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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145830
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】フィルター清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20241004BHJP
   B08B 1/00 20240101ALI20241004BHJP
   F24F 8/90 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
B60H3/06 631
B08B1/00
F24F8/90 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058350
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】中川 和紀
【テーマコード(参考)】
3B116
3L211
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB53
3B116BA02
3B116BA03
3B116BA08
3B116BA23
3B116BC05
3L211BA27
3L211DA75
(57)【要約】
【課題】 製造コストの低減を図ることができると共に電力消費なく、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供する。
【解決手段】 フィルター清掃装置10は、フィルター1aと、フィルター枠1bとを有するフィルター体1と、フィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えてフィルター体1に付着した塵埃を剥離させる除塵体2と、除塵体2を支持する共に、除塵体2の可動を制御する可動機構3とを有しており、可動機構3は、除塵体2を保持する長尺な支持台4を備え、支持台4の中間部は、フィルター1aの近傍に回動可能に固定されていると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、除塵体2がフィルター1aに対して相対的に可動できるようにしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、
前記フィルター清掃装置は、フィルターと、フィルター枠と、を有するフィルター体と、
前記フィルター体を叩打し、又は前記フィルター体に振動を与えて前記フィルター体に付着した塵埃を剥離させる除塵体と、
前記除塵体を支持する共に、該除塵体の可動を制御する可動機構と、を有し、
前記可動機構は、前記除塵体を保持する長尺な支持台を備え、前記支持台の長手方向の中間部は、前記フィルターの近傍に回動可能に固定されていると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記除塵体が前記フィルターに対して相対的に可動することを特徴とするフィルター清掃装置
【請求項2】
支持台は、液体を保持すると共に、前記液体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に往復可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項3】
支持台は、除塵体を往復可動可能に保持する第1案内レール部と、液体を移動可能に保持する第1液体保持部とを有することを特徴とする請求項2に記載のフィルター清掃装置
【請求項4】
除塵体は、内部に液体を移動可能に保持する第2液体保持部を有すると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台の長手方向に往復可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項5】
支持台は、フィルターと当接しない可動体を保持すると共に、前記可動体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に往復可動することを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項6】
支持台は、除塵体を往復可動可能に保持する第1案内レール部と、可動体を移動可能に保持する第2案内レール部とを有することを特徴とする請求項5に記載のフィルター清掃装置
【請求項7】
フィルター体は、該フィルター体の2箇所に、支持台の両端部が各々当接して前記支持台の回動を規制するストッパー部を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項8】
ストッパー部は、支持台と当接する箇所に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は支持台が近づいた場合又は当接した場合に、前記支持台に対して反発力を生じさせ、前記支持台との衝突を緩和できることを特徴とする請求項7に記載のフィルター清掃装置
【請求項9】
