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特開2024-145847情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024145847
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20241004BHJP
   G01B 21/32 20060101ALI20241004BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241004BHJP
   E04H 9/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01B21/00 E
G01B21/32
G06T7/00 610C
E04H9/00 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023058382
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】栖原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 実
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 竜也
【テーマコード(参考)】
2E139
2F069
5L096
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA03
2E139AA05
2E139AA07
2E139AA13
2E139AA28
2E139AB01
2E139AC22
2E139AC26
2E139AC33
2F069AA04
2F069GG01
2F069GG07
2F069QQ01
5L096AA09
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA62
5L096FA69
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象構造物に関するデータを出力する情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、少なくとも1つ以上の制御部を有する。制御部は、3次元計測装置110で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得する。対象構造物の第2の3次元データを取得する。第1の3次元計測データと第2の3次元データとに基づいて求められた対象構造物に関するデータを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
少なくとも1つ以上の制御部を有し、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
3次元計測装置で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得し、
前記対象構造物の第2の3次元データを取得し、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、
情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データに関する時刻とは異なる時刻において3次元計測装置で計測された前記対象構造物の3次元計測データを前記第2の3次元データとして取得する、
情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データに含まれる前記対象構造物に付されたマーカーと前記第2の3次元データに含まれる前記対象構造物に付されたマーカーとに基づいて前記対象構造物に関する変状の位置を推定し、推定結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記対象構造物の設計図面に基づいて生成された前記対象構造物の3次元データを前記第2の3次元データとして取得する、
情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて出来形管理に関するデータを生成し、前記データを前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記第1の3次元計測データは、前記対象構造物に荷重をかけた後の前記対象構造物の3次元計測データであり、
前記第2の3次元データは、前記対象構造物に荷重をかける前の前記対象構造物の3次元データである、
情報処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物に設置されている装置の処理の結果のデータを前記対象構造物に関するデータとして出力し、
前記装置は、免震ダンパーである、
情報処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物にかかる荷重分布を推定し、推定結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の形状変化に関するデータを求め、前記データを前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項10】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記対象構造物のセンサデータを取得し、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データと前記センサデータとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、
情報処理システム。
【請求項11】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
応力解析ができる解析技術により前記対象構造物を解析し、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データと前記解析技術による解析の結果とに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、
