排出量算出システムは、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出部、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係る、CO2排出量算出方法は、コンピュータが、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出過程、を含む。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、前記顧客が購入した前記システムの購入金額情報と、前記システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、前記顧客が再生可能エネルギーを導入せずに前記システムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量と、前記顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、前記顧客が前記再生可能エネルギーを導入して前記システムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量を算出するCO2排出量算出手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、CO2排出量の算出精度を向上すること及び算出結果に対して企業努力を反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るCO
2排出量算出システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るCO
2排出量の算出式の概要を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係るCO
2排出量の算出式の詳細を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係るCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図6】第1の実施形態に係るデータベース更新時のCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図7】第1の実施形態に係る第2の変形例における購入金額と定格電力との関係の一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る第2の変形例におけるCO
2排出量算出サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】第1の実施形態に係る第2の変形例における学習及び推定に関する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図10】第1の実施形態に係る第3の変形例における購入金額と定格電力との関係の一例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態に係る第3の変形例におけるCO
2排出量算出サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】第1の実施形態に係る第3の変形例におけるCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図13】第2の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図14】第2の実施形態に係るCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0016】
<<1.第1の実施形態>>
図1から
図12を参照して、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、温室効果ガスを多量に排出する者(特定排出者)によって排出された二酸化炭素(以下、「CO
2」とも称される)の排出量を算出するCO
2排出量算出システムについて説明する。以下では、特定排出者が顧客に対してITシステム(IT機器)を販売する事業者であり、顧客が購入したITシステムを使用するために再生可能エネルギーを導入していない例を一例として第1の実施形態について説明する。なお、顧客が購入したITシステムを使用することで排出されるCO
2排出量が、当該ITシステムを販売した事業者が排出したCO
2排出量として算出される。
【0017】
<1-1.CO
2排出量算出システムの構成>
まず、
図1から
図3を参照して、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出システムの構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すCO
2排出量算出システム1は、ユーザ端末10と、CO
2排出量算出サーバ20とを備える。ユーザ端末10とCO
2排出量算出サーバ20は、ネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。ネットワークNWには、情報の授受を行うための構成として、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話網(携帯電話網、固定電話網等)、地域IP(Internet Protocol)網、インターネット等が適用される。
