(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145842
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】断熱材及び構造体
(51)【国際特許分類】
F16L 59/14 20060101AFI20241004BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16L59/14
F16L3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058376
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 美穂
【テーマコード(参考)】
3H023
3H036
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AB01
3H023AB04
3H023AB07
3H023AC21
3H023AC51
3H023AD27
3H023AD55
3H023AE07
3H036AA01
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
(57)【要約】
【課題】 配管を備える構造体において配管と外気との間の熱移動を抑制することができる断熱材を提供する。
【解決手段】 基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具とを備える構造体において、上記配管と前記固定具との間に配置される断熱材であって、上記断熱材は、空隙部と基材部とを含む弾性体層を含むことを特徴とする断熱材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体に配置された配管と、押圧により前記配管を前記基体に固定する固定具とを備える構造体において、前記配管と前記固定具との間に配置される断熱材であって、
前記断熱材は、空隙部と基材部とを含む弾性体層を含むことを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記弾性体層の厚さ方向に1000kPaの圧力をかけた際の空隙率が、圧力をかける前の空隙率の45~95%である請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含む請求項1に記載の断熱材。
【請求項4】
前記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項3に記載の断熱材。
【請求項6】
前記弾性体層は、フィラーを含む請求項3に記載の断熱材。
【請求項7】
前記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の断熱材。
【請求項8】
前記弾性体層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含む請求項3に記載の断熱材。
【請求項9】
前記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックスを水に分散させたエマルジョンを含む請求項8に記載の断熱材。
【請求項10】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項8に記載の断熱材。
【請求項11】
前記断熱材は、前記弾性体層の一方の主面に第1低熱伝導率層を備え、前記第1低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、前記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低い請求項1に記載の断熱材。
【請求項12】
前記第1低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項11に記載の断熱材。
【請求項13】
前記樹脂フィルムはフィラーを含む請求項12に記載の断熱材。
【請求項14】
前記断熱材は、前記弾性体層の他方の主面に第2低熱伝導率層を備え、前記第2低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、前記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低い請求項1に記載の断熱材。
【請求項15】
前記第2低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項14に記載の断熱材。
【請求項16】
前記樹脂フィルムはフィラーを含む請求項15に記載の断熱材。
【請求項17】
前記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下である請求項1に記載の断熱材。
【請求項18】
基体と、前記基体に配置された配管と、押圧により前記配管を前記基体に固定する固定具とを備える構造体において、前記配管と前記固定具との間に配置される断熱材であって、
前記断熱材は、樹脂含侵部と基材部とを含む樹脂含侵基材層を備えることを特徴とする断熱材。
【請求項19】
前記樹脂含侵基材層における樹脂含侵部の割合は、10~50%である請求項18に記載の断熱材。
【請求項20】
前記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含む請求項18に記載の断熱材。
【請求項21】
前記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項20に記載の断熱材。
【請求項22】
前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項20に記載の断熱材。
【請求項23】
前記樹脂含侵基材層は、フィラーを含む請求項20に記載の断熱材。
【請求項24】
前記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項23に記載の断熱材。
【請求項25】
前記樹脂含侵基材層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含む請求項18に記載の断熱材。
【請求項26】
前記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックスを水に分散させたエマルジョンを含む請求項25に記載の断熱材。
【請求項27】
前記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項25に記載の断熱材。
【請求項28】
前記樹脂含侵部を構成する含侵樹脂の熱伝導率は0.1W/mk以下である請求項18に記載の断熱材。
【請求項29】
前記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下である請求項18に記載の断熱材。
【請求項30】
基体と、
前記基体に配置された配管と、
押圧により前記配管を前記基体に固定する固定具と、
前記配管と前記固定具との間に配置された断熱材とを備える構造体であって、
