(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014582
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】製造システム
(51)【国際特許分類】
B67C 3/02 20060101AFI20240125BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240125BHJP
B65B 59/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B67C3/02 Z
G05B19/418 Z
B65B59/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117519
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】肥後 辰年
(72)【発明者】
【氏名】大崎 優太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 駿友
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚樹
【テーマコード(参考)】
3C100
3E056
3E079
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA43
3C100AA47
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB21
3C100EE11
3C100EE14
3E056AA12
3E056BA01
3E056CA08
3E056EA10
3E056GA07
3E079AB01
3E079BB05
3E079GG02
3E079GG10
(57)【要約】
【課題】生産活動の目的に応じて運用形態を変更しやすい生産システムを実現する。
【解決手段】容器Bに被充填物が充填されている製品を製造する製造システム100であって、少なくとも、容器Bを供給できる容器供給装置10、および、容器Bに対して被充填物を充填できる充填装置20、を含む装置群1と、装置群1を構成する複数の装置の間で容器Bを搬送できる搬送装置2と、を備え、容器供給装置10および充填装置20の少なくとも一方が複数設けられており、搬送装置2が容器Bを搬送する経路の始点および終点を、装置群1を構成する装置の中から任意に選択可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に被充填物が充填されている製品を製造する製造システムであって、
少なくとも、前記容器を供給できる容器供給装置、および、前記容器に対して前記被充填物を充填できる充填装置、を含む装置群と、
前記装置群を構成する複数の装置の間で前記容器を搬送できる搬送装置と、を備え、
前記容器供給装置および前記充填装置の少なくとも一方が複数設けられており、
前記搬送装置が前記容器を搬送する経路の始点および終点を、前記装置群を構成する装置の中から任意に選択可能である製造システム。
【請求項2】
前記容器供給装置および前記充填装置の双方が、それぞれ複数設けられている請求項1に記載の製造システム。
【請求項3】
前記装置群が、空の前記容器、または、前記被充填物が充填されている前記容器、を検査できる検査装置をさらに含む請求項1に記載の製造システム。
【請求項4】
前記容器供給装置、前記充填装置、および前記検査装置が、いずれも複数設けられている請求項3に記載の製造システム。
【請求項5】
前記装置群が、複数の前記容器を梱包できる梱包装置をさらに含む請求項1~4のいずれか一項に記載の製造システム。
【請求項6】
容器に被充填物が充填されている製品が梱包された梱包製品を製造する製造システムであって、
少なくとも、前記容器を供給できる容器供給装置、前記容器に対して前記被充填物を充填できる充填装置、前記容器にラベルを貼付可能なラベラ装置、および、複数の前記容器を梱包可能な梱包装置、を含む装置群と、
前記装置群を構成する複数の装置の間で前記容器を搬送可能な搬送装置と、を備え、
前記ラベラ装置および前記梱包装置の少なくとも一方が複数設けられており、
前記搬送装置が前記容器を搬送する経路の始点および終点を、前記装置群を構成する装置の中から任意に選択可能である製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に被充填物が充填されている製品を製造する製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や粉体などの態様の製品は、容器に充填された状態で流通に供される。このような製品を製造する工場では、容器に製品を充填する設備を備えていることが一般的である。
