IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 熊本大学の特許一覧 ▶ 公立大学法人会津大学の特許一覧

特開2024-145839判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム
<>
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図1
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図2
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図3
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図4
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図5
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図6
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図7
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図8
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図9
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図10
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図11
  • 特開-判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145839
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241004BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058366
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】安村 明
(72)【発明者】
【氏名】惠 明子
(72)【発明者】
【氏名】慎 重弼
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】精神疾患の種別をより正しく判別することを可能にすること。
【解決手段】被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置と、対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える判定支援システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置と、
対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える判定支援システム。
【請求項2】
前記正解情報は、ADHD患者であるか否かを示す情報と、ASD患者であるか否かを示す情報と、を有する、請求項1に記載の判定支援システム。
【請求項3】
前記学習処理は、前記被験者が前記ペン状の物体を用いている間の前記被験者の脳活動を示す参照脳活動情報をさらに用いて実行され、
前記推定部は、前記対象者が前記ペンタブレットを操作している間の前記対象者の脳活動を示す脳活動情報をさらに取得し、前記筆記情報と前記脳活動情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者が健常者と精神疾患患者とのどちらであるかを推定する、請求項1に記載の判定支援システム。
【請求項4】
前記参照脳活動情報及び前記脳活動情報は、それぞれ被験者及び対象者の前頭葉及び頭頂葉の脳活動を示す情報である、請求項2に記載の判定支援システム。
【請求項5】
前記脳活動情報は、酸素量を示す情報である、請求項4に記載の判定支援システム。
【請求項6】
前記参照軌跡情報及び前記軌跡情報は、筆記を行った時間、筆記の圧力、筆記を生じさせる際の前記ペン状の物体及び前記ペンの傾き、のうち少なくともいずれか一つを含む請求項5に記載の判定支援システム。
【請求項7】
被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置を備える判定支援装置が、
対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果を出力する出力ステップと、を備える判定支援方法。
【請求項8】
被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置と、
対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える判定支援システムとしてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定支援システム、判定支援方法及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