前記断熱材は、請求項1~29のいずれかに記載の断熱材であることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体が流入する配管等の管体を躯体側に固定するために、クランプ等の管体支持具が用いられている。
管体支持具により固定された管体において、管体支持具と管体とが直接接触していると、管体に流体が流入する際の振動や、躯体の振動、管体支持具と管体の熱膨張差等により、管体支持具と管体とが擦れ、管体支持具及び管体が破損することがあった。
【0003】
このような管体支持具及び管体の破損を防止するために、特許文献1には、管体支持具と、管体との間に緩衝材を配置することが記載されている。
すなわち、特許文献1には、配管を躯体側に挟持状に保持するためのクランプ部の内面に、前記配管とクランプ部とのあいだに配されて配管の緩衝をするための緩衝材を一体に止着して形成したことを特徴とするクランプが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、低温流体輸送配管の外表面を被覆する保冷用の断熱材であって、前記断熱材が、硬質ウレタンフォームのスラブ成形品である基材と、前記基材の配管側となる内側面に形成された樹脂コーティング層(1)と、前記基材の前記樹脂コーティング層(1)とは反対側の外側面に形成された樹脂コーティング層(2)とを有する、低温流体輸送配管保冷用断熱材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-308048号公報
【特許文献2】特開2021-1659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、緩衝材の材料については特に開示されておらず、緩衝材の強度及び保持力の観点から改良の余地があった。
【0007】
また、特許文献2に開示されているように、低温流体輸送配管の外表面を断熱材で被覆する場合、低温における熱の移動は、熱伝導(固体伝導)が支配的になるので、固体伝導を低くすることが重要になる。空気と樹脂とを比較すると、樹脂の方が熱伝導率が高い。そのため、低温において樹脂フォームからなる断熱材では、空隙率が高い方が好ましい。
特許文献2に記載の断熱材のように、樹脂フォーム(硬質ウレタンフォーム)からなる断熱材を高い圧力で圧縮すると、気泡が潰れてしまい空隙率が低くなる。上記の通り、空気よりも樹脂の方が、熱伝導率が高いので、空隙率が低くなると断熱性能が低下する。
特に、特許文献2に記載の断熱材は、圧縮に対し変形しやすく、空隙率が低くなりやすい。
そのため、特許文献2に係る断熱材が圧縮される環境で使用されると、断熱性能が低くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、配管を備える構造体において配管と外気との間の熱移動を抑制することができる断熱材、及び、当該断熱材が用いられた構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の断熱材は、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を前記基体に固定する固定具とを備える構造体において、上記配管と上記固定具との間に配置される断熱材であって、上記断熱材は、空隙部と基材部とを含む弾性体層を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の断熱材では、弾性体層が空隙部を含む。つまり、弾性体層は空気を含んでいる。
空気は熱伝導率が低いので、本発明の断熱材において、弾性体層は断熱性能が高い。
特に、低温における熱の移動は、熱伝導(固体伝導)が支配的になるので、熱伝導率が低い空気を多く含む弾性体層を備える断熱材は、低温配管用の断熱材として優れた性能を示す。
【0011】
本発明の断熱材では、上記弾性体層の厚さ方向に1000kPaの圧力をかけた際の空隙率が、圧力をかける前の空隙率の45~95%であることが好ましい。
すなわち、このような構成を有する弾性体層は、押圧時の空隙率が高く、押圧時において空気を多く含んでいる。
そのため、構造体において配管と外気との間の熱移動を好適に抑制することができる。
【0012】
本発明の断熱材では、上記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含むことが好ましい。
【0013】
有機繊維及び/又は無機繊維には、圧力により曲げられたとしても元の形状に戻ろうとする形状維持力がある。
さらに、複数の繊維が集合すると繊維同士の接触部が生じる。そのため繊維が移動しようとする場合、当該接触部には摩擦力が生じる。
本発明の断熱材を構成する弾性体層が応力を受けると、応力により繊維が曲がったり、移動することにより弾性体層が変形する。
ただ、繊維自身の形状維持力、及び、接触部に生じる摩擦力により、当該応力に反発し弾性体層の形状を維持しようとする力も生じる。
そのため、上記弾性体層が応力を受けたとしても、繊維の形状及び位置は変わりにくい。つまり、上記弾性体層は、応力により変形しにくいと言える。
上記弾性体層が押圧を受けて圧縮される場合、上記弾性体層は変形しにくいので、繊維同士の間にある空気が抜けにくい。そのため、本発明の断熱材において弾性体層は、圧縮されたとしても断熱性能を維持することができる。
【0014】
また、本発明の断熱材において、上記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明の断熱材において、上記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機繊維及び無機繊維が上記材料からなると、繊維の強度が充分に高くなるので、これらの繊維を含む弾性体層がより変形しにくくなる。
【0015】
本発明の断熱材では、弾性体層はフィラーを含むことが好ましい。
フィラーは弾性体層の強度を向上させることができるので、フィラーを含む弾性体層は、変形しにくくなる。そのため、本発明の断熱材において、弾性体層が圧縮されたとしても断熱性能を維持することができる。また、フィラーとして熱伝導率の低いものを使用すると、より低い熱伝導率の弾性体層になる。
【0016】
また、本発明の断熱材において、上記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの材料は熱伝導率が低く、弾性体層の断熱性能を向上させることができる。
【0017】
本発明の断熱材では、上記弾性体層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含むことが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダは、弾性体層において有機繊維及び/又は無機繊維の移動を阻害し、弾性体層が変形することを防ぐことができる。そのため、本発明の断熱材において、弾性体層が圧縮されたとしても、断熱性能を維持することができる。
【0018】
また、本発明の断熱材において、上記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックス等を水に分散させたエマルジョンを含むことが好ましい。
