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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145807
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058320
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭吾
(57)【要約】
【課題】負荷との間を流れる循環液の量の変化を正確に把握し、循環液の漏出を早期に発見可能な温調装置を提供する。
【解決手段】温調装置1は、循環液Lを蓄えるメインタンク20と、このタンク内の循環液を負荷70に送出し負荷からの循環液を受け入れてタンクに送出する循環流路10と、タンク内の循環液を循環流路を通じて負荷に送出する循環ポンプ23と、循環流路に設けられ、負荷を温度調節した循環液の温度を制御する温度制御部8と、循環液の漏出を検出する漏出検出プロセスを実行するプロセッサ61を有した制御部60を有する。タンクは、循環液の液位を検出するレベルスイッチ55と、このスイッチの上方に配されて循環液の漏出の検出を開始する液位基準位置Psを有する。プロセッサは、漏出検出プロセス中の第1設定時間内に、スイッチで循環液の液位を検出した場合に温調装置から循環液が漏出したとして第1警報信号を出力する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の温度を所定の設定温度に調節するための温調装置であって、
前記温調装置は、
前記負荷を温度調節するための循環液を蓄えるメインタンクと、
前記メインタンク内の循環液を前記負荷に送出し、前記負荷を温度調節した循環液を受け入れて前記メインタンクに送出する循環流路と、
前記メインタンク内の循環液を前記循環流路を通じて前記負荷に送出する循環ポンプと、
前記循環流路に設けられ、前記負荷を温度調節した循環液の温度を制御する温度制御部と、
循環液の漏出を検出する漏出検出プロセスを実行するプロセッサを有した制御部と、を有し、
前記メインタンクは、これに蓄えられた循環液の液位を検出する第1液位検出センサと、前記第1液位検出センサよりも上方位置に配されて前記漏出検出プロセスを開始する液位基準位置と、を有し、
前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスにおいて、予め設定した第1設定時間内に、前記メインタンクの液位が前記第1液位検出センサで検出された場合には、前記温調装置から循環液が漏出しているものとして第1警報信号を出力する、
ことを特徴とする温調装置。
【請求項2】
前記温度制御部は、循環液と熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に対して循環液と熱交換させる熱交換媒体を供給する熱交換回路と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記温調装置は、前記メインタンクを内部に配設して循環液が蓄えられたサブタンクと、前記サブタンク内の循環液を前記メインタンク内に供給する供給ポンプとを更に有し、
前記液位基準位置は、前記メインタンクの側壁に貫設されて前記メインタンク内と前記サブタンク内とを連通させた連通孔、又は前記メインタンクの前記側壁の上端縁によって規定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスにおいて、前記第1設定時間内に前記メインタンクの液位が前記第1液位検出センサで検出されない場合には、前記供給ポンプを予め設定された第2設定時間駆動させて前記サブタンク内の循環液を前記メインタンクに供給することで、前記メインタンク内の循環液の液位を前記液位基準位置に到達させて、前記漏出検出プロセスを再開する、
ことを特徴とする請求項3に記載の温調装置。
【請求項5】
前記循環流路は、前記メインタンクに接続されて前記メインタンク内の循環液を前記負荷に送出するための送出流路と、前記負荷を温度調節した循環液を受け入れて前記メインタンクに戻す戻り流路と、を有し、