神経発達障害群(以下「発達障害」という。)は、発達期に発症する一群の疾患であり、早期から発達段階に応じた一貫した支援を行うことが重要であり、早期発見の必要性はきわめて高い。このような要望に対し、例えば注意欠陥・多動性障害(ADHD)児の重症度について、脳機能計測法を用いて定量化する手法が考案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6128651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発達障害には、いくつかの種別が存在する。そのうちの一つは、上述したADHDであり、他の種別として自閉症スペクトラム障害(ASD)もある。例えば、ADHDとASDとでは、中核症状や介入方法が全く異なるため、これらを正しく判別することが重要である。しかしながら、これらは主観的には同じ発達障害として混同されやすく、正しく判別することが困難であった。発達障害の種別を分類することが困難であった。このような問題は、発達障害のみならず、精神疾患全般に共通する問題であった。すなわち、精神疾患には上述した発達障害に加えて、うつ病や双極性障害などがあり、これらの種別を分類することが困難であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、精神疾患の種別をより正しく判別することを可能にする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置と、対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える判定支援システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の判定支援システムであって、前記正解情報は、ADHD患者であるか否かを示す情報と、ASD患者であるか否かを示す情報と、を有する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の判定支援システムであって、前記学習処理は、前記被験者が前記ペン状の物体を用いている間の前記被験者の脳活動を示す参照脳活動情報をさらに用いて実行され、前記推定部は、前記対象者が前記ペンタブレットを操作している間の前記対象者の脳活動を示す脳活動情報をさらに取得し、前記筆記情報と前記脳活動情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者が健常者と精神疾患患者とのどちらであるかを推定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の判定支援システムであって、前記参照脳活動情報及び前記脳活動情報は、それぞれ被験者及び対象者の前頭葉及び頭頂葉の脳活動を示す情報である。
【0010】
本発明の一態様は、上記の判定支援システムであって、前記脳活動情報は、酸素量を示す情報である。
【0011】
本発明の一態様は、上記の判定支援システムであって、前記参照軌跡情報及び前記軌跡情報は、軌跡を生じさせている時間、軌跡を生じさせる際の圧力、軌跡を生じさせる際の前記ペン状の物体及び前記ペンの傾き、のうち少なくともいずれか一つを含む。
【0012】
本発明の一態様は、被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置を備える判定支援装置が、対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定ステップと、前記判定ステップにおける判定結果を出力する出力ステップと、を備える推定支援方法である。
【0013】
本発明の一態様は、被験者がそれぞれペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報と、前記被験者の精神疾患の種別を示す正解情報と、を複数用いて学習処理を行うことによって得られた学習済モデルを記憶する記憶装置と、対象者がペン状の物体を用いて筆記を行った際の筆記に関する情報を示す筆記情報を取得し、前記筆記情報と前記学習済モデルとを用いて、前記対象者の精神疾患の種別を判定する判定部と、前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える推定支援システムとしてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、撮像された画像において、精神疾患の種別をより正しく判別することを可能にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の判定支援システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
図2】端末装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図3】入力部12に用いられる入力装置の具体例を示す図である。
図4】筆記情報の具体例を示す図である。
図5】学習装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図6】学習装置20の処理の具体例を示すフローチャートである。