また、本発明の断熱材において、上記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダがこれらの材料からなると、有機繊維及び/又は無機繊維を好適に接着することができ、弾性体層が変形することを防ぐことができる。
【0019】
本発明の断熱材では、上記弾性体層の一方の主面に第1低熱伝導率層を備え、上記第1低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、上記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低いことが好ましい。
断熱材がこのような第1低熱伝導率層を備えると断熱性がより向上する。
【0020】
本発明の断熱材では、上記第1低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
熱伝導率が低い材料で、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムを作製することにより、容易に、第1低熱伝導率層を作製することができる。
【0021】
本発明の断熱材では、上記樹脂フィルムはフィラーを含むことが好ましい。
熱伝導率が低いフィラーを含ませることで、容易に樹脂フィルムの熱伝導率を低くすることができる。
【0022】
本発明の断熱材では、上記弾性体層の他方の主面に第2低熱伝導率層を備え、上記第2低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、上記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低いことが好ましい。
断熱材がこのような第2低熱伝導率層を備えると断熱性がより向上する。
【0023】
本発明の断熱材では、上記第2低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
熱伝導率が低い材料で、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムを作製することにより、容易に、第2低熱伝導率層を作製することができる。
【0024】
本発明の断熱材では、上記樹脂フィルムはフィラーを含むことが好ましい。
熱伝導率が低いフィラーを含ませることで、容易に樹脂フィルムの熱伝導率を低くすることができる。
【0025】
本発明の断熱材では、上記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下であることが好ましい。
上記断熱材の厚さ方向の熱伝導率が上記範囲であると、配管と外気との間の熱の移動を好適に防ぐことができる。
【0026】
本発明の別の態様の断熱材では、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具とを備える構造体において、前記配管と前記固定具との間に配置される断熱材であって、上記断熱材は、樹脂含侵部と基材部とを含む樹脂含侵基材層を備えることを特徴とする。
樹脂含侵基材層の断熱性は、樹脂含侵部及び基材部の熱伝導率に依存するが、樹脂含侵部を構成する含侵樹脂として、熱伝導率が低いものを用いると、断熱性が高くなる。
また、樹脂含侵部があると、基材部を補強することができ、樹脂含侵基材層の強度が高くなる。
【0027】
本発明の別の態様の断熱材では、上記樹脂含侵基材層における樹脂含侵部の割合は、10~50%であることが好ましい。
樹脂含侵基材層における樹脂含侵部の割合が、10~50%である場合、樹脂含侵基材層において、樹脂含侵部の割合が高いことを意味する。
そのため、樹脂含侵部を構成する含侵樹脂として、熱伝導率が低いものを用いると、断熱性をより向上させることができる。
【0028】
本発明の別の態様の断熱材では、上記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含むことが好ましい。
樹脂含侵基材層は、基材部に含侵樹脂を含侵して作製される。
基材部が有機繊維及び/又は無機繊維を含む場合、基材部は繊維の集合体となり、空隙部の割合が高くなる。
このような繊維の集合体に、含侵樹脂は容易に含侵する。
つまり、基材部が有機繊維及び/又は無機繊維を含む場合、容易に樹脂含侵基材層を作製することができる。
【0029】
また、本発明の別の態様の断熱材において、上記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、本発明の別の態様の断熱材において、上記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機繊維及び無機繊維が上記材料からなると、繊維の強度が充分に高くなるので、これらの繊維から繊維の集合体を作製すると空隙率を高くすることができる。
そのため、このような繊維の集合体に含侵樹脂を含侵させた場合、樹脂含侵部の割合を高くすることができる。
【0030】
本発明の別の態様の断熱材では、上記樹脂含侵基材層は、フィラーを含むことが好ましい。
フィラーは樹脂含侵基材層の強度を向上させることができる。
【0031】
本発明の別の態様の断熱材では、上記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの材料は熱伝導率が低く、樹脂含侵基材層の断熱性能を向上させることができる。
【0032】
本発明の別の態様の断熱材では、上記樹脂含侵基材層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含むことが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダは、繊維の集合体において繊維同士の移動を阻害するので、繊維の集合体に圧力がかかったとしても、繊維の集合体は変形しにくくなる。つまり、繊維集合体の空隙率を高く維持することができる。
そのため、このような繊維の集合体に含侵樹脂を含侵させた場合、樹脂含侵部の割合を高くすることができる。
【0033】
また、本発明の別の態様の断熱材において、上記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックスを水に分散させたエマルジョンを含むことが好ましい。
また、本発明の別の態様の断熱材において、上記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダがこれらの材料からなると、有機繊維及び/又は無機繊維同士を好適に接着することができ、繊維集合体の空隙率を高く維持することができる。
そのため、このような繊維の集合体に含侵樹脂を含侵させた場合、樹脂含侵部の割合を高くすることができる。
【0034】
本発明の別の態様の断熱材では、上記樹脂含侵部を構成する含侵樹脂の熱伝導率は、0.1W/mk以下であることが好ましい。
含侵樹脂の熱伝導率がこの範囲であると、熱伝導率が充分に低く、本発明の別の態様の断熱材において断熱性能を向上させることができる。
【0035】
本発明の別の態様の断熱材では、前記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下であることが好ましい。
断熱材の厚さ方向の熱伝導率が上記範囲であると、配管と外気との間の熱の移動を好適に防ぐことができる。
【0036】
