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特開2024-145827山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145827
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20241004BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058346
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 修一
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】石田 明浩
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA01
2D155CA08
2D155JA01
2D155LA16
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】インバート部の覆工体を構成するインバート部構造体を、トンネルの横断方向の片側領域毎に形成できるようにするインバート部構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】山留板部材57をH型鋼35に支持さることで、他方の片側領域55Bの地盤61を山留めすることによって、通行路60での通行を確保した状態で、一方の片側領域55Aにおいて、片側のインバート部構造体10を形成する工程と、山留板部材57を盛り換えてH型鋼35に支持させることで、一方の片側領域55Aに造成された地盤を山留めすることにより通行路60’を復旧させて通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成する工程とを含んで構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山岳トンネルのインバート部におけるトンネルの横断方向の全域に設けられてインバート部覆工体を構成する、PCaコンクリートブロックを用いたインバート部構造体を、前記横断方向の中央を挟んだ両側の片側領域に分けて施工して、他方の片側領域における通行を確保しながら、各々の一方の片側領域で片側ずつ形成できるようにする、山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法であって、
前記インバート部におけるトンネルの横断方向の中央には、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、山留板部材を支持させるH型鋼が、フランジ部をトンネルの軸方向に沿わせた状態で、前記インバート部の地盤に打設されることにより複数立設して設けられており、
前記H型鋼における一方の片側領域側のフランジ部又は他方の片側領域側のフランジ部に支持させることで、他方の片側領域における通行路の地盤を山留めすることによって、当該他方の片側領域における通行を確保した状態で、一方の片側領域において、片側のインバート部構造体を、一方の片側領域側のフランジ部を超える部分までPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程と、
前記H型鋼に山留板部材を支持させることで、一方の片側領域において形成された片側のインバート部構造体の上方部分が埋め戻されて造成された地盤を、山留めすることによって当該一方の片側領域に通行路を復旧させ、復旧させた通行路における通行を確保した状態で、他方の片側領域において、残りの片側のインバート部構造体をPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程とを含んで構成される山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法。
【請求項2】
一方の片側領域において、片側のインバート部構造体を、一方の片側領域側のフランジ部を超える部分までPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程では、前記H型鋼における一方の片側領域側のフランジ部の内側面との間に、スパーサ部材を介在させて、山留板部材を、他方の片側領域側に片寄せた状態で当該一方の片側領域側のフランジ部に支持させる請求項1記載の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法。
【請求項3】
一方の片側領域及び他方の片側領域において形成されるインバート部構造体は、各々、複数のPCコンクリートブロックを、隣接する側壁部覆工体の下端部の受台部との間、及び隣接するPCコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、連設して配置してインバート部に設置することで形成されたブロック群を、隣接する前記受台部との間の隙間、及び隣接する前記PCコンクリートブロックとの間の隙間に、充填固化材を充填して硬化させることによって、硬化した充填固化材を介して一体化されて形成されるものとなっている請求項1又は2記載の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルは、岩盤等の自立していて比較的安定した地盤を掘削して形成されるトンネルであり、掘削された内壁面は、コンクリートやモルタルによる一次覆工や二次覆工によって覆われるようになっている。すなわち、山岳トンネルの内壁面は、例えば発破等を実施しながらトンネルを掘削した後に、好ましくはモルタルやコンクリートを吹付けて一次覆工を行うことにより防護層を形成してから、形成した一次覆工による防護層の内側に、例えば公知のトンネル覆工型枠を設置して、トンネルの側壁部から上部のアーチ形状部分に、コンクリートによる所定の厚さの覆工体を、二次覆工として形成する。さらに、先行して形成されたトンネルの両側の側壁部から上部のアーチ形状部分に至る覆工体における、一対の側壁部の下端部の受台部の間の部分に、底部のインバート部の覆工体を、トンネルの横断方向にコンクリートを用いて所定の厚さで一体しして形成することにより、山岳トンネルの内壁面の全周を、二次覆工によって連続して覆うようになっている。
【0003】
また、山岳トンネルは、比較的安定した地盤を掘削して形成されるものであることから、例えば数十年以上前に構築されたトンネルは、インバート部の覆工体を省略して、トンネルの側壁部から上部のアーチ形状部分に至る領域にのみ、覆工体を形成して二次覆工を行っているものがある。このようなインバート部の覆工体を省略した山岳トンネルに対しては、例えば将来、底盤部の盤膨れ等による影響が生じないように、インバート部の覆工体を新たに形成することが検討されている。
【0004】
トンネルの底部に、トンネルの側壁部から上部のアーチ形状部分に先行して設けられた覆工体と連続させて、インバート部の覆工体を形成する方法としては、従来より、現場打ちコンクリートを用いたものが一般的であるが(例えば、特許文献1参照)、インバート部の覆工体は、湾曲した形状となるように上面を仕上げるのに、高度な熟練を要することになる。さらに、現場打ちコンクリートを用いた場合、打設されたコンクリートは、硬化した後に所定の養生期間が経過するまでに、相当の時間を要することから、特にインバート部の覆工体を省略した側壁部から上部のアーチ形状部分の覆工体に、新たにインバート部の覆工体を形成する場合には、長期間、トンネル内の通行を遮断することになるため、より短期間で、工事を終了できるようにすることが望ましい。
【0005】
このようなことから、インバート部の覆工体を、予め工場等において製造された、プレキャストコンクリート製のコンクリート部材を用いて形成することによって、工期の短縮を図ることも検討されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。また、例えば数十年以上前に構築された既存の山岳トンネルに、インバート部の覆工体をプレキャストコンクリート製のコンクリート部材(ブロック)を用いて新たに形成する場合、トンネルでの通行を全面的に遮断することなく、通行路での通行を確保したまま、工事を行なえるようにすることが望ましいことから、山岳トンネルのインバート部の覆工体を、トンネルの横断方向における片側領域毎に施工できるようにする技術も開発されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-159060号公報
【特許文献2】特開2013-28898号公報
【特許文献3】特開2018-123528号公報
【特許文献4】特開2000-145390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の山岳トンネルにおけるインバートの形成方法では、トンネルの横断方向における他方の片側領域の通行路での通行を確保したまま、一方の片側領域の通行路及びこれの下方の地盤を掘削して掘削溝を形成した後に、形成した掘削溝の底部に、インバート部を構成する複数のブロックを、並べて配置するようになっており、また通行が確保された他方の片側領域の、通行路の下方の地盤の側面は、当該他方の片側領域に隣接して配置されるブロックの立ち上り部によって土留めされるようになっているが、一方の片側領域に形成した掘削溝の底部に、複数のブロックを精度良く並べて配置する作業には、多くの時間と手間の要することになると共に、立ち上り部を有するブロックが、通行路での通行が確保された他方の片側領域の地盤に、隣接して設置されるまでの間は、通行路の下方の地盤の側面は、土留めされずに解放されたままとなるため、安定した状態で、通行路及びこれの下方の地盤を保持しておくことは困難であると考えられる。
【0008】
