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特開2024-145836セメント組成物及びその製造方法、並びにセメントミルク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145836
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】セメント組成物及びその製造方法、並びにセメントミルク
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20241004BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20241004BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20241004BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20241004BHJP
   E01C 7/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 A
C04B18/14 F
C04B24/24 Z
C04B40/02
E01C7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058361
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】MUマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(72)【発明者】
【氏名】田原 英男
(72)【発明者】
【氏名】木元 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石隈 春輝
【テーマコード(参考)】
2D051
4G112
【Fターム(参考)】
2D051AE01
2D051AF02
2D051AF05
2D051AG11
2D051EA07
4G112MC11
4G112PA29
4G112PB26
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】徐冷スラグを含む混和材料を含有するセメント組成物であって、粘度及び硬化体の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成に適したセメントミルクを得ることが可能なセメント組成物を提供すること。
【解決手段】本開示の一側面は、セメント、細骨材及び混和材料を含有し、混和材料が、徐冷スラグ及びポリマーを含み、徐冷スラグのブレーン比表面積が2500~7500cm/gであり、徐冷スラグの含有量が、徐冷スラグ、セメント及び細骨材の配合量の合計100質量部に対して1~40質量部である、セメント組成物を提供する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、細骨材及び混和材料を含有し、
前記混和材料が、徐冷スラグ及びポリマーを含み、
前記徐冷スラグのブレーン比表面積が2500~7500cm/gであり、
前記徐冷スラグの含有量が、前記セメント、前記細骨材及び前記徐冷スラグの合計100質量部に対して、1~40質量部である、セメント組成物。
【請求項2】
前記徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量が1.0質量%以上である、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記徐冷スラグに吸着している無機体炭素量は、前記徐冷スラグの質量を基準として0.27質量%以上である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記徐冷スラグの密度が、2.80g/cm以上である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記徐冷スラグが、高炉徐冷スラグ、転炉徐冷スラグ及び電気炉徐冷スラグからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項6】
水と混合され、セメントミルクとして半たわみ性舗装に用いられる、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項7】
前記セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製したときの、前記セメントミルクの20℃における粘度が、150~500mPa・sである、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項8】
前記セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製し、前記セメントミルクを3時間放置したときの、ブリーディング率が、3.50体積%以下である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のセメント組成物と、水とを含む、セメントミルク。
【請求項10】
前記水の含有量が、前記セメント組成物100質量部に対して40~60質量部である、請求項9に記載のセメントミルク。
【請求項11】
アスファルト混合物の空隙に、請求項9に記載のセメントミルクを充填することを含む、半たわみ舗装の施工方法。
【請求項12】
徐冷スラグを破砕しブレーン比表面積を2500~7500cm/gに調整する工程と、
ポリマー及びブレーン比表面積が調整された前記徐冷スラグを含む混和材料、セメント並びに細骨材を配合する工程と、を含む、セメント組成物の製造方法であって、
前記徐冷スラグの配合量が、前記徐冷スラグ、前記セメント及び前記細骨材の合計100質量部に対して1~40質量部である、セメント組成物の製造方法。
【請求項13】
ブレーン比表面積が調整された前記徐冷スラグに、前記徐冷スラグの質量を基準として1.0質量%以上のCOを吸着させる工程を更に含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記徐冷スラグに吸着させる前記COが、セメント工場の排ガス由来のCOを含む、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメント組成物及びその製造方法、並びにセメントミルクに関する。
【背景技術】
【0002】
半たわみ性舗装は、アスファルト舗装の「たわみ性」及びコンクリート舗装の「剛性」の両方を備える舗装であり、開粒度アスファルト混合物の空隙に、特殊なセメントミルクを浸透させることによって形成することができる。
【0003】