情報処理システム。
【請求項12】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の劣化度を評価し、評価結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項13】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の寿命を予測し、予測の結果を出力する、
情報処理システム。
【請求項14】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記少なくとも1つ以上の制御部は、
前記第1の3次元計測データに含まれる前記対象構造物の部材に付されたマーカーと前記第2の3次元データに含まれる前記対象構造物の部材に付されたマーカーとに基づいて前記部材の移動量と変化とを求め、求めた結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、
情報処理システム。
【請求項15】
請求項14に記載の情報処理システムにおいて、
前記マーカーは前記部材に描かれた十字線又はチェッカーボードである、
情報処理システム。
【請求項16】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記第1の3次元計測データは、前記対象構造物を示す点群で構成され、点群間隔は0.5mmから100mmまでである、
情報処理システム。
【請求項17】
情報処理システムが実行する情報処理方法であって、
3次元計測装置で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得し、
前記対象構造物の第2の3次元データを取得し、
前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、
情報処理方法。
【請求項18】
プログラムであって、
コンピュータを、請求項1から請求項16までの何れか1項に記載の情報処理システムとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には構造物に歪みセンサを設け、歪みセンサによる測定データに基づき構造物に関する分析を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-036217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物全体の挙動を把握するためには、特許文献1の技術では構造物に多くのセンサを取り付ける必要がある。そのため、センサの費用がかかると共に、センサを取り付ける手間がかかる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、少なくとも1つ以上の制御部を有する。少なくとも1つ以上の制御部は、3次元計測装置で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得する。対象構造物の第2の3次元データを取得する。第1の3次元計測データと第2の3次元データとに基づいて求められた対象構造物に関するデータを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、情報処理システム1000のシステム構成の一例を示す図である。
図2図2は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、情報処理システム1000における情報処理の一例を示すシーケンス図である。
図4図4は、生成された形状データの一例を示す図(その1)である。
図5図5は、生成された形状データの一例を示す図(その2)である。
図6図6は、形状比較の一例を示す図である。
図7図7は、3次元計測データに基づき生成された構造物120の形状データの一例を示す図である。
図8図8は、設計図面等に基づき生成された構造物120の形状データの一例を示す図である。
図9図9は、図7の形状データと図8の形状データとを比較した結果の一例を示す図である。
図10図10は、図5に示すX2断面近傍の2階、3階、屋上(4階)の各スラブと梁を切り出した断面形状を示す図である。
図11図11は、壁にマーカーを設置した一例を示す図である。
図12図12は、図6の例において、構造物に油圧ジャッキで加力をかける前、構造物を引いた状態、さらに構造物を引いた状態、最後に構造物を押して破壊に至った状態の4つの状態における、各十字線の位置をプロットして、線でつないだ一例を示す図である。
図13図13は、チェッカーボードの例を示す図である。
図14図14は、変状の位置の推定を詳細に説明する図である。
図15図15は、測定対象の構造物120と成果物との平均的な点群間隔の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。特に、本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表されるか、信号値の物理的な数値によって表されるか、又は量子的な重ね合わせによって表されるかによらず、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0009】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0010】
また、実施形態中に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、サーバーからダウンロード可能な態様で実施してもよいし、クラウドコンピュータ上でプログラムの実行がなされてもよいし、不揮発性又は揮発性の非一時的な記憶媒体に記憶させて頒布されてもよい。
【0011】
<実施形態1>
1.情報処理システム
図1は、情報処理システム1000のシステム構成の一例を示す図である。図1に示されるように、情報処理システム1000は、システム構成として、情報処理装置100と、3Dレーザースキャナ110と、を含む。情報処理装置100と、3Dレーザースキャナ110と、はネットワーク150を介して通信可能に接続されている。