【0018】
(1)ユーザ端末10
ユーザ端末10は、ユーザ(例えば事業者)が使用する端末である。ユーザ端末10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、又はPC(Personal Computer)などである。
【0019】
ユーザ端末10には、ユーザがCO2排出量算出システム1を利用するためのアプリケーション(以下、「CO2排出量算出アプリ」とも称される)によって、CO2排出量算出のための画面が表示される。ユーザは、CO2排出量算出アプリによってユーザ端末10に表示される画面を操作することで、CO2排出量の算出に必要な情報の登録やCO2排出量の算出を行うことができる。
【0020】
なお、CO2排出量算出アプリの機能は、ユーザ端末10にCO2排出量算出アプリをインストールすること(即ちネイティブアプリ)で提供されてもよいし、Webシステム(即ちWebアプリ)によって提供されてもよい。Webアプリの場合、CO2排出量算出アプリはサーバで管理されており、その機能はWebブラウザを介して提供される。
【0021】
(2)CO2排出量算出サーバ20
CO2排出量算出サーバ20は、CO2排出量を算出するサーバであり、CO2排出量算出装置の一例である。CO2排出量算出サーバ20は、1つ又は複数のサーバ(例えば、クラウドサーバ)で構成される。
【0022】
ここで、
図2を参照して、CO
2排出量の算出式の概要について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るCO
2排出量の算出式の概要を示す図である。
【0023】
図2に示すように、従来は、金額ベースの算出式「IT機器1台分のCO
2排出量=排出原単位(t-CO
2eq/百万円)×購入金額(円)×変換係数」を用いて、IT機器1台分のCO
2排出量が算出されていた。変換係数は、例えば事業者ごとに任意の値が設定され用いられていた。しかしながら、金額ベースの算出式では、簡易的で利便性に優れている反面、実際のCO
2排出量と比べて算出結果が過大となることや、省エネ活動や再生可能エネルギーの活用などによる企業努力が反映されないことが課題としてあった。
そこで、第1の実施形態では、金額ベースの算出式を電力ベースの算出式に変換して用いるようにした。例えば、
図2に示す電力ベースの算出式「IT機器1台分のCO
2排出量=新排出原単位(t-CO
2eq/百万円)×購入金額(円)」のように、新しい排出原単位(以下、「新排出原単位」とも称される)を用いるようにした。
【0024】
ここで、
図3を参照して、CO
2排出量の算出式の詳細について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るCO
2排出量の算出式の詳細を示す図である。
【0025】
図3に示すように、まず、従来から用いられていた金額ベースの算出式を、「IT機器1台分のCO
2排出量=システム定格電力(kWh)の平均値×平均使用率×台数×法定耐用年数×排出原単位(kg-CO
2eq/kWh)」のように変換する(ステップS1)。なお、ステップS1では、排出原単位が、購入金額(百万円あたり)に対するCO
2排出量を示す排出原単位(t-CO
2eq/百万円)から、電気の使用量(1kWhあたり)に対するCO
2排出量を示す排出原単位(kg-CO
2eq/kWh)に変更されている。
次いで、ステップS1の算出式を、「IT機器1台分のCO
2排出量={システム定格電力(kWh)/システム購入金額(百万円)}の平均値×販売金額×平均使用率×法定耐用年数×排出原単位(kg-CO
2eq/kWh)」のように変換する(ステップS2)。ステップS2では、販売金額とシステム性能と定格電力(以下、「定格電力値」とも称される))が比例関係にあるという仮定を踏まえ、販売金額に応じて定格電力が増減するよう算出式を変換している。なお、ステップS2の販売金額は、システム販売金額×台数によって算出される。
次いで、ステップS2の算出式を、「IT機器1台分のCO
2排出量=新排出原単位(t-CO
2eq/百万円)×購入金額(円)」のように変換する(ステップS3)。新排出原単位は、ステップS2の算出式の一部パラメータを集約し、「{システム定格電力(kWh)/システム購入金額(百万円)}の平均値×平均使用率×法定耐用年数×排出原単位(kg-CO
2eq/kWh)/1000」によって算出される。なお、算出式における「平均使用率×法定耐用年数」は、システムの稼働状況を示す値でもある。
このように、算出式に定格電力を用いることで、システム(機器)の仕様の違いによるCO
2排出量の変化が反映されるようになった。これにより、算出結果に対して企業努力を反映することが可能となった。
【0026】
<1-2.CO
2排出量算出サーバの機能構成>
以上、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出システム1の構成について説明した。続いて、
図4を参照して、CO
2排出量算出サーバ20の機能構成について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、CO
2排出量算出サーバ20は、通信部210と、記憶部220と、制御部230とを備える。
【0027】
(1)通信部210
