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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145801
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】線形増幅器および無線システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H04B1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058313
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】福有 啓史
(72)【発明者】
【氏名】難波 正憲
(72)【発明者】
【氏名】森下 雄太
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060HH01
5K060HH06
5K060JJ06
5K060JJ21
5K060JJ23
(57)【要約】
【課題】前段の無線局の動作特性に応じて、送信信号の電力を維持可能な線形増幅器および無線システムを提供する。
【解決手段】線形増幅器20は、経路切替回路21a,21bと、減衰器22と、第2増幅回路23と、検出器24と、ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路25と、ゲイン調節器26と、制限回路27と、ループゲイン調節部29と、を備える。ALC回路25は、検出器24で検出された第2送信信号S2の電力と線形増幅器20の出力電力の目標値である電力目標値W1との差を低減させる第2調節値M2を求める。ゲイン調節器26は、ゲイン調節量DPOTに応じて、第2調節値M2を無線局10ごとに定められた調節値の目標範囲内の値に調節し、調節した第2調節値M2’を第1調節値M1として出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される第1調節値に応じて調節する第1調節器と、前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅回路と、を有し、前記第1送信信号を出力する無線局の後段に接続される線形増幅器であって、
前記無線局が出力する前記第1送信信号を減衰させる減衰器と、
前記減衰器で減衰された前記第1送信信号を増幅して第2送信信号を生成し、前記第2送信信号をアンテナに出力する第2増幅回路と、
前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる第2調節値を求めるALC回路と、
前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、ゲイン調節量に応じて、前記無線局ごとに定められた調節値の目標範囲内の値に調節し、調節した前記第2調節値を、前記第1調節値として出力するゲイン調節器と、
を備える線形増幅器。
【請求項2】
前記減衰器は、前記第1調節器における調節量の絶対値が最小であるときの前記第1送信信号の電力に応じて定められた減衰量に基づいて、前記第1送信信号を減衰させる可変減衰器で構成される、
請求項1に記載の線形増幅器。
【請求項3】
前記第1送信信号の電力に応じて定められたALC下限値を用いて、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値未満のときは、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力し、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値以上であるときは、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する制限回路をさらに備える、
請求項1または2に記載の線形増幅器。
【請求項4】
前記制限回路は、前記第1送信信号の電力が最小であるときの前記第1調節値に応じた値である前記ALC下限値を用いる、
請求項3に記載の線形増幅器。
【請求項5】
前記制限回路は、前記無線局の出力の低減を指示する低減指示信号を取得すると、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する、
請求項4に記載の線形増幅器。
【請求項6】
前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、該第2調節値を前記目標範囲の中央値に近づけるための前記ゲイン調節量に応じて調節し、調節した前記第2調節値を出力する、
請求項1または2に記載の線形増幅器。
【請求項7】
前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、操作部の操作量に応じた前記ゲイン調節量に基づいて調節し、調節した前記第2調節値を出力する、
請求項1または2に記載の線形増幅器。
【請求項8】
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される第1調節値に応じて調節する第1調節器と、前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅回路と、を有し、前記第1送信信号を出力する無線局と、