フィルターは複数のプリーツを有すると共に、除塵体は前記プリーツを叩打し、又は前記プリーツに振動を与えることで、前記フィルターに付着した塵埃を剥離させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項10】
除塵体は略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター表面を摺動しつつ、プリーツを叩打することを特徴とする請求項9に記載のフィルター清掃装置
【請求項11】
フィルターは、プリーツの一部に形状を維持する補強部を有し、除塵体は前記補強部を叩打することによって前記フィルターに振動を与えることを特徴とする請求項9に記載のフィルター清掃装置
【請求項12】
フィルター体の近傍にダストボックスが形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調設備では外気を取り入れて空気を調和し室内に送り込む場合に、フィルターを通して外気を浄化した後に室内へと供給するようになっており、フィルターには外気中に含まれる塵埃が堆積して目詰まりが生じるため、フィルターの清掃が必要とされている。また、室内で内気を循環させる場合も同様に、室内で発生した塵埃を浄化するためにフィルターが設けられており、フィルターに堆積した塵埃の清掃が必要とされている。そして、このフィルターの清掃を自動化した発明が従来から知られている。(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用空調装置は、小物を収脱するためにグラブボックスを開放すると、ワイヤがブラシボックスを引張り、掻落し部材がエアフィルター上の異物を除去して排気ダクトから排出する構成としており、グラブボックスを閉止すると引張りコイルばねによってブラシボックス及び掻落し部材は原位置へ戻る構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-216712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の車両用空調装置は、掻落し部材を駆動させるモーターを必要とせず、該モーターに電気を供給する配線も必要としないことから、製造コストの低減を図ることができる装置であった。しかしながら、グラブボックスの開け閉めを行わない場合にはフィルターに塵埃が堆積したままの状態となり、目詰まりが生じる課題を有するものであった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、モーターや電気配線を必要としないので製造コストの低減を図ることができると共に、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、前記フィルター清掃装置は、フィルターと、フィルター枠と、を有するフィルター体と、前記フィルター体を叩打し、又は前記フィルター体に振動を与えて前記フィルター体に付着した塵埃を剥離させる除塵体と、前記除塵体を支持する共に、該除塵体の可動を制御する可動機構と、を有し、前記可動機構は、前記除塵体を保持する長尺な支持台を備え、前記支持台の長手方向の中間部は、前記フィルターの近傍に回動可能に固定されていると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記除塵体が前記フィルターに対して相対的に可動することを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、除塵体がフィルターに対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要としないことから、製造コストの低減を図ることができると共に、余分な電力消費を抑えることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、除塵体がフィルター体を叩打し、又はフィルター体に振動を与えて塵埃を剥離させるため、フィルターの内部に入り込んだ、排気ガス等に含まれる細塵を効果的に除去することができる。また、除塵体を保持する支持台が長手方向の中間部で回動可能に固定されているため、除塵体がフィルター表面の広範囲を叩打又は振動を与えることができ、清掃効率を向上させることができる。また、フィルター体の面を車両の進行方向と略平行且つ略鉛直に配置した場合は、車両の加減速により生じる慣性力を、支持台の回動に効率良く変換することができると共に、重力によって除塵体の動きに緩急をつけることができる。また、フィルター体の面を車両の進行方向と略平行且つ略水平に配置した場合は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力の両方を、支持台の回動に変換することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、支持台は、液体を保持すると共に、前記液体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に往復可動することを特徴としている。