前記循環流路の前記送出流路には、前記メインタンクから送出される循環液の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記プロセッサは、前記温調装置の運転を開始すると、前記温度センサで検出された循環液の温度が所定の条件を満たしているかを監視する循環液温度監視プロセスを実行し、前記循環液温度監視プロセスにおいて循環液の温度が前記所定の条件を満たしている場合に、前記供給ポンプを予め設定された第2設定時間駆動させて、前記サブタンク内の循環液を前記メインタンクに供給することで、前記メインタンク内の循環液の液位を前記液位基準位置に到達させて、前記漏出検出プロセスを開始する、
ことを特徴とする請求項3に記載の温調装置。
【請求項6】
前記所定の条件とは、前記温度センサで検出された循環液の温度が前記設定温度に維持された状態が予め設定された第3所定時間継続していることである、
ことを特徴とする請求項5に記載の温調装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスの実行中において、前記温度センサで検出された循環液の温度が前記設定温度を満たしていない場合に、前記漏出検出プロセスを中止して、前記循環液温度監視プロセスを実行する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の温調装置。
【請求項8】
前記サブタンクには、前記サブタンク内に蓄えられた循環液の液位が前記メインタンクの底部に接触しない上限位置を検出する上限液位センサが設けられ、
前記プロセッサは、前記上限液位センサにより前記上限位置が検出されると、前記サブタンク内の循環液が前記メインタンクに接触する虞があるものとして第2警報信号を出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節された循環液を負荷に供給することによって、該負荷の温度を所望の温度に制御する温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度調節された循環液を負荷に供給することによって、該負荷の温度を所望の温度に調節する温調装置は、例えば特許文献1に開示されているように、既に広く知られている。この従来の温調装置においては、前記負荷を温度調節するための循環液が、メインタンクから送り流路を通じて負荷に供給されて負荷を温度調節し、その負荷を温度調節した後の循環液が戻り流路に環流されて、熱交換器やヒータ等で温度制御された上で、再び前記メインタンクに蓄えられるようになっている。また、前記メインタンクには循環液の液位を検出する液位スイッチ等の液位センサが設けられており、該液位センサで循環液の液位を検出することにより、サブタンクからメインタンクに循環液を補充したり、警報を発したりすることができるようになっている。
【0003】
ところで、このような循環液として例えばフッ素化液を使用する温調装置においては、環境への影響を考慮して、使用されている循環液の量を適切に管理する必要がある。特に、万が一循環液が外部に漏出している場合には、温調装置の温度調整機能にも悪影響を及ぼす虞がある。
【0004】
しかしながら、前記従来の温調装置においては、負荷との間を流れている循環液の量の変化を正確に把握することができないことから、循環液の漏出を早期に発見することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-106434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の技術的課題は、負荷との間を流れている循環液の量の変化を正確に把握することができ、循環液の漏出を早期に発見することが可能な温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するため、本発明に係る温調装置は、負荷の温度を所定の設定温度に調節するための温調装置であって、前記温調装置は、前記負荷を温度調節するための循環液を蓄えるメインタンクと、前記メインタンク内の循環液を前記負荷に送出し、前記負荷を温度調節した循環液を受け入れて前記メインタンクに送出する循環流路と、前記メインタンク内の循環液を前記循環流路を通じて前記負荷に送出する循環ポンプと、前記循環流路に設けられ、前記負荷を温度調節した循環液の温度を制御する温度制御部と、循環液の漏出を検出する漏出検出プロセスを実行するプロセッサを有した制御部と、を有し、前記メインタンクは、これに蓄えられた循環液の液位を検出する第1液位検出センサと、前記第1液位検出センサよりも上方位置に配されて前記漏出検出プロセスを開始する液位基準位置と、を有し、前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスにおいて、予め設定した第1設定時間内に、前記メインタンクの液位が前記第1液位検出センサで検出された場合には、前記温調装置から循環液が漏出しているものとして第1警報信号を出力する、ことを特徴とする。
