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特開2024-145802ジオフェンス境界突入前のエンジン制御を行うハイブリッド車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145802
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ジオフェンス境界突入前のエンジン制御を行うハイブリッド車
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/16 20160101AFI20241004BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20241004BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241004BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241004BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W20/16 ZHV
B60W20/12
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60W10/26 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058314
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】国政 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA10
3D202BB00
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB19
3D202DD22
3D202DD50
3D202EE28
(57)【要約】
【課題】エンジンと二次電池との両方を搭載するハイブリッド車が抑制区域や禁止区域を通るにあたり、禁止区域に突入する前に適切な制御を行い、禁止区域の趣旨に沿って環境に適した制御ができるようにする。
【解決手段】予定走行ルートに沿って走行するにあたり、禁止区域に侵入する以前に、ジェネレータ14によりエンジン11をモータリングする掃気制御を実行し、掃気制御が継続される掃気時間は、予定走行ルートの距離が長いほど長く設定されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンと、前記車両の駆動輪を駆動させるモータと、前記モータに給電可能な二次電池と、前記エンジンをモータリング可能なジェネレータと、前記ジェネレータを制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であり、
前記制御部は、
排ガスの排出を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部と、
前記地図情報における予定走行ルートを指定するルート指定部と、
前記禁止区域内の前記予定走行ルートの距離を取得する走行距離取得部と、を備え、
前記制御部は、前記予定走行ルートに沿って走行するにあたり、前記禁止区域に侵入する以前に、前記ジェネレータにより前記エンジンをモータリングする掃気制御を実行し、前記掃気制御が継続される掃気時間は、前記予定走行ルートの距離が長いほど長く設定される、ハイブリッド車。
【請求項2】
前記制御部は、前記予定走行ルート上の前記禁止区域内に、前記二次電池を充電可能な充電施設が存在するとき、前記充電施設が存在しない場合に比べ前記掃気時間を長く設定する請求項1に記載のハイブリッド車。
【請求項3】
前記ジェネレータは、前記エンジンにより稼働されることで発電するとともに、発電した電力を前記二次電池に供給可能であり、
前記制御部は、前記予定走行ルートの距離が所定の値を超えるとき、前記掃気制御より前に、前記エンジンにより前記ジェネレータを稼働させ前記二次電池の充電量を増加又は維持する蓄電走行モードを実行する請求項1又は2に記載のハイブリッド車。
【請求項4】