半たわみ性舗装を形成するためのセメント組成物には、硬化体の物性制御等を狙って、混和材料として、炭酸カルシウムが用いられることがある。例えば、特許文献1には、セメント、炭酸カルシウム粉末、再乳化形粉末樹脂、及び減水剤を含有することを特徴とする半たわみ性舗装用注入材が開示され、当該半たわみ性舗装用注入材によって、作業性が良く、かつ、注入時に材料の沈下が起きず、そして注入後における半たわみ性舗装の物性が良い半たわみ性舗装用注入材を提供するという課題が解決されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-278901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、セメント製品を製造する際の二酸化炭素(CO)排出量の削減が求められているセメント組成物においても、CO排出量の削減に資する混和材料に関して、更なる検討の余地がある。
【0006】
本発明者らは、検討の結果、徐冷スラグが、CO排出量の削減に資する混和材料として有望であると考えた。しかし、混和材料として徐冷スラグを用いるセメント組成物の場合、特に、セメントミルクとした際の粘度と、硬化体を調製した際の圧縮強さとの双方に優れる半たわみ性舗装の形成に適したセメント組成物を得ることは難しかった。
【0007】
そこで、本開示は、徐冷スラグを含む混和材料を含有するセメント組成物であって、粘度及び硬化体の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成に適したセメントミルクを得ることが可能なセメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、セメント、細骨材及び混和材料を含有し、混和材料が、徐冷スラグ及びポリマーを含む、セメント組成物において、徐冷スラグのブレーン比表面積及び含有量を特定の範囲内とすることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
本開示は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]
セメント、細骨材及び混和材料を含有し、
混和材料が、徐冷スラグ及びポリマーを含み、
徐冷スラグのブレーン比表面積が2500~7500cm/gであり、
徐冷スラグの含有量が、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、1~40質量部である、セメント組成物。
[2]
徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量が1.0質量%以上である、[1]に記載のセメント組成物。
[3]
徐冷スラグに吸着している無機体炭素量は、徐冷スラグの質量を基準として0.27質量%以上である、[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4]
徐冷スラグの密度が、2.80g/cm以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5]
徐冷スラグが、高炉徐冷スラグ、転炉徐冷スラグ及び電気炉徐冷スラグからなる群より選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のセメント組成物。
[6]
水と混合され、セメントミルクとして半たわみ性舗装に用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載のセメント組成物。
[7]
セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製したときの、セメントミルクの20℃における粘度が、150~500mPa・sである、[1]~[6]のいずれかに記載のセメント組成物。
[8]
セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製し、前記セメントミルクを3時間放置したときの、ブリーディング率が、3.50体積%以下である、請求項[1]~[7]のいずれかに記載のセメント組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のセメント組成物と、水とを含む、セメントミルク。
[10]
水の含有量が、セメント組成物100質量部に対して40~60質量部である、[9]に記載のセメントミルク。
[11]
アスファルト混合物の空隙に、[9]又は[10]に記載のセメントミルクを充填することを含む、半たわみ舗装の施工方法。
[12]
徐冷スラグを破砕しブレーン比表面積を2500~7500cm/gに調整する工程と、
ポリマー及びブレーン比表面積が調整された徐冷スラグを含む混和材料、セメント並びに細骨材を配合する工程と、を含む、セメント組成物の製造方法であって、
徐冷スラグの配合量が、徐冷スラグ、セメント及び細骨材の配合量の合計100質量部に対して1~40質量部である、セメント組成物の製造方法。
[13]
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグに、徐冷スラグの質量を基準として1.0質量%以上のCOを吸着させる工程を更に含む、[12]に記載の製造方法。
[14]
徐冷スラグに吸着させるCOが、セメント工場の排ガス由来のCOを含む、請求項[13]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、徐冷スラグを含む混和材料を含有するセメント組成物であって、粘度及び硬化体の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成に適したセメントミルクを得ることが可能なセメント組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例で用いた高炉徐冷スラグのX線回折測定の結果を示す図である。
図2図2は、ブレーン比表面積が3600cm/gである高炉徐冷スラグに対してCOを吸着させたときの、高炉徐冷スラグの質量増加率の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。なお、以下の説明では、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味する。
【0013】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
<セメント組成物>
本開示に係るセメント組成物の一実施形態は、セメント、細骨材及び混和材料を含有し、混和材料が、徐冷スラグ及びポリマーを含む。上記セメント組成物は、水硬性組成物ということもできる。
【0015】
