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特開2024-145810表示制御プログラム、方法、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145810
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】表示制御プログラム、方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20241004BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241004BHJP
   G06Q 99/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G09B9/00 M
G06T19/00 600
G06Q99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058323
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】折田 健二
(72)【発明者】
【氏名】権藤 陽介
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA11
5B050CA08
5B050DA01
5B050EA04
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
5L049DD02
5L050DD02
(57)【要約】
【課題】火災の発生を想定した避難訓練用のARにおいて、一酸化炭素濃度を可視化して重畳表示する場合でも、避難経路の視認性の低下を抑制する。
【解決手段】表示制御装置が、火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で空間を撮影した実画像とを取得し、空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、表示部品が配置される空間での位置と、避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、決定した透明度で表した表示部品を実画像に重畳した重畳画像を、避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得し、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させる表示制御プログラム。
【請求項2】
前記透明度を決定する処理は、予め定めた基準距離に対する前記表示部品と前記避難訓練者との距離の割合を算出し、前記割合が小さいほど高い透明度を決定することを含む請求項1に記載の表示制御プログラム。
【請求項3】
前記基準距離は、前記避難訓練者の視野範囲において、前記避難訓練者からの距離が最大となる位置と最小となる位置との距離である請求項2に記載の表示制御プログラム。
【請求項4】
前記最大となる位置及び前記最小となる位置は、前記実画像に前記表示部品を重畳表示した場合に、認識可能なサイズで前記表示部品が表示される位置として予め定めた位置である請求項3に記載の表示制御プログラム。
【請求項5】
前記避難訓練者の視野範囲は、前記空間のうち、前記実画像に含まれる範囲であり、
前記透明度を決定する処理は、前記視野範囲内に配置される前記表示部品の各々を対象に実行される、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
【請求項6】
前記表示部品は、前記単位体積に相当するキューブ形状であり、前記一酸化炭素濃度に応じて異なる色で表した表示部品である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
【請求項7】
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得し、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する、
ことを含む処理をコンピュータが実行する表示制御方法。
【請求項8】
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得する取得部と、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定する決定部と、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する表示制御部と、
を含む表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、表示制御プログラム、表示制御方法、及び表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害時の状況を疑似体験するためのシステムが提案されている。例えば、ユーザが携帯可能なポータブルデバイスのディスプレイがユーザの目の前に位置するように、ポータブルデバイスを保持するゴーグルを備えた疑似体験システムが提案されている。このシステムは、ユーザの目に対応する仮想カメラと、ユーザの視線に対応する仮想カメラの撮像方向に垂直な仮想スクリーンとを有する仮想空間を生成する。また、このシステムは、少なくとも仮想カメラと仮想スクリーンとの間に、災害時に生じる現象を表わす面を形成し、映像を仮想スクリーンに投影する。