前記制御部は、前記予定走行ルートの距離が所定の値以下であるとき、前記予定走行ルートに沿って走行するにあたり、前記禁止区域に侵入する以前に、前記掃気制御に代わり、前記エンジンの保温又は加温を行う調温制御を実行する請求項1又は2に記載のハイブリッド車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンと二次電池とを備えたハイブリッド車が、排ガス規制が異なる区域を通過する際の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染対策として排ガスの排出量を削減するため、特定地域でエンジンの稼働が制限されたり禁止されたりする抑制区域又は禁止区域が設定されることがある。例えば幼稚園や小学校などの周辺区域といった小規模な区域から、地方自治体単位の大規模な区域まである。海外では国家単位で設定されることもありうる。
【0003】
このような抑制区域や禁止区域を通ってハイブリッド車が走行する際には、エンジンによる走行や発電が制限されたり禁止されたりするため、場合によっては電力不足で走行不能に陥るおそれがある。このため、これら地域に進入する前に予めエンジンにより発電し二次電池の充電率を確保しておくことが望ましい。
【0004】
一方、禁止区域から抜け出る際には、多数の車両が連続してその境界付近でエンジンを始動することになる。特許文献1ではその始動するタイミングを車両ごとに分散させ、騒音や排ガスが特定箇所に集中することを防ぐ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-87614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、禁止区域に侵入する際にも注意が必要である。例えば、単に禁止区域に入る直前にエンジンを止めても、排気系に排ガスが残っており、その排ガスを禁止区域内で放出してしまうため、排ガスの放出を規制しようとする禁止区域の趣旨にそぐわなくなってしまう。
【0007】
そこでこの発明の課題は、エンジンと二次電池との両方を搭載するハイブリッド車が抑制区域や禁止区域を通るにあたり、禁止区域に突入する前に適切な制御を行い、禁止区域の趣旨に沿って環境に適した制御ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
車両に搭載されるエンジンと、前記車両の駆動輪を駆動させるモータと、前記モータに給電可能な二次電池と、前記エンジンをモータリング可能なジェネレータと、前記ジェネレータを制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であり、
前記制御部は、
排ガスの排出を禁止する禁止区域の情報を含む地図情報を得る地図情報取得部と、
前記地図情報における予定走行ルートを指定するルート指定部と、
前記禁止区域内の前記予定走行ルートの距離を取得する走行距離取得部と、を備え、
前記制御部は、前記予定走行ルートに沿って走行するにあたり、前記禁止区域に侵入する以前に、前記ジェネレータにより前記エンジンをモータリングする掃気制御を実行し、前記掃気制御が継続される掃気時間は、前記予定走行ルートの距離が長いほど長く設定される、ハイブリッド車とする第一の解決手段により、上記の課題を解決したのである。
【0009】
また、この発明にかかるハイブリッド車は、第一の解決手段に加えて、
前記制御部は、前記予定走行ルート上の前記禁止区域内に、前記二次電池を充電可能な充電施設が存在するとき、前記充電施設が存在しない場合に比べ前記掃気時間を長く設定する第二の解決手段を採用できる。
【0010】
さらに、この発明にかかるハイブリッド車は上記の第一又は第二の解決手段に加えて、
前記ジェネレータは、前記エンジンにより稼働されることで発電するとともに、発電した電力を前記二次電池に供給可能であり、
前記制御部は、前記予定走行ルートの距離が所定の値を超えるとき、前記掃気制御より前に、前記エンジンにより前記ジェネレータを稼働させ前記二次電池の充電量を増加又は維持する蓄電走行モードを実行する第三の解決手段を採用できる。
【0011】
さらにまた、この発明にかかるハイブリッド車は、上記の第一又は第二の解決手段に加えて、