セメントは、水と反応して、硬化する鉱物質の微粉末を意味する。セメントは、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定のポルトランドセメントであってよい。ポルトランドセメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、及び低熱ポルトランドセメント等であってもよい。また、他のセメントとして、例えば、JIS R 5211:2009「高炉セメント」に規定の高炉セメント、及びJIS R 5213:2019「フライアッシュセメント」に規定のフライアッシュセメントの少なくとも一方を用いると、セメント製造時の二酸化炭素排出量を小さくできるため好ましい。セメントは、普通ポルトランドセメント、及び早強ポルトランドセメントの少なくとも一方であることが好ましい。
【0016】
上記セメント組成物において、セメントの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上、又は33質量部以上であってよく、90質量部以下、又は80質量部以下であってよい。
【0017】
上記セメント組成物において、混和材料が後述する速硬性混和材を含む場合、セメントの含有量は、セメント、細骨材、徐冷スラグ、及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、又は35質量部以上、であってよく、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、又は65質量部以下であってよい。
【0018】
細骨材は、目開きが10mmである網ふるいを全部通り、目開きが5mmである網ふるいを質量で85%以上通るものであってよい。細骨材の例としては、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等が挙げられる。細骨材には徐冷スラグが含まれないものとする。
【0019】
上記セメント組成物において、細骨材の含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、5質量部以上、又は10質量部以上であってよく、30質量部以下、又は20質量部以下であってよい。
【0020】
上記セメント組成物において、混和材料が後述する速硬性混和材を含む場合、細骨材の含有量は、セメント、細骨材、徐冷スラグ、及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、5質量部以上、又は10質量部以上であってよく、30質量部以下、又は20質量部以下であってよい。
【0021】
徐冷スラグは、金属製造工程で発生するスラグのうち、溶融スラグを徐冷処理することによって得られるものであり、溶融スラグを急冷処理することによって得られる急冷スラグ(水砕スラグ)とは異なるものである。急冷スラグが非晶質であるのに対して、徐冷スラグは結晶質である。また、徐冷スラグは、急冷スラグと比較して密度が大きい傾向にある。
【0022】
上記混和材料は、所定の徐冷スラグを含むため、当該混和材料を含有するセメント組成物を用いて得られるセメントミルクの硬化体において、圧縮強さの過度な上昇が抑えられる。一方で、本発明者らの検討によれば、所定の徐冷スラグに代えて急冷スラグを用いた場合には、このような効果が得られない。そのため、上記セメント組成物は、急冷スラグでなく徐冷スラグを含む必要がある。
【0023】
徐冷スラグは、鉄鋼製品の製造工程で生じる鉄鋼徐冷スラグであってよい。鉄鋼徐冷スラグの例としては、銑鉄製造工程で発生する高炉徐冷スラグ、転炉を用いた製鋼工程で発生する転炉徐冷スラグ、及び電気炉を用いた製鋼工程で発生する電気炉徐冷スラグが挙げられる。徐冷スラグは、高炉徐冷スラグ、転炉徐冷スラグ、及び電気炉徐冷スラグからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0024】
徐冷スラグは、SiOを含んでいてよい。徐冷スラグにおけるSiOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってよい。徐冷スラグにおけるSiOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。徐冷スラグにおけるSiOの含有量は、20~50質量%、又は30~40質量%であってよい。
【0025】
徐冷スラグは、Alを含んでいてよい。Alの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、5質量%以上、8質量%以上、又は10質量%以上であってよい。Alの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、20質量%以下、17質量%以下、又は15質量%以下であってよい。徐冷スラグにおけるAlの含有量は、5~20質量%、又は10~15質量%であってよい。
【0026】
徐冷スラグは、CaOを含んでいてよい。CaOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、20質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上であってよい。CaOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、60質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。徐冷スラグにおけるCaOの含有量は、20~60質量%、又は35~45質量%であってよい。
【0027】
徐冷スラグは、MgOを含んでいてよい。MgOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよい。MgOの含有量は、徐冷スラグの全質量を基準として、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。徐冷スラグにおけるMgOの含有量は、1~15質量%、又は5~8質量%であってよい。
【0028】
徐冷スラグは、Fe、SO、NaO、KO、TiO、P、及びMnOからなる群より選択される1種以上を更に含んでいてよい。徐冷スラグにおいて、SiO、Al、CaO、MgO、Fe、SO、NaO、KO、TiO、P、及びMnOが含まれるか否かの判定及びこれら成分の含有量の測定は、JIS R 5202:2010「セメントの化学分析方法」に準拠して行うことができる。
【0029】
徐冷スラグは、ゲーレナイト(2CaO・Al・SiO)とアケルマナイト(2CaO・MgO・2SiO)との固溶体であるメリライトを含有していてよい。
【0030】