本発明の構造体は、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具と、上記配管と上記固定具との間に配置された断熱材とを備える構造体であって、上記断熱材は、上記本発明の断熱材又は上記本発明の別の態様の断熱材であることを特徴とする。
上記の通り、本発明の断熱材及び本発明の別の態様の断熱材は、断熱性能が高い。そのため、本発明の構造体において好適に配管の断熱性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、配管を備える構造体において、配管を備える構造体において配管と外気との間の熱移動を抑制することができる断熱材、及び、当該断熱材が用いられた構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の構造体について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0040】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る構造体について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
図2Bは、
図2Aの破線部の拡大図である。
【0041】
図1に示す構造体1は、基体10と、基体10に配置された配管20と、押圧により配管20を基体10に固定する固定具30と、配管20と固定具30との間に配置された断熱材40とを備える。
図2A及び
図2Bに示すように、断熱材40は、空隙部51と基材部52とを含む弾性体層50を備える。
【0042】
構造体1では、弾性体層50の厚さ方向に1000kPaの圧力をかけた際の空隙率が、圧力をかける前の空隙率の45~95%であることが好ましい。当該割合は、65~95%であることがより好ましく、85~95%であることがさらに好ましい。
すなわち、構造体1における弾性体層50は、押圧時の空隙率が高く、押圧時において空気を多く含んでいる。
空気は熱伝導率が低いので、構造体1における弾性体層50は断熱性能が高い。
特に、低温における熱の移動は、熱伝導(固体伝導)が支配的になるので、熱伝導率が低い空気を多く含む弾性体層50を備える構造体1は、低温配管用の構造体1として優れた性能を示す。
【0043】
なお、本明細書において、弾性体層50の空隙率は、弾性体層の重量と体積を測定して嵩密度を算出し、さらに100-(弾性体層の嵩密度/基材部の密度)×100の計算式により求めることができる。
【0044】
構造体1において、固定具30の断熱材40が固定されている状態において、弾性体層50の空隙率は、45~95%であることが好ましく、65~95%であることがより好ましい。
弾性体層50の空隙率が上記範囲であると、断熱材の断熱性能が充分に高くなる。
【0045】
構造体1において、固定具30から断熱材40が解放されている状態において、弾性体層50の空隙率は、80~99%であることが好ましく、90~99%であることがより好ましい。
【0046】
次に、構造体1に含まれる断熱材40について詳述する。なお、構造体1に用いられる断熱材40は、本発明の一態様である。
【0047】
上記の通り、断熱材40は、空隙部51と基材部52とを含む弾性体層50を備える。
また、
図2Bに示すように弾性体層50では、基材部52が、有機繊維52a及び無機繊維52bを含み、さらに弾性体層50は、フィラー53、並びに、有機バインダ及び無機バインダ(図示せず)を含んでいる。
【0048】
断熱材40を固定具30から解放した際の断熱材40の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下であることが好ましく、0.05W/mk以下であることがより好ましい。
断熱材40の厚さ方向の熱伝導率が上記範囲であると、配管20と外気との間の熱の移動を好適に防ぐことができる。
【0049】
弾性体層50は、有機繊維52a及び無機繊維52bを含んでいる。
有機繊維52a及び無機繊維52b(以下、総称して単に「繊維」とも記載する)には、圧力により曲げられたとしても元の形状に戻ろうとする形状維持力がある。
さらに、複数の繊維が集合すると繊維同士の接触部が生じる。そのため繊維が移動しようとする場合、当該接触部には摩擦力が生じる。
構造体1を構成する弾性体層50が応力を受けると、応力により繊維が曲がったり、移動することにより弾性体層50が変形する。
ただ、繊維自身の形状維持力、及び、接触部生じる摩擦力により、当該応力に反発し弾性体層50の形状を維持しようとする力も生じる。
そのため、弾性体層50が応力を受けたとしても、繊維の形状及び位置は変わりにくい。つまり、弾性体層50は、応力により変形しにくいと言える。
弾性体層50が押圧を受けて圧縮される場合、弾性体層50は変形しにくいので、繊維同士の間にある空気が抜けにくい。そのため、構造体1において弾性体層50は、圧縮されたとしても断熱性能を維持することができる。
【0050】
有機繊維52a及び無機繊維52bの平均繊維長は、0.1~150mmであることが望ましく、10~80mmであることがより好ましい。
有機繊維及び無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、有機繊維及び無機繊維の繊維長が短すぎるため、繊維同士の交絡が不充分となり、弾性体層の強度が得られにくくなり、弾性体層が変形しやすくなる。
有機繊維及び無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、繊維の繊維長が長すぎるため、弾性体層を構成する繊維本数が減少する。そのため緻密性が低下しやすくなる。
【0051】
有機繊維及び無機繊維の繊維長の測定は、ピンセットを使用して弾性体層から有機繊維及び無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。
本明細書において、平均繊維長とは、弾性体層から有機繊維及び無機繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均長さを意味する。
【0052】
有機繊維52a及び無機繊維52bの平均繊維径は、1~20μmであることが好ましく、2~15μmであることがより好ましく、3~10μmであることがさらに好ましい。
有機繊維及び無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、強度が弱く、衝撃等により有機繊維及び無機繊維が裁断されやすくなる。
有機繊維及び無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、繊維径が太すぎ有機繊維及び無機繊維自体のヤング率が高くなり弾性体層の柔軟性が低くなる。
【0053】
構造体1では、有機繊維52aは、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、構造体1では、無機繊維52bは、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機繊維52a及び無機繊維52bが上記材料からなると、繊維の強度が充分に高くなるので、これらの繊維を含む弾性体層50がより変形しにくくなる。
【0054】
なお、弾性体層50を構成する繊維は、アルミナ-シリカ繊維であることが好ましい。