前記制御部は、前記予定走行ルートの距離が所定の値以下であるとき、前記予定走行ルートに沿って走行するにあたり、前記禁止区域に侵入する以前に、前記掃気制御に代わり、前記エンジンの保温又は加温を行う調温制御を実行する第四の解決手段を採用できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかるハイブリッド車では、禁止領域に侵入する前に掃気を行うことにより、禁止領域への侵入後に排ガスを排出してしまうことを抑制できる。なおかつ、禁止領域の予定滞在時間が短い場合には、エンジンの温度低下につながる掃気を行う時間を短くすることで、再稼働に備えてエンジンの暖機状態をできるだけ維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明にかかるハイブリッド車の実施形態例の機能ブロック図
図2】(a)ジオフェンスAの通過が短距離かつ寄り道なしで予定滞在時間が短時間の場合の予定走行ルート例図、(b)(a)の場合のモード変遷例図
図3】(a)ジオフェンスAの通過が短距離かつ寄り道ありで予定滞在時間が中時間の場合の予定走行ルート例図、(b)(a)の場合のモード変遷例図
図4】(a)ジオフェンスAの通過が短距離かつジオフェンスA内で充電し予定滞在時間が長時間の場合の予定走行ルート例図、(b)(a)の場合のモード変遷例図
図5】(a)ジオフェンスAの通過が長距離かつ寄り道なしで予定滞在時間が中時間の場合の予定走行ルート例図、(b)(a)の場合のモード変遷例図
図6】(a)ジオフェンスAの通過が長距離かつ寄り道ありで予定滞在時間が長時間の場合の予定走行ルート例図、(b)(a)の場合のモード変遷例図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を図1に示すハイブリッド車1の機能ブロック図の例を用いて説明する。この発明は、エンジン11と二次電池12と、エンジン11により稼働されて発電するジェネレータ14と、これらにより給電されて稼働し車両の駆動輪を駆動させるモータ13とを有する、ハイブリッド車1である。二次電池12にはエンジン11によりジェネレータ14を駆動して発電される電力によって充電される他に、外部電源からの外部充電が可能であるプラグインハイブリッド車(PHEV)であってもよい。また、図示しないものの、二次電池12は外部へ給電する外部給電も可能であってもよい。
【0015】
この発明にかかるハイブリッド車1は、二次電池12からの給電のみでモータ13を稼働させ、エンジン11を稼働させないEV走行モードや、エンジン11の出力により稼働されたジェネレータ14の発電電力をモータ13に給電しモータ13を稼働させるシリーズ走行モード、二次電池12からの給電によりモータ13を稼働させるとともにエンジン11を稼働させるパラレル走行モードを有する。
【0016】
この発明にかかるハイブリッド車1は、ハイブリッド車1の機能について電子的な制御を行う制御部20を有する。これらは半導体演算装置とメモリとを有し、アクセル等の操作装置の操作による出力要求を受けて、エンジン11とモータ13とを含む各部位へ稼働指示や出力指示等の命令を送るとともに、各部位からデータを取得する。制御部20は記憶されたプログラムの実行によって実現する機能や、専用の回路による機能として、下記の各部を有する。
【0017】
制御部20は、GPS等の衛星測位システムに対応したアンテナ27からの情報により、位置情報を取得する位置情報取得部21を有する。
【0018】
制御部20は、排ガスの排出を抑制又は禁止する規制区域であるジオフェンスの情報を含む地図情報を得る地図情報取得部22を有する。ここで規制区域としては、内燃機関の稼働を禁止する禁止区域と、内燃機関の出力に制限を設け排ガスの排出量を抑制する抑制区域とがある。抑制区域には、排ガスの排出量についての数値的な情報が含まれていてもよく、制限の度合いに強弱があってもよい。これらの規制区域は、地図上においてどの住所区分や自治体単位で規制区域であるか否かの属性情報として地図情報に記録されていてもよいし、地図に重なる情報として所定の地点から所定の距離が規制区域であると規定されていてもよい。すなわち、地図情報とともに道路上のどこが規制区域にあたるのかを確認できるのであれば、形式は特に限定されない。これらの地図情報を取得するための取得元は、ハイブリッド車1が有する地図情報データベース28に記録されたものでもよいし、移動体通信網を介して適宜ダウンロードされるものでもよい。以下の説明ではハイブリッド車1が有する地図情報データベース28に、ジオフェンスの情報が記録されている形態を主な例として説明するが、これに限定されるものではない。
【0019】