これにより、除塵体と比べて可動抵抗が小さく動きやすい液体が、慣性力により除塵体に先立ち可動することで、支持台が除塵体の可動より先に回動し、除塵体の可動を促進させることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、支持台は、除塵体を往復可動可能に保持する第1案内レール部と、液体を移動可能に保持する第1液体保持部とを有することを特徴としている。これにより、液体が第1液体保持部内を移動することによって、支持台が回動するため、フィルターに対して支持台の回動だけで除塵体を相対的に可動させることができる。また、支持台の回動に伴い第1案内レール部内を除塵体が移動することとなるので、除塵体を可動させ易くすることができると共に、フィルターの清掃を確実に行うことができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、除塵体は、内部に液体を移動可能に保持する第2液体保持部を有すると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台の長手方向に往復可動することを特徴としている。これにより、除塵体の内部に配置された液体が慣性力により可動することで、除塵体の重心位置が変化し、除塵体を可動させ易くすることができると共に、フィルターの清掃を確実に行うことができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、支持台は、フィルターと当接しない可動体を保持すると共に、前記可動体は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記支持台の長手方向に往復可動することを特徴としている。これにより、可動体はフィルターとの間で摩擦が生じることがないため、除塵体と比べて可動抵抗が小さく動きやすい可動体が、慣性力により除塵体に先立ち可動することで、支持台が除塵体の可動より先に回動し、除塵体の可動を促進させることができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、支持台は、除塵体を往復可動可能に保持する第1案内レール部と、可動体を移動可能に保持する第2案内レール部とを有することを特徴としている。これにより、可動体が第2案内レール部内を移動することによって、支持台が回動するため、フィルターに対して支持台の回動だけで除塵体を相対的に可動させることができる。また、支持台の回動に伴い第1案内レール部内を除塵体が移動することとなるので、除塵体を可動させ易くすることができると共に、フィルターの清掃を確実に行うことができる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1~6のいずれかの発明において、フィルター体は、該フィルター体の2箇所に、支持台の両端部が各々当接して前記支持台の回動を規制するストッパー部を有することを特徴としている。これにより、除塵体に往復可動を小刻みに行わせることができるので、フィルターの清掃効率を高めることができる。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、ストッパー部は、支持台と当接する箇所に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置は支持台が近づいた場合又は当接した場合に、前記支持台に対して反発力を生じさせ、前記支持台との衝突を緩和できることを特徴としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1~6のいずれかの発明において、フィルターは複数のプリーツを有すると共に、除塵体は前記プリーツを叩打し、又は前記プリーツに振動を与えることで、前記フィルターに付着した塵埃を剥離させることを特徴としている。これにより、除塵体が複数のプリーツを有するフィルターを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させることができるので、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、除塵体は略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター表面を摺動しつつ、プリーツを叩打することを特徴としている。これにより、可動機構を一層簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、除塵体がフィルターに衝撃を与えつつも、フィルターとの過度な摩擦を低減することができるため、耐久性が向上し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0018】
請求項11の発明は、請求項9の発明において、フィルターは、プリーツの一部に形状を維持する補強部を有し、除塵体は前記補強部を叩打することによって前記フィルターに振動を与えることを特徴としている。これにより、補強部によって複数のプリーツ有するフィルターの耐久性を向上させることができる。また、フィルターの形状が維持されることで、除塵体が衝撃を与えやすくなると共に、フィルター全体に衝撃が伝わりやすくなり、より効率よく塵埃を剥離させることができる。
【0019】