弾性体層50を構成する繊維が、アルミナ-シリカ繊維である場合、アルミナとシリカの組成比は、重量比でアルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=60:40~98:2であることが好ましく、アルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=70:30~75:25であることがより好ましい。
アルミナ-シリカ繊維の結晶化率は0.1~80.0%であることが好ましい、0.5~10.0%がより望ましい。
【0055】
弾性体層50は、1種の繊維から構成されていてもよく、2種以上の繊維から構成されていてもよい。
【0056】
構造体1に配置される前の弾性体層50は、嵩密度が0.05~0.25g/cm3であることが好ましく、0.05~0.15g/cm3であることがより好ましい。
嵩密度が0.05g/cm3未満であると、繊維の絡み合いが弱く、弾性体層50の引張強度が小さい。また、繊維が剥離しやすくなるので、弾性体層50の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
嵩密度が0.25g/cm3を超えると、弾性体層50が硬くなり、巻き付け性が低下し、曲げた際に表面割れが生じやすくなる。
【0057】
弾性体層50は、フィラー53を含んでいる。
フィラー53は弾性体層50の強度を向上させることができるので、フィラー53を含む弾性体層50は、変形しにくくなる。そのため、弾性体層50が圧縮されたとしても断熱性能を維持することができる。また、フィラー53として熱伝導率の低いものを使用すると、より低い熱伝導率の弾性体層50になる。
【0058】
フィラー53は、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー及びシリカ中空フィラーのような無機中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーのような有機中空フィラーを含むことが好ましい。これらの中では、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラーのような無機中空フィラー及びフェノール中空フィラー、アクリル樹脂中空フィラーのような有機中空フィラーがより好ましい。
これらの材料は熱伝導率が低く、弾性体層50の断熱性能を向上させることができる。
【0059】
フィラー53の平均粒子径は、0.05~30μmであることが好ましく、0.065~20μmであることがより好ましい。
【0060】
弾性体層50において、フィラー53の含有量は、弾性体層50の全重量に対し10~50重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
フィラーの含有量が10重量%未満である場合、熱伝導率が下がりにくい。
フィラーの含有量が50重量%を超える場合、弾性体層が硬くなりすぎ、柔軟性が低下する。
【0061】
弾性体層50は、有機バインダ及び無機バインダを含む。
有機バインダ及び無機バインダは、弾性体層50において有機繊維52a及び無機繊維52bの移動を阻害し、弾性体層50が変形することを防ぐことができる。そのため、弾性体層50が圧縮されたとしても、断熱性能を維持することができる。
また、繊維が飛散することを防ぐことができる。
なお、本発明の構造体において、弾性体層は有機バインダ及び無機バインダを含まなくてもよい。
【0062】
また、上記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックス等を水に分散させたエマルジョンを含むことが好ましい。
また、上記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダがこれらの材料からなると、有機繊維52a及び無機繊維52bを好適に接着することができ、弾性体層50が変形することを防ぐことができる。
【0063】
弾性体層50において、有機バインダ及び無機バインダの合計含有量は、弾性体層50の有機繊維52a及び無機繊維52bの合計重量が100重量部に対して、0.11~30重量部であることが好ましい。
有機バインダ及び無機バインダの合計含有割合が、0.11重量部未満である場合、充分に繊維同士を接着しにくくなる。
有機バインダ及び無機バインダの合計含有量が、30重量部を超える場合、相対的に繊維の含有量が少なくなり、弾性体層が変形しやすくなる。
【0064】
弾性体層50は、ニードルパンチングマットであってもよく、抄造マットであってもよい。
弾性体層50が、ニードルパンチングマットであっても、抄造マットであっても上記効果を得ることができる。
【0065】
弾性体層50が、ニードルパンチングマットである場合、ニードルパンチングにより繊維を互いに交絡させることで、弾性体層50の引張強度を向上させることができる。
また、ニードルパンチングを行うことにより、有機バインダ及び無機バインダの量を減らすことができる。
【0066】
ニードルパンチングの密度は、特に限定されないが、2~50個/cm2であることが好ましい。
【0067】
次に、構造体1を構成する固定具30について説明する。
固定具30は、押圧により配管20を基体10に固定することができれば特に限定されないが、例えば、ボルト式固定具や、リベット式固定具、クリップ式固定具、トグル式固定部具であってもよい。
【0068】
固定具30を構成する材料は、特に限定されないが、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼等が挙げられる。
【0069】
次に、構造体1を構成する配管20について説明する。
配管20を構成する材料は、配管を通る流体により適宜決定することが好ましい。
【0070】
例えば、配管20にLNG、液体水素、液化窒素や液化酸素等の低温流体が通る場合には、配管20の材料は、アルミキルド鋼、ニッケル合金鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0071】
また、配管20に、高温ガスや、排気ガス等の高温流体が通る場合には、配管20の材料は、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼等が挙げられる。
【0072】
次に、構造体1を構成する基体10について説明する。
基体10は、配管20を配置できれば特に限定されないが、自動車等の移動体の筐体、機械の筐体、ガスタンクやオイルタンク等の構造物の外壁、建物の壁面、床面、天井及び屋根、ガスパイプライン等を配置するための支持体、並びに、地面であってもよい。
【0073】
特に、基体10は、自動車等の移動体の筐体や、機械の筐体等、振動を伴う基体であってもよい。
弾性体層50は、振動に起因する応力を吸収することができ、また、応力による変形も生じにくい。そのため、断熱材40は破損しにくく、脱落等も生じにくい。
【0074】
構造体1の配管20に流れる流体は、低温流体であってもよく、高温流体であってもよい。
高温流体としては、排気ガス等が挙げられる。
