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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145834
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 396D
F25B1/00 361L
F25B1/00 304Q
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058358
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】椛島 庸貴
(57)【要約】
【課題】冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、圧縮機の合計容量を抑制する。
【解決手段】冷凍サイクル装置は、吸入した冷媒を圧縮して第1流路へ吐出する第1圧縮要素と、第1流路に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器と、第1流路にて放熱器を通過した後の冷媒を第1枝と第2枝とに分岐させる分岐部と、第1枝に分岐した冷媒を減圧して第2流路へと流す第1減圧要素と、第2流路を流れる冷媒と第2枝に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器と、第2枝にて熱交換器により熱交換した後の冷媒を減圧する第2減圧要素と、第2減圧要素により減圧後の冷媒と対象物との熱交換により対象物を冷却し、熱交換後の冷媒を第1圧縮要素に吸入させる冷却器と、第2流路にて熱交換器により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路へ吐出する第2圧縮要素と、第3流路を第1流路に合流させる合流部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した冷媒を圧縮して第1流路へ吐出する第1圧縮要素と、
前記第1流路に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器と、
前記第1流路にて前記放熱器を通過した後の冷媒を第1枝と第2枝とに分岐させる分岐部と、
前記第1枝に分岐した冷媒を減圧して第2流路へと流す第1減圧要素と、
前記第2流路を流れる冷媒と前記第2枝に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器と、
前記第2枝にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を減圧する第2減圧要素と、
前記第2減圧要素により減圧後の冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却し、熱交換後の冷媒を前記第1圧縮要素に吸入させる冷却器と、
前記第2流路にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路へ吐出する第2圧縮要素と、
前記第3流路を前記第1流路に合流させる合流部と、を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記合流部は、前記第1流路における前記放熱器を通過後の位置にて、前記第3流路を合流させ、
前記第3流路に設けられ、前記第2圧縮要素により圧縮された冷媒を通過させて取り出した熱を放熱する第2放熱器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第1圧縮要素の容量は、前記第2圧縮要素の容量よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第3流路に設けられ、前記第2放熱器を通過後の冷媒を減圧する第3減圧要素を備えることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第1流路における前記放熱器を通過後かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に設けられ、当該放熱器を通過後の冷媒を減圧する第4減圧要素を備えることを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
冷媒の組成の少なくとも一部は、二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1乃至5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置と、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置との夫々に、冷媒の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第1減圧要素の流動抵抗が増加するように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置と、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置との夫々に、冷媒の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第2圧縮要素の流量が増加するように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数台の圧縮機を並列接続した圧縮機システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5758818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1の圧縮機システムを用いて、冷媒循環量を増加させ、対象物の冷却に利用可能な冷媒量を増加させることで、冷凍能力を確保する冷凍サイクル装置がある。このような冷凍サイクル装置では、対象物の冷却に要求される冷凍能力が大きくなるほど、圧縮機の合計容量を大きくする必要がある。より具体的には、圧縮機の台数を増やすか圧縮機1台当たりの容量を大きくする必要があり、設備コストの増大や冷凍サイクル装置全体の大型化につながる。
本開示は、冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、圧縮機の合計容量を抑制した冷凍サイクル装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点の冷凍サイクル装置は、吸入した冷媒を圧縮して第1流路へ吐出する第1圧縮要素と、前記第1流路に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器と、前記第1流路にて前記放熱器を通過した後の冷媒を第1枝と第2枝とに分岐させる分岐部と、前記第1枝に分岐した冷媒を減圧して第2流路へと流す第1減圧要素と、前記第2流路を流れる冷媒と前記第2枝に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器と、前記第2枝にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を減圧する第2減圧要素と、前記第2減圧要素により減圧後の冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却し、熱交換後の冷媒を前記第1圧縮要素に吸入させる冷却器と、前記第2流路にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路へ吐出する第2圧縮要素と、前記第3流路を前記第1流路に合流させる合流部と、を備える冷凍サイクル装置である。この場合、冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、圧縮機の合計容量が抑制される。