【0008】
この場合において、好ましくは、前記温度制御部は、循環液と熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に対して循環液と熱交換させる熱交換媒体を供給する熱交換回路と、を含む。また、好ましくは、前記温調装置は、前記メインタンクを内部に配設して循環液が蓄えられたサブタンクと、前記サブタンク内の循環液を前記メインタンク内に供給する供給ポンプとを更に有し、前記液位基準位置は、前記メインタンクの側壁に貫設されて前記メインタンク内と前記サブタンク内とを連通させた連通孔、又は前記メインタンクの前記側壁の上端縁によって規定されている。
【0009】
また、好ましくは、前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスにおいて、前記第1設定時間内に前記メインタンクの液位が前記第1液位検出センサで検出されない場合には、前記供給ポンプを予め設定された第2設定時間駆動させて前記サブタンク内の循環液を前記メインタンクに供給することで、前記メインタンク内の循環液の液位を前記液位基準位置に到達させて、前記漏出検出プロセスを再開する。
【0010】
また、好ましくは、前記循環流路は、前記メインタンクに接続されて前記メインタンク内の循環液を前記負荷に送出するための送出流路と、前記負荷を温度調節した循環液を受け入れて前記メインタンクに戻す戻り流路と、を有し、前記循環流路の前記送出流路には、前記メインタンクから送出される循環液の温度を検出する温度センサが設けられ、前記プロセッサは、前記温調装置の運転を開始すると、前記温度センサで検出された循環液の温度が所定の条件を満たしているかを監視する循環液温度監視プロセスを実行し、前記循環液温度監視プロセスにおいて循環液の温度が前記所定の条件を満たしている場合に、前記供給ポンプを予め設定された第2設定時間駆動させて、前記サブタンク内の循環液を前記メインタンクに供給することで、前記メインタンク内の循環液の液位を前記液位基準位置に到達させて、前記漏出検出プロセスを開始する。また、好ましくは、前記所定の条件とは、前記温度センサで検出された循環液の温度が前記設定温度に維持された状態が予め設定された第3所定時間継続していることである。
【0011】
また、好ましくは、前記プロセッサは、前記漏出検出プロセスの実行中において、前記温度センサで検出された循環液の温度が前記設定温度を満たしていない場合に、前記漏出検出プロセスを中止して、前記循環液温度監視プロセスを実行する。
【0012】
また、好ましくは、前記サブタンクには、前記サブタンク内に蓄えられた循環液の液位が前記メインタンクの底部に接触しない上限位置を検出する上限液位センサが設けられ、前記プロセッサは、前記上限液位センサにより前記上限位置が検出されると、前記サブタンク内の循環液が前記メインタンクに接触する虞があるものとして第2警報信号を出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る温調装置では、負荷との間を流れている循環液の量の変化を正確に把握することができ、循環液の漏出を早期に発見することが可能な温調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る温調装置の回路図であり、メインタンク内の循環液の液が液位基準位置に在る状態を示している。
図2】メインタンクの上部拡大図である。
図3】メインタンクにサブタンク内の循環液を供給してメインタンクが満液状態になっている状態を示している。
図4】メインタンク内の循環液の液位が低下して液位検出センサで循環液の液位を検出した状態を示している。
図5】温調装置運転時において、流路からの循環液が漏れ出していることを検出するためのプロセッサのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図5は、本発明に係る温調装置の一実施形態を示すものである。なお、本実施形態では、負荷は半導体製造装置であり、負荷を冷却する循環液は絶縁冷媒(例えば、フッ素化液)である場合を例にして説明する。