徐冷スラグのブレーン比表面積は、2500~7500cm/gである。徐冷スラグのブレーン比表面積は、2700cm/g以上、3000cm/g以上、3200cm/g以上、又は3400cm/g以上であってよい。徐冷スラグのブレーン比表面積が上記下限値以上である場合、徐冷スラグの単位質量当たりのCO吸着量を上昇させることが可能となり、セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量の低減に資する。なお、セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量とは、セメント組成物を製造する際(セメント組成物の原料を製造する際も含む。以下同じ。)に排出されるCOの量から、セメント組成物を製造する際に消費されるCOの量を差し引くことによって求められる値を意味する。徐冷スラグのブレーン比表面積は、7300cm/g以下、7000cm/g以下、6800cm/g以下、6600cm/g以下、6400cm/g以下、6200cm/g以下、6000cm/g以下、又は5900cm/g以下であってよい。徐冷スラグのブレーン比表面積が上記上限値以下である場合、セメントミルクの粘度を半たわみ性舗装形成用として好適な範囲内としやすくなる。本明細書において、ブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
【0031】
徐冷スラグの密度は、2.60g/cm以上、2.70g/cm以上、2.80g/cm以上、又は2.90g/cm以上であってよい。徐冷スラグの密度は、例えば、5.00g/cm以下、4.50g/cm以下、又は4.00g/cm以下であってよい。
【0032】
本明細書において、密度は、特に断らない限り、真密度を意味する。本明細書において、徐冷スラグの密度は、全自動ピクノメーターを使用したピクノメーター法によって求められる密度を意味する。
【0033】
徐冷スラグは、COを吸着したものであることが好ましい。徐冷スラグがCOを吸着したものである場合、混和材料としてCOを吸着しない材料のみを用いた場合と比較して、上記セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量が削減されることとなる。また、徐冷スラグがCOを吸着している場合、COを吸着していない場合と比べて、かさ密度が小さくなる。一方で、徐冷スラグのかさ密度は、一般に、炭酸カルシウムのかさ密度と比べて大きい。そのため、徐冷スラグがCOを吸着している場合、従来、混和材料として用いられてきた炭酸カルシウムとより近いかさ密度を有することになり、より従来品に近い物性を有するセメント組成物が得られやすくなる。
【0034】
徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上、1.1質量%以上、1.3質量%以上、又は1.5質量%以上であってよい。上記温度範囲では、徐冷スラグが吸着していたCOの脱離が起こると考えられるため、上記質量減少量は、徐冷スラグが吸着していたCOの量に対応する。よって、上記質量減少量が上記下限値以上である場合、上記セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量がより削減されることとなる。また、590~800℃の範囲における質量減少量は、例えば、32質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。上記質量減少量は、より詳細には、窒素雰囲気下(流量:100ml/分)で昇温速度10℃/分かつ測定温度範囲20~1000℃の条件で熱重量分析(TG-DTA測定)を行うことによって求められる。
【0035】
徐冷スラグに吸着している無機体炭素量は、徐冷スラグの質量を基準として、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、又は0.27質量%以上であってよい。徐冷スラグがCOを吸着している場合、上記スラグに吸着している無機体炭素量には、徐冷スラグが吸着したCOの量が反映される。よって、上記無機体炭素量が上記下限値以上である場合、上記セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量がより削減されることとなる。また、徐冷スラグに吸着している無機体炭素量は、徐冷スラグの質量を基準として、9質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。上記無機体炭素量は、固体試料燃焼装置を備えた全有機体炭素計を用いて求められる。
【0036】
上記セメント組成物において、徐冷スラグの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、1~40質量部である。徐冷スラグの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、3質量部以上、5質量部以上、7質量部以上、9質量部以上、10質量部以上、13質量部以上、17質量部以上、又は20質量部以上であってよい。徐冷スラグの含有量が上記下限値以上である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さ及び曲げ強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。徐冷スラグの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、39質量部以下、38質量部以下、又は37質量部以下であってよい。徐冷スラグの含有量が上記上限値以下である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。
【0037】
上記セメント組成物において、セメントの含有量100質量部に対する徐冷スラグの含有量は、5質量部以上、7質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、又は30質量部以上であってよい。徐冷スラグの含有量が上記下限値以上である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さ及び曲げ強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。セメントの含有量100質量部に対する徐冷スラグの含有量は、90質量部以下、80質量部以下、又は75質量部以下であってよい。徐冷スラグの含有量が上記上限値以下である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。
【0038】