第2の観点の冷凍サイクル装置は、第1の観点の冷凍サイクル装置であって、前記合流部は、前記第1流路における前記放熱器を通過後の位置にて、前記第3流路を合流させ、前記第3流路に設けられ、前記第2圧縮要素により圧縮された冷媒を通過させて取り出した熱を放熱する第2放熱器を備える冷凍サイクル装置である。この場合、合流部が第1流路における放熱器を通過前の位置にて第3流路を合流させる場合に比べ、放熱器からの放熱を大きくすることができる。
第3の観点の冷凍サイクル装置は、第2の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1圧縮要素の容量は、前記第2圧縮要素の容量よりも大きい冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素の容量が第2圧縮要素の容量よりも小さい場合に比べ、放熱器からの放熱を大きくすることができる。
第4の観点の冷凍サイクル装置は、第3の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第3流路に設けられ、前記第2放熱器を通過後の冷媒を減圧する第3減圧要素を備える冷凍サイクル装置である。この場合、第2圧縮要素における圧縮比を大きく設定することができる。
第5の観点の冷凍サイクル装置は、第2の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1流路における前記放熱器を通過後かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に設けられ、当該放熱器を通過後の冷媒を減圧する第4減圧要素を備える冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素における圧縮比を大きく設定することができる。
第6の観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第5の観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷媒の組成の少なくとも一部は、二酸化炭素である冷凍サイクル装置である。この場合、二酸化炭素を含まない非共沸混合冷媒を用いた場合に比べ、放熱器における放熱が大きくなる。
第7の観点の冷凍サイクル装置は、第1の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置と、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置との夫々に、冷媒の温度を計測する温度センサと、前記温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第1減圧要素の流動抵抗が増加するように制御する冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素により圧縮された冷媒と、第2圧縮要素により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。
第8の観点の冷凍サイクル装置は、第1の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置と、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置との夫々に、冷媒の温度を計測する温度センサと、前記温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第2圧縮要素の流量が増加するように制御する冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素により圧縮された冷媒と、第2圧縮要素により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施の形態が適用される空気調和装置の概略構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る冷媒回路の概略図である。
図3】第1の実施の形態に係る冷媒回路を循環する冷媒の冷凍サイクルが図示された圧力-比エンタルピ線図である。
図4】第2の実施の形態に係る冷媒回路の概略図である。
図5】第3の実施の形態に係る冷媒回路の概略図である。
図6】第4の実施の形態に係る冷媒回路の概略図である。
図7】応用例の冷媒回路を説明する図である。
図8】従来の冷凍サイクル装置を説明するための図であり、(a)は従来の冷凍サイクル装置における冷媒回路の概略図、(b)は冷媒回路を循環する冷媒の冷凍サイクルが図示された圧力-比エンタルピ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず、本発明の実施の形態が適用されない従来の技術について説明する。
図8は、従来の冷凍サイクル装置を説明するための図であり、(a)は従来の冷凍サイクル装置における冷媒回路10′の概略図、(b)は冷媒回路10′を循環する冷媒の冷凍サイクルが図示された圧力-比エンタルピ線図である。なお、図8(b)において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
図8(a)において各機器をつなぐ線は、冷媒の流路となる配管である。また、図8(b)では、太線を用いて冷凍サイクル300′を示し、冷凍サイクル300′上の点10a′~点10f′は、冷媒回路10′の位置10a′~位置10f′の各々に対応する。このため、冷凍サイクル300′における点10a′~点10f′を位置10a′~位置10f′と表記する。さらに、図8(b)には、冷凍サイクル300′の他に、二酸化炭素冷媒の飽和液線301、飽和蒸気線302、臨界点303、45℃等温線304を示す。
【0008】
図8(a)に示すように、冷媒回路10′は、並列で接続された2つの圧縮機12′,13′と、放熱器14′と、減圧弁18′と、冷却器19′とを備え、冷媒の一例である二酸化炭素を循環させる。より詳しくは、冷却器19′を通過して対象物と熱交換を行った後の冷媒は、分岐部30′にて2枝に分岐(位置10a′)する。分岐した冷媒のうち、一方の枝に流れた冷媒は圧縮機12′にて圧縮され、他方の枝に流れた冷媒は圧縮機13′にて圧縮された後、合流部20′にて合流する(位置10b′)。合流した冷媒は、放熱器14′を通過して放熱する(位置10e′)。そして、放熱後の冷媒は、減圧弁18′を通って減圧され(位置10f′)、再び冷却器19′を通過する(位置10a′)。
【0009】
冷媒回路10′の各位置において、各機器により冷媒の比エンタルピおよび圧力が変化することで、冷媒の冷凍サイクルが成立する。より詳しくは、図8(b)に示すように、位置10a′から位置10b′にかけて、圧縮機12′,13′による圧縮と圧縮熱の獲得により、冷媒の圧力および比エンタルピが上昇する。また、位置10b′から位置10e′にかけて、放熱器14′における放熱により、冷媒の比エンタルピが低下する。さらに、位置10e′から位置10f′にかけて、減圧弁18′による減圧により、冷媒の圧力が低下する。さらにまた、位置10f′から位置10a′にかけて、冷却器19′における対象物との熱交換により、冷媒の比エンタルピが上昇する。
【0010】