低温流体としては、動力部の燃料となるLNGや液体水素等が挙げられる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る構造体について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4は、本発明の第2実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【0076】
図3に示す構造体101は、上記構造体1における断熱材40が、
図4に示す断熱材140に置換されている以外、上記構造体1と同じ構成である。
すなわち、構造体101は、断熱材140が、配管20と、弾性体層150との間に第1低熱伝導率層160を備え、固定具30と、弾性体層150との間に第2低熱伝導率層170を備えている以外、上記構造体1と同じ構成である。なお、
図4に示す断熱材140は、
図4の下側が配管20に接触する側であり、上側が固定具30と接触する側である。
構造体101では、断熱材140を固定具30から解放した際の第1低熱伝導率層160の厚さ方向の熱伝導率は、断熱材140を固定具30から解放した際の弾性体層150の厚さ方向の熱伝導率よりも低い。また、断熱材140を固定具30から解放した際の第2低熱伝導率層170の厚さ方向の熱伝導率は、断熱材140を固定具30から解放した際の弾性体層150の厚さ方向の熱伝導率よりも低い。
【0077】
断熱材140が第1低熱伝導率層160を備えると、配管20と弾性体層150との間には、第1低熱伝導率層160が存在するので、配管20と弾性体層150との間の熱の移動を防ぎやすくなる。
また、断熱材140がこのような第2低熱伝導率層170を備えると、配管20と外気との間には、第2低熱伝導率層170とが存在するので、配管20と外気との間の熱の移動を防ぎやすくなる。
【0078】
なお、構造体101に用いられる断熱材140は、本発明の一態様である。
【0079】
弾性体層150の好ましい構成は、上記第1実施形態に係る構造体1における弾性体層50の好ましい構成と同じである。
【0080】
第1低熱伝導率層160及び第2低熱伝導率層170は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
熱伝導率が低い材料で、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムを作製することにより、容易に、第1低熱伝導率層160及び第2低熱伝導率層170を作製することができる。
【0081】
不織布としては有機繊維及び/又は無機繊維から構成されていてもよい。
有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0082】
樹脂含侵繊維層としては、上記不織布に樹脂を含侵させた層であることが好ましい。
含侵させる樹脂としては特に限定されないが、熱伝導率は0.1W/mk以下である樹脂が好ましい。
【0083】
また、樹脂フィルムとしては、熱伝導率は0.1W/mk以下である樹脂からなることが好ましい。
【0084】
また、樹脂フィルムはフィラーを含むことが好ましい。
熱伝導率が低いフィラーを含ませることで、容易に樹脂フィルムの熱伝導率を低くすることができる。
このようなフィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー及びシリカ中空フィラーのような無機中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーのような有機中空フィラーを含むことが好ましい。これらの中では、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラーのような無機中空フィラー及びフェノール中空フィラー、アクリル樹脂中空フィラーのような有機中空フィラーがより好ましい。
これらの材料は熱伝導率が低く、樹脂フィルムの断熱性能を向上させることができる。
【0085】
第1低熱伝導率層160及び第2低熱伝導率層170は、同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。
【0086】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る構造体について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6は、本発明の第3実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
【0087】
図5に示す構造体201は、上記構造体1における断熱材40が、断熱材240に置換されている以外は、上記構造体1と同じ構成である。
すなわち、構造体201では、配管20側(
図4における上側)から固定具30側(
図4に示す下側)にかけて、第1低熱伝導率層260、弾性体層250、第1低熱伝導率層260、弾性体層250、第2低熱伝導率層270、弾性体層250及び第2低熱伝導率層270が順に積層されて断熱材240が構成されている。
構造体201では、断熱材240を固定具30から解放した際の第1低熱伝導率層260の厚さ方向の熱伝導率は、断熱材240を固定具30から解放した際の弾性体層250の厚さ方向の熱伝導率よりも低い。また、断熱材240を固定具30から解放した際の第2低熱伝導率層270の厚さ方向の熱伝導率は、断熱材240を固定具30から解放した際の弾性体層250の厚さ方向の熱伝導率よりも低い。
【0088】
構造体201は、複数の第1低熱伝導率層60及び複数の第2低熱伝導率層70を備えるので、断熱材240の断熱性能が向上している。
【0089】
なお、弾性体層250、第1低熱伝導率層260及び第2低熱伝導率層270の好ましい構成は、上記第2実施形態に係る構造体101の弾性体層150、第1低熱伝導率層160及び第2低熱伝導率層170の好ましい構成と同じである。
【0090】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る構造体について説明する。
図7は、本発明の第4実施形態に係る構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る構造体に含まれる断熱材について、固定具に固定される前の状態の一例を示す断熱材の面方向に垂直な断面図である。
図8Bは、
図8Aの破線部の拡大図である。
【0091】
図7に示す構造体301は、基体10と、基体10に配置された配管20と、押圧により配管20を基体10に固定する固定具30と配管20と固定具30との間に配置された断熱材340とを備える。
つまり、断熱材40が、断熱材340に置換された以外は、上記本発明の第1実施形態に係る構造体1と同じ構成である。
【0092】
図8A及び
図8Bに示すように、断熱材340は、樹脂含侵部381と基材部382とを含む樹脂含侵基材層380を備える。
【0093】
樹脂含侵基材層380における樹脂含侵部381の割合は、10~50%であることが好ましく。10~30%であることがより好ましく、10~20%であることがさらに好ましい。
【0094】
樹脂含侵基材層380における樹脂含侵部381の割合が上記割合である場合、樹脂含侵部381を構成する含侵樹脂として、熱伝導率が低いものを用いると、配管20を好適に断熱することができる。
【0095】
なお、本明細書において、樹脂含侵部の割合は、以下の方法で測定することができる。
