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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145803
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058315
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】八十嶋 司
(72)【発明者】
【氏名】林 志桜里
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA15
5F047BA21
5F047BB11
5F047CA00
5F047FA22
(57)【要約】
【課題】フィレットの形成を抑制できるとともに、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】第二部材の接合面は矩形状をなしており、第一部材の搭載面の一部に金属粉と溶媒とを含む金属ペーストを塗布する金属ペースト塗布工程を有し、前記金属ペースト塗布工程において前記第一部材の前記搭載面に形成される塗布パターンは、前記第二部材の接合面がなす矩形状の辺部分が前記接合面の内側に後退し、前記金属ペーストが塗布されていないペースト欠損領域と、前記第二部材の前記接合面がなす矩形状の角部部分から前記金属ペーストが外側にはみ出したペースト張出領域と、を備えている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の搭載面の一部に、金属の焼結体からなる接合層を介して第二部材が接合された接合体を製造する接合体の製造方法であって、
前記第二部材の接合面は矩形状をなしており、
前記第一部材の前記搭載面の一部に金属粉と溶媒とを含む金属ペーストを塗布する金属ペースト塗布工程と、塗布した前記金属ペーストの上に前記第二部材を積層する積層工程と、前記金属ペーストを介して積層した前記第一部材と前記第二部材とを加熱処理して前記金属ペーストを焼結し、焼結体からなる前記接合層を形成して前記第一部材と前記第二部材とを接合する焼結工程と、を有し、
前記金属ペースト塗布工程において前記第一部材の前記搭載面に形成される塗布パターンは、前記第二部材の接合面がなす矩形状の辺部分が前記接合面の内側に後退し、前記金属ペーストが塗布されていないペースト欠損領域と、前記第二部材の前記接合面がなす矩形状の角部部分から前記金属ペーストが外側にはみ出したペースト張出領域と、を備えていることを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記接合面がなす前記矩形状の1辺の長さをLとして、前記接合面がなす前記矩形状の1辺の中心からそれぞれ1/4L長さ、かつ、前記1辺から内側へ1/4L長さの領域である辺中心領域における前記ペースト欠損領域が占める面積率が10%以上70%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記ペースト張出領域の面積S1と前記第二部材の前記接合面の面積S0との比S1/S0が8%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第一部材が基板であり、前記第二部材が電子部品であり、前記接合体が電子デバイスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材の搭載面の一部に金属の焼結体からなる接合層を介して第二部材が接合された接合体を製造する接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、LEDやパワーモジュールといった電子デバイスは、金属部材からなる回路層を備えた基板の上に半導体素子等の電子部品が接合された構造とされている。
ここで、半導体素子等の電子部品を基板の搭載面に接合する際には、例えば特許文献1に示すように、はんだ材を用いた方法が広く使用されている。
また、特許文献2には、めっき膜とSn系はんだ層を形成し、熱処理によってこれらを合金化して合金層を形成し、電子部品を基板に実装する技術が提案されている。
【0003】
さらに、特許文献3-6には、銀粉と有機溶媒を含む金属ペーストを用いて、半導体素子等の電子部品を基板の搭載面に接合する技術が提案されている。この金属ペーストにおいては、導電性の焼結体からなる接合層が形成され、この接合層を介して半導体素子等の電子部品の基板の搭載面に接合されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-271782号公報
【特許文献2】特許第6459656号公報
【特許文献3】特許第6428339号公報
【特許文献4】特許第6712620号公報
【特許文献5】特許第6845385号公報
【特許文献6】特開2021-073639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1,2に記載されたように、はんだ材を用いて、部材同士を接合した場合には、部材同士の間に形成される接合層には、金属間化合物が生成しており、熱伝導率が比較的低くなるおそれがあった。さらに、温度サイクルを負荷した際に接合層にクラックが生じ易く、接合信頼性が低下するおそれがあった。