【0016】
温調装置1は、図1及び図2に示すように、この温調装置1の外側を覆う筐体3と、負荷70を温度調節するための循環液Lを蓄えるメインタンク20と、メインタンク20内の循環液Lを負荷70に送出し、負荷70を温度調節した循環液Lを受け入れてメインタンク20に送出する循環流路10と、メインタンク20内の循環液Lを循環流路10を通じて負荷70に送出する循環ポンプ23と、循環流路10に設けられ、負荷70を温度調節した循環液Lの温度を制御する温度制御部8と、メインタンク20を内部に配設して循環液Lが蓄えられたサブタンク40と、サブタンク40内の循環液Lをメインタンク20内に供給する供給ポンプ51と、循環液Lの漏出を検出する漏出検出プロセスを実行するプロセッサ61を有した制御部60と、を有して構成される。本実施形態では、温度制御部8は、循環液Lと熱交換する熱交換器11と、熱交換器11に対して循環液Lと熱交換させる冷媒(熱交換媒体)を供給する冷凍回路30(熱交換回路)と、メインタンク20内の循環液Lを加熱するヒータ24と、を有する。
【0017】
そして、これら循環流路10、メインタンク20、循環ポンプ23、温度制御部8、サブタンク40、供給ポンプ51、制御部60が1つの筐体3内に収容されている。そして、筐体3の側面には、循環流路10の循環液吐出口16a及び循環液戻り口14aと、冷凍回路30のコンデンサ32に供給される放熱水の放熱水供給口25a及び放熱水排出口25bとが開設されている。それにより、ユーザ側における温度制御の対象装置(負荷70)等の配管71、71´、72、72´を、これら開口(ポート)16a、14a、25b、25aに対して接続することができるようなっている。
【0018】
筐体3の底部には、漏れた循環液を受けるためのドレンパン4が配設されており、このドレンパン4には、ドレンパン4に溜まった循環液を外部に排出するためのドレンポート5が設けられている。
【0019】
循環液Lは、前述したようにフッ素化液等の絶縁冷媒が用いられる。この絶縁冷媒(フッ素化液)は、温度上昇によって体積が増大する性質を有している。なお、循環液Lとしては、例えば、エチレングリコール、水を用いることができる。本実施形態においては、メインタンク20内の循環液Lは、メインタンク20と循環液吐出口16aとを繋ぐ送出流路16及び循環液吐出口16aと負荷70の入口70aとを繋ぐ配管71を通じて、負荷70に対して送り出され、負荷70を冷却した後の循環液Lは、負荷70の出口70bと循環液戻り口14aとを繋ぐ配管71´及び循環液戻り口14aと温度制御部8の熱交換器11とを繋ぐ第1戻り流路14を通じて熱交換器11に送り出され、熱交換器11で温度制御された循環液Lは、熱交換器11とメインタンク20とを繋ぐ第2戻り流路15を通じて再びメインタンク20に戻されるようになっている。すなわち、循環流路10は、送出流路16、配管71、71´、第1戻り流路14、熱交換器11、第2戻り流路15を有して構成されている。
【0020】
送出流路16は、メインタンク20の底壁21に開設された出口20aと循環液吐出口16aとの間を連通し、配管71は循環液吐出口16aと負荷70の入口70aとの間を連通し、配管71´は循環液戻り口14aと負荷70の出口70bとの間を連通する。第1戻り流路14は、循環液戻り口14aと熱交換器11の循環液入口11aとの間を連通し、第2戻り流路15は、熱交換器11の循環液出口11bとメインタンク20の底壁に開設された入口20bとの間を連通する。
【0021】
熱交換器11内には、その循環液入口11aと循環液出口11bとの間に接続された循環液熱交換流路12が設けられ、この循環液熱交換流路12に第1及び第2戻り流路14、15が連通している。また、熱交換器11には、その冷媒入口11cと冷媒出口11dとの間に接続された冷媒熱交換流路13が設けられ、この冷媒熱交換流路13に、冷凍回路(熱交換回路)30の後述する第3及び第4循環流路36、37が接続されている。循環液熱交換流路12を流れる循環液は、冷媒熱交換流路13を流れる冷媒との間で熱交換されて所定温度に制御され、所定温度に制御された循環液が熱交換器11の循環液出口11bから第2戻り流路15を通じてメインタンク20に戻される。
【0022】