そして、このシステムは、ユーザの視点から仮想スクリーンを見たときの、形成された面及び投影された映像を仮想カメラにより撮像して、ディスプレイに表示するよう制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6043408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災の被害者の多くは、火災によって生じた一酸化炭素によるものが多い。そのため、火災の発生を想定した避難訓練時には、一酸化炭素に留意することが重要である。そこで、例えば、火災の発生を想定した避難訓練用のAR(Augmented Reality)として、現実には見えない一酸化炭素の濃度を可視化して、現実空間を撮影した実画像に重畳して、避難訓練者が装着したヘッドマウントディスプレイに表示することが考えられる。これにより、火災時の一酸化炭素に対する体験及び訓練をすることが可能となる。
【0005】
しかし、一酸化炭素を、例えば、その濃度に応じた有色のガスのような表現でARにより表現した場合、訓練者の視野範囲が現実よりも大きく遮られてしまい、避難経路の視認性が低下してしまい、有効な避難訓練を実施することができないという問題がある。
【0006】
一つの側面として、開示の技術は、火災の発生を想定した避難訓練用のARにおいて、一酸化炭素濃度を可視化して重畳表示する場合でも、避難経路の視認性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様として、開示の技術は、火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得する。また、開示の技術は、前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定する。そして、開示の技術は、決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、火災の発生を想定した避難訓練用のARにおいて、一酸化炭素濃度を可視化して重畳表示する場合でも、避難経路の視認性の低下を抑制することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】火災シミュレーションシステムの概略構成図である。
図2】火災発生時の一酸化炭素濃度のシミュレーションを説明するための図である。
図3】表示制御装置の機能ブロック図である。
図4】視野範囲と、配置されるキューブとの関係を示す図である。
図5】透明度の算出を説明するための図である。
図6】表示制御装置として機能するコンピュータの概略を示すブロック図である。
図7】表示制御装置とHMDとシミュレーション装置との間の情報のやり取りを示すシーケンス図である。
図8】表示制御処理の一例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、開示の技術に係る実施形態の一例を説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る火災シミュレーションシステム100は、表示制御装置10と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)20と、シミュレーション装置30とを含む。表示制御装置10とHMD20とは、無線通信により接続される。表示制御装置10とシミュレーション装置30とは、有線通信又は無線通信により接続される。
【0012】
HMD20は、シミュレーション装置30による、火災発生時の一酸化炭素濃度のシミュレーションの対象となる空間に実際に存在する避難訓練者が装着する。HMD20は、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で空間を撮影するカメラ22と、HMD20の位置及び姿勢を検知するセンサ24と、表示制御装置10により生成された重畳画像が表示される表示装置26とを含む。
【0013】
HMD20の位置を検知するためのセンサ24は、GPS(Global Positioning System)、近距離無線通信の受信器等であってよい。また、HMD20の姿勢を検知するためのセンサ24は、3軸加速度センサ、ジャイロセンサ等であってよい。図1では、センサ24を1つのみ図示しているが、センサ24は、複数のセンサを含んでいてもよい。
【0014】
また、HMD20は、カメラ22で撮影された画像(以下、「実画像」という)の画像データ、及びセンサ24で検知されたセンサ値(以下、「位置姿勢情報」という)を表示制御装置10へ送信する通信装置(図示省略)を含む。また、通信装置は、表示制御装置10から送信された重畳画像の画像データを受信する。
【0015】
シミュレーション装置30は、火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度をシミュレーションする。具体的には、シミュレーション装置30は、空間を構成する壁、床、階段、通路等のレイアウト情報、出火場所の位置情報、出火の規模等、シミュレーションに必要な情報の入力を受け付ける。そして、シミュレーション装置30は、図2に示すように、受け付けた情報に基づいて、空間の各位置における一酸化炭素濃度を、火災発生からのタイムステップ毎にシミュレーションする。図2の例では、空間を単位体積の空間に分割し、分割された各空間(以下、「分割空間」という)の一酸化炭素濃度に応じて異なる色(図2においては、網掛の濃淡)で各分割空間を表している。図2の例では、分割空間の濃淡が濃いほど一酸化炭素濃度が高いことを表している。なお、空間は3次元空間であるが、図2では、説明の都合上、2次元空間で表している。以下の各図においても同様である。