通信部210は、各種情報を送受信する機能を有する。例えば、通信部210は、ネットワークNWを介してユーザ端末10と通信を行い、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値、顧客が購入したシステムの購入金額を示す購入金額情報、システムの平均使用率、システムの法定耐用年数、システム(機器)ごとの排出原単位などを示す情報を受信する。
【0028】
(2)記憶部220
記憶部220は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部220は、CO
2排出量算出サーバ20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
記憶部220は、記憶する情報に応じたデータベース(DB)を備える。例えば、
図4に示すように、記憶部220は、定格電力DB2201と、購入金額DB2202と、平均使用率DB2203と、法定耐用年数DB2204と、排出原単位DB2205と、新排出原単位DB2206と、CO
2排出量DB2207とを備える。
【0029】
定格電力DB2201は、定格電力値(Wh)を記憶するデータベースである。定格電力DB2201には、例えば、システム又は機器ごとに定格電力値が記憶される。
購入金額DB2202は、購入金額(円)に関する情報(購入金額情報)を記憶するデータベースである。購入金額DB2202には、例えば、システム又は機器ごとに販売金額、顧客の購入台数、購入金額(販売金額×台数)などが記憶される。
平均使用率DB2203は、平均使用率(%)を記憶するデータベースである。平均使用率DB2203には、例えば、システム又は機器ごとに平均使用率(平均受電率)が記憶される。
法定耐用年数DB2204は、法定耐用年数(年)を記憶するデータベースである。法定耐用年数DB2204には、例えば、システム又は機器ごとに法定耐用年数が記憶される。
排出原単位DB2205は、排出原単位を記憶するデータベースである。排出原単位(t-CO2eq/kWh)は、電力事業者ごとの値であってもよいし、各電力事業者の排出原単位の平均値であってもよいし、国が定めた代表値であってもよい。
新排出原単位DB2206は、新排出原単位(t-CO2eq/百万円)を記憶するデータベースである。
CO2排出量DB2207は、CO2排出量(t-CO2)を記憶するデータベースである。
【0030】
(3)制御部230
制御部230は、CO
2排出量算出サーバ20の動作全般を制御する機能を有する。制御部230は、例えば、CO
2排出量算出サーバ20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図4に示すように、制御部230は、取得部2301と、新排出原単位算出部2302と、CO
2排出量算出部2303と、出力処理部2304とを備える。
【0031】
取得部2301は、各種情報を取得する機能を有する。取得部2301は、ユーザ端末10から送信されて通信部210が受信した各種情報を取得し、記憶部220の各DBに記憶させる。また、取得部2301は、後述する各処理にて必要な情報を、記憶部220の各DBから取得する。
【0032】
新排出原単位算出部2302は、新排出原単位を算出する機能を有する。例えば、新排出原単位算出部2302は、定格電力値と、購入金額情報と、稼働状況を示す稼働状況情報(平均使用率及び法定耐用年数を示す情報)と、排出原単位とに基づき、新排出原単位を算出する。
具体的に、新排出原単位算出部2302は、まず、定格電力値が既知である複数のシステムごとに定格電力値を購入金額情報が示す購入金額で除して第1の傾きを算出する。次いで、新排出原単位算出部2302は、算出された複数の第1の傾きを平均した第2の傾きを算出する。そして、新排出原単位算出部2302は、第2の傾きと、稼働状況情報が示す稼働状況と、排出原単位とを乗じた値を新排出原単位として算出する。
事業者が取り扱うシステムの定格電力値は、メーカーなどに問い合わせることで教えてもらえるが、中には教えてもらえない場合があり、この場合にはそのシステムの定格電力値が未知のままとなってしまう。そこで、定格電力値と購入金額が比例関係にあることを利用して、この比例関係を示す傾き(第1の傾き)を求めることで、定格電力値が未知であっても購入金額と傾きから定格電力値を求めることが可能となる。さらに、複数のシステムについて求めた複数の傾き(第1の傾き)の平均である傾き(第2の傾き)を求めて使うことで、より精度高く定格電力値を推定することが可能となる。
なお、新排出原単位算出部2302は、予め各種DBに記憶されている各種情報を用いて新排出原単位を算出し、新排出原単位DB2206に記憶しておく。また、新排出原単位の算出に用いる情報が記憶されているDBのいずれかが更新された場合、新排出原単位算出部2302は、更新後の情報を用いて新排出原単位を算出し、新排出原単位DB2206を更新する。
【0033】
CO2排出量算出部2303は、CO2排出量を算出する機能を有する。例えば、CO2排出量算出部2303は、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、顧客が購入したシステムの購入金額情報と、システムの稼働状況情報(平均使用率及び法定耐用年数)と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、顧客が購入したシステムを使用することで排出されるCO2排出量を算出する。具体的に、CO2排出量算出部2303は、新排出原単位算出部2302によって算出された新排出原単位と購入金額情報が示す購入金額とを乗じてCO2排出量を算出する。