ここで、冷凍サイクル装置において、冷却器が対象物を冷やす能力(「冷凍能力」と呼ぶ場合がある。)は、冷却器を通過する冷媒が対象物から奪う熱(吸熱)の大きさに応じて定まる。したがって、冷媒回路10′を用いた従来の冷凍サイクル装置において、冷却器19′における冷凍能力は、位置10f′から位置10a′に移動する際の比エンタルピの変化量と、冷却器19′を通過する冷媒の量との積に応じて定まる。
冷媒回路10′を用いた従来の冷凍サイクル装置においては、冷却器19′における冷凍能力を大きくするために、冷媒回路10′内の冷媒循環量を増加させ、冷却器19′を通過する冷媒の量を増加させる。より具体的には、圧縮機12′,13′と並列で接続される圧縮機の台数を増やすか、圧縮機12′,13′の容量を大きくする。したがって、従来の冷媒回路10′を用いた冷凍サイクル装置では、確保する冷凍能力が大きいほど圧縮機の合計容量が増大する。なお、「合計容量」とは、冷媒回路に設けられたすべての圧縮機の容量を合計した値である。
【0011】
本発明の実施の形態が適用される冷凍サイクル装置は、冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、圧縮機の合計容量を抑制する構成を備える。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
(空気調和装置1)
図1は、本実施の形態が適用される空気調和装置1の概略構成例を示す図である。
図示するように、本実施の形態が適用される空気調和装置1は、冷媒が循環する冷媒回路10と、冷媒回路10における冷媒の循環を制御する制御部50とを備える。なお、制御部50は、冷媒回路10に含まれる各機器(図2を用いて後述する。)と有線又は無線にて接続されており、各機器へ制御信号を送信可能である。
なお、空気調和装置1は、本実施の形態における冷凍サイクル装置の一例である。
【0013】
空気調和装置1は、取り込んだ空気を冷却し、冷風として空間に供給することで、空間を冷房する。より詳しくは、空気調和装置1は、冷媒回路10に組み込まれた冷却器(図2を用いて詳細を後述する。)を通過する冷媒と、対象物の一例である空気との間の熱交換により、空気から熱を取り出すことで、空気を冷却する。そして、冷却した空気を、冷風として室内機の吹出口など(不図示)から空間に供給して、空間を冷房する。
【0014】
(制御部50)
制御部50は、冷媒回路10に含まれる各機器への制御信号の送信により、冷媒回路10における冷媒の循環に係る制御を行う。また、空気調和装置1が空間に供給する冷風の量を制御する。本実施の形態に係る制御部50は、例えばユーザからの操作を受け付ける操作パネルやコントローラなどを有し、ユーザからの温度設定や風量設定などの操作入力に応じて制御を行う。また例えば、空間の温度を計測する温度センサを有し、計測値に応じて制御を行う。さらに例えば、冷媒回路10における冷媒の温度を計測する温度センサを有し、計測値に応じて制御を行う。
その他、制御部50は、冷媒回路10に含まれる各機器について、制御値に対する動作の実効値などの動作に係る情報を取得し、取得した情報に応じて制御を行ってもよい。
【0015】
(冷媒回路10)
冷媒回路10は、冷媒の循環に伴って冷媒の冷凍サイクルを成立させ、冷媒との熱交換により対象物の冷却を可能とする回路である。より具体的には、本実施の形態に係る冷媒回路10は、冷媒の一例である二酸化炭素冷媒の比エンタルピおよび圧力を調節しながら循環させることで、二酸化炭素冷媒の冷凍サイクルを成立させ、低圧側における熱交換により空気から熱を取り出すことで、空気の冷却を可能とする。以下の説明では、冷媒回路10を循環する二酸化炭素冷媒を単に「冷媒」と表記する場合がある。
なお、冷媒回路10においては、冷媒だけでなく、後述する圧縮機における潤滑を確保するための潤滑油などの冷媒とは異なる流体が循環していてもよい。
【0016】
図2は、第1の実施の形態に係る冷媒回路10の概略図である。
図示するように、第1の実施の形態に係る冷媒回路10は、冷媒を圧縮する圧縮機12,13と、冷媒から熱を取り出して放熱する放熱器14と、冷媒と冷媒との間で熱交換を行わせる冷媒-冷媒熱交換器17と、開度を調節可能な電動弁16,18と、通過する冷媒との熱交換により空気を冷却する冷却器19とを備える。
また、冷媒回路10は、圧縮機12が圧縮し吐出した冷媒の温度を計測する温度センサ501と、圧縮機13が圧縮し吐出した冷媒の温度を計測する温度センサ502とを備える。冷媒回路10は、上述した各機器の他にも、各地点における冷媒の圧力や温度を測定する圧力センサや温度センサ、冷媒を貯留可能なレシーバ、保護機構としての圧力開閉器、フィルタやヒートシンク、オイルセパレータなどを備えていてもよい。
【0017】
図2において、各機器をつなぐ線は、冷媒が流れる流路であり、例えば金属製の配管である。
図示するように、冷媒回路10の流路には、流路を分岐させる分岐部15と、流路を合流させる合流部20とが設けられている。ここでは、圧縮機12から分岐部15までの間を第1流路101、電動弁16から圧縮機13までの間を第2流路102、圧縮機13から合流部20までの間を第3流路103、電動弁18から圧縮機12までの間を第4流路104と表記する。また、分岐部15により分岐した流路のうち、電動弁16につながる一方を第1枝151、電動弁18を経由して冷却器19につながる他方を第2枝152と表記する。各流路は、継ぎ目のない1本の配管で構成してもよいし、2本以上の配管をフランジ構造など(不図示)によって連結して構成してもよい。また、流路の途中に各種の機器を含んでいてもよい。
【0018】
圧縮機12は、第4流路104から吸入した冷媒を圧縮し、第1流路101へ吐出する機器である。また、圧縮機13は、第2流路102から吸入した冷媒を圧縮し、第3流路103へ吐出する機器である。圧縮機12,13の機構は限定されず、例えば揺動式やスクロール式、ロータリ式といった各種の機構を用いてよい。
圧縮機12,13は、吸入した冷媒を制御部50(図1参照)からの制御に応じて設定される圧縮比(=吐出する冷媒の圧力/吸入する冷媒の圧力)にて圧縮して吐出する。本実施の形態に係る圧縮機12,13では、制御部50からの制御信号に応じて、例えば動作周波数や吸入/吐出する冷媒の量などが制御される。なお、「動作周波数」とは、圧縮機内にて行われる、冷媒を圧縮するための部品の動作の周波数である。具体的には、例えば揺動式圧縮機における揺動体の揺動の周波数、スクロール式圧縮機やロータリ式圧縮機における回転体の回転の周波数である。
圧縮機12は第1圧縮要素の一例であり、圧縮機13は第2圧縮要素の一例である。
【0019】
放熱器14は、第1流路101に設けられ、通過する冷媒と空気や水などの流体との熱交換により、冷媒から熱を取り出して放熱する機器である。図示するように、第1の実施の形態に係る冷媒回路10では、放熱器14は、第1流路101における合流部20と分岐部15との間に設けられている。放熱器14としては、例えばチューブ式熱交換器やプレート式熱交換器といった各種の熱交換器を利用可能である。
放熱器14において、冷媒と熱交換を行った流体は、冷媒から取り出した熱によって加熱される。このため、例えば流体として空気を用い、加熱された空気を温風として空間に供給することで、空間の暖房に利用してもよい。また例えば、流体として水を用い、加熱された水をユーザに供給することで、給湯に利用してもよい。このように、放熱器14は、流体を加熱する加熱器としても利用可能である。
【0020】