上記セメント組成物において、混和材料が後述する速硬性混和材を含む場合、セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対する徐冷スラグの含有量は、5質量部以上、7質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、又は30質量部以上であってよい。徐冷スラグの含有量が上記下限値以上である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さ及び曲げ強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対する徐冷スラグの含有量は、90質量部以下、80質量部以下、又は75質量部以下であってよい。徐冷スラグの含有量が上記上限値以下である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。
【0039】
上記セメント組成物において、混和材料が後述する速硬性混和材を含む場合、徐冷スラグの含有量は、セメント、細骨材、徐冷スラグ、及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、1質量部以上であってよく、3質量部以上、5質量部以上、7質量部以上、10質量部以上、13質量部以上、17質量部以上、又は20質量部以上であってよい。徐冷スラグの含有量が上記下限値以上である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さ及び曲げ強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。徐冷スラグの含有量は、セメント、細骨材、徐冷スラグ、及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、40質量部以下、39質量部以下、38質量部以下、又は37質量部以下であってよい。徐冷スラグの含有量が上記上限値以下である場合、得られるセメントミルクを硬化した際の圧縮強さが、半たわみ性舗装の形成により適したものとなりやすい。
【0040】
ポリマーは、セメント用ポリマー、セメント混和用ポリマー等として公知のものであってよい。ポリマーは、例えば、再乳化粉末ポリマー、水溶性ポリマー、及び液状ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。再乳化粉末ポリマーの例としては、酢酸ビニル系ポリマー、及びアクリル酸エステル系ポリマーなどが挙げられる。酢酸ビニル系ポリマーとしては、エチレン酢酸ビニル、及び酢酸ビニルビニルバーサテート(VAVeoVa)等が挙げられる。アクリル酸エステル系ポリマーとしては、スチレンアクリル酸エステル、及びポリアクリル酸エステル等が挙げられる。水溶性ポリマーの例としては、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、及びポリアクリル酸塩などが挙げられる。セルロース誘導体としては、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸マグネシウム等が挙げられる。液状ポリマーの例としては、不飽和ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂が挙げられる。
【0041】
上記セメント組成物において、ポリマーの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、又は0.7質量部以上であってよい。また、ポリマーの含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、5質量部以下、3質量部以下、又は2質量部以下であってよい。
【0042】
上記セメント組成物において、セメントの含有量100質量部に対するポリマーの含有量は、0.5質量部以上、0.8質量部以上、又は1.0質量部以上であってよい。当該質量比は、5.0質量部以下、4.0質量部以下、又は3.0質量部以下であってよい。
【0043】
混和材料は、速硬性混和材を含んでいてよい。セメントの一部を速硬性混和材に置き換えることによって、セメントミルクに速硬性を付与することができる。速硬性混和材は、カルシウムアルミネートと石こうとの混合物であってよい。
【0044】
カルシウムアルミネートは、12CaO・7Al、3CaO・Al、又はCaO・Alであってよい。カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は、4000cm/g以上であってよく、5000cm/g以下であってよい。石こうは、フッ酸石こう(フッ酸を製造する際に副産される石こう)であってよく、天然石こうであってもよい。石こうは、無水石こう(CaSO)、半水石こう(CaSO・1/2HO)、又は二水石こう(CaSO・2HO)であってよいが、好ましくは無水石こう(CaSO)である。無水石こうは、II型無水石こうであってよく、III型無水石こうであってよい。石こうのブレーン比表面積は、8000cm/g以上であってよく、11000cm/g以下であってよい。
【0045】
カルシウムアルミネートと石こうとの混合物において、石こうの含有量に対するカルシウムアルミネートの含有量の質量比(カルシウムアルミネートの含有量/石こうの含有量)は、30/70以上、35/65以上、又は40/60以上であってよい。また、当該比は、70/30以下、60/40以下、55/45以下、又は50/50以下であってよい。
【0046】
速硬性混和材の含有量は、セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、10質量部以上、15質量部以上、又は18質量部以上であってよい。速硬性混和材の含有量は、セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対して、40質量部以下、35質量部以下、又は32質量部以下であってよい。
【0047】
混和材料は、徐冷スラグ、速硬性混和材、及びポリマー以外のその他の成分(以下、単に「その他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、増粘剤、消泡剤、減水剤、AE剤、保水剤、硬化促進剤、凝結調整剤(凝結遅延剤等)、鉄筋防錆材、膨張剤、シリカフューム等が挙げられる。その他の成分の含有量は、セメント、細骨材、及び徐冷スラグの合計100質量部に対して、0.01質量部以上であってよく、0.3質量部以下であってよい。
【0048】
上記セメント組成物に対して、水を混合することによって、セメントミルクを作製することができる。上記セメント組成物と水とを混合することで得られるセメントミルクは、半たわみ性舗装に好適である。よって、上記セメント組成物は、水と混合され、セメントミルクとして半たわみ性舗装に用いられるものであってよい。
【0049】