【0016】
シミュレーション装置30は、タイムステップ毎に、各分割空間の位置情報と、その分割空間の一酸化炭素濃度とを対応付けた情報をシミュレーションデータとして表示制御装置10へ送信する。なお、シミュレーション装置30による一酸化炭素濃度のシミュレーションの具体的な方法は従来既知の手法を採用してよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0017】
表示制御装置10は、機能的には、図3に示すように、取得部12と、決定部14と、表示制御部16とを含む。
【0018】
取得部12は、シミュレーション装置30から送信されたシミュレーションデータを取得する。また、取得部12は、HMD20のカメラ22で撮影され、通信装置を介して送信された実画像の画像データを取得する。また、取得部12は、HMD20のセンサ24で検知され、通信装置を介して送信されたHMD20の位置姿勢情報を取得する。
【0019】
決定部14は、空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、表示部品が配置される空間での位置と、避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定する。本実施形態では、表示部品を、単位体積に相当するキューブ(立方体)とする。1つのキューブは、シミュレーションデータの分割空間に相当するものとしてよい。
【0020】
ここで、AR技術において、避難訓練者の視野範囲は、Unityの視錐台に代表される範囲として計算されることが一般的である。この場合、この視野範囲にキューブを配置すると、図4に示すように、避難訓練者から距離が遠くなるほど視野範囲が広くなり、多くのキューブが配置されることになる。そのため、避難訓練者から見ると、遠い位置ほど、その位置に至るまでに重畳表示されるキューブの数が増えるため、避難経路を確認するために必要な、空間に存在する壁、床等の視認性が低下してしまう。また、特に、避難訓練者の目の前のキューブの透明度が低い場合は、キューブの裏側に隠れる壁、床等の視認性が低下し、避難経路を把握することができず、適切な避難訓練を行うことができない。
【0021】
そこで、本実施形態の決定部14は、上述したように、キューブと避難訓練者との距離(以下、「キューブ距離」という)が近いほど、キューブの透明度を高くする。具体的には、決定部14は、予め定めた基準距離に対するキューブ距離の割合を算出し、割合が小さいほど高い透明度を決定する。図5に示すように、基準距離は、キューブを配置する範囲において、避難訓練者からの距離が最大となる位置(図5中の白丸、以下「最大位置」という)と、避難訓練者からの距離が最小となる位置(図5中の黒丸、以下「最小位置」という)との距離である。
【0022】
キューブを配置する範囲は、実画像の画角の範囲、すなわち視野範囲であり、図5では、矢印Aと矢印Bとで挟まれた範囲として表している。決定部14は、取得部12により取得されたHMD20の位置姿勢情報に基づいて、視野範囲を決定する。決定部14は、空間全体ではなく、視野範囲にのみキューブを配置することで、重畳画像に必要のないキューブについての透明度の決定及び描画の処理負荷を削減することができる。
【0023】
最大位置及び最小位置は、キューブを認識可能なサイズで重畳画像に表示可能な位置である。例えば、最大位置は、実画像に重畳表示されるキューブのサイズが、認識可能なサイズとして予め定めた最小サイズとなる位置としてよい。また、キューブの位置が避難訓練者に近過ぎると、キューブのサイズが実画像の画角の範囲を超えてしまい、1つのキューブを認識することができなくなる。そのため、例えば、最小位置は、実画像に重畳表示されるキューブのサイズが、実画像の画角を超えない最大サイズとなる位置としてよい。
【0024】
決定部14は、例えば、最も高い透明度を0、最も低い透明度を1として、0~1の値で透明度を決定する。この場合、決定部14は、キューブ距離が、最小位置までの距離と同じ距離となるキューブの透明度を0、キューブ距離が、最大位置までの距離と同じ距離となるキューブの透明度を1とする。また、決定部14は、キューブ距離が、最小位置までの距離と最大位置までの距離との間の距離となるキューブについては、その距離に応じた0~1の間の透明度を決定する。例えば、決定部14は、透明度=キューブ距離/基準距離により、各キューブの透明度を決定する。
【0025】
表示制御部16は、決定部14により決定された透明度で表したキューブを実画像に重畳した重畳画像を生成する。具体的には、表示制御部16は、シミュレーションデータから、各キューブの位置に対応付けられた一酸化炭素濃度を取得し、各キューブの空間上での位置に相当する実画像上の位置に、取得した一酸化炭素濃度に応じた色でキューブを描画する。キューブの色は、例えば、一酸化炭素濃度が高くなるにしたがって、色相環の順に異なる色を対応付けるようにする。この際、表示制御部16は、キューブを表す画素のうち、決定された透明度が示す割合の画素をランダムに抽出して描画することで、透明度を再現する。表示制御部16は、生成した重畳画像の画像データをHMD20へ送信する。これにより、HMD20の表示装置26に、重畳画像が表示される。
【0026】
