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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014580
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/35 20060101AFI20240125BHJP
   E04D 12/00 20060101ALI20240125BHJP
   E04D 3/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E04D3/35 Q
E04D12/00 J
E04D3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117516
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大園 道昭
(72)【発明者】
【氏名】宮下 義守
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS03
2E108AZ01
2E108BB01
2E108BN02
2E108CC01
2E108CC12
2E108CC16
2E108CV03
2E108CV08
2E108DD01
2E108DD05
2E108EE01
2E108FF01
2E108FF12
2E108FG11
2E108GG10
(57)【要約】
【課題】窯業系葺き材がサンドイッチパネルを含む屋根下地上に配置された屋根構造において、所望の耐火性能が得られること。
【解決手段】屋根構造100は、一対の金属板の間に芯材35が設けられたサンドイッチパネル3を含む野地板2と、野地板2に取り付けられた複数の窯業系葺き材5と、を備える。複数の窯業系葺き材5の各々は、セメント基材にアラミド繊維が添加されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属板の間に芯材が設けられたサンドイッチパネルを含む野地板と、
前記野地板に取り付けられた複数の窯業系葺き材と、
を備え、
前記複数の窯業系葺き材の各々は、セメント基材にアラミド繊維が添加されている、
屋根構造。
【請求項2】
前記アラミド繊維の添加量は、各窯業系葺き材の総質量に対し、0.4質量パーセント以上1.4質量パーセント以下である、
請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記アラミド繊維の添加量は、各窯業系葺き材の総質量に対し、0.9質量パーセント以下である、
請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記窯業系葺き材の肉厚は、4mm以上50mm以下である、
請求項1に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記セメント基材に添加された繊維は、前記アラミド繊維のみである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋根構造の一態様が記載されている。特許文献1に記載の屋根構造は、サンドイッチパネルからなる屋根下地板と、屋根下地板の上に配置された複数の屋根材(葺き材)と、を備えている。屋根材は、金属板をロール成形機等で変形させることで形成された金属屋根である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-211242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋根構造では、屋根材は金属製の葺き材に代えて、窯業系の葺き材を用いることも求められている。サンドイッチパネルは、一対の金属板の間に、耐火性を有する芯材を充填した構成であるため、高い耐火性を有している。通常、野地板としてサンドイッチパネルを用いた場合には、サンドイッチパネルの高い耐火性によって、屋根構造として、所望の耐火性が得られるはずである。
【0005】
しかしながら、実際には、火災時の高温により、窯業系の葺き材が割れると、野地板に対して加わる荷重が局所的に大きくなる。荷重が局所的に大きくなると、野地板のたわみ量が、設計上のたわみ量よりも大きくなり、所望の耐火性能が得られない可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、窯業系葺き材がサンドイッチパネルを含む屋根下地上に配置された屋根構造において、所望の耐火性能が得られる屋根構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の屋根構造は、一対の金属板の間に芯材が設けられたサンドイッチパネルを含む野地板と、前記野地板に取り付けられた複数の窯業系葺き材と、を備え、前記複数の窯業系葺き材の各々は、セメント基材にアラミド繊維が添加されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る上記態様の屋根構造は、窯業系葺き材が、サンドイッチパネルを含む屋根下地上に配置された屋根構造において、所望の耐火性能が得られる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る屋根構造において、一部の窯業系葺き材を省略した斜視図である。