上記セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製したときの、セメントミルクの20℃における粘度は、150~500mPa・sであってよい。当該粘度は、200~400mPa・sであってよく、250~400mPa・sであってもよい。上記粘度が上記下限値以上である場合、ブリーディングの発生を抑制し易くなる。また、上記粘度が上記上限値以下である場合、セメントミルクの充填性が向上する傾向にある。セメントミルクの20℃における粘度は、B型粘度計で測定される値を意味する。セメントミルクの20℃における粘度は、より具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0050】
上記セメント組成物100質量部に対して、水を50質量部混合してセメントミルクを調製し、上記セメントミルクを3時間放置したときの、ブリーディング率は、3.50体積%以下であってよい。当該ブリーディング率は、3.30体積%以下、3.00体積%以下、又は2.70体積%以下であってよい。
【0051】
上記ブリーディング率は、以下の方法で求められる値を意味する。20±3℃の環境下で、セメントミルク1000mLを水密で強固な容器に流しこみ、蓋をして、セメントミルク製造時の注水時刻から3時間後まで水平な台上で放置した場合に、表面に浸み出す水の量(ブリーディング水量)を1mL単位で測定する。その測定値に基づいて、下記式によって、ブリーディング率を求める。ブリ―ディング率は、より具体的には、実施例に記載の方法で測定される。なお、ブリーディング率の数値は、少数第3位を四捨五入し、小数点以下2桁までの値を求める。
ブリーディング率(体積%)
=(ブリーディング水量(mL)/1000mL)×100
【0052】
<セメントミルク>
本開示に係るセメントミルクの一実施形態は、上記セメント組成物と、水とを含む。水の含有量は、セメント組成物100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、又は40質量部以上であってよい。水の含有量は、セメント組成物100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、又は60質量部以下であってよい。水の含有量は、30~70質量部、又は40~60質量部であってよい。
【0053】
上述のとおり、上記セメント組成物と水とを混合することで得られるセメントミルクは、半たわみ性舗装に好適である。本開示は、アスファルト混合物の空隙に、上記セメントミルクを充填することを含む、半たわみ舗装の施工方法を提供するともいえる。アスファルト混合物は、例えば、骨材(砕石、砂等)、フィラー(石粉等)、及びアスファルトの混合物であってよい。上記施工方法は、アスファルト混合物を敷き均すことを含んでいてよい。敷き均したアスファルト混合物においては、骨材等の粒子間に空隙が存在する。アスファルト混合物の空隙に、セメントミルクを充填した後、セメントミルクを硬化させることによって、半たわみ舗装を施工することができる。
【0054】
<セメント組成物の製造方法>
本開示に係るセメント組成物の製造方法の一実施形態は、徐冷スラグを破砕しブレーン比表面積を2500~7500cm/gに調整する工程(以下、「比表面積調整工程」ともいう。)と、ポリマー及びブレーン比表面積が調整された徐冷スラグを含む混和材料、セメント並びに細骨材を配合する工程(以下、「配合工程」ともいう。)と、を含む。
【0055】
上記比表面積調整工程において、原料として用いる徐冷スラグは、上記セメント組成物における混和材料に含まれる徐冷スラグとして上述したもののいずれであってもよい。また、原料として用いる徐冷スラグの密度は、上記セメント組成物における混和材料に含まれる徐冷スラグの密度の数値範囲として上述した数値範囲内であってよい。
【0056】
通常、原料として用いる徐冷スラグは、粒径が大きく、ブレーン比表面積が小さい状態で市販されている。比表面積調整工程では、原料の徐冷スラグを破砕しブレーン比表面積を2500~7500cm/gに調整することによって、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグを得る。比表面積調整工程では、ブレーン比表面積を、2700cm/g以上、3000cm/g以上、3200cm/g以上、又は3400cm/g以上に調整してよい。徐冷スラグのブレーン比表面積を上記下限値以上に調整すると、徐冷スラグの単位質量当たりのCO吸着量を上昇させることが可能となり、セメント組成物を製造する際の見かけのCO排出量低減に資する。また、上記工程では、ブレーン比表面積を、7300cm/g以下、7000cm/g以下、6800cm/g以下、6600cm/g以下、6400cm/g以下、6200cm/g以下、6000cm/g以下、又は5900cm/g以下に調整してよい。徐冷スラグのブレーン比表面積を上記上限値以下に調整すると、製造されるセメント組成物を用いて作製したセメントミルクの粘度を半たわみ性舗装形成用としてより好適な範囲内としやすくなる。
【0057】
配合工程において用いられる混和材料は、ポリマー及びブレーン比表面積が調整された徐冷スラグを含む。ポリマーとしては、上記セメント組成物におけるポリマーとして上述したポリマーを用いることができる。ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、セメント及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するポリマーの配合量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の合計100質量部に対するポリマーの含有量として上述した数値範囲内であってよい。また、セメントの配合量100質量部に対するポリマーの配合量は、上記セメント組成物におけるセメントの含有量100質量部に対するポリマーの含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0058】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグには、COを吸着させることが好ましい。上記製造方法は、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグに、徐冷スラグの質量を基準として1.0質量%以上のCOを吸着させる工程(以下、「CO吸着工程」ともいう。)を更に含んでいてよい。CO吸着工程は、配合工程の前に実施されてよく、配合工程の後に実施されてもよい。
【0059】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグに、徐冷スラグの質量を基準として1.0質量%以上のCOを吸着させる方法としては、例えば、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグを、CO濃度を高く(例えば、1000ppm以上に)設定した槽内に放置する方法が挙げられる。放置する期間は、例えば30日以上であってよく、60日以下であってよい。CO吸着工程において、徐冷スラグに吸着させるCOは、セメント工場の排ガス由来のCOを含んでいてよい。