表示制御装置10は、例えば図6に示すコンピュータ40で実現されてよい。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、GPU(Graphics Processing Unit)42と、一時記憶領域としてのメモリ43と、不揮発性の記憶装置44とを備える。また、コンピュータ40は、入力装置、表示装置等の入出力装置45と、記憶媒体49に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するR/W(Read/Write)装置46とを備える。また、コンピュータ40は、インターネット等のネットワークに接続される通信I/F(Interface)47を備える。CPU41、GPU42、メモリ43、記憶装置44、入出力装置45、R/W装置46、及び通信I/F47は、バス48を介して互いに接続される。
【0027】
記憶装置44は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等である。記憶媒体としての記憶装置44には、コンピュータ40を、表示制御装置10として機能させるための表示制御プログラム50が記憶される。表示制御プログラム50は、取得プロセス制御命令52と、決定プロセス制御命令54と、表示制御プロセス制御命令56とを有する。
【0028】
CPU41は、表示制御プログラム50を記憶装置44から読み出してメモリ43に展開し、表示制御プログラム50が有する制御命令を順次実行する。CPU41は、取得プロセス制御命令52を実行することで、図3に示す取得部12として動作する。また、CPU41は、決定プロセス制御命令54を実行することで、図3に示す決定部14として動作する。また、CPU41は、表示制御プロセス制御命令56を実行することで、図3に示す表示制御部16として動作する。これにより、表示制御プログラム50を実行したコンピュータ40が、表示制御装置10として機能することになる。なお、プログラムを実行するCPU41はハードウェアである。また、プログラムの一部は、GPU42により実行されてもよい。
【0029】
なお、表示制御プログラム50により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等で実現されてもよい。
【0030】
次に、本実施形態に係る火災シミュレーションシステム100の動作について説明する。図7に、表示制御装置10と、HMD20と、シミュレーション装置30との間の情報のやり取りを示すシーケンス図を示す。
【0031】
まず、シミュレーション装置30が、火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度をシミュレーションする。そして、ステップS10で、シミュレーション装置30が、空間を分割した各分割空間の位置情報と、その分割空間の一酸化炭素濃度とを対応付けたタイムステップ毎の情報をシミュレーションデータとして表示制御装置10へ送信する。
【0032】
次に、ステップS12で、HMD20のカメラ22で撮影された実画像の画像データがHMD20から送信され、表示制御装置10が、実画像の画像データを取得する。また、ステップS14で、HMD20のセンサ24で検知されたHMD20の位置姿勢情報がHMD20から送信され、表示制御装置10が、位置姿勢情報を取得する。ステップS12及びS14の処理は、HMD20内の同期信号により、同時に実行される。
【0033】
次に、ステップS20で、表示制御装置10が、表示制御処理(詳細は後述)を実行し、重畳画像を生成する。次に、ステップS40で、表示制御装置10が、生成した重畳画像の画像データをHMD20へ送信する。HMD20は、受信した画像データに基づいて、表示装置26に重畳画像を表示する。
【0034】
次に、図8を参照して、上記ステップS20で実行される表示制御処理について説明する。なお、表示制御処理は、開示の技術の表示制御方法の一例である。
【0035】
ステップS22で、決定部14が、上記ステップS14で取得されたHMD20の位置姿勢情報に基づいて、視野範囲を算出し、視野範囲の各位置に、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表すキューブを配置する。
【0036】
次に、ステップS24で、決定部14が、視野範囲に配置した全てのキューブについて透明度を決定したか否かを判定する。透明度を未決定のキューブが存在する場合には、ステップS26へ移行し、全てのキューブについて決定済みの場合には、ステップS32へ移行する。
【0037】
ステップS26では、決定部14が、透明度を未決定のキューブを1つ選択する。次に、ステップS28で、選択したキューブの位置と、上記ステップS14で取得されたHMD20の位置姿勢情報が示す避難訓練者の位置との距離であるキューブ距離を算出する。
【0038】
次に、ステップS30で、決定部14が、予め定められて基準距離と、算出したキューブ距離とを用いて、透明度=キューブ距離/基準距離により、選択したキューブの透明度を決定する。そして、決定部14が、選択したキューブの位置と、決定した透明度とを対応付けて、所定の記憶領域に記憶する。なお、決定部14は、上記ステップS22で、視野範囲に配置した各キューブに識別番号を付与しておき、本ステップにおいて、識別番号と透明度とを対応付けて記憶しておくようにしてもよい。そして、処理はステップS24に戻る。
【0039】