制御部20は、前記地図情報における予定走行ルートをドライバーからの入力によって指定するルート指定部23を有する。制御部20は、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)を介して、ルート検索機能によるルート候補を提示した上での選択や、ドライバーによる手入力などにより、目的地までの予定走行ルートについての指示を受け取り、予定走行ルートを指定して、メモリに登録する。この予定走行ルートは、上記のジオフェンスの情報と照らし合わせることで、ルート上のどの区間が禁止区域又は抑制区域であるかを確認できる。
【0020】
さらに、制御部20は、上記の予定走行ルートのデータから、その予定走行ルートにおける禁止区域の予定滞在時間を求める滞在時間予測部26を有する。この滞在時間予測部26による予定滞在時間の算出は、禁止区域への侵入前に実行される。予定滞在時間は、禁止区域内の予定走行ルートにおける走行距離(予定走行距離)、および法定制限速度などから求められる運転時間が含まれる。すなわち、制御部20は、予定走行距離を取得する走行距離取得部24を有する。予定滞在時間は、上記の運転時間に加えて、ドライバーからの入力により、禁止区域内で立ち寄る予定である施設の推定滞在時間を含んでいてもよい。推定滞在時間も考慮することで、より詳細に予定滞在時間を求めることができる。施設としては、例えば商業施設や観光地、充電施設、パーキングエリア、サービスエリアなどが挙げられる。これらの施設の種別と目的により滞在時間への影響は異なる。「サービスエリアでのトイレ休憩」ならば滞在時間の加算は比較的短時間であり、「給電スポットで二次電池12を充電」ならば滞在時間の加算は比較的長時間となる。なお、「トイレ休憩」や「二次電池12の充電」など、施設での目的もドライバーからの入力により取得することで、より正確な推定滞在時間を算出することもできるが、立ち寄る予定である施設のみを取得し、施設の種別のみから推定滞在時間を算出してもよい。例えば、コンビニやスーパーなどは、比較的短時間の買い物である場合が多く、滞在時間は短いと推定される。一方、商業施設や観光地などは、比較的長時間の滞在が推定される。また、給電スポットの場合は、二次電池12の充電が予想されるため、給電スポットへの到着時の推定充電率から充電完了までの時間を予測することで、滞在時間を推定することができる。
【0021】
制御部20は、エンジン11の燃料噴射を停止した状態でエンジン11のスロットルバルブを開き、ジェネレータ14によりエンジン11をモータリングすることで、エンジン11の排気管内に残留するガスを掃気する掃気制御を行う。制御部20は、掃気制御を継続する時間(掃気時間)を、運転時間、すなわち予定走行距離に基づき変更する。具体的には、運転時間が短いほど(予定走行距離が短いほど)、掃気時間を短く設定する。なお、掃気時間は、最短で0としてもよい。掃気制御は、禁止区域に侵入する前に実施される。
【0022】
制御部は、予定走行ルート上の禁止区域内に充電施設を確認したとき、運転時間に応じて設定された掃気時間を長く変更するとよい。
【0023】
制御部20は、運転時間が所定の値以下であるとき、エンジン11を保温又は加温するように制御する調温制御をしてもよい。
【0024】
エンジン11の保温を行う制御を「保温制御」と呼ぶ。このモードではエンジン11の冷却水36の流量を通常よりも抑制してエンジン11を冷えにくくしたり、ラジエータ熱放射を抑えたりすることで、エンジン11に熱が保持されるようにする。
【0025】
エンジンの加温を行う制御を「加温制御」と呼ぶ。このモードではエンジン11による発電負荷を上げて、エンジン11の温度を高める。このとき、エンジン冷却水36を止めるなど、エンジン冷却水36の流量を保温制御よりもさらに抑制するようにしてもよい。
【0026】
ハイブリッド車1は、走行モードとして、モータ13により走行しつつエンジン11により発電を行う、セーブモードとチャージモードとを含む、蓄電走行モードを有する。セーブモードは、現在の二次電池12の充電量を維持するように、すなわちモータ13による電力消費を賄える程度にエンジン11により発電を行うモードである。チャージモードは、二次電池12の充電量を現在より増加させるように、すなわちモータ13による電力消費を上回るようにエンジン11により発電を行うモードである。予定走行距離が所定の値以上であるとき、禁止区域を抜けるまでに相応の電力量が必要となるため、禁止区域への侵入前にセーブモード、若しくはチャージモードを行うことが望ましい。