本発明は、既存の山岳トンネルにおいて、インバート部の覆工体を構成する、PCaコンクリートブロックを用いたインバート部構造体を、トンネルの横断方向における片側領域毎に施工する際に、他方の片側領域の通行路及びこれの下方の地盤を、簡易な構成により安定した状態で保持しながら、一方の片側領域において形成することのできる山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、山岳トンネルのインバート部におけるトンネルの横断方向の全域に設けられてインバート部覆工体を構成する、PCaコンクリートブロックを用いたインバート部構造体を、前記横断方向の中央を挟んだ両側の片側領域に分けて施工して、他方の片側領域における通行を確保しながら、各々の一方の片側領域で片側ずつ形成できるようにする、山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法であって、前記インバート部におけるトンネルの横断方向の中央には、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、山留板部材を支持させるH型鋼が、フランジ部をトンネルの軸方向に沿わせた状態で、前記インバート部の地盤に打設されることにより複数立設して設けられており、前記H型鋼における一方の片側領域側のフランジ部又は他方の片側領域側のフランジ部に支持させることで、他方の片側領域における通行路の地盤を山留めすることによって、当該他方の片側領域における通行を確保した状態で、一方の片側領域において、片側のインバート部構造体を、一方の片側領域側のフランジ部を超える部分までPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程と、前記H型鋼に山留板部材を支持させることで、一方の片側領域において形成された片側のインバート部構造体の上方部分が埋め戻されて造成された地盤を、山留めすることによって当該一方の片側領域に通行路を復旧させ、復旧させた通行路における通行を確保した状態で、他方の片側領域において、残りの片側のインバート部構造体をPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程とを含んで構成される山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法は、一方の片側領域において、片側のインバート部構造体を、一方の片側領域側のフランジ部を超える部分までPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程では、前記H型鋼における一方の片側領域側のフランジ部の内側面との間に、スパーサ部材を介在させて、山留板部材を、他方の片側領域側に片寄せた状態で当該一方の片側領域側のフランジ部に支持させるようになっていることが好ましい。
【0011】
そして、本発明の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法は、一方の片側領域及び他方の片側領域において形成されるインバート部構造体が、各々、複数のPCコンクリートブロックを、隣接する側壁部覆工体の下端部の受台部との間、及び隣接するPCコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCコンクリートブロックとの間に隙間を保持した状態で、連設して配置してインバート部に設置することで形成されたブロック群を、隣接する前記受台部との間の隙間、及び隣接する前記PCコンクリートブロックとの間の隙間に、充填固化材を充填して硬化させることによって、硬化した充填固化材を介して一体化されて形成されるものとなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法によれば、既存の山岳トンネルにおいて、インバート部の覆工体を構成する、PCaコンクリートブロックを用いたインバート部構造体を、トンネルの横断方向における片側領域毎に施工する際に、他方の片側領域の通行路及びこれの下方の地盤を、簡易な構成により安定した状態で保持しながら、一方の片側領域において形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るインバート部構造体の施工方法を用いて、トンネルの横断方向におけるインバート部の両側にインバート部構造体が各々形成された、山岳トンネルを例示する略示横断面図である。
図2】インバート部構造体が、トンネルの横断方向にけるインバート部の全域に亘って両側に形成された状態を説明する、図1をA-A方向から見た略示上面図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るインバート部構造体の施工方法を説明する山岳トンネルの略示横断面図である。
図4】(a)~(f)は、本発明の好ましい一実施形態に係るインバート部構造体の施工方法を説明する、図3のB部の要部略示上面図である。
図5】トンネルの横断方向にけるインバート部の一方の片側領域に設けられた、インバート部構造体の略示上面図である。
図6図3のC-Cに沿った、充填固化材が充填される前の状態の略示断面図である。
図7】インバート部構造体を構成するPCaコンクリートブロックの斜視図である。
図8】(a)は、インバート部構造体を構成するPCaコンクリートブロックの上面図、(b)は(a)を右側から見た横断方向の側面図、(c)は(a)を正面側から見た軸方向の側面図である。
図9】ボルト挿通螺着孔を説明する、ボルト挿通螺着孔が形成された部分に沿ったPCaコンクリートブロックの横断方向の略示断面図である。
図10】高さ調整ボルトの下端部に取り付けられた接地用アジャスタを説明する斜視図である。
図11】受台部との間の隙間、隣接するPCaコンクリートブロックとの間の隙間、及六面体形状の下面部の下方の隙間に充填固化材が充填された状態を説明する略示断面図である。
図12】充填材注入孔及び開閉バルブを説明する、充填材注入孔が形成された部分に沿ったPCaコンクリートブロックの横断方向の略示断面図である。
図13】充填固化材の注入状況を説明するインバート部構造体の略示上面図である。
図14】PCaコンクリートブロックの中央部側の面に形成された凹凸の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい一実施形態に係る山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法は、図1に示す既設の山岳トンネル30において、トンネルの内壁面を覆うようにして先行して形成されている、両側の側壁部31aから上部のアーチ形状部分31bに至る領域の覆工体31と連続させて、山岳トンネル30の底盤部分30aにインバート部覆工体32を新たに形成する際に、当該インバート部覆工体32の構成部分となる左右両側のインバート部構造体10を、トンネルの横断方向の中心線Cを挟んで片側ずつ、各々形成するための施工方法として採用されたものである。
【0015】
本実施形態では、山岳トンネル30は、例えば数十年前に構築されたトンネルとなっており、掘削の対象となる地盤が安定していたことから、施工時には、トンネル内壁面を覆う覆工体31は、両側の側壁部31aから上部のアーチ形状部分31bのみに形成されていたが、年月を経たことで、底盤部分30aの盤膨れ等による影響が懸念されるようになってきたため、図2にも示すように、左右両側のインバート部構造体10による、新たなインバート部覆工体32を形成するようになっている。
【0016】
また、既存の山岳トンネル30に新たにインバート部覆工体32を形成する場合、トンネルでの通行を全面的に遮断することなく、通行路での通行を確保したまま、工事を行なえるようにすることが望ましいことから、本実施形態では、図3に示すように、トンネルの横断方向における他方の片側領域の通行路60での通行を確保したまま、一方の片側領域において、インバート部構造体10を形成する各工程が実施されるようになっている。本実施形態の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法は、トンネルの横断方向における片側領域毎にインバート部構造体10を施工する際に、他方の片側領域の通行路60及びこれの下方の地盤61を、簡易な構成により安定した状態で保持しながら、一方の片側領域において、インバート部構造体10を効率良く形成できるようにするものとなっている。
【0017】
そして、本実施形態のインバート部構造体の施工方法は、山岳トンネル30のインバート部33におけるトンネルの横断方向の全域に設けられてインバート部覆工体32を構成する、PCaコンクリートブロック20を用いたインバート部構造体10を、横断方向の中央を挟んだ両側の片側領域に分けて施工して、他方の片側領域における通行を確保しながら、各々の一方の片側領域で片側ずつ形成できるようにする、山岳トンネルでの施工方法であって(図3参照)、インバート部33におけるトンネルの横断方向の中央には、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、山留板部材を支持させるH型鋼35が、フランジ部35aをトンネルの軸方向に沿わせた状態で、前記インバート部33の地盤に打設されることにより複数立設して設けられている(図2図5参照)。図4(a)~(f)に示すように、H型鋼35における一方の片側領域55A側のフランジ部35a又は他方の片側領域側55Bのフランジ部35aに支持させることで、他方の片側領域55Bにおける通行路60の地盤61を山留めすることによって、当該他方の片側領域55Bにおける通行を確保した状態で(図3参照)、一方の片側領域55Aにおいて、片側のインバート部構造体10を、一方の片側領域側55Aのフランジ部35aを超える部分までPCaコンクリートブロック20を用いて形成する工程(図4(a)、(b)参照)と、H型鋼35に山留板部材57を支持させることで、一方の片側領域55Aにおいて形成された片側のインバート部構造体10の上方部分が埋め戻されて造成された地盤61’(図4(d)、(e)参照)を、山留めすることによって当該一方の片側領域55Aに通行路60’(図4(d)、(e)参照)を復旧させ、復旧させた通行路60’における通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10をPCaコンクリートブロック20を用いて形成する工程(図4(d)~(f)参照)とを含んで構成されている。
【0018】
また、本実施形態によれば、一方の片側領域55Aにおいて、片側のインバート部構造体10を、一方の片側領域55A側のフランジ部35aを超える部分までPCaコンクリートブロック20を用いて形成する工程では、好ましくはH型鋼35における一方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面との間に、スパーサ部材56を介在させて、山留板部材57を、他方の片側領域55B側に片寄せた状態で当該一方の片側領域側55Aのフランジ部35aに支持させるようになっている(図4(a)、(b)参照)。