図2】実施形態に係る屋根構造に用いられるサンドイッチパネルの斜視図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図1のB-B線断面図である。
図5】変形例に係る屋根構造において、一部の窯業系葺き材を省略した斜視図である。
図6図5のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る屋根構造100について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
屋根構造100は、建築物の屋根構造100であって、サンドイッチパネル3を含む野地板2に対して、複数の窯業系葺き材5(以下、「葺き材5」という場合がある)が取り付けられた構造である。屋根構造100は、図1に示すように、複数の支持材1と、野地板2と、防水シート4と、複数の葺き材5と、を備える。葺き材5は、セメント基材にアラミド繊維が添加された材料で構成されている。
【0012】
このように、本実施形態に係る屋根構造100では、野地板2がサンドイッチパネル3で構成されているだけでなく、葺き材5が、セメント基材にアラミド繊維が添加されて構成されている。セメント基材にアラミド繊維が添加された葺き材5は、アラミド繊維が添加されていないものと比べて、常温時の強度と高温時の強度とが向上する。このため、火災の際、葺き材5が野地板2上で割れることを抑制できるため、野地板2に加わる荷重が局所的に大きくなるのを抑制できる。この結果、屋根構造100としての耐火性が向上する。本明細書でいう「割れ」には、ひび割れは含まない。ひび割れ程度であると、葺き材5の一部が、野地板2上において、荷重が局所的に大きくなるようなことは起こりにくい。アラミド繊維が添加された葺き材5では、高温時において、仮にひび割れが生じても、それ以上亀裂が拡大(又は進行)しにくく、「割れ」にまで至りにくいため、耐火性が損なわれにくい。
【0013】
本実施形態に係る建築物としては、特に制限はなく、例えば、非住宅建築物、住宅建築物、非住宅建築物と住宅建築物とが複合した複合建築物等が挙げられる。非住宅建築物としては、例えば、店舗、オフィスビル、工場、倉庫、学校建築(幼稚園)等が挙げられる。
【0014】
屋根構造100としては、横葺き用の葺き材(横葺き屋根材)を用いた横葺き屋根構造100、縦葺き用の葺き材(縦葺き屋根材)を用いた縦葺き屋根構造100のいずれであってもよいが、本実施形態では、屋根構造100の一例として、横葺き用の葺き材5を用いた横葺き屋根構造100を挙げて説明する。
【0015】
また、屋根構造100の屋根の形としては、特に制限はなく、例えば、切妻屋根、寄棟屋根、方形屋根、片流れ屋根、差しかけ屋根、バタフライ型屋根、のこぎり屋根等が挙げられる。以下においては、説明の便宜上、屋根の勾配に沿った水流れ方向に平行な方向を「軒棟方向」と定義し、軒棟方向に直交しかつ水平面に沿う方向を「左右方向」として定義する。なお、「軒」は、一般に、屋根の下端の建物の外部に差し出たところを意味するが、本明細書では、建物の外部に差し出ているかどうかは問わず、屋根の下端を意味する。同様に、「棟」は、一般に、屋根の最も高い水平部分を意味するが、本明細書では、屋根の最も高い部分であればよく、水平部分はなくてもよい。
【0016】
(支持材1)
支持材1は、野地板2を支持する構造材である。支持材1は、図1に示すように、複数の梁11と、複数の母屋(又は、垂木)12と、を備える。複数の支持材1は、小屋組を構成している。
【0017】
複数の梁11は、複数の母屋12を支持する。各梁11は、本実施形態では、軒棟方向に延びている。複数の梁11は、左右方向に一定の間隔をおいて配置されている。複数の梁11は、図示しない横架材によって支持される。なお、梁11としては、左右方向に沿って水平に延びてもよい。この場合、母屋12は、例えば、小屋束等を介して梁11に支持される。
【0018】
梁11の材料としては、例えば、金属、木材、金属と木材との複合材等が挙げられるが、強度の観点から、金属であることが好ましい。金属としては、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材、建築構造用圧延鋼材、一般構造用炭素鋼管、建築構造用炭素鋼管、一般構造用角形鋼管等が挙げられる。梁11には、例えば、H形鋼、C形鋼、角形鋼等が用いられる。
【0019】
複数の母屋12は、梁11と野地板2との間に配置される。各母屋12は、各梁11に対して直交しており、本実施形態では、左右方向に延びている。
【0020】