図7】判定支援装置30の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図8】判定支援装置30の処理の具体例を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に適用される情報処理装置90のハードウェア構成例の概略を示す図である。
図10】判定支援装置30の変形例を示す図である。
図11】判定支援装置30の変形例を示す図である。
図12】判定支援システム100の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の判定支援システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。判定支援システム100は、判定対象の人物(以下「対象人物」という。)の筆記動作に関する情報(以下「筆記情報」という。)に基づいて、対象人物の精神疾患の種別を判定する際に使用される。より具体的には、対象人物の発達障害の種別を判定する際に使用されてもよい。判定支援システム100は、このような判定を判定者が行うことを支援する。判定支援システム100は、このような判定そのものを行ってもよい。以下、このような判定を行うための操作をする者をユーザーと呼ぶ。対象人物の筆記情報は、過去に対象人物が筆記動作を行った際に取得された情報であってもよいし、判定する際に新たに取得される情報であってもよい。以下の説明では、判定する際に端末装置10において新たに筆記情報が取得される構成について主に説明する。
【0017】
判定支援システム100は、端末装置10と学習装置20と判定支援装置30とを含む。端末装置10と判定支援装置30とは、ネットワーク70を介して通信可能に接続される。学習装置20と判定支援装置30とは、ネットワーク70を介して通信可能に接続されもよい。ネットワーク70は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク70は、例えばインターネットを用いて構成されてもよいし、ローカルエリアネットワーク(LAN)を用いて構成されてもよい。ネットワーク70は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。
【0018】
図2は、端末装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。端末装置10は、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、専用機器などの情報機器を用いて構成される。端末装置10は、通信部11、入力部12、出力部13、記憶部14及び制御部15を備える。
【0019】
通信部11は、通信機器である。通信部11は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部11は、制御部15の制御に応じて、ネットワーク70を介して他の装置とデータ通信する。通信部11は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0020】
入力部12は、ペンタブレットやタッチパネル等のように、ペン型入力器具121を用いて筆記動作を行いながら入力することが可能な入力装置を用いて構成される。入力部12は、ユーザーの指示を端末装置10に入力する際にユーザーによって操作される。また、入力部12は、ユーザーの筆記情報を取得する際にユーザーによって操作される。入力部12は、ペンタブレットやタッチパネル等の入力装置を端末装置10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、入力部12は、入力装置においてユーザーの入力に応じ生成された入力信号を端末装置10に入力する。
【0021】
図3は、入力部12に用いられる入力装置の具体例を示す図である。図3では、入力部12に用いられる入力装置の具体例としてタッチパネルが用いられている。タッチパネルには、手本となる画像81と、入力領域の枠を示す枠82と、が表示されてもよい。このような表示において、ユーザーは対象人物に対し、画像81と同じ線を枠82の内側にペン型入力器具121を用いて記入するように促す。対象人物が枠82の内側にペン型入力器具121を用いて線を描いている間、入力部12及びペン型入力器具121は、対象人物の筆記情報を取得する。
【0022】
図4は、筆記情報の具体例を示す図である。入力部12及びペン型入力器具121は、入力位置(x-y coordinates)、筆圧(Pen pressure p)、ペン水平傾斜(Pen direction θ)、ペン垂直傾斜(Pen altitude φ)、入力経過時間(Elapsed time t)を所定の周期(例えば10回/秒、20回/秒など)で繰り返し取得し、これらの時系列情報を筆記情報として、取得してもよい。入力位置は、ペン型入力器具121の先端部分がタッチパネルに触れた位置を示す。入力位置は、タッチパネル上の座標系で示されてもよい。タッチパネル上の座標系は、例えばタッチパネルの左下の端を原点とし、右方向にx軸が伸び、上方向にy軸が伸びるような平面座標の座標系であってもよい。
【0023】
筆圧は、ペン型入力器具121の先端部分がタッチパネルに触れた位置において、タッチパネルがペン型入力器具121から受ける圧力を示してもよい。ペン水平傾斜は、水平面においてペン型入力器具121が傾斜している角度を示す。ペン水平傾斜は、例えばペン型入力器具121をタッチパネルの平面上に射影したときに、その射影の像の中心線と所定の軸とが形成する角度を示してもよい。辺水平傾斜は、例えば上述した中心線とy軸とが形成する角度であってもよい。この角度はy軸から時計回りに進む角度として表されてもよい。