情報処理装置100は、後述する変形例も含めて、実施形態1の処理を実行する。情報処理装置100のより具体的な例としては、PC(Personal Computer)又はサーバー等である。3Dレーザースキャナ110は、3Dのレーザースキャナであって、自身の三脚位置を除く360度全方位にレーザーを照射し、測定対象の対象物(図1の例では対象の構造物120)からのレーザーの反射時間を計測し、三次元座標(x、y、z)に換算して、測定対象の対象物の形状を取得する。3Dレーザースキャナ110は、1秒間で100万点の対象物に関する点群を得ることができる。1つ1つの点には色情報が含まれる。構造物120は、測定対象の構造物であって、例えば、橋であったり、鳥居であったり、建物であったりする。3Dレーザースキャナ110は、3次元計測装置の一例である。
【0012】
2.ハードウェア構成
図2は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示されるように、情報処理装置100は、ハードウェア構成として、制御部210と、記憶部220と、入力部230と、出力部240と、通信部250と、を含む。制御部210は、CPU(Central Processing Unit)等であって、情報処理装置100の全体を制御する。記憶部220は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)等の何れか、又はこれらの任意の組み合わせであって、プログラム、制御部210がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶させる。記憶部220は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体の一例である。制御部210が、記憶部220に記憶されているプログラムに基づき、処理を実行することによって、情報処理装置100の機能及び後述する図3に示されるシーケンス図における情報処理装置100の処理が実現される。入力部230は、キーボード及び/又はマウス等であって、ユーザー操作に基づいて情報を情報処理装置100に入力する。出力部240は、ディスプレイ等であって、制御部210の制御に基づいて、画面等を表示する。通信部250は、情報処理装置100をネットワーク150に接続し、他の装置(例えば、3Dレーザースキャナ110)との通信を司る。なお、図2では情報処理装置100の制御部210を1つとして図示しているが、情報処理装置100は複数の制御部を有してもよい。情報処理装置100が複数の制御部を有している場合、複数の制御部それぞれが記憶部220等に記憶されているプログラムに基づき処理を互いに分散させて実行することによって情報処理装置100の機能等が実現される。制御部210は、少なくとも1つ以上の制御部の一例である。
なお、他の例として情報処理装置100は、ハードウェア構成として、入力部230と出力部240とを別々に有する構成ではなく、入力部230と出力部240とが一体となったような構成を有してもよい。入力部230と出力部240とが一体となったハードウェアの例としては、タッチパネルディスプレイがある。また、情報処理装置100は、通信部250を介した他の装置からの制御信号を受信し、この制御信号を入力として処理を行ってもよい。情報処理装置100の具体的な例としてはPC(Personal Computer)、又はスマートフォン等のような端末装置がある。
【0013】
特許請求の範囲に記載の情報処理システムは、1つの装置から構成されていてもよいし、複数の装置から構成されていてもよい。情報処理システムが1つの装置から構成される場合、その装置の一例は情報処理装置100である。また、情報処理システムが複数の装置から構成される場合、複数の装置の例は、複数のサーバー装置であってもよいし、情報処理装置100及び1以上のサーバー装置の組み合わせであってもよい。
【0014】
3.情報処理
以下、実施形態1の情報処理を説明する。
図3は、情報処理システム1000における情報処理の一例を示すシーケンス図である。
情報処理装置100の制御部210は、3Dレーザースキャナ110に対して制御信号を送信し、3Dレーザースキャナ110の計測を指示する。3Dレーザースキャナ110は、指示に基づき対象とする構造物120にレーザーを照射し、構造物120からのレーザーの反射の時間を計測し、三次元座標(x、y、z)に換算することで構造物120の点群を取得する。シーケンスSQ310において、制御部210は、構造物120の点群を3Dレーザースキャナ110より計測データとして取得する。
【0015】
シーケンスSQ320において、制御部210は、構造物120の点群に基づき構造物120の形状データを生成する。なお、本実施形態では、情報処理システム1000に含まれる3Dレーザースキャナ110を1台として説明しているが、情報処理システム1000に複数の3Dレーザースキャナ110が含まれるようにしてもよい。このような構成の場合、制御部210は、複数の3Dレーザースキャナ110から得られる構造物120の点群に基づき構造物120の形状データを生成する。より具体的に説明すると、制御部210は、複数の3Dレーザースキャナ110から得られた構造物120の点群同士の位置を合わせて、一つの座標系に変換し、構造物120全体の点群を構造物120の形状データとする。情報処理システム1000に複数の3Dレーザースキャナ110が含まれるようにした場合、最適な位置にそれぞれの3Dレーザースキャナ110を配置することによって情報処理装置100による適切な位置合わせを行うことができる。なお、情報処理システム1000に複数の3Dレーザースキャナ110を設けず、1つの3Dレーザースキャナ110を設け、1つの3Dレーザースキャナ110の位置を移動させ、複数の方向から構造物120にレーザーを当て、それぞれ点群を取得するようにしてもよい。
【0016】
図4は、生成された形状データの一例を示す図(その1)である。図4の例では構造物400は、梁、柱及び壁から構成される3階建ての鉄筋コンクリート製の実構造物である。なお、図4の例では、右側に油圧ジャッキが示されている。図5は、生成された形状データの一例を示す図(その2)である。図5では構造物500を上から見た平面図を示している。図5の例においても、右側に油圧ジャッキが示されている。これらの油圧ジャッキは、検証を目的として3階建ての構造物に変形を与えるための装置であり、本実施の形態を制限するものではない。