請求項12の発明は、請求項1~6のいずれかの発明において、フィルター体の近傍にダストボックスが形成されていることを特徴としている。これにより、除塵体によりフィルターから剥離された塵埃をダストボックスに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明は、モーターや電気配線を必要としないことから、製造コストの低減を図ることができると共に、余分な電力消費を抑えることができる。また、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、請求項2及び5の発明は、除塵体と比べて可動抵抗が小さく動きやすい液体又は可動体が、慣性力により除塵体に先立ち可動することで、支持台が除塵体の可動より先に回動し、除塵体の可動を促進させることができる。また、請求項3、6及び7の発明は、フィルターの清掃を確実に行うことができる。
【0021】
請求項4の発明は、除塵体の内部に配置された液体が慣性力により可動することで、除塵体の重心位置が変化し、除塵体を可動させ易くすることができると共に、フィルターの清掃を確実に行うことができる。また、請求項8の発明は、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0022】
請求項9及び10の発明は、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、請求項11の発明は、補強部によって、複数のプリーツを有するフィルターの耐久性を向上させることができる。また、請求項12の発明は、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)第1実施形態のフィルター清掃装置を正面側から視た状態を示す斜視図(b)第1実施形態のフィルター清掃装置を背面側から視た状態を示す斜視図(c)図1(a)のA-A断面図
図2】(a)~(d)第1実施形態のフィルター清掃装置の動作状態を示す正面図
図3】(a)除塵体の第1実施形態を示す斜視図(b)除塵体の第2実施形態を示す斜視図(c)除塵体の第3実施形態を示す斜視図(d)除塵体の第4実施形態を示す斜視図(e)除塵体の第5実施形態を示す斜視図(f)除塵体の第6実施形態を示す斜視図
図4】(a)及び(b)除塵体の第7実施形態を示す断面図
図5】(a)第2実施形態のフィルター清掃装置を正面側から視た状態を示す斜視図(b)図5(a)のB-B断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。図1(a)は、第1実施形態のフィルター清掃装置を正面側から視た状態を示す斜視図であり、図1(b)は、第1実施形態のフィルター清掃装置を背面側から視た状態を示す斜視図である。また、図1(c)は、図1(a)のA-A断面図である。これらの図を用いて本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態について以下に説明する。
【0025】
第1実施形態のフィルター清掃装置10は、車両用空調設備に設置されるものであって、フィルター1aとフィルター枠1bとを有するフィルター体1と、フィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えてフィルター体1に付着した塵埃を剥離させる除塵体2aと、除塵体2aを支持する共に、除塵体2aの可動を制御する可動機構3とを有している。
【0026】
可動機構は3、除塵体2aを保持する長尺な支持台4を備え、支持台4の中間部4aは、フィルター1aの近傍に回動可能に固定されていると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、除塵体2aがフィルター1aに対して相対的に可動する構成としている。尚、符号15は、支持台を回動軸15aを回動中心にして回動可能に保持する保持部材であり、保持部材15の両端部はフィルター枠1bに固定されている。
【0027】
前述のように構成された第1実施形態のフィルター清掃装置10は、可動機構3が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、除塵体2aがフィルター1aに対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要としないことから、製造コストの低減を図ることができると共に、余分な電力消費を抑えることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、除塵体2aがフィルター体1を叩打し、又はフィルター体1に振動を与えて塵埃を剥離させるため、フィルター1aの内部に入り込んだ、排気ガス等に含まれる細塵を効果的に除去することができる。
【0028】
第1実施形態のフィルター清掃装置10の支持台4は、液体5aを保持すると共に、液体5aは、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台4の長手方向に往復可動する構成としている。これにより、液体5aに生じる慣性力を、支持台4の回動運動に変換させることができるため、慣性力による除塵体の可動を更に促進させることができる。
【0029】