第1戻り流路14には、その上流側から下流側に向かって、循環液Lの流量及び温度を検出するための流量センサ14b及び温度センサ14cが設けられている。これらのセンサ14b、14cは制御部60に電気的に接続されている。また、送出流路16には、その上流側から下流側に向かって、循環液Lの圧力及び温度を検出するための圧力センサ16b及び温度センサ16cが設けられている。これらのセンサ16b、16cも制御部60に電気的に接続されている。
【0023】
メインタンク20は、上部が開口して底壁21と側壁22とによって区画されて内部に循環液Lが蓄えられている。一方、サブタンク40は、幅方向両側に第1端40a及び第2端40bを有し、底壁41、側壁42及び上壁43によって区画されてメインタンク20よりも大きな容積を有して、内部にメインタンク20全体を収容すると共に循環液Lを蓄えている。メインタンク20は、サブタンク40の第1端40a側に寄せられ、且つメインタンク20の底壁21から上方に隙間を有してサブタンク40の上部に配されている。このため、サブタンク40内においてメインタンク20の周りには空間部44が形成されている。本実施形態では、空間部44は、サブタンク40の底壁41とメインタンク20の底壁21との間に形成された下空間部44aと、サブタンク40の第2端40b側に形成された横空間部44bと、メインタンク20の上方に形成された上空間部44cとを有している。
【0024】
下空間部44a内には循環液Lが蓄えられ、横空間部44bには熱交換器11が配され、上空間部44cには、後述する各種センサが配されている。
【0025】
温度制御部8の冷凍回路30は、ガス状冷媒を圧縮して高温高圧のガス状冷媒にする圧縮機31と、圧縮機31から送られる高温高圧のガス状冷媒を冷却して低温高圧の液状冷媒にするコンデンサ32と、コンデンサ32から送られる低温高圧の液状冷媒を減圧して低温低圧の液状冷媒にする第1膨張弁33と、第1膨張弁33から送られる低温低圧の液状冷媒を加熱して高温低圧のガス状冷媒にする熱交換器11(蒸発器)とを有している。本実施形態では、熱交換器11は循環流路10の一部であるとともに冷凍回路30の一部にもなっている。
【0026】
冷凍回路30は、圧縮機31の出口31bとコンデンサ32の入口32aとを結ぶ第1冷媒流路34と、コンデンサ32の出口32bと第1膨張弁33の入口33aとを結ぶ第2冷媒流路35と、第1膨張弁33の出口33bと熱交換器11の冷媒入口11cとを結ぶ第3冷媒流路36と、熱交換器11の冷媒出口11dと圧縮機31の入口31aとを結ぶ第4冷媒流路37と、を有している。第2冷媒流路35には、その上流側から下流側に向かって圧力センサ35a、高圧センサ35b及びフィルタ35cが設けられている。これら圧力センサ35a及び高圧センサ35bも制御部60に電気的に接続されている。
【0027】
さらに、第3冷媒流路36の第1膨張弁33よりも下流側と第1冷媒流路34との間には、これらを結ぶ第5冷媒流路38が設けられ、この第5冷媒流路38に第2膨張弁27が設けられている。また、第2冷媒流路35のフィルタ35cよりも下流側と圧縮機31との間には、これらを結ぶ第6冷媒流路39が設けられ、この第6冷媒流路39に第3膨張弁28が設けられている。そして、第2膨張弁27によって熱交換器11による冷媒の循環液Lに対する温度調整機能を制御することができ、第3膨張弁28によって圧縮機31の過熱を防止することができる。圧縮機31及び第1-第3膨張弁33、27、28も制御部60に電気的に接続されており、制御部60によりこれら圧縮機31、第1-第3膨張弁33、27、28が制御される。
【0028】
コンデンサ32は、本実施形態では、サブタンク40の側壁42の外面に沿って配設された水冷式のコンデンサであり、工業用水が流れる放熱回路25を備えている。放熱回路25は、放熱水供給口25aとコンデンサ32の放熱水入口32cとを結ぶ放熱水供給流路25cと、放熱水排出口25bとコンデンサ32の放熱水出口32dとを結ぶ放熱水排出流路25dとを有している。放熱水排出流路25dには制水弁25eが設けられている。この制水弁25eも制御部60に電気的に接続されており、制御部60により制水弁25eの開度を制御することで、冷媒の温度を制御することができる。なお、コンデンサ32は、空冷式でもよい。
【0029】