シーケンスSQ330において、制御部210は、生成した形状データを構造物120の形状データとして日付の情報等を付加して記憶部220等の所定の記憶領域に記憶する。
【0017】
例えば、情報処理装置100は、ユーザーの操作に基づき、構造物120が建築された際に、3Dレーザースキャナ110に対して制御信号を送信し、3Dレーザースキャナ110の計測を指示する。そして、情報処理装置100は、上述した処理を実行することによって、構造物120が建築された際の形状データを求め、記憶する。
【0018】
情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110に対して制御信号を送信し、3Dレーザースキャナ110の計測を指示する。3Dレーザースキャナ110は、指示に基づき対象とする構造物120にレーザーを照射し、構造物120からのレーザーの反射の時間を計測し、三次元座標(x、y、z)に換算することで構造物120の点群を取得する。シーケンスSQ340において、制御部210は、構造物120の点群を3Dレーザースキャナ110より計測データとして取得する。
【0019】
シーケンスSQ350において、制御部210は、構造物120の点群に基づき構造物120の形状データを生成する。この処理はシーケンスSQ320の処理と同様である。
シーケンスSQ360において、制御部210は、生成した形状データを構造物120の形状データとして、日付の情報等を付加して記憶部220等の所定の記憶領域に記憶する。
【0020】
例えば、情報処理装置100は、ユーザーの操作に基づき、構造物120の点検時等に、3Dレーザースキャナ110に対して制御信号を送信し、3Dレーザースキャナ110の計測を指示する。そして、情報処理装置100は、上述した処理を実行することによって、構造物120が建築された際の形状データを求め、記憶する。
【0021】
シーケンスSQ370において、制御部210は、シーケンスSQ330で記憶された構造物120の形状データを第1の形状データとして記憶部220等より取得する。シーケンスSQ370の処理は、3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得する処理の一例である。
シーケンスSQ380において、制御部210は、シーケンスSQ360で記憶された構造物120の形状データを第2の形状データとして記憶部220等より取得する。シーケンスSQ380の処理は、対象構造物の第2の3次元データを取得する処理の一例である。すなわち、制御部210は、第1の3次元計測データに関する時刻とは異なる時刻において3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の3次元計測データを第2の3次元データとして取得する。
【0022】
シーケンスSQ390において、制御部210は、シーケンスSQ370で取得された形状データとシーケンスSQ380で取得された形状データとを比較し、対象の構造物の形状データの差異を特定する。
シーケンスSQ395において、制御部210は、比較の結果を出力する。例えば、制御部210は、対象の構造物のそれぞれの形状データを重畳して画面等に表示することによって比較の結果を出力する。シーケンスSQ395の処理は、第1の3次元計測データと第2の3次元データとに基づいて求められた対象構造物に関するデータを出力する処理の一例である。なお、画面に表示することは出力の一例である。制御部210は、比較の結果をファイル等に書き込み、記憶部220等に記憶させるようにしてもよい。所定のデータを記憶部に記憶させることも出力の一例である。同様に、制御部210は、比較の結果を他の装置等に送信してもよい。所定のデータを他の装置に送信することも出力の一例である。
【0023】
実施形態1の処理によれば、構造部等に多くのセンサを取り付けなくても構造物全体の外形の位置座標(x、y、zの点群の位置情報)を得ることができるため、構造物全体の挙動及び構造物の部材の挙動を、形状変化として確認、評価することができる。すなわち、上述した対象構造物に関するデータの一例は、対象構造物の形状変化に関するデータである。
【0024】
図6は、形状比較の一例を示す図である。図6の例は、図5に示すY1断面の形状データである。図6において黒線は構造物に油圧ジャッキで加力をかける前の形状データである。緑線は構造物を引いた状態の形状データである。青線は緑線と比べてさらに構造物を引いた状態の形状データである。赤線は構造物を押して破壊に至った状態の形状データである。図6に示されるように複数の状態それぞれの形状データを比較することによって構造物全体の変形挙動を評価することができる。
【0025】
例えば、異なる時系列での測定(例えば、地震等の被災前後等)結果を比較することによって、対象の構造物120全体の変位量を評価することができる。
また、情報処理装置100は、構造物120の被災前後の比較(健全度、劣化度)、供用前の基準と現在の状況の比較(維持管理)、補修、又は補強工事前後の比較(効果の確認)を行うことができる。例えば、制御部210は、異なる時系列での測定(例えば、被災前後等)結果を比較することによって、構造物120全体、又は構造物120を構成する部材等の変位量を求め、求めた変位量と、劣化の度合いを示す予め定められた劣化度とを比較し、比較の結果を評価結果として出力するようにしてもよい。なお、制御部210は、異なる時刻において3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の3次元計測データを入力、対象構造物の劣化具合を表す劣化度を出力として学習された学習済みデータを用いて対象構造物の劣化度を求めるようにしてもよい。制御部210は、異なる時刻において3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の3次元計測データを学習済みデータに入力する。そして制御部210は、学習済みデータから出力された劣化度を取得し、対象構造物の劣化度として出力する。劣化度を健全度に読み替えれば制御部210は対象構造物の健全度も取得することができる。