前記無線局の後段に接続される請求項1または2に記載の線形増幅器と、
を備える無線システム。
【請求項9】
前記線形増幅器は、前記第1送信信号の電力に応じて定められたALC下限値を用いて、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値未満のときは、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力し、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値以上であるときは、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する制限回路をさらに備える、
請求項8に記載の無線システム。
【請求項10】
前記制限回路は、前記第1送信信号の電力が最小となるときの前記第1調節値に応じた値である前記ALC下限値を用いる、
請求項9に記載の無線システム。
【請求項11】
前記制限回路は、前記無線局の出力の低減を指示する低減指示信号を取得すると、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する、
請求項10に記載の無線システム。
【請求項12】
前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、該第2調節値を前記目標範囲の中央値に近づけるための前記ゲイン調節量に応じて調節し、調節した前記第2調節値を出力する、
請求項8に記載の無線システム。
【請求項13】
前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、操作部の操作量に応じた前記ゲイン調節量に基づいて調節し、調節した前記第2調節値を出力する、
請求項8に記載の無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形増幅器および無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線局の後段には、アンテナに供給される送信信号の電力を所望のレベルにするために線形増幅器が接続される。線形増幅器には、出力を一定のレベルに維持するために、ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路を備えるものがある。この種の線形増幅器の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される線形増幅器は、前段の無線局が備えるALC回路に制御信号を出力することで、無線局が備える前段増幅器のゲインを調節する。この結果、送信信号の電力が一定に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-093534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線形増幅器は、動作特性が異なる種々の無線局の後段に取り付けられる。特許文献1に開示される線形増幅器のように、無線局が備えるALC回路によって前段増幅器のゲインを調節するだけでは、送信信号の電力を一定に保つことはできるが、例えばオーバーシュートのように過渡的な動作特性に応じて送信電力を一定に保つことが難しいことがある。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、前段の無線局の動作特性に応じて、送信信号の電力を維持可能な線形増幅器および無線システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る線形増幅器は、
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される第1調節値に応じて調節する第1調節器と、前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅回路と、を有し、前記第1送信信号を出力する無線局の後段に接続される線形増幅器であって、
前記無線局が出力する前記第1送信信号を減衰させる減衰器と、
前記減衰器で減衰された前記第1送信信号を増幅して第2送信信号を生成し、前記第2送信信号をアンテナに出力する第2増幅回路と、
前記第2送信信号の電力と前記第2送信信号の電力の目標値との差を低減させる第2調節値を求めるALC回路と、
前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、ゲイン調節量に応じて、前記無線局ごとに定められた調節値の目標範囲内の値に調節し、調節した前記第2調節値を、前記第1調節値として出力するゲイン調節器と、
を備える。
【0007】
好ましくは、前記減衰器は、前記第1調節器における調節量の絶対値が最小であるときの前記第1送信信号の電力に応じて定められた減衰量に基づいて、前記第1送信信号を減衰させる可変減衰器で構成される。
【0008】
好ましくは、前記第1送信信号の電力に応じて定められたALC下限値を用いて、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値未満のときは、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力し、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値以上であるときは、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する制限回路をさらに備える。