電動弁16,18は、ボール弁などの弁と弁を駆動するモータとを含んで構成され、モータが弁の開度を調節することによって流れる冷媒の圧力を調節する。より詳しくは、電動弁16は、第1枝151と第2流路102との間に設けられ、第1枝151から流れ込んだ冷媒に、弁の開度に応じた絞り膨張をかけて減圧し、第2流路102へ流す。また、電動弁18は、第2枝152における冷媒-冷媒熱交換器17と冷却器19との間に設けられ、冷媒-冷媒熱交換器17側から流れ込んだ冷媒に、弁の開度に応じた絞り膨張をかけて減圧し、冷却器19側へ流す。なお、電動弁16の開度および電動弁18の開度は、制御部50からの制御信号に応じて各々のモータが駆動制御されることによって調節される。
また、電動弁16,18は、各々の開度に応じた流動抵抗を有する。流動抵抗は、電動弁16,18を通過する冷媒の流れ難さの指標であり、開度が高いほど冷媒が流れ難いため流動抵抗が高く、開度が低いほど冷媒が流れ易いため流動抵抗が低い。
ここで、電動弁16は第1減圧要素の一例であり、電動弁18は第2減圧要素の一例である。なお、制御部50(図1参照)により制御可能な減圧要素としては、電動弁の他に、ソレノイドにより弁を駆動する電磁弁などを用いてもよい。
【0021】
冷媒-冷媒熱交換器17は、第2流路102を流れる冷媒と第2枝152を流れる冷媒との間で熱交換を行わせる機器である。より詳しくは、冷媒-冷媒熱交換器17は、分岐部15にて第1枝151に分岐し、電動弁16によって減圧された状態で第2流路102を流れる冷媒と、分岐部15にて第2枝152に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる。冷媒-冷媒熱交換器17における熱交換では、第2流路102を流れる冷媒が第2枝152を流れる冷媒から熱を取り出すため、結果として第2枝152を流れる冷媒が冷却されることになる。
【0022】
冷却器19は、第4流路104に設けられ、通過する冷媒と空気との熱交換により、空気から熱を取り出して空気を冷却する機器である。冷却器19としては、チューブ式熱交換器等の熱交換器を利用可能である。
冷却器19において冷媒と熱交換を行い、冷却された空気は、不図示の通風路を通って空間に供給され、空間を冷房する。これにより、空気調和装置1(図1参照)の冷房機能が実現される。
【0023】
冷媒回路10における冷媒の循環を説明する。第1の実施の形態に係る冷媒回路10では、冷却器19を通過して空気を冷却した後の冷媒(位置10a)は、圧縮機12にて圧縮され、第1流路101に吐出される(位置10b)。第1流路101に吐出された冷媒は、合流部20にて第3流路103が合流し(位置10c)、放熱器14を通過して放熱した後、分岐部15にて第1枝151と第2枝152とに分岐する(位置10d)。第1枝151に分岐した冷媒は、電動弁16によって減圧されて第2流路102に流れ込み(位置10g)、冷媒-冷媒熱交換器17において、第2枝152に分岐した冷媒との間で熱交換を行う(位置10h)。そして、圧縮機13にて圧縮されて第3流路103に吐出され(位置10i)、合流部20にて第1流路101に合流する(位置10c)。一方、第2枝152に分岐して冷媒-冷媒熱交換器17にて熱交換を行った後の冷媒(位置10e)は、電動弁18によって減圧された後(位置10f)、冷却器19を通過して空気を冷却する(位置10a)。
このような冷媒の循環により、冷媒回路10は、冷媒の冷凍サイクルを成立させる。
【0024】
(冷凍サイクル)
図2図3を用いて冷媒回路10における冷凍サイクルを詳しく説明する。
図3は、第1の実施の形態に係る冷媒回路10を循環する冷媒の冷凍サイクル300が図示された圧力-比エンタルピ線図である。図3において、横軸は比エンタルピ[kJ/kg]、縦軸は絶対真空を基準とする絶対圧力[MPa.abs]である。
図3では、太線を用いて冷凍サイクル300を示す。冷凍サイクル300上の点10a~点10iは、図2に示した冷媒回路10の位置10a~位置10iの各々に対応する。このため、冷凍サイクル300における点10a~点10iを位置10a~位置10iと表記する。また、図3には、冷凍サイクル300の他に、二酸化炭素冷媒の飽和液線301、飽和蒸気線302、臨界点303、45℃等温線304を示す。
【0025】
第1の実施の形態に係る冷媒回路10では、圧縮機12により圧縮され圧縮熱を獲得した冷媒が第1流路101に吐出されるため、冷凍サイクル300の位置10aから位置10bにかけて、冷媒の圧力および比エンタルピが上昇する。また、合流部20にて第3流路103が合流するため、位置10bから位置10cにかけて冷媒の比エンタルピが変化する。さらに、合流後の冷媒は放熱器14にて流体との熱交換により放熱するため、位置10cから位置10dにかけて、冷媒の比エンタルピが低下する。なお、位置10cにおける冷媒は、圧縮機12,13によって加圧昇温された状態であり、例えば45℃を超える高温となる。したがって、放熱器14における熱交換の相手となる流体は、例えば常温(15℃~25℃)程度であっても、冷媒から熱を奪うことができる。
【0026】
位置10dにおいて、分岐部15で分岐した第1枝151は、電動弁16によって減圧されて第2流路102に流れるため、位置10dから位置10gにかけて、冷媒の圧力が低下する。そして、この圧力の低下に伴い、第2流路102に流れる冷媒の温度は低下し、第2枝152を流れる冷媒の温度よりも低くなる。このため、第2流路102に流れた冷媒は、冷媒-冷媒熱交換器17における第1枝151の冷媒との間の熱交換により、第1枝151の冷媒から熱を奪い、位置10gから位置10hにかけて比エンタルピが上昇する。反対に、第2枝152の冷媒は、熱交換により熱を奪われるため、位置10dから位置10eにかけて比エンタルピが低下する。
【0027】
冷媒-冷媒熱交換器17を通過した後の第2枝152の冷媒は、電動弁18によって減圧されるため、位置10eから位置10fにかけて、冷媒の圧力が低下する。そして、減圧後の冷媒は、冷却器19において空気との間で熱交換して熱を奪うため、位置10fから位置10aにかけて、冷媒の比エンタルピが上昇する。なお、位置10fにおける冷媒は、電動弁18によって減圧降温された状態であり、冷却の対象の空気に対して十分に低温である。したがって、冷却器19において、熱交換の相手の空気から熱を奪うことができる。
また、冷媒-冷媒熱交換器17を通過した後、第2流路102の冷媒は、圧縮機13により圧縮され圧縮熱を獲得するため、位置10hから位置10iにかけて、冷媒の圧力および比エンタルピが上昇する。
【0028】
以上記載したようにして、冷媒回路10の冷凍サイクル300が成立する。
ここで、冷却器19にて空気を冷却する冷媒は、電動弁18による減圧の前に、冷媒-冷媒熱交換器17における冷媒同士の熱交換によって熱を奪われている。このため、冷媒回路10の冷却器19にて空気を冷却する冷媒(図2図3における位置10f)は、従来の冷媒回路10′の冷却器19′にて空気を冷却する冷媒(図8における位置10f′)に比べ、比エンタルピが低い状態となっている。この結果、冷媒回路10では、従来の冷媒回路10′のように冷媒同士の熱交換を行わない場合に比べ、冷却器19において単位量あたりの冷媒が奪う熱の量が大きくなり、冷媒の循環量を増加させずとも冷凍能力を確保することができる。
【0029】
なお、冷媒回路10では、冷凍サイクル300の一部で二酸化炭素冷媒が超臨界状態となり、冷媒の圧力の変化に伴う冷媒の密度の変化が、超臨界状態でない場合に比べて大きくなる。このため、冷媒が超臨界状態を経由しない場合と比べ、圧縮機12,13の圧縮仕事に対して確保できる冷凍能力が大きい。このことは、後述する第2~第4の実施の形態に係る冷媒回路でも同様である。
【0030】
ここで、図2図8および表1を用いて、第1の実施の形態に係る冷媒回路10と従来の冷媒回路10′との性能を比較する。