【0026】
制御部210は、異なる時系列での測定(例えば、被災前後等)結果を比較することによって、構造物120全体、又は構造物120を構成する限定した部材等の変位量を求め、求めた変位量と、変位量と構造物120等の寿命とを対応付けたデータと、から構造物120全体、又は構造物120を構成する限定した部材等の寿命を求めて、予測結果として出力してもよい。なお、制御部210は、異なる時刻において3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の3次元計測データを入力、対象構造物の寿命を出力として学習された学習済みデータを用いて対象構造物の寿命を予測するようにしてもよい。制御部210は、異なる時刻において3Dレーザースキャナ110で計測された対象構造物の3次元計測データを学習済みデータに入力する。そして、制御部210は、学習済みデータから出力された寿命を取得し、対象構造物の寿命として出力する。
【0027】
(変形例1)
・残留変形評価(時系列における前後の比較から)
(1)災害時の残留変形評価による健全度又は損傷度の評価、緊急点検
例えば、現状の地震後の構造物120の評価は、最大ひび割れ幅に基づいて行われている。RC構造物のコンクリートのひび割れ幅は、内部の鉄筋の降伏の有無を評価していることになる。情報処理装置100による3Dレーザースキャナ110を用いた計測では、構造物120の変形量の累積値(残留ひび割れ幅の合計)を残留変形として計測できるため従来の方法よりも合理的な評価方法となり得る。
変形例1(1)の情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いた構造物120の3次元計測データに基づきひずみを抽出し、抽出したひずみに基づき、最大ひび割れ幅とひずみとの関係データにより構造物120の最大ひび割れ幅を予測、評価する。このことで、地震後の構造物120の評価を行うことができる。また、鉄筋コンクリート部材においては、ひび割れ幅の累積値を把握することで、エポキシ樹脂の充填等による補修工において、施工数量を簡単に概算できる可能性がある。
【0028】
(2)損傷の評価
例えば、構造物120の部材の鉄筋降伏によって構造物120の体積変化及び長さ変化を評価できる。部材内部の鉄筋が降伏した場合、基本的に鉄筋降伏方向に部材が膨張し、柱の曲げ変形であれば鉛直方向に、壁のせん断降伏であれば部材が横にはらみ、壁の曲げ変形であれば,壁が浮いて鉛直方向に膨張する塑性変形を生じる。事前、事後の計測によって、前述のような部材の塑性変形による膨張を評価することで、損傷の程度が推定できる。したがって変形例1(2)の情報処理システム1000は建築構造物、土木構造物原発の全般に適用することができる。また、この手法は、塑性変形を評価するものであり、鉄筋コンクリート部材で構成される構造物以外の鉄骨造や木造、その他の構造物全般に用いることができる。
【0029】
(3)定期点検又は緊急点検
変形例1(3)の情報処理装置100は、構造物120の定期点検又は緊急点検として、3Dレーザースキャナ110を用いた構造物120の3次元計測データを利用することで構造物120の供用時の劣化及び寿命の予測等、構造物120の維持管理を行うことができる。情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いて構造物120の3次元計測データを定期的に取得することで、構造物120に係る不同沈下、長期たわみ、局所的な材料劣化による変形等の長期変質の情報を取得し、出力することができる。また、情報処理装置100は、被災又は事故後の構造物120の緊急点検時の構造物120の3次元計測データと記憶部220等に記憶されているベースラインとなる構造物120の3次元計測データ(又は構造物120の3次元のデータ)とを比較することで外力(例えば、台風、竜巻、風雪、地震、津波等)による構造物120の被害箇所を特定し、出力することができる。
【0030】
(4)基礎の損傷による構造部の不同沈下の評価・構造物が移動した場合の評価
構造物120の一般的な被害調査において不同沈下は顕著に生じていないと見逃されがちとなる。変形例1(4)の情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いた3次元計測データに構造物120以外の沈下しないリファレンスが含まれていた場合は、ベースラインとなる構造物120の3次元計測データ(又は構造物120の3次元のデータ)におけるリファレンスと構造物120との相対位置及び距離と、計測した構造物120の3次元計測データにおけるリファレンスと構造物120との相対位置及び距離と、にもとづいて地盤変状等による沈下の評価を明確に行い、評価結果を出力することができる。リファレンスは、構造物120と異なるものであればよく、対象とする構造物120の近傍の沈下の影響を受けていない構造物及び意図的に取り付けた基準点・マーカー等が挙げられる。これらをリファレンスとすることができる。
構造物120の沈下以外にも、構造物120が当初の位置(平面座標)から移動した場合についても同様に評価することができ、津波や洪水等の滑動(移動)被害の評価に適用できる。
【0031】
(5)他のセンサとの複合
変形例1(5)の情報処理システム1000は構造物120に加速度センサ等を設ける。変形例1(5)の制御部210は、構造物120のセンサ等によって計測された計測データを取得する。計測データはセンサデータの一例である。制御部210は、3Dレーザースキャナ110を用いてそれぞれ異なる時刻において計測された構造物120の複数の3次元計測データと構造物120の加速度センサ等によって計測された計測データとに基づいて構造物120の時間経過による差異、変形等を求め、出力する。
変形例1(5)の処理は、第1の3次元計測データと第2の3次元データとセンサデータとに基づいて求められた対象構造物に関するデータを出力する処理の一例である。
【0032】
(6)解析技術との複合
変形例1(6)の情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いた時系列における構造物120の複数の3次元計測データと解析技術との組み合わせによって構造物120の時間経過による差異、変形等を求め、出力する。解析技術とは、有限要素法、境界要素法、剛体バネモデル法、差分法等での応力解析ができるもので、連続体や不連続体を対象とできる。