【0009】
好ましくは、前記制限回路は、前記第1送信信号の電力が最小であるときの前記第1調節値に応じた値である前記ALC下限値を用いる。
【0010】
好ましくは、前記制限回路は、前記無線局の出力の低減を指示する低減指示信号を取得すると、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する。
【0011】
好ましくは、前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、該第2調節値を前記目標範囲の中央値に近づけるための前記ゲイン調節量に応じて調節し、調節した前記第2調節値を出力する。
【0012】
好ましくは、前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、操作部の操作量に応じた前記ゲイン調節量に基づいて調節し、調節した前記第2調節値を出力する。
【0013】
本発明の第2の観点に係る無線システムは、
送信用データを変調することで生成された変調信号の振幅を、供給される第1調節値に応じて調節する第1調節器と、前記第1調節器で振幅が調節された前記変調信号を増幅して第1送信信号を生成する第1増幅回路と、を有し、前記第1送信信号を出力する無線局と、
前記無線局の後段に接続される上述の線形増幅器と、
を備える。
【0014】
好ましくは、前記線形増幅器は、前記第1送信信号の電力に応じて定められたALC下限値を用いて、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値未満のときは、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力し、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値が前記ALC下限値以上であるときは、前記ゲイン調節器が出力する調節された前記第2調節値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する制限回路をさらに備える。
【0015】
好ましくは、前記制限回路は、前記第1送信信号の電力が最小となるときの前記第1調節値に応じた値である前記ALC下限値を用いる。
【0016】
好ましくは、前記制限回路は、前記無線局の出力の低減を指示する低減指示信号を取得すると、前記ALC下限値を前記第1調節値として前記第1調節器に出力する。
【0017】
好ましくは、前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、該第2調節値を前記目標範囲の中央値に近づけるための前記ゲイン調節量に応じて調節し、調節した前記第2調節値を出力する。
【0018】
好ましくは、前記ゲイン調節器は、前記ALC回路で求められた前記第2調節値を、操作部の操作量に応じた前記ゲイン調節量に基づいて調節し、調節した前記第2調節値を出力する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る線形増幅器は、供給される第1調節値に応じて変調信号の振幅を調節する第1調節器を備える無線局の後段に接続される。線形増幅器は、アンテナに出力される第2送信信号の電力と目標値との差を低減させる第2調節値を、無線局ごとに定められた調節値の目標範囲内の値に調節し、調節した第2調節値を、第1調節値として出力する。これにより、前段の無線局の動作特性に応じて、送信信号の電力を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図
図2】実施の形態に係る線形増幅器が行う減衰量の調節処理の動作の一例を示すフローチャート
図3】実施の形態に係る線形増幅器が行うALC下限値の調節処理の動作の一例を示すフローチャート
図4】実施の形態に係る線形増幅器が行うALCゲインの調節処理の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る線形増幅器および無線システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0022】
図1に示す無線システム1は、無線局10と、無線局10の後段に接続される、具体的には、無線局10よりアンテナ41に近い位置に設けられて無線局10に接続される線形増幅器20と、アンテナ41と、を備える。無線局10は、送信用データから第1送信信号S1を生成し、第1送信信号S1を線形増幅器20に送信する。線形増幅器20は、無線局10で生成された第1送信信号S1を増幅することで第2送信信号S2を生成する。第2送信信号S2は、アンテナ41から他の無線局に送信される。他の無線局は、無線局に限られず、中継装置を含むものとする。線形増幅器20は、第2送信信号S2の電力を一定に維持するために、無線局10にALC電圧を出力する。無線局10は、ALC電圧に応じて第1送信信号S1の電力を調節する。
【0023】
無線局10は、変調部11と、第1調節器12と、第1増幅回路13と、保護回路14と、を備える。保護回路14は、固定増幅回路15と、第1調節器12と固定増幅回路15との間に設けられるダイオードD1と、を有する。
【0024】