【0019】
また、本実施形態では、一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bにおいて形成されるインバート部構造体10は、各々、図1及び図2に示すように、複数のPCaコンクリートブロック20を、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで形成されたブロック群20X,10Yを、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間の隙間21bに、充填固化材22を充填して硬化させることによって(図11参照)、硬化した充填固化材22を介して一体化されて形成されるものとなっていることが好ましい。
【0020】
すなわち、本実施形態では、インバート部構造体10は、図5及び図6に示すように、山岳トンネル30のインバート部33におけるトンネルの横断方向の少なくとも片側領域に設けられて、インバート部覆工体32を構成する、PCaコンクリートブロック20を用いたインバート部33の構造体であって、PCaコンクリートブロック20は、図7及び図8(a)~(c)に示すように、各々、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有する六面体形状のブロックとして形成されている。これらの複数のPCaコンクリートブロック20は、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に、隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されていると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロックとの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置されてインバート部33に設置されている。これらの縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20は、図1図2、及び図11に示すように、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20との間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32の少なくとも一部として、インバート部覆工体32の片側部分を構成している。
【0021】
また、本実施形態では、複数のPCaコンクリートブロック20は、好ましくはトンネルの横断方向の横幅x、トンネルの軸方向の縦幅y、及び高さzが等しくなった、同様の六面体形状を備えるように形成されている(図7図8(a)~(c)参照)。縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20は、充填固化材22が充填された、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロック20との間の軸方向に延設する隙間21b、及びトンネルの軸方向に隣接する前記PCaコンクリートブロックとの間の横断方向に延設する隙間21bが、好ましくはいずれも直線状に連続しているいも状に配置されて、インバート部33に設置されている(図2図5参照)。充填固化材22が充填された、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCコンクリートブロックとの間の隙間21bは、好ましくは15~30mm程度の間隔幅の隙間となっている。
【0022】
本実施形態では、インバート部構造体10を構成する複数のPCaコンクリートブロック20は、上述のように、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接する当該PCaコンクリートブロック20との間に、充填固化材22が充填される隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接する当該PCコンクリートブロックとの間に充填固化材22が充填される隙間21bを保持した状態で連設して配置されて、縦横に並べてインバート部33に設置されるものとなっている。またPCaコンクリートブロック20は、図7及び図8(a)~(c)に示すように、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備える、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有すると共に、前後一対の平坦な軸方向対向面20cと左右一対の平坦な横断方向対向面20dとを有する、六面体形状のブロックとして形成されている。
【0023】
さらに、これらのPCaコンクリートブロック20には、各々 六面体形状の上面部分における4辺部に、隣接するPCaコンクリートブロック20をボルト部材(図示せず。)を用いて連結するための、ボルトボックス23又は雌ネジアンカー24が埋設固定されている。ボルトボックス23は、PCaコンクリートブロック20の上面部20aに開口しており、雌ネジアンカー24は、側面部の軸方向対向面20cや横断方向対向面20dの上端部に開口している。また図7に示すように、PCaコンクリートブロック20には、六面体形状を上下方向に貫通するボルト挿通螺着孔25が、二等辺三角形状の各々の角部分に配設されて3箇所に形成されている(図8(a)参照)。各々のボルト挿通螺着孔25には、上下方向の中間部よりも下方部分に、高さ調整ボルト26が螺着される雌ネジ部材25aが固着されている。各々のボルト挿通螺着孔25の雌ネジ部材25aが固着された部分から、上方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20の上面部20aに開口する、大ラッパ状凹部25bが形成されていると共に、雌ネジ部材25aが固着された部分から、下方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20の下面部20bに開口する、小ラッパ状凹部25cが形成されている。これらのボルト挿通螺着孔25には、高さ調整ボルト26が挿通され、雌ネジ部材25aに螺着されることによって、当該高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20の下面部20bから進退可能に突出させた状態で、取り付けられることになる。また大ラッパ状凹部25bや小ラッパ状凹部25cは、上方や下方の開口に向かってテーパー状に拡径するラッパ形状を備えているので、これらのラッパ状凹部25b,25cを形成するためにコンクリート打設用の箱形型枠に取り付けられた箱抜き部材を、コンクリートが硬化した後に、スムーズに取り除くことが可能になる。
【0024】
3箇所のボルト挿通螺着孔25は、図8(a)に示すように、PCaコンクリートブロック20の上面部20aにおいて、好ましくは底辺部を一方の軸方向対向面20c側にこれと平行に配置し、頂部を他方の軸方向対向面20c側に配置した、二等辺三角形状(一点鎖線参照)の各角部分に配設されて、形成されている。
【0025】
さらにまた、これらのPCaコンクリートブロック20のうちの一部のPCaコンクリートブロック20’(図5参照)には、図11及び図12に示すように、六面体形状を上下方向に貫通する、充填材注入孔27が形成されている。各々の充填材注入孔27には、上下方向の中間部分に、開閉バルブ28の雄ネジ部が螺着される雌ネジ部材27aが固着されている。各々の充填材注入孔27の雌ネジ部材27aが固着された部分から、上方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20’の上面部20aに開口する、上部側ラッパ状凹部27bが形成されていると共に、雌ネジ部材27aが固着された部分から、下方に向かって拡径してPCaコンクリートブロック20’の下面部20bに開口する、下部側ラッパ状凹部27cが形成されている。これらの充填材注入孔27には、開閉バルブ28の雄ネジ部が雌ネジ部材27aに螺着されて、ハンドル部28aがPCaコンクリートブロック20’の上面部20aの上方に配置されることによって、PCaコンクリートブロック20’の上面部20aでの作業によりハンドル部28aの開閉操作が可能な状態で、開閉バルブ28がPCaコンクリートブロック20’に着脱可能に取り付けられることになる。また上部側ラッパ状凹部27bや下部側ラッパ状凹部27cは、上方や下方の開口に向かってテーパー状に拡径するラッパ形状を備えているので、これらのラッパ状凹部27b,27cを形成するためにコンクリート打設用の箱形型枠に取り付けられた箱抜き部材を、コンクリートが硬化した後に、スムーズに取り除くことが可能になる。
【0026】
本実施形態では、六面体形状のPCaコンクリートブロック20’を上下方向に貫通する充填材注入孔27は、好ましくはPCaコンクリートブロック20’の上面部20aの中央部分に配設して形成することができる(図8(a)参照)。
【0027】
また、本実施形態では、これらのPCaコンクリートブロック20(20’)には、好ましくは六面体形状の前後一対の平坦な軸方向対向面20c及び左右一対の平坦な横断方向対向面20dの各々に、対向する他の対向面20c,20dとの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持するための、スペーサ治具29a、29bを取り付け可能となっている(図5図6(b),(c)参照)。好ましくは六面体形状の上面部20aには、各々のPCaコンクリートブロック20を吊り上げる際に用いる、複数の吊り治具29cが埋設固定されている(図8(a)参照)。
【0028】