【0033】
他の例として、情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いた構造物120の3次元計測データとセンサによる測定データと解析技術とを組み合わせて構造物120の変形の評価等を行ってもよい。
変形例1(6)の処理は、制御部210が有限要素法で構造物120を解析する。そして、制御部210が第1の3次元計測データと第2の3次元データと有限要素法による解析の結果とに基づいて構造物120の変形等を求め、求めた結果を出力する処理の一例である。
【0034】
(変形例2)
荷重が作用しているときの変形分布測定(作用に対する応答値として)
変形例2の情報処理装置100は、構造物120に荷重が作用しているときの構造物120の変形分布の測定結果を解析技術の逆解析の入力値とすることで構造物120の実部材の剛性の程度、主応力分布、応力集中、又は変形集中している箇所等の損傷部分を推定(どこに変形が集中しているか、力が集中しているか等)し、推定結果を出力することができる。解析技術とは、有限要素法、境界要素法、剛体バネモデル法、差分法等での応力解析ができるもので、連続体や不連続体を対象とできる。
【0035】
(1)設計検査
変形例2(1)の情報処理装置100は、構造物120に対する荷重の応答が設計値通りになっているか否かを判定し、判定結果を出力する。
【0036】
(2)免震ダンパーのキャリブレーション
変形例2(2)の情報処理装置100は、構造物120全体の変形を分布として捉えることができるため、免震ダンパーの効き方等のキャリブレーションの用途に適用することができる。情報処理装置100は、3Dレーザースキャナ110を用いて、油圧ジャッキによる構造物120に対する加力時の変形を測定することができる。すなわち、変形例2(2)の制御部210は、構造物120に荷重をかけた前後の構造物120の3次元計測データに基づいて構造物120に設置されている装置の処理の結果のデータを対象構造物に関するデータとして出力する。構造物120に設置されている装置の一例は、免震ダンパーである。
【0037】
(3)検査
変形例2(2)の情報処理装置100は、変形例2の処理を構造物120の補修又は補強工事前後の検査に活用することができる。構造物120の一例として構造物120が橋梁の場合、情報処理装置100は、ラフテレーンクレーン等の重機を載せる前と載せた後との橋梁の3次元計測データに基づき橋梁の梁の変位量を求め、出力する。また、構造物120の他の例として、構造物120がビル等の場合、情報処理装置100は、荷重をかける前と後とのビルの床の3次元計測データに基づきスラブの変位量を求め、出力する。これらの変位量に基づき、情報処理装置100は、構造物120の健全度、劣化度を判定したり、寿命を予測したり、補修又は補強の立案をしたりする。構造物120に荷重をかけた後の構造物120の3次元計測データでは、第1の3次元計測データの一例である。構造物120に荷重をかける前の構造物120の3次元データは、第2の3次元データの一例である。
また、一般的な変位計測では構造物120の基礎からの相対的な変異が計測されるが、3Dレーザースキャナ110による3次元計測では構造物120の外部のリファレンスも計測することができれば、リファレンスを座標の原点とした絶対座標系での変異評価をすることができるため、構造物120の基礎を含めた変異を計測することができる。リファレンスは、構造物120と異なるものであればよく、近傍の沈下の影響を受けていない構造物及び意図的に取り付けた基準点・マーカー等が挙げられる。これらをリファレンスとすることができる。
【0038】
(変形例3)
・構造物の荷重分布の推定
変形例3の情報処理装置100は、荷重が作用しているとき(例えば積荷中)の構造物120の変形分布の測定結果に基づき、このような変形となる解析技術の解析条件を逆解析することで、作用する又は作用した荷重分布を推定する。解析技術とは、有限要素法、境界要素法、剛体バネモデル法、差分法等での応力解析ができるもので、連続体や不連続体を対象とできる。
車両の活荷重及び自重のように、明らかに作用している荷重が明白なときは、情報処理装置100は、荷重の大きさを推定することになる。一方、作用している荷重が埋設環境等の土圧等のように不確定な場合には、情報処理装置100は、所定の条件を満たすまで繰り返し計算することによって逆解析によって、どういった荷重がどの程度の範囲に作用しているかを推定し、推定結果を出力することができる。
変形例3の処理は、第1の3次元計測データと第2の3次元データとに基づいて対象構造物にかかる荷重分布を推定し、推定結果を対象構造物に関するデータとして出力する処理の一例である。第1の3次元計測データ及び第2の3次元データは、それぞれ異なる時刻において3Dレーザースキャナ110によって計測された計測データに基づき生成されたデータである。
【0039】
(変形例4)
・出来形管理
変形例4の情報処理装置100は、3次元計測データに基づき生成した構造物120の形状データと、構造物120の設計図面等に基づき生成した構造物120の形状データと、を比較し、出来形管理を行う。
図7は、3次元計測データに基づき生成された構造物120の形状データの一例を示す図である。図8は、設計図面等に基づき生成された構造物120の形状データの一例を示す図である。図9は、図7の形状データと図8の形状データとを比較した結果の一例を示す図である。図9では設計図面に対して形状が外側にある(飛び出している)部分、内側にある(へこんでいる)部分がひと目で識別可能となっている。すなわち、変形例4の制御部210は、対象構造物の設計図面に基づいて生成された対象構造物の3次元データを第2の3次元データとして取得する。
【0040】
図10は、図5に示すX2断面近傍の2階、3階、屋上(4階)の各スラブと梁を切り出した断面形状を示す図である。横軸に対して縦軸を強調して示している。3次元計測では、ピンポイントのセンサと異なり、面として形状を測定することができるため、断面の分布をより正確に表現することができる。図10に示されるように、本来水平であるはずのスラブ上面は凸凹しており、設計スラブ厚80mmに対して、-20mm~+20mm程度の変動があることが分かる。