【0027】
制御部20は、禁止区域に侵入する前に運転時間に応じて次のように制御を切り替える。
【0028】
次の(1)から(5)のそれぞれの状況を図2図6の経路概念図に示す。予定走行ルートが図中の曲線矢印である。走行開始地点と走行終了地点(目的地)は、排ガスの排出量に関する規制が緩くエンジン11の稼働が可能な抑制区域であるジオフェンスBである。予定走行ルートは途中で、内燃機関の稼働と排ガスの排出を規制するジオフェンスAを通過する。
【0029】
(1)予定走行距離が短距離&寄り道なしにより予定滞在時間が短時間:図2に示すように、ジオフェンスAを走行する距離が短く、サービスエリアなどの施設への滞在もない状況である。滞在時間予測部26は、滞在時間を所定の第1の値以下の時間として「短時間」と判定する。制御部20は、掃気時間を最小時間0と設定する。ここで、ジオフェンスBの走行中に、位置情報から推測される禁止区域への侵入までの時間が所定の時間以下となる箇所を突入領域、禁止区域への侵入までの時間が所定の時間を超える箇所を走行領域とする。制御部20は、突入領域で保温制御を行い、禁止区域へ侵入する際にエンジン11を停止する。ジオフェンスAを抜けた後は必要に応じてエンジン11を再稼働させる。禁止区域へ侵入する際は、排気管内の残留ガスを排出しておくことが好ましいが、残留ガスの排出のために掃気制御を行うと、エンジン11の燃焼が無い状態で外気が取り込まれることになるのでエンジン11の温度が低下する。ジオフェンスAを抜けた後は必要に応じてエンジン11は再稼働されるが、この時点でエンジン11の温度が低いと、エンジン11再稼働時の排ガス状態が悪化する。(1)の例では、禁止区域内の予定滞在時間が短時間であり、すぐにエンジン11が再稼働されると予想されるため、掃気制御を行わない(掃気時間を最小とする)とともに保温制御を行うことでエンジン11の温度低下を抑制する。
【0030】
(2)予定走行距離が短距離&寄り道ありにより予定滞在時間が中時間:図3に示すように、ジオフェンスAを走行する距離が短いが、ジオフェンスA内でサービスエリアなどの施設への短時間の滞在を行う状況である。滞在時間予測部26は、滞在時間を所定の第1の値かつ、第1の値よりも大きい所定の第2の値以下の時間として「中時間」と判定する。制御部20は、掃気時間を最小時間0と設定する。制御部20は、突入領域で加温制御を行い、禁止区域へ侵入する際にエンジン11を停止する。ジオフェンスAを抜けた後は必要に応じてエンジン11を再稼働させる。(2)の例では、(1)の例と同様の予定走行距離ではあるが、寄り道があるためジオフェンスA内でのエンジン11の温度がより低下すると予測される。すなわち、(1)のような保温制御では足りないが、エンジン11の温度を予め高くしておけば禁止区域を抜けた際のエンジン11の温度を良好にできると考えられる。そこで、突入領域で加温制御を行い、エンジン11の温度を上昇させることで、禁止区域を抜けてエンジン11が再稼働される際の排ガス状態の悪化を抑制する。
【0031】
(3)予定走行距離が短距離&ジオフェンスA内での充電により予定滞在時間が長時間:図4に示すように、ジオフェンスAを走行する距離が短いが、ジオフェンスA内で給電スポットでの二次電池12の充電を行う状況である。滞在時間予測部26は、滞在時間を第2の値を超える時間として「長時間」と判定する。制御部20は、掃気時間を0より大きい値に設定する。突入領域に至ったら、掃気制御を開始し、禁止区域へ侵入する際にエンジン11を停止する。(3)の例では、(1)および(2)の例と同様の予定走行距離ではあるが、給電スポットでの充電の間にエンジン11の温度は大きく低下すると予測される。特に、(3)の例では、給電スポットでの二次電池12の充電という明確な目的があるため、長時間の滞在が高い確率で予測できる。よって、(1)および(2)に比べ掃気時間を長くする。すなわち、禁止区域内の滞在によりエンジン11の温度は低下すると予測されるので、掃気制御を行い、禁止区域へ侵入する前に、排気管内の残留ガスを排出する。なお、このとき、給電スポットでの二次電池12の充電時間を予測し、充電時間が長くなるほど掃気時間を長くしてもよい。
【0032】