表1は、第1の実施の形態に係る冷媒回路10を用いた空気調和装置1と従来の冷媒回路10′を用いた空気調和装置とにおける、圧縮機12,13/12′,13′の容量および成績係数(COP:Coefficient Of Performance)について記載した表である。なお、COPは、冷媒回路10/10′の冷却器17/17′による冷房効果を、冷媒回路10/10′の動作に係る消費電力で除した値であり、消費電力に対する冷房効果の効率に対応する。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、冷媒回路10における圧縮機12の容量を106cc、圧縮機13の容量を33ccとして、合計容量を139ccとした場合の空気調和装置1のCOPは、1.90となる。一方、従来の冷媒回路10′における圧縮機12′,13′の容量を81.5ccとして、合計容量を163ccとした場合の空気調和装置のCOPは、1.60となる。つまり、従来の冷媒回路10′を用いた空気調和装置における合計容量およびCOPを100%(基準)とした場合、冷媒回路10を用いた空気調和装置1では、合計容量を85%まで抑制しつつ、COPを119%まで向上させることができる。
【0033】
以上説明したように、冷媒回路10を用いた空気調和装置1では、冷媒-冷媒熱交換器17における冷媒同士の熱交換によって冷凍能力が確保されるため、冷媒循環量の増加によって冷凍能力を確保する従来の冷媒回路10を用いた場合に比べ、圧縮機の合計容量を抑制した場合であっても、空気調和装置1における冷房効果を高くすることができる。
【0034】
(制御部50による制御)
ところで、空気調和装置1の制御部50(図1参照)は、温度センサ501,502(図2参照)にて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環を制御してもよい。
例えば、制御部50は、温度センサ501にて計測された冷媒の温度が、温度センサ502にて計測された冷媒の温度よりも高い場合に、電動弁16の開度を低くして、流動抵抗が増加するように制御してもよい。また例えば、温度センサ501にて計測された冷媒の温度が、温度センサ502にて計測された冷媒の温度よりも高い場合に、圧縮機13が吸入する冷媒の量を多くして、圧縮機13における冷媒の流量が増加するように制御してもよい。これらの制御を行うことにより、圧縮機12により圧縮された冷媒(図2における位置10b)と圧縮機13により圧縮された冷媒(図2における位置10i)とのエンタルピ差が小さくなる。この結果、圧縮機13における圧縮比を大きく設定することができる。
なお、制御に利用される温度センサ501,502を設ける位置は、図2に例示した位置に限定されず、温度センサ501が第1流路101における放熱器14を通過前かつ合流部20により第3流路103が合流する前の位置に設けられていればよく、温度センサ502が合流部20により第1流路101に合流する前の位置に設けられていればよい。
【0035】
<第2の実施の形態>
(冷媒回路10-2)
第2の実施の形態が適用される空気調和装置1は、冷媒回路10(図2参照)に代えて冷媒回路10-2を備える点で、上述した第1の実施の形態とは異なっている。
図4は、第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2の概略図である。
図示するように、第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2は、第3流路103に放熱器21が設けられる点、および、合流部20が第1流路101における放熱器14を通過後の位置にて第3流路103を合流させる点のみ、第1の実施の形態に係る冷媒回路10とは異なっている。したがって、冷媒回路10と冷媒回路10-2との間で共通する構成については、同じ名称および符号を用いて表記し、詳細な説明を省略する。
【0036】
放熱器21は、第3流路103に設けられ、通過する冷媒と空気や水などの流体との熱交換により、冷媒から熱を取り出して放熱する機器である。言い換えると、放熱器21は、圧縮機13にて圧縮された冷媒と流体との熱交換によって、圧縮機13にて圧縮された冷媒から熱を奪う。
放熱器21としては、放熱器14と同様の熱交換器を用いることができる。また、放熱器21は、放熱器14と同様に、流体を加熱する加熱器としても利用可能である。
放熱器21は、第2放熱器の一例である。
【0037】
冷媒回路10-2では、冷却器19を通過して空気を冷却した後の冷媒は、圧縮機12にて圧縮され、第1流路101に吐出される。第1流路101に吐出された冷媒は、放熱器14を通過して放熱し、合流部20にて第3流路103が合流した後、分岐部15にて第1枝151と第2枝152とに分岐する。第1枝151に分岐した冷媒は、電動弁16によって減圧されて第2流路102に流れ込み、冷媒-冷媒熱交換器17において、第1枝151に分岐した冷媒との間で熱交換を行う。そして、圧縮機13にて圧縮されて第3流路103に吐出され、放熱器21を通過して放熱した後、合流部20にて第1流路101に合流する。一方、第2枝152に分岐して冷媒-冷媒熱交換器17にて熱交換を行った後の冷媒は、電動弁18によって減圧された後、冷却器19を通過して空気を冷却する。
このような冷媒の循環により、冷媒回路10-2は、冷媒の冷凍サイクルを成立させる。
【0038】
上述した冷媒回路10-2を用いた第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、冷媒循環量の増加によって冷凍能力を確保する従来の冷媒回路10を用いた場合に比べ、圧縮機の合計容量が抑制される。
また、冷媒回路10-2では、合流部20が第1流路101における放熱器14を通過後の位置にて第3流路103を合流させるため、放熱器14を通過前の位置にて第3流路103を合流させる場合に比べ、放熱器14からの放熱を大きくすることができる。
【0039】
ここで、第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2において、圧縮機12の容量は、圧縮機13の容量よりも大きくするとよい。かかる構成により、圧縮機12の容量が圧縮機13の容量よりも小さい場合に比べ、放熱器14からの放熱を大きくすることができる。
【0040】
<第3の実施の形態>
(冷媒回路10-3)
第3の実施の形態が適用される空気調和装置1は、冷媒回路10(図2参照)に代えて冷媒回路10-3を備える点で、上述した第1の実施の形態とは異なっている。
図5は、第3の実施の形態に係る冷媒回路10-3の概略図である。
図示するように、第3の実施の形態に係る冷媒回路10-3は、放熱器21を通過した後の冷媒を減圧する電動弁22を備える点のみ、第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2とは異なっている。したがって、冷媒回路10-2と冷媒回路10-3との間で共通する構成については、同じ名称および符号を用いて表記し、詳細な説明を省略する。
【0041】
電動弁22は、第3流路103における放熱器21を通過後の位置に設けられ、通過する冷媒を減圧する。
電動弁22としては、電動弁16,18と同様の構成を利用可能であり、制御部50による開度の調節を可能とすることができる。
電動弁22は、第3減圧要素の一例である。
【0042】
冷媒回路10-3では、冷却器19を通過して空気を冷却した後の冷媒は、圧縮機12にて圧縮され、第1流路101に吐出される。第1流路101に吐出された冷媒は、放熱器14を通過して放熱し、合流部20にて第3流路103が合流した後、分岐部15にて第1枝151と第2枝152とに分岐する。第1枝151に分岐した冷媒は、電動弁16によって減圧されて第2流路102に流れ込み、冷媒-冷媒熱交換器17において、第1枝151に分岐した冷媒との間で熱交換を行う。そして、圧縮機13にて圧縮されて第3流路103に吐出され、放熱器21を通過して放熱した後、さらに電動弁22により減圧された状態で、合流部20にて第1流路101に合流する。一方、第2枝152に分岐して冷媒-冷媒熱交換器17にて熱交換を行った後の冷媒は、電動弁18によって減圧された後、冷却器19を通過して空気を冷却する。