【0024】
ペン垂直傾斜は、ペン型入力器具121の中心線と、ペン型入力器具121をタッチパネルの平面上に射影した像の中心線と、が形成する角度を示す。入力経過時間は、ペン型入力器具121を用いた入力が開始されてから経過した時間を示す。
【0025】
上述した情報は、筆記情報の具体例に過ぎない。上述した情報とは異なる情報が筆記情報として取得されてもよい。取得された筆記情報は、制御部15に出力される。制御部15は、通信部11を用いてネットワーク70を介して筆記情報を判定支援装置30に送信する。
【0026】
出力部13は、情報をユーザーが認知可能な形で出力する。出力部13は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置であってもよい。出力部13は、画像表示装置を端末装置10に接続するためのインターフェースであっても良い。この場合、出力部13は、画像データを表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。出力部13は、スピーカー等の音響を出力する装置であってもよい。出力部13は、スピーカーやヘッドホン等の音響出力装置を端末装置10に接続するためのインターフェースであってもよい。この場合、出力部13は、音響データを再生するための音響信号を生成し、自身に接続されている音響出力装置に音響信号を出力する。なお、出力部13は、入力部12と一体のタッチパネルとして構成されてもよい。図3に示される態様では、出力部13はタッチパネルとして構成されている。この場合も、出力部13は、タッチパネルとは異なる態様の装置(例えばスピーカー)として端末装置10に備えられてもよい。
【0027】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部14は、制御部15によって使用されるデータを記憶する。記憶部14は、制御部15が処理を行う際に必要となるデータを記憶する。
【0028】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリー(主記憶装置)とを用いて構成される。制御部15は、プロセッサーがプログラムを実行することによって機能する。なお、制御部15の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0029】
制御部15は、例えば自装置(端末装置10)にインストールされたアプリケーションを実行してもよい。このようなアプリケーションの具体例として、判定支援システム100の専用アプリケーションとして端末装置10に提供されるアプリケーションがある。このようなアプリケーションの他の具体例として、WEBブラウザーのアプリケーションがある。このようなアプリケーションは、予め端末装置10にインストールされていてもよいし、判定処理を実行する際にその都度ダウンロードされてもよい。例えばWEBブラウザーのアプリケーションとして実装される場合には、特定のWEBサーバーに端末装置10が接続することに応じてWEBサーバーによって指定された装置(例えばWEBサーバーそのものでもよいし他のサーバーでもよい)から端末装置10がアプリケーションをダウンロードして実行してもよい。制御部15は、実行中のアプリケーションのプログラムにしたがって動作する。
【0030】
制御部15は、ユーザーの操作や判定支援装置30から受信される情報に応じて端末装置10を制御する。例えば、制御部15は、対象人物やユーザーが入力部12を操作することによって入力された情報を、通信部11を用いることによって判定支援装置30へ送信する。例えば、制御部15は、対象人物がペン型入力器具121を用いて入力部12(例えばタッチパネル)に筆記する際に、筆記情報を取得し、取得された筆記情報を判定支援装置30へ送信する。例えば、制御部15は、判定支援装置30から送信された情報がネットワーク70を介して通信部11で受信されると、受信された情報に基づいて画面データを生成し、出力部13に画面データを表示させる。このような画面データには、判定支援装置30から送信された画像や文字が含まれる。例えば、制御部15は、判定支援装置30から送信された情報がネットワーク70を介して通信部11で受信されると、受信された情報に基づいて音声データを生成し、出力部13から音声データを出力させる。
【0031】
図5は、学習装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。学習装置20は、例えばパーソナルコンピューターやサーバー装置などの情報処理装置を用いて構成される。学習装置20は、通信部21、記憶部22及び制御部23を備える。
【0032】
通信部21は、通信機器である。通信部21は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部21は、制御部23の制御に応じて、ネットワーク70を介して他の装置とデータ通信する。通信部21は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0033】