【0034】
出力処理部2304は、各種情報を出力する機能を有する。例えば、出力処理部2304は、CO2排出量算出部2303によって算出されたCO2排出量を出力する。具体的に、出力処理部2304は、通信部210を介して、ユーザ端末10へCO2排出量を出力(送信)し、ユーザ端末10にCO2排出量を表示させる。
【0035】
<1-3.処理の流れ>
以上、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20の機能構成について説明した。続いて、
図5、
図6を参照して、第1の実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図5は、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図6は、第1の実施形態に係るデータベース更新時のCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。なお、
図6には、一例として、排出原単位DB2205を更新する場合の例が示されている。
【0036】
(1)CO
2排出量算出処理の流れ
図5に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、CO
2排出量の算出操作を行う(ステップS101)。ユーザ端末10は、ユーザからの操作を受け付けると、CO
2排出量の算出要求をCO
2排出量算出サーバ20へ送信する(ステップS102)。
CO
2排出量算出サーバ20の取得部2301は、通信部210がユーザ端末10からCO
2排出量の算出要求を受信すると、購入金額DB2202から購入金額情報を取得し(ステップS103)、新排出原単位DB2206から新排出原単位を取得する(ステップS104)。
次いで、CO
2排出量算出サーバ20のCO
2排出量算出部2303は、取得部2301が取得した購入金額情報が示す購入金額と新排出原単位とを乗じてCO
2排出量を算出する(ステップS105)。算出後、CO
2排出量算出部2303は、算出したCO
2排出量でCO
2排出量DB2207を更新し(ステップS106)、算出したCO
2排出量を通信部210からユーザ端末10へ出力(送信)する(ステップS107)。
ユーザ端末10は、CO
2排出量算出サーバ20からCO
2排出量を受信すると、受信したCO
2排出量を表示する(ステップS108)。ユーザは、ユーザ端末10に表示されたCO
2排出量を確認する(ステップS109)。
【0037】
(2)データベース更新時のCO
2排出量算出処理の流れ
図6に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、排出原単位の更新操作を行う(ステップS201)。ユーザ端末10は、ユーザからの操作を受け付けると、排出原単位の更新要求と共に更新後の排出原単位をCO
2排出量算出サーバ20へ送信する(ステップS202)。
CO
2排出量算出サーバ20の取得部2301は、通信部210がユーザ端末10から排出原単位の更新要求を受信すると、排出原単位DB2205を更新する(ステップS203)。更新後、取得部2301は、排出原単位DB2205から更新後の排出原単位を取得し(ステップS204)、定格電力DB2201から定格電力値を取得し(ステップS205)、購入金額DB2202から購入金額情報を取得し(ステップS206)、平均使用率DB2203から平均使用率を取得し(ステップS207)、法定耐用年数DB2204から法定耐用年数を取得する(ステップS208)。
次いで、CO
2排出量算出サーバ20の新排出原単位算出部2302は、取得部2301によって取得された各種情報に基づき新排出原単位を算出し(ステップS209)、新排出原単位DB2206を更新する(ステップS210)。
次いで、CO
2排出量算出サーバ20のCO
2排出量算出部2303は、取得部2301が取得した購入金額と、新排出原単位算出部2302によって算出された最新の新排出原単位とを乗じてCO
2排出量を算出する(ステップS211)。算出後、CO
2排出量算出部2303は、算出したCO
2排出量でCO
2排出量DB2207を更新し(ステップS212)、算出したCO
2排出量を通信部210からユーザ端末10へ出力(送信)する(ステップS213)。
ユーザ端末10は、CO
2排出量算出サーバ20からCO
2排出量を受信すると、受信したCO
2排出量を表示する(ステップS214)。ユーザは、ユーザ端末10に表示されたCO
2排出量を確認する(ステップS215)。
【0038】
以上説明したように、第1の実施形態に係るCO2排出量算出システム1は、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、顧客が購入したシステムの購入金額情報と、システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき、顧客が購入したシステムを使用することで排出されるCO2排出量を算出するCO2排出量算出部2303、を備える。
【0039】
かかる構成により、CO2排出量の算出にシステムの定格電力値とシステムの稼働状況も用いられるため、従来の算出式と比較してより実態に近いCO2排出量を算出することができる。また、事業者によるシステムの改良や省エネ活動などの企業努力を取り込むこともできる。
