(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145813
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】止水構造および止水部材
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20241004BHJP
E01D 19/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058327
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503263300
【氏名又は名称】倉測建設コンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】神田 東正
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AC04
2D051AG03
2D051AG15
2D051FA01
2D051FA19
2D059AA13
2D059GG02
2D059GG37
2D059GG43
(57)【要約】
【課題】止水および排水を効果的に行うことができるようにした止水構造および止水部材を提供する。
【解決手段】止水構造1は、第1床版2と第2床版3との間に配置された弾性部材5と、この弾性部材5と第1床版2との間に配置された第1排水部材6と、弾性部材5と第2床版3との間に配置された第2排水部材7とを具備する。止水部材4は、弾性部材5と、この弾性部材5を挟むように弾性部材5に接着された第1排水部材6および第2排水部材7とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造体と第2構造体との間に配置された弾性部材と、
該弾性部材と前記第1構造体との間に配置された第1排水部材と、
前記弾性部材と前記第2構造体との間に配置された第2排水部材と、
を具備したことを特徴とする止水構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、弾性を有する基材と、該基材の少なくとも上面部分に設けられた止水層とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、排水を水平方向へ導く排水路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項4】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、前記排水路を前記弾性部材と反対側に備えたことを特徴とする請求項3に記載の止水構造。
【請求項5】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、水平方向の端部をパイプ状に変形させて排水桝へ導く構成としたことを特徴とする請求項3に記載の止水構造。
【請求項6】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、帯状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項7】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、前記弾性部材より上方へ延びる上延出部と、前記弾性部材より下方へ延びる下延出部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項8】
前記第1排水部材の上延出部と前記第2排水部材の上延出部との間にシール材を充填したことを特徴とする請求項6に記載の止水構造。
【請求項9】
前記弾性部材と前記第1排水部材および前記第2排水部材とは、接着剤で接着したことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項10】
前記第1排水部材は、上端部を前記第1構造体に止着し、前記第2排水部材は、上端部を前記第2構造体に止着したことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項11】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、不織布層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項12】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、前記弾性部材側に配置される防水層と、該防水層に積層される不織布層と、該不織布層に積層あるいは絡合される立体網状体層とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項13】
弾性部材と、
該弾性部材を挟むように前記弾性部材に接着された第1排水部材および第2排水部材と、
を具備したことを特徴とする止水部材。
【請求項14】
前記第1排水部材および前記第2排水部材はそれぞれ、帯状に形成し、両端が前記弾性部材から延出した延出部を備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項15】
前記弾性部材は、少なくとも前記第1排水部材と前記第2排水部材との間の表面部分に止水層を備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項16】
前記弾性部材は、弾性を有する基材と、該基材の周面の少なくとも一部分に設けられた止水層とを備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項17】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、前記弾性部材と反対側の面に排水路を備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項18】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、不織布層を備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【請求項19】