樹脂含侵基材層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影する。次に、200μm×250μmの視野の画像を二値化し、樹脂含侵部とそれ以外の部分を分ける。当該視野における全ピクセル数に占める樹脂含侵部を構成するピクセル数の割合を算出する。
別の視野で、同様の操作を5回繰り返し、得られた割合の平均値を、樹脂含侵基材層における樹脂含侵部の割合とする。
【0096】
次に、構造体301に含まれる断熱材340について詳述する。なお、構造体301に用いられる断熱材340は、本発明の一態様である。
【0097】
図8A及び
図8Bに示すように、断熱材340は、樹脂含侵部381と基材部382とを含む樹脂含侵基材層380を備える。
また、樹脂含侵基材層380、基材部382が、有機繊維382a及び無機繊維382bを含み、さらに樹脂含侵基材層380は、フィラー383、並びに、有機バインダ及び無機バインダ(図示せず)を含んでいる。
【0098】
断熱材340の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下であることが好ましく、0.05W/mk以下であることがより好ましい。
断熱材340の厚さ方向の熱伝導率が上記範囲であると、配管20と外気との間の熱の移動を好適に防ぐことができる。
【0099】
樹脂含侵部381を構成する含侵樹脂の熱伝導率は、熱伝導率は0.1W/mk以下であることが好ましい。
【0100】
樹脂含侵基材層380は、基材部382に含侵樹脂を含侵して作製される。
基材部382が有機繊維382a及び無機繊維382bを含む場合、含侵樹脂を含侵する前の基材部382は繊維の集合体となり、空隙部の割合が高くなる。
このような繊維の集合体に、含侵樹脂は容易に含侵する。
つまり、基材部382が有機繊維及び無機繊維を含む場合、容易に樹脂含侵部381を作製することができる。
【0101】
有機繊維382a及び無機繊維382bの好ましい構成は、上記第1実施形態に係る構造体1における有機繊維52a及び無機繊維52bの好ましい構成と同じである。
【0102】
樹脂含侵基材層380は、フィラー383を含んでいる。
フィラー383は樹脂含侵基材層380の強度を向上させることができる。
フィラー383の好ましい構成は、上記第1実施形態に係る構造体1におけるフィラー53の好ましい構成と同じである。
【0103】
樹脂含侵基材層380は、有機バインダ及び無機バインダを含む。
有機バインダ及び無機バインダは、繊維の集合体において繊維同士の移動を阻害するので、繊維の集合体に圧力がかかったとしても、繊維の集合体は変形しにくくなる。つまり、繊維集合体の空隙率を高く維持することができる。
そのため、このような繊維の集合体に含侵樹脂を含侵させた場合、樹脂含侵部381の割合を高くすることができる。
有機バインダ及び無機バインダの好ましい構成は、上記第1実施形態に係る構造体1における有機バインダ及び無機バインダの好ましい構成と同じである。
【0104】
断熱材340は、例えば、上記第1実施形態に係る断熱材を固定具に固定し、その後、第1実施形態に係る断熱材の弾性体層に含侵樹脂を含侵して樹脂含侵基材層380とすることにより、作製してもよい。
つまり、断熱材340は、弾性体層に圧力をかけた状態で、含侵樹脂を含侵させて作製してもよい。
また第1実施形態に係る断熱材の弾性体層に含侵樹脂を含侵してから、樹脂が含侵された断熱材を固定具に固定することにより、断熱材340を作製してもよい。
【0105】
(その他の実施形態)
本発明の第1実施形態~第3実施形態に係る構造体では、弾性体層を構成する基材部が有機繊維及び無機繊維であった。
しかし、本発明の構造体では、弾性体層の厚さ方向に1000kPaの圧力をかけた際の空隙率が、圧力をかける前の空隙率の45~95%であれば、基材部は他の材料からなっていてもよい。
このような材料としては、弾性セラミック材料や、硬質発泡樹脂等が挙げられる。
【0106】
本発明の第2実施形態に係る構造体101では、断熱材140が、第1低熱伝導率層160及び第2低熱伝導率層170の両方を備えていた。
しかし、本発明の構造体では、第1低熱伝導率層及び第2低熱伝導率層の内、いずれか1つのみを備えていてもよい。
【0107】
本発明の第3実施形態に係る構造体201では、断熱材240が、第1低熱伝導率層260、弾性体層250、第1低熱伝導率層260、弾性体層250、第2低熱伝導率層270、弾性体層250及び第2低熱伝導率層270が順に積層されて構成されていた。
しかし、本発明の構造体では、さらに多くの第1低熱伝導率層、弾性体層及び第2低熱伝導率層が積層されていてもよい。
【0108】
本明細書には以下の事項が記載されている。
【0109】
本開示(1)は、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具とを備える構造体において、上記配管と上記固定具との間に配置される断熱材であって、上記断熱材は、空隙部と基材部とを含む弾性体層を含むことを特徴とする断熱材である。
【0110】
本開示(2)は、上記弾性体層の厚さ方向に1000kPaの圧力をかけた際の空隙率が、圧力をかける前の空隙率の45~95%である本開示(1)に記載の断熱材である。
【0111】
本開示(3)は、上記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含む本開示(1)又は(2)に記載の断熱材である。
【0112】
本開示(4)は、上記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(3)に記載の断熱材である。
【0113】
本開示(5)は、上記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(3)又は(4)に記載の断熱材である。
【0114】
本開示(6)は、上記弾性体層は、フィラーを含む本開示(3)~(5)のいずれかに記載の断熱材である。
【0115】
本開示(7)は、上記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(6)に記載の断熱材である。
【0116】
本開示(8)は、上記弾性体層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含む本開示(3)~(7)のいずれかに記載の断熱材である。
【0117】
本開示(9)は、上記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックスを水に分散させたエマルジョンを含む本開示(8)に記載の断熱材である。
【0118】
本開示(10)は、上記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(8)又は(9)に記載の断熱材である。
【0119】
本開示(11)は、上記断熱材は、上記弾性体層の一方の主面に第1低熱伝導率層を備え、上記第1低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、上記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低い本開示(1)~(10)のいずれかに記載の断熱材である。