記憶部22は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部22は、制御部23によって使用されるデータを記憶する。記憶部22は、例えば教師データ記憶部221、前処理済教師データ記憶部222及び学習済モデル記憶部223として機能してもよい。
【0034】
教師データ記憶部221は、学習装置20において実行される学習処理に用いられる教師データを記憶する。教師データ記憶部221が記憶する教師データは、過去に複数の人物によって筆記が行われた結果得られた筆記情報と、各筆記情報に関してその筆記を行った人物に関するラベル情報と、を含む。ラベル情報は、その人物の精神疾患の種別に関する情報を含む。以下の説明では、精神疾患の具体例として、発達障害を例にとって説明する。教師データにおいて発達障害を患っていない人物の筆記情報が含まれている場合には、その筆記情報のラベルには発達障害の種別として発達障害を患っていないことを示す値が与えられる。発達障害の種別として、例えばADHDとASDとがある。
【0035】
前処理済教師データ記憶部222は、前処理済教師データを記憶する。前処理済教師データは、筆記情報に対して前処理制御部232が前処理を実行することによって得られる情報を記憶する。前処理は、例えば筆記特徴情報を取得する処理であってもよい。この場合、前処理済教師データは、筆記特徴情報と、各筆記特徴情報を取得する際に使用された筆記情報に対応するラベル情報と、を含む。
【0036】
筆記特徴情報は、筆記動作の特徴量に関する情報である。以下、筆記特徴情報の具体例を列挙する。
・高さ:y座標の最大値とy座標の最小値との差
・速度:筆記された線の長さ/その線を筆記するのに要した時間
・PIAL:線を筆記する際の最小の加速度
・GAMW:ペン垂直傾斜の平均値
・GAML:ペン水平傾斜の平均値
・GASDW:ペン垂直傾斜の標準偏差
・GASDL:ペン水平傾斜の標準偏差
・平均筆圧:筆圧の平均値
・SD筆圧:筆圧の標準偏差
・PSMax:所定時間内の筆圧の最大増加量
・PSMin:所定時間内の筆圧の最大減少量
上述したもの以外の筆記特徴情報が取得されてもよい。上述した筆記特徴情報のうち、一部の情報のみが前処理済教師データとして用いられてもよい。
【0037】
学習済モデル記憶部223は、教師データ記憶部221に記憶されている教師データや前処理済教師データ記憶部222に記憶される前処理済教師データを用いた学習処理によって得られる学習済モデルを記憶する。
【0038】
制御部23は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部23は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報制御部231、前処理制御部232及び学習制御部233として機能する。なお、制御部23の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0039】
情報制御部231は、情報の入出力を制御する。例えば、情報制御部231は、他の機器(情報処理装置や記憶媒体)から教師データを取得し、教師データ記憶部221に記録する。例えば、情報制御部231は、学習済モデル記憶部223に記憶されている学習済モデルを、他の装置(例えば判定支援装置30)に対して送信する。
【0040】
前処理制御部232は、教師データに対して所定の前処理を実行することによって、前処理済教師データを生成する。前処理制御部232は、例えば筆記情報に基づいて所定の演算を行うことによって筆記特徴情報を取得し前処理済教師データを生成してもよい。具体的には例えば以下のように実行されてもよい。まず、前処理制御部232は、筆記情報のうち時系列の最初の入力位置から順に入力位置をつなぐことで、筆記された線の形状を再現する。このような再現において用いられた入力座標のうち、y座標の最大値とy座標の最小値との差を算出することによって、“高さ”の値が得られる。また、このように再現された線の長さを算出し、再現において用いられた時系列の最初と最後の筆記情報の時間差で除算することによって、“速度”の値が得られる。各入力位置における速度の値に基づいて各入力位置における加速度を算出することで、“PIAL”の値が得られる。その他の平均値や標準偏差は、それぞれ筆記情報の各値の統計値を算出することによって得られる。
【0041】
学習制御部233は、前処理済教師データ記憶部222に記憶されている前処理済教師データを用いて学習処理を実行する。このような学習処理の具体例として、例えば、サポートベクトルマシンやランダムフォレストやニューラルネットワーク等の分類のための教師あり学習が用いられてもよい。学習制御部233は、例えば教師あり学習を行うことによって、入力される筆記特徴情報に基づいてその人物の発達障害の種別を出力するための学習済モデルを生成する。学習制御部233は、生成された学習済モデルを学習済モデル記憶部223に記録する。学習制御部233によって得られた学習済モデルは、判定支援装置30に対して送信され、判定支援装置30の学習済モデル記憶部321に記録されてもよい。このような学習済モデルは、入力として筆記特徴情報を与えることによって、出力としてその人物の発達障害の種別を示す値を得ることが可能である。
【0042】