【0003】
たとえば、特開2020-1745号公報(特許文献1)には、スパウト付き袋の搬送ラインに沿って、印字装置、充填装置(ノズル)、および封止装置(ドライバ)が順に設けられた充填装置が開示されている。また、特表2022-515645号公報(特許文献2)には、ブロー成型装置、ボトル充填ステーション、密封ステーション、キャッピングステーションなどを構成要素とする生産設備が開示されている。加えて、特開2013-35561号公報(特許文献3)には、プリフォームの殺菌、ボトルの成形、飲料の充填、およびボトルの封止を順次行う生産設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-1745号公報
【特許文献2】特表2022-515645号公報
【特許文献3】特開2013-35561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載されたいずれの設備においても、個々の工程(容器供給、殺菌、充填、封止、検査、梱包など)を担当する装置が、容器が搬送される経路に沿って工程の順に配置されており、いわゆる製造ラインが構成されている。製造ラインとして構成された生産設備は、一度完成された製造工程を繰り返し実施する上では非常に高い生産性を発揮するが、運用の柔軟性の面では改善の余地があった。たとえば、製造ラインを構成する一部の装置が故障した場合や、生産する製品の品目を切り替える場合などに、メンテナンスを必要とする装置のみならず、当該装置が所属する生産ライン全体の生産を停止する必要があった。また、被充填物の種類、容器の種類、容量、包装形態などの要素が互いに異なる複数種類の製品を同時に生産することが難しかった。
【0006】
そこで、生産活動の目的に応じて運用形態を変更しやすい生産システムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第一の製造システムは、容器に被充填物が充填されている製品を製造する製造システムであって、少なくとも、前記容器を供給できる容器供給装置、および、前記容器に対して前記被充填物を充填できる充填装置、を含む装置群と、前記装置群を構成する複数の装置の間で前記容器を搬送できる搬送装置と、を備え、前記容器供給装置および前記充填装置の少なくとも一方が複数設けられており、前記搬送装置が前記容器を搬送する経路の始点および終点を、前記装置群を構成する装置の中から任意に選択可能であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、被充填物の種類、容器の種類、容量などの、製品自体の付加価値を決定づける要素が異なる複数種類の製品を同時に生産しやすい。すなわち、生産される製品の付加価値のバリエーションを多様化した生産活動が可能になる。
【0009】
本発明に係る第二の製造システムは、容器に被充填物が充填されている製品が梱包された梱包製品を製造する製造システムであって、少なくとも、前記容器を供給できる容器供給装置、前記容器に対して前記被充填物を充填できる充填装置、前記容器にラベルを貼付可能なラベラ装置、および、複数の前記容器を梱包可能な梱包装置、を含む装置群と、前記装置群を構成する複数の装置の間で前記容器を搬送可能な搬送装置と、を備え、前記ラベラ装置および前記梱包装置の少なくとも一方が複数設けられており、前記搬送装置が前記容器を搬送する経路の始点および終点を、前記装置群を構成する装置の中から任意に選択可能であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ラベルや梱包などの二次的な包装に係る特徴が異なる複数種類の製品を同時に生産しやすい。この態様は、プロモーション方法や仕向け地域などの販売戦略を考慮した機動的な生産活動が可能になる。
【0011】
このように、上記の各構成によれば、生産活動の目的に応じて運用形態を変更しやすい。これによって、被充填物の種類、容器の種類、容量、包装形態など、製品の付加価値を決定づける種々の要素について複数の態様を有する複数種類の製品を同時に生産しやすい。
【0012】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0013】