よって、第1の実施形態に係るCO2排出量算出システム1は、CO2排出量の算出精度を向上すること及び算出結果に対して企業努力を反映することを可能とする。
【0040】
<1-4.変形例>
以上、第1の実施形態に係る処理の流れについて説明した。続いて、第1の実施形態に係る変形例について説明する。続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0041】
(1)第1の変形例
上述した第1の実施形態では、排出原単位DB2205に記憶されている排出原単位がユーザによって入力される排出原単位によって更新される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、排出原単位DB2205は、外部データベースから取得される排出原単位によって更新されてもよい。この場合、CO2排出量算出サーバ20の取得部2301は、通信部210がユーザ端末10から排出原単位の更新要求を受信すると、外部データベースから最新の排出原単位を取得し、排出原単位DB2205を更新する。
【0042】
(2)第2の変形例
図7から
図9を参照して、第2の変形例について説明する。
図7は、第1の実施形態に係る第2の変形例における購入金額と定格電力との関係の一例を示す図である。
図8は、第1の実施形態に係る第2の変形例におけるCO
2排出量算出サーバ20aの機能構成の一例を示すブロック図である。
図9は、第1の実施形態に係る第2の変形例における学習及び推定に関する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0043】
図7には、購入金額(横軸)と定格電力(縦軸)との関係が示されている。上述した第1の実施形態では、定格電力と購入金額とが比例関係にあることを利用して、この比例関係を示す傾きと購入金額とから定格電力を推定する例について説明した。第1の実施形態では、購入金額と定格電力との関係が
図9のグラフG1のように線形(比例関係)であるものとして説明したが、
図9のグラフG2のように非線形である(比例関係ではない)場合もあり得る。この場合に、「{システム定格電力(kWh)/システム購入金額(百万円)}の平均値」によって求めた傾き(直線)を用いて定格電力を推定すると推定精度が低下してしまう。そこで、定格電力の推定に、定格電力と購入金額との関係を学習(機械学習)した推定モデルを用いるようにしてもよい。これにより、購入金額と定格電力との関係が非線形である場合であっても精度高く定格電力を推定することができる。
【0044】
ここで、
図8を参照して、推定モデルを用いて定格電力値を推定する場合におけるCO
2排出量算出サーバ20aの機能構成について、推定モデルを用いない場合におけるCO
2排出量算出サーバ20の機能構成との差分のみ説明する。
通信部210aは、ユーザ端末10から学習要求と学習データや、推定要求と購入金額情報を受信する場合もある。
記憶部220aは、推定モデル記憶部2208をさらに備える。推定モデル記憶部2208は、推定モデルを記憶する機能を有する。
制御部230aは、学習部2305と定格電力推定部2306をさらに備える。
学習部2305は、推定モデルを生成する機能を有する。学習部2305は、通信部210aがユーザ端末10から受信して取得部2301aによって取得された学習データ(定格電力値と購入金額情報との組み合わせ)に基づき、定格電力値と購入金額との関係を機械学習した推定モデル(学習済みモデル)を生成する。学習させることで学習済みモデルを生成する予め用意されている分析モデル及び計画モデルを再学習させる。なお、学習部2305は、定格電力値又は購入金額情報が更新されるごとに、推定モデルを再学習させてもよい。
定格電力推定部2306は、定格電力値を推定する機能を有する。例えば、定格電力推定部2306は、推定モデルに対して、CO
2排出量の算出対象であるシステムの購入金額情報を入力し、推定モデルから出力される定格電力値を、算出対象であるシステムの定格電力値として推定する。
新排出原単位算出部2302aは、定格電力推定部2306によって推定された定格電力値と、各DBにある稼働状況情報(平均使用率及び法定耐用年数)と、排出原単位と、販売台数とを乗じた値を新排出原単位として算出する。
CO
2排出量算出部2303aは、新排出原単位算出部2302aによって算出された最新の新排出原単位を用いて、CO
2排出量を算出する。
出力処理部2304aは、通信部210aを介して、ユーザ端末10へCO
2排出量を出力(送信)し、ユーザ端末10にCO
2排出量を表示させる。
【0045】
ここで、
図9を参照して、第2の変形例における学習及び推定に関する処理の流れについて説明する。
図9に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、学習データを入力する(ステップS301)。ユーザ端末10は、ユーザからの入力を受け付けると、学習要求と共に学習データをCO
2排出量算出サーバ20aへ送信する(ステップS302)。
CO
2排出量算出サーバ20aの学習部2305は、通信部210aが受信して取得部2301aによって取得された学習データを用いた学習を行う(ステップS303)。学習部2305は、当該学習により、定格電力値と購入金額との関係を機械学習した推定モデルを生成する(ステップS304)。生成後、学習部2305は、推定モデルを推定モデル記憶部2208に記憶させる(ステップS305)。