サブタンク40には、サブタンク40内の循環液Lをメインタンク20内に供給する供給ポンプ51が設けられている。本実施形態では、供給ポンプ51は、サブタンク40の循環液Lをメインタンク20内に汲み上げる浸漬型のポンプであり、サブタンク40の第2端40b側の横空間部44b内に上下方向に延びて配設されている。供給ポンプ51の上部には、くみ上げられたサブタンク40内の循環液Lをメインタンク20内に吐出するための吐出口51aが開設されている。供給ポンプ51も制御部60に電気的に接続されている。
【0030】
サブタンク40の内部には、サブタンク40の上壁43の下方近傍位置に1つ、メインタンク20の底壁21の下方近傍位置に1つ、サブタンク40の底壁41よりも上方に1つの計3つのレベルスイッチ52、53、54、が設けられている。本実施形態では、これらレベルスイッチ52、53、54はフロート式レベルスイッチであり、制御部60に電気的に接続されている。フロート式レベルスイッチの詳細については後述する。また、サブタンク40の第1端40a側の側壁42には、サブタンク40内の循環液Lの液量を筐体3の外部から目視にて確認可能とするレベルゲージ45と、サブタンク40に循環液Lを筐体3の外部から補充するための循環液注入口46とが設けられている。
【0031】
また、サブタンク40の第1端40a側の側壁42の底部には、外側へ延びる排出管47が設けられ、この排出管47の先端部にドレンコック47aが取り付けられている。このドレンコック47aを開操作することでサブタンク40内の循環液Lを外部に排出することができる。3つのレベルスイッチ52、53、54のうちの上壁43の下方近傍位置に配されたレベルスイッチ52は、サブタンク40内の循環液Lが略満液状態にあるときの循環液Lの液位を検出するものである。また、メインタンク20の底壁21の下方近傍位置に配されたレベルスイッチ(上限液位センサ)53は、サブタンク40内に蓄えられた循環液Lの液位がメインタンク20の底部に接触しない上限位置を検出するものである。また、サブタンク40内の底部に配されたレベルスイッチ54は、サブタンク40内に蓄えられる循環液Lの下限を検出するものである。そして、プロセッサ61は、3つのレベルスイッチ52、53、54でサブタンク40内の循環液Lの液位が検出されると、循環液注入口46から循環液をサブタンク40に補充するよう促したり、ドレンコック47aを開いて循環液Lをサブタンク40から排出するよう促すための警報を発せするようになっている。この警報の詳細は後述する。
【0032】
メインタンク20には、循環液Lを循環流路10の送出流路16に対して送り出す浸漬型の循環ポンプ23が設けられている。そして、この循環ポンプ23も制御部60に電気的に接続されている。また、サブタンク40の上壁43には、メインタンク20に蓄えられた循環液Lの上下方向中間部の位置から上方の循環液Lを加熱するヒータ24(温度制御部8)が設けられ、さらに、サブタンク40の上壁43には、メインタンク20の上方の上空間部44cに配された温度ヒューズ26が設けられている。ヒータ24及び温度ヒューズ26も制御部60に電気的に接続されている。それにより、例えば、プロセッサ61は、メインタンク20内の空気の温度が予め設定された所定温度より高くなった時に、循環液Lが過熱状態になっていると判断して温調装置1の電源をOFFにすること等ができるようになっている。
【0033】
さらに、サブタンク40の上壁43には、メインタンク20内の上部に配された上下2つのレベルスイッチ55、56が設けられており、これらレベルスイッチ55、56も制御部60に電気的に接続されている。そして、これらレベルスイッチ55、56でメインタンク20内の循環液Lの液位を検出することができる。これら2つのレベルスイッチ55、56のうち上方に配されたレベルスイッチ55(第1液位検出センサ)は、メインタンク20内の循環液Lの液位を検出することで、プロセッサ61により温調装置1から循環液Lが漏出していることを発見することができる。この温調装置1からの循環液Lの漏出については後述する。レベルスイッチ56は、レベルスイッチ55よりも下方に配されており、メインタンク20内に蓄えられる循環液Lの下限を検出する。
【0034】
図1及び図2に示すように、サブタンク40の第1端40a側のメインタンク20の側壁22の上部には連通孔22aが開設されている。この連通孔22aは側壁22を貫通して、メインタンク20の側壁22とこれに対向するサブタンク40の側壁42との間に形成された隙間48に連通している。この隙間48は上下方向に延びて循環液注入口46及び下空間部44aに連通している。したがって、連通孔22aから排出された循環液Lは隙間48を通じてサブタンク40内に戻される。そして、この連通孔22aによりメインタンク20の循環液Lの液位を連通孔22aの位置と同一位置に維持することができる。