本発明に係る第一の製造システムは、一態様として、前記容器供給装置および前記充填装置の双方が、それぞれ複数設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、生産される製品の付加価値のバリエーションを、さらに多様化できる。
【0015】
本発明に係る第一の製造システムは、一態様として、前記装置群が、空の前記容器、または、前記被充填物が充填されている前記容器、を検査できる検査装置をさらに含むことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、製品の品質を担保するために必要な検査についても、柔軟な運用が可能になるので、生産活動の機動性が一層高まる。
【0017】
本発明に係る第一の製造システムは、一態様として、前記容器供給装置、前記充填装置、および前記検査装置が、いずれも複数設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、生産される製品の付加価値のバリエーションを、さらに多様化できる。
【0019】
本発明に係る第一の製造システムは、一態様として、前記装置群が、複数の前記容器を梱包できる梱包装置をさらに含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、生産される製品の付加価値のバリエーションを、さらに多様化できる。
【0021】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る製造システムを示す模式図である。
【
図2】従来技術に係る製造システムを示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る製造システムの第一の運用例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る製造システムの第二の運用例を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係る製造システムの第三の運用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る製造システムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る製造システムを、容器Bに飲料(被充填物の例である。)が充填されている飲料製品(製品の例である。)を製造する製造システム100に適用した例について説明する。
【0024】
〔製造システムの概要〕
本実施形態に係る製造システム100は、容器供給装置10、充填装置20、検査装置30、ラベラ装置40、および梱包装置50を含む装置群1と、装置群1を構成する複数の装置の間で容器Bを搬送できる搬送装置2と、を備える(
図1)。また、装置群1は、洗浄殺菌装置15および封止装置25をさらに含む。
【0025】
飲料製品の製造は、概して以下の流れで行われる。まず、容器供給装置10から供給された容器Bが充填装置20に搬送される。次に、充填装置20において、空の容器Bに被充填物が充填される。容器Bに被充填物が充填された後に当該容器Bの口部が封止され、その後、充填後の容器Bが検査装置30による検査を受ける。さらに、検査に合格した容器Bに対して、ラベラ装置40によってラベルが貼付されて、飲料製品が販売に供されうる状態に完成される。その後、梱包装置50によって複数の飲料製品が、物流や保管などに適した荷姿に梱包され、梱包製品として出荷される。上記の例を逸脱する場合については、以下の説明の中で都度説明する。
【0026】
このように、製造システム100による飲料製品の製造は、装置群1を構成する各装置による作業が順次行われて、梱包製品が完成されて出荷されるに至る。このとき、搬送装置2は、装置群1を構成する装置の間で容器Bを搬送する役割を果たす。すなわち、装置群1を構成する各装置が飲料製品を製造するための各工程を担当し、搬送装置2が工程間の容器Bの移送を担当する、と言える。
【0027】
〔装置群の構成〕
以下では、装置群1を構成する各装置について説明する(
図1)。
【0028】
容器供給装置10(10A、10B、10C)は、容器Bを供給できる装置である。容器Bは、ペットボトル、缶、瓶、ゲーブルトップ容器、ポンプ容器、箱などであってよく、容器供給装置10の態様は、当該容器供給装置10によって供給される容器Bの態様に応じて決定される。たとえば、容器Bがペットボトルである場合は、容器供給装置10(10A、10B)は、プリフォームを原料とするブロー成形を行なってペットボトルを供給する装置でありうる。この場合の容器供給装置10は、ブロー成形機11(11A、11B)を中心として、当該ブロー成形機にプリフォームを供給する装置(不図示)や、成形されたプリフォームを搬送装置2に受け渡す装置(不図示)などが組み合わされた装置として構成される。