図6は、学習装置20の処理の具体例を示すフローチャートである。まず、情報制御部231は教師データを取得する(ステップS101)。教師データは、例えばユーザーによって入力されてもよいし、他の情報機器から通信によって取得されてもよいし、学習装置20に接続された記録媒体から取得されてもよい。前処理制御部232は、教師データに対して所定の前処理を実行する(ステップS102)。学習制御部233は、前処理済教師データを用いて学習処理を実行し、学習済モデルを学習済モデル記憶部223に記録する(ステップS103)。
【0043】
図7は、判定支援装置30の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。判定支援装置30は、例えばパーソナルコンピューターやサーバー装置などの情報処理装置を用いて構成される。判定支援装置30は、通信部31、記憶部32及び制御部33を備える。
【0044】
通信部31は、通信機器である。通信部31は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部31は、制御部33の制御に応じて、ネットワーク70を介して他の装置とデータ通信する。通信部31は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0045】
記憶部32は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部32は、制御部33によって使用されるデータを記憶する。記憶部32は、例えば学習済モデル記憶部321として機能してもよい。
【0046】
学習済モデル記憶部321は、予め学習処理によって生成された学習済モデルの情報を記憶する。このような学習処理は、例えば他の装置(例えば学習装置20)によって実行されてもよいし、自装置(判定支援装置30)によって実行されてもよい。
【0047】
制御部33は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部33は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報制御部331、前処理制御部332及び判定部333として機能する。なお、制御部33の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0048】
情報制御部331は、端末装置10等の他の装置から対象人物の筆記情報を取得する。
【0049】
情報制御部331は、判定部333によって得られた判定結果を示す情報を、端末装置10等の他の装置に対して情報を送信する。このような情報制御部331による他の装置との間の情報のやりとりは、例えば通信部31による通信によって行われてもよい。
【0050】
前処理制御部332は、情報制御部331によって取得された対象人物の筆記情報に対して所定の前処理を実行することで筆記特徴情報を取得する。前処理制御部332が実行する前処理は、判定部333によって使用される学習済モデルを生成する際の前処理と同様の処理である。すなわち、前処理制御部332が対象人物の筆記情報に対して行う処理は、前処理制御部232が対象人物の筆記情報に対して行う処理と同じである。前処理制御部332は、このような前処理を行うことによって筆記特徴情報を取得する。
【0051】
判定部333は、学習済モデル記憶部321に記憶される学習済モデルと、筆記特徴情報と、を用いて判定処理を行う。判定処理によって、対象人物の精神疾患の種別が判定される。本実施形態では、判定部333は、対象人物の発達障害の種別を判定する。判定部333は、少なくとも対象人物の発達障害の種別に関する判定結果を出力する。
【0052】
図8は、判定支援装置30の処理の具体例を示すフローチャートである。まず、情報制御部331は端末装置10から対象人物の筆記情報を取得する(ステップS201)。前処理制御部332は、対象人物の筆記情報に対して前処理を行うことによって筆記特徴情報を取得する(ステップS202)。判定部333は、少なくとも筆記特徴情報を用いて判定処理を行う(ステップS203)。判定部333は、判定結果を示す情報を端末装置10に送信する(ステップS204)。
【0053】
このように構成された判定支援システム100では、対象人物の筆記情報を用いることによって対象人物の発達障害の種別をより精度良く判定することが可能となる。具体的には以下の通りである。判定支援システム100では、複数の人物の筆記情報を用いて生成された複数の筆記特徴情報を用いて学習処理が実行され、学習済モデルが得られる。そして、判定支援システム100では、判定対象となる新たな人物の筆記情報が取得され、それに基づいて前処理が実行されて筆記特徴情報が取得される。筆記特徴情報は精神疾患(例えば発達障害)の種別に対して相関を有している。
【0054】
例えば、ASDの人物においては、十分に自動化された運動計画や細部への優位な知覚処理を有していることが多い。そのため、このような特性に応じて筆記特徴情報に特徴が現れて、より高い相関が生じると考えられる。例えば、ADHDの人物においては注意の持続を苦手とする傾向がある。そのため、このような特性に応じて、例えば注意を持続できないことで筆圧が不安定になるなどの特徴が筆記特徴情報に現れて、より高い相関が生じると考えられる。そのため、筆記特徴情報を用いて精神疾患(例えば発達障害)の種別を判定することによって、より精度よく精神疾患(例えば)発達障害の種別を判定することが可能となる。ASDに関しては、上記理由により、動きの速さに関する特徴量(例えば速度)を用いることによってより正確に判定することができる。例えばADHDに関しては上記理由により、例えば筆圧の変化に関する特徴量(例えばSD筆圧、PSMax、PSMin等)を用いることによってより正確に判定することができる。なお、種別の判定においては、各種別の疾患についての重症度が判定されてもよい。すなわち、単に1か0かのように疾患の種別が判定されるのではなく、対象者人物の罹患の程度(重症度)を表す数値が精神疾患の種別毎に得られてもよい。