上述の各部を制御するため、無線局10はコントローラ50を備える。コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)51と、I/O(Input/Output)52と、RAM(Random Access Memory)53と、ROM(Read-Only Memory)54と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ50から無線局10の各部への信号線が省略されている。コントローラ50は無線局10の各部にI/O52を介して接続され、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU51は、ROM54に記憶されている制御プログラムを実行して、無線局10の制御を行う。またI/O52を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM53に一時的に記憶される。CPU51は、RAM53に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、無線局10の制御を行う。
【0025】
線形増幅器20は、経路切替回路21a,21bと、減衰器22と、第2増幅回路23と、検出器24と、ALC(Automatic Level Control:自動レベル制御)回路25と、ゲイン調節器26と、制限回路27と、ループゲイン調節部29と、ALC回路25とゲイン調節器26との間に設けられるダイオードD2と、ゲイン調節器26と制限回路27との間に設けられるダイオードD3と、を備える。制限回路27は、第3増幅回路28と、制限スイッチSW1と、制限スイッチSW1に並列に接続されるダイオードD4と、を備える。
【0026】
上述の各部の制御を行うため、線形増幅器20は、コントローラ60を備える。コントローラ60は、CPU61と、I/O62と、RAM63と、ROM64と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ60から線形増幅器20の各部への信号線が省略されている。コントローラ60は線形増幅器20の各部にI/O62を介して接続され、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU61は、ROM64に記憶されている制御プログラムを実行して、線形増幅器20の制御を行う。またI/O62を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM63に一時的に記憶される。CPU61は、RAM63に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、線形増幅器20の制御、パラメータの設定等を行う。
【0027】
上記構成を有する無線局10が備える変調部11は、図示しない入力部から入力される送信用データ、例えば、音声データに対して、A/D(Analog/Digital)変換を行ってデジタル信号を生成し、定められた変調方式に従ってデジタル信号を変調して変調信号を生成する。変調方式は、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等の任意の変調方式である。変調部11は、変調信号を第1調節器12に出力する。
【0028】
第1調節器12は、保護回路14を介して線形増幅器20から供給されるALC電圧である第1調節値M1に応じて、変調信号の振幅を調節する。実施の形態では、第1調節器12は、減衰量が第1調節値M1に応じて変化する可変減衰器で構成される。第1調節器12は、減衰された変調信号を第1増幅回路13に出力する。
【0029】
保護回路14が有する固定増幅回路15は、ゲインが1、換言すれば0dBに設定されている固定ゲイン増幅器で構成される。ダイオードD1のアノードは第1調節器12に接続され、ダイオードD1のカソードは固定増幅回路15に接続される。これにより、線形増幅器20から供給されるALC電圧が負値である場合のみ、ALC電圧が第1調節値M1として第1調節器12に供給される。
【0030】
第1増幅回路13は、第1調節器12で減衰された変調信号を増幅して第1送信信号S1を生成し、第1送信信号S1を線形増幅器20に出力する。第1増幅回路13のゲインは、無線局10の目標ゲインに応じて予め定められている。
【0031】
上記構成を有する線形増幅器20が備える経路切替回路21a,21bは、線形増幅器20の動作モードに応じて、ループゲイン調節部29によって切り替えられる。経路切替回路21a,21bは連動する。具体的には、線形増幅器20が通常モードであるとき、すなわち、無線局10から供給される第1送信信号S1から第2送信信号S2を生成して他の無線局に送信するときには、経路切替回路21aは、無線局10の出力を減衰器22に接続し、経路切替回路21bは、第2増幅回路23の出力をアンテナ41および検出器24に接続する。線形増幅器20が調節モードになると、すなわち、無線システム1全体のループゲインの調節が開始されると、経路切替回路21a,21bは、無線局10の出力を検出器24に接続する。
【0032】
減衰器22は、減衰量が可変である可変減衰器で構成される。詳細には、減衰器22は、無線局10から経路切替回路21aを介して供給される第1送信信号S1を減衰量ATT1に基づいて減衰させ、減衰させた第1送信信号S1を第2増幅回路23に出力する。
【0033】