このような冷媒の循環により、冷媒回路10-3は、冷媒の冷凍サイクルを成立させる。
【0043】
上述した冷媒回路10-3を用いた第3の実施の形態においても、第1、第2の実施の形態と同様に、冷媒循環量の増加によって冷凍能力を確保する従来の冷媒回路10を用いた場合に比べ、圧縮機の合計容量が抑制される。
また、冷媒回路10-3では、圧縮機13により圧縮された冷媒が電動弁22にて減圧されるため、電動弁22を備えない場合に比べ、圧縮機13における圧縮比を大きくすることができる。
【0044】
<第4の実施の形態>
(冷媒回路10-4)
第4の実施の形態が適用される空気調和装置1は、冷媒回路10(図2参照)に代えて冷媒回路10-4を備える点で、上述した第1の実施の形態とは異なっている。
図6は、第4の実施の形態に係る冷媒回路10-4の概略図である。
図示するように、第4の実施の形態に係る冷媒回路10-4は、放熱器14を通過した後の冷媒を減圧する電動弁23を備える点のみ、第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2とは異なっている。したがって、冷媒回路10-2と冷媒回路10-4との間で共通する構成については、同じ名称および符号を用いて表記し、詳細な説明を省略する。
【0045】
電動弁23は、第1流路101における放熱器14を通過後かつ合流部20による第3流路103の合流前の位置に設けられ、通過する冷媒を減圧する。
電動弁23としては、電動弁16,18,22と同様の構成を利用可能であり、制御部50による開度の調節を可能とすることができる。
電動弁23は、第4減圧要素の一例である。
【0046】
冷媒回路10-4では、冷却器19を通過して空気を冷却した後の冷媒は、圧縮機12にて圧縮され、第1流路101に吐出される。第1流路101に吐出された冷媒は、放熱器14を通過して放熱し、電動弁23により減圧される。そして、合流部20にて第3流路103が合流した後、分岐部15にて第1枝151と第2枝152とに分岐する。第1枝151に分岐した冷媒は、電動弁16によって減圧されて第2流路102に流れ込み、冷媒-冷媒熱交換器17において、第2枝152に分岐した冷媒との間で熱交換を行う。そして、圧縮機13にて圧縮されて第3流路103に吐出され、放熱器21を通過して放熱した後、合流部20にて第1流路101に合流する。一方、第2枝152に分岐して冷媒-冷媒熱交換器17にて熱交換を行った後の冷媒は、電動弁18によって減圧された後、冷却器19を通過して空気を冷却する。
このような冷媒の循環により、冷媒回路10-4は、冷媒の冷凍サイクルを成立させる。
【0047】
上述した冷媒回路10-4を用いた第4の実施の形態においても、第1~第3の実施の形態と同様に、冷媒循環量の増加によって冷凍能力を確保する従来の冷媒回路10を用いた場合に比べ、圧縮機の合計容量が抑制される。
また、冷媒回路10-4では、圧縮機12により圧縮された冷媒が電動弁23にて減圧されるため、電動弁23を備えない場合に比べ、圧縮機12における圧縮比を大きくすることができる。
【0048】
<応用例>
(冷房/暖房の切り替え)
ところで、空気調和装置1において、空間に冷風を供給して空間を冷房する冷房機能と、空間に温風を供給して空間を暖房する暖房機能とを切り替える場合がある。この場合、冷房機能において空気を冷却する熱交換器と、暖房機能において空気を加熱する熱交換器とを共通化すると、熱交換に利用する空気の供給路や、熱交換後の冷風/温風を空間に供給する通風路を共通化することができる。
応用例の冷媒回路は、上述した実施の形態における冷却器19(図2図4図6参照)を、冷房機能において空気を冷却する熱交換器となる状態と、暖房機能において空気を加熱する熱交換器となる状態とに切り替える切り替え手段を備える。
【0049】
図7は、応用例の冷媒回路10-5を説明する図である。
図示するように、応用例の冷媒回路10-5は、四方の流路の接続関係を切り替える四方切替弁60を備える点のみ、第1の実施の形態に係る冷媒回路10とは異なっている。したがって、冷媒回路10と冷媒回路10-5との間で共通する構成については、同じ名称および符号を用いて表記し、詳細な説明を省略する。
【0050】
四方切替弁60は、冷却器19から圧縮機12までの間の流路と、合流部20から放熱器14までの間の流路とをつなぐように設けられる。そして、制御部50からの制御により、冷却器19と圧縮機12との間が接続され、かつ、合流部20と放熱器14との間が接続された第1状態と、冷却器19と合流部20との間が接続され、かつ、圧縮機12と放熱器14との間が接続された第2状態とに、流路の接続関係を切り替える。
なお、四方切替弁60は切り替え手段の一例であり、他の構成を用いて切り替えを行ってもよい。
【0051】
第1状態の冷媒回路10-5では、図2を用いて説明した冷媒回路10と同様にして冷媒が循環し、冷却器19における熱交換の相手の空気は冷却される。これにより、空気調和装置1の冷房機能が実現される。
一方、第2状態の冷媒回路10-5では、第1状態とは異なる態様にて冷媒が循環し、図3を用いて説明した冷凍サイクル300とは逆の経路で、冷媒の圧力および比エンタルピが変化する。より具体的には、圧縮機12,13にて圧縮された冷媒は、合流部20にて合流した後、冷却器19を通過する。ここで、冷却器19を通過する冷媒は、圧縮機12,13により加圧昇温された状態であり、熱交換の相手となる空気に対して十分に高温である。したがって、冷却器19における熱交換の相手の空気は冷媒から熱を奪って加熱される。これにより、空気調和装置1の暖房機能が実現される。
【0052】
図7の例では、第1の実施の形態に係る冷媒回路10に切り替え手段を適用し、応用例の冷媒回路10-5として示したが、同様の切り替え手段を、第2、第3、第4の実施の形態に係る冷媒回路10-2,10-3,10-4に適用することも可能である。
なお、上述した第2、第3、第4の実施の形態や、切り替え手段を適用した応用例の空気調和装置1においても、制御部50は、温度センサ501,502(図2図4図7参照)にて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環を制御してよい。
【0053】
<その他>
上述した実施の形態では、冷凍サイクル装置を空気調和装置1に適用する場合を例として説明したが、適用範囲は限定されない。冷凍倉庫や冷蔵庫、製氷機など、対象物の冷却を行う各種の機器に適用してもよい。また、図2を用いて上述したように、放熱器14での放熱を利用して、暖房器具や湯沸かし器、給湯器など、対象物の加熱を行う各種の装置に適用してもよい。
【0054】
また、各冷媒回路を循環する冷媒の一例として、二酸化炭素冷媒を例示したが、冷媒の種類は限定されない。二酸化炭素と他の成分とを混合した混合冷媒を用いてもよいし、二酸化炭素を含まない単一冷媒または混合冷媒を用いてもよい。ただし、上述した実施の形態の二酸化炭素冷媒のように、組成の少なくとも一部に二酸化炭素を含む冷媒を用いることにより、二酸化炭素を含まない非共沸混合冷媒を用いた場合に比べ、放熱器14,21における放熱が大きくなる。
【0055】
さらに、第1圧縮要素および第2圧縮要素を1つの機器にまとめ、各圧縮要素における圧縮のための動作が共通のモータ等によって実現されることとしてもよいが、上述した実施の形態の圧縮機12,13のように各々の圧縮要素を別々の機器とすることで、吸入される冷媒の状態などに応じて各圧縮要素を個別に制御することができる。