【0035】
以下、このメインタンク20に対する連通孔22aの位置を「液位基準位置Ps」と記す。本実施形態では、連通孔22aは上下方向に延びる開口を有してしているので、液位基準位置Psは、連通孔22aの下端の位置に規定される。この液位基準位置Psは、温調装置1から循環液Lが漏出していることの検出を開始する際の基準位置となる。なお、液位基準位置Psは、メインタンク20の側壁22の上端縁に規定されてもよい。この場合には、連通孔22aは不要となる。
【0036】
レベルスイッチ55は、液位基準位置Psから下方に所定距離hを有した位置に配されている。この所定距離hは、例えば、循環液Lが単位時間内に温調装置1から漏出する量を考慮して規定される。
【0037】
これらレベルスイッチ52-56は、前述したように例えばフロート式レベルスイッチである。なお、レベルスイッチ52-56のそれぞれは、同一構造を有しているので、以下、レベルスイッチ55について説明する。フロート式のレベルスイッチ55は、フロート55aの内面に磁石を設置し、フロート55aを移動自在に支持するステム55b内にリードスイッチが配置されており、フロート55aがステム55bに対して上下動すると、磁石からの磁界によりリードスイッチがON・OFF動作をするように構成されている。またステム55bには、フロート55aの上下移動を制限するための図示しないストッパがフロート55aの上下両側に設けられている。レベルスイッチ56は、レベルスイッチ55よりも下方に配されており、メインタンク20内に蓄えられる循環液Lの下限を検出する。
【0038】
次に、循環液Lの漏出を検出する漏出検出プロセスを実行するプロセッサ61を有した制御部60について説明する。
【0039】
プロセッサ61は、図1及び図5に示すように、温調装置1の運転を開始すると、温度センサ16cで検出されたメインタンク20内の循環液Lの温度が所定の条件を満たしているかを監視する循環液温度監視プロセスを実行する(ステップ1)。ここで、本実施形態では、所定の条件とは、温度センサ16cで検出された循環液Lの温度が予め設定された設定温度に維持された状態が予め設定された所定時間(第3所定時間、例えば3時間)継続していることである。そして、循環液温度監視プロセスにおいて、検出された循環液Lの温度が設定温度を満たしていないときには、ステップ1が繰り返される。なお、循環液Lの温度が設定温度を満たしていない場合には、プロセッサ61は、冷凍回路30における熱交換器11を流れる冷媒の温度を制御して循環液Lの温度を制御したり、ヒータ24によってメインタンク20内の循環液Lの温度を制御したりしてもよい。また、設定温度は、所定の許容幅を有して設定できるようにしてもよい。
【0040】
そして、プロセッサ61は、循環液温度監視プロセスにおいて、循環液Lが所定の条件を満たしているときには、ステップ2に移行して、レベルスイッチ55による循環液Lの液位検出を開始する。そして、プロセッサ61は、供給ポンプ51を予め設定された設定時間(第2設定時間、例えば4秒)駆動させてサブタンク40内の循環液をメインタンク20に供給する(ステップ3)。これにより、例えば、メインタンク20内の循環液Lの液位は、レベルスイッチ55で循環液Lの液位が検出されている状態(図3参照)から上方へ変位して液位基準位置Psに到達する(図4参照)。なお、供給ポンプ51の駆動中にメインタンク20に供給された循環液Lが液位基準位置Psを超えようとしても、連通孔22aから循環液Lがサブタンク40内に流出するので、メインタンク20内の循環液Lの液位を液位基準位置Psに維持することができる。
【0041】
そして、プロセッサ61は、供給ポンプ51による循環液Lの供給の終了と同期させて経過時間を計時するタイマーを初期化して(ステップ4)、漏出検出プロセス(ステップ5-7)を開始する。
【0042】
プロセッサ61は、漏出検出プロセスを開始すると、温度センサ16cで検出された循環液Lの温度が設定温度を満たしているか否かを判断する(ステップ5)。そして、循環液Lの温度が設定温度を満たしている場合には、漏出検出プロセスを継続してステップ6に移行し、循環液Lの温度が設定温度を満たしていない場合には、漏出検出プロセスを中止して、ステップ1に戻って循環液温度監視プロセスを実行する。