第2増幅回路23は、減衰器22で減衰された第1送信信号S1を増幅して第2送信信号S2を生成し、第2送信信号S2を、経路切替回路21bを介してアンテナ41および検出器24に出力する。第2増幅回路23のゲインは、線形増幅器20の目標ゲインに応じて予め定められている。第2送信信号S2は、アンテナ41から他の無線局に送信される。
【0034】
上述のように生成される第2送信信号S2の電力を所望の値に近づけるために、線形増幅器20は、無線局10が備える第1調節器12での調節量を制御する。具体的には、無線局10が出力する第1送信信号S1の電力の増大にともなって、第2送信信号S2の電力が増大すると、線形増幅器20は、負値であるALC電圧を無線局10に送る。無線局10が負値であるALC電圧を第1調節器12に対する第1調節値M1として用いることで、無線局10が出力する第1送信信号S1の電力が低下し、線形増幅器20が出力する第2送信信号S2の電力が一定に維持される。
【0035】
検出器24は、経路切替回路21a,21bを介して無線局10から入力される第1送信信号S1の電力または第2増幅回路23が出力する第2送信信号S2の電力を検出する。詳細には、検出器24は、入力信号、具体的には、第1送信信号S1または第2送信信号S2を抽出するCM型方向性結合器と、CM型方向性結合器の出力を検波することで、検出器24への入力信号の電力を示す検波電圧信号をALC回路25およびループゲイン調節部29に出力する検波器と、を有する。
【0036】
線形増幅器20の図示しない操作部の操作に応じた電力目標値W1が、ALC回路25に入力される。具体的には、線形増幅器20の操作部の操作によって、該線形増幅器20の前段に接続されている無線局10の周波数帯が選択される。選択された周波数帯に応じた電力目標値W1がALC回路25に入力される。電力目標値W1は、線形増幅器20の出力電力の目標値である。
【0037】
ALC回路25は、検出器24が有する検波器が出力する検波電圧信号が示す検出器24への入力信号の電力と電力目標値W1との差を低減させる第2調節値M2を求める。詳細には、ALC回路25は、電力目標値W1に応じた電圧目標値を示す電圧信号を出力する信号生成器と、信号生成器が出力する電圧信号が示す電圧目標値と検出器24が有する検波器が出力する検波電圧信号との差を増幅して第2調節値M2として出力する差動増幅回路と、を有する。差動増幅回路の出力は、ダイオードD2を介して、ゲイン調節器26に送られる。差動増幅回路の出力は、ループゲイン調節部29に送られる。
【0038】
無線局10の出力が経路切替回路21aを介して減衰器22に接続され、第2増幅回路23の出力が経路切替回路21bを介して検出器24に接続されているとき、検出器24が有する検波器は、第2送信信号S2の電力を示す検波電圧信号をALC回路25に出力する。このとき、ALC回路25が有する差動増幅回路は、第2送信信号S2の電力と電力目標値W1との差を低減させる第2調節値M2を出力する。
【0039】
ダイオードD2のアノードは、ゲイン調節器26に接続され、ダイオードD2のカソードは、ALC回路25に接続される。これによりALC回路25が出力する第2調節値M2が負値であるときにのみ、第2調節値M2がゲイン調節器26に送られる。
【0040】
ゲイン調節器26は、ゲイン調節量DPOTに応じて、第2調節値M2を無線局10ごとに定められた調節値の目標範囲内の値に調節し、調節した第2調節値M2’を、ダイオードD3を介して制限回路27に送る。ゲイン調節量DPOTは、ゲイン調節器26でのゲイン、すなわち、増幅率を示す。
【0041】
ダイオードD3のアノードは、制限回路27に接続され、ダイオードD3のカソードは、ゲイン調節器26に接続される。これによりゲイン調節器26が出力する第2調節値M2’が負値であるときにのみ、第2調節値M2’は、制限回路27に送られる。
【0042】
制限回路27が有する第3増幅回路28は、基準電圧VB1を増幅してALC下限値VL1として出力する。第3増幅回路28のゲインは、基準電圧VB1が取り得る値と線形増幅器20が接続され得る各無線局10で許容されるALC電圧の下限値に応じて定められている。
【0043】
制限スイッチSW1は、ループゲイン調節部29によって切り替えられる。制限スイッチSW1がオフであって、第2調節値M2’がALC下限値VL1未満のときは、制限回路27は、ALC下限値VL1を無線局10に出力する。制限スイッチSW1がオフであって、第2調節値M2’がALC下限値VL1以上のときは、制限回路27は、第2調節値M2’を無線局10に出力する。制限スイッチSW1がオンのときは、制限回路27は、ゲイン調節器26の出力によらず、ALC下限値VL1を無線局10に出力する。換言すれば、ALC下限値VL1を下限として制限される第2調節値M2’がALC電圧として無線局10に供給される。
【0044】
上述のように、線形増幅器20が出力する第2調節値M2’は、ALC下限値VL1を下限値として制限され、無線局10に供給される。第1調節器12は、ALC下限値VL1を下限値として制限される第2調節値M2’を第1調節値M1として用い、第1調節値M1に応じて変調信号の振幅を調節する。この結果、線形増幅器20が第1送信信号S1から生成する第2送信信号S2の電力が調節される。
【0045】
上記検出器24が有する検波器が出力する検波電圧信号およびALC回路25が出力する第2調節値M2がループゲイン調節部29に入力される。ループゲイン調節部29は、第2送信信号S2の電力を一定に維持するために、検波電圧信号および第2調節値M2に応じて、無線システム1全体のループゲインを調節する。