また、圧縮機12に代えて並列に接続された複数台の圧縮機を用いたり、圧縮機13に代えて並列に接続された複数台の圧縮機を用いたりしてもよい。この場合も、従来の冷媒回路10′において冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、合計容量を小さくすることができる。
【0056】
また、上述した実施の形態においては、制御部50による開度の制御を可能とするため、減圧要素として電動弁や電磁弁を用いることとした。制御部50による制御を行わない場合は、各減圧要素に、キャピラリチューブやオリフィス板などを利用してもよい。
【0057】
さらに、上述した実施の形態では、冷媒が第1枝151および第2枝152の2枝に分かれることを例示したが、第1枝151および第2枝152を含む3枝以上に分岐してもかまわない。このことに対応して、第1流路101には、第3流路103を含む複数の流路が合流してもかまわない。なお、3枝以上に分岐する場合、分岐は分岐部15を含む複数の分岐部で行われてもよく、合流は合流部20を含む複数の合流部で行われてもよい。
【0058】
<付記>
上述した実施の形態は、以下のように捉えることができる。
上述した実施の形態の空気調和装置1は、吸入した冷媒を圧縮して第1流路101へ吐出する圧縮機12と、第1流路101に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器14と、第1流路101にて放熱器14を通過した後の冷媒を第1枝151と第2枝152とに分岐させる分岐部15と、第1枝151に分岐した冷媒を減圧して第2流路102へと流す電動弁16と、第2流路102を流れる冷媒と第2枝152に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる冷媒-冷媒熱交換器17と、第2枝152にて冷媒-冷媒熱交換器17により熱交換した後の冷媒を減圧する電動弁18と、電動弁18により減圧後の冷媒と空気との熱交換により空気を冷却し、熱交換後の冷媒を圧縮機12に吸入させる冷却器19と、第2流路102にて冷媒-冷媒熱交換器17により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路103へ吐出する圧縮機13と、第3流路103を第1流路101に合流させる合流部20と、を含む冷媒回路10,10-2,10-3,10-4,10-5を備える。この場合、冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する従来の冷媒回路10′を備えた空気調和装置に比べ、圧縮機12,13の合計容量が抑制される。
【0059】
第2の実施の形態に係る冷媒回路10-2では、合流部15は、第1流路101における放熱器14を通過後の位置にて、第3流路103を合流させている。また、第3流路103には、圧縮機13により圧縮された冷媒を通過させて取り出した熱を放熱する放熱器21が設けられている。この場合、合流部15が第1流路101における放熱器14を通過前の位置にて第3流路103を合流させる場合に比べ、放熱器14からの放熱を大きくすることができる。
【0060】
また、冷媒回路10-2では、圧縮機12の容量は、圧縮機13の容量よりも大きい。この場合、圧縮機12の容量が圧縮機13の容量よりも小さい場合に比べ、放熱器14からの放熱を大きくすることができる。
【0061】
第3の実施の形態に係る冷媒回路10-3では、冷媒回路10-2の構成に加え、第3流路103に、放熱器21を通過後の冷媒を減圧する電動弁22が設けられている。この場合、圧縮機13における圧縮比を大きく設定することができる。
【0062】
第4の実施の形態に係る冷媒回路10-4では、冷媒回路10-2の構成に加え、第1流路101における放熱器14を通過後かつ合流部20により第3流路103が合流する前の位置に、放熱器14を通過後の冷媒を減圧する電動弁23が設けられている。この場合、圧縮機12における圧縮比を大きく設定することができる。
【0063】
ここで、上述した実施の形態の空気調和装置1においては、二酸化炭素冷媒が用いられる。この場合、二酸化炭素を含まない非共沸混合冷媒を用いた場合に比べ、放熱器14における放熱が大きくなる。
【0064】
また、上述した実施の形態の空気調和装置1においては、第1流路101における放熱器14を通過前かつ合流部15により第3流路103が合流する前の位置と、第3流路103における合流部15により第1流路101へ合流する前の位置との夫々に、冷媒の温度を計測する温度センサ501,502が設けられている。そして、空気調和装置1の制御部50は、温度センサ501にて計測された冷媒の温度が、第3流路103にて計測された冷媒の温度より高い場合に、電動弁16の流動抵抗が増加するように制御するとよい。この場合、圧縮機12により圧縮された冷媒と、圧縮機13により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。
【0065】
さらに、上述した実施の形態の空気調和装置1において、制御部50は、第1流路101にて計測された冷媒の温度が、第3流路103にて計測された冷媒の温度より高い場合に、圧縮機13の流量が増加するように制御してもよい。この場合も、圧縮機12により圧縮された冷媒と、圧縮機13により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。
【0066】
以上、実施の形態を説明したが、特許請求の範囲の主旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
例えば、各構成の一部を省略したり、各構成に対して他の機能を付加したりしてもよい。また例えば、一の構成例に含まれる構成と他の構成例に含まれる構成とを入れ替えたり、一の構成例に含まれる構成を他の構成例に付加したりしても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1…空気調和装置、10,10-2,10-3,10-4,10-5…冷媒回路、12,13…圧縮機、14,21…放熱器、15…分岐部、16,18,22,23…電動弁、17…冷媒-冷媒熱交換器、19…冷却器、20…合流部、50…制御部、60…切り替え回路、101…第1流路、102…第2流路、103…第3流路、151…第1枝、152…第2枝、501,502…温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した冷媒を圧縮して第1流路へ吐出する第1圧縮要素と、
前記第1流路に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器と、
前記第1流路にて前記放熱器を通過した後の冷媒を第1枝と第2枝とに分岐させる分岐部と、
前記第1枝に分岐した冷媒を減圧して第2流路へと流す第1減圧要素と、
前記第2流路を流れる冷媒と前記第2枝に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器と、
前記第2枝にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を減圧する第2減圧要素と、
前記第2減圧要素により減圧後の冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却し、熱交換後の冷媒を前記第1圧縮要素に吸入させる冷却器と、
前記第2流路にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路へ吐出する第2圧縮要素と、
前記第3流路を前記第1流路に合流させる合流部と、