【0060】
CO吸着工程において、徐冷スラグに吸着させるCOの量は、徐冷スラグの質量を基準として、1.0質量%以上であり、1.1質量%以上、1.3質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよい。徐冷スラグに吸着させるCOの量は、例えば、3.5質量%以下であってよい。徐冷スラグに吸着させるCOの量は、COを吸着した(CO吸着工程後の)徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量として求められる。
【0061】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグに対する熱重量分析によって得られる熱減量曲線において、590~800℃の範囲における質量減少量として上述した数値範囲内であってよい。また、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグに吸着している無機体炭素量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグに吸着している無機体炭素量として上述した数値範囲内であってよい。
【0062】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグの配合量は、当該徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の配合量の合計100質量部に対して、1~40質量部である。ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するブレーン比表面積が調整された徐冷スラグの配合量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の合計100質量部に対する徐冷スラグの含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0063】
セメントの配合量100質量部に対するブレーン比表面積が調整された徐冷スラグの配合量は、上記セメント組成物における、セメントの含有量100質量部に対する徐冷スラグの含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0064】
混和材料が速硬性混和材を含む場合、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、速硬性混和材、セメント、及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するブレーン比表面積が調整された徐冷スラグの配合量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、速硬性混和材、セメント、及び細骨材の合計100質量部に対する徐冷スラグの含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0065】
セメント及び速硬性混和材の配合量100質量部に対するブレーン比表面積が調整された徐冷スラグの配合量は、上記セメント組成物における、セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対する徐冷スラグの含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0066】
混和材料は、速硬性混和材を含んでいてよく、その他の成分を含んでいてもよい。速硬性混和材、及びその他の成分としては、それぞれ、上記セメント組成物における速硬性混和材、及びその他の成分として上述した速硬性混和材、及びその他の成分を用いることができる。
【0067】
セメント及び速硬性混和材の配合量の合計100質量部に対する速硬性混和材の配合量は、上記セメント組成物における、セメント及び速硬性混和材の合計100質量部に対する速硬性混和材の含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0068】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、セメント及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するその他の成分の配合量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の合計100質量部を基準とするその他の成分の含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0069】
セメント、及び細骨材としては、それぞれ、上記セメント組成物におけるセメント、及び細骨材として上述したセメント、及び細骨材を用いることができる。
【0070】
ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するセメント、及び細骨材の配合量は、それぞれ、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、セメント、及び細骨材の合計100質量部に対するセメント、及び細骨材の含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【0071】
混和材料が速硬性混和材を含む場合、ブレーン比表面積が調整された徐冷スラグ、速硬性混和材、セメント、及び細骨材の配合量の合計100質量部に対するセメント、及び細骨材の配合量は、上記セメント組成物における、徐冷スラグ、速硬性混和材、セメント、及び細骨材の合計100質量部に対するセメント、及び細骨材の含有量として上述した数値範囲内であってよい。
【実施例0072】
以下、実施例、比較例、及び参考例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
以下の実施例、比較例、及び参考例では、原料として、以下の表1に示す成分を用いた。
【0074】
【表1】
【0075】
[徐冷スラグの準備及び分析]
<ブレーン比表面積の調整>
高炉徐冷スラグを、粉砕装置(HERZOG社製粉砕装置:型式HP-MA)を用いて粉砕することによって、ブレーン比表面積が2000cm/gである高炉徐冷スラグを作製した。また、粉砕装置の運転条件を変えることによって、ブレーン比表面積が3600、5000、及び8000cm/gである高炉徐冷スラグを作製した。ブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0076】
<分析>