また、
図9に示すように、ユーザは、ユーザ端末10に対して、購入金額情報を入力する(ステップS306)。ユーザ端末10は、ユーザからの入力を受け付けると、推定要求と共に購入金額情報をCO
2排出量算出サーバ20aへ送信する(ステップS307)。
CO
2排出量算出サーバ20aの定格電力推定部2306は、通信部210aが受信して取得部2301aによって取得された購入金額情報を推定モデルへ入力することで定格電力値を推定する(ステップS308)。定格電力推定部2306は、推定モデルから出力される推定結果に基づき定格電力DB2201を更新する(ステップS309)。
【0046】
(3)第3の変形例
図10から
図12を参照して、第3の変形例について説明する。
図10は、第1の実施形態に係る第3の変形例における購入金額と定格電力との関係の一例を示す図である。
図11は、第1の実施形態に係る第3の変形例におけるCO
2排出量算出サーバ20bの機能構成の一例を示すブロック図である。
図12は、第1の実施形態に係る第3の変形例におけるCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0047】
図10には、購入金額(横軸)と定格電力(縦軸)との関係が示されている。上述した第1の実施形態では、この関係を示すグラフの切片が原点にあるものとして説明したが、
図10のグラフG3のように切片が原点にはない場合もあり得る。切片が原点にないことは、即ちシステムの動作に関係なく消費される電力があることを示している。そこで、当該切片に対応するCO
2排出量(切片分の電力消費によるCO
2排出量)も考慮することで、より精度高くCO
2排出量を算出することができる。
【0048】
ここで、
図11を参照して、切片分の電力消費によるCO
2排出量(以下「切片分のCO
2排出量」とも称される)も考慮する場合におけるCO
2排出量算出サーバ20bの機能構成について、切片分のCO
2排出量も考慮しない場合におけるCO
2排出量算出サーバ20の機能構成との差分のみ説明する。
通信部210bは、ユーザ端末10からシステムの購入台数や切片の値を受信する場合もある。
記憶部220bは、購入台数DB2209と、切片DB2210とをさらに備える。購入台数DB2209は、顧客が購入したシステムの台数を記憶する機能を有する。切片DB2210は、切片の値を記憶する機能を有する。当該切片の値は、新排出原単位算出部2302によって算出される傾き(第2の傾き)に対応する切片の値である。
制御部230bの取得部2301bは、通信部210bが受信した購入台数を取得して購入台数DB2209に記憶させ、通信部210bが受信した切片の値を取得して切片DB2210に記憶させる。
CO2排出量算出部2303bは、新排出原単位と購入金額情報が示す購入金額とを乗じて算出したCO
2排出量に対して、切片分のCO
2排出量も加える。CO
2排出量算出部2303bは、排出原単位DB2205の排出原単位と、購入台数DB2209の購入台数と、切片DB2210の切片の値(消費電力)とを乗じることで、切片分のCO
2排出量を算出することができる。
出力処理部2304bは、通信部210bを介して、ユーザ端末10へ切片分のCO
2排出量も含むCO
2排出量を出力(送信)し、ユーザ端末10にCO
2排出量を表示させる。
【0049】
ここで、
図12を参照して、第3の変形例におけるCO
2排出量算出処理の流れについて説明する。
図12に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、CO
2排出量の算出操作を行う(ステップS401)。ユーザ端末10は、ユーザからの操作を受け付けると、CO
2排出量の算出要求をCO
2排出量算出サーバ20bへ送信する(ステップS402)。
CO
2排出量算出サーバ20bの取得部2301bは、通信部210bがユーザ端末10からCO
2排出量の算出要求を受信すると、購入金額DB2202から購入金額情報を取得し(ステップS403)、購入台数DB2209から購入台数を取得し(ステップS404)、新排出原単位DB2206から新排出原単位を取得し(ステップS405)、切片DB2210から切片の値を取得する(ステップS406)。
次いで、CO
2排出量算出サーバ20bのCO
2排出量算出部2303bは、新排出原単位と購入金額情報が示す購入金額とを乗じたCO
2排出量と、排出原単位と購入台数と切片の値とを乗じたCO
2排出量とを加算して、CO
2排出量を算出する(ステップS407)。算出後、CO
2排出量算出部2303bは、算出したCO
2排出量でCO
2排出量DB2207を更新し(ステップS408)、算出したCO
2排出量を通信部210bからユーザ端末10へ出力(送信)する(ステップS409)。
ユーザ端末10は、CO
2排出量算出サーバ20bからCO
2排出量を受信すると、受信したCO
2排出量を表示する(ステップS410)。ユーザは、ユーザ端末10に表示されたCO
2排出量を確認する(ステップS411)。
【0050】
(4)第4の変形例
上述した第1の実施形態では、システムの稼働状況の算出に法定耐用年数が用いられる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、法定耐用年数の代わりに減価償却期間が用いられてもよい。これにより、システムの稼働状況が税務の観点からもより現実的に適正化され、CO2排出量算出部2303によって算出されるCO2排出量をより精緻化することができる。