【0120】
本開示(12)は、上記第1低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種である本開示(11)に記載の断熱材である。
【0121】
本開示(13)は、上記樹脂フィルムはフィラーを含む本開示(12)に記載の断熱材である。
【0122】
本開示(14)は、上記断熱材は、上記弾性体層の他方の主面に第2低熱伝導率層を備え、上記第2低熱伝導率層の厚さ方向の熱伝導率は、上記弾性体層の厚さ方向の熱伝導率よりも低い本開示(1)~(13)のいずれかに記載の断熱材である。
【0123】
本開示(15)は、上記第2低熱伝導率層は、不織布、樹脂含侵繊維層及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種である本開示(14)に記載の断熱材である。
【0124】
本開示(16)は、上記樹脂フィルムはフィラーを含む本開示(15)に記載の断熱材である。
【0125】
本開示(17)は、上記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下である本開示(1)~(16)のいずれかに記載の断熱材である。
【0126】
本開示(18)は、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具とを備える構造体において、上記配管と上記固定具との間に配置される断熱材であって、上記断熱材は、樹脂含侵部と基材部とを含む樹脂含侵基材層を備えることを特徴とする断熱材である。
【0127】
本開示(19)は、上記樹脂含侵基材層における樹脂含侵部の割合は、10~50%である本開示(18)に記載の断熱材である。
【0128】
本開示(20)は、上記基材部は、有機繊維及び/又は無機繊維を含む本開示(18)に記載の断熱材である。
【0129】
本開示(21)は、上記有機繊維は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維、脂肪族ポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、再生ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリブチレンサクシネート繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(20)に記載の断熱材である。
【0130】
本開示(22)は、上記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、炭素繊維、バサルト繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(20)又は(21)に記載の断熱材である。
【0131】
本開示(23)は、上記樹脂含侵基材層は、フィラーを含む本開示(20)~(22)のいずれかに記載の断熱材である。
【0132】
本開示(24)は、上記フィラーは、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリカエアロゲル粉末、シラス中空フィラー、パーライト中空フィラー、シリカ中空フィラー、フェノール中空フィラー及びアクリル樹脂中空フィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(23)に記載の断熱材である。
【0133】
本開示(25)は、上記樹脂含侵基材層は、有機バインダ及び/又は無機バインダを含む本開示(18)~(24)のいずれかに記載の断熱材である。
【0134】
本開示(26)は、上記有機バインダは、アクリル系ラテックス及び/又はゴム系ラテックスを水に分散させたエマルジョンを含む本開示(25)に記載の断熱材である。
【0135】
本開示(27)は、上記無機バインダは、アルミナゾル、シリカゾル、及び、それらのコロイド分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含む本開示(25)又は(26)に記載の断熱材である。
【0136】
本開示(28)は、上記樹脂含侵部を構成する含侵樹脂の熱伝導率は0.1W/mk以下である本開示(18)~(27)のいずれかに記載の断熱材である。
【0137】
本開示(29)は、上記断熱材の厚さ方向の熱伝導率は、0.1W/mk以下である本開示(18)~(28)のいずれかに記載の断熱材である。
【0138】
本開示(30)は、基体と、上記基体に配置された配管と、押圧により上記配管を上記基体に固定する固定具と、上記配管と上記固定具との間に配置された断熱材とを備える構造体であって、上記断熱材は、本開示(1)~(29)のいずれかに記載の断熱材であることを特徴とする構造体である。
【実施例0139】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0140】
(実施例1)
塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法(紡糸雰囲気温度:120℃)により紡糸してアルミナ繊維前駆体を作製した。
【0141】
続いて、アルミナ繊維前駆体にニードルパンチング処理を行った。
その後、シート状物を焼成することにより、アルミナ繊維前駆体をアルミナ繊維に転換し坪量1500g/m2の無機繊維集合体のシートを得た。得られたアルミナ繊維の繊維径は5μmであった。
【0142】
続いて、無機繊維集合体のシートに有機バインダを付与して、乾燥し、厚み8.0mm、有機分1重量%の弾性体層を得た。
得られた弾性体層を縦×横=350mm×50mmに切断することにより実施例1に係る断熱材を製造した。
【0143】
(比較例1)及び(比較例2)
比較例1に係る断熱材として、縦×横=350mm×50mmのネオマフォーム(製品名:フェノールフォーム断熱材、販売元:旭化成株式会社)を準備した。
また、比較例2に係る断熱材として縦×横=350mm×50mmのエアロフレックス(製品名:EPDM発泡体、製造元:エアロフレックス社)を準備した。
【0144】
(熱伝導率の測定)
JIS1412-2に準拠した測定方法にて(測定器:HFM 436 Lambda、製造元:NETZSCH)、実施例1及び各比較例に係る断熱材の厚さ方向の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
【0145】
【0146】
(空隙率の測定)
弾性体層の重量と厚みを測定して嵩密度を算出し、さらに100-(弾性体層の嵩密度/基材部の密度)×100の計算式により、実施例1及び各比較例に係る断熱材である弾性体層の厚さ方向に1000kPaの圧力をかける前後の空隙率を算出した。
結果を表1に示す。
【0147】
表1に示すように、実施例1に係る断熱材は、圧力をかけた際に空隙率が高く維持されることが判明した。つまり、実施例1に係る断熱材は、圧力がかかったとしても多くの空気を含む。
そのため、実施例1に係る断熱材を配管に配置し、固定具により固定したとしても、高い断熱性能を示すことが明らかとなった。
一方、比較例2に係る断熱材は、圧力をかけた際に空隙率が低くなることが判明した。そのため、高い圧力がかかる環境において、断熱性能が低いことが判明した、