【0046】
詳細には、ループゲイン調節部29は、減衰器22における減衰量を決める減衰量ATT1を減衰器22に出力する。ループゲイン調節部29は、制限回路27が出力するALC下限値VL1の基準となる基準電圧VB1を第3増幅回路28に出力する。ループゲイン調節部29は、ゲイン調節器26における増幅率を決めるゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に出力する。ループゲイン調節部29は、経路切替回路21a,21bおよび制限スイッチSW1を切り替える。ループゲイン調節部29は、コントローラ60と同様に、CPU、I/O、RAM、およびROMで構成される。ループゲイン調節部29は、コントローラ60の一部の機能として実現されてもよい。
【0047】
線形増幅器20は、操作部の操作によって調節モードになると、無線システム1全体のループゲインを調節するため、図2に示す減衰量調節処理を開始する。調節モードになると、ループゲイン調節部29が経路切替回路21a,21bを制御して、経路切替回路21a,21bは、無線局10の出力を検出器24に接続する(ステップS11)。調節モードの開始時点で制限スイッチSW1はオフになっているものとする。
【0048】
ループゲイン調節部29は、ゲイン調節量DPOTの絶対値を下限値に設定する(ステップS12)。ループゲイン調節部29は、絶対値が下限値であるゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に出力する。この結果、ゲイン調節器26での増幅率が最小となるため、ゲイン調節器26での減衰量は最大となる。
【0049】
ループゲイン調節部29は、基準電圧VB1の絶対値を下限値にし、絶対値が下限値に設定された基準電圧VB1を第3増幅回路28に出力する(ステップS13)。例えば、ループゲイン調節部29は、基準電圧VB1を0にし、0に設定された基準電圧VB1を第3増幅回路28に出力する。
【0050】
上述のようにゲイン調節量DPOTおよび基準電圧VB1が設定された状態では、線形増幅器20は、無線局10が備える第1調節器12を制御することによる第2送信信号S2の電力の調節を行わない。換言すれば、第1調節器12における調節量の絶対値は最小である。
【0051】
無線局10は、送信モードであるか否かを示すモード信号を図示しない信号線を介して線形増幅器20に供給する。線形増幅器20は、モード信号に基づいて、無線局10が送信モードであるか否かを判別する(ステップS14)。無線局10が送信モードでない間は(ステップS14;No)、線形増幅器20はステップS14の処理を繰り返す。無線局10が送信モードになると(ステップS14;Yes)、検出器24は、経路切替回路21a,21bを介して無線局10から供給される第1送信信号S1の電力を検出する(ステップS15)。検出器24が有する検波器は、第1送信信号S1の信号レベルを示す検波電圧信号を出力する。
【0052】
ループゲイン調節部29は、検出器24が有する検波器から取得した検波電圧信号が示す第1送信信号S1の信号レベルをメモリに記憶する。第1送信信号S1の電力が下限電力以上であれば(ステップS16;Yes)、ループゲイン調節部29は、第1送信信号S1の電力に応じた減衰量ATT1を、減衰器22に出力する。この結果、減衰器22での減衰量が、第1送信信号S1の電力に応じた減衰量に設定される(ステップS17)。下限電力は、例えば10Wである。ステップS17において、一例として、第1送信信号S1の電力が150W以上であれば、ループゲイン調節部29は、-9dBである減衰量ATT1を減衰器22に出力する。第1送信信号S1の電力が10W以上、かつ、150W未満であれば、ループゲイン調節部29は、-6dBである減衰量ATT1を減衰器22に出力する。ステップS17の処理が完了すると、線形増幅器20は減衰量の調節処理を終了する。
【0053】
第1送信信号S1の電力が下限電力未満であれば(ステップS16;No)、ループゲイン調節部29は、減衰量ATT1を減衰器22に出力せず、線形増幅器20は減衰量の調節処理を終了する。
【0054】
上述のように、図2に示す減衰量の調節処理によって、第1調節器12での調節量の絶対値が最小であるときの第1送信信号S1の電力に応じて減衰量ATT1が設定される。
【0055】
上述の減衰量調節処理におけるステップS17の処理が行われると、減衰量ATT1が適切に設定されたとみなすことができる。線形増幅器20は、上述の減衰量調節処理におけるステップS17の処理が行われて減衰量ATT1が減衰器22に出力された場合は、減衰量の調節処理を終了した後、図3に示すALC下限値の調節処理を開始する。
【0056】
ALC下限値の調節処理が開始されると、ループゲイン調節部29は、制限スイッチSW1をオンにする(ステップS21)。これにより、ゲイン調節器26の出力によらず、ALC下限値VL1が無線局10に出力される。この結果、無線局10が有する第1調節器12は、ALC下限値VL1に応じて変調信号の振幅を調節して第1送信信号S1を生成し、第1送信信号S1を線形増幅器20に出力する。
【0057】
検出器24は、経路切替回路21a,21bを介して無線局10から供給される第1送信信号S1の電力を検出する(ステップS22)。
【0058】