ブレーン比表面積が3600cm/gである高炉徐冷スラグについて、X線回折測定を行った。結果を図1に示す。図1のとおり、メリライトのX線回折パターンが観測され、当該高炉徐冷スラグにメリライトが含まれることが示された。また、JIS R 5202:2010「セメントの化学分析方法」に準拠して、ブレーン比表面積が3600cm/gである高炉徐冷スラグの化学組成を求めた。結果を表2に示す。さらに、ブレーン比表面積が3600cm/gである高炉徐冷スラグについて、全自動ピクノメーター(株式会社アントンパール・ジャパン製、商品名「全自動ピクノメーター Pentapyc5200e」)を用いて真密度を求めた。その結果、真密度は3.00g/cmであった。表2には、参考のため、強熱減量(ig.lоssとも表記することがある)の値を併記した。強熱減量は、JIS R 5202:2010の「5.強熱減量の定量方法」における「5.3高炉セメント及び高炉スラグの場合」に記載の方法に準拠して測定した値である。
【0077】
【表2】
【0078】
<高炉徐冷スラグへのCO吸着>
ブレーン比表面積が2000、3600、5000、及び8000cm/gである高炉徐冷スラグのそれぞれに対して、以下の処理を施した。高炉徐冷スラグを容器に入れ、容器内に均等に広げ、3段の棚を有する密閉できる試験槽の下側2段に設置した。その後、濃度99.9体積%以上のCOを注入したポリエチレン袋(CO透過率:20~30g/m・24h・1atm)を槽内の最上段に設置し、槽を密閉して49日間放置することによって、高炉徐冷スラグにCOを吸着吸収させた。層内のCO濃度は2000ppm(0.2体積%)以上であった。
【0079】
<CO吸着による質量増加挙動>
上記方法で、ブレーン比表面積が3600cm/gである高炉徐冷スラグに対して49日間COを吸着させたときの、高炉徐冷スラグの質量増加率({(各時点での高炉徐冷スラグの質量-CO吸着前の高炉徐冷スラグの質量)/CO吸着前の高炉徐冷スラグの質量}×100)の推移を図2に示す。図2のとおり、質量増加率は、30日程度で一定の値となった。ブレーン比表面積が2000、5000、及び8000cm/gである高炉徐冷スラグについても同様に、質量増加率は、30日程度で一定の値となった。
【0080】
<CO吸着量の熱重量分析>
上記方法でCOを吸着させた後の、ブレーン比表面積が2000、3600、5000、及び8000cm/gである高炉徐冷スラグについて、窒素雰囲気下(流量:100ml/分)で昇温速度10℃/分かつ測定温度範囲20~1000℃の条件で熱重量分析(TG-DTA測定)を行った。得られた熱減量曲線において、590~800℃の範囲での質量減少量を求めた。結果を表3に示す。
【0081】
<無機体炭素量の分析>
上記方法でCOを吸着させた後の、ブレーン比表面積が2000、3600、5000、及び8000cm/gである高炉徐冷スラグについて、固体試料燃焼装置を備えた全有機体炭素計(島津製作所製、商品名「TOC-L型、SSM-5000A型」)を用いて無機体炭素量を求めた。より詳細には、高炉徐冷スラグに対して、上澄み液のpHが3以下となるまでリン酸を加えて混合した。得られた混合物を200℃で加熱することによってCOを遊離させ、NDIR検出器によって無機体炭素量を測定し、測定に用いた高炉徐冷スラグの質量を基準とする無機体炭素量を算出した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
[セメント組成物及びセメントミルクの製造]
表4及び表5に示す各成分からなるセメント組成物(比較例1-1~1-4、参考例1-1~1-3、及び実施例1-1~1-4に係るセメント組成物)を製造した。各成分の配合比は表4及び表5に示すとおりである。表4及び表5中の「-」は、該当する成分を配合しなかったことを示す。また、各セメント組成物100質量部に対して、それぞれ50質量部の水を添加し、スリーワンモーター BL1200(タービン羽根付き)を用いて、回転数800rpmで2分間練り混ぜることによって、比較例1-1~1-4、参考例1-1~1-3、及び実施例1-1~1-4に係るセメントミルクを調製した。
【0084】
[評価]
製造したセメントミルク及びセメント組成物について、以下の試験を行い、各試験での評価値を求めた。結果を表4及び表5に示す。また、参考のため、表6に各評価値の好適範囲を示す。
【0085】
<粘度>
セメントミルクの製造直後(製造後60秒以内)の粘度を、B型回転式粘度計(BROOK FIELD社製、商品名「LVDV-A」)を用いて測定した。測定は、室温20℃の環境下で行った。
【0086】
<Pロート流下時間>
JSCE-F521-1999「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」に準拠して、セメントミルクのPロート流下時間を測定した。測定は、室温20℃の環境下で行った。
【0087】
<ブリーディング率>
容量が1000mLであり、水密で強固な容器(アズワン株式会社製、商品名「ディスポカップ(ブロー成形) 1000mL」)を準備した。20±3℃の環境下で、以下の試験を行った。準備した容器に、セメントミルクを1000mLのラインまで流し込み、試料の表面が平滑になるように容器を軽く叩いた。次に、試料を入れた容器を振動しないような水平な台の上に置き、プラスチック板で蓋をした。試験中、水を吸い取るときを除き、常に蓋をしておいた。セメントミルク製造時の注水時刻から3時間経過後に、試料表面に浸み出した水を吸い取った。メスシリンダーを用いて、吸い取った水の量(ブリーディング水量)を1mL単位で測定した。以上の試験の結果に基づいて、下記式によって、ブリーディング率を算出した。なお、少数第3位を四捨五入し、小数点以下2桁までの値を求めた。
ブリーディング率(体積%)
=(ブリーディング水量(mL)/1000mL)×100
【0088】
<凝結時間>
JIS R 5201:2015 9.4.3「凝結の始発及び終結の測定」に準じて、凝結時間(始発及び終結)を求めた。ただし、測定の間隔は10分単位とした。
【0089】
<硬化体の圧縮強さ及び曲げ強さ>
供試体作製時のモルタルとして、所定のモルタルに変えて上記セメントミルクを使用して、JIS R 5201:2015に準じて、4cm×4cm×16cmの供試体を作製した。ただし、供試体はセメントミルクを流し込みで作製し翌日脱型、材齢7日まで水中養生し、材齢7日の供試体(硬化体)の圧縮強さ及び曲げ強さを求めた。試験は、室温20℃の環境下で行った。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
表5に示されるとおり、実施例1-1~1-4で調整したセメントミルクは、いずれも、半たわみ性舗装の形成に適する粘度及び硬化体の圧縮強さを発揮することが確認された。なお、評価値が表6に示す好適範囲内である場合、半たわみ性舗装の形成に特に適したセメントミルクといえる。
図1
図2