そして、本実施形態では、これらのPCaコンクリートブロック20は、例えば製造工場において、上述の所定の六面体形状に沿った形状に組み付けた箱形型枠の内部に、コンクリートを打設して硬化させた後に、所定の養生期間を経過させて脱型することで、好ましくは横幅xが1385~1435mm程度、縦幅yが730mm程度、高さzが500mm程度の大きさの、上面部20a及び下面部20bが湾曲する六面体形状を備えるように形成されると共に、1300kg程度の重量を有することになる。例えば箱形型枠の内部に段取り筋を配置し、これに支持させて、上述のボルトボックス23や雌ネジアンカー24、及びボルト挿通螺着孔25や充填材注入孔27のための箱抜き部材等を取り付けておくことによって、これらをPCaコンクリートブロック20に埋設固定したり、仮固定したりできるようになっている。本実施形態では、インバートブロックとして用いるPCaコンクリートブロック20の大きさや形状、重量等は、片側領域55Aの作業ヤード71において、他方の片側領域55Bでの車両の通行等に影響を及ぼすことなく使用することが可能な、揚重機等の能力に応じて、適宜設計することができる。例えばPCaコンクリートブロック20の重量は、好ましくは1000~1500kgとすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、複数のPCaコンクリートブロック20は、同様の六面体形状を備えるように形成されているので、使用する箱形型枠の種類を限定して、効率良く製造することが可能になると共に、同様の重量のブロックとなるため、揚重時や搬送時の作業性が向上し、且つ吊り上げたり据え付けたりする際に同じように取り扱うことが可能なので、例えばいも状に配置されるように各々のPCaコンクリートブロック20を所定の位置に精度良く設置する作業を、容易に行うことが可能になる。製造時のコストを削減することも可能になる。
【0030】
本実施形態では、インバート部構造体10は、上述のように、トンネルの横断方向における中央を挟んだ両側の領域を一対の片側領域として、各々の片側領域55A,55Bにおいて施工されるようになっている(図1図2参照)。インバート部33におけるトンネルの横断方向の中央には、上述のように、各々の片側領域55A,55Bでインバート部構造体10を施工する際に、他方の片側領域に影響が及ばないようにするための山留板部材57を支持するH型鋼35が、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、フランジ部35aをトンネルの軸方向に沿わせた状態で、インバート部33の地盤に打ち込むことによって、複数立設させておくことができる。このため、これらのH型鋼35が立設する位置における、トンネルの横断方向の中央側においてトンネルの軸方向に隣接する一対のPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央側の端部には、これらの間の隙間21bを挟んだ両側の角部分に、矩形断面形状を有する切欠き凹部20eを形成しておくことができる(図5参照)。これらの両側の角部分の切欠き凹部20eによって、各々のインバート部構造体10のトンネルの横断方向の中央側の端面部(中央側端面部)10Bに、H型鋼35の一方のフランジ部を配設させるフランジ配設凹部10aを、H型鋼35が立設する部分に設けることができる。
【0031】
すなわち、各々の片側領域55A,55Bのインバート部構造体10を構成する複数のPCaコンクリートブロック20によるブロック群20X,20Y(図1参照)における、H型鋼35が立設する部分に配置されるPCaコンクリートブロック20(中央部側ブロック20B)は、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備える、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有すると共に、前後一対の平坦な軸方向対向面20cと左右一対の平坦な横断方向対向面20dとを有する六面体形状のブロックとして形成されており(図8(a)~(c)参照)、いずれか1箇所の軸方向対向面20cと横断方向対向面20dとの角部分に、図5に示すように、例えばH型鋼35のフランジ部35aの横幅の1/2以上の幅の辺部を有するように切り欠かれた、矩形断面形状を備える切欠き凹部20eが、上面部20aから下面部20bに亘って連続して設けられている。これによって、H型鋼35が立設する部分でトンネルの軸方向に隣接する、一対の中央部側ブロック20Bの中央側の端部には、これらの切欠き凹部20eによって、H型鋼35のフランジ部をかわすことが可能な、フランジ配設凹部10aが形成されることになる。
【0032】
そして、本実施形態では、インバート部構造体10を構成するこれらの複数のPCaコンクリートブロック20は、図5及び図6に示すように、側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cに隣接して配置される受台部側ブロック20Aと、インバート部の横断方向中央部側に配置される中央部側ブロック20Bと、これらの間に配置される一又は複数の中間部ブロック20C(本実施形態では、一の中間部ブロック20C)とを含んだ複数の横断方向ブロック列20Dを有しており、これらのPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、隣接する受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20C(横断方向ブロック列20D)との間に隙間21bを保持した状態で連設して配置されて、縦横に並べてインバート部33に設置されるようになっている。インバート部構造体10を施工する際に用いるこれらの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、以下のようなインバート部におけるPCaブロックの設置方法によって、施工することが可能である。
【0033】
すなわち、本実施形態では、トンネルの横断方向に連設する各々の横断方向ブロック列20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、図6に示すように、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて設置して仮固定手段36により仮固定した後に、仮固定された受台部側ブロック20Aに隣接させて、中間部ブロック20C及び中央部側ブロック20Bを順次設置することで、トンネルの横断方向に連設する各列(横断方向ブロック列)20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、インバート部33に設置するようになっている。
【0034】
また、例えば、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて設置して仮固定手段36により仮固定した後に、仮固定された受台部側ブロック20Aに隣接させて、中間部ブロック20Cを設置し、設置した中間部ブロック20Cと受台部側ブロック20Aとの隣接箇所において、横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23を介して、ボルト部材(図示せず)により仮固定してから、各々のPCaコンクリートブロック20A,20Cの高さ及び位置を調整した後に、ボルト部材を本締めする。引き続いて、中間部ブロック20Cに隣接させて、中央部側ブロック20Bを設置し、設置した中央部側ブロック20Bと中間部ブロック20Cとの隣接箇所において、横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20C,20Bの上面部20aに配設されたボルトボックス23を介して、ボルト部材により仮固定してから、中央部側ブロック20Bの高さ及び位置を調整した後に、ボルト部材を本締めすることによって、トンネルの横断方向に連設する各横断方向ブロック列20Dの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、インバート部33に設置することができる。
【0035】
ここで、本実施形態では、受台部側ブロック20Aを受台部31cに隣接させて仮固定する仮固定手段36は、好ましくは受台部31cに埋設したホールインアンカー36aに取り付けられた係止部材と、受台部側ブロック20Aに設けられたボルトボックス23や吊り治具29cに取り付けられた係止部材とに両端部が係止された、ワイヤ、チェーン等の索条体36bによるものとすることができる。ワイヤ、チェーン等の索条体36bには、係止される両端部の間の長さを調整可能な、例えばターンバックル等による伸縮調整手段36cを設けることができる。これによって受台部31cと、隣接する受台部側ブロック20Aとの間に保持される隙間21aの間隔幅を、調整可能とすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの高さの調整は、図8(a)及び図9に示すように、上述の3箇所に形成されたボルト挿通螺着孔25に各々螺着された、3本の高さ調整ボルト26を用いて実施することができるようになっている。すなわち、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cには、ボルト挿通螺着孔25が、上下方向に貫通して3箇所に形成されていると共に、各々のボルト挿通螺着孔25には、高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bから下方に突出させることが可能な状態で取り付けられている。縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部20bの下方の隙間21cに、充填固化材22を充填する工程(図11参照)に先立って、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上方からの回転操作によって、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cにおける、3本の高さ調整ボルト26のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bからの突出長さを変化させて、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、高さ及び傾きを調整する工程を行なうようになっている。
【0037】