第1送信信号S1の電力が閾値電力以上であって(ステップS23;Yes)、基準電圧VB1の絶対値が上限値でなければ(ステップS24;No)、ループゲイン調節部29は、基準電圧の絶対値を増加させる(ステップS25)。換言すれば、負値である基準電圧の値は減少する。閾値電力は、例えば10Wである。ステップS25の処理が完了すると、ステップS22から上述の処理が繰り返される。
【0059】
第1送信信号S1の電力が閾値電力以上であって(ステップS23;Yes)、基準電圧VB1の絶対値が上限値であるとき(ステップS24;Yes)、線形増幅器20はALC下限値の調節処理を終了する。
【0060】
第1送信信号S1の電力が閾値電力未満であって(ステップS23;No)、第1送信信号S1の電力が直前に検出された第1送信信号の電力値である直前値より減少していれば(ステップS26;Yes)、ループゲイン調節部29は、基準電圧の絶対値を増加させる(ステップS27)。この結果、負値である基準電圧の値は減少する。ステップS27の処理が完了すると、ステップS22から上述の処理が繰り返される。
【0061】
第1送信信号S1の電力が閾値電力未満であって(ステップS23;No)、第1送信信号S1の電力が直前に検出された第1送信信号の電力値である直前値より減少していなければ(ステップS26;No)、ループゲイン調節部29は、ゲイン調節量DPOTの絶対値を上限値に設定する(ステップS28)。ループゲイン調節部29は、絶対値が上限値であるゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に出力する。ゲイン調節量DPOTの絶対値が上限値に設定されると、ゲイン調節器26での増幅率が最大となるため、ゲイン調節器26における減衰量は最小となる。第1送信信号S1の電力が直前に検出された第1送信信号S1の電力値である直前値より減少していないとは、基準電圧VB1に基づくALC下限値によって、十分に第1送信信号S1の電力が低減されていて、第1送信信号S1の電力が最小であることを意味する。
【0062】
ループゲイン調節部29が経路切替回路21a,21bを切り替えることで、経路切替回路21aは、無線局10の出力を減衰器22に接続し、第2増幅回路23の出力をアンテナ41および検出器24に接続する(ステップS29)。
【0063】
ループゲイン調節部29は、制限スイッチSW1をオフにする(ステップS30)。ステップS30の処理が完了すると、線形増幅器20はALC下限値の調節処理を終了する。上記ALC下限値の調節処理によって、ALC下限値は、第1送信信号S1の電力が最小であるときの第1調節器12に供給される第1調節値M1に応じた値となる。
【0064】
図3に示すALC下限値の調節処理によって、無線局10の送信が停止されているとみなせる程度に第1送信信号S1の電力を低下させることを可能とするALC下限値VL1に対応する基準電圧VB1が設定される。
【0065】
上述のALC下限値の調節処理におけるステップS28からS30の処理が行われると、ALC下限値に対応する基準電圧VB1が適切に設定されたとみなすことができる。線形増幅器20は、上述のALC下限値の調節処理におけるステップS28からS30の処理が行われた場合は、ALC下限値の調節処理を終了した後、図4に示すALCゲインの調節処理を開始する。
【0066】
ループゲイン調節部29は、ゲイン調節量DPOTを減少させ、減少させたゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に出力する(ステップS31)。図3に示すステップS28において、ゲイン調節量DPOTの絶対値が上限値に設定されている。このため、ゲイン調節器26での増幅率が最大となり、ゲイン調節器26における減衰量は最小となる。ループゲイン調節部29は、図3に示すステップS28において上限値に設定されたゲイン調節量DPOTの絶対値を、図4に示すステップS31において減少させる。
【0067】
ループゲイン調節部29は、ALC回路25が出力する第2調節値M2と目標範囲の中央値とを比較する(ステップS32)。図3のステップS29によって経路切替回路21a,21bが切り替えられると、検出器24が有する検波器は、第2送信信号S2の電力を示す検波電圧信号を出力する。このとき、ALC回路25が有する差動増幅回路は、第2送信信号S2の電力と電力目標値W1との差を低減させる第2調節値M2を出力する。図4に示すように、第2調節値M2が目標範囲の中央値より大きく(ステップS32;Yes)、かつ、第2調節値M2が目標範囲の上限値以下であれば(ステップS33;Yes)、第2調節値M2が無線局10ごとに定められた目標範囲内にあるため、ループゲイン調節部29は、ALCゲイン調節処理を終了する。
【0068】
第2調節値M2が目標範囲の中央値より大きく(ステップS32;Yes)、かつ、第2調節値M2が目標範囲の上限値より大きければ(ステップS33;No)、ループゲイン調節部29は、目標範囲にある過去に求められた第2調節値M2に対応するゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に出力し、ゲイン調節器26における調節量は、該第2調節値M2に対応する値に設定される(ステップS34)。なおループゲイン調節部29は、第2調節値M2と該第2調節値M2に対応するゲイン調節量DPOTをメモリに記憶しておく。
【0069】