【0029】
また、製造システム100は、空の容器Bを洗浄する洗浄装置、および、空の容器Bを殺菌する殺菌装置、を含む。ただし洗浄装置および殺菌装置は、容器供給装置10と一体に設けられた洗浄装置12(12A)、殺菌装置13(13A)として設けられていてもよいし、容器供給装置10と別体の洗浄殺菌装置15として設けられていてもよい。本実施形態では、両方の態様を図示している(
図1)。
【0030】
充填装置20(20A、20B、20C)は、容器Bに対して飲料を充填できる装置である。充填装置20の態様は、使用される容器Bに対する専用設計であってもよいし、複数の種類の容器Bに対して飲料を充填できる汎用設計であってもよい。充填装置20は、容器Bに対して直接に飲料の充填を行う装置であるフィラー装置21(21A、21B、21C)を中心として、当該フィラー装置21において充填される飲料を貯蔵するタンク(不図示)や、飲料を移送するポンプ(不図示)などが組み合わされた装置として構成される。
【0031】
また、製造システム100は、飲料が充填された容器Bの口部を封止する封止装置を含む。ただし封止装置は、充填装置20と一体に設けられた封止装置22(22A)として設けられていてもよいし、充填装置20と別体の封止装置25(25A、25B)として設けられていてもよい。本実施形態では、両方の態様を図示している(
図1)。
【0032】
検査装置30は、容器Bを検査できる装置である。ここで検査対象とする容器Bは、空の容器Bである場合と、飲料が充填されている容器Bである場合と、いずれも存在する。
【0033】
空の容器Bが検査対象になる場合は、容器供給装置10または洗浄殺菌装置15から検査装置30に搬送された容器Bが検査対象となる。この場合の検査装置30(充填前検査装置31)としては、空容器の異物検査装置、汚れ検査装置、瓶口の欠け検査装置などが例示される。検査後の容器Bは、充填前検査装置31から充填装置20に搬送される。すなわち、容器供給装置10または洗浄殺菌装置15から排出された空の容器Bが、充填前検査装置31による検査を受けたのちに、充填装置20に供給されることになる。
【0034】
飲料が充填されている容器Bが検査対象になる場合は、充填装置20もしくは封止装置25、またはラベラ装置40から検査装置30に搬送された容器Bが検査対象となる。この場合の検査装置30(充填後検査装置32(32A、32B))としては、異物検査装置、入味線検査装置、キャップ汚れ検査装置、密封検査装置、ラベル検査装置、異種キャップ検査装置、異種ラベル検査装置などが例示される。
【0035】
ラベラ装置40(40A、40B)は、容器Bにラベルを貼付可能な装置である。ラベラ装置40の態様は、使用される容器Bおよびラベルの態様に応じて決定される。たとえば、容器Bがペットボトルである場合は、ラベルとしてまたはロールラベルまたはシュリンクラベルが用いられることが一般的であり、使用されるラベルの方式に応じた公知のラベラ装置が用いられうる。
【0036】
なお、容器Bにラベルを貼付することを要さない場合は、容器Bがラベラ装置40を経由しなくてもよい。たとえば、製品名等があらかじめ印刷された缶を容器Bとして用いる場合や、飲料製品がいわゆるラベルレス製品(製品名等をラベル貼付以外の方法で表示する製品)である場合などは、容器Bにラベルを貼付することを要さない。
【0037】
ここまでに説明した装置によって、飲料製品が販売に供されうる状態に完成される。すなわち、容器Bに飲料が充填され、出荷前に必要とされる検査が行われ、必要な場合はラベルが貼付された状態である。
【0038】
梱包装置50(50A、50B)は、複数の飲料製品(すなわち飲料が充填された容器B)を梱包できる装置である。梱包装置50の態様は、使用される容器Bおよび梱包資材の態様に応じて決定される。たとえば、梱包資材が段ボール箱である場合は梱包装置50としてケーサー装置が用いられ、梱包資材がストレッチフイルムである場合は梱包装置50としてストレッチフイルム包装機が用いられる。使用される梱包資材は、出荷先や物流ルートなどにおける荷扱い上の要請から決定されることが一般的である。なお、複数の飲料製品が梱包された梱包製品をパレットに載置するパレタイザも、梱包装置50に含まれうる。
【0039】
〔搬送装置の構成〕
次に、搬送装置2の構成について説明する。搬送装置2は、容器Bを搬送する装置であり、その搬送経路の始点および終点を、装置群1を構成する装置の中から任意に選択できる。すなわち、搬送装置2は、装置群1を構成する任意の二つの装置の間で、容器Bを搬送する装置である。