【0051】
<<2.第2の実施形態>>
以上、第1の実施形態について説明した。続いて、
図13及び
図14を参照して、第2の実施形態について説明する。以下では、顧客が購入したITシステムを使用するために再生可能エネルギー(以下、「再エネ」とも称される)を導入している例を一例として第2の実施形態について説明する。なお、以下では、第1の実施形態と重複する説明については適宜省略する。
【0052】
<2-1.CO
2排出量算出システムの構成>
第2の実施形態に係るCO
2排出量算出システム1の構成は、
図1を参照して説明したCO
2排出量算出システム1と同様であるため、その説明を省略する。なお、CO
2排出量算出システム1では、ユーザ端末10又はCO
2排出量算出サーバ20cが、顧客からCO
2排出量、総電力消費量、再生可能エネルギーの購入量などの報告を受けた第三者によって管理されている外部データベースと通信可能に接続されていてもよい。第三者は、国の機関や、CDP(Carbon Disclosure Project)などのNGO(非政府組織)団体などである。第2の実施形態では、後述する処理において、外部データベースにて管理されている情報のうち、CO
2排出量の算出対象である顧客の総電力消費量及び再生可能エネルギーの購入量が取得され、処理に用いられる。顧客の総電力消費量及び再生可能エネルギーの購入量は、ユーザ端末10によって外部データベースから取得されたものがユーザ端末10からCO
2排出量算出サーバ20cへ送信されてもよいし、CO
2排出量算出サーバ20cが外部データベースから直接取得してもよい。
【0053】
<2-2.CO
2排出量算出サーバの機能構成>
図13を参照して、第2の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20cの機能構成について説明する。
図13は、第2の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20cの機能構成の一例を示すブロック図である。以下では、第1の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20との差分のみ説明する。
【0054】
(1)通信部210c
通信部210cは、ユーザ端末10から再エネ適用後のCO2排出量の算出要求、顧客の総電力消費量や再生可能エネルギーの購入量などを受信する場合もある。
【0055】
(2)記憶部220c
記憶部220cは、顧客総電力消費量DB2211と、顧客再エネ購入量DB2212と、再エネ適用後CO2排出量DB2213とをさらに備える。
顧客総電力消費量DB2211は、顧客の総電力消費量を記憶するデータベースである。顧客再エネ購入量DB2212は、顧客の再生エネルギーの購入量を記憶するデータベースである。再エネ適用後CO2排出量DB2213は、再エネ適用後のCO2排出量を記憶するデータベースである。
【0056】
(3)制御部230c
取得部2301cは、通信部210cが受信した顧客の総電力消費量を取得して顧客総電力消費量DB2211に記憶させ、通信部210cが受信した顧客の再生エネルギーの購入量を取得して顧客再エネ購入量DB2212に記憶させる。なお、取得部2301cは、通信部210cがユーザ端末10から受信した顧客の総電力消費量又は顧客の再生エネルギーの購入量を取得してもよいし、通信部210を介して外部データベースへアクセスして顧客の総電力消費量又は顧客の再生エネルギーの購入量を取得してもよい。
CO2排出量算出部2303cは、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、顧客が購入したシステムの購入金額情報と、システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、顧客が再生可能エネルギーを導入せずにシステムを使用する場合に排出される第1のCO2排出量(再エネ適用前のCO2排出量)と、顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、顧客が再生可能エネルギーを導入してシステムを使用した場合に排出される第2のCO2排出量(再エネ適用後のCO2排出量)を算出する。再エネ適用前のCO2排出量には、例えば上述した第1の実施形態のようにして算出され、CO2排出量DB2207に記憶されたものが用いられる。
具体的に、CO2排出量算出部2303cは、再生可能エネルギーの購入量に基づき、顧客の総電力消費量における化石燃料による電力消費量の比率を算出し、再エネ適用前のCO2排出量と算出した比率とを乗じて再エネ適用後のCO2排出量を算出する。即ち、CO2排出量算出部2303cは、「{(総電力消費量-再エネ購入量)/総電力消費量}×再エネ適用前のCO2排出量」の算出式によって、再エネ適用後のCO2排出量を算出する。
これにより、CO2排出量算出部2303cは、再エネ適用前のCO2排出量から再生可能エネルギーを利用することによって削減されるCO2排出量が除かれた、化石燃料のみの利用によって排出されるCO2排出量(再エネ適用後のCO2排出量)を求めることができる。
従来、企業は、上述した第三者に対して、CO2排出量(t-CO2eq/百万円)を報告している。このため、事業者は、当該CO2排出量に対して顧客との取引額を乗ずることで、顧客の活動に伴う自身のCO2排出量を算出することができる。しかしながら、第三者に対して報告されているCO2排出量には、電力以外のエネルギー(例えばガスなど)の利用によって排出されるCO2排出量も含まれている。このため、従来の手法では、電力に基づくCO2排出量を精度高く算出することができなかった。