複数の母屋12は、軒棟方向に一定の間隔をおいて配置されている。母屋12のピッチは、長ければ長いほど、支持材1の材料費のコストダウンを効果的に行うことができるうえに、母屋12に対して野地板2を固定具で留め付ける際の施工の手間を削減することができる。一方、母屋12のピッチが長過ぎると、複数の葺き材5を支持することができないだけでなく、火災の際に、屋根材が割れやすくなり、屋根構造100としての耐火性が損なわれる。したがって、母屋12のピッチとしては、好ましくは、900mm以上1200mm以下であり、より好ましくは1000mm以上1100mm以下であり、より好ましくは、1025mm以上1075mm以下である。本実施形態では、野地板2としてサンドイッチパネル3を用いつつ、葺き材5として、セメント基材にアラミド繊維を添加しているため、屋根構造100としての耐火性が向上できた。この結果、母屋12のピッチを1050mmにまで拡げても、所望の耐火性を得ることが可能である。
【0021】
母屋12の材料としては、例えば、金属、木材、金属と木材との複合材等が挙げられるが、強度の観点から、金属であることが好ましい。金属としては、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材、建築構造用圧延鋼材、一般構造用炭素鋼管、建築構造用炭素鋼管、一般構造用角形鋼管等が挙げられる。母屋12には、例えば、H形鋼、C形鋼、角形鋼等が用いられる。
【0022】
母屋12は、被覆材(不図示)で覆われることが好ましい。被覆材は、母屋12における野地板2の支持面以外の面を覆う。被覆材としては、耐火性を有する材料であることが好ましく、例えば、ロックウール、ケイ酸カルシウム板、吹付ロックウール等が挙げられる。
【0023】
(野地板2)
野地板2は、葺き材5を支持する。野地板2の主面は、軒棟方向及び左右方向に平行であり、水平面に対して傾斜している。野地板2は、複数のサンドイッチパネル3で構成されている。本実施形態では、各サンドイッチパネル3は、軒棟方向に平行な長さ方向を有し、左右方向に平行な幅方向を有している。なお、本発明では、各サンドイッチパネル3は、幅方向及び長さ方向が実施形態の向きに限らず、軒棟方向に平行な幅方向を有し、左右方向に平行な長さ方向を有していてもよい。
【0024】
ここで、図2には、1つのサンドイッチパネル3の斜視図を示す。サンドイッチパネル3は、幅方向の一方の端部に形成された嵌合凸部32と、幅方向の他方の端部に形成された嵌合凹部31と、を備える。本実施形態に係るサンドイッチパネル3は、1つの嵌合凸部32とこれに対応する嵌合凹部31を備えるが、例えば、2つ以上の嵌合凸部32及びこれに対応する嵌合凹部31を有してもよい。
【0025】
嵌合凸部32は、隣接するサンドイッチパネル3の嵌合凹部31に嵌まり込む。嵌合凹部31に嵌合凸部32が嵌まり込むことで、隣り合うサンドイッチパネル3は互いに接続される。嵌合凸部32は、長さ方向の全長にわたって形成されている。嵌合凹部31も、長さ方向の全長にわたって形成されている。
【0026】
サンドイッチパネル3は、図3に示すように、支持材1に対向する面を有する下側金属板33と、葺き材5が載る面を有する上側金属板34と、芯材35と、シール材36と、目地材37と、を備える。
【0027】
下側金属板33は、厚さ方向の一面が支持材1に対向する面である下側本体部331と、下側本体部331の幅方向の一方の端部を折り返すことで形成された第1折返し部332と、下側本体部331の幅方向の他方の端部をL字状に折り曲げた第1段部333と、を備える。下側本体部331、第1折返し部332及び第1段部333は、1つの金属板によって一体に形成されている。
【0028】
上側金属板34は、厚さ方向の一面が支持材1に対向する面である上側本体部341と、上側本体部341の幅方向の一方の端部を折り返すことで形成された第2折返し部342と、上側本体部341の幅方向の他方の端部をL字状に折り曲げた第2段部343と、を備える。上側本体部341、第2折返し部342及び第2段部343は、1つの金属板によって一体に形成されている。
【0029】
上側金属板34及び下側金属板33の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル被覆金属板、溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、塗装溶融亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、塗装溶融アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、塗装亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、塗装/亜鉛めっき鋼板、塗装ステンレス鋼板、冷間圧延ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)等が挙げられる。上側金属板34及び下側金属板33の厚さとしては、特に制限はなく、例えば、0.3mm以上1.5mm以下であり、より具体的には、0.3mm以上1.0mm以下である。
【0030】
また、本実施形態に係る上側本体部341及び下側本体部331は、平面状に形成されているが、例えば、長さ方向に延びかつ幅方向に一定の間隔をおいて形成された複数のリブを有してもよいし、断面波形のリブを有してもよいし、複数のエンボスを有してもよい。