【0040】
本実施形態に係る搬送装置2として使用可能な装置の第一の例として、ベッコフオートメーション株式会社製のXPlanarシリーズが例示される。XPlanarシリーズの搬送装置は、タイル状部材とプレート状部材とを含み、プレート状部材は、タイル状部材によって形成される磁場の作用によって浮上した状態でタイル状部材の上を移動する。タイル状部材が設置されている範囲内で、個々のプレート状部材の移動を独立に制御できるので、個々のプレート状部材の経路を個別に制御できる。
【0041】
これを搬送装置2として使用する場合は、装置群1を構成する装置間にタイル状部材を設置しておき、当該タイル状部材の上をプレート状部材が移動できるようにして、製造システム100が構成される。装置群1を構成するいずれかの装置から排出された容器B(飲料の充填状態を問わない。)は、プレート状部材に載置されて、次の工程を担当する装置に搬送される。
【0042】
本実施形態に係る搬送装置2として使用可能な装置の第二の例として、B&R株式会社製のアコポストラック(登録商標)シリーズが例示される。アコポストラックシリーズの搬送装置は、レール状部材と搬送台車とを含み、搬送台車はレール状部材に沿って移動する。レール状部材は複数の経路に分岐する態様で設置でき、レール状部材に沿う限度でそれぞれの搬送台車の経路を独立に制御できる。
【0043】
これを搬送装置2として使用する場合は、装置群1を構成する装置間にレール状部材をネットワーク状に設置しておき、当該レール状部材に沿って搬送台車が移動できるようにして、製造システム100が構成される。装置群1を構成するいずれかの装置から排出された容器B(飲料の充填状態を問わない。)は、搬送台車に載置されて、次の工程を担当する装置に搬送される。
【0044】
それぞれの搬送装置2の経路は、たとえばコンピュータ(不図示)によって、個別に制御されうる。搬送装置2が容器Bを搬送する経路の始点および終点の組合せ、ならびに各経路の目的は、表1に例示されるが、これらに限定されない。なお、表1の例は、搬送装置2が上記のいずれの例を含むいずれの態様であっても適用される。また、いくつかの経路を
図1において破線で例示しているが、当該破線は説明の目的で一部の経路について代表して示したのであって、破線で示されていない経路も設定可能である。
【0045】
【0046】
〔製造システムの運用〕
以下では、製造システム100の運用の例を説明する。なお、比較のため従来の製造システム200(
図2)を用いる場合についても説明する。
図2に示す従来の製造システム200には、互いに独立している三つの製造ライン201、202、203が設けられており、それぞれの製造ラインが容器供給装置10、充填装置20、検査装置30、ラベラ装置40、および梱包装置50を備える。
【0047】
(1)複数種製品の混合梱包
第一の運用例では、複数の充填装置20において、それぞれ異なる飲料を充填する。これによって、経由する充填装置20の違いによって、互いに異なる種類の飲料製品が製造される。
図3では、同一の容器供給装置10Aから供給された容器Bが、二つの充填装置20A、20Bに分配され、充填装置20Aおよび充填装置20Bにおいてそれぞれ異なる飲料の充填が行われる例を示している。充填装置20Aを経由して製造された飲料製品と、充填装置20Bを経由して製造された飲料製品とは、充填されている飲料が異なる。
【0048】
このように製造される互いに異なる種類の飲料製品を、同一の梱包装置50Aに搬送すれば、複数種類の製品が混載された梱包製品を製造できる。また、搬送装置2の単位で搬送先を指定できるので、梱包装置50Aにおいて梱包される梱包製品の一つずつについて、混載される複数種類の製品の割合を変更することも可能である。以上の運用例によれば、複数種類の飲料製品を顧客ごとの個別の要望に応える比率で混載した梱包製品の受注生産が可能になる。この運用例を実現するためには、少なくとも充填装置20が複数設けられていることを要する。
【0049】
一方、従来の製造システム200では、それぞれの充填装置20が所属する製造ラインが、それぞれ独立に梱包装置50を有しており、かつそれぞれの梱包装置50に供給される飲料製品は同一ラインの充填装置20を経たもののみであるので、単一種類の製品のみが梱包された梱包製品しか製造できない。したがって、従来の製造システム200では、上記のような受注生産は、不可能または非常に困難である。
【0050】
(2)混合飲料の製造