これに対して、第2の実施形態では、第三者から取得したCO2排出量ではなく、第1の実施形態のようにして算出されたCO2排出量を用いている。第1の実施形態のようにして算出されたCO2排出量は、電力のみに基づき排出されたCO2排出量を示している。このため、CO2排出量算出部2303cは、従来の手法と比較して、電力のみに基づくCO2排出量をより精度高く算出することができる。
出力処理部2304cは、通信部210cを介して、ユーザ端末10へ再エネ適用後のCO2排出量を出力(送信)し、ユーザ端末10に再エネ適用後のCO2排出量を表示させる。
【0057】
<2-3.処理の流れ>
以上、第2の実施形態に係るCO
2排出量算出サーバ20cの機能構成について説明した。続いて、
図14を参照して、第2の実施形態に係るCO
2排出量算出処理の流れについて説明する。
図14は、第2の実施形態に係るCO
2排出量算出処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0058】
図14に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、再エネ適用後CO
2排出量の算出操作を行う(ステップS501)。ユーザ端末10は、ユーザからの操作を受け付けると、CO
2排出量の算出要求をCO
2排出量算出サーバ20cへ送信する(ステップS502)。
CO
2排出量算出サーバ20cの取得部2301cは、通信部210cがユーザ端末10からCO
2排出量の算出要求を受信すると、CO
2排出量DB2207から再エネ適用前のCO
2排出量を取得し(ステップS503)、顧客総電力消費量DB2211から顧客総電力消費量を取得し(ステップS504)、顧客再エネ購入量DB2212から顧客再エネ購入量を取得する(ステップS505)。
次いで、CO
2排出量算出サーバ20cのCO
2排出量算出部2303cは、取得部2301cが取得した各種情報に基づき、再エネ適用後のCO
2排出量を算出する(ステップS506)。算出後、CO
2排出量算出部2303cは、算出した再エネ適用後のCO
2排出量で再エネ適用後CO
2排出量DB2213を更新し(ステップS507)、算出した再エネ適用後のCO
2排出量を通信部210cからユーザ端末10へ出力(送信)する(ステップS508)。
ユーザ端末10は、CO
2排出量算出サーバ20cから再エネ適用後のCO
2排出量を受信すると、受信した再エネ適用後のCO
2排出量を表示する(ステップS509)。ユーザは、ユーザ端末10に表示された再エネ適用後のCO
2排出量を確認する(ステップS510)。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態に係るCO2排出量算出システム1は、事業者が顧客へ販売するシステムの定格電力値と、顧客が購入したシステムの購入金額情報と、システムの稼働状況情報と、電気の使用量に対するCO2排出量を示す排出原単位とに基づき算出された、顧客が再生可能エネルギーを導入せずにシステムを使用する場合に排出される再エネ適用前のCO2排出量(第1のCO2排出量)と、顧客が購入した再生可能エネルギーの購入量とに基づき、顧客が再生可能エネルギーを導入してシステムを使用した場合に排出される再エネ適用後のCO2排出量(第2のCO2排出量)を算出するCO2排出量算出部2303c、を備える。
【0060】
かかる構成により、再エネ適用前のCO2排出量の算出にシステムの定格電力値とシステムの稼働状況も用いられるため、従来の算出式と比較してより実態に近い再エネ適用前のCO2排出量を算出することができる。また、事業者による再生可能エネルギーの活用による企業努力を取り込むこともできる。
よって、第2の実施形態に係るCO2排出量算出システム1は、CO2排出量の算出精度を向上すること及び算出結果に対して企業努力を反映することを可能とする。
【0061】
以上、実施形態について説明した。なお、上述した実施形態におけるCO2排出量算出システム1、CO2排出量算出サーバ20,20a,20b,20cの一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0062】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…排出量算出システム、10…ユーザ端末、20,20a,20b,20c…排出量算出サーバ、210,210a,210b,210c…通信部、220,220a,220b,220c…記憶部、2201…定格電力DB、2202…購入金額DB、2203…平均使用率DB、2204…法定耐用年数DB、2205…排出原単位DB、2206…新排出原単位DB、2207…排出量DB、2208…推定モデル記憶部、2209…購入台数DB、2210…切片DB、2211…顧客総電力消費量DB、2212…顧客再エネ購入量DB、2213…排出量DB、230,230a,230b,230c…制御部、2301,2301a,2301b,2301c…取得部、2302,2302a…新排出原単位算出部、2303,2303a,2303b,2303c…排出量算出部、2304,2304a,2304b,2304c…出力処理部、2305…学習部、2306…定格電力推定部、NW…ネットワーク