【0041】
すなわち、変形例4の処理は、制御部210が、第1の3次元計測データと第2の3次元データとに基づいて出来形管理に関するデータを生成し、データを対象構造物に関するデータとして出力する処理の一例である。ここで、第1の3次元計測データは、制御部210が3Dレーザースキャナ110の計測データ、又は3Dレーザースキャナ110の計測データに基づき生成された構造物120の形状データである。第2の3次元データは、構造物120の設計図面に基づいて生成された3次元データである。
【0042】
(変形例5)
・マーカーを用いた例
3次元計測では形状を用いた評価になりがちであるが、構造物120の内部の変化量を計測等することもできる。例えば、構造物120がビル等である場合、変形例5の情報処理装置100は、ビルの壁の点を追跡することで壁の変化量を調査等することができる。変形例5の情報処理装置100は、計測データに含まれる壁のマーカー(例えば、壁に記された十字線)の中心位置を抽出し、中心位置の時系列的な移動量及び移動軌跡を求める。
【0043】
図11は、壁にマーカーを設置した一例を示す図である。図11の例では、ライン1、ライン2、ライン3、ライン4、ライン5それぞれの墨出し線と、上、中上、中下、下それぞれの墨出し線と、交差点が十字線のマーカーとなっている。
【0044】
図12は、図6の例において、構造物に油圧ジャッキで加力をかける前、構造物を引いた状態、さらに構造物を引いた状態、最後に構造物を押して破壊に至った状態の4つの状態における、各十字線の位置をプロットして、線でつないだ一例を示す図である。図12において各十字線の位置をプロットして、線でつないだものはそれぞれ異なる色で表示されている。制御部210が、このように、形状の変化だけでなく、十字線等のマーカーを追跡することで、面として移動量とその変化とを追跡することができる。また、図12において点線で囲った範囲1210の周囲の挙動は、他の部位及び他の階と異なる方向・大きさの移動量を示しており、何らかの変状が生じている部位であるといえる。制御部210は、異なる時間において測定された3Dレーザースキャナ110の計測データに基づきある部位と他の部位とを比べて異なる方向及び/又は大きさで移動している部材の範囲の情報を出力することができる。例えば、制御部210は、図12に示されるような範囲1210の情報を所定の装置のディスプレイ等に出力することができる。この処理は、制御部210は、第1の3次元計測データに含まれる対象構造物の部材(例えば、壁)に付されたマーカーと第2の3次元データに含まれる対象構造物の部材(例えば、壁)に付されたマーカーとに基づいて部材の移動量と変化とを求め、求めた結果を対象構造物に関するデータとして出力する処理の一例である。
【0045】
使用するマーカーは、専用のマーカーを接着剤等によって取り付けるものでは、その部分にひび割れ等の変状が生じた場合に、マーカーが脱落するため、墨出しのように直接構造物に書き込む方法が望ましい。墨出し線の情報を精度良く得るためには、墨出しによって描くものとして十字線、チェッカーボード等、コントラストが強いものがよい。図13は、チェッカーボードの例を示す図である。チェッカーボード1310、チェッカーボード1320は、それぞれ、チェッカーボードの例である。
3Dレーザースキャナ110は、色情報を同時に取得するスキャナであるとよりよい。
【0046】
図14は、変状の位置の推定を詳細に説明する図である。図14の1230のように変状(例えば、ひび割れ)があった場合、マーカーA1210の移動量と、マーカーB1220の移動量と、が他のマーカーの点よりも大きくなる。言い換えると、変形例5の情報処理装置100は、マーカーそれぞれの点の移動量に基づき構造物120の変状の位置を推定し、推定結果を出力することができる。
【0047】
すなわち、変形例5の制御部210は、第1の3次元計測データに含まれる構造物120に付されたマーカーと第2の3次元計測データに含まれる構造物120に付されたマーカーとに基づいて構造物120に関する変状の位置を推定し、推定結果を対象構造物に関するデータとして出力する。第1の3次元計測データ及び第2の3次元計測データはそれぞれ異なる時刻において3Dレーザースキャナ110によって計測された計測データに基づき生成されたデータである。
【0048】
(変形例6)
図15は、測定対象の構造物120と成果物との平均的な点群間隔の一例を示す図である。測定対象を長方体で囲んだ場合の3辺のうち最も大きい辺の長さをL、点群間隔をdと定義し、d/Lについて整理した。点群間隔dは、その数値の後の括弧内に記述した最小間隔と最大間隔との平均値としている。図15に示されるように、点群間隔は0.5mmから100mmまでである。
3Dレーザースキャナ110は、一定角度の刻みで360度の全方向にレーザーの照射を行う。レーザーは直進するので近いところは細かく、遠いところは粗くなる。例えば、情報処理システム1000に3Dレーザースキャナ110を複数配置し、得られる点群を重ね合わせると最小間隔0.5mmで処理することができる。したがって、点群間隔にも分布ができる。
点群間隔の最小値は決まっているが、測定対象が大きくなる場合、現実的な点群に係るデータ容量が大きくなる。点群間隔を活用しやすいデータ容量を考慮すると点同士の平均間隔は0.0000025L以上0.01L未満であることが望ましい。
【0049】
<付記>
発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0050】
(1)情報処理システムであって、少なくとも1つ以上の制御部を有し、前記少なくとも1つ以上の制御部は、3次元計測装置で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得し、前記対象構造物の第2の3次元データを取得し、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、情報処理システム。
【0051】
(2)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データに関する時刻とは異なる時刻において3次元計測装置で計測された前記対象構造物の3次元計測データを前記第2の3次元データとして取得する、情報処理システム。