上述のように、本実施形態では、各々のボルト挿通螺着孔25の上下方向の中間部よりも下方部分に、好ましくはナット部材が、雌ネジ部材25aとして固着されおり、このナット部材25aに高さ調整ボルト26が螺着されることによって、高さ調整ボルト26が、下端部26aをPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bから下方に突出させることが可能な状態で取り付けられている。また高さ調整ボルト26の下端部26aには、傾動自在な接地用アジャスタ26bを取り付けておくことができる。これによって高さ調整ボルト26の下端部26aを、安定した状態で、下面部20bの下方の、充填底面部26cとなる例えば地盤面に、接地させることができるようになっている。接地用アジャスタ26bは、高さ調整ボルト26を上方に後退させた際に、ボルト挿通螺着孔25の開口周縁部をテーパー状に切り欠いて、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bに形成された、下方に向けて拡径する上述の小ラッパ状凹部25cに、収容できるような形状とすることも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、高さ調整ボルト26の上端部26dは、好ましくは角形断面となるように形成されており、この上端部26dに、回転操作治具として例えばインサート用エクステンションバーを係止して、高さ調整ボルト26の回転操作を行なうことで、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aの上方での作業によって、高さ調整ボルト26の下端部26aの、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの下面部20bからの突出長さを、容易に変化させることができるようになっている。ボルト挿通螺着孔25には、上述のように、雌ネジ部材であるナット部材25aが固着された部分から上方に向かって拡径して、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに開口する、大ラッパ状凹部25bが形成されている。下端部26aが充填底面部26cに接地するように調整された後の高さ調整ボルト26の上端部26dが、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aから突出していたり、上面部20aに近接していたりしていて、大ラッパ状凹部25bに仕上げ用の充填材が充填された際に、上端部26dの上方に十分な被り厚さを確保できない場合には、この大ラッパ状凹部25bにおいて、高さ調整ボルト26の上端部26dを、必要な長さで適宜切断することができる。これによって、ボルト挿通螺着孔25に充填されたモルタル等の仕上げ用の充填材による、所望の被り厚さを確保できるようにして、高さ調整ボルト26が腐食しないようにすることが可能になる。高さ調整ボルト26の上端部26dを切断する作業は、上方に向かって拡径する大ラッパ状凹部25bにおいて十分な作業スペースを確保できるので、スムーズに行なうことができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、上述のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを用いたインバート部構造体10において、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する当該PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、縦横に連結配置してインバート部33に一体として設置するための連結部の構造として、以下のようなインバート部構造体におけるPCaブロックの連結部構造37を採用できるようになっている。
【0040】
すなわち、本実施形態では、図5図6、及び図8(a)~(c)に示すように、PCaブロックの連結部構造37は、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの当該横断方向に対向する各一対の横断方向対向面20dの間に、いずれか一方の対向面に固着された横断方向スペーサ治具29a(図8(b)参照)を、好ましくは少なくとも3箇所に配置して介在させていると共に、これらの横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着された、ボルト部材(図示せず。)の締着力によって、トンネルの横断方向に隣接する各一対のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、横断方向対向面20dの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、連結するようになっている。またトンネルの軸方向に隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの当該軸方向に対向する各一対の軸方向対向面20cの間に、いずれか一方の軸方向対向面20cに固着された軸方向スペーサ治具29b(図8(c)参照)を、好ましくは少なくとも3箇所に配置して介在させていると共に、これらの軸方向対向面20cと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着された、ボルト部材(図示せず。)の締着力によって、トンネルの軸方向に隣接する各一対のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、軸方向対向面20cの間に所定の間隔幅の隙間21bを保持した状態で、連結するようになっている。横断方向スペーサ治具29aや軸方向スペーサ治具29bは、ボルトボックス23が設けられた位置で、横断方向対向面20dや軸方向対向面20cに取り付けておくこともできる。
【0041】
本実施形態では、横断方向スペーサ治具29a及び/又は軸方向スペーサ治具29bを、好ましくはいずれか一方の対向面20c、20dに貼り付けて固着された、モルタルブロックによるものとすることができる。モルタルブロックによるスペーサ治具29a,29bは、対向面20c、20dから取外し可能に取り付けておき、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを本締めして連結した後に、取り外すようにすることもできる。横断方向スペーサ治具29a及び/又は軸方向スペーサ治具29bは、好ましくはいずれか一方の対向面10c、10dに埋設された雌ネジインサートにねじ込まれることで、突出長さを調整可能に固着された、雄ネジ部材によるものとすることもできる。
【0042】
いずれか一方の横断方向対向面20dや軸方向対向面20cに固着された、好ましくは少なくとも3箇所に配置された横断方向スペーサ治具29aや軸方向スペーサ治具29bは、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの重心位置よりも下方の領域において、少なくとも2箇所に固着されていることが好ましい。これによって、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを設置する際に、特別な装置を使用することなく、隙間21a,21bが精度良く設けられたことを確認することが困難な、重心位置よりも下方の領域に、所定の間隔の隙間21a,21bを、安定した状態で精度良く適切に形成することが可能になる。
【0043】
横断方向対向面20dと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着されたボルト部材や、軸方向対向面20cと近接する少なくとも一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aに配設されたボルトボックス23において締着されたボルト部材は、好ましくは一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23と、他方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dに埋設された雌ネジアンカー24とに跨って、締着されるようになっていても良い。好ましくは一方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23と、他方のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの軸方向対向面20cや横断方向対向面20dと近接する上面部20aに配設されたボルトボックス23とに跨って、締着されるようになっていても良い。
【0044】
そして、本実施形態では、これらの縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、図11に示すように、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間と連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32の少なくとも一部を構成するようになっている。本実施形態では、以下のような施工方法によって、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに、充填固化材22を充填するようになっている。
【0045】
すなわち、本実施形態において、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに、充填固化材22を充填するには、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20a、妻側端面部10A(図5図11参照)及び中央側端面部10B(図5図11参照)において開口する隙間21a,21bの開口部分を閉塞した状態とする。しかる後に、例えば図11図13に示すように、トンネルの軸方向に連設する複数の中央部側ブロック20Bのうち1又は2以上に、上下方向に貫通して設けられた中央部側の充填材注入孔27dから、及びトンネルの軸方向に連設する複数の受台部側ブロック20Aのうち1又は2以上に、上下方向に貫通して設けられた受台部側の充填材注入孔27eから、充填固化材22をこれらの隙間21a,21b順次注入するようになっている。好ましくは図13に示すように、例えば中央部側の充填材注入孔27dから充填固化材22の注入を始めて、受台部31c側の充填材注入孔27eに切り替えて充填固化材22をさらに注入した後に、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aの開口部分から、充填固化材22が流出するのを確認して、充填固化材22の充填を終了するようになっている。受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eを使用することなく、中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dのみを使用して充填固化材22を注入し、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aの開口部分から、充填固化材22が流出するのを確認して、充填固化材22の充填を終了することもできる。