前記冷却器から前記第1圧縮要素までの間の流路と、前記合流部から前記放熱器までの間の流路とをつなぐように設けられた四方切替弁と、を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記合流部は、前記第1流路における前記放熱器を通過後の位置にて、前記第3流路を合流させ、
前記第3流路に設けられ、前記第2圧縮要素により圧縮された冷媒を通過させて取り出した熱を放熱する第2放熱器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第1圧縮要素の容量は、前記第2圧縮要素の容量よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第3流路に設けられ、前記第2放熱器を通過後の冷媒を減圧する第3減圧要素を備えることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第1流路における前記放熱器を通過後かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に設けられ、当該放熱器を通過後の冷媒を減圧する第4減圧要素を備えることを特徴とする、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
冷媒の組成の少なくとも一部は、二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1乃至5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に備えられる第1温度センサと、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置に備えられる第2温度センサと、
前記第1温度センサおよび前記第2温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第1減圧要素の流動抵抗が増加するように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に備えられる第1温度センサと、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置に備えられる第2温度センサと、
前記第1温度センサおよび前記第2温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第2圧縮要素の流量が増加するように制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
第1の観点の冷凍サイクル装置は、吸入した冷媒を圧縮して第1流路へ吐出する第1圧縮要素と、前記第1流路に設けられて冷媒を通過させ、通過する冷媒から取り出した熱を放熱する放熱器と、前記第1流路にて前記放熱器を通過した後の冷媒を第1枝と第2枝とに分岐させる分岐部と、前記第1枝に分岐した冷媒を減圧して第2流路へと流す第1減圧要素と、前記第2流路を流れる冷媒と前記第2枝に分岐した冷媒との間で熱交換を行わせる熱交換器と、前記第2枝にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を減圧する第2減圧要素と、前記第2減圧要素により減圧後の冷媒と対象物との熱交換により当該対象物を冷却し、熱交換後の冷媒を前記第1圧縮要素に吸入させる冷却器と、前記第2流路にて前記熱交換器により熱交換した後の冷媒を吸入し、圧縮して第3流路へ吐出する第2圧縮要素と、前記第3流路を前記第1流路に合流させる合流部と、前記冷却器から前記第1圧縮要素までの間の流路と、前記合流部から前記放熱器までの間の流路とをつなぐように設けられた四方切替弁と、を備える冷凍サイクル装置である。この場合、冷媒循環量を増加させて冷凍能力を確保する場合に比べ、圧縮機の合計容量が抑制される。
第2の観点の冷凍サイクル装置は、第1の観点の冷凍サイクル装置であって、前記合流部は、前記第1流路における前記放熱器を通過後の位置にて、前記第3流路を合流させ、前記第3流路に設けられ、前記第2圧縮要素により圧縮された冷媒を通過させて取り出した熱を放熱する第2放熱器を備える冷凍サイクル装置である。この場合、合流部が第1流路における放熱器を通過前の位置にて第3流路を合流させる場合に比べ、放熱器からの放熱を大きくすることができる。
第3の観点の冷凍サイクル装置は、第2の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1圧縮要素の容量は、前記第2圧縮要素の容量よりも大きい冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素の容量が第2圧縮要素の容量よりも小さい場合に比べ、放熱器からの放熱を大きくすることができる。
第4の観点の冷凍サイクル装置は、第3の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第3流路に設けられ、前記第2放熱器を通過後の冷媒を減圧する第3減圧要素を備える冷凍サイクル装置である。この場合、第2圧縮要素における圧縮比を大きく設定することができる。
第5の観点の冷凍サイクル装置は、第2の観点の冷凍サイクル装置であって、前記第1流路における前記放熱器を通過後かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に設けられ、当該放熱器を通過後の冷媒を減圧する第4減圧要素を備える冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素における圧縮比を大きく設定することができる。
第6の観点の冷凍サイクル装置は、第1乃至第5の観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、冷媒の組成の少なくとも一部は、二酸化炭素である冷凍サイクル装置である。この場合、二酸化炭素を含まない非共沸混合冷媒を用いた場合に比べ、放熱器における放熱が大きくなる。
第7の観点の冷凍サイクル装置は、前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に備えられる第1温度センサと、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置に備えられる第2温度センサと、前記第1温度センサおよび前記第2温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第1減圧要素の流動抵抗が増加するように制御する冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素により圧縮された冷媒と、第2圧縮要素により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。
第8の観点の冷凍サイクル装置は、前記第1流路における前記放熱器を通過前かつ前記合流部により前記第3流路が合流する前の位置に備えられる第1温度センサと、当該第3流路における前記合流部により当該第1流路へ合流する前の位置に備えられる第2温度センサと、前記第1温度センサおよび前記第2温度センサにて計測された冷媒の温度に基づいて、冷媒の循環に係る制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1流路にて計測された冷媒の温度が、前記第3流路にて計測された冷媒の温度より高い場合に、前記第2圧縮要素の流量が増加するように制御する冷凍サイクル装置である。この場合、第1圧縮要素により圧縮された冷媒と、第2圧縮要素により圧縮された冷媒とのエンタルピ差が小さくなる。