第二の運用例では、単一の容器Bが複数の充填装置20を経由する搬送経路を実現する。たとえば、一つ目の充填装置20Aにおいてコーヒー飲料を充填し、二つ目の充填装置20Bにおいて乳製品を充填するように構成すれば、カフェオレ飲料を製造できる(
図4)。このとき、二つの充填装置20A、20Bにおいて充填される飲料(コーヒー飲料、乳製品)の割合を変更すれば、製造されるカフェオレ飲料の風味を容易に変更できる。この運用例を実現するためには、少なくとも充填装置20が複数設けられていることを要する。
【0051】
従来の製造システム200においても、カフェオレ飲料の製造自体は可能である。しかし従来の製造システム200では、充填装置20のタンクにあらかじめ調製されたカフェオレ飲料を用意しておく必要があり、カフェオレ飲料の風味を変更するためにはタンクや配管などの洗浄を伴う製品切り替えを要する。そのため、従来の製造システム200における風味の変更は、タンク内の製品の廃棄を伴うか、またはタンクが空になったタイミングに限定されることになる。本実施形態に係る製造システム100を用いれば、これらの課題を解消できる。
【0052】
(3)複数包装形態の同時生産
第三の運用例では、充填装置20において、複数種類の容器Bに対する飲料の充填が行われる。たとえば、ある容器供給装置10Aからペットボトルが供給され、他の容器供給装置10Cから瓶が供給され、ペットボトルおよび瓶のいずれも充填装置20Cに搬送される。その後、充填装置20Cでは、搬送された容器Bの種類(ペットボトルまたは瓶)の種類によらず、当該容器Bに対する飲料の充填が行われる。充填後の容器Bは、容器の種類に応じて異なる後工程(封止装置25A、25B、充填後検査装置32A、32B、およびラベラ装置40A、40B)を順次経由して、最終的に同一の梱包装置50Bにおいて同一の梱包製品に混載される。これによって、複数の包装形態(ペットボトルおよび瓶)の飲料製品を同時に生産できる。この運用例を実現するためには、少なくとも容器供給装置10が複数設けられていることを要する。
【0053】
また、複数のラベラ装置40を用いて、容器Bに貼付されるラベルが互いに異なる複数の飲料製品を同時に生産することも可能である。この例では、複数種類のラベルを貼付した飲料製品を同時に商品展開するプロモーション施策を実行する、仕向け地ごとに異なるラベルを貼付した飲料製品を同時に生産する、など、販売戦略に応じた機動的な生産活動が可能になる。なお、ラベラ装置40を経由させず、ラベルが貼付されていない態様の飲料製品を生産品目に含めてもよい。
【0054】
さらに、複数の梱包装置50を用いて、梱包形態が異なる複数の梱包製品を同時に生産することも可能である。たとえば、段ボール箱包装が広く使われる国へ出荷する梱包製品と、ストレッチフイルム包装が広く使われる国へ出荷する梱包製品と、を同時に生産できる。
【0055】
従来の製造システム200においても、包装形態が異なる飲料製品の同時生産自体は可能である。しかし従来の製造システム200では、包装形態ごとに異なる製造ラインを稼働する必要があり、その分、他の飲料製品の製造に充当できる製造ラインが減少するので、製造システム200全体としての生産効率が低下しうる。また、少なくとも二つの充填装置20に同種の飲料が充填されることになるので、その種の飲料製品の生産量が過剰になるか、または廃棄ロスが生じるおそれがある。本実施形態に係る製造システム100を用いれば、これらの課題を解消できる。
【0056】
(4)生産中のメンテナンス実施
第四の運用例では、飲料製品の生産が行われている最中に、一部の装置のメンテナンスが行われる。ここでいうメンテナンスとは、装置の点検、整備、修理、設定変更、充填される飲料製品の切り替え、などの、対象とする装置を停止して実施する必要がある種々の措置を含む。
【0057】
たとえば、容器供給装置10A、充填装置20B、封止装置25A、充填後検査装置32A、ラベラ装置40A、および梱包装置50Aの順で容器Bが搬送される経路で飲料製品の生産が行われているときは、上記の各装置と並列関係にある装置(容器供給装置10B、10C、充填装置20A、20Cなど)のメンテナンスを、生産活動に影響を与えることなく実施できる。また、上記の各装置を並列関係にある他の装置により代替すれば、生産活動を停止することなく上記の各装置のメンテナンスを実施できる。たとえば、充填を実施する装置を充填装置20Bから充填装置20Cに切り替えれば、充填装置20Bのメンテナンスを実施できる。
【0058】