また、第1実施形態のフィルター清掃装置10の支持台4は、除塵体2aを往復可動可能に保持する第1案内レール部6と、液体5aを移動可能に保持する第1液体保持部5とを有する構成としている。これにより、液体5aが第1液体保持部5内を移動することによって、支持台4が回動するため、フィルター1aに対して支持台4の回動だけで除塵体2aを相対的に可動させることができる。また支持台4の回動に伴い第1案内レール部6内を除塵体2aが移動することとなるので、除塵体2aを可動させ易くすることができると共に、フィルター1aの清掃を確実に行うことができる。
【0030】
第1実施形態のフィルター清掃装置10のフィルター体1は、フィルター体1の2箇所に、支持台4の両端部4b、4cが各々当接して支持台4の回動を規制するストッパー部7、7を有する構成としている。これにより、除塵体2aに往復可動を小刻みに行わせることができるので、フィルター1aの清掃効率を高めることができる。
【0031】
また、ストッパー部7は、支持台4と当接する箇所に緩衝装置7aが設置されていると共に、緩衝装置7aは支持台4が近づいた場合又は当接した場合に、支持台4に対して反発力を生じさせ、支持台4との衝突を緩和できる構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0032】
具体的には、緩衝装置7aの支持台4と当接する箇所に弾性部材を適用して支持台4に対して反発力を生じさせる場合と、緩衝装置7aの支持台4と当接する箇所に磁石を設置すると共に、この緩衝装置7aの磁石と対向する支持台4の面に同じ磁極を備えた磁石を設置することで、緩衝装置7aに支持台4が近づいた場合に反発力を生じさせる場合の2形態を選択的に適用することができる。
【0033】
第1実施形態のフィルター清掃装置10のフィルターは複数のプリーツ1c、1c・・を有すると共に、除塵体2aはプリーツ1cを叩打し、又はプリーツ1cに振動を与えることで、フィルター1aに付着した塵埃を剥離させる構成としている。これにより、複数のプリーツ1c、1c・・と支持台4とを一定距離で配置するだけで、除塵体2aが連続的にプリーツ1cに当接し、振動を与えることができるので、可動機構3を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
第1実施形態のフィルター清掃装置10の除塵体2aは略球体であって、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によってフィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打する構成としている。これにより、可動機構3を一層簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、除塵体2aがフィルター1aに衝撃を与えつつも、フィルター1aとの過度な摩擦を低減することができるため、耐久性が向上し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0035】
尚、フィルター1aは、プリーツ1cの一部に形状を維持する補強部1dを有しており、除塵体2aは補強部1dを叩打することによってフィルター1aに振動を与える構成としている。これにより、補強部1dによって複数のプリーツ1c有するフィルター1aの耐久性を向上させることができる。また、フィルター1aの形状が維持されることで、除塵体2aが衝撃を与えやすくなると共に、フィルター1a全体に衝撃が伝わりやすくなり、より効率よく塵埃を剥離させることができる。尚、補強部1dの構造は樹脂やホットメルトが想定されるが、フィルター1aを補強する機能を有するものであれば、本発明に含まれる。
【0036】
図1(a)において、塵埃13を含む風は、第1実施形態のフィルター清掃装置10の左奥から右手前に向かいフィルター1aを通過する構造となっており、図1(b)において、フィルター清掃装置10のフィルター1aの表面に塵埃13が付着する。また、フィルター清掃装置10は、フィルター体1の近傍にダストボックス8が形成されている。これにより、除塵体2aによりフィルター1aから剥離された塵埃13をダストボックス8に蓄積させることができ、蓄積した塵埃13をまとめて外部に排出することができる。
【0037】
図2(a)~(d)は、第1実施形態のフィルター清掃装置の動作状態を示す正面図である。これらの図を用いて第1実施形態のフィルター清掃装置10の動作原理について、車両内に観測者が居るものとして、以下に説明する。ここで、第1実施形態のフィルター清掃装置10は、車両に対して縦置きに設置するものとし、(図2におけるフィルター清掃装置10のフィルター面が地面に対して垂直方向となるように設置している。)図2において左から右に車両を加速させるものとする。
【0038】
先ず、図2(a)に示すように、支持台4が右側に傾いた状態で車両が停止しているものとする。この状態でフィルター清掃装置10は、支持台4の第1液体保持部5内の液体5aが右側に移動して静止していることから、第1液体保持部5内の左側には液体が存在しない空間が形成されている。また、支持台4の第1案内レール部6(図1参照)内の除塵体2aは一点鎖線で示すように、右側に移動した状態で静止している。