【0043】
ステップ5において循環液Lの温度が設定温度を満たしている場合には、ステップ6に移行して、プロセッサ61は、レベルスイッチ55によりメインタンク20内の循環液Lの液位が検出されたか否かを判断する。そして、プロセッサ61は、レベルスイッチ55でメインタンク20の循環液Lの液位が検出されていないと判断した場合には、ステップ7に移行して、タイマーが初期化されたときからの経過時間が予め設定した第1設定時間(例えば1時間)を超えたか否かを判断する。そして、プロセッサ61は、経過時間が第1設定時間内であると判断すれば、ステップ5に戻って漏出検出プロセスを継続する。
【0044】
一方、プロセッサ61は、漏出検出プロセスにおいて、レベルスイッチ55でメインタンク20の循環液Lの液位が検出されていると判断した場合には(ステップ6)、ステップ8に移行して、温調装置1から循環液Lが漏出しているものとして第1警報信号を出力する。ここで、プロセッサ61が第1警報信号を出力した場合、プロセッサ61は、例えば、制御部60に設けられた表示装置やスピーカ等から循環液Lの漏出を告知するための表示や音を出力させたり、温調装置1の運転を停止させたりすることができる。
【0045】
このように、漏出検出プロセスにおいて、第1所定時間内にレベルスイッチ55が循環液Lの液位変化を検出することで、負荷70と温調装置1との間を流れる循環液Lの量の変化を正確に把握することができる。したがって、プロセッサ61は、レベルスイッチ55による循環液Lの液位検出に基づいて、温調装置1から循環液Lが漏れ出しているとして第1警報信号を出力することができる。
【0046】
また、ステップ6において、プロセッサ61は、レベルスイッチ55でメインタンク20の循環液Lの液位が検出されていないと判断した場合に、タイマーが初期化されたときからの経過時間が第1設定時間(例えば1時間)内でない場合には(ステップ7)、供給ポンプ51を第2設定時間駆動させてサブタンク40内の循環液Lをメインタンク20に供給することで、メインタンク20内の循環液Lの液位を液位基準位置Psに到達させて、漏出検出プロセスを再開する。
【0047】
ところで、プロセッサ61は、温調装置1の運転中において、サブタンク40内に設けられたレベルスイッチ55(上限液位センサ)によって、サブタンク40内の循環液の上限位置が検出されると、サブタンク40内の循環液Lがメインタンク20に接触する虞があるとする第2警報信号を出力する。サブタンク40内の循環液Lがメインタンク20に接触すると、メインタンク20内の循環液Lとの間で熱交換が行われてメインタンク20内の循環液Lの温度が変わる虞が生じるからである。この場合、プロセッサ61は、第1警報信号の場合と同様に、制御部60に設けられた表示装置やスピーカ等から循環液がメインタンク20に接触することを告知するための表示や音を出力させたり、温調装置1の運転を停止させたりすることができる。
【0048】
以上のように、上記温調装置1によれば、漏出検出プロセスにおいて第1所定時間内に、レベルスイッチ55でメインタンク20内の循環液Lの液位を検出することで、負荷70との間を流れている循環液Lの量の変化を正確に把握することができ、循環液Lの漏出を早期に発見することが可能な温調装置1を提供することができる。
【0049】
なお、前述した実施形態では、熱交換器11に対して循環液Lと熱交換させる冷媒を供給する冷凍回路30(熱交換回路)を有した温度制御部8を示したが、これに限るものではない。温度制御部8は、熱交換器11に対して冷却水を直接に供給するように放熱回路25の放熱水供給流路25c及び放熱水排出流路25dを熱交換器11に接続した熱交換回路を有したものでもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 温調装置
8 温度制御部
10 循環流路
11 熱交換器(温度制御部)
14 第1戻り流路(戻り流路)
15 第2戻り流路(戻り流路)
16 送出流路
16c 温度センサ
20 メインタンク
22 側壁
22a 連通孔
22b 上端縁
23 循環ポンプ
24 ヒータ(温度制御部)
30 冷凍回路(温度制御部、熱交換回路)
40 サブタンク
51 供給ポンプ
53 レベルスイッチ(上限液位センサ)
55 レベルスイッチ(第1液位検出センサ)
60 制御部
61 プロセッサ
70 負荷
L 循環液
Ps 液位基準位置
図1
図2
図3
図4
図5