【0031】
芯材35は、上側金属板34と下側金属板33との間に充填される。芯材35としては、例えば、ポリイソシアヌレートフォーム、ロックウール、石膏ボード等、又はこれらの複合材料等が挙げられる。
【0032】
シール材36は、嵌合凸部32の突出端面を形成する。第1段部333、第2段部343及びシール材36によって、嵌合凸部32が形成されている。シール材36としては、例えば、ポリエチレンフィルム付きクラフト紙、ゴム、合成樹脂等が挙げられる。なお、シール材36は、必要に応じて設けられればよく、なくてもよい。
【0033】
目地材37は、嵌合凹部31の奥面を形成する。第1折返し部332、第2折返し部342及び目地材37によって、嵌合凹部31が形成されている。隣り合うサンドイッチパネル3が接続されると、嵌合凸部32の先端面(すなわち、シール材36)と嵌合凹部31の目地材37とが接触する。目地材37としては、例えば、加熱により膨張する無機膨張材混入ロックウールフェルト、ポリエステルシート、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)等が挙げられる。
【0034】
(防水シート4)
防水シート4は、図1に示すように、野地板2の上に敷かれる。防水シート4は、野地板2と葺き材5との間に配置される。防水シート4は、野地板2の上面を覆う。防水シート4としては、例えば、改質アスファルトルーフィングシート、アスファルトルーフィングシート、透湿防水シート、合成高分子系ルーフィングシート、ストレッチアスファルトルーフィングシート、改質アスファルトフェルト、改質アスファルトルーフィング下葺材、改質アスファルトルーフィングシート等が挙げられる。なお、防水シート4は、必要に応じて設けられればよく、なくてもよい。
【0035】
(葺き材5)
葺き材5(窯業系葺き材5)は、野地板2に取り付けられる。葺き材5は、窯業系葺き材5である。本実施形態に係る葺き材5は、図5に示すように、段葺き用の屋根である。葺き材5は、例えば、水硬性膠着材にアラミド繊維を添加したセメント組成物を成形した後、養生硬化して作製される。
【0036】
水硬性膠着材は、水との反応により硬化する材料であり、硬化した後は、水に晒されても強度が低下しない材料である。水硬性膠着材は、セメント材料に無機充填材が配合されている。セメント材料としては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメントのうちの1種又はこれらを混合したものが挙げられる。また、セメント材料に対して、例えば、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏のうちの少なくとも1つを加えてもよい。無機充填材としては、例えば、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等が挙げられる。
【0037】
アラミド繊維の添加量は、葺き材5の総質量に対して、0.4質量パーセント以上であることが好ましい。一方、アラミド繊維の添加量は、葺き材5の総質量に対して、1.4質量パーセント以下であることが好ましく、より好ましくは、0.9質量パーセント以下である。アラミド繊維の添加量が、葺き材5の総質量に対して0.4質量パーセント以上1.4質量パーセント以下であると、常温での強度を高く、かつ高温時での強度も高い葺き材5とすることができる。アラミド繊維の添加量が、葺き材5の総質量に対して0.9質量パーセント以下であると、セメント組成物の増粘を抑制できるため、成形性が損なわれるのを抑制できる。
【0038】
アラミド繊維の平均繊維径は、特に制限はないが、例えば、10μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは、12μm以上15μm以下である。本明細書でいう「平均繊維径」は、複数のアラミド繊維から任意に選び出した50本のアラミド繊維を対象に、1本の繊維について、長さ方向の任意の5箇所の直径を測定して算術平均値を求め、これを50本について測定した算術平均値を平均繊維径とすることができる。
【0039】
セメント組成物に含まれる繊維は、アラミド繊維のみであることが好ましい。アラミド繊維以外の繊維を添加した葺き材5は、アラミド繊維のみが添加された葺き材5に比べて、常温での強度は高いものの、高温時での強度が低下する可能性がある。
【0040】
葺き材5の成形方法としては、例えば、押出成形、注型成形、プレス成形、抄造成形が挙げられる。成形後、養生を行って、葺き材5が作製される。養生としては、例えば、オートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生、密閉加熱養生法等が挙げられる。本実施形態では、蒸気養生によって、葺き材5が作成される。
【0041】
野地板2に対する葺き材5の取付方法としては、特に制限はなく、例えば、野地板2に固定された桟材に対し留付具を用いて取り付けたり、野地板2に対して、直接的に、留付具を用いて取り付けたりすることが挙げられる。留付具としては、例えば、ねじ、釘、吊り子等が挙げられる。
【0042】