【0039】
図2(a)の状態から車両を加速させると、先ず、図2(b)に示すように、支持台4の第1液体保持部5内の液体5aが左側に移動することによって、支持台4が反時計回りに回転する。そして、その長手方向が地面と平行な状態になるまでは、支持台4の第1案内レール部6(図1参照)内の除塵体2aは一点鎖線で示すように、まだ右側に移動した状態で静止している。尚、車両が大きく加速した場合など、大きな慣性力が働いた場合については、液体5aと同時に除塵体2aも左側に移動する。
【0040】
次に、図2(b)の状態を越える加速度で車両を加速させると、図2(c)に示すように、長手方向が地面と平行な状態を越えて支持台4が反時計回りに回動し、左側の端部4bがストッパー部7の緩衝装置7aに当接した状態になるまで回転する。この時、図2(c)に示す除塵体2aは、図面上、右から左へと働く車両の加速による慣性力と、下方向に働く重力とによって第1案内レール部6(図1参照)を右側から左側へと移動を始める。そして、図2(d)に示すように、除塵体2aは左側へ移動し続けて、最終的に左端で静止する。その際に前述したとおり、除塵体2aがフィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させることができる。尚、車両を減速させた場合は、車両を加速させた場合とは逆に、図2(d)、図2(c)、図2(b)、図2(a)の順に液体5a、支持台4、除塵体2aがそれぞれ可動することとなり、運転中の車両の加減速により、これを何度も繰り返すものである。
【0041】
尚、図2においては、フィルター清掃装置10を縦置きにした場合、即ち、フィルター面が地面に対して垂直方向となるように設置した場合について説明しているが、フィルター清掃装置10を横置きにした場合、即ち、フィルター面が地面に対して平行方向となるように設置した場合においても車両の加減速及び操舵によって可動機構3を慣性力によって効果的に可動させることができるので、本発明を適用することができる。
【0042】
図3(a)は、除塵体の第1実施形態を示す斜視図である。第1実施形態の除塵体2aは、球体となっており、第1案内レール部6(図1参照)に収容されて長手方向に往復移動する際にフィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。その際、除塵体2aは、第1案内レール部6内を摺動し、又は回転している。
【0043】
図3(b)は、除塵体の第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態の除塵体2bは、略直方体の基台21bに、基部22bと中空形状のブレード部23bとから構成されたブレード部材24bの基部22bが挿入されて固定されているものである。除塵体2bの基台21bは、第1案内レール部6内を摺動して長手方向に往復移動すると共に、ブレード部23bは、フィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。また、ブレード部23bが中空形状のため、過剰にフィルター1aを叩打することなく、ブレード部材24b及びフィルター1aの耐久性を維持させることができる。
【0044】
図3(c)は、除塵体の第3実施形態を示す斜視図である。第3実施形態の除塵体2cは、略直方体の基台21cに、基部22cとスポンジ部23cとから構成されたスポンジ部材24cの基部22cが挿入されて固定されているものである。除塵体2cの基台21cは、第1案内レール部6内を摺動して長手方向に往復移動すると共に、スポンジ部23cは、フィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。また、フィルター1aの表面に、外気と内気との気温差から発生する水滴が生じた場合であっても、スポンジ部23cにより、除去することができる。
【0045】
図3(d)は、除塵体の第4実施形態を示す斜視図である。第4実施形態の除塵体2dは、略直方体の基台21dに、基部22dとブラシ部23dとから構成されたブラシ部材24dの基部22dが挿入されて固定されているものである。除塵体2dの基台21dは、第1案内レール部6内を摺動して長手方向に往復移動すると共に、ブラシ部23dは、フィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。また、ブラシ部23dは複数の毛材により形成されており、各々の毛材がプリーツ1cの表面を連続的に叩打することで、微細な塵埃を剥離できると共に、各々の毛材がフィルター1aの表面に付着した微細な塵埃を掻き出すことができる。
【0046】
図3(e)は、除塵体の第5実施形態を示す斜視図である。第5実施形態の除塵体2eは、略直方体の基台21eに、基部22eと先端が突起状の硬質部23eとから構成された硬質部材の基部22eが挿入されて固定されているものである。除塵体2eの基台21eは、第1案内レール部6内を摺動して長手方向に往復移動すると共に、硬質部23eは、フィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。また、硬質部23eは硬質で且つ先端が突起状のため、可動時の抵抗を抑制しつつ強力に叩くことができる。
【0047】