【0055】
図9は、本実施形態に適用される情報処理装置90のハードウェア構成例の概略を示す図である。情報処理装置90は、プロセッサー91、主記憶装置92、通信インターフェース93、補助記憶装置94、入出力インターフェース95及び内部バス96を備える。プロセッサー91、主記憶装置92、通信インターフェース93、補助記憶装置94及び入出力インターフェース95は、内部バス96を介して互いに通信可能に接続される。情報処理装置90は、例えば学習装置20及び判定支援装置30に適用されてもよい。この場合、例えば通信部21及び通信部31は通信インターフェース93を用いて構成されてもよい。例えば記憶部22及び記憶部32は補助記憶装置94を用いて構成されてもよい。また、制御部23及び制御部33は、プロセッサー91及び主記憶装置92を用いて構成されてもよい。
【0056】
(変形例)
本実施形態では、端末装置10と判定支援装置30とが異なる装置として構成されているが、一体の装置として構成されてもよい。図10は、このように構成された判定支援装置30の変形例を示す図である。図10に示される判定支援装置30は、入力部34、出力部35を備える。図10に示される判定支援装置30の入力部34、出力部35は、それぞれ端末装置10の入力部12、出力部13と同様に機能する。制御部33は、入力部34に対する操作に応じて動作し、入力された筆記情報を用いて判定処理を行い、出力部35を用いて情報を出力する。
【0057】
本実施形態では、学習装置20と判定支援装置30とが異なる装置として構成されているが、一体の装置として構成されてもよい。図11は、このように構成された判定支援装置30の変形例を示す図である。図11に示される判定支援装置30の記憶部32は、教師データ記憶部322及び前処理済教師データ記憶部323としても機能する。図11に示される判定支援装置30の制御部33は、前処理制御部332及び学習制御部334としても機能する。教師データ記憶部322及び前処理済教師データ記憶部323は、それぞれ学習装置20の教師データ記憶部221及び前処理済教師データ記憶部222と同様に機能する。前処理制御部332は、判定支援装置30の前処理(対象人物の筆記情報に対する前処理)のみではなく、学習装置20の前処理(教師データの筆記情報に対する前処理)も実行する。学習制御部334は、学習装置20の学習制御部233と同様に機能する。
【0058】
学習装置20は、複数の情報処理装置を用いて実装されてもよい。例えば、クラウド等の装置を用いて学習装置20が実装されてもよい。例えば、学習装置20において、記憶部22と制御部23とがそれぞれ異なる情報処理装置に実装されてもよい。例えば、学習装置20の記憶部22が複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。判定支援装置30は、複数の情報処理装置を用いて実装されてもよい。例えば、クラウド等の装置を用いて判定支援装置30が実装されてもよい。例えば、判定支援装置30において、記憶部32と制御部33とがそれぞれ異なる情報処理装置に実装されてもよい。例えば、判定支援装置30の記憶部32が複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0059】
図12は、判定支援システム100の変形例を示す図である。図12に示されるように、脳機能測定機19がさらに判定支援システム100に用いられてもよい。脳機能測定機19は、対象人物の脳機能に関する情報を測定し判定支援装置30に送信する。脳機能に関する情報は、例えば対象人物の頭部の血流に関する情報であってもよい。この場合、学習済モデルの生成において、入力として脳機能に関する情報が用いられてもよい。脳機能に関する情報の具体例として、例えば脳の一部の活動を示す情報がある。脳の一部の具体例として、例えば前頭葉、頭頂葉、大脳基底核などがある。脳の一部として他の部位が用いられてもよい。脳機能に関する情報は、例えば酸素量に関する情報であってもよい。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
100…判定支援システム, 10…端末装置, 11…通信部, 12…入力部, 13…出力部, 14…記憶部, 15…制御部, 20…学習装置, 21…通信部, 22…記憶部, 221…教師データ記憶部, 222…前処理済教師データ記憶部, 223…学習済モデル記憶部, 23…制御部, 231…情報制御部, 232…前処理制御部, 233…学習制御部, 30…判定支援装置, 31…通信部, 32…記憶部, 321…学習済モデル記憶部, 33…制御部, 331…情報制御部, 332…前処理制御部, 333…判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12