図4に示すように、段葺き用の葺き材5を用いる場合、葺き材5の厚さL1は、特に制限はないが、4mm以上であることが好ましく、より好ましくは、5mm以上である。一方、葺き材5の厚さL1は、50mm以下であることが好ましく、より好ましくは、41mm以下である。本実施形態に係る葺き材5の厚さL1は、5mm以上41mm以下の範囲に設定されている。
【0043】
ここにおいて、本明細書でいう「葺き材5の厚さL1」とは、野地板2に直交する断面において、野地板2の上面から葺き材5の上面の間の距離の最大値を意味する。また、葺き材5における野地板2に載る面と上面との間の距離のうちの最小値を「葺き材5の肉厚L2」とする。葺き材5の最大肉厚L2としては、4mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0044】
このように、本実施形態に係る屋根構造100では、セメント基材にアラミド繊維が添加された窯業系葺き材5を備えるため、窯業系葺き材5について、常温時の強度を高くすることができるうえに、高温時の強度も高くすることができる。この結果、火災の際に窯業系葺き材5が割れることを抑制できるため、サンドイッチパネル3を含む野地板2を用いた場合に、野地板2に加わる荷重が局所的に大きくなることを抑制できる。この結果、屋根構造100としての耐火性が向上する。
【0045】
また、窯業系葺き材5について、常温時の強度と高温時の強度とを高く保つことができるため、野地板2を直接支持する母屋12の間隔を1000mm以上に設計しても、耐火性を保つことができる。このため、本実施形態に係る屋根構造によれば、施工性が高くかつコストダウンも実現できる。
【0046】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0047】
葺き材5の形状は、本実施形態では、段葺き形状に形成されているが、これに限らず、例えば、断面波形状、瓦形状、全面にわたって略均一な厚さの平板状等に形成されてもよい。図5,6には、葺き材5の変形例を示す。本変形例に係る葺き材5は、瓦形状の葺き材5である。
【0048】
図6に示すように、葺き材5は、野地板3に載る谷部51と、谷部51から上方に突き出る凸部52とを備える。谷部51と凸部52とは、左右方向に沿って交互に接続されている。瓦形状の葺き材5を用いる場合、葺き材5の厚さL1は、特に制限はないが、50mm以上であることが好ましく、より好ましくは、60mm以上である。一方、葺き材5の厚さL1は、85mm以下であることが好ましく、より好ましくは、65mm以下である。本実施形態に係る葺き材5の厚さL1は、60mm以上65mm以下の範囲に設定されている。葺き材5の最大肉厚L2としては、4mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0049】
上記実施形態に係る葺き材5は、セメント基材に添加された繊維として、アラミド繊維以外を含まないが、本発明では、アラミド繊維以外の繊維を含むことを排除するものではない。アラミド繊維に加えて、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、金属繊維のいずれかを含んでもよい。
【0050】
なお、本明細書において規定する数値範囲は、±10%の誤差を含むものとする。すなわち、例えば「4mm以上50mm以下」という範囲には、3.6mmも含まれることとする。
【0051】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明に係る屋根構造は、以下の実施例に限定されない。
【0052】
(測定方法)
(1)加熱強度試験
プロパンガスをガス源とするバーナ装置を用いた。0.8mm厚さの平板状の鋼板でバーナを覆い、鋼板の上に試験片を置き、試験片の上に65kg/mの錘を置いた。
【0053】
バーナを一定の火力で点火し、点火してからクラックが入るまでの時間を計測した。そのときの試験片の表面温度(バーナ側の面)も測定した。なお、クラックが入ったことの確認は、目視で判断を行った。測定を4回行い、その中でもっとも短い時間を採用した。
【0054】
(2)常温強度試験
常温環境下において、以下の能力を有する載荷試験機を用いて、試験片の破壊強度を測定した。載荷試験機では、200mm離れた支持体に試験片を載せ、支持体間の中央において、試験片に対して下方に荷重を加え、破断した時の荷重を測定した。測定を3回行い、そのなかで最も小さい荷重の値を採用した。
載荷試験器;関西機器製作所校正電動油圧曲げ試験機
・最大能力:4000N 最小表示:10N
・支柱内側間隔:500mm 上部曲げ治具:φ30mm×L400mm×1本 下部曲げ治具:L430mm×2本
・ラムストローク:100mm 負荷電動機:AC200V 0.2KW
【0055】
(試験片)
試験片として、480mm×355mmの平板状の窯業系葺き材を用いた。窯業系葺き材は、セメントと、細骨材と、補助剤と、繊維補強材と、を配合したセメント組成物を養生硬化し、成形した。細骨材としては、天然砂、及び破砂の少なくとも一方を用いた。補助剤としては、フライアッシュ、マイクロシリカ、及び高炉スラグ微粉の混合剤を用いた。