図3(f)は、除塵体の第6実施形態を示す斜視図である。第6実施形態の除塵体2fは、略直方体の基台21fに、基部22fと先端部に複数の突起が形成されているブレード部23fとから構成されたブレード部材24fの基部が挿入されて固定されているものである。除塵体2fの基台21fは、第1案内レール部6内を摺動して長手方向に往復移動すると共に、ブレード部23fは、フィルター1aの表面を摺動しつつ、プリーツ1cを叩打し、又は振動を与えることで塵埃を剥離させている。また、ブレード部23fの先端部に複数の突起が形成されているため、フィルター1aを叩打する回数が増加すると共に、フィルター1aの表面に付着した塵埃を確実に掻き出すことができる。
【0048】
図4(a)及び(b)は、除塵体の第7実施形態を示す断面図である。これらの図に示すように、第7実施形態の除塵体2gは、内部に液体を移動可能に保持する第2液体保持部9を有すると共に、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台の長手方向に往復可動する構成としている。これにより、除塵体2gの内部の液体の慣性力による可動も利用することができ、効率良く除塵体2gを可動させることができると共に、フィルター1aの清掃を確実に行うことができる。
【0049】
具体的には、車両が静止している状態では図4(a)に示すように、除塵体2gの重心5bは、図面上、左右方向の中間点に位置している。そして、車両が左に加速することによって、図4(b)に示す矢印方向に慣性力が働き、除塵体2gの重心5bは、図面上、中間点よりも右側に移動することとなるので、図3(a)で示した第2液体保持部9及び液体5aを有していない第1実施形態の除塵体2aよりも可動し易くすることができる。
【0050】
図5(a)は、第2実施形態のフィルター清掃装置を正面側から視た状態を示す斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のB-B断面図である。第2実施形態のフィルター清掃装置20の支持台14は、可動体11を保持すると共に、可動体11は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、支持台14の長手方向に往復可動する構成としている。また、支持台14は、除塵体2aを往復可動可能に保持する第1案内レール部6と、可動体11を移動可能に保持する第2案内レール部12とを有する構成としている。尚、符号25は、支持台を回動軸25aを回動中心にして回動可能に保持する保持部材であり、保持部材25の両端部はフィルター枠1bに固定されている。
【0051】
第2実施形態のフィルター清掃装置20において、可動体11はフィルター1aと当接することがないため、除塵体2aと比べて可動抵抗が小さく動きやすい可動体11が、慣性力により除塵体2aに先立ち第2案内レール部12内を移動することによって、支持台14が回動する。これに伴い第1案内レール部6内を除塵体2aが移動することとなるので、除塵体を可動させ易くすることができると共に、フィルター1aの清掃を確実に行うことができる。
【0052】
図5(a)において、塵埃13を含む風は、第2実施形態のフィルター清掃装置20の右手前から左奥に向かいフィルター1aを通過する構造となっており、塵埃13はフィルター1aの表面に付着する。また、フィルター清掃装置20は、フィルター体1の近傍にダストボックス8が形成されている。これにより、除塵体2aによりフィルター1aから剥離された塵埃13をダストボックス8に蓄積させることができ、蓄積した塵埃13をまとめて外部に排出することができる。
【0053】
尚、除塵体とフィルターとの当接面は、第1実施形態のフィルター清掃装置10のように、フィルター1aに塵埃13が付着する面と反対の面(通風の下流側の面)であっても、第2実施形態のフィルター清掃装置20のように、フィルター1aに塵埃13が付着する面(通風の上流側の面)であっても、慣性力により可動する除塵体がフィルター体を叩打し、又はフィルター体に振動を与えることで、フィルター内部に入り込んだ塵埃を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るフィルター清掃装置は、自動車等の車両用空調設備に設置されて利用される。
【符号の説明】
【0055】
1 フィルター体
1a フィルター
1b フィルター枠
1c プリーツ
1d 補強部
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g 除塵体
3 可動機構
4、14 支持台
4a 中間部
4b、4c 端部
5 第1液体保持部
5a 液体
5b 重心
6 第1案内レール部
7 ストッパー部
7a 緩衝装置
8 ダストボックス
9 第2液体保持部
10、20 フィルター清掃装置
11 可動体
12 第2案内レール部
13 塵埃
15、25 保持部材
15a、25a 回動軸
21b、21c、21d、21e、21f 基台
22b、22c、22d、22e、22f 基部
23b、23f ブレード部
24b、24e、24f ブレード部材
23c スポンジ部
24c スポンジ部材
23d ブラシ部
24d ブラシ部材
23e 硬質部
図1
図2
図3
図4
図5