さらに、はんだ材を介して半導体素子等の電子部品と基板とを接合した場合には、高温環境下で使用した際にはんだの一部が溶融し、半導体素子等の電子部品と基板と接合信頼性が低下するおそれがあった。
特に、最近では、半導体素子自体の耐熱性が向上しており、かつ、半導体装置が自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることがあり、従来のようにはんだ材で接合した構造では対応が困難となってきている。
【0006】
一方、特許文献3-6に記載された金属ペーストにおいては、接合層が金属の焼結体で構成されていることから、熱伝導率に優れており、接合信頼性にも優れている。
また、金属の焼結体によって接合層を形成した場合には、比較的低温条件で接合層を形成できるとともに接合層自体の融点は高くなるため、高温環境下においても接合強度が大きく低下しない。
【0007】
しかしながら、上述の金属ペーストにおいては、溶媒として有機成分を含んでいるため、焼結体からなる接合層を形成する際に、接合界面に有機成分が残存し、接合層にクラックやボイドが生じるおそれがあった。特に、無加圧で接合した場合には、有機成分が急激に揮発し易く、クラックが発生しやすい状況にある。
【0008】
また、通常、電子部品と基板とを接合する際には、特許文献6の段落番号0101に記載されているように、電子部品の接合面と同一の形状および面積で、基板の搭載面に金属ペーストを塗布し、塗布した金属ペーストの上に電子部品を載置して焼結している。なお、電子部品の接合面は、通常、矩形状をなしている。
ここで、塗布した金属ペーストの上に電子部品を載置した際には、金属ペーストが電子部品の接合面がなす矩形状の1辺から外側にはみ出し、焼結後にフィレットが形成されることがある。
最近では、電子部品の薄肉化が図られており、上述のフィレットが形成されると短絡が生じるおそれがある。このため、信頼性の高い電子デバイスを安定して製造することができないおそれがあった。
【0009】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、フィレットの形成を抑制できるとともに、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の態様1の接合体の製造方法は、第一部材の搭載面の一部に、金属の焼結体からなる接合層を介して第二部材が接合された接合体を製造する接合体の製造方法であって、前記第二部材の接合面は矩形状をなしており、前記第一部材の前記搭載面の一部に金属粉と溶媒とを含む金属ペーストを塗布する金属ペースト塗布工程と、塗布した前記金属ペーストの上に前記第二部材を積層する積層工程と、前記金属ペーストを介して積層した前記第一部材と前記第二部材とを加熱処理して前記金属ペーストを焼結し、焼結体からなる前記接合層を形成して前記第一部材と前記第二部材とを接合する焼結工程と、を有し、前記金属ペースト塗布工程において前記第一部材の前記搭載面に形成される塗布パターンは、前記第二部材の接合面がなす矩形状の辺部分が前記接合面の内側に後退し、前記金属ペーストが塗布されていないペースト欠損領域と、前記第二部材の前記接合面がなす矩形状の角部部分から前記金属ペーストが外側にはみ出したペースト張出領域と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明の態様1の接合体の製造方法によれば、前記金属ペースト塗布工程において前記第一部材の前記搭載面に形成される塗布パターンが、前記第二部材の前記接合面がなす矩形状の角部部分から前記金属ペーストが外側にはみ出したペースト張出領域を備えているので、塗布した前記金属ペーストを介して第一部材と第二部材とを積層した際に、塗布した金属ペーストの一部が外部に向けて露出した部分が形成される。このため、焼結工程において金属ペーストを焼結する際に、この露出した部分から有機成分の排出が促進されることになり、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制することができる。
そして、前記金属ペースト塗布工程において前記第一部材の前記搭載面に形成される塗布パターンが、前記第二部材の接合面がなす矩形状の4辺部分が内側に後退し、前記金属ペーストが塗布されていないペースト欠損領域を備えているので、塗布した前記金属ペーストを介して第一部材と第二部材とを積層した際に、金属ペーストが第二部材の接合面がなす矩形状の1辺部分から外側に大きくはみ出すことがなくなり、フィレットの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の態様2の接合体の製造方法は、本発明の態様1の接合体の製造方法において、前記接合面がなす前記矩形状の1辺の長さをLとして、前記接合面がなす前記矩形状の1辺の中心からそれぞれ1/4L長さ、かつ、前記1辺から内側へ1/4L長さの領域である辺中心領域における前記ペースト欠損領域が占める面積率が10%以上70%以下の範囲内とされていることを特徴としている。
本発明の態様2の接合体の製造方法によれば、前記接合面がなす前記矩形状の1辺の長さをLとして、前記接合面がなす前記矩形状の1辺の中心からそれぞれ1/4L長さ、かつ、前記1辺から内側へ1/4L長さの辺中心領域における前記ペースト欠損領域が占める面積率が10%以上70%以下の範囲内とされているので、金属ペーストが第二部材の1辺部分から外側に大きくはみ出すことがなくなり、フィレットの発生を確実に抑制することができる。