【0046】
また、本実施形態では、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、好ましくは先行して形成された既設インバート部構造体40(図5図13参照)のトンネルの軸方向に隣接して設けられている。縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20a、及び中央側端面部10Bにおいて開口する、既設インバート部構造体40との間の隙間21dの開口部分を閉塞した状態で、好ましくは図13に示すように、例えば既設インバート部構造体40側に位置する中央部側の充填材注入孔27dから、妻側に位置する中央部側の充填材注入孔27dに切り換えながら、充填固化材22の注入を行うと共に、既設インバート部構造体50側に位置する受台部側の充填材注入孔27eから、妻側に位置する受台部側の充填材注入孔27eに切り換えながら、充填固化材22の注入を行うようになっている。既設インバート部構造体50側の中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dから妻側の中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dに切り替えて、充填固化材22の注入を途中まで行った後に、既設インバート部構造体50側の受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eから妻側の受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eにさらに切り替えて、充填固化材22の注入を行なうようにすることもできる。
【0047】
さらに、本実施形態では、好ましくは縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aにおける隙間21bの開口部分を覆うようにして、帯板状型枠41aを上面部20aに重ねて固定して取り付けることで、上面部20aの開口部分が閉塞されるようになっている(図11参照)。妻側端面部10Aにおいても、好ましくは隙間21a,21b、21cの開口部分を覆うようにして、帯板状型枠を妻側端面部10Aに重ねて固定して取り付けることで、妻側端面部10Aの開口部分が閉塞されるようになっている(図示せず)。中央側端面部10Bにおいても、好ましくは隙間21b,21c、21dの開口部分を覆うようにして、帯板状型枠41bを中央側端面部10Bに重ねて固定して取り付けることで、中央側端面部10Bの開口部分が閉塞されるようになっている(図11参照)。
【0048】
また、これらの帯板状型枠は、透明な板状部材を用いて形成することが好ましい。これによって、これらの透明な帯板状型枠を介して、各々の隙間21a,21b,21c、21dへの充填固化材22の充填状況を、視認することが可能になる。
【0049】
さらにまた、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aにおける隙間21a,21b,21dの開口部分を覆うようにして取り付けられた帯板状型枠41aには、適宜の位置から延設させて、上面部20aにおける隙間21a,21b,21dと連通するエア抜きホース42(図11参照)を取り付けておくことが好ましい。これによって、充填固化材22が充填される際に、エア抜きホース42を介して、隙間21a,21b,21dからのエア抜きを効果的に行うことが可能になると共に、これらのエア抜きホース42から充填固化材22が流出することによって、充填固化材22が充填されたことを確認することが可能になる。
【0050】
本実施形態では、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらの隙間21a,21bと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに、充填固化材22を充填するには、上述のように、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aや、妻側端面部10A及び中央側端面部10Bにおいて開口する、隙間21a,21b,21cの開口部分を閉塞した状態で、トンネルの軸方向に連設する複数の中央部側ブロック20Bのうち1又は2以上に上下方向に貫通して設けられた中央部側の充填材注入孔27dから、及びトンネルの軸方向に連設する複数の受台部側ブロック20Aのうち1又は2以上に上下方向に貫通して設けられた受台部側の充填材注入孔27eから、充填固化材22が順次注入されるようになっている。中央部側の充填材注入孔27d及び受台部側の充填材注入孔27eには、各々、開閉可能な開閉バルブ28が取り付けられている。選択された中央部側の充填材注入孔27d又は受台部側の充填材注入孔27eの開閉バルブ28に注入ホースを順次接続して、充填固化材22を充填する際に、充填を終了した後の中央部側の充填材注入孔27d又は受台部側の充填材注入孔27eの開閉バルブ28は閉塞される。未使用の中央部側の充填材注入孔27d又は受台部側の充填材注入孔27eの開閉バルブ28は、開放されたままとして、エア抜き部材として用いることができるようになっている。上述のように、充填固化材22を充填する工程では、受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eを使用することなく、中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dのみを使用して充填固化材22を注入し、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aの開口部分から、充填固化材22が流出するのを確認して、充填固化材22の充填を終了することもできる。中央部側の充填材注入孔27dから充填固化材22を充填することで、受台部側ブロック20Aの上面部20aに保持された受台部31cとの間の隙間21aから、スムーズにエア抜きすることが可能になって、充填した充填固化材22にエア溜まりが生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0051】
また、本実施形態では、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、上述のように、好ましくは先行して形成された既設インバート部構造体40のトンネルの軸方向に隣接して設けられており、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20a、及び中央側端面部10Bにおいて開口する、既設インバート部構造体40との間の隙間21dの開口部分を閉塞した状態で、既設インバート部構造体40側に位置する中央部側の充填材注入孔27dの開閉バルブ28から、妻側に位置する中央部側の充填材注入孔27dの開閉バルブ28に切り換えながら、充填固化材22の注入を行うと共に、既設インバート部構造体40側に位置する受台部側の充填材注入孔27eの開閉バルブ28から、妻側に位置する受台部側の充填材注入孔27eの開閉バルブ28に切り換えながら、充填固化材22の注入を行うようになっている。上述のように、既設インバート部構造体50側の中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dから妻側の中央部側ブロック20Bの充填材注入孔27dに切り替えて、充填固化材22の注入を途中まで行った後に、既設インバート部構造体50側の受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eから妻側の受台部側ブロック20Aの充填材注入孔27eにさらに切り替えて、充填固化材22の注入を行なうようにすることもできる。
【0052】
各々の中央部側の充填材注入孔27d及び受台部側の充填材注入孔27eにおいて、開閉バルブ28は、上述のように、中央部側の充填材注入孔27d又は受台部側の充填材注入孔27eの貫通方向中間部分に固着された雌ネジ部材27aに、雄ネジ部28bを螺着して、縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20Bの上面部から、上方に突出した状態で取り付けておくことができる。これによって、注入ホースを着脱可能に接続する操作を、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの上面部20aでの作業によって、容易に行ことが可能になる。
【0053】
そして、本実施形態の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法は、上述のようなインバート部覆工体10を、トンネルの横断方向の片側領域55A,55B毎に施工する際に、図3及び図4(a)~(f)に示すように、例えば他方の片側領域55Bの通行路60での通行を確保したまま、一方の片側領域55Aにおいて、インバート部構造体10を形成する各工程を実施可能にするものとなっている。
【0054】