【0052】
(3)上記(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データに含まれる前記対象構造物に付されたマーカーと前記第2の3次元データに含まれる前記対象構造物に付されたマーカーとに基づいて前記対象構造物に関する変状の位置を推定し、推定結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0053】
(4)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記対象構造物の設計図面に基づいて生成された前記対象構造物の3次元データを前記第2の3次元データとして取得する、情報処理システム。
【0054】
(5)上記(4)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて出来形管理に関するデータを生成し、前記データを前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0055】
(6)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の3次元計測データは、前記対象構造物に荷重をかけた後の前記対象構造物の3次元計測データであり、前記第2の3次元データは、前記対象構造物に荷重をかける前の前記対象構造物の3次元データである、情報処理システム。
【0056】
(7)上記(6)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物に設置されている装置の処理の結果のデータを前記対象構造物に関するデータとして出力し、前記装置は、免震ダンパーである、情報処理システム。
【0057】
(8)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物にかかる荷重分布を推定し、推定結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0058】
(9)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の形状変化に関するデータを求め、前記データを前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0059】
(10)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記対象構造物のセンサデータを取得し、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データと前記センサデータとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、情報処理システム。
【0060】
(11)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、応力解析ができる解析技術により前記対象構造物を解析し、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データと前記解析技術による解析の結果とに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、情報処理システム。
【0061】
(12)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の劣化度を評価し、評価結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0062】
(13)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて前記対象構造物の寿命を予測し、予測の結果を出力する、情報処理システム。
【0063】
(14)上記(2)に記載の情報処理システムにおいて、前記少なくとも1つ以上の制御部は、前記第1の3次元計測データに含まれる前記対象構造物の部材に付されたマーカーと前記第2の3次元データに含まれる前記対象構造物の部材に付されたマーカーとに基づいて前記部材の移動量と変化とを求め、求めた結果を前記対象構造物に関するデータとして出力する、情報処理システム。
【0064】
(15)上記(14)に記載の情報処理システムにおいて、前記マーカーは前記部材に描かれた十字線又はチェッカーボードである、情報処理システム。
【0065】
(16)上記(1)に記載の情報処理システムにおいて、前記第1の3次元計測データは、前記対象構造物を示す点群で構成され、点群間隔は0.5mmから100mmまでである、情報処理システム。
【0066】
(17)情報処理システムが実行する情報処理方法であって、3次元計測装置で計測された対象構造物の第1の3次元計測データを取得し、前記対象構造物の第2の3次元データを取得し、前記第1の3次元計測データと前記第2の3次元データとに基づいて求められた前記対象構造物に関するデータを出力する、情報処理方法。
【0067】
(18)プログラムであって、コンピュータを、上記(1)から(16)までの何れか1つに記載の情報処理システムとして機能させるためのプログラム。
もちろん、この限りではない。
【0068】
上述した実施形態及び変形例の全部又は一部は任意に組み合わせて実施されてもよい。
【0069】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
100 :情報処理装置
110 :3Dレーザースキャナ
120 :構造物
150 :ネットワーク
210 :制御部
220 :記憶部
230 :入力部
240 :出力部
250 :通信部
1000 :情報処理システム
図1
図2
図3
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図5
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図11
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