【0013】
本発明の態様3の接合体の製造方法は、本発明の態様1又は態様2の接合体の製造方法において、前記ペースト張出領域の面積S1と前記第二部材の前記接合面の面積S0との比S1/S0が8%以上であることを特徴としている。
本発明の態様3の接合体の製造方法によれば、前記ペースト張出領域の面積S1と前記第二部材の前記接合面の面積S0との比S1/S0が8%以上とされているので、前記ペースト張出領域の面積が確保され、有機成分の排出が促進されることになり、接合層におけるクラックやボイドの発生をさらに抑制することができる。
【0014】
本発明の態様4の接合体の製造方法は、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの接合体の製造方法において、前記第一部材が基板であり、前記第二部材が電子部品であり、前記接合体が電子デバイスであることが好ましい。
本発明の態様4の接合体の製造方法によれば、前記第一部材が基板とされ、前記第二部材が電子部品とされ、前記接合体が電子デバイスとされているので、接合層におけるクラックやボイドの発生が抑制されるとともに、フィレットの発生が抑制された信頼性の高い電子デバイスを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィレットの形成を抑制できるとともに、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法によって製造される接合体の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法を示すフロー図である。
図3】金属ペースト塗布工程における金属ペーストの塗布パターンを示す説明図である。
図4】辺中心領域における前記ペースト欠損領域が占める面積率の説明図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る接合体の製造方法における金属ペーストの塗布パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態である接合体の製造方法について説明する。
本実施形態である接合体の製造方法は、第一部材11と第二部材12とが接合層13を介して接合された接合体10を製造するものである。
【0018】
本実施形態における接合体10は、図1に示すように、第一部材11の搭載面の一部に、金属の焼結体からなる接合層13を介して第二部材12が接合されたものである。本実施形態では、接合体10は、絶縁回路基板の回路層(第一部材11)の搭載面の一部に、接合層13を介して半導体素子(第二部材12)が接合された半導体装置(電子デバイス)とされている。
【0019】
ここで、本実施形態である接合体10の製造方法について、図2および図3を参照して説明する。
本実施形態である接合体10の製造方法は、金属ペースト塗布工程S01と、積層工程S02と、焼結工程S03と、を備えている。
【0020】
(金属ペースト塗布工程S01)
まず、第一部材11の搭載面の一部に、金属粉と溶媒とを含む金属ペースト23を塗布する。
本実施形態においては、金属ペースト23として、銀粉を含有するAgペーストを用いている。なお、金属ペースト23に特に制限はなく、例えば、銅粉を含有するCuペースト等を用いてもよい。
【0021】
そして、本実施形態においては、図3に示すように、第一部材11の搭載面に形成される金属ペースト23の塗布パターン25は、第二部材12の接合面がなす矩形状の4辺部分が内側に後退し、金属ペースト23が塗布されていないペースト欠損領域25aと、第二部材12の接合面がなす矩形状の角部部分から金属ペースト23が外側にはみ出したペースト張出領域25bと、を備えている。
本実施形態において、塗布パターン25は、図3に示すように、搭載面に対向する方向から見て、第二部材12の接合面がなす矩形状の4辺の長さ中心部が内側に湾曲して凹み、4つの角部部分が対角線上に延在してはみ出した概略十字手裏剣状をなしている。
【0022】
本実施形態においては、図4に示すように、第二部材12の接合面がなす前記矩形状の1辺の長さをLとして、この接合面がなす矩形状の1辺の中心からそれぞれ1/4L長さ、かつ、前記1辺から接合面の内側へ1/4L長さの領域である辺中心領域Aにおいてペースト欠損領域25aが占め面積率(ペースト欠損領域25aの占有率)が10%以上70%以下の範囲内とされていることが好ましい。
また、ペースト張出領域25bの面積S1と第二部材12の接合面の面積S0との比(ペースト張出領域25bの面積比)S1/S0が8%以上であることが好ましい。
【0023】
この金属ペースト塗布工程S01においては、金属ペースト23の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、メタルマスク法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等を適用することができる。本実施形態では、第一部材11の搭載面に、スクリーン印刷によって、金属ペースト23を印刷している。
また、金属ペースト23の塗布厚さは、20μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0024】
ここで、塗布する金属ペースト23は、銀粉と溶媒とを含むものである。なお、銀粉および溶媒の他に、必要に応じて、樹脂、分散剤、可塑剤等を含有していてもよい。