すなわち、本実施形態では、上述のように、インバート部33におけるトンネルの横断方向の中央には、トンネルの軸方向に所定の間隔をおいて、山留板部材57を支持させるH型鋼35が、フランジ部35aをトンネルの軸方向に沿わせた状態で、前記インバート部33の地盤に打設されることにより複数立設して設けられている(図2図5参照)。本実施形態のインバート部構造体の施工方法は、図4(a)~(f)に示すように、好ましくはH型鋼35における一方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面との間に、スパーサ部材56を介在させて、山留板部材57を、他方の片側領域55B側に片寄せた状態で当該一方の片側領域55A側のフランジ部35aに支持さることで、他方の片側領域55Bにおける通行路60の地盤61を山留めすることによって、当該他方の片側領域55Bにおける通行を確保した状態で(図3参照)、一方の片側領域55Aにおいて、片側のインバート部構造体10を、一方の片側領域側55Aのフランジ部35aを超える部分まで形成する工程(図4(a)、(b)参照)と、例えばH型鋼35における一方の片側領域55A側のフランジ部35aに山留板部材57を支持させることで、一方の片側領域55Aにおいて形成された片側のインバート部構造体10の上方部分が埋め戻されて造成された地盤61’(図4(d)、(e)参照)を、山留めすることによって当該一方の片側領域55Aに通行路60’(図4(d)、(e)参照)を復旧させ、復旧させた通行路’における通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成する工程(図4(d)~(f)参照)とを含んで構成されている。
【0055】
本実施形態では、一方の片側領域55A側において、片側のインバート部構造体10を形成する工程では、まず、他方の片側領域55Bにおける通行路60の下方の地盤61を山留めしつつ、一方の片側領域側55Aの通行路60及びこれの下方の地盤61を、山岳トンネル30の底盤部分30aに至るまで掘削する。ここで、他方の片側領域55Bにおける通行路60の下方の地盤61は、図4(a)に示すように、所定の間隔をおいて隣接する各一対のH型鋼35のフランジ部35aに跨る長さを有する、公知の山留板部材57の両端部を、H型鋼35における一方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面に、当該内側面との間にスパーサ部材56を介在させることで、他方の片側領域55B側に山留板部材57を片寄せた状態で取り付けて、一方の片側領域55A側のフランジ部35aに他方の片側領域55Bからの土圧を支持させることによって、簡易に且つ安定した状態で山留させることが可能になる。
【0056】
これによって、図4(a)に示すように、一方の片側領域55A側のインバート部構造体10の、トンネルの横断方向の中央側に形成された、トンネルの軸方向に隣接する一対のPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの切欠き凹部20eによるフランジ配設凹部10aに、H型鋼35の一方の片側領域55A側のフランジ部35aを配設した状態で、当該一方の片側領域55A側のインバート部構造体10を、形成することが可能になる。またこれによって、他方の片側領域55Bにおける通行路60での通行を確保したまま(図3参照)、一方の片側領域55A側のインバート部構造体10を、中央部側ブロック20Bにおける横断方向対向面20dによる、切欠き凹部20eを除いた端面が、一方の片側領域側55Aのフランジ部35aを超える部分まで突出している状態で、形成することが可能になる。
【0057】
このように、一方の片側領域55Aのインバート部構造体10が、H型鋼35の一方の片側領域55A側のフランジ部35aを超える部分まで形成されていることにより、後述する他方の片側領域55B側のインバート部構造体10を形成する工程において、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間隔部分51(図1図2参照)に、充填固化材22を、容易に充填して硬化させることが可能になる。
【0058】
一方の片側領域55A側のインバート部構造体10を形成したら、本実施形態では、図4(c)示すように、下端部分の山留板部材57をH型鋼35からスパーサ部材56と共に取り外しながら、形成したインバート部構造体10の上面部の高さ位置まで、他方の片側領域55Bの地盤61との間の部分を埋め戻す(ドット部参照)。しかる後に、図4(d)示すように、片側領域55Aのインバート部構造体10よりも上方部分の山留板部材57を、スパーサ部材56と共にH型鋼35から取り外し、取り外した山留板部材57を盛り換えるようにして、これの両端部を、H型鋼35における他方の片側領域55B側のフランジ部35aの内側面との間にスパーサ部材56を介在させることで、一方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面に当接させで、一方の片側領域55A側に片寄せた状態で山留板部材57を取り付け直す。またこれによって生じた、山留板部材57と、他方の片側領域55Aにおける通行路60の下方の地盤61との間の隙間部分を埋め戻して、山留板部材57を、H型鋼35の一方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面に係止させる。
【0059】
この状態から、引き続いて図4(e)に示すように、一方の片側領域55Aにおいて、形成したインバート部構造体10の上方部分を、他方の片側領域55Bにおける通行路60の高さ位置まで埋め戻すことで、舗装用の地盤61’を造成すると共に、造成された地盤61’の上面部を舗装することにより、一方の片側領域55Aに通行路60’を復旧させることができる。一方の片側領域55Aに通行路60’を復旧させたら、復旧させた通行路60’における通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bにおいて、当該他方の片側領域55Bをインバート部構造体10が形成される新たな一方の片側領域として、上述と同様に、通行路60及びこれの下方の地盤61を、山岳トンネル30の底盤部分30aに至るまで掘削する。また山留板部材57の両端部を、H型鋼35における他方の片側領域55A側のフランジ部35aの内側面に、スパーサ部材56を介在させて係止することにより、一方の片側領域55Aからの土圧を山留板部材57によって支持させて、簡易に且つ安定した状態で山留させながら、他方の片側領域55Bにも、インバート部構造体10を形成することが可能になる。
【0060】
すなわち、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成する工程では、図4(d)~(f)に示すように、好ましくはH型鋼35における他方の片側領域55B側のフランジ部35aにスパーサ部材56を介して山留板部材57を支持させることで、一方の片側領域55Aにおいて形成された片側のインバート部構造体10の上方部分が埋め戻されて造成された地盤61’を、山留めすることによって当該一方の片側領域55Aに通行路60’を復旧させ、復旧させた通行路60’における通行を確保した状態で、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成するようになっている。
【0061】
また、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成する工程では、後述するように、一方の片側領域55Aにおいて形成された一方側ブロック群20Xと、他方の片側領域55Bにおいて形成された他方側ブロック群20Yとの間隔部分51にも、充填固化材22を充填して固化させることができるようになってなる。
【0062】
本実施形態では、他方の片側領域55Bにおいて、残りの片側のインバート部構造体10を形成したら、山留板部材57及びスパーサ部材56を撤去しつつ、形成した他方の片側領域55Bのインバート部構造体10の上方部分を、一方の片側領域55Aにおける通行路61の高さ位置まで埋め戻すことで、舗装用の地盤を造成し直すと共に、造成された地盤の上面部を舗装することによって、他方の片側領域55Bにも、通行路(図示せず)を復旧させることができる。
【0063】
そして、本実施形態では、一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bにおいて各々形成されたインバート部構造体10は、図1及び図2に示すように、これらが一体となってインバート部覆工体32を構成する、横断方向の全域のインバート部構造体50を形成するようになっている。
【0064】
すなわち、横断方向の全域のインバート部構造体50は、山岳トンネルのインバート部33におけるトンネルの横断方向の全域に設けられて、インバート部覆工体32を構成する、PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを用いた構造体であって、各々のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、上述のように、インバート部覆工体32の横断面形状に沿った湾曲形状を備えるように、湾曲する上面部20a及び下面部20bを有する六面体形状のブロックとして形成されている。図1及び図2に示すように、トンネルの横断方向の一方の片側領域55A及び他方の片側領域55Bの各々において、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cが、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロックとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されていると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置されてインバート部33に設置されていることで、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yが形成されている。且つトンネルの横断方向の中央部分において、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間には、間隔部分51が保持されている。一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yにおいて各々縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、隣接する各々の受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間の間隔部分51、及びこれらの隙間21a,21bや間隔部分51と連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填されて硬化した、充填固化材22を介して一体化された状態で、インバート部覆工体32を構成するようになっている。