ステップS32では、表示制御部16が、上記ステップS10で取得されたシミュレーションデータから、各キューブの位置に対応付けられた一酸化炭素濃度を取得する。そして、表示制御部16が、上記ステップS12で取得された実画像上の、各キューブの空間上での位置に相当する位置に、取得した一酸化炭素濃度に応じた色で、かつ、上記ステップS30で決定された透明度で、各キューブを描画する。これにより、表示制御部16は、一酸化炭素濃度を表すキューブを実画像に重畳した重畳画像を生成する。
【0040】
HMD20の位置姿勢情報が変化する都度、すなわち、避難訓練者の視野範囲が変化する都度、上記の表示制御処理(図8)を含む、図7のシーケンス図に示す処理が実行される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る表示制御システムによれば、表示制御装置が、火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーションデータと、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で空間を撮影した実画像とを取得する。また、表示制御装置が、空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表すキューブの各々について、キューブが配置される空間での位置と、避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定する。そして、表示制御装置が、決定した透明度で表したキューブを実画像に重畳した重畳画像を、避難訓練者が装着するHMDの表示装置に表示するように制御する。これにより、火災の発生を想定した避難訓練用のARにおいて、一酸化炭素濃度を可視化して重畳表示する場合でも、避難経路の視認性の低下を抑制することができる。すなわち、ARによる火災シミュレーションにおいて、一酸化炭素の存在及び危険度を表現しつつ、避難訓練者の視界を遮らないようにすることで、問題なく避難訓練が実施されるようになる。また、開示の技術により、コンピュータの機能の改善が実現される。
【0042】
図9の上図に、キューブが配置される空間での位置と、避難訓練者の位置との距離によらず、一律の透明度でキューブを表示する場合を示す。この場合、避難経路を確認するために必要な現実の空間における壁、床等が避難訓練者から遠い位置にあるほど、重畳表示されるキューブ数が増加し、キューブ同士が重なる事で視界が大きく遮られてしまう。これを回避するため、全てのキューブの透明度を高くすることも考えられるが、その場合、一酸化炭素濃度の情報性が損なわれてしまう。また、避難訓練者の目の前にキューブが存在する場合には、避難経路を把握することがより困難になる。
【0043】
なお、図9では、各キューブの透明度を網掛の濃淡で表している。実画像に重畳表示されるキューブは、これに加え、一酸化炭素濃度に応じた色も付与されるため、透明度に高低を設けても、各位置の一酸化炭素濃度の把握は可能である。
【0044】
一方、本実施形態では、図9の下図に示すように、避難訓練者からの距離が近いキューブほど透明度を高くするため、キューブ同士が重なることにより、視界が遮られる度合いが軽減され、避難経路の視認性の低下を抑制することができる。また、避難訓練者からの距離が遠いキューブについては透明度を低くすることで、本来の情報(一酸化炭素濃度)を表示することができ、情報性の低下も抑制することができる。
【0045】
本実施形態に係る火災シミュレーションシステムを用いた避難訓練では、出火場所から避難訓練者が避難する場合のように、避難開始時に避難訓練者周辺の一酸化炭素濃度が高い場合に特に有効である。避難開始時に避難経路の視認性が低い場合には、避難を開始することが困難になるためである。
【0046】
なお、上記実施形態では、視野範囲に配置した全てのキューブについて透明度を決定したうえで、重畳画像を生成する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、視野範囲に配置したキューブのうち、避難訓練者からの距離が近いキューブから順に透明度を決定し、透明度を決定したキューブから順次、実画像に重畳表示するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、表示制御プログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されているが、これに限定されない。開示の技術に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。
【0048】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得し、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させる表示制御プログラム。
【0050】
(付記2)
前記透明度を決定する処理は、予め定めた基準距離に対する前記表示部品と前記避難訓練者との距離の割合を算出し、前記割合が小さいほど高い透明度を決定することを含む付記1に記載の表示制御プログラム。
【0051】
(付記3)
前記基準距離は、前記避難訓練者の視野範囲において、前記避難訓練者からの距離が最大となる位置と最小となる位置との距離である付記2に記載の表示制御プログラム。
【0052】
(付記4)
前記最大となる位置及び前記最小となる位置は、前記実画像に前記表示部品を重畳表示した場合に、認識可能なサイズで前記表示部品が表示される位置として予め定めた位置である付記3に記載の表示制御プログラム。