【0056】
(1)実施例1
実施例1では、セメント:12kg、細骨材(天然砂):8.7kg、補助剤:2.6kg、アラミド繊維:0.12kgを配合したセメント組成物を用いた。すなわち、アラミド繊維の添加量は、セメント組成物の重量に対して、0.5質量パーセントである。
【0057】
(2)実施例2
実施例2では、セメント:12kg、細骨材(天然砂):8.7kg、補助剤:2.6kg、アラミド繊維:0.18kgを配合したセメント組成物を用いた。すなわち、アラミド繊維の添加量は、セメント組成物の重量に対して、0.9質量パーセントである。
【0058】
(3)実施例3
実施例3では、セメント:13.8kg、細骨材(天然砂):5.5kg、細骨材(破砂):4.0kg、アラミド繊維:0.11kg、金属繊維:0.83kgを配合したセメント組成物を用いた。すなわち、アラミド繊維の添加量は、セメント組成物の重量に対して、0.4質量パーセントである。
【0059】
(4)比較例1
比較例1では、セメント:12kg、細骨材(天然砂):8.7kg、補助剤:2.6kg、ガラス繊維:0.16kg、ビニロン繊維:0.21kgを配合したセメント組成物を用いた。
【0060】
(5)比較例2
比較例2では、セメント:12kg、細骨材(天然砂):8.7kg、補助剤:2.6kg、ビニロン繊維:0.21kgを配合したセメント組成物を用いた。
【0061】
(6)比較例3
比較例3では、セメント:12kg、細骨材(天然砂):8.7kg、補助剤:2.6kg、金属繊維:0.72kgを配合したセメント組成物を用いた。
【0062】
(試験結果)
実施例1~3の試験片と、比較例1~3の試験片とを用いて、加熱強度試験と常温強度試験を行った結果を、表1に示す。表1において、加熱強度試験で測定した、クラックが生じたときの試験片の表面温度については、〔…℃〕と示す。
【表1】
【0063】
表1からもわかるように、アラミド繊維が添加された実施例1~3は、比較例1~3に比べて、常温時の強度が高く、かつ高温時の強度も高いことがわかる。このことから、窯業系葺き材として、セメント基材にアラミド繊維が添加されたものを用いると、常温時の強度が高く、かつ高温時の強度も高い窯業系葺き材が得られることがわかった。
【0064】
また、実施例1~3からもわかるように、アラミド繊維の添加量が、総重量に対して、0.4質量パーセント以上であると、高温時の強度が高い窯業系葺き材が得られることがわかった。
【0065】
また、実施例1と実施例3とを比較すると、実施例3は実施例1に比べて、高温時の強度が低いことがわかる。このことから、アラミド繊維に加えて、金属繊維が添加されると、常温時の強度が高いものの、高温時の強度が損なわれることがわかった。
【0066】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る屋根構造100は、一対の金属板の間に芯材35が設けられたサンドイッチパネル3を含む野地板2と、野地板2に取り付けられた複数の窯業系葺き材5と、を備える。複数の窯業系葺き材5の各々は、セメント基材にアラミド繊維が添加されている。
【0067】
この態様によれば、窯業系葺き材5について、常温時の強度を高くすることができるうえに、高温時の強度も高くすることができる。すなわち、葺き材5にアラミド繊維が添加されると、万が一、ひび割れが生じても、その亀裂が進行(又は拡大)することを抑制できる。この結果、火災の際に、野地板2上で窯業系葺き材5が割れることを抑制できるため、野地板2に加わる荷重が局所的に大きくなるのを抑制できる。したがって、屋根構造100としての耐火性が向上する。
【0068】
第2の態様に係る屋根構造100では、第1の態様において、アラミド繊維の添加量は、各窯業系葺き材5の総質量に対し、0.4質量パーセント以上1.4質量パーセント以下である。この態様によれば、窯業系葺き材5に対して、より効果的な耐火性を付与することができる。
【0069】
第3の態様に係る屋根構造100では、第2の態様において、アラミド繊維の添加量は、各窯業系葺き材5の総質量に対し、0.9質量パーセント以下である。この態様によれば、セメント材料の増粘を抑制できるため、成形性が損なわれるのを抑制できる。
【0070】
第4の態様に係る屋根構造100では、第1~3のいずれか1つの態様において、各窯業系葺き材5の厚さは、4mm以上50mm以下である。この態様によれば、窯業系葺き材5の重量が大きくなり過ぎて、常温時及び加熱時の強度が低下するのを抑制できる。
【0071】
第5の態様に係る屋根構造100では、第1~4のいずれか1つの態様において、セメント基材に添加された繊維は、アラミド繊維のみである。この態様によれば、アラミド繊維以外の繊維を添加した葺き材5に比べて、高温時での強度が高いという利点がある。
【符号の説明】
【0072】
100 屋根構造
2 野地板
3 サンドイッチパネル
33 下側金属板(金属板)
34 上側金属板(金属板)
35 芯材
5 葺き材(窯業系葺き材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6