前記第1排水部材および前記第2排水部材は、前記弾性部材側に配置される防水層と、該防水層に積層される不織布層と、該不織布層に積層あるいは絡合される立体網状体層とを備えたことを特徴とする請求項13に記載の止水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や道路などの止水に用いられる止水構造および止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の止水構造および止水部材としては、従来、次のようなものが知られている。
【0003】
たとえば特許文献1には、雨水などの止水を目的として、橋梁または構造物の目地間隙あるいは伸縮遊間部に設けられる機能性伸縮材が開示されている。
【0004】
この機能性伸縮材は、発泡ゴムから略直方体状に形成された発泡体を備えている。
【0005】
この発泡体は、その表面から所定深さまでアスファルトが含侵された構造となっている。
【0006】
また、この発泡体の一対の面には、一対の側板が貼合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、止水した雨水が橋梁や構造物上に溜まり、うまく排水されない虞があるばかりか、側板と構造物との間から雨水が漏れ落下する可能性もある。
【0009】
本発明は、上記事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、止水および排水を効果的に行うことができるようにした止水構造および止水部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る止水構造は、第1構造体と第2構造体との間に配置された弾性部材と、この弾性部材と第1構造体との間に配置された第1排水部材と、弾性部材と第2構造体との間に配置された第2排水部材とを具備したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る止水部材は、弾性部材と、この弾性部材を挟むように弾性部材に接着された第1排水部材および第2排水部材とを具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る止水構造および止水部材によれば、止水および排水を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】本発明の第1実施形態に係る止水構造および止水部材を示す断面図。
【
図3】同止水構造および止水部材の弾性部材を示す斜視図。
【
図4】同止水構造および止水部材の第1排水部材および第2排水部材を示す斜視図。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る止水構造および止水部材を示す断面図。
【
図6】同止水構造および止水部材の第1排水部材および第2排水部材を示す斜視図。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る止水構造および止水部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1および
図2中、符号1は、本発明に係る止水構造を示している。
【0016】
この止水構造1は、橋梁や道路を構成する隣接した第1床版(第1構造体)2と第2床版(第2構造体)3との間に止水部材4を介在させた構造となっている。
【0017】
すなわち、第1床版2の一端部と第2床版3の一端部との間には間隙Sが設けられ、この間隙Sに止水部材4が配設されている。
【0018】
止水部材4は、弾性部材5、第1排水部材6および第2排水部材7を有している。
【0019】
弾性部材5は、
図3に示すように、断面が略矩形状に形成された長尺の基材8と、この基材8の上面および下面に形成された止水層9を有している。
【0020】
基材8は、合成ゴムの発泡体などで形成され、弾性を有している。
【0021】
止水層9は、基材8の表層に止水材を含侵させたり、止水材を塗布したりして、形成されている。
【0022】
第1排水部材6および第2排水部材7は、
図4に示すように、第1床版2および第2床版3の幅方向(水平方向)に長い帯状に形成されている。
【0023】
これら第1排水部材6および第2排水部材7のそれぞれの弾性部材5の側には、水平方向(長さ方向)に連続した多数の毛細管状の溝(排水路)10が垂直方向(幅方向)に間隔を開けて並行に形成され、第1床版2および第2床版3からの排水を水平方向へ導くようになっている。
【0024】
また、第1排水部材6および第2排水部材7は、この溝10と反対側が弾性部材5に接着剤11によって接着されている。
【0025】
なお、第1排水部材6および第2排水部材7と弾性部材5との接着は、施工時に行っても良く、施工前に予め行ってもよい。
【0026】
さらに、第1排水部材6および第2排水部材7の垂直方向(幅方向)の寸法は、弾性部材5の垂直方向の寸法より大きくなっている。
【0027】
そして、弾性部材5が第1排水部材6および第2排水部材7の垂直方向の中央部分に接着されることにより、弾性部材5より上方へ延びる上延出部(延出部)12と、弾性部材5より下方へ延びる下延出部(延出部)13が形成されている。
【0028】
第1排水部材6は、この上延出部12が複数のL型止め板14で第1床版2の一端上部に所定間隔で止着されている。
【0029】
また、第2排水部材7は、この上延出部12が複数のL型止め板14で第2床版3の一端上部に所定間隔で止着されている。
【0030】
すなわち、複数のL型留め板14はそれぞれ、垂直部15と水平部16を有し、垂直部15がピン17によって予め第1排水部材6または第2排水部材7に固定され、水平部16がSUS製コンクリートくぎ18で第1床版2の上面部または第2床版3の上面部に固定されている。
【0031】
さらに、第1排水部材6の上延出部12と第2排水部材7の上延出部12と弾性部材5とで区画される空間にはシール材19が充填されている。
【0032】
さらに、第1排水部材6の水平方向の端部と第2排水部材7の水平方向の端部は、強制金具20によってパイプ形状に変形され、パイプ21を介して排水桝22に接続されている。
【0033】
このような構成によれば、第1床版2と第2床版3の壁伝いの雨水などを第1排水部材6の溝10および第2排水部材7の溝10で毛細管現象などにより吸い取って水平方向へ導き、強制金具20とパイプ21によって第1排水部材6と第2排水部材7の排水方向を下向きに角度を変えて排水桝22へ導くことができる。
【0034】
したがって、橋梁や道路の止水および排水を効果的に行うことができる。