(4)予定走行距離が長距離&寄り道なしにより予定滞在時間が中時間:図5に示すように、ジオフェンスAを走行する距離が長く、ジオフェンスA内でサービスエリアなどの施設への滞在がない状況である。滞在時間予測部26は、滞在時間を第1の値を超え第2の値以下の時間として「中時間」と判定する。制御部20は、掃気時間を0より大きい値に設定し、突入領域で掃気制御を行い、禁止区域へ侵入する際にエンジン11を停止する。(4)の例では、(1)の例に比べ予定走行距離が長く、ジオフェンスA内の走行中にエンジン11の温度が低下すると予測される。すなわち、ジオフェンスA内でのエンジン11の温度を確保しておく必要が無い(確保することが難しい)ので、突入領域で掃気制御を行い、禁止区域へ侵入する前の排気管内の残留ガスの排出を優先する。なお、(4)の例では、(2)の例と同様の予定滞在時間となっているため、(2)同様に突入領域で掃気制御を行わず、加温制御としてもよいが、(4)では予定走行距離が長距離であり、急な寄り道が発生する可能性があり、予定滞在時間を超えてジオフェンスAに滞在する可能性があるので、本実施形態では加温制御による加温が不足することを考慮し、掃気制御を行うものとしている。このように、予定走行距離に応じて掃気制御の時間を変更することで、急な寄り道の可能性を考慮することができる。掃気時間は、予定走行距離が長くなるほど大きな値としてもよい。
【0033】
また、この場合、ジオフェンスA内を長距離にわたって充電せずにEV走行で走破する必要がある。制御部20は、突入領域に入るよりさらに前の走行領域で、二次電池12の充電量を維持するセーブモード、又は充電量を増加するチャージモードのいずれかの走行モードでの走行を行うことで、ジオフェンスA内をEV走行で走破するための電力を確保する。予定走行距離等から推定される、ジオフェンスAを抜け出るまでに必要な充電量がすでにあるのならばセーブモードでよく、推定される充電量に足りなければチャージモードとする運用が挙げられる。
【0034】
(5)予定走行距離が長距離&寄り道ありにより予定滞在時間が長時間:図6に示すように、ジオフェンスAを走行する距離が長く、ジオフェンスA内でサービスエリアなどの施設への滞在を行う状況である。滞在時間予測部26は、滞在時間を第2の値を超える時間として「長時間」と判定する。制御部20は、は掃気時間を0より大きい値に設定する。このとき、(5)の例では、(4)の例より掃気時間を大きくする。すなわち、(5)では(4)と同様の予定走行距離であるが、寄り道があり予定滞在時間が長くなるため、エンジン11の温度低下を無視し、より確実な掃気のために掃気時間を大きくする。この場合、掃気の開始が前倒しされる。すなわち、突入領域が長くなる。そして、突入領域で掃気制御を行い、禁止区域へ侵入する際にエンジン11を停止する。なお、突入領域より前の走行領域において、(4)のようにセーブモードやチャージモードでの走行を行ってもよい。また、(4)での予定走行距離が最大値以上(加温制御を行ってもカバーできない程度にエンジン11の温度が低下するほどの運転時間)の場合には、掃気時間を最大時間とし、(5)での掃気時間も(4)と同様としてもよい。
【0035】
また、(4)での施設への滞在がジオフェンスA内で給電スポットでの二次電池12の充電である場合、ジオフェンスA内を長距離にわたって走行するが、途中で充電を行うため、禁止区域への侵入前に確保しておく充電量は、禁止区域を抜け出るまでに必要な充電量ではなく、途中の給電スポットまでの充電量を確保すればよい。このため、走行領域での走行モードが、チャージモードではなくセーブモードで済む場合や、セーブモードすら選択せずに通常の走行モードで済む場合がある。この判断は、走行領域での二次電池12の充電量と、ジオフェンスAとの境界からジオフェンスA内の給電スポットまでの距離に応じて判断すればよい。
【0036】
なお、上記(1)~(3)の場合にも、ジオフェンスAを抜け出るまで、またはジオフェンスA内の給電スポットまでに必要な電力量が不足する場合は、走行領域においてセーブモードやチャージモードでの走行を行ってよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ハイブリッド車
11 エンジン
12 二次電池
13 モータ
14 ジェネレータ
20 制御部
21 位置情報取得部
22 地図情報取得部
23 ルート指定部
24 走行距離取得部
26 滞在時間予測部
27 アンテナ
28 地図情報データベース
36 エンジン冷却水
図1
図2
図3
図4
図5
図6