【0065】
また、本実施形態では、充填固化材22が充填された、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間の隙間21bは、好ましくは15~30mmの間隔幅の隙間となっており、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間の間隔部分51は、好ましくは100~130mmの間隔幅の間隔部分となっている。
【0066】
さらに、本実施形態では、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yにおいて各々縦横に連設して配置された複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cは、充填固化材22が充填された、トンネルの横断方向に隣接するPCaコンクリートブロックの間の軸方向に延設する隙間21b、及びトンネルの軸方向に隣接するPCaコンクリートブロックの間の横断方向に延設する隙間が、好ましくはいずれも直線状に連続しているいも状に配置されて、インバート部33に設置されている。
【0067】
さらにまた、本実施形態では、間隔部分51に面している、一方側ブロック群20Xの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央部側の面、及び前記他方側ブロック群の最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bの中央部側の面には、例えば図14に示すように、充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52が形成されていることが好ましい。
【0068】
充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52は、好ましくは隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置されてインバート部33に設置されている各々のPCaコンクリートブロック20における、保持された隙間21a,21bを挟んで対向する横断方向対向面20dに形成することもできる。充填固化材22との付着力を向上させる凹凸52は、好ましくは隣接するPCaコンクリートブロック20との間に隙間21bを保持した状態で、トンネルの軸方向に連設して配置されてインバート部33に設置されている各々のPCaコンクリートブロック20における、保持された隙間21bを挟んで対向する軸方向対向面20cに形成することもできる。
【0069】
また、本実施形態では、一方側ブロック群20Xの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bと、他方側ブロック群20Yの最も中央部側に位置するPCaコンクリートブロック(中央部側ブロック)20Bとは、長尺ボルト部材(図示せず、)を介して連結されていることが好ましい。これによって、一方側ブロック群20X及び他方側ブロック群20Yの設置精度を確保することが可能なると共に、これらのブロック群20X,20Yの間の部分のせん断強度を確保することが可能になる。
【0070】
本実施形態では、上述のトンネルの横断方向の全域のインバート部構造体50は、以下のようにして形成されることになる。すなわち、トンネルの横断方向の全域のインバート部構造体50は、トンネルの横断方向の一方の片側領域55Aにおいて、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで、一方側ブロック群20Xを形成する工程と、縦横に連設して配置された一方側ブロック群20Xの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接する前記PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに充填固化材22を充填して硬化させる工程と、トンネルの横断方向の他方の片側領域55Bにおいて、複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cを、隣接する側壁部覆工体31aの下端部の受台部31cとの間、及び隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間に隙間21a,21bを保持した状態で、トンネルの横断方向に連設して配置してインバート部33に設置すると共に、トンネルの軸方向にもまた、隣接する前記PCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの間に隙間21bを保持した状態で、連設して配置してインバート部33に設置することで、他方側ブロック群20Yを形成する工程と、縦横に連設して配置された他方側ブロック群20Yの複数のPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cの、隣接する受台部31cとの間の隙間21a、隣接するPCaコンクリートブロック20A,20B,20Cとの間の隙間21b、及びこれらと連通する六面体形状の下面部の下方の隙間21cに加えて、一方側ブロック群20Xと他方側ブロック群20Yとの間隔部分51にも充填固化材22を充填して硬化させる工程とを含んで構成されており、これによって、トンネルの横断方向の全域に設けられてインバート部覆工体32を構成するインバート部構造体50を、容易に形成することが可能になる。
【0071】
そして、上述の構成を備える本発明の山岳トンネルにおけるインバート部構造体の施工方法によれば、既存の山岳トンネル30において、インバート部覆工体32を構成するインバート部構造体10を、トンネルの横断方向における片側領域55A,55B毎に施工する際に、他方の片側領域55Bの通行路60及びこれの下方の地盤61を、簡易な構成により安定した状態で保持しながら、一方の片側領域55Aにおいて形成することが可能になる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明のインバート部構造体は、トンネル内壁面を覆う覆工体が、両側の側壁部から上部のアーチ形状部分に至る領域のみに形成されていて、インバート部には形成されていない山岳トンネルに、覆工体をインバート部にも増築する工事に限定されることなく、山岳トンネルに既に設けられているインバート部の覆工体を改修して、新たにインバート部の覆工体を設置し直す工事においても、採用することができる。
【0073】
また、残りの片側のインバート部構造体を形成する工程では、H型鋼における他方の片側領域側のフランジ部にスパーサ部材を介して山留板部材57を支持させることで、一方の片側領域において造成された地盤を山留めする必要は必ずしも無く、例えば山留板部材の両端部を、H型鋼の一方の片側領域側のフランジ部における、当該一方の片側領域側の面に係止することで、H型鋼に山留板部材を支持させることによって、一方の片側領域において埋め戻されて造成された地盤を、山留めするようにすることもできる。
【0074】
さらに、一方の片側領域において、片側のインバート部構造体を、一方の片側領域側のフランジ部を超える部分までPCaコンクリートブロックを用いて形成する工程では、例えば山留板部材の両端部を、H型鋼の他方の片側領域側のフランジ部における、当該他方に片側領域側の面に係止することで、H型鋼に山留板部材を支持させることもできる。PCaコンクリートブロックは、上記の実施形態のものに限定されず、その他の種々の形状や重量のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 インバート部構造体
10a フランジ配設凹部
10A 妻側端面部
10B 中央側端面部
20,20’ PCaコンクリートブロック
20a 上面部
20b 下面部
20c 軸方向対向面
20d 横断方向対向面
20e 切欠き凹部
20f,20g 軸方向の連結部分
20A 受台部側ブロック
20B 中央部側ブロック
20C 中間部ブロック
20D 横断方向ブロック列
20E 外側PCaコンクリートブロック
20F 内側PCaコンクリートブロック
20X 一方側ブロック群
20Y 他方側ブロック群
21a 受台部との間の隙間
21b 隣接するPCaコンクリートブロックとの間の隙間
21c 下面部の下方の隙間
21d 既設インバート部構造体との間の隙間
22 充填固化材
23 ボルトボックス
24 雌ネジアンカー
25 ボルト挿通螺着孔
25a 雌ネジ部材(ナット部材)
25b 大ラッパ状凹部
25c 小ラッパ状凹部
26 高さ調整ボルト
26a 下端部
26b 接地用アジャスタ
26c 充填底面部
26d 上端部
27 充填材注入孔
27a 雌ネジ部材
27b 上部側ラッパ状凹部
27c 下部側ラッパ状凹部
27d 中央部側の充填材注入孔
27e 受台部側の充填材注入孔
28 開閉バルブ
28a ハンドル部
29a 横断方向スペーサ治具
29b 軸方向スペーサ治具
29c 吊り治具
30 山岳トンネル
30a 底盤部分
31 覆工体
31a 側壁部(側壁部覆工体)
31b アーチ形状部分
31c 受台部
32 インバート部覆工体
33 インバート部
35 H型鋼
35a フランジ部
36 仮固定手段
36a ホールインアンカー
36b 索条体
36c 伸縮調整手段
37 PCaブロックの連結部構造
40 既設インバート部構造体
41a 上面部帯板状型枠
41b 妻部帯板状型枠
41c 中央側帯板状型枠
42 エア抜きホース
50 トンネルの横断方向の全域のインバート部構造体
51 一方側ブロック群と他方側ブロック群との間の間隔部分
55A 一方の片側領域
55B 他方の片側領域
56 スパーサ部材
57 山留板部材
60,60’ 通行路
61,61’ 通行路の下方の地盤
b 下面部の下方の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14