銀粉としては、純度が99mass%以上、平均粒径が10nm以上10μm以下の物を用いることが好ましい。また、特定の粒度分布を有する銀粒子群を複数混合したものであってもよい。
【0025】
溶媒としては、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、アセテート系溶媒、炭化水素系溶媒、およびこれらの混合物等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、α-テルピネオール、イソプロピルアルコール、エチルヘキサンジオール、およびこれらの混合物等があり、グリコール系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物等があり、アセテート系溶媒としては、ブチルカルビトールアセテート等があり、炭化水素系溶媒としては、デカン、ドデカン、テトラデカン、およびこれらの混合物等がある。
【0026】
また、金属ペースト23として、特許第6930578号公報に記載されているAgペーストを用いることもできる。
【0027】
(積層工程S02)
次に、第一部材11の搭載面に塗布した金属ペースト23の上に第二部材12を積層する。なお、第一部材11の搭載面に塗布した金属ペースト23を乾燥した後に第二部材12を積層してもよいし、乾燥させることなく第二部材12を積層してもよい。
ここで、金属ペースト23の塗布パターン25が上述のように規定されているので、積層した第二部材12の角部部分から、塗布した金属ペースト23の一部がはみ出して露出されることになる。
【0028】
(焼結工程S03)
次に、金属ペースト23を介して積層された第一部材11および第二部材12を加熱処理し、金属ペースト23を焼結し、金属の焼結体からなる接合層13を形成し、第一部材11と第二部材12とを接合する。
なお、焼結工程S03においては、保持温度は200℃以上300℃以下の範囲内、保持時間が0分以上120分以下の範囲内とすることが好ましい。
さらに、焼結工程S03における昇温速度は10℃/min以上50℃/min以下の範囲内とすることが望ましい。
【0029】
上述の工程により、本実施形態である接合体10が製造されることになる。
【0030】
以上のような構成とされた本実施形態である接合体の製造方法によれば、金属ペースト塗布工程S01において、第一部材11の搭載面に形成される金属ペースト23の塗布パターン25が、第二部材12の接合面がなす矩形状の角部部分から金属ペースト23が外側にはみ出したペースト張出領域25bを備えているので、塗布した金属ペースト23を介して第一部材11と第二部材12とを積層した際に、塗布した金属ペースト23の一部が接合界面から外部に向けて露出した部分が形成される。このため、焼結工程S03において金属ペースト23を焼結する際に、この露出した部分から有機成分の排出が促進されることになり、接合層13におけるクラックやボイドの発生を抑制することができる。
【0031】
そして、金属ペースト塗布工程S01において、第一部材11の搭載面に形成される金属ペースト23の塗布パターン25が、第二部材12の接合面がなす矩形状の4辺部分が内側に後退し、金属ペースト23が塗布されていないペースト欠損領域25aを備えているので、塗布した金属ペースト23を介して第一部材11と第二部材12とを積層した際に、金属ペースト23が第二部材12の1辺部分から外側に大きくはみ出すことがなくなり、フィレットの発生を抑制することができる。
【0032】
ここで、本実施形態において、第二部材12の接合面がなす矩形状の1辺の長さをLとして、第二部材12の接合面がなす矩形状の1辺の中心からそれぞれ1/4L長さ、かつ、前記1辺から内側へ1/4L長さの辺中心領域Aにおけるペースト欠損領域25aが占める面積率が10%以上とされている場合には、金属ペースト23が第二部材12の接合面がなす矩形状の1辺部分から外側に大きくはみ出すことがなくなり、フィレットの発生を確実に抑制することができる。
一方、辺中心領域Aにおけるペースト欠損領域25aが占める割合が70%以下とされている場合には、金属ペースト23を十分に接合界面に充填することができ、接合層13におけるボイドの生成を確実に抑制することができる。
なお、辺中心領域Aにおけるペースト欠損領域25aが占める面積率の下限は20%以上とすることがさらに好ましい。辺中心領域Aにおけるペースト欠損領域25aが占める面積率の上限は50%以下とすることがさらに好ましい。
【0033】
また、本実施形態において、ペースト張出領域25bの面積S1と第二部材12の接合面の面積S0との比S1/S0が8%以上である場合には、ペースト張出領域25bの面積が確保され、接合界面からはみ出した金属ペースト23の部分から有機成分の排出が促進されることになり、接合層13におけるクラックやボイドの発生をさらに抑制することができる。