【0053】
(付記5)
前記避難訓練者の視野範囲は、前記空間のうち、前記実画像に含まれる範囲であり、
前記透明度を決定する処理は、前記視野範囲内に配置される前記表示部品の各々を対象に実行される、
付記1~付記4のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
【0054】
(付記6)
前記表示部品は、前記単位体積に相当するキューブ形状であり、前記一酸化炭素濃度に応じて異なる色で表した表示部品である付記1~付記5のいずれか1項に記載の表示制御プログラム。
【0055】
(付記7)
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得し、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する、
ことを含む処理をコンピュータが実行する表示制御方法。
【0056】
(付記8)
前記透明度を決定する処理は、予め定めた基準距離に対する前記表示部品と前記避難訓練者との距離の割合を算出し、前記割合が小さいほど高い透明度を決定することを含む付記7に記載の表示制御方法。
【0057】
(付記9)
前記基準距離は、前記避難訓練者の視野範囲において、前記避難訓練者からの距離が最大となる位置と最小となる位置との距離である付記8に記載の表示制御方法。
【0058】
(付記10)
前記最大となる位置及び前記最小となる位置は、前記実画像に前記表示部品を重畳表示した場合に、認識可能なサイズで前記表示部品が表示される位置として予め定めた位置である付記9に記載の表示制御方法。
【0059】
(付記11)
前記避難訓練者の視野範囲は、前記空間のうち、前記実画像に含まれる範囲であり、
前記透明度を決定する処理は、前記視野範囲内に配置される前記表示部品の各々を対象に実行される、
付記7~付記10のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【0060】
(付記12)
前記表示部品は、前記単位体積に相当するキューブ形状であり、前記一酸化炭素濃度に応じて異なる色で表した表示部品である付記7~付記11のいずれか1項に記載の表示制御方法。
【0061】
(付記13)
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得する取得部と、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定する決定部と、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する表示制御部と、
を含む表示制御装置。
【0062】
(付記14)
前記決定部は、予め定めた基準距離に対する前記表示部品と前記避難訓練者との距離の割合を算出し、前記割合が小さいほど高い透明度を決定する付記13に記載の表示制御装置。
【0063】
(付記15)
前記基準距離は、前記避難訓練者の視野範囲において、前記避難訓練者からの距離が最大となる位置と最小となる位置との距離である付記14に記載の表示制御装置。
【0064】
(付記16)
前記最大となる位置及び前記最小となる位置は、前記実画像に前記表示部品を重畳表示した場合に、認識可能なサイズで前記表示部品が表示される位置として予め定めた位置である付記15に記載の表示制御装置。
【0065】
(付記17)
前記避難訓練者の視野範囲は、前記空間のうち、前記実画像に含まれる範囲であり、
前記決定部は、前記視野範囲内に配置される前記表示部品の各々の前記透明度を決定する、
付記13~付記16のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【0066】
(付記18)
前記表示部品は、前記単位体積に相当するキューブ形状であり、前記一酸化炭素濃度に応じて異なる色で表した表示部品である付記13~付記17のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【0067】
(付記19)
火災発生が想定された空間の各位置における一酸化炭素濃度のシミュレーション結果と、避難訓練者の視野範囲に対応する画角で前記空間を撮影した実画像とを取得し、
前記空間の各位置に仮想的に配置する、単位体積当たりの一酸化炭素濃度を表す表示部品の各々について、前記表示部品が配置される前記空間での位置と、前記避難訓練者の位置との距離が近いほど高くなる透明度を決定し、
決定した前記透明度で表した前記表示部品を前記実画像に重畳した重畳画像を、前記避難訓練者が装着する表示装置に表示するように制御する、
ことを含む処理をコンピュータに実行させる表示制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【符号の説明】
【0068】
10 表示制御装置
12 取得部
14 決定部
16 表示制御部
20 HMD
22 カメラ
24 センサ
26 表示装置
30 シミュレーション装置
32 表示制御部
40 コンピュータ
41 CPU
42 GPU
43 メモリ
44 記憶装置
45 入出力装置
46 R/W装置
47 通信I/F
48 バス
49 記憶媒体
50 表示制御プログラム
52 取得プロセス制御命令
54 決定プロセス制御命令
56 表示制御プロセス制御命令
100 火災シミュレーションシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9