第2調節値M2が目標範囲の中央値以下であって(ステップS32;No)、ゲイン調節量の絶対値が下限値であれば(ステップS35;Yes)、ステップS34の処理が行われる。第2調節値M2が目標範囲の中央値以下であって(ステップS32;No)、ゲイン調節量の絶対値が下限値でなければ(ステップS35;No)、ステップS31から上述の処理が繰り返される。
【0070】
上述のように、図4に示すALCゲインの調節処理によって、ゲイン調節器26で調節された第2調節値M2’が無線局10ごとに定められた目標範囲内の値になるように、ゲイン調節量DPOTが設定される。詳細には、ゲイン調節器26は、ALC回路25で求められた第2調節値M2を、該第2調節値M2を目標範囲の中央値に近づけるためのゲイン調節量に応じて調節し、調節した第2調節値M2’を出力する。
【0071】
以上説明した通り、実施の形態に係る線形増幅器20によれば、減衰器22の減衰量に対応する減衰量ATT1、ALC下限値VL1に対応する基準電圧VB1、およびゲイン調節器26の増幅率を決定するゲイン調節量DPOTをループゲイン調節部29によって調節することで、第2送信信号S2の電力が一定に維持される。これにより、前段の無線局10の増幅特性に応じて、第2送信信号S2の電力を維持することが可能である。
【0072】
本発明は、上述の実施の形態の例に限られない。線形増幅器20は、以上説明した以外に様々な変形が可能である。
【0073】
第1に、線形増幅器20は、操作部の操作に応じてゲイン調節量DPOTを設定してもよい。一例として、線形増幅器20は、ゲイン調節量に関する操作部の操作量に応じて、ゲイン調節量DPOTの値を示すデータを取得し、取得したデータに基づいたゲイン調節量DPOTをゲイン調節器26に送る。このとき、操作部を操作するユーザは、ALC回路25の出力を表示するALCメータを見ながら、ALCメータの中央に設けられる目標範囲にALC回路25が出力する第2調節値M2が位置するように、操作部を操作する。ゲイン調節器26は、上記操作部の操作量に応じたゲイン調節量DPOTに基づいて第2調節値M2を調節し、調節した第2調節値M2’を出力する。
【0074】
第2に、減衰器22は、減衰量が固定されている減衰器で構成されてもよい。この場合、線形増幅器20は、図2に示す減衰量の調節処理を行わずに、図3に示すALC下限値の調節処理および図4に示すALCゲインの調節処理を行えばよい。
【0075】
第3に、線形増幅器20が接続され得る各無線局10が許容できるALC電圧に大きな違いがない場合は、第3増幅回路28は、固定値である基準電圧VB1を定められたゲインに従って増幅し、ALC下限値VL1を出力すればよい。この場合、線形増幅器20は、図3に示すALC下限値の調節処理を行わずに、図2に示す減衰量の調節処理および図4に示すALCゲインの調節処理を行えばよい。
【0076】
第4に、線形増幅器20が接続され得る各無線局10の増幅特性に大きな違いがなく、同一レベルの第2送信信号S2を得るための第1調節値M1が同じとみなせる場合は、第3増幅回路28は、固定値であるゲイン調節量DPOTに従って第2調節値M2を調節し、調節した第2調節値M2’を出力すればよい。この場合、線形増幅器20は、図4に示すALCゲインの調節処理を行わずに、図2に示す減衰量の調節処理および図3に示すALC下限値の調節処理を行えばよい。
【0077】
第5に、ループゲイン調節部29は、無線局10の出力の低減を指示する低減指示信号を取得すると、制限スイッチSW1をオンにしてもよい。この結果、ALC下限値VL1が無線局10に第1調節値M1として供給される。例えば、無線局10の出力を監視している監視装置が第1送信信号S1の異常を検出したときに、低減指示信号を線形増幅器20が備えるループゲイン調節部29に送ればよい。この結果、無線局10の電力が十分に小さい値、例えば、1W以下の値まで低減される。
【0078】
無線局10の回路構成は、上述の例に限られず、変調信号から第1送信信号S1を生成する回路であれば任意である。一例として、無線局10は、変調部11で生成される変調信号を定められた減衰量に従って減衰し、第1調節器12に出力する無線局側減衰器をさらに備えてもよい。
【0079】
線形増幅器20の回路構成は、上述の例に限られず、第1送信信号S1を増幅して第2送信信号S2を生成する回路であれば任意である。一例として、線形増幅器20は、第1送信信号S1の周波数変換を行うミキサをさらに備えてもよい。
【0080】
無線システム1の構成は、上述の例に限られない。一例として、無線システム1は、上述の送信機能に加えて、受信機能を有してもよい。
【0081】
その他、上述のハードウェア構成および回路構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 無線システム
10 無線局
11 変調部
12 第1調節器
13 第1増幅回路
14 保護回路
15 固定増幅回路
20 線形増幅器
21a,21b 経路切替回路
22 減衰器
23 第2増幅回路
24 検出器
25 ALC回路
26 ゲイン調節器
27 制限回路
28 第3増幅回路
29 ループゲイン調節部
41 アンテナ
50,60 コントローラ
51,61 CPU
52,62 I/O
53,63 RAM
54,64 ROM
ATT1 減衰量
D1,D2,D3,D4 ダイオード
DPOT ゲイン調節量
M1 第1調節値
M2,M2’ 第2調節値
S1 第1送信信号
S2 第2送信信号
SW1 制限スイッチ
VB1 基準電圧
VL1 ALC下限値
W1 電力目標値
図1
図2
図3
図4