なお、ペースト張出領域25bの面積S1と第二部材12の接合面の面積S0との比S1/S0は15%以上であることがさらに好ましい。また、ペースト張出領域25bの面積S1と第二部材12の接合面の面積S0との比S1/S0の上限に特に制限はないが30%以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態において、第一部材11が絶縁回路基板の回路層(基板)であり、第二部材12が半導体素子(電子部品)であり、接合体10が半導体装置(電子デバイス)である場合には、接合層13におけるクラックやボイドの発生が抑制されるとともに、フィレットの発生が抑制された信頼性の高い電子デバイスを製造することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、絶縁回路基板の回路層(第一部材)に、電子部品として半導体素子(第二部材)を接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、第一部材と第二部材とが接合層を介して接合された接合体であればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、金属ペースト23の塗布パターンを図3に示す形状として説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図5(a)~(c)に示すように、第二部材12の接合面がなす矩形状の4辺部分が内側に後退したペースト欠損領域25aと、第二部材12の接合面がなす矩形状の角部部分から金属ペースト23が外側にはみ出したペースト張出領域25bと、を備えていればよい。
【実施例0037】
以下に、本発明に係る接合体の製造方法の作用効果について評価した評価試験の結果を説明する。
【0038】
第一部材として、35mm×35mm×2mmtの銅基板(無酸素銅製)を準備した。
第二部材として、10mm×10mm×0,4mmtのSi素子を準備した。なお、Si素子の接合面には、Ti/Ni/Au多層めっきを形成した。
ここで、本発明例1-6および比較例1,2においては、金属ペーストとして、特許第6930578号公報の本発明例7のAgペーストを準備した。
また、本発明例7および比較例3,4においては、金属ペーストとして、Cuペースト(特開2022-128185の実施例1)を準備した。
【0039】
次に、メタルマスクおよびメタルスキージを用いたスクリーン印刷によって、銅基板の搭載面に金属ペーストを塗布した。このとき、金属ペーストの塗布厚さを150μmとした。
このとき、金属ペーストの塗布パターンについては、上述の実施形態に記載されたペースト欠損領域の占有率およびペースト張出領域の面積比について、表1に示す値となるように設定した。
【0040】
そして、塗布した金属ペーストを乾燥せずにSi素子を積層した。
【0041】
金属ペーストを介して積層した銅基板およびSi素子を熱処理炉に装入し、熱処理することで、金属ペーストを焼結し、金属の焼結体からなる接合層を介して銅基板とSi素子とを接合した。
このとき、保持温度を250℃、保持間を10分、室温(25℃)から保持温度までの昇温速度を10℃/分とした。
ここで、本発明例1-6および比較例1,2においては、金属ペーストとしてAgペーストを用いていることから、熱処理雰囲気を、不活性ガス(Nガス)雰囲気(酸素濃度1体積%以下)とした。
本発明例7および比較例3,4においては、金属ペーストとしてCuペーストを用いていることから、熱処理雰囲気を、活性ガス(約3体積%ギ酸/残部N)雰囲気とした。
【0042】
上述のようにして製造された接合体について、フィレットの高さ、接合層のボイドおよびクラックを以下のようにして評価した。
【0043】
(フィレットの高さ)
Si素子からはみ出して形成されたフィレットの高さを、測定顕微鏡(ニコンソリューションズ社製MM-800/LUFA)を用いて測定し、最大高さを表1に示した。なお、フィレットの高さは、銅基板表面から垂直方向に最も遠い点の位置となる。
【0044】
(ボイドおよびクラック)
超音波探傷機(日立パワーソリューションズ社製FSP8V)を用いて、銅基板の搭載面に対向する方向から接合層全体を観察した。白色で示される未接合部の面積と同じ面積の円とした場合における直径、即ち、円相当径が1mm以上である場合をボイドと判定した。また、白色又は黒色の線が1mm以上である場合をクラックと判定した。
表1においては、ボイド又はクラックが確認されたものを「×」、ボイド又はクラックが確認されなかったものを「〇」と表記した。
【0045】
【表1】
【0046】
比較例1および比較例3においては、辺中心領域Aにおけるペースト欠損領域の占有率が0%とされており、実質的にペースト欠損領域が形成されておらず、フィレット高さが230μmと高くなった。
比較例2および比較例4においては、ペースト張出領域の面積率が0%とされており、実質的にペースト張出領域が形成されておらず、接合層におけるボイドおよびクラックの評価が「×」となった。
【0047】
これに対して、本発明例1-7においては、金属ペーストの塗布パターンが、金属ペーストが塗布されていないペースト欠損領域と、金属ペーストが外側にはみ出したペースト張出領域と、を備えており、フィレット高さが150μm以下に抑えられており、接合層にクラック又はボイドが確認されなかった。
【0048】
以上のことから、本発明例によれば、フィレットの形成を抑制できるとともに、接合層におけるクラックやボイドの発生を抑制可能な接合体の製造方法を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
10 接合体
11 第一部材
12 第二部材
13 接合層
23 金属ペースト
25 塗布パターン
25a ペースト欠損領域
25b ペースト張出領域
図1
図2
図3
図4
図5