【0035】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
上述の第1実施形態では、止水部材4は、溝(排水路)10を有する第1排水部材6および第2排水部材7を備えた構造としたが、本第2実施形態では、止水部材4は、
図5および
図6に示すように構成されている。
【0037】
すなわち、止水部材4は、第1排水部材31および第2排水部材32を備えている。
【0038】
これら第1排水部材31および第2排水部材32はそれぞれ、防水層33、不織布層34および立体網状体層35を順次積層した柔軟性および排水性を有する構成となっている。
【0039】
防水層33は、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)などで形成されている。
【0040】
また、不織布層34は、不織布で形成され、防水層33に部分的に接着されている。
【0041】
さらに、立体網状体層35は、立体構造の網状体で形成され、不織布層34に接着あるいは絡合されている。
【0042】
そして、第1排水部材31は、第1床版2と弾性部材5との間に配置され、防水層33が弾性部材5に接着剤11によって接着されている。
【0043】
また、第2排水部材32は、第2床版3と弾性部材5との間に配置され、防水層33が弾性部材5に接着剤11によって接着されている。
【0044】
このように構成しても、橋梁や道路の止水および排水を効果的に行うことができる。
【0045】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
上述の第1実施形態では、第1排水部材6の水平方向の端部と第2排水部材7の水平方向の端部は、強制金具20によってパイプ形状に変形され、強制金具20とパイプ21によって第1排水部材6と第2排水部材7の排水方向を下向きに角度を変えて排水桝22へ導く構造としたが、本第2実施形態では、止水部材4は、
図7に示すように構成されている。
【0047】
すなわち、第1排水部材6の水平方向の端部と第2排水部材7の水平方向の端部は、パイプ形状に変形した状態に複数のバンド41および留め具42によって所定の間隔で締結することにより第1排水部材6と第2排水部材7の排水方向を下向きに角度を変えて排水桝22へ導く構成となっている。
【0048】
このような構成によれば、排水を第1排水部材6および第2排水部材7から直接排水桝22へ導くことができる。
【0049】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0050】
すなわち、本発明に係る止水構造は、第1構造体と第2構造体との間に配置された弾性部材と、この弾性部材と第1構造体との間に配置された第1排水部材と、弾性部材と第2構造体との間に配置された第2排水部材とを具備したことを特徴とするものである。
【0051】
また、本発明に係る止水部材は、弾性部材と、この弾性部材を挟むように弾性部材に接着された第1排水部材および第2排水部材とを具備したことを特徴とするものである。
【0052】
上記本発明は、少なくとも下記実施形態を含むことができる。該実施形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
【0053】
(1)止水構造において、弾性部材は、弾性を有する基材と、この基材の少なくとも上面部分に設けられた止水層とを備える。
【0054】
(2)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、排水を水平方向へ導く排水路を備える。
【0055】
(3)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、排水路を弾性部材と反対側に備える。
【0056】
(4)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、水平方向の端部をパイプ状に変形させて排水桝へ導く構成とする。
【0057】
(5)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、帯状に形成する。
【0058】
(6)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、弾性部材より上方へ延びる上延出部と、弾性部材より下方へ延びる下延出部とを備える。
【0059】
(7)止水構造において、第1排水部材の上延出部と第2排水部材の上延出部との間にシール材を充填する。
【0060】
(8)止水構造において、弾性部材と第1排水部材および第2排水部材とは、接着剤で接着する。
【0061】
(9)止水構造において、第1排水部材は、上端部を第1構造体に止着し、第2排水部材は、上端部を第2構造体に止着する。
【0062】
(10)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、不織布層を備える。
【0063】
(11)止水構造において、第1排水部材および第2排水部材は、弾性部材側に配置される防水層と、この防水層に積層される不織布層と、この不織布層に積層あるいは絡合される立体網状体層とを備える。
【0064】
(12)止水部材において、第1排水部材および第2排水部材はそれぞれ、帯状に形成し、両端が弾性部材から延出した延出部を備える。
【0065】
(13)止水部材において、弾性部材は、少なくとも第1排水部材と第2排水部材との間の表面部分に止水層を備える。
【0066】
(14)止水部材において、弾性部材は、弾性を有する基材と、この基材の周面の少なくとも一部分に設けられた止水層とを備える。
【0067】
(15)止水部材において、第1排水部材および第2排水部材は、弾性部材と反対側の面に排水路を備える。
【0068】
(16)止水部材において、第1排水部材および第2排水部材は、不織布層を備える。
【0069】
(17)止水部材において、第1排水部材および第2排水部材は、弾性部材側に配置される防水層と、この防水層に積層される不織布層と、この不織布層に積層あるいは絡合される立体網状体層とを備える。
【符号の説明】
【0070】
1 止水構造
2 第1構造体(第1床版)
3 第2構造体(第2床版)
4 止水部材
5 弾性部材
6 第1排水部材
7 第2排水部材
8 基材
9 止水層
10 排水路(溝)
11 接着剤
12 延出部(上延出部)
13 延出部(下延出部)
19 シール材
22 排水桝
31 第1排水部材
32 第2排水部材
33 防水層
34 不織布層
35 立体網状体層