従来の製造システム200では、各装置が一連の製造ライン201、202、203をそれぞれ構成するので、一部の装置についてのみメンテナンスが必要な場合であっても、当該装置が所属する製造ライン全体の生産活動を停止する必要がある。そのため、メンテナンスを実行することによる生産活動への影響が大きい。
【0059】
(5)システム構成の柔軟な変更
第五の運用例では、製造システム100の構成の変更について、製造システム100を構成する装置単位での柔軟な変更が可能である。たとえば、新商品の生産を新たに開始する際場合は、売れ行きが不透明であることが通常であるので、新商品の生産を少量から始め、売れ行きが良好であれば生産量を増やす、という考え方で生産計画を組むことが想定される。本実施形態に係る製造システム100では、既存の充填装置20に加えて、タンク容量が小さい新商品用の充填装置20を新設し、他の装置は既存の装置を用いることで、最低限の投資で、かつ既存の製品の生産量を大きく落とすことなく、新商品の生産を開始できる。
【0060】
従来の製造システム200では、新商品の生産を開始する際に、一連の製造ライン単位で、生産する製品を切り替えるか、または新たな製造ラインを増設する必要がある。しかし前者の対応では、既存の製品の生産量を落とす必要があるとともに、売れ行きが不透明な新商品にとっては過剰な生産能力の設備を運用することになる。また、後者の対応では、投資額が大きくなるおそれがある。
【0061】
〔その他の実施形態〕
上記の実施形態では、装置群1として容器供給装置10、充填装置20、検査装置30、ラベラ装置40、および梱包装置50を含む製造システム100を例として説明した。しかし、本発明に係る製造システムにおいて、上記の全ての装置が必須の構成要素であるわけではない。本発明に係る製造システムに設けられる装置群の構成(装置群を構成する装置の種類および数量)は、当該製造システムにおいて実施される生産活動の内容に応じて、適宜選択される。
【0062】
容器供給装置が複数設けられている場合は、製造システムにおいて複数種類の容器を同時に取り扱うことができるため、好ましい。この場合、たとえば、容器の種類や容量などが異なる複数種類の飲料製品を同時に生産する、といった生産活動が実現可能になる。また、充填装置が複数設けられている場合は、製造システムにおいて複数の被充填物を同時に取り扱うことができるため、好ましい。この場合、たとえば、複数の風味の飲料製品を同時に生産する、といった生産活動が実現可能になる。したがって、容器供給装置および充填装置の少なくとも一方が設けられていると、被充填物の種類、容器の種類、容量などの、製品自体の付加価値を決定づける要素が異なる複数種類の製品を同時に生産しやすい。この態様は、生産される製品の付加価値のバリエーションを多様化した生産活動を可能にする。
【0063】
検査装置が複数設けられている場合は、製造システムにおいて検査の機動的な実行が可能になるため、好ましい。たとえば、第一の検査装置において不具合が検出された対象物のみを第二の検査装置に搬送し、不具合が検出されなかった対象物は後工程に搬送する、といった運用が可能になる。
【0064】
ラベラ装置が複数設けられている場合は、製造システムにおいてラベルが異なる製品を同時に製造できるため、好ましい。また、梱包装置が複数設けられている場合は、製造システムにおいて梱包形態が異なる製品を同時に製造できるため、好ましい。したがって、ラベラ装置および梱包装置の少なくとも一方が設けられていると、ラベルや梱包などの二次的な包装に係る特徴が異なる複数種類の製品を同時に生産しやすい。この態様は、プロモーション方法や仕向け地域などの販売戦略を考慮した機動的な生産活動を可能にする。
【0065】
また、いずれの装置についても、複数の装置が設けられている場合は、複数の装置のうちの一つを停止しても、他の装置を用いて生産活動を継続できるので、製造システム全体のメンテナンス性が向上する点で好ましい。
【0066】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、たとえば飲料製品を製造する製造システムに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
100 :製造システム
1 :装置群
2 :搬送装置
10 :容器供給装置
11 :ブロー成形機
12 :洗浄装置
13 :殺菌装置
15 :洗浄殺菌装置
20 :充填装置
21 :フィラー装置
22 :封止装置
25 :封止装置
30 :検査装置
31 :充填前検査装置
32 :充填後検査装置
40 :ラベラ装置
50 :梱包装置
B :容器
200 :従来の製造システム
201 :製造ライン
202 :製造ライン
203 :製造ライン